(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダと、シリンダ内に貯留された作動油内においてシリンダ内を摺動するピストンとを備え、作動油内をピストンに向けて移動する気泡をピストンの前で溜める気泡溜具を備え、
前記気泡溜具は、前記気泡を収容する収容空間を形成する容器を備え、
前記容器は、当該容器の収容空間と外部とを連通させる貫通孔を備え、
前記貫通孔は、前記シリンダが上下方向に延長するときに、収容空間側に開口する開口縁が、前記外部側に開口する開口縁よりも上方に位置する油圧緩衝器。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態1
図1及び
図2は、本発明に係る油圧緩衝器の一実施形態を示す二輪車のフロントフォークの断面図である。同図に示すように、フロントフォーク(油圧緩衝器)10は、アウターチューブ11を車体側に、インナーチューブ12を車輪側に配置する倒立型フロントフォークであって、車体に対し上下方向に延長するように取り付けられる。
【0013】
フロントフォーク10は、インナーチューブ12とアウターチューブ11とが互いに摺動自在に設けられる。インナーチューブ12の下端には車軸ブラケット15が取り付けられ、インナーチューブ12における底部が形成される。アウターチューブ11の上端には、キャップ13が取り付けられ、アウターチューブ11における天井部が形成される。
このフロントフォーク10の内部には、懸架スプリング33が設けられ、下端が車軸ブラケット15に着座し、キャップ13を介してアウターチューブ11に取り付けられたピストン26に上端が支持される。インナーチューブ12の内周は、上記ピストン26に対するシリンダであり、油圧緩衝器としての作動油がピストン26を過ぎて、後述の油溜室まで所定量注入されている。このピストン26の下方すなわちピストン26と懸架スプリング33との間に、作動油内をピストン26に向けて移動する気泡をピストン26の前で溜める本発明の特徴とする気泡溜具70が設けられる。
【0014】
まず、
図3を用いて気泡溜具70について説明する。
気泡溜具70は、作動油内を上方に向けて移動する気泡を溜めるものであって、下向きに開口して上記気泡を収容する収容空間を形成する容器となる下向きのカップ体70mを有する。この気泡溜具70は、上下方向に延長するシリンダ内に貯留された作動油内を摺動するピストン26の下側において、鍔部75の外周70aが上記シリンダの軸線方向に沿って移動可能に設けられる。鍔部75の外周70aは、シリンダの内周面に沿う外周面として形成され、外周70aとシリンダの内周面との間で、気泡が通過不能な隙間を形成する。例えば、隙間は、0.2mmから0.5mmの範囲で形成されると良い。
したがって、気泡溜具70は、シリンダ内のピストン側油室21Bを、上側室K1と下側室K2とに区画する。なお、以下の説明において鍔部75の外周70aは、シリンダ内周に対して、気泡が通過不能な隙間を形成するとして説明したが、この外周70aにシール部材を設けてシリンダと液密状態で摺動させるようにしても良いが、好ましくは摺動抵抗が生じないように構成すると良い。
気泡溜具70の下向きのカップ体70mは、下側室K2から上側室K1に向けて膨出して下側室K2の作動油内に含まれる気泡を溜める溜め部71より成り、この溜め部71に対応する下向きのカップ体70mの円筒壁部73側に上側室K1と下側室K2とに作動油の流通を可能にする貫通孔72が形成される。
【0015】
溜め部71は、外径がインナーチューブ12の内径よりも小さく形成された円筒壁部73と、円筒壁部73の上端側に形成された天井壁部74とにより構成される。この円筒壁部73と天井壁部74とで囲まれる溜め部71は、インナーチューブ12内において上向きに膨出する空間として形成される。下向きのカップ体70mの円筒壁部73の外周上部は、上方に向けてやや先細りとなるように形成され、下部内周がほぼ軸線に沿って立ち上がるように形成される。
この場合、溜め部71の上面は平坦面として形成され、気泡がこの部分に集められて収容されることとなる。
円筒壁部73の外周下端には、鍔部75と、貫通孔72とを備える。鍔部75は、円筒壁部73の下端外周に半径方向に突出して形成される。また、鍔部75の下側には、ワッシャ31が設けられ、このワッシャ31を介して懸架スプリング33の上端が着座する。つまり、本実施形態では、気泡溜具70は、上ばね受けとしての機能も有する。なお、ワッシャ31は、必須ではないが、気泡溜具70が回転不能に設けられた場合には、懸架スプリング33の伸縮動作にともない懸架スプリング33の上端に回転動作が生じるため、ワッシャ31を設けると良い。
