(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
体腔用内視鏡は、被検者の体腔(例えば消化管)内に照明光を照射して、病変部の有無やその状態を観察するものである。眼科用観察装置は、被検者の前眼部に照明光を照射して、眼底の血管、網膜及び視神経などの状態を観察することで、緑内障、網膜剥離及び眼底出血などの目の病気を調べるものである。従来、体腔用内視鏡に照明光を供給するための光源装置と、眼科用観察装置に照明光を供給するための光源装置とは、別個の専用品として準備されていた。
【0003】
従来装置(システム)において、このように体腔用内視鏡と眼科用観察装置に別個の光源装置を準備する理由は、体腔用内視鏡が必要とする照明光の光量(光度)と、眼科用観察装置が必要とする照明光の光量(光度)とが大きく異なることに由来する。つまり、照明光の光量が大きい体腔用内視鏡の光源装置に、誤って小光量で足りる眼科用観察装置を接続すると、水晶体で照明光が強く反射して観察できず、また被検者の眼を痛めるおそれがある。このため、従来、体腔用内視鏡の光源装置には眼科用観察装置を接続できないように両者の接続部に互換性を与えないのが技術常識であった。しかし、体腔用内視鏡と眼科用観察装置とで光源装置(光源ランプ)を共用化できれば、電源管理、設備投資の両面で利便性が増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の着眼に基づいて完成されたものであり、体腔用内視鏡と眼科用観察装置のそれぞれに接続可能であり、体腔用内視鏡と眼科用観察装置のいずれが接続されたかを検出して最適な照明光の光量(光度)を設定し、特に眼科用観察装置の使用時に被検者の眼を痛めることなく良好な観察を行うことができる医療用光源装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の医療用光源装置は、被検者の体腔内に照明光を照射する体腔用内視鏡と、被検者の前眼部に照明光を照射する眼科用観察装置とのいずれかを選択的に接続可能な接続部;前記接続部に接続された前記体腔用内視鏡または前記眼科用観察装置に照明光を供給する光源ランプ;前記接続部に前記体腔用内視鏡と前記眼科用観察装置とのいずれが接続されているかを判定する判定部;及び前記判定部が前記接続部に前記体腔用内視鏡が接続されていると判定したときは、前記光源ランプが前記体腔用内視鏡に供給する照明光の最大光量を第1の閾値に設定し、前記判定部が前記接続部に前記眼科用観察装置が接続されていると判定したときは、前記光源ランプが前記眼科用観察装置に供給する照明光の最大光量を前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値に設定するランプ制御部;を備えることを特徴としている。
【0007】
本明細書で「体腔用内視鏡または眼科用観察装置が接続部に接続されている」とは、体腔用内視鏡または眼科用観察装置が、光源ランプからの照明光の供給を受けてこれを照射可能な状態で、接続部に接続されていることを意味する。
【0008】
前記ランプ制御部は、前記光源ランプが前記眼科用観察装置に照明光を供給する場合において、前記光源ランプが所定時間連続して点灯したときに、前記光源ランプの点灯を強制終了させることが好ましい。
【0009】
本発明の医療用光源装置は、前記接続部に接続された前記体腔用内視鏡または前記眼科用観察装置と通信する通信部をさらに有し、前記判定部は、前記通信部の通信結果に基づいて、前記接続部に前記体腔用内視鏡と前記眼科用観察装置とのいずれが接続されているかを判定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、体腔用内視鏡と眼科用観察装置のそれぞれに接続可能であり、体腔用内視鏡と眼科用観察装置のいずれが接続されたかを検出して最適な照明光の光量(光度)を設定し、特に眼科用観察装置の使用時に被検者の眼を痛めることなく良好な観察を行うことができる医療用光源装置が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1、
図2を参照して、本発明による医療用光源装置(プロセッサ)100の構成について説明する。
【0013】
医療用光源装置100は、該医療用光源装置100の全構成要素の駆動電力源であるAC電源101と、AC電源101の駆動電力をランプ系統に供給するランプ電源102と、AC電源101の駆動電力をシステム系統に供給するシステム電源103とを備えている。
