(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より高精度な加工を行うためには、さらに熱変位の影響を小さくする必要があり、従来の冷却方法に対してもまだ改善の余地がある。例えば、特許文献1の冷却方法のように、軸方向に異なる2箇所にて冷却流路を形成する場合には、軸受やモータから発生した熱はハウジングの軸方向中央から外側へ移動するおそれがある。そうすると、ハウジングの軸方向中央部分が熱変位することになり、さらに、ハウジングの当該部分から熱伝達された別の部材が熱変位するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、熱変位の影響をさらに小さくすることができる回転軸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1)本手段に係る回転軸装置は、回転軸と、前記回転軸の外周面を取り囲むハウジングと、前記回転軸と前記ハウジングとの間に配置され、前記ハウジングに対して前記回転軸を回転可能に支持し、軸方向に異なる位置にそれぞれ配置された複数の軸受と、を備える。
そして、前記ハウジングには、軸方向に異なる位置に、前記回転軸の軸直交方向外方において周方向に向かってそれぞれ独立して冷却液を流通させる複数の冷却流路が形成される。前記複数の冷却流路は、前記複数の軸受のうち軸方向一端側に配置された軸受の位置から軸方向他端側に配置された軸受の位置に至るまでの軸方向全範囲に亘って形成される。前記複数の冷却流路を流通する冷却液により、前記ハウジングにおける前記軸方向全範囲に亘って冷却される。
前記複数の軸受のうち少なくとも一つの軸受は、流体軸受であり、前記ハウジングには、前記流体軸受から排出された軸受用流体を貯留する溜まり部が形成され、前記複数の冷却流路は、前記回転軸および前記溜まり部を軸直交方向外方から囲むように形成される。
【0008】
本手段に係る回転軸装置において複数の冷却流路が、複数の軸受のうち軸方向一端側に配置された軸受の位置から軸方向他端側に配置された軸受の位置に至るまでの軸方向全範囲(以下、「軸受間全範囲」と称する)に亘って形成されている。その結果、複数の冷却流路を流通する冷却液により、ハウジングにおける軸受間全範囲に亘って冷却される。
【0009】
ここで、回転軸装置における発熱源には、軸受そのものが含まれる。そのため、ハウジングにおける複数の軸受の間は、両側の軸受から熱が伝達される。つまり、発熱源である複数の軸受の間の熱変位を抑制することも求められる。そこで、上記のように、ハウジングが軸受間全範囲において満遍なく冷却されることにより、ハウジングの軸受間全範囲の熱変位を小さくできる。特に、ハウジングの軸方向中央部分においても冷却流路が形成されているため、熱の移動を確実に絶つことができる。そのため、結果として当該部分における熱変位を小さくできる。当然に、ハウジングから別の部材へ熱伝達されることも抑制でき、当該別の部材の熱変位を抑制できる。
【0010】
さらに、本手段に係る回転軸装置においては、複数の冷却流路が、それぞれ独立して、軸方向に異なる位置に形成されている。ここで、独立とは、それぞれの冷却流路を流通する冷却液の特性を異ならせることができるようにされていることを意味し、それぞれの冷却流路に冷却液を供給する供給源が共通することを妨げない。なお、冷却液の特性とは、例えば、冷却液の流量、冷却液の温度などである。
【0011】
つまり、複数の冷却流路のそれぞれによる冷却能力を異ならせることができる。ここで、回転軸装置において、発熱源の一つである複数の軸受は、一般に、それぞれ発熱量が異なる。そこで、複数の冷却流路を独立して形成することにより、それぞれの軸方向位置の発熱量に応じた冷却能力を発揮させることができる。従って、ハウジングの軸方向位置の発熱量に応じた冷却を行うことにより、ハウジングの軸受間全範囲における熱変位の差を小さくすることができる。
【0012】
このように、本手段に係る回転軸装置は、ハウジングの軸受間全範囲を満遍なく冷却すると共に、それぞれの軸方向位置に応じて冷却能力を調整することにより、ハウジングの熱変位の影響を小さくできる。そして、当該回転軸装置を工作機械に適用した場合には、加工精度をさらに向上することができる。