【0016】
貫通孔72は、円筒壁部73に複数箇所設けられ、本例では例えば4個所、等配され、厚さ方向に貫通して上側室K1と下側室K2とに作動油の流通を可能にする。貫通孔72は、例えば、下側室K2に開口する開口縁72Bが、上側室K1に開口する開口縁72Aよりも上側に位置するように円筒壁部73の軸線に対して孔の軸心が直線状に傾斜するように設けられる。また、上側室K1に開口する開口縁72Aは、鍔部75の近傍に開口することで、多くの気泡Fを溜め部71に溜めることができる。このように貫通孔72を構成することにより、貫通孔72を通して気泡Fを上側室K1に流通させずに溜め部71の上面側に気泡Fを集めることができる。
【0017】
下向きのカップ体70mより成る気泡溜具70は、円筒壁部73の外周に沿って天井壁部74よりも上向きに柱状に延長する延長部76を備える。延長部76は、円筒壁部73の円周方向に沿って複数本設けられ、それぞれ軸線方向に傾斜するように設けられる。延長部76の上端は、ピストン26よりも下側に取り付けられる後述のバルブストッパ42Bの下面に当接する当接部77を備える。また、各延長部76間により作動油が流通する窓Mが形成される。換言すると、上向きのカップ体70nの側部に窓Mを外周方向に等配したものとなっている。
【0018】
当接部77は、複数の延長部76を連結するようにバルブストッパ42Bに当接可能な寸法の円環状に形成される。この天井壁部74、当接部77、延長部76とで窓Mを構成し、この窓Mを通じて作動油の流通を可能する。気泡溜具70は、例えば、懸架スプリング33による押圧を受圧可能な強度を有する金属や合成樹脂などで構成される。
【0019】
このようにピストン26の下側に気泡溜具70を設けることにより、フロントフォーク10の動作時には貫通孔72により上側室K1と下側室K2との作動油の流通を可能にし、フロントフォーク10の非動作時には動作時に下側室K2内において作動油に生じた気泡を溜め部71に溜めて、ピストン26の下部への気泡溜りを防止することができる。このように、ピストン26に気泡Fを通過させずに作動油のみを流通させることで、フロントフォーク10の初動時に生じる異音の発生を防止できる。
【0020】
上記貫通孔72は、より好ましくは、フロントフォーク10を車体に取り付けたとき、すなわち、気泡溜具70の軸線を傾斜させたときに、上記貫通孔72の下側室K2に開口する開口縁72Bの下端が、上側室K1に開口する開口縁72Aの上端よりも上側に位置するように形成すると良い。このように構成することで、フロントフォーク10が車体に傾斜して設けられても確実に溜め部71に気泡Fを溜めることができる。
【0021】
以下、
図1乃至
図3を用いてフロントフォーク10の各構成について詳述する。
インナーチューブ12は、両端が開口する所定肉厚の円筒状の筒体であって、車軸と取り付ける車軸ブラケット15と、ロッドガイドケース19とを備える。
インナーチューブ12の外周面の上端側には、アウターチューブ11の内周面と摺動自在にするスライドブッシュ12Aが取り付けられる。スライドブッシュ12Aは、円筒状に形成された軸受であって、インナーチューブ12の外周において外径よりも小径に形成された凹部に嵌合され、インナーチューブ12に取り付けられた状態において、外周がインナーチューブ12の外周よりも突出するように構成される。
【0022】
インナーチューブ12の内周は、軸線方向に沿って均一な内径で形成され、ピストン26が摺動するためのシリンダとして構成される。
インナーチューブ12の下端には、インナーチューブ12の底部を構成する車軸ブラケット15が取り付けられる。
【0023】
車軸ブラケット15は、一端側が開口する有底円筒の筒体であって、円筒部分をインナーチューブ12の下端外周に形成されたネジ部に螺合させて取り付けられる。車軸ブラケット15の底部側の内周には、インナーチューブ12との液密を維持するシール部材108が設けられる。車軸ブラケット15は、車軸を取り付ける車軸取付孔16と、懸架スプリング33の荷重を調整するばね荷重調整装置34とを備える。
【0024】
車軸取付孔16は、車軸ブラケット15の軸線と直交方向に貫通する貫通孔として車軸ブラケット15の下端側に形成される。
