特許第6076172号(P6076172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076172
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ラックガイド機構の隙間量測定方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20170130BHJP
   F16H 19/04 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   B62D3/12 501G
   F16H19/04 N
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-70677(P2013-70677)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-193681(P2014-193681A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】竹林 陽介
(72)【発明者】
【氏名】榊原 通浩
【審査官】 柳楽 隆昌
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−076309(JP,U)
【文献】 実開平01−083670(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 3/12
F16H 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラック軸のラックをピニオン軸のピニオンに押し付けるラックガイド機構のサポートヨークとキャップとの間の隙間量を測定するラックガイド機構の隙間量測定方法であって、
観測点の変位量を検出する変位量検出センサを、前記サポートヨークの摺動方向に沿った前記ラック軸の変位量を検出するように、前記サポートヨークの中心軸付近の位置から回転駆動源側にずらされた位置に設置するセンサ設置工程と、
回転駆動源が前記ラック軸を回転させるラック軸回転駆動工程と、
演算手段が前記ラック軸回転駆動工程で前記変位量検出センサによって検出された前記ラック軸の変位量の測定値を記憶手段に蓄積させる測定値蓄積工程と、
前記測定値蓄積工程で蓄積された前記測定値によって形成される波形を補正前波形とし、前記演算手段が当該補正前波形の傾斜を補正して補正後波形を取得する測定波形補正工程とを含み、
前記測定波形補正工程では、
前記測定値蓄積工程で蓄積されたそれぞれの測定値を、X軸を前記回転駆動源の駆動トルクとし、Y軸を観測点の変位量とするXY座標系の測定点とし、前記回転駆動源の駆動トルクがゼロになっている測定点を原点とし、
前記演算手段により、
(a)前記原点とその周囲の測定値とを結ぶことによりゼロトルク付近の直線部分を確定し、
(b)前記直線部分よりも外側に位置する測定点を補正対象領域の測定点として特定し、
(c)更に、前記補正対象領域の測定点同士を結ぶことによって形成される補正対象領域分の補正前波形を前記Y軸方向に延長して前記Y軸との切片に位置する点を特定することによって推定隙間量を取得し、
(d)前記切片に位置する点を中心にして前記補正対象領域分の補正前波形の傾きの値を特定し、
(e)前記傾きの値に基づいて、前記補正対象領域分の補正前波形の傾斜を補正する
ことを特徴とするラックガイド機構の隙間量測定方法。
【請求項2】
前記補正対象領域分の補正前波形の傾斜を補正する際に
きの値をaとする前記補正対象領域分の補正前波形の直線部分に対し、前記補正対象領域分の補正後波形をy’(x)とし、前記補正対象領域分の補正前波形をy(x)とし、y’(x)=y(x)−axの演算を行う
ことを特徴とする請求項に記載のラックガイド機構の隙間量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックガイド機構のサポートヨークとキャップとの間の隙間量の測定精度を向上させる隙間量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置を搭載した車両が、広く普及している。電動パワーステアリング装置は、電動モータ等の駆動による補助操舵力を、ステアリングホイールから操舵車輪に至るステアリング系の操舵力に与えて操舵をなす構成になっている。
【0003】
電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールがステアリングシャフト及び自在軸継手を介してピニオン軸に連結されている。ピニオン軸は、ラックアンドピニオン機構を介してラック軸に連結されている。ラックアンドピニオン機構は、ピニオン軸に形成されたピニオンと、ラック軸に形成されたラックとが噛み合う構成になっている。ラックアンドピニオン機構は、ラック軸をピニオン軸に押し付けるラックガイド機構を有している。