さらに、流体軸受が適用される場合には、軸受用流体が発熱する。そして、軸受用流体は、通常、回収するため、発熱した軸受用流体が流通するハウジングの部位が熱変位するおそれがある。特に、軸受用流体を貯留するハウジングの溜まり部は、発熱した軸受用流体の熱の影響を大きく受ける。そこで、回転軸および溜まり部を軸直交方向外方から囲むように複数の冷却流路を形成することで、回転軸の周囲および溜まり部の周囲を確実に冷却できる。これにより、ハウジングの軸受間全範囲において、確実に熱変位の影響を小さくできる。
【0013】
以下に、本手段に係る回転軸装置の好適態様について説明する。
(請求項2)好ましくは、前記ハウジングに形成される前記複数の冷却流路は、それぞれ等間隔に配置された複数の支流路により構成され、軸方向に隣り合う冷却流路において、一方の前記冷却流路を構成する軸方向一端側の支流路と、他方の前記冷却流路を構成する軸方向他端側の支流路との離間距離は、それぞれの前記冷却流路を構成する複数の支流路の離間距離と等しい。これにより、それぞれの軸方向位置に応じて冷却能力を調整したとしても、ハウジングの軸受間全範囲を確実に満遍なく冷却することができる。
【0016】
(
請求項3)好ましくは、前記ハウジングには、前記溜まり部からタンクへ前記軸受用流体を環流させる排出流路が形成され、前記複数の冷却流路は、前記回転軸、前記溜まり部および前記排出流路を軸直交方向外方から囲むように形成される。
さらに、溜まり部からタンクへの排出流路を軸直交方向外方から囲むように複数の冷却流路を形成することで、排出流路からの熱伝達の影響を小さくできる。
【0017】
(
請求項4)好ましくは、前記回転軸装置は、軸方向に異なる位置のそれぞれにおいて、前記ハウジングの温度、前記回転軸の温度、前記ハウジングの熱変位、および前記回転軸の熱変位の少なくとも一つを検出する複数の検出器と、前記複数の検出器のそれぞれによる検出値に基づいて、前記複数の冷却流路のそれぞれを流通する冷却液の特性を制御する冷却液制御装置と、を備える。
【0018】
複数の検出器のそれぞれによる検出値に応じて、複数の冷却流路のそれぞれを流通する冷却液の特性を制御することで、ハウジングの軸受間全範囲における熱変位の差を小さくできる。ここで、冷却液の特性とは、上述したように、冷却液の流量、冷却液の温度などである。
【0019】
(
請求項5)好ましくは、前記回転軸の軸方向一端には、回転工具が取り付けられ、前記回転軸の軸方向他端には、回転駆動装置の出力軸の回転力を伝達するベルトが架けられ、前記複数の軸受のうち前記回転工具側に配置された軸受には、前記回転工具による加工に応じた負荷が主として作用し、前記複数の軸受のうち前記ベルト側に配置された軸受には、前記ベルトによる張力に応じた負荷が主として作用する。
【0020】
当該構成により、それぞれの軸受による発熱量が異なる状態になる。そこで、当該構成におけるハウジングに上記の複数の冷却流路を形成することにより、ハウジングの軸受間全範囲における熱変位の差を小さくできる。
(請求項6)本手段に係る他の回転軸装置は、回転軸と、 前記回転軸の外周面を取り囲むハウジングと、 前記回転軸と前記ハウジングとの間に配置され、前記ハウジングに対して前記回転軸を回転可能に支持し、軸方向に異なる位置にそれぞれ配置された複数の軸受とを備える回転軸装置である。
前記ハウジングには、軸方向に異なる位置に、前記回転軸の軸直交方向外方において周方向に向かってそれぞれ独立して冷却液を流通させる複数の冷却流路が形成され、 前記複数の冷却流路は、前記複数の軸受のうち軸方向一端側に配置された軸受の位置から軸方向他端側に配置された軸受の位置に至るまでの軸方向全範囲に亘って形成され、 前記複数の冷却流路を流通する冷却液により、前記ハウジングにおける前記軸方向全範囲に亘って冷却される。
前記回転軸装置は、 軸方向に異なる位置のそれぞれにおいて、前記ハウジングの温度、前記回転軸の温度、前記ハウジングの熱変位、および前記回転軸の熱変位の少なくとも一つを検出する複数の検出器と、 前記複数の検出器のそれぞれによる検出値に基づいて、前記複数の冷却流路のそれぞれを流通する冷却液の特性を制御する冷却液制御装置と を備える。