ばね荷重調整装置34は、車軸ブラケット15の底部に設けられ、概略、アジャストボルト101と、一対のスライダ102,109とにより構成される。
アジャストボルト101は、先端がネジ部よりも小径な軸状に延長する先端軸部101Aを有するボルトであって、ヘッド部の外周にOリングを有する。
このアジャストボルト101は、底面106よりも上方において、車軸ブラケット15の軸線に対して直交方向に筒を横断して同軸に形成された取付孔15A:15Bに回転自在に取り付けられる。取付孔15A:15Bは、一方の取付孔15Aが閉塞孔、他方の取付孔15Bが貫通孔である。取付孔15Bには、アジャストボルト101のヘッド部を収容可能とする大きさで形成される。
【0025】
アジャストボルト101は、先端軸部101Aが取付孔15Aに挿入され、ヘッド部が取付孔15Bに収容される。ヘッド部に取着されたOリングは、ヘッド部と取付孔15Bとを液密とするともに緩み止めとして機能する。この取付孔15Bの開口部側には止め輪103が係着され、アジャストボルト101の抜け止め用に設けられる。
【0026】
アジャストボルト101の中間部には、ヘッド側から順にワッシャ104、スライダ102、ナット105が挿着される。ワッシャ104は、例えば四辺形状をなし、その底辺が車軸ブラケット15の底面106に当接される。ワッシャ104の次に、スライダ102が挿着されるとともに、スライダ102にナット105を付帯させながら、ナット105がアジャストボルト101のネジ部に螺合される。ナット105は、四辺形状に形成される板状部品であって、板厚方向に貫通するネジ孔を備え、下辺を車軸ブラケット15の底面106に当接させて、回り止めされる。これにより、ナット105は、アジャストボルト101を回転させたときに共周り回転せずに、アジャストボルト101の軸線方向のみに移動する。
【0027】
スライダ102は、長手状のブロック体であって、厚さ方向にアジャストボルト101が貫通する貫通孔102Aを備える。スライダ102は、アジャストボルト101が貫通した状態において長手方向の下面が底面106に当接する。例えば、下面は平面状に形成され、上面が下面に対して所定角度直線を維持しつつ傾斜する下側斜面A1として形成されている。スライダ102には、下側斜面A1に対応する上側斜面A2を有するスライダ109が載置される。
【0028】
スライダ109は、外周がインナーチューブ内周面に沿う円柱軸体状に形成され、下面が下側斜面A1に対応するように傾斜する上側斜面A2として形成される。このスライダ109は、上側斜面A2を下側斜面A1に当接した状態において、下端がアジャストボルト101よりも下方に達し、アジャストボルト101を跨ぐU字部が形成される。スライダ109の上面は、上側斜面A2に対して傾斜し、車軸ブラケット15の底面と平行となるように形成される。この上面には、懸架スプリング33の下端が着座する下ばね受け32が設けられる。
【0029】
下ばね受け32は、有底円筒のカップ状に形成され、円筒部32Aの外周がインナーチューブ12の内周に接触する大きさを有し、底部32Bがスライダ109の上面に一体に形成される。
【0030】
したがって、車軸ブラケット15は、この車軸ブラケット15の内周とインナーチューブ12の下端部の外周との間にシール部材108を介挿させてインナーチューブ12に螺着される。このときインナーチューブ12は車軸ブラケット15の内周と下ばね受け32の円筒部32Aの間に概ね隙間なく挿着される。
【0031】
また、下ばね受け32は、底部32Bがスライダ109の上面に載置されたときに、ワッシャ104の端面に当接する。このとき、スライダ109のU字部が、アジャストボルト101の中間部を挟むことによって車軸ブラケット15の中心軸に対して回り止めされる。下ばね受け32は、車軸ブラケット15の内側底部の段差部15Cの上に設けられたワッシャ107によってインナーチューブ12の先端部が支持される。また、ワッシャ107には、下ばね受け32の底部32Bの外周側の底面32Cが当接し、懸架スプリング33の動作時の脱落を防止する。
【0032】
上記構成のばね荷重調整装置34によれば、フロントフォーク10を組上げた状態で、露出するアジャストボルト101を螺動すると、下ばね受け32と一体のスライダ109の上側斜面A2とスライダ102の下側斜面A1を介して、下ばね受け32がインナーチューブ12の内周に摺接して昇降する。下ばね受け32は、後述するピストンロッド23側の上ばね受けとしての気泡溜具70との間で、懸架スプリング33の初期長さを調整することにより、懸架スプリング33のばね荷重の調整を可能とする。