【0004】
ラックガイド機構は、サポートヨークでラック軸を保持し、サポートヨークを介して圧縮コイルばねでラック軸をピニオン軸に押し付ける構成になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
そのラックガイド機構は、サポートヨークとキャップとが当接すると、打音が発生する。そのため、ラックガイド機構は、打音が発生しないように、サポートヨークとキャップとの間に所定量の隙間が設けられている。
【0006】
サポートヨークとキャップとの間の隙間は、所定量に設定する必要がある。そのため、ラックガイド機構のメーカは、ラックガイド機構の製造時に、サポートヨークとキャップとの間の隙間量を測定し、隙間量が所定値でない場合に、ラックガイド機構を調整する必要があった。
【0007】
サポートヨークとキャップとの間の隙間量の測定は、例えば、以下のようにして行われている。まず、変位量検出センサをラック軸上の任意の観測点に設置する。変位量検出センサは、観測点の変位量を検出するセンサである。次に、回転駆動源によって駆動トルクを変えながらラック軸を回転させ、同時に、変位量検出センサによってラック軸の変位量を検出する。このとき、ラック軸がラックガイド機構のサポートヨークをキャップ側に押圧する。このとき、サポートヨークは、キャップ側に移動し、キャップに突き当たると、移動が停止する。ラック軸は、このようなサポートヨークの動きに応じて観測点が変位する。そのため、変位量検出センサによって検出されたラック軸の変位量の測定値の波形からラック軸の変位量(転び量)を確認することによって、サポートヨークとキャップとの間の隙間量を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平2−33780号公報(第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の隙間量測定方法は、以下に説明するように、サポートヨークとキャップとの間の隙間量の測定精度にバラツキが発生し易い、という課題があった。
【0010】
例えば、従来の隙間量測定方法は、変位量検出センサがサポートヨークとキャップとの間の隙間量を最も正確に測定することができるラックガイド機構からずらされた位置に設置されている。そのため、ラック軸は、ラックガイド機構と変位量検出センサとの間で捻れが発生する。
【0011】
従来の隙間量測定方法は、その捻れの影響を受けるため、変位量検出センサの測定値が実際の隙間量と異なってしまう。その結果、従来の隙間量測定方法は、変位量検出センサの測定値によって形成されるラック軸の変位量の波形が傾斜して現れる。これにより、従来の隙間量測定方法は、サポートヨークとキャップとの間の隙間量の測定精度にバラツキが発生し易くなっていた。
【0012】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、サポートヨークとキャップとの間の隙間量の測定精度を向上させるラックガイド機構の隙間量測定方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明は、ラック軸のラックをピニオン軸のピニオンに押し付けるラックガイド機構のサポートヨークとキャップとの間の隙間量を測定するラックガイド機構の隙間量測定方法であって、観測点の変位量を検出する変位量検出センサを、前記サポートヨークの摺動方向に沿った前記ラック軸の変位量を検出するように、前記サポートヨークの中心軸付近の位置から回転駆動源側にずらされた位置に設置するセンサ設置工程と、回転駆動源が前記ラック軸を回転させるラック軸回転駆動工程と、演算手段が前記ラック軸回転駆動工程で前記変位量検出センサによって検出された前記ラック軸の変位量の測定値を記憶手段に蓄積させる測定値蓄積工程と、前記測定値蓄積工程で蓄積された前記測定値によって形成される波形を補正前波形とし、前記演算手段が当該補正前波形の傾斜を補正して補正後波形を取得する測定波形補正工程とを含み、前記測定波形補正工程では、前記測定値蓄積工程で蓄積されたそれぞれの測定値を、X軸を前記回転駆動源の駆動トルクとし、Y軸を観測点の変位量とするXY座標系の測定点とし、前記回転駆動源の駆動トルクがゼロになっている測定点を原点とし、前記演算手段により、(a)前記原点とその周囲の測定値とを結ぶことによりゼロトルク付近の直線部分を確定し、(b)前記直線部分よりも外側に位置する測定点を補正対象領域の測定点として特定し、(c)更に、前記補正対象領域の測定点同士を結ぶことによって形成される補正対象領域分の補正前波形を前記Y軸方向に延長して前記Y軸との切片に位置する点を特定することによって推定隙間量を取得し、(d)前記切片に位置する点を中心にして前記補正対象領域分の補正前波形の傾きの値を特定し、(e)前記傾きの値に基づいて、前記補正対象領域分の補正前波形の傾斜を補正する構成とする。