【0014】
医療用光源装置100は、ランプ電源102から供給された駆動電力によって照明光を発する光源ランプ110を備えている。光源ランプ110は、ハロゲンランプ、キセノンランプまたはLED等からなる。光源ランプ110は、自身が発する照明光の光量(光度)を可変できるように構成されている。
【0015】
医療用光源装置100は、光源ランプ110が発した照明光の光量を調整する回転絞り板(回転チョッパ)111と、回転絞り板111を回転駆動する絞り板駆動モータ112と、回転絞り板111の回転位置を検出する絞り位置検出センサ113とを備えている。
【0016】
医療用光源装置100は、導光路を有するコネクタ嵌込部(接続部)120を備えており、このコネクタ嵌込部120に、体腔用内視鏡200と眼科用観察装置300とのいずれかが選択的に接続可能となっている。すなわち、
図2(A)、(B)に示すように、体腔用内視鏡200と眼科用観察装置300は同一仕様のコネクタ部(接続部)210とコネクタ部(接続部)310を備えており、このコネクタ部210とコネクタ部310が単一のコネクタ嵌込部120に着脱自在となっている(両コネクタ部に互換性を持たせている)。また、コネクタ部210とコネクタ部310には、装置IDを記録したIDメモリ211とIDメモリ311が内蔵されている。医療光源装置100には通信部130が設けられており、この通信部130がIDメモリ211またはIDメモリ311と通信して装置IDを受け取ることで、医療用光源装置100(コネクタ嵌込部120)に接続されているのが体腔用内視鏡200(コネクタ部210)と眼科用観察装置300(コネクタ部310)のいずれであるのかを知ることができるようになっている。
【0017】
ここで、IDメモリ211とIDメモリ311が記録した装置IDとしては、例えば、体腔用内視鏡200と眼科用観察装置300の挿入部の長さ情報、体腔用内視鏡200と眼科用観察装置300を使用する医師情報などが挙げられる。
【0018】
医療用光源装置100に体腔用内視鏡200が接続されているとき(
図2(A))は、光源ランプ110が発した照明光は、回転絞り板111とコネクタ嵌込部120の導光路を介して、体腔用内視鏡200のユニバーサルケーブル220から操作部230そして挿入部240の先端部まで延びるライトガイドファイバ(図示せず)内に入射し、このライトガイドファイバの先端部に設けられた照明レンズ(図示せず)から射出される。この照明光は被検者の体腔(例えば消化管)内を照射し、その反射光が挿入部240の先端部に設けられた撮像素子(図示せず)で撮像されて撮像信号となる。この撮像信号は、体腔用内視鏡200の挿入部240から操作部230そしてユニバーサルケーブル220内に配設された画像信号用ケーブル(図示せず)を介して伝送される。
【0019】
医療用光源装置100に眼科用観察装置300が接続されているとき(
図2(B))は、光源ランプ110が発した照明光は、回転絞り板111とコネクタ嵌込部120の導光路を介して、眼科用観察装置300のユニバーサルケーブル320から操作部330そして挿入部340の先端部まで延びるライトガイドファイバ(図示せず)内に入射し、このライトガイドファイバの先端部に設けられた照明レンズ(図示せず)から射出される。この照明光は被検者の前眼部を照射し、その反射光が挿入部340の先端部に設けられた撮像素子(図示せず)で撮像されて撮像信号となる。この撮像信号は、眼科用観察装置300の挿入部340から操作部330そしてユニバーサルケーブル320内に配設された画像信号用ケーブル(図示せず)を介して伝送される。
【0020】
医療用光源装置100は、体腔用内視鏡200または眼科用観察装置300の画像信号用ケーブルから伝送された撮像信号に画像処理を施す画像処理部140を備えており、画像処理部140が画像処理を施した観察画像は、医療用光源装置100の外部のモニタ400に表示される。
【0021】
医療用光源装置100は、該医療用光源装置100の動作全般を制御する制御回路150を備えている。この制御回路150は、絞り板制御部151と、判定部152と、ランプ制御部153とからなる。
【0022】
絞り板制御部151は、絞り位置検出センサ113が検出した回転絞り板111の回転位置に基づいて、絞り板駆動モータ112を介して、回転絞り板111を回転駆動制御する。
【0023】
