(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
繊維を含有する熱可塑性樹脂からなる基材を用いて、相反する第1面及び第2面を有する板状部及び当該第2面から突出する突出部を有する成形品を製造する方法であって、
前記板状部の肉厚のうちの一部に対応する分量の前記基材が加熱された被加熱基材を成形装置のキャビティにおいてプレスすることによって、前記板状部の肉厚のうちの一部に該当するプレス成形部を形成するプレス段階と、
前記成形装置の前記キャビティが前記成形品に対応する状態で、前記キャビティのうちの前記板状部の前記第1面に対応する第1面対応面であって重力に基づいて前記プレス成形部との間に隙間がある面とは反対側の部位を通して当該キャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を射出することによって、当該溶融状態の熱可塑性樹脂によって前記プレス成形部を重力に抗して当該キャビティのうちの前記第1面対応面の側に位置づけ、当該キャビティ内の前記板状部の肉厚のうちの残部及び前記突出部に該当する部分について、当該溶融状態の熱可塑性樹脂を補充することによって、射出補充成形部を形成する射出補充段階とを有する、
成形方法。
繊維を含有する熱可塑性樹脂からなる基材を用いて、相反する第1面及び第2面を有する板状部及び当該第2面から突出する突出部を有する成形品を製造する装置であって、
開閉可能であるとともに、その閉状態として、そのキャビティが前記成形品に対応する成形品対応閉状態と、前記板状部の肉厚の一部及び前記連設部の肉厚の一部に対応する肉厚一部対応閉状態とになり得る型であって、そのキャビティが前記肉厚一部対応閉状態にある状態で、前記基材が加熱された被加熱基材を当該キャビティにおいてプレスして前記板状部の肉厚のうちの一部に該当するプレス成形部を形成する型と、
前記キャビティが成形品対応閉状態にある状態で、前記キャビティのうちの前記板状部の前記第1面に対応する第1面対応面であって重力に基づいて前記プレス成形部との間に隙間がある面とは反対側の部位を通して当該キャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を射出することによって、当該溶融状態の熱可塑性樹脂によって前記プレス成形部を重力に抗して当該キャビティのうちの前記第1面対応面の側に位置づけ、当該キャビティ内の前記板状部の肉厚のうちの残部及び前記突出部に該当する部分について、当該溶融状態の熱可塑性樹脂を補充する射出機構とを有する、
成形装置。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂(プラスチック)は、金属等と比較して質量密度(比重)が小さい(軽い)とともに種々の形状に成形しやすいという長所がある一方、強度が低いという短所がある。このため、繊維を含有することによって強化された合成樹脂(繊維強化樹脂)が普及している。繊維強化樹脂は、鉄等の金属と比較して強度が高い一方で、比重ははるかに小さいため、各種の用途に大きな需要がある。
【0003】
長い繊維、特に、連続繊維(連続的に延びる繊維)を含有する熱可塑性樹脂は、従来、次のようにして成形されている。
繊維を含有する熱可塑性樹脂からなる板状の基材(「プリプレグ」といわれる)であって、その熱可塑性樹脂の融点以上にまで加熱されたもの(「被加熱基材」ということとする)が、その融点未満の温度の型(上型・下型)によってプレスされる。こうして、所定の形状、すなわち、型のキャビティに対応した形状に成形されるのである。
このことは、特許文献1にも開示されている。
【0004】
そして、従来、上述の方法で所望の大きさの成形品を製造しようとする際には、次のようにされていた。すなわち、所望の大きさよりも若干大きい成形品を形成するのに対応した大きさの基材を使用して成形し、上述のようにしてプレス成形した後、その余分な縁端部を削除していた。
しかしながら、それでは、その分、基材を多く必要とすることとなり、コスト高となる。
【0005】
また、上述の方法では、特に連続繊維を含有する基材を用いて複雑な形状に成形するのが困難又は不可能である。
すなわち、リブや孔等を有する複雑な形状に成形するためには、その形状に対応した複雑な形状のキャビティを有する型でプレスされることとなるのであるが、基材(プリプレグ)は、その複雑な形状の型(キャビティ)に容易にはなじまない。
例えば、リブを形成するためには、型(キャビティ)には、それに対応した溝があるが、その溝の中に基材(特に繊維)が適切に進入せず、適切に充填されないのである。また、孔を形成するためには、型(キャビティ)は、その孔を取り囲む形状(環的な空間)を有するが、その環的な空間に基材(特に繊維)が適切に回り込まず、適切に充填されないのである。
また、上述の方法において、非連続繊維を含有する基材を用いて複雑な形状に成形しようとする場合は、それが可能であっても、大きなプレス力が必要とされ、事実上、複雑な形状に成形することが困難な場合がある。
【0006】
このため、繊維を含有する熱可塑性樹脂について、低コストで、かつ、複雑な形状にも容易に成形することができる方法が、本出願人によってすでに出願されている(特願2013−18826)。なお、その出願は、本出願の出願時点において未公開である。
【0007】
その方法では、例えば、平板部及びリブ等を有する成形品が次のように製造される。
連続繊維を含有する熱可塑性樹脂からなる板状の基材(プリプレグ)が加熱されプレスされることによって、プレス成形部として平板部(板状部)等が形成され、溶融状態の熱可塑性樹脂が射出され冷却固化されることによって、射出補充成形部としてリブ(突出部)等が形成される。
こうして、繊維を含有する熱可塑性樹脂について、低コストで、かつ、複雑な形状にも容易に成形することが可能とされている。
【0008】
すなわち、その方法では、プレス成形部と射出補充成形部とが結合されて、成形品が製造される。その際、基本的には、突出部の断面積の大きさの結合面において、プレス成形部(板状部)と射出補充成形部(突出部)とが結合される。