【0014】
本発明に係る隙間量測定方法は、測定波形補正工程で補正前波形の傾斜を補正して補正後波形を取得する。これにより、本発明に係る隙間量測定方法は、隙間量の測定精度のバラツキの少ない補正後波形を取得することができ、その結果、サポートヨークとキャップとの間の隙間量の隙間量の測定精度を向上させることができる。また、この隙間量測定方法は、切片のY軸値に基づいて推定隙間量を取得することができる。また、この隙間量測定方法は、補正前波形の傾斜が補正された補正後波形の取得を実現することができる。
【0017】
この隙間量測定方法は、前記補正対象領域分の補正前波形の傾斜を補正する際に、傾きの値をaとする前記補正対象領域分の補正前波形の直線部分に対し、前記補正対象領域分の補正後波形をy’(x)とし、前記補正対象領域分の補正前波形をy(x)とし、y’(x)=y(x)−axの演算を行うとよい。
これにより、この隙間量測定方法は、補正後波形y’(x)を容易に取得することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、サポートヨークとキャップとの間の隙間量の測定精度を向上させるラックガイド機構の隙間量測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】測定対象のラックガイド機構を搭載する電動パワーステアリング装置の概略構成図である。
図2】測定対象のラックガイド機構の構成図である。
図3】変位量検出センサの設置位置を示す図である。
図4】変位量検出センサによって取得されるラック軸の変位量の波形の説明図である。
図5】実施形態に係る隙間量測定方法によって取得されるラック軸の変位量の波形の説明図である。
図6A】実施形態に係る隙間量測定方法の工程を示すフローチャート(1)である。
図6B】実施形態に係る隙間量測定方法の工程を示すフローチャート(2)である。
図7A】実施形態に係る隙間量測定方法の説明図(1)である。
図7B】実施形態に係る隙間量測定方法の説明図(2)である。
図7C】実施形態に係る隙間量測定方法の説明図(3)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0021】
<電動パワーステアリング装置の構成>
まず、図1を参照して、測定対象のラックガイド機構10(図2参照)を搭載する電動パワーステアリング装置1の概略構成につき説明する。図1は、電動パワーステアリング装置1の概略構成図である。ここでは、電動パワーステアリング装置1がベルト・ラック・アシスト式の装置であるものとして説明する。
【0022】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置1は、ベルト伝動機構2を介して電動モータ8の駆動による補助操舵力を、ステアリングホイール3から操舵車輪7に至るステアリング系の操舵力に与えて操舵をなす構成になっている。
【0023】
具体的には、ステアリングホイール3は、ステアリングシャフト4a及び自在軸継手4bを介してピニオン軸4cに連結されている。ピニオン軸4cは、ラックアンドピニオン機構5を介してラック軸6に連結されている。ラックアンドピニオン機構5は、ピニオン軸4cに形成されたピニオン5aと、ラック軸6に形成されたラック5bとが噛み合う構成になっている。ラック軸6は、タイロッド及びナックル等の機構を介して左右の操舵車輪7に連結されている。
【0024】
運転者は、ステアリングホイール3を操舵することにより、ステアリングホイール3から操舵車輪7に至るステアリング系の操舵力によって左右の操舵車輪7を操舵する。その際に、電動パワーステアリング装置1は、ステアリング系の操舵力を図示せぬトルク検出装置で検出して、検出された操舵力に応じた補助操舵力を電動モータ8で発生させる。そして、電動パワーステアリング装置1は、ベルト伝動機構2を介して電動モータ8の駆動による補助操舵力を、ラック軸6に伝達する。これにより、電動パワーステアリング装置1は、電動モータ8の駆動による補助操舵力を、ステアリング系の操舵力に与えて操舵をなす。
【0025】
<ラックガイド機構の構成>
次に、図2を参照して、測定対象のラックガイド機構10の構成につき説明する。図2は、ラックガイド機構10の構成図である。ここでは、「前(先)」と「後」との位置関係は、キャップ15の取り付け方向を基準にしているものとして説明する。
【0026】
図2に示すように、ラックアンドピニオン機構5の周囲には、ラック軸6とピニオン軸4cとの噛合状態を維持するラックガイド機構10が設けられている。
【0027】
ラックガイド機構10は、サポートヨーク13によってラック軸6を保持する構成になっている。サポートヨーク13は、ハウジング11に形成されたシリンダ部12の内部に摺動自在に配置されている。
