特許第6076165号(P6076165)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6076165-可搬式作業機の防振装置 図000002
  • 特許6076165-可搬式作業機の防振装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076165
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】可搬式作業機の防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/06 20060101AFI20170130BHJP
   F16F 15/067 20060101ALI20170130BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20170130BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20170130BHJP
   F04D 25/02 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   F16F15/06 A
   F16F15/067
   F16F1/12 M
   F16F1/12 K
   F04D29/66 L
   F04D25/02 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-60589(P2013-60589)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-185683(P2014-185683A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄志
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−223533(JP,A)
【文献】 特開2001−116074(JP,A)
【文献】 実開平02−033911(JP,U)
【文献】 特公平06−029633(JP,B2)
【文献】 特開2011−161471(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0240324(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D34/02−34/408
B27B1/00−23/00
F04D1/00−13/16
17/00−19/02
21/00−25/16
29/00−35/00
F16B5/00−5/12
F16F1/00−6/00
15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬式作業機の原動機を支持した部材と作業者が保持する部材との2つの部材の間に設けた防振装置であって、
前記2つの部材を互いに防振的に連結するコイルスプリングと、
前記2つの部材の一方に形成された貫通孔を有し、前記貫通孔の周部に前記コイルスプリングの一方の端部が固定された固定部と、
前記コイルスプリングの他方の端部に固定したスリーブと、
前記2つの部材の他方にて当該スリーブの軸線方向の長さより長く突出して前記スリーブの内周に遊嵌したボス部と、
前記スリーブの内径より大きな径を有して前記ボス部の先端に着脱可能に設けた抜け止め部材とを備えたことを特徴とする可搬式作業機の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背負式ブロワ装置等の可搬式作業機の2つの部材の間に設けた防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはこの種の可搬式作業機の一種である手持式作業機の防振装置が開示されている。この防振装置は、手持式作業機の原動機を支持するケーシングとユーザが保持するグリップとの間にコイルスプリングを備え、原動機の振動がグリップからユーザに伝達するのを防止するものである。防振装置のコイルスプリングは、一端部がグリップのブッシュの内周面に形成した雌ねじにねじ込まれて固定され、他端部がケーシングの貫通孔の内周面に形成した雌ねじにねじ込まれて固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−116074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の手持式作業機を、メンテナンスや修理のために分解するときに、ケーシングからグリップを取り外す必要がある。しかし、コイルスプリングはケーシングとグリップとの両方にねじ込まれているので、コイルスプリングをケーシング及びグリップから取り外す作業が容易でなく、また、再びコイルスプリングをケーシング及びグリップにねじ込んで取り付ける作業も面倒であった。さらに、手持式作業機を長期間使用すると、コイルスプリングがケーシング及びグリップの雌ねじに強く噛み合ってさらに取り外しにくくなることがあった。本発明は、原動機を支持する部材と作業者が保持する部材との間に設けた防振装置において、2つの部材を容易に切り離すことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、可搬式作業機の原動機を支持した部材と作業者が保持する部材との2つの部材に設けた防振装置であって、2つの部材を互いに防振的に連結するコイルスプリングと、2つの部材の一方にてコイルスプリングの一方の端部が固定される固定部と、固定部に形成され、コイルスプリングの一方の端部から内部に通じる貫通孔と、コイルスプリングの他方の端部に固定したスリーブと、2つの部材の他方にてスリーブの軸方向の長さより長く突出してスリーブの内周に遊嵌したボス部と、スリーブの内径より大きな径を有してボス部の先端に着脱可能に設けた抜け止め部材とを備えたことを特徴とする可搬式作業機の防振装置を提供するものである。