【0009】
そして、本発明者は、プレス成形部と射出補充成形部との結合強度を高めて、成形品の強度をより高いものにすることを可能とすべく、上述の技術に対してさらに研究を重ねた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、繊維を含有する熱可塑性樹脂について、低コストで、複雑な形状にも容易に成形することができる方法において、成形品の強度をより高いものとすることができる方法、及び、それに適した装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、繊維を含有する熱可塑性樹脂からなる基材を用いて、相反する第1面及び第2面を有する板状部及び当該第2面から突出する突出部を有する成形品を製造する方法であって、前記板状部の肉厚のうちの一部に対応する分量の前記基材が加熱された被加熱基材を成形装置のキャビティにおいてプレスすることによって、前記板状部の肉厚のうちの一部に該当するプレス成形部を形成するプレス段階と、前記成形装置の前記キャビティが前記成形品に対応する状態で、
前記キャビティのうちの前記板状部の前記第1面に対応する第1面対応面であって重力に基づいて前記プレス成形部との間に隙間がある面とは反対側の部位を通して当該キャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を射出することによって、当該溶融状態の熱可塑性樹脂によって前記プレス成形部を
重力に抗して当該キャビティのうちの
前記第1面対応面の側に位置づけ、当該キャビティ内の前記板状部の肉厚のうちの残部及び前記突出部に該当する部分について、
当該溶融状態の熱可塑性樹脂を補充することによって、射出補充成形部を形成する射出補充段階とを有する、成形方法である。
【0013】
「板状部」には、平面状の「平板部」に限らず、曲面状の「曲板部」も含まれる。
「前記板状部の肉厚のうちの一部」の代表例として、「前記板状部の肉厚のうちの大半」がある。
また、板状部の大きさ(肉厚とは垂直方向の面状の大きさ)については、そのすべてに対応する分量の基材によって、板状部の大きさのすべてに該当するプレス成形部が形成される場合に限らず、板状部の大きさの一部に対応する分量の基材によって、板状部の大きさの一部に該当するプレス成形部が形成される場合も含まれる。その場合は、板状部の大きさの残部は、射出補充成形部(その一部)として形成される。
【0014】
「基材」に含有される「繊維」としては、ガラス繊維,アルミナ繊維,炭素繊維,有機繊維等、又は、それらを複数種類のものを混合したものがある。
「繊維」としては、基材において連続的に延びる連続繊維が好ましい。それが成形品の強度を高める上で、最も効果的だからである。
「基材」を形成する「熱可塑性樹脂」としては、ポリプロピレン,ポリエチレン,アクリル,アクリロニトリル−スチレン−ブタジエンブロック共重合体,ポリスチレン,ナイロン等のポリアミド,ポリ塩化ビニル,ポリカーボネート,スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の一般的な熱可塑性樹脂や,ポリアミド,ポリアセタール,ポリフェニレンスルフィド,ポリアミドイミド,ポリエーテルエーテルケトン等のエンジニアリングプラスチック等がある。
このことは、「射出補充段階」において射出される「熱可塑性樹脂」についても同様である。
【0015】
「基材」としては、1つ(1枚)の基材のみが使用される場合に限らず、複数(複数枚)の基材が重ねられて使用される場合もある。その場合は、プレス段階においては、複数の基材(いずれも加熱されたもの)全体が被加熱基材としてプレスされることによって、プレス成形部が形成される。
【0016】
「前記プレス成形部を…第1面対応面の側に位置づけ」は、第1面対応面に当接させる場合に限らず、第2面対応面(成形品の板状部の第2面に対応する面)から第1面対応面の側に離隔している場合が含まれる。
【0017】
以上のことは、他の請求項に係る発明においても同様である。
【0018】
「前記キャビティのうちの第1面対応面とは反対側の部位」には、「前記キャビティのうちの第2面対応面(キャビティのうちの板状部の第2面に対応する面)」や「前記キャビティのうちの突出部に対応する部分」等がある。「突出部に対応する部分」としては、「突出部の先端に対応する部分」が代表例であるが、それに限らず、「突出部の側部に対応する部分」もあり得る。
【0019】
この発明の成形方法では、次の作用効果が得られる。
まず、プレス段階において、板状部の肉厚のうちの一部に対応する分量の基材が加熱された被加熱基材が、成形装置のキャビティにおいてプレスされることによって、板状部の肉厚のうちの一部に該当するプレス成形部が形成される。
次に、射出補充段階において、成形装置のキャビティが成形品に対応する状態で、プレス成形部が、キャビティのうちの第1面対応面(板状部のうちの第1面に対応する面)の側に位置づけられ、キャビティ内の板状部の肉厚のうちの残部及び突出部に該当する部分について、溶融状態の熱可塑性樹脂が射出され補充されることによって、射出補充成形部が形成される。
こうして、板状部及び突出部を有する成形品が形成される。
【0020】
このように、この発明の成形方法では、板状部の肉厚のうちの一部(「一部」の一例として「大半部分」)が、基材(繊維を含有する熱可塑性樹脂からなる)によって形成される(プレス成形部として形成される)とともに、板状部の肉厚のうちの残部及び突出部に該当する部分が、射出される熱可塑性樹脂によって補充される(射出補充成形部として形成される)。
その際、射出補充段階においては、プレス成形部がキャビティのうちの第1面対応面の側に位置づけられるために、プレス成形部とキャビティのうちの第2面対応面との間に溶融樹脂の入り込む余地が生じ、当該余地に溶融樹脂が充填されることによって、板状部の肉厚のうちの第2面の側の一部と突出部とが一体的に射出補充成形部として形成される。 このため、板状部(正確には、そのうち、肉厚の一部がプレス成形部として形成され、残部が射出補充成形部として形成される部分)の大きさの結合面において、プレス成形部と射出補充成形部とが結合される。