【0028】
サポートヨーク13は、胴体部分71が円筒状に形成されている。シリンダ部12は、そのサポートヨーク13が摺動可能なように円形孔状に形成されている。サポートヨーク13及びその周囲のハウジング11は、ともに、鉄やアルミニウム等の金属によって構成されている。したがって、サポートヨーク13とハウジング11とは、互いが当接すると、傷が付いてしまう。そのため、サポートヨーク13とハウジング11とは、互いが当接しないようにする必要がある。そこで、サポートヨーク13は、その胴体部分71の外径がシリンダ部12の内径よりも小径に形成されている。これにより、隙間16aが、サポートヨーク13の胴体部分71とシリンダ部12との間に設けられている。
【0029】
サポートヨーク13は、Oリング17が胴体部分71の外周に装着されている。Oリング17は、隙間16aを封止して、異物がOリング17よりもラックアンドピニオン機構5側に進入するのを防止する。
【0030】
シリンダ部12は、ハウジング11の内部の、ラック軸6の一端を挟んでピニオン軸4cと相対する位置に、ピニオン軸4cの中心軸に対して垂直に交差する方向に延伸して設けられている。シリンダ部12は、開口端部が、キャップ15によって封止されている。シリンダ部12とキャップ15とは、図示せぬ雌ねじと雄ねじとが、互いの当接部分に設けられている。
【0031】
ラックガイド機構10は、キャップ15がサポートヨーク13と当接していると、高周波振動や衝撃荷重がサポートヨーク13とキャップ15との間で伝達されるため、サポートヨーク13とキャップ15との間やラック5bとピニオン5aとの間等で打音が発生する。したがって、キャップ15は、打音が発生しないように、所定の隙間16bがキャップ15とサポートヨーク13との間に設けられている。
【0032】
サポートヨーク13は、先端側(ラック軸6側)でラック軸6を保持する構成になっている。また、サポートヨーク13は、その内部の後端側(キャップ15側)に、圧縮コイルばね14を収容するばね収容部18が設けられている。
【0033】
圧縮コイルばね14は、サポートヨーク13をラック軸6側に押圧する付勢部材である。圧縮コイルばね14は、ばね収容部18の内部に配置されている。圧縮コイルばね14は、キャップ15によって背面支持されており、サポートヨーク13の摺動方向に圧縮伸長することにより、サポートヨーク13をラック軸6の方向に押圧する。その結果、圧縮コイルばね14は、サポートヨーク13を介してラック軸6をピニオン軸4cに押し付けて、ラック5bとピニオン5aとの噛合状態を維持するとともに、ラック軸6の一端を摺動自在に支持する。
【0034】
<隙間量の測定>
サポートヨーク13とキャップ15との間の隙間16bは、所定量に設定する必要がある。そのため、ラックガイド機構10のメーカは、ラックガイド機構10の製造時に、サポートヨーク13とキャップ15との間の隙間量を測定する必要がある。
【0035】
本実施形態では、サポートヨーク13とキャップ15との間の隙間量の測定は、以下のようにして行われる。
【0036】
まず、ラックガイド機構10が設けられたハウジング11を図示せぬ支持台に固定する。このとき、ラック軸6は、一端側が回転自在に支持され、また、他端側が回転駆動源PW(図3参照)に連結される。
【0037】
次に、図3に示すように、変位量検出センサSNを、ラック軸6上の観測点P2に設置する。図3は、変位量検出センサSNの設置位置を示す図である。変位量検出センサSNは、観測点の変位量を検出するセンサである。変位量検出センサSNは、サポートヨーク13の摺動方向に沿ったラック軸6の変位量を検出するように、観測点P2に設置される。本実施形態では、観測点P2は、後記する観測点P1から回転駆動源PW側に距離W分だけずらされた位置に設定されている。
【0038】
ここで、隙間16bの正確な隙間量を測定するための最も好ましい観測点P1は、ラックガイド機構10のサポートヨーク13(図2参照)の中心軸付近の位置である。しかしながら、観測点P1は、キャップ15を取り付けた状態でしか隙間16bを測定できない。そして、観測点P1は、変位量検出センサSNの設置や回収のためにキャップ15を取り外すことで、測定不能となる。そのため、変位量検出センサSNの設置や回収が容易に行える点では、観測点P2の方が、観測点P1よりも好ましい。
【0039】
次に、回転駆動源PWによって駆動トルクを変えながらラック軸6をCW(+)の方向又はCCW(−)の方向(図3(a)参照)に回転させ、同時に、変位量検出センサSNによってラック軸6の変位量を検出する。このとき、ラック軸6は、ラック5bがピニオン軸4cのピニオン5aと噛み合っており、そのピニオン軸4cが高強度な金属製の部材であるため、サポートヨーク13をキャップ15の方向に押圧する。
【0040】