【0033】
なお、ばね荷重調整装置34にあっては、スライダ102に直にネジ部(ナット部)を設け、又はスライダ102にナットを嵌合固定する等により、スライダ102と分離されるナット105を不要とし、部品削減することもできる。
【0034】
インナーチューブ12の内部には、有底筒状のロッドガイドケース19が設けられる。
ロッドガイドケース19は、インナーチューブ12の上端側に取着される筒状部19Aと、この筒状部19Aの底部を構成する隔壁部19Bとからなる。
筒状部19Aは、上端側の外周にネジ部を有し、インナーチューブ12の上端側内周に螺着され、インナーチューブ12の上端面よりも上側に突き出る突出上端部と上端側ネジ部の境界の外周段差面をインナーチューブ12の上端面に突き当てるようにして両者が一体に固定化される。突出上端部の外周面には、アウターチューブ11の内周面との液密状態を維持するとともに摺動を可能にするシール部材20が設けられる。
また、筒状部19Aの上端側ネジ部より下側の部分は、インナーチューブ12の内部に挿入されたときに、インナーチューブ12の内周面との間に間隙を形成する。この隙間は、後述するピストンロッド側油室21Aと連続する空間である。
【0035】
筒状部19Aの隔壁部19B側には、所定寸法の口径で厚さ方向に貫通する貫通孔として微小流路64が設けられる。
この微小流路64は、伸側行程でピストンロッド側油室21Aの油を油溜室22へ流すための体積補償流路であって、周方向に少なくとも1ヵ所以上設けられる。
【0036】
隔壁部19Bは、ロッドガイドケース19の下端を閉塞するように形成される底壁であって、インナーチューブ12の内部に作動油室21を区画するとともに、隔壁部19Bの上部に油溜室22を区画する。油溜室22の中でその下側領域が油室22A、上側領域が空気室22Bである。空気室22Bは、フロントフォーク10における空気ばねとなる。なお、同図において、Lは油面である。
【0037】
隔壁部19Bには、作動油室21と油溜室22との間で油を給排可能にする給排手段が設けられる。給排手段は、圧側行程では油溜室22からピストンロッド側油室21Aへの油の流れを許容し、伸側行程ではピストンロッド側油室21Aから油溜室22への油の流れを阻止するチェック弁60が設けられる。
【0038】
チェック弁60は、ロッドガイドケース19の隔壁部19Bをインナーチューブ12の軸心と同軸に厚さ方向に貫通する円孔として形成されるバルブ室61に設けられる。
バルブ室61は、バルブ室61の内周面が上端側から階段状に拡径された段差部61Aに形成される。このバルブ室61にチェック弁60とバックアップスプリング62と、スプリングシート51と、ストッパリング51Aとが収容される。チェック弁60は、外周がフランジ状に形成される板状の環状部品であって、フランジ部が段差部61Aと衝合することで、バルブ室61の開口を閉塞可能にする。チェック弁60のフランジ部は、例えば、段差部61Aとスプリングシート51の間隔よりも薄く形成される。このチェック弁60の内周には、ピストンロッド23を摺動自在に支持する円筒状のブッシュ63が圧入され、ブッシュ63を貫通するピストンロッド23の外周に沿って、バルブ室61の内周を上下変位可能に設けられる。
【0039】
チェック弁60の下側には、バックアップスプリング62が設けられ、さらにバックアップスプリング62の下側に、バックアップスプリング62が着座するスプリングシート51が設けられる。バックアップスプリング62は、皿ばね状をなし、内周側若しくは外周側において周方向の複数ヵ所でチェック弁60のフランジ部の下端面に当接する。
スプリングシート51は、外周が半径方向に凹凸するような花弁状に形成され、この外周の凹凸部分を介して作動油が流通可能に構成される。
ストッパリング51Aは、バルブ室61の段差部61Aよりも下側において半径方向に窪む溝に嵌着されて、スプリングシート51を下側から支持する。
【0040】
すなわち、給排手段は、隔壁部19Bに形成されたバルブ室61に、チェック弁60、バックアップスプリング62、スプリングシート51の順に収容し、バックアップスプリング62をやや縮めた状態でストッパリング51Aを取り付けることで構成される。これにより、チェック弁60の外周と、バルブ室61との内周との間に、油溜室22からピストンロッド側油室21Aへの油の流れを許容する流路が形成される。
【0041】