複数の検出器のそれぞれによる検出値に応じて、複数の冷却流路のそれぞれを流通する冷却液の特性を制御することで、ハウジングの軸受間全範囲における熱変位の差を小さくできる。ここで、冷却液の特性とは、上述したように、冷却液の流量、冷却液の温度などである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る回転軸装置を適用した研削盤について説明する。ここで、本実施形態における研削盤の砥石軸装置が回転軸装置を構成する。
<第一実施形態>
(1.研削盤の概要構成)
本実施形態の研削盤の一例として、砥石台トラバース型円筒研削盤を例に挙げて説明する。ただし、本発明に係る研削盤は、例えば、テーブルトラバース型研削盤を適用することもできる。
【0023】
当該研削盤の概要構成について、
図1を参照しながら説明する。研削盤1は、以下のように構成される。床上にベッド11が固定され、ベッド11には、被加工物Wを回転可能に両端支持する主軸12および心押装置13が取り付けられる。さらに、ベッド11上には、Z軸方向に移動可能なトラバースベース14が設けられる。トラバースベース14上には、X軸方向に移動可能な砥石台15が設けられる。
【0024】
砥石台15(本発明の「ハウジング」に相当)には、回転軸16が回転可能に支持される。回転軸16の軸方向一端には、砥石車17(本発明の「回転工具」に相当)が取り付けられる。つまり、砥石車17は、砥石台15に対して回転可能である。また、砥石台15上において、回転軸16よりX軸後方(
図1の上側)に、駆動モータ18(本発明の「回転駆動装置」に相当)が配置される。ここで、砥石台15を基準として、被加工物W側をX軸前方と称し、被加工物Wとは反対側をX軸後方と称する。
【0025】
駆動モータ18の出力軸18aと回転軸16の軸方向他端とには、駆動モータ18の出力軸18aの回転力を回転軸16に伝達するベルト19が架けられている。つまり、回転軸16および砥石車17は、駆動モータ18の回転力によって、砥石台15に対して回転可能となる。また、砥石台15には、砥石車17における被加工物Wを研削する研削点付近以外の部位を覆う砥石覆い20が設けられる。さらに、ベッド11には、被加工物Wの径を計測する定寸装置21が設けられる。さらに、研削盤1には、主軸12および砥石車17を回転しかつ被加工物Wに対する砥石車17の位置を制御する制御装置22が設けられる。
【0026】
(砥石台およびその周辺機器の詳細構成)
次に、砥石台15およびその周辺機器の詳細構成について、
図2〜
図7を参照しながら説明する。ここで説明する砥石台およびその周辺機器が、本発明の回転軸装置に相当する。
図2に示すように、砥石台15には、下方に突出するように取付部15aが形成されている。取付部15aには、ボールねじナット(図示せず)が取り付けられると共に、X軸方向のボールねじが挿通される。
【0027】
また、砥石台15のX軸前方部分は、上方へ突出するように形成されている。砥石台15のX軸前方部分は、
図4〜
図6に示すように、回転軸16の外周面を取り囲むように形成されている。ここで、回転軸16は、
図3に示すように、砥石台15のZ軸方向の両側から突き出ている。そして、
図2,
図4〜
図6に示すように、砥石台15のX軸後方には、駆動モータ18が載置されている。回転軸16と駆動モータ18の出力軸18aとは、平行とされている。
【0028】
また、回転軸16の外周面と砥石台15の貫通孔の内周面との間には、複数の軸受31,32が、回転軸16の軸方向に異なる位置に配置されている。本実施形態においては、複数の軸受31,32は、砥石台15のZ軸方向の両端側に配置され、砥石台15に対して回転軸16を回転可能に支持する。
【0029】
本実施形態においては、複数の軸受31,32は、公知の流体軸受を適用する。ただし、複数の軸受31,32は、流体軸受に限らず、転がり軸受を適用することもできる。また、本実施形態においては、2個の軸受31,32が配置されているが、3個以上の軸受が配置されるようにしてもよい。ここで、
図3に示すように、Z軸方向マイナス端側(
図3の右端側)に配置された第一軸受31の位置からZ軸方向プラス端側(