こうして、両者の結合強度が高いものとなり、成形品の強度が高いものとなる。
【0021】
さらに、この発明の成形方法では、次の作用効果
も得られる。
すなわち、射出補充段階において、プレス成形部がキャビティのうちの第1面対応面の側に位置づけられる必要があるところ、それが、射出補充段階において射出される熱可塑性樹脂によってなされるため、それを行う機構を別個設ける必要性が回避される。
【0022】
請求項2に係る発明は、
繊維を含有する熱可塑性樹脂からなる基材を用いて、相反する第1面及び第2面を有する板状部、前記板状部に連なる連設部、及び、前記板状部の前記第2面から突出する突出部を有する成形品を製造する方法であって、前記板状部の肉厚のうちの一部及び前記連設部のうちの当該板状部の側の一部の肉厚のうちの一部に対応する分量の前記基材が加熱された被加熱基材を成形装置のキャビティにおいてプレスすることによって、前記板状部の肉厚のうちの一部及び前記連設部のうちの当該板状部の側の一部の肉厚のうちの一部に該当するプレス成形部を形成するプレス段階と、前記成形装置の前記キャビティが前記成形品に対応する状態で、前記キャビティのうちの前記板状部の前記第1面に対応する第1面対応面であって重力に基づいて前記プレス成形部との間に隙間がある面とは反対側の部位を通して当該キャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を射出することによって、当該溶融状態の熱可塑性樹脂によって前記プレス成形部を重力に抗して当該キャビティのうちの前記第1面対応面の側に位置づけ、当該キャビティ内の前記板状部の肉厚のうちの残部及び前記連設部のうちの当該板状部の側の一部の肉厚のうちの残部、前記連設部のうちの前記板状部とは反対側の残部、並びに、前記突出部に該当する部分について、当該溶融状態の熱可塑性樹脂を補充することによって、射出補充成形部を形成する射出補充段階とを有する、成形方法である。
【0023】
「前記連設部のうちの前記板状部の側の一部の肉厚のうちの一部」の代表例として、「前記連設部のうちの前記板状部の側の一部の肉厚のうちの大半」がある。
【0024】
この発明の成形方法では、請求項1に係る発明の成形方法の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の成形方法では、板状部の肉厚の一部とともに、板状部に連なる連設部のうちの当該板状部の一部の肉厚の一部がプレス成形部として形成され、板状部及び連設部のうちの当該板状部の側の一部の肉厚のうちの残部、並びに、連設部のうちの板状部とは反対側の残部及び突出部が射出補充部成形部として形成される。
こうして、この発明の成形方法では、連設部が板状部に連なる成形品が形成される。
【0025】
その際、この発明の成形方法では、連設部については、そのうちの板状部の側の一部の肉厚のうちの一部はプレス成形部として形成されるが、連設部のうちの板状部とは反対側の部分(残部)は、すべての肉厚にわたって射出補充成形部として形成される。
このため、基材を余分に使用することが回避され、低コスト化が図られる。
すなわち、連設部のすべて(すなわち、板状部とは反対側の部分を含む)の肉厚の一部もプレス成形部として形成しようとすると、所望の大きさよりも若干大きいプレス成形部を形成するのに対応した大きさの基材を使用して成形した後に、余分な縁端部を削除することとなるが、そのようなことが回避されるのである。
【0026】
請求項1〜請求項
2に係る発明をさらに改良した発明として、次の発明が考えられる。
【0027】
第1の改良発明は、請求項1〜請求項
2に係る発明の成形方法であって、前記射出補充段階において射出される熱可塑性樹脂は、前記基材を形成する熱可塑性樹脂と同種の樹脂である、成形方法である。
【0028】
すなわち、基材を形成する熱可塑性樹脂がポリプロピレンであれば、溶融樹脂の熱可塑性樹脂もポリプロピレンである。基材を形成する熱可塑性樹脂が他のものの場合は、溶融樹脂の熱可塑性樹脂も当該他の樹脂である。
【0029】
この発明の成形方法では、請求項1〜請求項
2に係る発明の成形方法の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の成形方法では、基材によって形成されるプレス成形部と、熱可塑性樹脂によって形成される射出補充成形部とが、同種の樹脂によって形成されるため、成形品全体として均一性を有する品質が得られることとなる。
【0030】
第2の改良発明は、請求項1〜請求項
2に係る発明又は上記第1の改良発明の成形方法であって、前記射出補充段階において射出される熱可塑性樹脂は、繊維を含有するものである、成形方法である。
【0031】
射出補充段階において射出される「熱可塑性樹脂」に含有される「繊維」としては、前述の「基材」に含有される「繊維」と同様に、ガラス繊維,アルミナ繊維,炭素繊維,有機繊維等、又は、それらを複数種類混合したものがある。
その「繊維」は、短繊維又は長繊維であり、好ましくは短繊維である。繊維の長さが短い方が、熱可塑性樹脂とともに射出するのに適しているからである。
なお、「短繊維」とは約2mm以下の繊維であり、「長繊維」とは約3mm〜15mmの繊維である。
【0032】
この発明の成形方法では、請求項1〜請求項
2に係る発明又は上記第1の改良発明の成形方法の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の成形方法では、射出補充段階において射出される熱可塑性樹脂には繊維が含有されているので、それによって形成される部分(すなわち、射出補充成形部)の強度も高くなり、成形品全体としての強度が向上することとなる。
【0033】