上記給排手段は、次のように動作する。
圧側行程では、チェック弁60は、インナーチューブ12に進入するピストンロッド23の移動にともなって下方に移動し、スプリングシート51の側に変位するとともに、段差部61Aとの間に隙間を形成する。これにより、油溜室22の作動油が、チェック弁60の外周と段差部61Aとの隙間を通ってピストンロッド側油室21Aへ流入可能となる。
また、伸側行程では、チェック弁60は、インナーチューブ12から退出するピストンロッド23の移動にともなって上方に移動し、段差部61Aに押し付けられて、チェック弁60の外周とバルブ室61の内周との間の隙間を閉じ、ピストンロッド側油室21Aの作動油が圧側行程の逆経路で油溜室22へ排出されることを阻止する。
【0042】
アウターチューブ11は、下端開口部の内周にガイドブッシュ11Aと、オイルシール11Bと、ダストシール11Cとを備える。アウターチューブ11の内周と、インナーチューブ12の外周との間には、互いに摺動を自在とするガイドブッシュ11A、12Aにて区画される環状油室17が形成される。この環状油室17には、上述したインナーチューブ12の内外に貫通する油孔28を介して、ピストンロッド側油室21Aと常時連通し、作動油が充填される。
【0043】
環状油室17は、アウターチューブ11の内周とインナーチューブ12の外周とで形成される環状隙間からなり、この断面積をS1とした場合、ピストンロッド23の断面積(外周に囲まれる領域の面積)S2より大きくなるように形成される。例えば、S1>S2、若しくはS1≧S2となるように設定される。
【0044】
アウターチューブ11の上端開口部には、キャップ13が液密に螺着される。このキャップ13には、摺動するピストン26を固定するためのピストンロッド23が取り付けられる。
ピストンロッド23は、所定長さの中空円筒体からなり、キャップ13の中心部の下端部に螺着して設けられた取付カラー24に一端側を螺着させた上で、このピストンロッド23のネジ部に螺合するロックナット24Aを取付カラー24に向けて締め付けることでキャップ13に固定される。ピストンロッド23は、キャップ13に固定された状態において、先端が隔壁部19Bよりも下側に貫通する。
【0045】
ピストンロッド23の先端には、ピストンボルト25が設けられ、このピストンボルト25にピストン26が固定される。
ピストン26は、外周にインナーチューブ内周面と摺動するピストンリング26Aを備え、ピストンロッド23が収容されるピストンロッド側油室21Aと、ピストンロッド23が収容されないピストン側油室21Bとに区画する。
【0046】
このピストン26は、減衰力を発生させる減衰力発生装置を備える。
減衰力発生装置は、フロントフォーク10の圧縮時に作動油をピストン側油室21Bからピストンロッド側油室21Aに流通させる圧側流路41と、フロントフォーク10の伸長時に作動油をピストンロッド側油室21Aからピストン側油室21Bに作動油を流通させる伸側流路42とを備える。圧側流路41と伸側流路42とは、ピストン26の厚さ方向に貫通する貫通孔としてそれぞれ異なる位置に形成される。
【0047】
圧側流路41は、バルブストッパ41Bにバックアップされる圧側ディスクバルブ41A(圧側減衰バルブ)により開閉される。
伸側流路42は、バルブストッパ42Bにバックアップされる伸側ディスクバルブ42A(伸側減衰バルブ)により開閉される。なお、バルブストッパ41B、圧側ディスクバルブ41A、ピストン26、伸側ディスクバルブ42A、バルブストッパ42Bは、ピストンボルト25に挿着されるバルブ組立体40を構成し、ピストンボルト25に螺着されるピストンナット27に挟まれて固定される。
【0048】
減衰力発生装置は、キャップ13の中心部に減衰力調整装置40Aを備える。
減衰力調整装置40Aは、ニードル弁85をピストンロッド23の中空部に挿入し、ピストンロッド23に設けたバイパス路45の開度をニードル弁85の上下動により調整することで、ピストンロッド側油室21Aと、ピストン側油室21Bとの間の作動油の流通量が調整される。なお、バイパス路45とは、ピストン26の上記圧側流路41及び伸側流路42を迂回して、ピストンロッド側油室21Aとピストン側油室21Bとに通じる流路である。
【0049】
以下、減衰力調整装置40Aについて説明する。