【0006】
上記のように構成した可搬式作業機の防振装置においては、2つの部材を互いに防振的に連結するコイルスプリングの一方の端部は一方の部材の固定部に固定したのに対し、他方の端部はこれに固定したスリーブに他方の部材のボス部を遊嵌させた状態にて、ボス部の先端の抜け止め部材によってスリーブを抜け止めして固定した。一方の部材の貫通孔からコイルスプリング内に挿通した工具等を用いて抜け止め部材をボス部の先端から取り外せば、コイルスプリングの他方の端部に固定したスリーブを他方の部材のボス部から引き抜くことができ、2つの部材を互いに切り離すことができる。また、コイルスプリングの他方の端部に固定したスリーブに他方の部材のボス部を遊嵌させ、一方の部材の貫通孔からコイルスプリング内に挿通した工具等を用いてボス部の先端に抜け止め部材を取り付ければ、2つの部材を容易に連結することができる。また、コイルスプリングの他方の端部に固定したスリーブはこれより軸方向に長いボス部に遊嵌した状態で抜け止め部材により抜け止めされているので、スリーブがボス部に対して回転を規制されず、コイルスプリングは捻れて取り付けられることがない。これにより、コイルスプリングは捻れに起因してばね定数が変わるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の可搬式作業機の一実施形態である背負式ブロワ装置の斜め後方から見た斜視図である。
図2図1の防振装置の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の可搬式作業機の防振装置を添付図面を用いて説明する。本実施形態では、可搬式作業機の一例として背負式ブロワ装置を用いて説明する。図1に示したように、背負式ブロワ装置10は、作業者が背負う背負フレーム11にブロワユニット20を備えている。背負フレーム11は垂直に延びて作業者の背中に当たる背当部11aと、背当部11aの下部から後方に延びる台座部11bとからなる側面から見た形状がL字形をしている。背負フレーム11の背当部11aには作業者が背負うための一対のショルダーストラップ12,12が取り付けられている。背負フレーム11の右側部には送風管24を支持する支持アーム13が固定されている。
【0009】
ブロワユニット20は、エンジンよりなる原動機21により駆動されるファン(図示省略)の回転によって吸引した空気を噴出ダクト23から噴出するものである。ブロワユニット20は原動機21を一体的に組み付けたボリュートケース22を備えており、ボリュートケース22内にはファン(図示省略)が収容されている。ボリュートケース22にはファンによって吸引した空気を噴出する噴出ダクト23が一体的に設けられており、噴出ダクト23には送風管24が連通接続されている。
【0010】
背負フレーム(作業者が背負うことにより保持する部材)11と、原動機21を支持したボリュートケース(原動機21を支持した部材)22との間には防振装置30が設けられている。防振装置30は原動機21により発生した振動とファンの回転によって発生した振動がボリュートケース22を介して背負フレーム11に伝達するのを抑制する機能を有している。この実施形態では、防振装置30は背負フレーム11の背当部11aの上部とボリュートケース22の上部にて背当部11aに対向する部分との間の左右2箇所と、背負フレーム11の台座部11bの前部とボリュートケース22の前部にて台座部と対向する部分との間の左右2箇所に設けられている。
【0011】
以下に、背負フレーム11の台座部11bの前側左部とボリュートケース22の前側左部と間に設けた防振装置30について説明する。防振装置30は背負フレーム11とボリュートケース22とを互いに防振的に連結するコイルスプリング31を備えている。背負フレーム11の台座部11bの前側左部には円筒形をした固定部32が設けられており、固定部32には台座部11bの下側まで貫通する円形の貫通孔32aが形成されている。固定部32の貫通孔32aの内周面には螺旋溝32bが形成されており、コイルスプリング31の一方の端部が螺旋溝32bに係合している。なお、固定部32の外周面に螺旋溝を形成し、コイルスプリング31の一方の端部をこの螺旋溝に係合させてもよい。
【0012】
コイルスプリング31の他方の端部の内側には円筒形状のスリーブ33が設けられており、スリーブ33の外周面に形成した螺旋溝33aにコイルスプリング31の他方の端部が係合している。ボリュートケース22の前側左部にはコイルスプリング31に向けて突出する円柱形状をしたボス部34が設けられており、ボス部34はスリーブ33に僅かな隙間を設けて遊嵌している。なお、ボス部34はスリーブ33の内周面との間を実質的に動かない程度の僅かな隙間を設けてスリーブ33に遊嵌している。ボス部34の長さはスリーブ33より僅かに長く形成されている。ボス部34の径方向の中心部には軸線方向に延びるねじ孔34aが形成されており、ねじ孔34aにはワッシャ36を付けたねじ35が着脱可能に螺合している。ワッシャ36はスリーブ33の内径より大きな径をしており、ワッシャ36はスリーブ33がボス部34から抜けるのを防ぐ抜け止め防止部材として機能している。なお、ねじ35の頭部35aをスリーブ33の径より大きくすることで、ワッシャ36を用いることなくねじ35の頭部35aをスリーブ33の抜け止め防止部材として機能させてもよい。同様に、ねじ35の頭部35aをスリーブ33の径より大きな径をしたフランジ付とし、フランジをスリーブの抜け止め防止部材として機能させてもよい。なお、背負フレーム11の台座部11bの前側右部とボリュートケース22の前側右部の間に設けた防振装置も上述した防振装置30と同様である。また、背負フレーム11の背当部11aとボリュートケース22の上部の間の防振装置も、固定部32を背当部11aに設けたこと以外は上述した防振装置30と同様である。