第3の改良発明は、上記第2の改良発明の成形方法であって、前記射出補充段階において射出される熱可塑性樹脂に含有される繊維は、前記基材に含有される繊維と同種の繊維である、成形方法である。
【0034】
すなわち、基材に含有される繊維がガラス繊維であれば、溶融樹脂に含有される繊維もガラス繊維である。基材に含有される繊維が他のものの場合は、溶融樹脂に含有される繊維も当該他の繊維である。
【0035】
この発明の成形方法では、上記第2の改良発明の成形方法の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の成形方法では、基材によって形成されるプレス成形部に含有される繊維と、熱可塑性樹脂によって形成される射出補充成形部に含有される繊維とが同種であるため、成形品全体として均一性を有する品質が得られることとなる。
【0036】
請求項3に係る発明は、繊維を含有する熱可塑性樹脂からなる基材を用いて、相反する第1面及び第2面を有する板状部及び当該第2面から突出する突出部を有する成形品を製造する装置であって、開閉可能であるとともに、その閉状態として、そのキャビティが前記成形品に対応する成形品対応閉状態と、前記板状部
の肉厚の一部及び前記連設部の肉厚の一部に対応する肉厚一部対応閉状態とになり得る型であって、そのキャビティが前記肉厚一部対応閉状態にある状態で、前記基材が加熱された被加熱基材を当該キャビティにおいてプレスして
前記板状部の肉厚のうちの一部に該当するプレス成形部を形成する型と、前記キャビティが
成形品対応閉状態にある状態で、
前記キャビティのうちの前記板状部の前記第1面に対応する第1面対応面であって重力に基づいて前記プレス成形部との間に隙間がある面とは反対側の部位を通して当該キャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を射出することによって、当該溶融状態の熱可塑性樹脂によって前記プレス成形部を重力に抗して当該キャビティのうちの前記第1面対応面の側に位置づけ、当該キャビティ内の前記板状部の肉厚のうちの残部及び前記突出部に該当する部分について、当該溶融状態の熱可塑性樹脂を補充する射出機構とを有する、成形装置である。
【0037】
この発明の成形装置では、請求項
1に係る発明(その改良発明を含む)を容易に実現することができ、その発明の作用効果が確実に得られる。
【0038】
請求項4に係る発明は、
繊維を含有する熱可塑性樹脂からなる基材を用いて、相反する第1面及び第2面を有する板状部、前記板状部に連なる連設部、及び、前記板状部の前記第2面から突出する突出部を有する成形品を製造する装置であって、開閉可能であるとともに、その閉状態として、そのキャビティが前記成形品に対応する成形品対応閉状態と、前記板状部の肉厚の一部に対応する肉厚一部対応閉状態とになり得る型であって、そのキャビティが前記肉厚一部対応閉状態にある状態で、前記基材が加熱された被加熱基材を当該キャビティにおいてプレスして前記板状部の肉厚のうちの一部及び前記連設部のうちの当該板状部の側の一部の肉厚のうちの一部に該当するプレス成形部を形成する型と、前記キャビティが成形品対応閉状態にある状態で、前記キャビティのうちの前記板状部の前記第1面に対応する第1面対応面であって重力に基づいて前記プレス成形部との間に隙間がある面とは反対側の部位を通して当該キャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を射出することによって、当該溶融状態の熱可塑性樹脂によって前記プレス成形部を重力に抗して当該キャビティのうちの前記第1面対応面の側に位置づけ、当該キャビティ内の前記板状部の肉厚のうちの残部及び前記連設部のうちの当該板状部の側の一部の肉厚のうちの残部、前記連設部のうちの前記板状部とは反対側の残部、並びに、前記突出部に該当する部分について、当該溶融状態の熱可塑性樹脂を補充する射出機構とを有する、成形装置である。
【0039】
この発明の成形装置では、請求項
2に係る発明(その改良発明を含む)を容易に実現することができ、その発明の作用効果が確実に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[実施例]
次に、本発明の
一実施例について、
図1〜
図4Fに基づいて説明する。
図1に示すように、この成形装置は、型として、下型10,上型20を有している。
上型20は、昇降機構(図示省略)によって、実線で示す上昇位置(開位置)と、二点鎖線で示す下降位置(閉位置)との間を上下動可能であり、両型10,20は開閉可能である(なお、これとは逆に、又はこれとともに、下型10が上下動してもよい)。
上型20が下降位置(閉位置)に位置する状態で、この成形装置(両型10,20)は閉状態となり、両型10,20間にはキャビティ30が形成される。
【0042】
この成形装置によって、成形品100(
図2)が製造される。
成形品100の形状に対応して、下型10の型面(符号省略)は凸状をしており、上型20の型面(符号省略)は凹状をしている。
【0043】
図2に示すように、この成形装置によって製造される成形品100は、次の形状を有している。
その成形品100は、基本的形状として、平板部110(板状部),周壁部120(連設部)を有している。
平板部110は、ほぼ長方形状の平板状をしている。平板部110は、相反するおもて面110a(第1面)及び裏面110b(第2面)を有している。
周壁部120は、平板部110の周縁において斜めに延びている。すなわち、周壁部120は、平板部110の裏側(裏面110bの側)に延びるとともに、相互に離隔する方向に延びている。周壁部120も、相反するおもて面120a(第1面)及び裏面120b(第2面)を有している。
【0044】
なお、平板部110・周壁部120のおもて面110a・120a,裏面110b・120bを区別するため、各々、平板部おもて面110a(板状部第1面),平板部裏面110b(板状部第2面),周壁部おもて面120a(連設部第1面),周壁部裏面120b(連設部第2面)ともいうこととする。
【0045】
