(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076196
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】可燃性ガス検出器用硫化水素除去フィルタ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20170130BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20170130BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
G01N27/12 B
B01D53/14 100
B01J20/22 A
【請求項の数】3
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2013-110502(P2013-110502)
(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公開番号】特開2014-228501(P2014-228501A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250421
【氏名又は名称】理研計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087974
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】芝崎 克一
(72)【発明者】
【氏名】小川 高史
(72)【発明者】
【氏名】景本 宗良
【審査官】
黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−122001(JP,A)
【文献】
特表2002−535649(JP,A)
【文献】
特開平07−185324(JP,A)
【文献】
特開平04−290546(JP,A)
【文献】
特開2005−083956(JP,A)
【文献】
特開2003−149100(JP,A)
【文献】
特表2008−537554(JP,A)
【文献】
特開2003−232770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/12
B01D 53/14
B01J 20/22
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状体の基材に乳酸銀を担持させて構成された可燃性ガス検出器用硫化水素除去フィルタ材。
【請求項2】
前記粒状体がアルミナ粒子である請求項1に記載の可燃性ガス検出器用硫化水素除去フィルタ材。
【請求項3】
前記粒状体がシリカ粒子である請求項1に記載の可燃性ガス検出器用硫化水素除去フィルタ材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン、イソブタン、メチルエチルケトン、トルエン等の可燃性ガス検出器のガス流入口に配置して硫化水素を除去するのに適したフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
メタン、イソブタン、メチルエチルケトン、トルエン等の可燃性ガスの検出には半導体ガスセンサが利用されているが、このセンサは被検出流体(エア)に硫化水素が含まれていると検出出力値が低下するという問題がある。
このような硫化水素による影響を防止するために特許文献1のようなフィルタをガス検出器のガス流入口に配置することが提案されている。
【0003】
このフィルタは、ガス流入口側に硝酸銀を担持させたシリカ粒子を、また下流側に酸化マグネシウムを担持させた
シリカ粒子を筒状容器に充填して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-122001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、硝酸銀と硫化水素との反応により酸性ガス、つまり硝酸ガスが発生するため、下流側に被検出ガスに無反応、非吸着の除酸剤(酸化マグネシウム)が必要になるという問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは除酸剤が不要な可燃性ガス検出器用硫化水素除去フィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を達成するために本発明の可燃性ガス検出器用硫化水素除去フィルタは粒状体の基材に乳酸銀を担持させて構成されている。
【発明の効果】
【0007】
乳酸銀は、硫化水素と酸性ガスを生じることなく反応して硫化水素が検出器に流れ込むのを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のフィルタ材の一実施例を示す模式図である。
【
図2】本発明のフィルタ材の破過特性を示す線図である。
【
図3】本発明のフィルタ材を使用した場合と不使用の場合との検出結果を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
そこで以下に本発明の詳細を実施例に基づいて説明する。
フィルタを構成する吸収剤1は、被験ガスである可燃性ガスに非活性な材料からなり、積層状態でも通気性を確保できる程度粒径の基材、たとえば粒径0.5mmのアルミナ粒子を担体として乳酸銀を担持させて構成されている。
【0010】
すなわち、濃度1W/v%の乳酸銀の水溶液に基材を浸漬させ、その後に基材を溶液から引き上げ、室温よりも若干高い温度、例えば40℃程度で自然乾燥させる。
【0011】
そして両端に通気口2、3を有する内径11.5mmの筒状容器4に通気性を備えた粒子抜け止め板5,5を介して層厚10mmとなるように上記吸収剤1を充填してフィルタを制作し、濃度50ppmの硫化水素を含む空気を500cc/分でこのフィルタ材に供給したところ吸収剤が担持している薬剤の量に比例して
図2に示したように破過時間が長くなった
【0012】
このフィルタ材は吸収剤に担持されている乳酸銀が硫化水素と
2C3H5AgO3 + H2S →Ag2S+2C3H6O3
なる反応により酸性ガスを発生することなく、また被検出物である可燃性ガスと反応、吸着することなく硫化水素を捕捉する。
【0013】
図3は、メタン(50%LEL)と硫化水素(10ppm)との混合ガスを一定期間連続して本願発明のフィルタ材を使用して測定した場合(■)とフィルタ材を使用しないで測定した場合(◆)との検出結果を示すもので、フィルタ材を使用しない場合には検出値が急速に低下しているが、本発明のフィルタ材を使用した場合には18時間を経過しても検出値の低下は見られなかった。
【0014】
なお、上述の実施例においては粒径の基材としてアルミナ粒子を使用したが、同程度の粒径のシリカゲル等のシリカ粒子を用いても同様の効果を奏する。
すなわち、シリカ粒子は多孔質体であるため単体では被験ガスを吸着するが、本発明においては乳酸銀により被覆されるため多孔質体としての機能が喪失し、被検出物である可燃性ガスは吸着を受けることなくフィルタを通過する。