【0013】
上記のように構成した背負式ブロワ装置10の作動を説明する。作業者が原動機21を作動させると、ボリュートケース22内のファンが回転し、ボリュートケース22内に吸引された空気が噴出ダクト23を通って送風管24の先端から噴出する。このとき、ボリュートケース22は原動機21の作動及びボリュートケース22内のファンの回転によって振動するが、ボリュートケース22の振動は防振装置30によって背負フレーム11に伝達するのが抑制される。
【0014】
上記のように構成した背負式ブロワ装置10の防振装置30においては、背負フレーム11とボリュートケース22とを互いに防振的に連結するコイルスプリング31の一方の端部は背負フレーム11の固定部32に固定され、コイルスプリング31の他方の端部はこれに固定したスリーブ33にボリュートケース22のボス部34を遊嵌した状態でボス部34の先端にねじ35で固定したワッシャ36によって抜け止めされて固定されている。
【0015】
背負式ブロワ装置10のメンテナンスをするときに、背負フレーム11からボリュートケース22を取り外すときには、背負フレーム11の台座部11bの貫通孔32aからコイルスプリング31内に挿通したドライバ等の棒状の工具を用いてねじ35及びワッシャ36をボス部34の先端から取り外せば、コイルスプリング31の他方の端部のスリーブ33はボリュートケース22のボス部34から引き抜き可能な状態となる。他の3箇所の防振装置においても、ねじ及びワッシャをボス部の先端から取り外せば、コイルスプリングの他方の端部のスリーブはボリュートケースのボス部から引き抜き可能な状態となる。この状態にて、スリーブ33をボス部34から引き抜くことで、背負フレーム11からボリュートケース22が取り外される。
【0016】
また、背負フレーム11にボリュートケース22を取り付けるときには、コイルスプリング31の他方の端部のスリーブ33にボリュートケース22のボス部34を遊嵌させ、背負フレーム11の台座部11bの貫通孔32aからコイルスプリング31内に挿通したドライバ等の棒状の工具を用いてワッシャ36とともにねじ35をボス部34の先端に取り付ける。これにより、コイルスプリング31の他方の端部のスリーブ33はワッシャ36によりボス部34から抜けなくなり、背負フレーム11にボリュートケース22が取り付けられる。
【0017】
このように、本実施形態の防振装置30は、ねじ35によりワッシャ36をボス部34の先端に着脱するだけで、コイルスプリング31の他方の端部のスリーブ33がボス部34に固定された状態と、スリーブ33がボス部34から取り外し可能な状態となる。これにより、背負式ブロワ装置10のメンテナンスをするときには、スリーブ33に遊嵌させたボス部34の先端にねじ35によってワッシャ36を着脱するだけで、防振装置30による背負フレーム11とボリュートケース22との連結及び連結の解除をでき、背負フレーム11に対してボリュートケース22を着脱する作業が容易となった。また、ボス部34はスリーブ33に僅かな隙間を設けて遊嵌しているので、背負式ブロワ装置10を長期間使用しても、ボス部34はスリーブ33に対して強固に嵌め込まれた状態とならず、ボス部34をスリーブ33に強い力で着脱させなくてもよい。
【0018】
また、コイルスプリング31の他方の端部のスリーブ33はこれより軸方向に長いボス部34に遊嵌した状態でワッシャ36により抜け止めされている。このため、スリーブ33がボス部34に対して回転を規制されなく、コイルスプリング31は捻れて取り付けられない。これにより、コイルスプリング31は捻れに起因してばね定数が変わるのを防ぐことができる。
【0019】
上記の実施形態においては、2つの部材の一方を背負フレーム11とし、他方をボリュートケース22としたが、本発明はこれに限られるものでなく、2つの部材の一方をボリュートケース22とし、他方を背負フレーム11としたものであっても同様の作用効果を得ることができる。
【0020】
上記の実施形態においては、防振装置30は背負フレーム11の背当部11aの上部とボリュートケース22の上部にて背当部11aに対向する部分との間の左右2箇所と、背負フレーム11の台座部11bの前部とボリュートケース22の前部にて台座部と対向する部分との間の左右2箇所に設けられているが、これに限られるものでなく、例えば、防振装置30を背負フレーム11の背当部11aの上部の左右2箇所と下部の左右2箇所と、これらに対向するボリュートケース22の上部の左右2箇所と下部の左右2箇所に設けたものであってもよい。
【0021】
また、上記の実施形態においては、可搬式作業機の一実施形態として背負式ブロワ装置10を用いて説明したが、本発明はこれに限られるものでなく、原動機を支持した部材と作業者が保持する部材とを備えた可搬式作業機として、手持式ブロワ装置、チェーンソー、ヘッジトリマ等の可搬式作業機にも採用することが可能である。また、原動機はエンジンに限られるものでなく、電動モータとしたものであってもよい。さらに、作業者が保持する部材は作業者が背負うことにより保持する背負フレームに限られるものでなく、作業者が手で保持するグリップ、ハンドルであってもよい。
【符号の説明】
【0022】
10…可搬式作業機(背負式ブロワ装置)、11…作業者が保持する部材(背負フレーム)、21…原動機、22…原動機を支持した部材(ボリュートケース)、30…防振装置、31…コイルスプリング、32…固定部、32a…貫通孔、33…スリーブ、34…ボス部、36…抜け止め部材(ワッシャ)。
図1
図2