平板部110の裏面110bには、複数のリブ112(突出部)が形成されている。各リブ112は、平板部110の縦方向又は横方向に沿って延びるとともに、平板部110に垂直に延びている。
周壁部120には縁部には、フランジ124が形成されている。フランジ124の幅は一律ではなく、凹部127(幅狭部)及び凸部126(幅広部)がある。凸部126には孔128が形成されている。
【0046】
図3に示すように、成形品100は、プレス成形部101と、射出補充成形部102とからなっている。
その一例として、プレス成形部101は、平板部110の大きさ(面方向の大きさ)のすべてのうちのおもて面110aの側の肉厚の大半と、周壁部120の基端部側略半部(その基端部の側、すなわち、平板部110の側の一部としての略半部)のうちのおもて面120aの側の肉厚の大半とからなっている。
その他の部分が、射出補充成形部102である。すなわち、射出補充成形部102は、平板部110の大きさ(面方向の大きさ)のすべてのうちの肉厚の残部(裏面110b側の肉厚の一部),周壁部120の基端部側略半部のうちの肉厚の残部(裏面120b側の肉厚の一部)、及び、周壁部120の先端部側略半部(その先端部の側、すなわち、平板部110とは反対側の一部(残部)としての略半部),フランジ124,リブ112である。
【0047】
図1に基づいて前述したように、上型20が下降位置(閉位置)に位置する状態で、両型10,20は閉状態になるのであるが、詳細に述べると、その「下降位置」及び「閉状態」には所定の幅がある。
すなわち、
図4C〜
図4Eに示すように、上型20の下降位置の1つ(基本的な下降位置)として、成形品対応下降位置があり、それに対応して、この成形装置(両型10,20)の閉状態の1つ(基本的な閉状態)として、成形品対応閉状態がある。これは、キャビティ30の大きさが成形品100(
図2)に対応する状態である。
図4Bに示すように、上型20の下降位置の他の1つとして、肉厚一部対応下降位置があり、それに対応して、この成形装置(両型10,20)の閉状態の1つとして、肉厚一部対応閉状態がある。これは、上型20が成形品対応下降位置よりもさらに下降した状態であり(すなわち、上型20の肉厚一部対応下降位置は、射出成形下降位置よりもさらに低い)、キャビティ30の大きさが成形品100(
図2)のプレス成形部101(
図3)に対応する状態である。
【0048】
図4Cに示すように、成形品対応閉状態におけるキャビティ30は、成形品100(
図2)の形状に対応しており(このことは前述)、その基本的形状として、平板部形成空間31,周壁部形成空間32を有している。平板部形成空間31,周壁部形成空間32は、成形品100(
図2)の平板部110,周壁部120に対応している。
周壁部形成空間32にはフランジ形成空間34が伴っている。フランジ形成空間34は、成形品100(
図2)のフランジ124に対応している。
【0049】
同じく
図4Cに示すように、キャビティ30(上型20の型面)のうち成形品100(
図2)の平板部110のおもて面110aに対応する面が、おもて面対応面31a(第1面対応面)であり、キャビティ30(下型10の型面)のうち成形品100(
図2)の平板部110の裏面110bに対応する面が、裏面対応面31b(第2面対応面)である。 また、キャビティ30(上型20の型面)のうち成形品100(
図2)の周壁部120のおもて面120aに対応する面が、おもて面対応面32a(第1面対応面)であり、キャビティ30(下型10の型面)のうち成形品100(
図2)の周壁部120の裏面120bに対応する面が、裏面対応面32b(第2面対応面)である。
これらを区別するため、各々、平板部おもて面対応面31a(板状部第1面対応面),平板部裏面対応面31b(板状部第2面対応面),周壁部おもて面対応面32a(連設部第1面対応面),周壁部裏面対応面32b(連設部第2面対応面)ともいうこととする。
【0050】
同じく
図4Cに示すように、さらに、キャビティ30(下型10)は、溝部12(リブ形成空間)を有している。溝部12は、リブ112(
図2)に対応している。
下型10には、孔128(
図2)に対応して、凸部材18が設けられている。凸部材18は、抜け止め機構(図示省略)によって抜け止めされつつ、圧縮スプリング19によって上方に付勢されている。
【0051】
図1及び
図4Aに示すように、下型10には、射出機構40が設けられている。
すなわち、下型10には、溶融樹脂流路41が形成されている。溶融樹脂流路41の上流端には、溶融樹脂供給装置45が接続されている。溶融樹脂流路41は複数に分岐し、それらの下流端は、溝部12(その先端),フランジ形成空間34(
図4C参照)に連通している。
なお、溶融樹脂流路41には、当該溶融樹脂流路41の下流端を開閉する開閉機構(図示省略)が設けられている。
また、溶融樹脂流路41にはヒータ(図示省略)が伴っており、当該溶融樹脂流路41内の溶融樹脂が溶融状態に維持される。
【0052】
次に、本発明の実施例の成形方法(上述の成形装置の使用方法・作用)について、
図4A〜
図4Fに基づいて説明する。
【0053】
まず、所定の分量の基材P(
図4A参照)が用意される。基材P(プリプレグ)は、多数(無数)の連続繊維を含有する熱可塑性樹脂であり、長方形状の板状をしている。
無数の連続繊維は、基材Pにおいて、基材Pの縦方向・横方向・厚み方向・各種の斜め方向と、種々の方向に連続的に延びている。
「所定の分量」とは、前述した成形品100を形成する場合には、プレス成形部101(
図3)を形成するのに対応した分量である。すなわち、平板部110の大きさ(面方向の大きさ)のすべてのうちの肉厚の大半、及び、周壁部120の基端部側略半部のうちの肉厚の大半を形成するのに対応した分量である。
なお、この実施例においては、1枚の基材Pが使用される態様が図示されているが、複数枚の基材Pが重ねられて使用されてもよい。
【0054】