このとき、サポートヨーク13は、回転駆動源PWからラック軸6にかかる駆動トルクの値に応じて、キャップ15の方向に移動する。そして、サポートヨーク13は、駆動トルクの値がサポートヨーク13をキャップ15に突き当てさせる値になると、キャップ15に突き当たる。これにより、サポートヨーク13は、移動が停止する。ラック軸6は、このようなサポートヨーク13の動きに応じて、観測点が変位する。
【0041】
そのため、図4に示すように、変位量検出センサSNによって検出されたラック軸6の変位量の測定値をプロットして、プロットされた波形に基づいて、ラック軸6の変位量(転び量)を確認することによって、サポートヨーク13とキャップ15との間の隙間量(隙間16bの隙間量)を測定することができる。
【0042】
例えば、図4に示す例では、0トルク(Nm)付近で大きく変位している変位量T16bがサポートヨーク13とキャップ15との間の推定の隙間量(隙間16bの推定の隙間量)となる。以下、変位量T16bを「推定隙間量T16b」と称する。
【0043】
なお、図4は、変位量検出センサSNによって取得されるラック軸6の変位量の波形の説明図である。図4(a)は、最も好ましい観測点P1で測定した場合に得られる波形の一例を示している。一方、図4(b)は、観測点P2で測定した場合に得られる波形の一例を示している。図4は、測定値を、X軸を回転駆動源PWの駆動トルクとし、Y軸を観測点の変位量とするXY座標系の測定点として示している。また、図4は、回転駆動源PWの駆動トルクがゼロになっている測定点を原点としている。
【0044】
なお、ラック軸6は、サポートヨーク13がキャップ15に突き当たって停止した後も、サポートヨーク13を押圧し続ける。そのため、ラック軸6には、捻れが発生する。そのラック軸6の捻れは、駆動トルクの値が大きくなるほど、大きくなる。ただし、ラック軸6の捻れは、サポートヨーク13が移動している間も発生するが、その値は小さいため、ここでは除外して説明する。
【0045】
本実施形態では、変位量検出センサSNは、最も好ましい観測点P1からずらされた位置である観測点P2に設置されている。そのため、変位量検出センサSNの測定値は、観測点P1と観測点P2との間で発生する捻れの影響を受ける。これにより、変位量検出センサSNの測定値は、実際の隙間16bの隙間量と異なってしまう。
【0046】
具体的には、変位量検出センサSNの測定値は、実際の隙間16bの隙間量に起因するラック軸6の変位量(転び量)と、ラック軸6の捻れ量(曲がり量)とが重畳された値となる。
【0047】
その結果、変位量検出センサSNの測定値によって形成されるラック軸6の変位量の波形は、図4(a)に示す観測点P1で測定した場合に得られる波形(実際の隙間16bの隙間量の波形)に対して、図4(b)に示すように、傾斜して現れる。
【0048】
そこで、本実施形態では、図5に示すように、観測点P2で測定した結果得られた、変位量検出センサSNの測定値によって形成される波形を補正前波形y(x)とし、補正前波形y(x)の傾斜を補正して補正後波形y’(x)を取得する。図5は、本実施形態に係る隙間量測定方法によって取得されるラック軸6の変位量の波形の説明図である。
【0049】
本実施形態に係る隙間量測定方法は、例えば、コンピュータ(演算手段)が予め用意されたプログラムを実行して、図6A及び図6Bに示す工程が行われることによって実現される。図6A及び図6Bは、それぞれ、本実施形態に係る隙間量測定方法の工程を示すフローチャートである。
【0050】
図6Aに示すように、本実施形態に係る隙間量測定方法では、まず、センサ設置工程(S105)が行われる。S105のセンサ設置工程では、ラックガイド機構10が設けられたハウジング11を図示せぬ支持台に固定するとともに、変位量検出センサSNを観測点P2に設置する。
【0051】
次に、ラック軸回転駆動工程(S110)と測定値蓄積工程(S115)とが行われる。S110のラック軸回転駆動工程とS115の測定値蓄積工程とでは、図示せぬコンピュータ(演算手段)が、回転駆動源PWを作動させて、駆動トルクを変えながら、ラック軸6をCW(+)の方向又はCCW(−)の方向(図3(a)参照)に回転させる。その後、同様に、コンピュータが、駆動トルクを変えながら、ラック軸6を前回とは逆方向に回転させる。
【0052】
この間、変位量検出センサSNは、ラック軸6の変位量に応じた値の出力信号をコンピュータに出力する。コンピュータは、変位量検出センサSNからの出力信号の値に基づいて、ラック軸6の変位量の測定値を検出し、図示せぬ記憶手段に蓄積させる。
【0053】
次に、測定波形補正工程(S120)が行われる。S120の測定波形補正工程では、コンピュータは、S115の測定値蓄積工程で蓄積された測定値によって形成される波形を補正前波形y(x)とし、補正前波形y(x)の傾斜を補正して補正後波形y’(x)を取得する。
【0054】
S120の測定波形補正工程は、例えば、図6Bに示す工程が行われることによって実現される。