図3の左端側)に配置された第二軸受32の位置に至るまでの軸方向範囲を、ΔZと示す。なお、軸方向範囲ΔZは、砥石台15のZ軸方向幅と同一としているが、砥石台15のZ軸方向幅より狭い場合もある。
【0030】
第一軸受31は、回転軸16の第一被支持部16aを回転可能に支持し、第二軸受32は、回転軸16の第二被支持部16cを回転可能に支持する。回転軸16の第一被支持部16aと第二被支持部16cとの間には、大径の中間部16bが形成されている。また、回転軸16の第一被支持部16aよりさらにZ軸方向マイナス側には、砥石車17が取り付けられている。一方、回転軸16の第二被支持部16cよりさらにZ軸方向プラス側には、ベルト19が架けられる係止部16dが形成されている。
【0031】
つまり、第一軸受31には、砥石車17による加工に応じた径方向の負荷が主として作用する。一方、第二軸受32には、ベルト19による張力に応じた径方向の負荷が主として作用する。そのため、第一軸受31の発熱量は加工負荷の依存度が高く、第二軸受32の発熱量は張力による負荷の依存度が高い。このように、第一軸受31の発熱量と第二軸受32の発熱量は異なる。
【0032】
ここで、流体軸受である複数の軸受31,32に供給される軸受用流体は、タンク51に貯留されている。タンク51に貯留されている軸受用流体は、ポンプ52によって、複数の軸受31,32に供給される。そして、ポンプ52から複数の軸受31,32へ軸受用流体を流通させる流路41が、砥石台15に形成されている。さらに、砥石台15において、第一軸受31と第二軸受32の軸方向間の下方には、それぞれの軸受31,32から排出された軸受用流体を一時的に貯留する溜まり部42が形成されている。
【0033】
さらに、砥石台15には、溜まり部42からタンク51へ軸受用流体を環流させる排出流路43が形成されている。排出流路43は、溜まり部42から、回転軸16の軸方向に延びるように形成されている。詳細には、排出流路43は、溜まり部42から、砥石車17とは反対側、すなわち回転軸16の係止部16d側に向かって形成されている。
【0034】
砥石台15のうちほぼ中央よりZ軸方向マイナス端側(
図3の右端側)には、回転軸16の軸直交方向外方において周方向に向かって、第一種の冷却流路61を構成する複数の支流路61a〜61eが形成されている。また、砥石台15のうちほぼ中央よりZ軸方向プラス端側(
図3の左端側)には、回転軸16の軸直交方向外方において周方向に向かって、第二種の冷却流路62を構成する複数の支流路62a〜62fが形成されている。つまり、第一種の冷却流路61と第二種の冷却流路62とは、軸方向に隣り合うように形成されている。ここで、複数の冷却流路61,62が、本発明の「複数の冷却流路」に相当する。
【0035】
それぞれの支流路61a〜61e,62a〜62fは、冷却液を流通させる。ただし、第一種の冷却流路61と第二種の冷却流路62とは、後述するように、それぞれ独立している。そして、複数の支流路61a〜61e,62a〜62fは、
図7に示すように、ほぼ環状のC字形状に形成されている。
【0036】
さらに、複数の支流路61a〜61e,62a〜62fは、それぞれ軸方向に異なる位置に形成され、かつ、軸方向に等間隔に形成される。つまり、第一種の冷却流路61を構成する複数の支流路61a〜61eが、軸方向に所定の等間隔に形成されている。また、第二種の冷却流路62を構成する複数の支流路62a〜62fが、軸方向に上記同様の所定の等間隔に形成される。さらに、第一種の冷却流路61を構成するZ軸方向プラス端側の支流路61eと、第二種の冷却流路62を構成するZ軸方向マイナス端側の支流路62aとの離間距離が、それぞれの冷却流路61,62を構成する複数の支流路の離間距離(上記の所定の等間隔に相当する距離)に等しく形成されている。
【0037】
このように、複数の支流路61a〜61e,62a〜62fは、第一軸受31の位置から第二軸受32の位置に至るまでの軸方向範囲ΔZの全て(「軸方向全範囲」に相当する)に亘って形成されている。詳細には、第一種の冷却流路61の一部(本実施形態では61a〜61c)が、第一軸受31の外周側に形成され、第二種の冷却流路62の一部(本実施形態では62d〜62f)が、第二軸受32の外周側に形成され、それぞれの残りが、第一軸受31と第二軸受32との間の外周側に形成される。