次に、その基材Pが加熱される。こうして、基材Pは、当該基材Pを形成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度とされる。
【0055】
次に、
図4Aに示すように、その基材(被加熱基材)Pが、開状態の成形装置(下型10)にセットされる。下型10・上型20は、基材Pの融点よりも30〜100℃程度低い温度にされている(なお、両型10,20は、当初は基材Pの融点よりも高い温度にされており、次述のように上型20が下降して両型10,20が肉厚一部対応閉状態とされ、その状態が維持されている際に、上述のような融点より低い温度にされてもよい)。
【0056】
次に、
図4Bに示すように、上型20が肉厚一部対応閉位置まで下降し、この成形装置(両型10,20)は肉厚一部対応閉状態となる。こうして、基材Pは、両型10,20によってプレスされる。
それによって、基材Pは、圧縮されて肉厚が薄くなるとともに、その周縁部が周壁部形成空間32に沿って下方にたわむ。しかしながら、基材Pは、連続繊維を含有するため、溝部12にはほとんど進入しない。
こうして、キャビティ30内において、プレス成形部101(
図3)が形成される。すなわち、最終的な成形品100(
図2)のうち、平板部110及び周壁部120の基端部側略半部のうちの肉厚の大半が一体的に形成される。
なお、その際、凸部材18は、上型20に当接しつつ、圧縮スプリング19の付勢力に抗して下降する。
【0057】
次に、
図4Cに示すように、上型20が若干上昇し、成形品対応下降位置に位置する。こうして、この成形装置(両型10,20)は、成形品対応閉状態となる。
この成形品対応閉状態においては、前述の肉厚一部対応閉状態よりも、キャビティ30の高さが若干高いため、プレス成形部101とキャビティ30との間には、キャビティ30の高さ方向において、次のように隙間が生じている。
プレス成形部101は、重力に基づいて、キャビティ30内において最も下降した位置にあり、下型10(その型面)と接触している。すなわち、プレス成形部101(その下面)は、キャビティ30の平板部裏面対応面31b,周壁部裏面対応面32bに当接している。
こうして、プレス成形部101(その上面)と、上型20(その型面)(すなわち、キャビティ30の平板部おもて面対応面31a,周壁部おもて面対応面32a)との間に、隙間が生じている。
なお、その際、凸部材18は、圧縮スプリング19の上方への付勢力に基づいて、それまでよりも上昇し、引き続き、上型20に当接している。
【0058】
次に、
図4Dに示すように、この成形装置が成形品対応閉状態に維持されつつ、キャビティ30(
図4C参照)に対して、溶融状態の熱可塑性樹脂(溶融樹脂)Mが射出される。
すなわち、溶融樹脂供給装置45から溶融樹脂Mが供給され、その溶融樹脂Mは溶融樹脂流路41を通って、キャビティ30内に流入する。
その溶融樹脂Mの圧力によって、プレス成形部101は、重力に抗してキャビティ30内において上昇し、プレス成形部101(その上面)は、上型20(その型面)に接触する。すなわち、プレス成形部101(その上面)は、キャビティ30の平板部おもて面対応面31a,周壁部おもて面対応面32aに当接する。
これによって、プレス成形部101とキャビティ30の平板部裏面対応面31b,周壁部裏面対応面32bとの間に、溶融樹脂Mの入り込む余地が生じる。
【0059】
こうして、キャビティ30内においてプレス成形部101が上昇しつつ、キャビティ30内におけるプレス成形部101が存在しない空間(溶融樹脂Mが入り込む余地)に、溶融樹脂Mが充填される。
すなわち、溶融樹脂Mは、平板部形成空間31(
図4C)の一部(平板部形成空間31のうちの平板部裏面対応面31bの側の部分),周壁部形成空間32(
図4C)の一部(周壁部形成空間32のうちの基端部側略半部のうちの周壁部裏面対応面32bの側の部分,周壁部形成空間32のうちの先端部側略半部),各溝部12,フランジ形成空間34(いずれも
図4C)に充填される。
【0060】
溶融樹脂Mは、繊維を含有する熱可塑性樹脂である。
その熱可塑性樹脂は、基材Pを形成する熱可塑性樹脂と同種の樹脂である。すなわち、基材Pを形成する熱可塑性樹脂がポリプロピレンであれば、溶融樹脂Mの熱可塑性樹脂もポリプロピレンである。
また、溶融樹脂Mに含有される繊維は、基材Pに含有される連続繊維と同種の繊維である。すなわち、基材Pに含有される繊維がガラス繊維であれば、溶融樹脂Mに含有される繊維もガラス繊維である。ただし、基材Pに含有される繊維は連続繊維であるが(このことは前述)、溶融樹脂Mに含有される繊維は連続繊維ではなく、非連続繊維であり、好ましくは短繊維である。「短繊維」とは、約2mm以下の長さの繊維である。
【0061】
上述のようにして射出され充填された溶融樹脂Mが冷却され固化することによって、
図4Eに示すように、射出補充成形部102(
図3)が形成される。
すなわち、
図3に示すように、平板部110のうちの裏面110bの側の肉厚の一部,周壁部120の基端部側略半部のうちの裏面120bの側の肉厚の一部,周壁部120の先端部側略半部,フランジ124,リブ112が一体的に形成される。
【0062】
そして、上述のように射出・充填された溶融樹脂Mが冷却固化して射出補充成形部102が形成される際に、その射出補充成形部102は、プレス成形部101と結合する。
すなわち、
図2及び
図3に示すように、平板部110においては、そのおもて面110aの側の肉厚の大半(プレス成形部101)と、その裏面110bの側の肉厚の残部(射出補充成形部102)とが結合する(正確には、その結合によって平板部110が形成される)。
また、周壁部120においては、その基端部側略半部のうちのおもて面120aの側の肉厚の大半(プレス成形部101)と、同じくその基端部側略半部のうちの裏面120bの側の肉厚の残部及びその先端部側略半部(射出補充成形部102)とが結合する(正確には、その結合によって周壁部120が形成される)。
また、上述のように射出・充填された溶融樹脂Mが冷却固化して射出補充成形部102が形成される際に、そのフランジ124は、前述した所定の形状に形成されるとともに、フランジ124には孔128が形成される。