判定部152は、通信部130の通信結果に基づいて、医療用光源装置100(コネクタ嵌込部120)に体腔用内視鏡200(コネクタ部210)と眼科用観察装置300(コネクタ部310)のいずれが接続されているかを判定する。
【0024】
ランプ制御部153は、判定部152の判定結果に基づいて、光源ランプ110が体腔用内視鏡200または眼科用観察装置300に供給する照明光の最大光量(最大光度)を設定する。
すなわち、ランプ制御部153は、判定部152が医療用光源装置100(コネクタ嵌込部120)に体腔用内視鏡200(コネクタ部210)が接続されていると判定したときは、光源ランプ110が体腔用内視鏡200に供給する照明光の最大光量(最大光度)を「第1の閾値」に設定する。この「第1の閾値」は、例えば、光源ランプ110が能力的に供給可能な最大限度の照明光の光量(光度)である。
一方、ランプ制御部153は、判定部152が医療用光源装置100(コネクタ嵌込部120)に眼科用観察装置300(コネクタ部310)が接続されていると判定したときは、光源ランプ110が眼科用観察装置300に供給する照明光の最大光量(最大光度)を、「第1の閾値」よりも小さい「第2の閾値」に設定する。
本実施形態では、「第1の閾値」を800cd(カンデラ)に設定し、「第2の閾値」を1cd(カンデラ)に設定している。
【0025】
ランプ制御部153は、光源ランプ110が眼科用観察装置300に照明光を供給する場合において、光源ランプ110が所定時間連続して点灯したときに、光源ランプ110の点灯を強制終了させる。すなわち、ランプ制御部153は、光源ランプ110が眼科用観察装置300に照明光の供給を開始すると同時に、タイマー部160による計時を開始させ、光源ランプ110の連続点灯時間が所定時間(例えば5分)に到達した時点で、光源ランプ110の点灯を強制終了させる。
【0026】
なお、ランプ制御部153は、判定部152が医療用光源装置100(コネクタ嵌込部120)に体腔用内視鏡200(コネクタ部210)が接続されていると判定したときは、光源ランプ110を連続点灯と点滅点灯のいずれかに切り替えて使用できるように点灯制御する。光源ランプ110の連続点灯と点滅点灯の切り替えは、図示しない手動スイッチの入力操作によって実行することができる。
一方、ランプ制御部153は、判定部152が医療用光源装置100(コネクタ嵌込部120)に眼科用観察装置300(コネクタ部310)が接続されていると判定したときは、光源ランプ110を常時連続点灯させて使用するように点灯制御する。ランプ制御部153は、仮に、眼科用観察装置300の接続時において、図示しない手動スイッチによって光源ランプ110を連続点灯から点滅点灯に切り替える旨の入力操作が実行されたときは、モニタ400に「注意!眼科用観察装置の使用時にもかかわらず点滅点灯に切り換えますが本当によろしいですか?」といった警告表示を出して、ユーザの再確認を求め、ユーザの再確認を得られたときにだけ、例外的に、光源ランプ110の点滅点灯を許可する。
【0027】
続いて、
図3のフローチャートを参照して、以上のように構成された医療用光源装置100の動作について説明する。
【0028】
医療用光源装置100の電源がオンされると、絞り板制御部151が、絞り板駆動モータ112を介して、回転絞り板111の回転位置を初期化する(ステップS1)。
【0029】
次いで、通信部130が、コネクタ嵌込部120に通信可能なコネクタ部が装着されているか否かを判定する(ステップS2)。通信部130は、コネクタ嵌込部120に通信可能なコネクタ部が装着されていないときは(ステップS2:NO)、何らの処理も行わない。通信部130は、コネクタ嵌込部120に通信可能なコネクタ部が装着されているときは(ステップS2:YES)、装着されたコネクタ部からの装置IDを受信する(ステップS3)。
【0030】
次いで、判定部152が、通信部130の通信結果に基づいて、医療用光源装置100(コネクタ嵌込部120)に体腔用内視鏡200(コネクタ部210)が接続されているか否かを判定する(ステップS4)。判定部152が医療用光源装置100(コネクタ嵌込部120)に体腔用内視鏡200(コネクタ部210)が接続されていると判定したときは(ステップS4:YES)、ランプ制御部153が、光源ランプ110が体腔用内視鏡200に供給する照明光の最大光量(最大光度)を「第1の閾値」に設定した上で(ステップS5)、被検者の体腔内(例えば消化管)を観察する(ステップS6)。
【0031】