【0038】
ここで、複数の支流路61a〜61e,62a〜62fのうち軸方向に隣り合う支流路同士は、流路を形成するために離れている。ただし、隣り合う支流路の離間距離は、それぞれの支流路を流通する冷却液によって、支流路間に対する冷却効果を十分に発揮できる程度の離間距離である。さらに、第一種の冷却流路61を構成する支流路61eと第二種の冷却流路62を構成する支流路62aとの間の距離が、他の支流路間の距離と同様である。そのため、隣り合う支流路61e,62aの離間距離は、それぞれの支流路61e,62aを流通する冷却液によって、支流路61e,62a間に対する冷却効果を十分に発揮できる程度の離間距離である。従って、複数の支流路61a〜61e,62a〜62fを流通する冷却液により、砥石台15における軸受間範囲ΔZの全てに亘って冷却効果を発揮できる。
【0039】
また、上述したように、回転軸装置における発熱源には、複数の軸受31,32が含まれる。しかし、砥石台15における軸受31,32の外周側には複数の支流路61a〜61e,62a〜62fが形成されているため、砥石台15における軸受31,32の外周側は冷却される。
【0040】
さらに、砥石台15における複数の軸受31,32の軸方向間は、両側の軸受31,32から熱が伝達される。つまり、発熱源である複数の軸受31,32の間の熱変位を抑制することも求められる。そこで、砥石台15が軸受間範囲ΔZの全てにおいて満遍なく冷却されることにより、砥石台15の軸受間範囲ΔZの全ての熱変位を小さくできる。特に、砥石台15の軸方向中央部分においても複数の支流路61a〜61e,62a〜62fの一部(本実施形態では61d〜61e,62a〜62c)が形成されているため、熱の移動を確実に絶つことができる。そのため、結果として当該部分における熱変位を小さくできる。当然に、砥石台15から例えばトラバースベース14などの別の部材へ熱伝達されることも抑制でき、当該別の部材の熱変位を抑制できる。
【0041】
さらに、複数の支流路61a〜61e,62a〜62fは、回転軸16のみならず、溜まり部42を軸直交方向外方から囲むように形成されている。ここで、本実施形態においては、排出流路43が溜まり部42から軸方向に延びるように形成されている。そのため、支流路61a〜61e,62a〜62fは、さらに排出流路43を軸直交方向外方から囲むように形成されていることになる。
【0042】
ここで、第一,第二軸受31,32に流体軸受が適用される場合には、軸受用流体が発熱する。そして、軸受用流体は、上述したように、回収するために、溜まり部42および排出流路43を流通する。つまり、軸受用流体を貯留する溜まり部42は、発熱した軸受用流体の熱の影響を大きく受ける。さらに、排出流路43も、熱の影響を受ける。
【0043】
複数の支流路61a〜61e,62a〜62fは、上述したように、回転軸16、溜まり部42および排出流路43を囲むように形成されている。これにより、回転軸16の周囲のみならず、溜まり部42の周囲および排出流路43の周囲を確実に冷却できる。
【0044】
複数の支流路61a〜61e,62a〜62fのそれぞれのC字状の両端は、それぞれ砥石台15の外周面に開口している。そして、第一種の冷却流路61を構成する複数の支流路61a〜61eのC字状の一端は、第一入口分岐管71に連通し、C字状の他端は、第一出口分岐管72に連通している。また、第二種の冷却流路62を構成する複数の支流路62a〜62fのC字状の一端は、第二入口分岐管73に連通し、C字状の他端は、第二出口分岐管74に連通している。
【0045】
第一入口分岐管71には、冷却液の供給装置80によって、第一入口流路81を介して冷却液が供給される。第一入口流路81には、第一流量調整弁82が設けられており、予め設定された流量の冷却液が流通するようにされている。第一出口分岐管72は、第一出口流路83を介して供給装置80に連通されている。
【0046】
従って、供給装置80から供給された冷却液は、第一入口流路81中における第一流量調整弁82により流量を調整され、第一入口分岐管71に供給される。続いて、第一入口分岐管71に供給された冷却液は、第一種の冷却流路61を構成するそれぞれの支流路61a〜61eを流通した後に、第一出口分岐管72に排出される。第一出口分岐管72に排出された冷却液は、第一出口流路83を介して、供給装置80に戻される。