以上のようにして、所望の大きさ・形状の成形品100が形成される。
【0063】
次に、
図4Fに示すように、上型20が上昇して、両型10,20が開状態とされ、成形装置(下型10)から成形品100が取り出される。
こうして、所望の大きさ・形状の成形品100(
図2)が製造されるのである。
【0064】
以上のように、この製造方法では、成形品100のメインの部分である平板部110等が連続繊維を含有する基材P等によって強固に形成されるとともに、周辺的な部分は射出成形によって容易に形成される。
こうして、全体として、高い強度を有するとともに、リブ112,フランジ124(特に、その凹凸形状,孔128)等の複雑な形状を有する成形品100を容易に製造することができる。
また、プレス成形後に、余分な部分を削除する必要がなく、低コスト化が図られる。
【0065】
そして、この製造方法ではプレス成形部101と射出補充成形部102とは、大きな面積の結合面において結合する。
すなわち、プレス成形部101と射出補充成形部102とは、平板部110の大きさ、周壁部120の基端部側略半部の大きさ、及び、周壁部120の断面の大半の大きさの結合面で結合する。
こうして、プレス成形部101と射出補充成形部102との結合強度が高いものとなり、成形品100の強度がより高いものとなる。
【0066】
[参考例]
次に、本発明の参考例について、
図5〜
図6F等に基づいて説明する。この実施例は実施例の変形例であり、同一又は対応する要素については、同一又は対応する符号を付して、説明を適宜省略する。
【0067】
図5に示すように、この成形装置は、型として、上型210,下型220を有しており、実施例の成形装置を上下反転させた構造を有している。すなわち、この参考例の上型210,下型220は、各々、実施例の下型10,上型20に対応する。
そして、この参考例においても、実施例において製造される成形品100(
図2)と同一の成形品100(
図2)が製造される(ただし、上下反転した状態で製造される)。
【0068】
成形品100(上下反転状態)の形状に対応して、上型210の型面(符号省略)は凸状をしており、下型220の型面(符号省略)は凹状をしている。
下型220は、昇降機構(図示省略)によって、実線で示す下降位置(開位置)と、二点鎖線で示す上昇位置(閉位置)との間を上下動可能であり、両型210,220は開閉可能である(なお、これとは逆に、又はこれとともに、上型210が上下動してもよい)。
下型220が上昇位置(閉位置)に位置する状態で、この成形装置(両型210,220)は閉状態となり、両型210,220間にはキャビティ30が形成される。
【0069】
詳細に述べると、下型220の上昇位置(閉位置)及び両型210,220の閉状態には所定の幅がある。
すなわち、
図6C〜
図6Eに示すように、下型220の上昇位置の1つ(基本的な上昇位置)として、成形品対応上昇位置があり、それに対応して、この成形装置(両型210,220)の閉状態の1つ(基本的な閉状態)として、成形品対応閉状態がある。これは、キャビティ30の大きさが成形品100(
図2)(上下反転状態)に対応する状態である。
図6Bに示すように、下型220の上昇位置の他の1つとして、肉厚一部対応上昇位置があり、それに対応して、この成形装置(両型210,220)の閉状態の1つとして、肉厚一部対応閉状態がある。これは、下型220が成形品対応上昇位置よりもさらに上昇した状態であり(すなわち、下型220の肉厚一部対応上昇位置は、射出成形上昇位置よりもさらに高い)、キャビティ30の大きさが成形品100(
図2)のプレス成形部101(
図3)(上下反転状態)に対応する状態である。
そして、下型220の成形品対応上昇位置,肉厚一部対応上昇位置は、各々、実施例における上型20の成形品対応下降位置,肉厚一部対応下降位置に対応する。
また、両型210,220の成形品対応閉状態,肉厚一部対応閉状態は、各々、実施例における両型10,20の成形品対応閉状態,肉厚一部対応閉状態に対応する。
【0070】
図6Cに示すように、成形品対応閉状態におけるキャビティ30は、成形品100(
図2)の形状(上下反転状態の形状)に対応しており(このことは前述)、その基本的形状として、平板部形成空間31,周壁部形成空間32を有している。平板部形成空間31,周壁部形成空間32は、成形品100(
図2)の平板部110,周壁部120に対応している。
周壁部形成空間32にはフランジ形成空間34が伴っている。フランジ形成空間34は、成形品100(
図2)のフランジ124に対応している。
【0071】
さらに、キャビティ30(上型210)は、溝部12(リブ形成空間)を有している。溝部12は、リブ112(
図2)に対応している。
上型210には、孔128(
図2)に対応して、凸部材18が設けられている。凸部材18は、抜け止め機構(図示省略)によって抜け止めされつつ、圧縮スプリング19によって下方に付勢されている。
【0072】
次に、本発明の参考例の成形方法(上述の成形装置の使用方法・作用)について、
図6A〜
図6Fに基づいて説明する。
【0073】
まず、所定の分量の基材P(
図6A参照)が用意され、その基材Pが加熱される。こうして、基材Pは、当該基材Pを形成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度とされる。
【0074】
次に、
図6Aに示すように、その基材(被加熱基材)Pが、開状態の成形装置(下型220)にセットされる。上型210・下型220は、基材Pの融点よりも30〜100℃程度低い温度にされている(なお、両型210,220は、当初は基材Pの融点よりも高い温度にされており、次述のように下型220が上昇して両型210,220が肉厚一部対応閉状態とされ、その状態が維持されている際に、上述のような融点より低い温度にされてもよい)。
【0075】
次に、