減衰力調整装置40Aは、ピストンロッド23の中空部において、回転方向及び軸方向に移動自在に設けられた非円形のD字状断面の1本のプッシュロッド99と、プッシュロッド99を回転方向に移動させる第1調整部80と、プッシュロッド99を軸方向に移動させる第2調整部90とにより構成される。第1調整部80と第2調整部90とは、フロントフォーク10の上部において、プッシュロッド99の延長上に同軸に設けられる。
【0050】
減衰力調整装置40Aは、プッシュロッド99の非円形断面内に摺動自在に係入するニードル弁85をピストンロッド23の中空部に螺合し、第1調整部80の回転によりニードル弁85を昇降させ、このニードル弁85によりバイパス路45の開度を調整して、バイパス路45の通路抵抗による減衰力を調整可能にする。この減衰力調整装置40Aは、プッシュロッド99と軸方向に衝合するバルブ押えスプリング95により、圧側ディスクバルブ41Aを閉じ方向に付勢し、圧側ディスクバルブ41Aの撓み変形による圧側減衰力を調整可能にする。
【0051】
以下、第1調整部80と第2調整部90の構造、ニードル弁85を用いた減衰力調整構造、バルブ押えスプリング95を用いた減衰力調整構造について説明する。
第1調整部80と第2調整部90の構造は、キャップ組立体40を構成するキャップ13がOリング13Cを介してアウターチューブ11の上端開口部に液密に螺着される。キャップ13の下端開口側には取付カラー24が螺着され、この取付カラー24にピストンロッド23の上端部が螺着されてロックナット24Aで固定される。キャップ13には、当該キャップ13の下面側よりインナーチューブ1方向に突出する弾性部材13Aが設けられる。弾性部材13Aは、下面が、キャップ13に固定されるワッシャよりなる環状の受圧体13Bにより支持される。
【0052】
第1調整部80は、キャップ13の中心孔の下端開口側からOリング81を介して液密に挿着され、キャップ13の中間段差部に軸方向で係合して上方へ抜け止めされるとともに、キャップ13の下端開口側に螺着される取付カラー24の上端面の上に載置される平ワッシャ82に軸方向で衝合して下方へ抜け止めされる。結果として、上端外周の操作面80Aを用いてキャップ13に回転自在に設けられる。
【0053】
第1調整部80の平ワッシャ82に衝接する下端面には、横溝を形成しておき、この横溝に係合片83の両側突起を回転方向にて概ね遊びなく係合させる。プッシュロッド99の非円形断面(D形断面)の外周を、係合片83の中心に設けた非円形孔(D形孔)に貫通させ、回転方向には概ね遊びなく係合し、かつ軸方向には摺動自在にする。これにより、第1調整部80は、プッシュロッド99を回転方向に移動させることができる。
【0054】
第2調整部90は、第1調整部80の中心孔の下端開口側からOリング91を介して液密に挿着され、第1調整部80の中間段差部に軸方向で係合して上方へ抜け止めされる。第2調整部90の下端面は、第1調整部80の側に係合している係合片83の非円形孔を貫通しているプッシュロッド99の上端面と軸方向に隙間なく衝合する。
なお、プッシュロッド99は、後述するバルブ押えスプリング95のばね力により上向きに付勢され、その上端面を常に第2調整部90の下端面に衝合する。第2調整部90は、上端面の操作溝90Aを用いて第1調整部80に対し螺動され、プッシュロッド99を軸方向に移動させることができる。
【0055】
以下、ニードル弁85を用いた減衰力調整構造について説明する。
ピストンロッド23の中空部の下端部には、インナベース84が挿着され、ピストンロッド23の下端面とピストンボルト25の内径段差部とがインナベース84の下端フランジを挟圧固定している。なお、インナベース84はピストンロッド23の中空部に圧入されても良い。
このようにしてピストンロッド23に固定されたインナベース84の内周にニードル弁85が液密に挿入され、ニードル弁85の中間部のネジ部がピストンボルト25の内周に螺着される。ニードル弁85の上端部の非円形断面、本実施例ではD形断面をなす非円形断面部が、ピストンロッド23の中空部に挿入されているプッシュロッド99の下端部の非円形断面内に概ね遊びなく、軸方向には摺動自在に、回転方向には係合するように係入する。
【0056】
第1調整部80が、プッシュロッド99を回転方向に移動させると、プッシュロッド99と回転方向に係合しているニードル弁85がピストンボルト25に対して螺動し、ピストンボルト25に設けてあるバイパス路45の縦孔上端部の弁シートに対して進退し、バイパス路45の開度を調整することでバイパス路45の通路抵抗による圧側と伸側の減衰力を調整可能にする。
【0057】