【0055】
図6Bに示すように、まず、ゼロトルク付近の直線確定工程(S1205)が行われる。S1205のゼロトルク付近の直線確定工程では、図7Aに示すように、コンピュータが、回転駆動源PWの駆動トルクがゼロになっている測定点を原点とし、原点とその周囲の測定値とを結ぶことにより、ゼロトルク付近の直線部分の線L10,L20を確定する。なお、図7A図7Cは、実施形態に係る隙間量測定方法の説明図である。
【0056】
次に、補正対象領域の測定点特定工程(S1210)が行われる。S1210の補正対象領域の測定点特定工程では、図7Aに示すように、コンピュータが、直線部分の線L10,L20よりも外側(矢印の方向側)に位置する測定点を補正対象領域Rtの測定点として特定する。
【0057】
次に、ゼロトルクでのY軸切片特定工程(推定隙間量取得工程)(S1215)が行われる。S1215のゼロトルクでのY軸切片特定工程では、図7Bに示すように、コンピュータが、補正対象領域Rtのいずれかの測定点同士を結ぶことによって形成される補正対象領域Rt分の補正前波形L60及び補正前波形L70のいずれか一方又は双方をY軸方向に延長させて、Y軸との切片に位置する点M2を特定する。この後、コンピュータは、点M2のY軸値に基づいて推定隙間量T16bを取得する。変位量T16bは、図7Bに示すように、原点M1からの点M2の変位量となる。原点M1は、駆動トルクの値がゼロで、変位量の値が0(mm)となっている。
【0058】
なお、図7Bに示す例では、補正前波形L60は、測定点M61と測定点M62とを結ぶことによって形成されており、また、補正前波形L70は、測定点M71と測定点M72とを結ぶことによって形成されている。
【0059】
次に、補正対象領域の傾き特定工程(S1220)が行われる。S1220の補正対象領域の傾き特定工程では、図7Bに示すように、コンピュータが、切片に位置する点M2を中心にして補正対象領域Rt分の補正前波形L60及び補正前波形L70のいずれか一方又は双方の傾きの値を特定する。図7Bに示す例では、コンピュータは補正前波形L70の傾きの値aを特定している。
【0060】
次に、補正演算実行工程(補正演算値取得工程)(S1225)が行われる。S1225の補正演算実行工程では、図7Cに示すように、コンピュータが、S1220で特定された傾きの値に基づいて、補正対象領域Rt分の補正前波形L60及び補正前波形L70のいずれか一方又は双方の傾斜を補正する演算を実行する。
【0061】
その結果、コンピュータは、観測点P2で測定された補正前波形y(x)に対し、補正前波形y(x)の傾斜が補正された補正後波形y’(x)を取得することができる。
このようにして、図6A及び図6Bに示すS120の測定波形補正工程が行われる。
【0062】
この後、図6Aに示す補正波形プロット工程(S125)が行われる。S125の補正波形プロット工程では、コンピュータは、S120の測定波形補正工程で取得された補正後波形y’(x)を、図示せぬプロッターにプロットさせる(又は、図示せぬプリンタに印刷させる)。
【0063】
隙間量の測定作業者は、プロットされた補正後波形y’(x)の波形に基づいて、ラック軸6の変位量(転び量)を確認することによって、サポートヨーク13とキャップ15との間の隙間量(隙間16bの隙間量)を測定することができる。その補正後波形y’(x)の波形は、補正前波形のy(x)の傾斜が補正されているため、測定精度のバラツキの少ない波形となっている。その結果、本実施形態に係る隙間量測定方法は、隙間量の測定精度を向上させることができる。
【0064】
以上の通り、本実施形態に係るラックガイド機構の隙間量測定方法によれば、サポートヨークとキャップとの間の隙間量の測定精度を向上させることができる。
【0065】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【0066】
例えば、本実施形態では、補正対象領域Rt分の補正前波形y(x)がほぼ直線状になっている場合を想定して説明している。しかしながら、補正対象領域Rt分の補正前波形y(x)は、放物線状になっている場合もある。コンピュータは、放物線の傾斜の補正にも対応したプログラムを予め用意しておき、そのプログラムを適宜実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
4c ピニオン軸
5 ラックアンドピニオン機構
5a ピニオン
5b ラック
6 ラック軸
10 ラックガイド機構
13 サポートヨーク
15 キャップ
16a,16b 隙間
a 傾き
PW 回転駆動源
Rc 補正除外領域
Rt 補正対象領域
SN 変位量検出センサ
y(a) 補正前波形
y’(a) 補正後波形
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C