図6Bに示すように、下型220が肉厚一部対応閉位置まで上昇し、この成形装置(両型210,220)は肉厚一部対応閉状態となる。こうして、基材Pは、両型210,220によってプレスされる。
それによって、基材Pは、圧縮されて肉厚が薄くなるとともに、その周縁部が周壁部形成空間32に沿って上方にたわむ。しかしながら、基材Pは、連続繊維を含有するため、溝部12にはほとんど進入しない。
こうして、キャビティ30内において、プレス成形部101(
図3)(上下反転状態)が形成される。すなわち、最終的な成形品100(
図2)のうち、平板部110及び周壁部120の基端部側略半部のうちの肉厚の大半が一体的に形成される。
なお、その際、凸部材18は、下型220に当接しつつ、圧縮スプリング19の付勢力に抗して上昇する。
【0076】
次に、
図6Cに示すように、下型220が若干下降し、成形品対応上昇位置に位置する。こうして、この成形装置(両型210,220)は、成形品対応閉状態となる。
この成形品対応閉状態においては、前述の肉厚一部対応閉状態よりも、キャビティ30の高さが若干高いため、プレス成形部101とキャビティ30との間には、キャビティ30の高さ方向において、次のように隙間が生じている。
プレス成形部101は、重力に基づいて、キャビティ30内において最も下降した位置にあり、下型220(その型面)と接触している。すなわち、プレス成形部101(その下面)は、キャビティ30の平板部おもて面対応面31a,周壁部おもて面対応面32aに当接している。
こうして、プレス成形部101(その上面)と、上型210(その型面)(すなわち、キャビティ30の平板部裏面対応面31b,周壁部裏面対応面32b)との間に、隙間が生じている。
すなわち、この参考例においては、重力に基づいて、プレス成形部101とキャビティ30の平板部裏面対応面31b,周壁部裏面対応面32bとの間には、もともと、溶融樹脂Mの入り込む余地が存在している。
【0077】
次に、
図6Dに示すように、この成形装置が成形品対応閉状態に維持されつつ、キャビティ30(
図6C参照)に対して、溶融状態の熱可塑性樹脂(溶融樹脂)Mが射出される。
すなわち、溶融樹脂供給装置45から溶融樹脂Mが供給され、その溶融樹脂Mは溶融樹脂流路41を通って、キャビティ30内に流入する。
こうして、キャビティ30内においてプレス成形部101が下降した状態のまま、キャビティ30内におけるプレス成形部101が存在しない空間(溶融樹脂Mの入り込む余地)に、溶融樹脂Mが充填される。
すなわち、溶融樹脂Mは、平板部形成空間31(
図6C)の一部(平板部形成空間31のうちの平板部裏面対応面31bの側の部分),周壁部形成空間32(
図6C)の一部(周壁部形成空間32のうちの基端部側略半部のうちの周壁部裏面対応面32bの側の部分,周壁部形成空間32のうちの先端部側略半部),各溝部12,フランジ形成空間34(いずれも
図6C)に充填される。
【0078】
上述のようにして射出され充填された溶融樹脂Mが冷却され固化することによって、
図6Eに示すように、射出補充成形部102(
図3)(上下反転状態)が形成される。
すなわち、
図3に示すように、平板部110のうちの裏面110bの側の肉厚の一部,周壁部120の基端部側略半部のうちの裏面120bの側の肉厚の一部,周壁部120の先端部側略半部,フランジ124,リブ112が一体的に形成される。
【0079】
そして、上述のように射出・充填された溶融樹脂Mが冷却固化して射出補充成形部102が形成される際に、その射出補充成形部102は、プレス成形部101と結合する。
すなわち、
図2及び
図3に示すように、平板部110においては、そのおもて面110aの側の肉厚の大半(プレス成形部101)と、その裏面110b側の肉厚の残部(射出補充成形部102)とが結合する。また、周壁部120においては、その基端部側略半部のうちのおもて面120aの側の肉厚の大半(プレス成形部101)と、同じくその基端部側略半部のうちの裏面120bの側の肉厚の残部及びその先端部側略半部(射出補充成形部102)とが結合する。
また、上述のように射出・充填された溶融樹脂Mが冷却固化して射出補充成形部102が形成される際に、そのフランジ124は、前述した所定の形状に形成されるとともに、フランジ124には孔128が形成される。
以上のようにして、所望の大きさ・形状の成形品100が形成される。
【0080】
次に、
図6Fに示すように、下型220が下降して、両型210,220が開状態とされ、成形装置(上型210)から成形品100(上下反転状態)が取り出される。
こうして、所望の大きさ・形状の成形品100(
図2)が製造されるのである。
【0081】
以上のように、この製造方法では、実施例の製造方法と同様の効果が得られるとともに、次の効果が得られる。
すなわち、この実施例では、
図6Cに示すように、プレス成形部101が形成された後であって射出補充成形部102が形成されようとする際に、プレス成形部101が重力に基づいてキャビティ30のうちの最も下降した位置に位置しており、プレス成形部101は、下型220(キャビティ30の平板部おもて面対応面31a,周壁部おもて面対応面32a)に当接している。
こうして、プレス成形部101と、上型210(キャビティ30の平板部裏面対応面31b,周壁部裏面対応面32b)との間に隙間が生じている。すなわち、キャビティ30内のうち、溶融樹脂Mが充填されようとする空間(
図6D参照)には、もともと、プレス成形部101が存在せず、隙間になっている。
このため、この実施例では、溶融樹脂Mがキャビティ30内に流入する際に、その溶融樹脂Mによってプレス成形部101がキャビティ30の平板部おもて面対応面31a,周壁部おもて面対応面32aに当接すべく移動される必要もなく、プレス成形部101と上型210(キャビティ30の平板部裏面対応面31b,周壁部裏面対応面32b)との間の隙間に、確実に溶融樹脂Mが充填される。
【0082】
なお、
上述の実施例はあくまで本発明の一実施例にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。