なお、第1調整部80が、プッシュロッド99を介してニードル弁85を螺動させるとき、ニードル弁85はバルブ押えスプリング95のための押動片92の中心孔に対して空動し、バルブ押えスプリング95に対して影響を及ぼさない。
【0058】
以下、バルブ押えスプリング95による減衰力調整構造について説明する。
ピストンロッド23の下端側の直径方向の両側には、軸方向に延びる長孔状のガイド孔23Aが設けられ、押動片92の両側突起がそれらのガイド孔23Aに概ね遊びなく軸方向にスライド可能に係入されている。ピストンロッド23の中空部に挿入されているプッシュロッド99の下端面が押動片92の上面に直に衝接し、プッシュロッド99の下端部に係入しているニードル弁85の非円形断面部が押動片92の中心に設けた円形孔に軸方向移動自在に遊挿される。
【0059】
ピストンボルト25の周りには、押動片92の両端突起に下方から衝合するばね受け93と、圧側ディスクバルブ41Aの上面(背面)に衝合するバルブ押え94とが配置され、ばね受け93とバルブ押え94の間にバルブ押えスプリング95が介装される。
ばね受け93はカップ状をなし、カップの内周下端にて押動片92の両側突起と衝合し、カップの上端外周フランジにバルブ押えスプリング95を着座させる。バルブ押え94は、圧側ディスクバルブ41Aの上面の適宜の外径位置に、全周連続的(間欠的でも可)に衝接する円環状の押え部94Aと、ピストンボルト25の上端外周により上下方向へのスライドがガイドされるスライド部94Bと、ピストンロッド側油室21Aを圧側流路41、伸側流路42、バイパス路45に連通する油路94Cを備え、外周段差部にバルブ押えスプリング95を着座させる。
【0060】
第2調整部90を操作してプッシュロッド99を軸方向に移動させると、プッシュロッド99の下端面が衝接している押動片92がばね受け93を上下に移動してバルブ押えスプリング95を伸縮させて、バルブ押えスプリング95のセット荷重を調整する。これにより、バルブ押えスプリング95のセット荷重がバルブ押え94を介して圧側ディスクバルブ41Aを閉じる方向に付勢し、圧側ディスクバルブ41Aの撓み変形による圧側減衰力を調整可能にする。バルブ押え94は押え部94Aの径を交換可能に構成され、例えば、大径の押え部94Aを備えたバルブ押え94を適用して圧側ディスクバルブ41Aの外周側を押えることで、ピストン速度の低速域から減衰力を大きくする。また、小径の押え部94Aを備えたバルブ押え94を適用した場合には、圧側ディスクバルブ41Aの内周側を押えて、ピストン速度が中〜高速域での減衰力を大きくする。
【0061】
インナーチューブ12の上端側のロッドガイドケース19のピストンロッド側油室21Aに臨む下端面にストッパリング51Aを用いて固定したスプリングシート51と、ピストンロッド23に設けたストッパリング52Aに係止させたスプリングシート52との間にリバウンドスプリング53を介装してある。フロントフォーク10の最伸長時に、ロッドガイドケース19がリバウンドスプリング53をスプリングシート52との間で加圧することにより、最伸長ストロークが規制される。
【0062】
以下、フロントフォーク10の動作について説明する。
[圧側行程]
圧側行程でインナーチューブ12に進入するピストンロッド23の進入容積分の作動油がインナーチューブ12の内周のピストンロッド側油室21Aからインナーチューブ12の油孔28を介して環状油室17に移送される。このとき、環状油室17の容積増加分ΔS1(補給量)がピストンロッド23の容積増加分ΔS2より大きいから、環状油室17への油の必要補給量のうち、(ΔS1−ΔS2)の不足分が油溜室22からチェック弁60を介して補給される。
この圧側行程では、前述した通り、低速域で、ニードル弁85により開度調整されたバイパス路45の通路抵抗により圧側減衰力を発生し、中高速域で、圧側ディスクバルブ41Aの撓み変形により圧側減衰力を発生する。
【0063】
[伸側行程]
伸側行程でインナーチューブ12から退出するピストンロッド23の退出容積分の作動油が環状油室17からインナーチューブ12の油孔28を介してインナーチューブ12の内周のピストンロッド側油室21Aに移送される。このとき、環状油室17の容積減少分ΔS1(排出量)がピストンロッド23の容積減少分ΔS2より大きいことから、環状油室17からの油の排出量のうち、(ΔS1−ΔS2)の余剰分が体積補償流路を構成する微小流路64を介して油溜室22へ排出される。
【0064】