判定部152は、医療用光源装置100(コネクタ嵌込部120)に体腔用内視鏡200(コネクタ部210)が接続されていないと判定したときは(ステップS4:NO)、さらに、医療用光源装置100(コネクタ嵌込部120)に眼科用観察装置300(コネクタ部310)が接続されているか否かを判定する(ステップS7)。判定部152が医療用光源装置100(コネクタ嵌込部120)に眼科用観察装置300(コネクタ部310)が接続されていると判定したときは(ステップS7:YES)、ランプ制御部153が、光源ランプ110が眼科用観察装置300に供給する照明光の最大光量(最大光度)を「第1の閾値」よりも小さい「第2の閾値」に設定し(ステップS8)、且つ、タイマー部160による計時を開始させた上で(ステップS9)、被検者の前眼部を観察する(ステップS10)。
【0032】
ランプ制御部153は、タイマー部160を参照して、光源ランプ110の連続点灯時間が所定時間(例えば5分)に到達するまでは、光源ランプ110の点灯を継続して被検者の前眼部の観察を可能とし(ステップS11:NO、ステップS10)、光源ランプ110の連続点灯時間が所定時間(例えば5分)に到達した時点で、光源ランプ110の点灯を強制終了させて被検者の前眼部の観察を不能にする(ステップS11:YES、ステップS12)。
【0033】
判定部152が医療用光源装置100(コネクタ嵌込部120)に眼科用観察装置300(コネクタ部310)が接続されていないと判定したときは(ステップS7:NO)、医療用光源装置100では使用できない(互換性のない)内視鏡または装置が接続されていることを意味しているので、モニタ400にその旨の警告表示を出す(ステップS13)。
【0034】
このように本実施形態の医療用光源装置100によれば、ランプ制御部153が、判定部152がコネクタ嵌込部(接続部)120に体腔用内視鏡200が接続されていると判定したときは、光源ランプ110が体腔用内視鏡200に供給する照明光の最大光量(最大光度)を「第1の閾値」に設定し、判定部152がコネクタ嵌込部(接続部)120に眼科用観察装置300が接続されていると判定したときは、光源ランプ110が眼科用観察装置300に供給する照明光の最大光量(最大光度)を「第1の閾値」よりも小さい「第2の閾値」に設定する。これにより、体腔用内視鏡200と眼科用観察装置300のそれぞれに対して最適な照明光の光量(光度)を設定し、特に眼科用観察装置300の使用時に被検者の眼を痛めることなく良好な観察を行うことができる。
【0035】
また、ランプ制御部153が、光源ランプ110が眼科用観察装置300に照明光を供給する場合において、光源ランプ110が所定時間連続して点灯したときに、光源ランプ110の点灯を強制終了させるので、光源ランプ110の不用意な連続点灯によって被検者の眼を痛めることなく良好な観察を行うことができる。
【0036】
以上の実施形態では、「第1の閾値」を800cd(カンデラ)に設定し、「第2の閾値」を1cd(カンデラ)に設定した場合を例示して説明している。しかし、これらはあくまで一例であって、「第1の閾値」と「第2の閾値」の具体的数値は種々の設計変更が可能である。
【0037】
以上の実施形態では、ランプ制御部153が、光源ランプ110の連続点灯時間が5分に到達した時点で光源ランプ110の点灯を強制終了させる場合を例示して説明している。しかし、光源ランプ110の連続点灯時間(点灯を強制終了させるまでの時間)は5分に限定されず種々の設計変更が可能である。なお、光源ランプ110の連続点灯時間は、光源ランプ110の放射輝度と照射時間の積で規定される網膜照射線量を基準とした安全面を考慮して定める。
【0038】
以上の実施形態では、医療用光源装置100に、体腔用内視鏡200と眼科用観察装置300で共用の単一のコネクタ嵌込部120を設けた場合を例示して説明したが、医療用光源装置100に、体腔用内視鏡200と眼科用観察装置300に専用の2つのコネクタ嵌込部を設ける態様も可能である。この態様では、専用のコネクタ嵌込部に体腔用内視鏡200または眼科用観察装置300が嵌め込まれたときに判定部152がこれを判定し、ランプ制御部153が、光源ランプ110が体腔用内視鏡200または眼科用観察装置300に供給する照明光の光量(光度)を「第1の閾値」または「第2の閾値」に設定する。もちろん、医療用光源装置100に設けられた光源ランプ110は1つだけなので、専用のコネクタ嵌込部に嵌め込まれた体腔用内視鏡200または眼科用観察装置300のうち、光源ランプ110からの照明光の供給を受けてこれを照射可能なのは1つだけである。