【0047】
また、第二入口分岐管73には、冷却液の供給装置80によって、第二入口流路84を介して冷却液が供給される。第二入口流路84には、第二流量調整弁85が設けられており、予め設定された流量の冷却液が流通するようにされている。そして、第二出口分岐管74は、第二出口流路86を介して供給装置80に連通されている。
【0048】
従って、供給装置80から供給された冷却液は、第二入口流路84中における第二流量調整弁85により流量を調整され、第二入口分岐管73に供給される。続いて、第二入口分岐管73に供給された冷却液は、第二種の冷却流路62を構成するそれぞれの支流路62a〜62fを流通した後に、第二出口分岐管74に排出される。第二出口分岐管74に排出された冷却液は、第二出口流路86を介して、供給装置80に戻される。
【0049】
第二流量調整弁85を流通する冷却液の流量は、第一流量調整弁82を流通する冷却液の流量と同一とすることもできるし、異なるようにすることもできる。通常、両者は、異なるように設定される。つまり、第一種の冷却流路61を構成する支流路61a〜61eと第二種の冷却流路62を構成する支流路62a〜62fとは、独立している。
【0050】
ここで、独立とは、第一種の冷却流路61を流通する冷却液の特性と第二種の冷却流路62を流通する冷却液の特性とを異ならせることができるようにされていることを意味する。本実施形態においては、冷却液の特性として冷却液の流量を冷却流路61,62に応じて異ならせることとしている。また、本実施形態においては、冷却源としての供給装置80は、共通しているが、供給源が独立していてもよい。
【0051】
上記のように、第一,第二流量調整弁82,85のそれぞれを流通する冷却液の流量を異ならせることで、第一種の冷却流路61による冷却能力と第二種の冷却流路62による冷却能力を異ならせることができる。そして、第一軸受31と第二軸受32とは発熱量が異なる。そこで、第一種の冷却流路61と第二種の冷却流路62とを独立して形成することにより、それぞれの軸方向位置の発熱量に応じた冷却能力を発揮させることができる。従って、砥石台15の軸方向位置の発熱量に応じた冷却を行うことにより、砥石台15の軸受間範囲ΔZの全てにおける熱変位の差を小さくすることができる。
【0052】
このように、砥石台15の軸受間範囲ΔZの全てを満遍なく冷却すると共に、それぞれの軸方向位置に応じて冷却能力を調整することにより、砥石台15の熱変位の影響を小さくできる。そして、砥石台15およびその周囲の部材の熱変位を抑制できるため、研削盤1による加工精度をさらに向上することができる。
【0053】
<第二実施形態>
次に、本実施形態の砥石台15およびその周辺機器について、
図8〜
図10を参照しながら説明する。上記実施形態においては、第一,第二流量調整弁82,85は、予め設定された流量の冷却液を流通するものとした。本実施形態では、第一,第二流量調整弁82,85は、流量制御可能な弁を適用する。さらに、研削盤1は、複数の検出器91,92と冷却液制御装置93とを備える。
【0054】
複数の検出器91,92は、温度センサを適用し、Z軸方向に異なる位置のそれぞれに配置する。第一検出器91は、砥石台15のうち砥石車17側(Z軸方向マイナス側)であって、回転軸16よりも被加工物W側(X軸方向マイナス側)に配置されている。一方、第二検出器92は、砥石台15のうちベルト19側(Z軸方向プラス側)であって、回転軸16よりも被加工物W側(X軸方向マイナス側)に配置されている。ここで、砥石台15における回転軸16よりも被加工物W側の部位は、熱変位が加工精度に大きく影響する部位である。
【0055】
冷却液制御装置93は、第一検出器91の検出値に基づいて第一流量調整弁82を制御して、第一流量調整弁82により流通する冷却液の流量を制御する。また、冷却液制御装置93は、第二検出器92の検出値に基づいて第二流量調整弁85を制御して、第二流量調整弁85により流通する冷却液の流量を制御する。つまり、冷却液制御装置93は、第一検出器91の検出値に基づいて第一種の冷却流路61に供給する冷却液の流量を制御し、第二検出器92の検出値に基づいて第二種の冷却流路62に供給する冷却液の流量を制御する。冷却液制御装置93は、例えば、検出値としての温度が大きいほど、流通する冷却液の流量を多くするように制御する。