この伸側行程では、前述した通り、低速域で、ニードル弁85により開度調整されたバイパス路45の通路抵抗により伸側減衰力を発生し、中高速域で、伸側ディスクバルブ42Aの撓み変形により伸側減衰力を発生する。また、上述の微小流路64の通路抵抗による伸側減衰力も発生する。
【0065】
このような動作により、空気ばね室の空気が作動油に混ざり、小さな気泡となって含まれる。また、上記圧縮行程や伸長行程が繰り返されることで、作動油内に視認されずに含まれる空気の成分が気泡となって、作動油内を浮遊状態となる。
このようにして浮遊状態となった小さな気泡は、車両が停止して圧側行程と伸側行程などの動作がなくなると、ピストン26方向へ上昇を開始する。ピストン26よりも上側のピストンロッド側油室21Aでは、上昇してきた気泡がロッドガイドケース19の周りに集合する。
【0066】
一方、ピストン26よりも下側のピストン側油室21Bの気泡は、作動油内を徐々に上昇してピストン26へ向けて移動するが、ピストン26の下方に設けられた気泡溜具70によって気泡の上昇は遮られ、気泡溜具70の中で上向きに膨出する溜め部71に集合させられ、大きな気泡溜りを形成する。したがって、ピストン26周りの作動油にはほとんど気泡がない状態となり、走行開始時に作動油による円滑な減衰動作を開始させることができる。
なお、溜め部71に集合させられた気泡は、走行時の作動油の流れによって再び小さな気泡となって作動油内を浮遊することになる。
【0067】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、以下に示すように構成しても良い。
【0068】
実施形態2
本発明に係る気泡溜具70の他の形態として、
図4(a),(b)に示すように形成しても良い。上記実施形態1では、気泡溜具70の延長部76を柱状に形成するとともに、複数設けて、各延長部76の上端を環状に接続させて当接部77を構成したが、例えば、延長部76を円筒壁部73を天井壁部74よりも上方に延長したテーパー状の円錐壁により構成するようにしても良い。つまり、延長部76より成る上向きのカップ体70nを形成してもよい。この場合、バイパス路45とピストン側油室21Bとの流通を確保するために、上向きのカップ体70nの円錐壁を貫通するとともに水平方向に延長する貫通孔76Aを複数設けるように構成すると良い。
【0069】
実施形態3
また、本発明に係る気泡溜具70の他の形態として、
図5(a),(b)に示すように形成しても良い。すなわち、ドーム状となった下向きのカップ体70mのみにより、溜め部71を形成してもよい。すなわち、気泡溜具70を椀状の1つの椀状壁79で構成するようにしても良い。この場合、下向きのカップ体70mとしての椀状壁79の頂部にピストンボルト25の下端が貫通する大きさの孔79Aを形成しておき、この孔79Aにピストンボルト25を貫通させて、ナット27によりバルブ組立体40に取り付けるようにしても良い。この場合、気泡は溜め部71の上部の径が小径となっているので、気泡をこの上部に集め易く、この上部に一括して溜められた気泡は、フロントフォーク10の動作時に、バイパス路45を経由してピストン26よりも上方のピストンロッド側油室21Aに排出されるので、ピストン側油室21Bにおける下側室K2内に含まれる気泡を減少させることができる。
【0070】
実施形態4
また、本発明に係る気泡溜具70の他の形態として、
図6(a),(b)に示すように形成しても良い。すなわち、実施形態3で示したドーム状の下向きのカップ体70mを形成する椀状壁79の頂部を所定の面積だけ水平状を保つように下向きに窪ませてリング状を成す溜め部71をインナーチューブ12の内周面側に形成する。この窪んだ頂部近傍を平坦状に形成して当接部77とし、この中心に孔79Aを形成して、カラーPを介してピストンボルト25に取り付けるようにしても良い。このように構成しても上記実施形態3と同様な効果を得ることができる。この場合、リング状の溜め部71は気泡を集め易くなる。
【0071】
本実施形態1乃至実施形態4で示すフロントフォーク10は、減衰力調整装置40Aを備えるものとして説明したが、減衰力調整装置40Aを備えていないフロントフォークであっても、上記説明した効果を得ることができる。
なお、貫通孔は、直線状に延長するものに限らず、曲線状又は屈曲状に延長するものであってもよい。
また、気泡溜具70は、ピストン26と一体であってもよい。
また、フロントフォーク10は、車種に応じて種々の傾斜角度で取付けるようにしてもよい。