【0056】
このように、複数の検出器91,92のそれぞれによる検出値に応じて、複数の冷却流路61,62のそれぞれに供給する冷却液の流量を制御することで、砥石台15の軸受間範囲ΔZの全てにおける熱変位の差を小さくできる。
【0057】
<その他>
上記第一実施形態においては、第一流量調整弁82および第二流量調整弁85を調整することにより、第一種の冷却流路61および第二種の冷却流路62を流通するそれぞれの冷却液の流量が調整されている。この他に、第一流量調整弁82に代えて第一温度調整装置を設け、第二流量調整弁85に代えて第二温度調整装置を設けることもできる。
【0058】
この場合、第一温度調整装置により調整された温度の冷却液が、第一種の冷却流路61を流通し、第二温度調整装置により調整された温度の冷却液が、第二種の冷却流路62を流通する。つまり、第一種の冷却流路61を構成する支流路61a〜61eと第二種の冷却流路62を構成する支流路62a〜62fとは、異なる温度の冷却液が流通する。
【0059】
ここで、上記実施形態において説明したように、第一種の冷却流路61と第二種の冷却流路62とは独立しており、独立とは、第一種の冷却流路61を流通する冷却液の特性と第二種の冷却流路62を流通する冷却液の特性とを異ならせることができるようにされていることを意味する。すなわち、上記のように温度を調整する場合において、上記「冷却液の特性」とは、冷却液の温度に相当する。また、第一種の冷却流路61と第二種の冷却流路62をそれぞれ流通する冷却液について、流量を調整しつつ、かつ、温度を調整することもできる。
【0060】
また、上記第二実施形態において、第一流量調整弁82に代えて第一温度調整装置を設け、第二流量調整弁85に代えて第二温度調整装置を設けることもできる。この場合、冷却液制御装置93は、第一,第二温度調整装置を制御して、それぞれの冷却液の温度を制御する。
【0061】
上記実施形態においては、それぞれの支流路61a〜61e,62a〜62fは、C字形状に形成したが、例えば、第一種の冷却流路61を構成する支流路61a〜61e、および、第二種の冷却流路62を構成する支流路62a〜62fを、それぞれ一本の螺旋状に形成してもよい。この場合、砥石台15には、軸方向に異なる位置に、2本の螺旋状の流路が形成されることになる。
【0062】
また、上記実施形態においては、第一種の冷却流路61を構成する支流路61a〜61eには、同一流量の冷却液が供給され、第二種の冷却流路62を構成する支流路62a〜62fには、同一流量の冷却液が供給される。この他に、それぞれの支流路61a〜61e,62a〜62fに供給される冷却液の流量を異なるようにしてもよい。
【0063】
例えば、それぞれの支流路61a〜61e,62a〜62fの入口側に、絞り弁などの流量調整弁を配置するとよい。また、供給装置80からそれぞれの支流路61a〜61e,62a〜62fへ冷却液を供給する流路を、それぞれ別々に形成し、それぞれの流路に流量調整弁を配置してもよい。この場合、それぞれの支流路61a〜61e,62a〜62fが、本発明における複数の冷却流路のそれぞれの冷却流路に相当することになる。また、それぞれの支流路61a〜61e,62a〜62fを流通する冷却液の温度を異なるようにしてもよい。
【0064】
また、第二実施形態において、検出器91,92は、砥石台15の温度を検出する温度センサを適用したが、回転軸16の温度を検出する温度センサ、砥石台15の熱変位を検出する変位センサ、および回転軸16の熱変位を検出する変位センサを適用することもできる。例えば、熱変位を検出する変位センサは、ベッド11などの基準に対するそれぞれの変位を検出する。また、回転軸16の熱変位は、砥石台15に対する回転軸16の径方向変位を検出することができる。
【0065】
また、本発明は、砥石台15を含む回転軸装置に適用したが、研削盤1の主軸12を含む回転軸装置に適用することもできる。また、研削盤に限らず、旋盤の主軸装置、マシニングセンタの主軸装置などにも本発明は適用できる。