(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
最上層から最下層までの異なる複数層の配線が互いに電気的に接続されて形成された多層構造の多層配線と、該多層配線の前記最上層の配線以外の配線近傍に該多層配線に電気的に絶縁するように形成された少なくとも1つのグランド配線とを有する配線基板を検査する配線基板の検査装置であって、
前記配線基板の上部面と対向して配置される対向電極と、
前記対向電極および前記多層配線に電気的に接続して、前記対向電極および前記多層配線の間の電気容量を測定する電気容量計と、
アースと、
前記グランド配線、前記対向電極および前記アースに接続して、前記グランド配線が全て前記対向電極に電気的に接続する第1の接続状態と、1つの前記グランド配線が前記アースに電気的に接続する第2の接続状態とを切り替えて選択するスイッチボックスと、
前記第1の接続状態で前記電気容量計により測定された第1の電気容量および前記第2の接続状態で前記電気容量計により測定された第2の電気容量を差分して、電気容量値を抽出するよう構成された制御部とを有し、
前記制御部により抽出された電気容量値により、前記多層配線の層単位の電気容量を測定するよう構成されたことを特徴とする配線基板の検査装置。
最上層から最下層までの異なる複数層の配線が互いに電気的に接続されて形成された多層構造の多層配線と、該多層配線の前記最上層の配線以外の配線近傍に該多層配線に電気的に絶縁するように形成された少なくとも1つのグランド配線とを有する配線基板を検査する配線基板の検査方法であって、
前記配線基板の上部面と対向するように対向電極を配置し、
前記グランド配線、前記対向電極およびアースに接続して、前記グランド配線が全て前記対向電極に電気的に接続する第1の接続状態と、1つの前記グランド配線が前記アースに電気的に接続する第2の接続状態とを切り替えて選択するスイッチボックスを設け、
前記スイッチボックスで配線の切り替えを行って前記第1の接続状態で第1の電気容量を測定し、
前記スイッチボックスで配線の切り替えを行って前記第2の接続状態で第2の電気容量を測定し、
前記第1の電気容量および前記第2の電気容量を差分して電気容量値を抽出し、前記多層配線の層単位の電気容量を測定するよう構成されたことを特徴とする配線基板の検査方法。
【背景技術】
【0002】
実装回路基板における信号伝送の高速化が進む中、多層配線基板のインピーダンス整合をとることが重要となっている。電気信号の伝送路において、送り出し側電圧が一定の場合、その回路の出力インピーダンスと、受け側回路の入力インピーダンスを等しくすることにより、受け側回路において得られる電力が最大になる性質を持つ。そのため、効率的に電気信号の伝送を行うためには、それらのインピーダンスを等しく(整合)する必要がある。
【0003】
配線基板においてインピーダンス整合を取るためには、配線基板における抵抗、リアクタンス、コンダクタンス(電気容量)が、設計された期待値どおりに製造されていることが重要となる。
【0004】
しかしながら、多層配線基板の場合、その製造が完成した段階で、構成要素であるコンダクタンス(以下、電気容量ともいう。)を、多層配線基板を構成する層単位で測定し、その確認を行うことは難しい。
【0005】
例えば、特許文献1に記載されるように、多層配線基板の検査において、被検査配線とそれに対向する電極間に発生する電気容量を測定し、電気配線の良否を判定する検査方法が知られている。
【0006】
図4は、従来の多層配線基板の検査方法を説明する模式的な断面図である。
【0007】
図4に示す従来の検査方法において、被検査対象である配線基板1101は、基板内部に、下層配線1121と上層配線1122とから構成される電気配線1120を有し、多層配線構造を有する。そして、対向電極1102が、配線基板1101に対向するように配置される。対向電極1102は、配線基板1101の全体を覆う大きさを備え、一部で電気容量計1110と電気的に接続されている。
【0008】
また、電気容量計1110は、一方で、配線基板1101の電気配線1120上の端子1123または端子1124と電気的に接続される。
図4に示す検査方法においては、電気容量計1110によって、電気配線1120と対向配置された対向電極1102と電気配線1120との間の電気容量を測定し、電気配線1120の良否を判定する。
【0009】
具体的には、電気配線1120に断線不良が発生していない場合、電気容量計1110により測定される電気容量は、電気配線1120を構成する下層配線1121と対向電極1102との間の電気容量C100と、電気配線1120を構成する上層配線1122と対向電極1102との間の電気容量C200との合成電気容量となる。これは設計上の期待値と等しいので、電気配線1120を良品と判定することができる。
【0010】
一方、例えば、下層配線1121と上層配線1122との間に断線不良があるときに、電気容量計1110を端子1123に接続させた場合、下層配線1121と対向電極1102との間の電気容量C100のみが測定される。また、電気容量計1110を端子1124に接続させた場合、上層配線1122と対向電極1102との間の電気容量C200のみが測定される。いずれの場合においても、測定された電気容量は、期待値である電気容量C100と電気容量C200との合成電気容量より小さくなるため、電気配線1120に断線不良が生じていることを検出することができる。
【0011】
このように、従来の検査方法において、対向電極を用いた電気容量の測定は、多層配線基板の電気配線の良否判断を行う場合において有効となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、電気容量の測定による従来の配線基板の検査方法は、多層配線構造の層単位で電気容量の測定を行うものではなく、それらの合成電気容量を測定する方法となっている。すなわち、従来の検査方法は、電気配線の層単位ごとの電気容量の測定を目的とするものではなく、対向電極を用いた電気容量の測定を行うものの、層単位の電気容量の測定を行うことはできなかった。
【0014】
上述したように、配線基板においては、インピーダンス整合を取るために、その電気容量が設計値どおりに製造されることが重要となり、その確認と、必要な場合には製造工程へ確認結果のフィードバックが求められる。しかしながら、従来知られた配線基板の検査方法等は、そのような確認作業に対して適用可能なものではなかった。
【0015】
すなわち、多層配線構造を有する配線基板に対して層単位毎の電気容量を確認しようとする場合、従来の対向電極を用いた電気容量の測定を行う配線基板の検査装置や検査方法を用いることはできなかった。
【0016】
以上のように、多層配線構造を有する配線基板の場合、その基板が完成した段階で、その構成要素である電気容量を、従来方法を利用して、配線基板を構成する層単位で測定することは難しい。そのため、配線基板においては、インピーダンス整合を取るため、その電気容量が設計値どおりに製造されることが求められるが、配線基板の製造後、電気容量が期待値どおりであるかを確認することが難しい。その結果、配線基板の電気容量が期待値から外れている場合に、配線基板の製造工程へフィードバックし、製造条件等の改善を進めることが難しいという問題があった。
【0017】
そこで、多層配線構造を有する配線基板において、その配線基板が完成した段階で構成要素である電気容量を、配線基板を構成する層単位で測定する配線基板の検査方法およびその方法を実現する配線基板の検査装置が求められている。そして、その測定結果を配線基板の製造工程にフィードバックし、期待値どおりの電気容量を有する配線基板の製造を可能とする技術が求められている。
【0018】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものである。
【0019】
すなわち、本発明の目的は、多層配線構造を有する配線基板の層単位の電気容量を測定する配線基板の検査装置を提供することにある。
【0020】
また、本発明の目的は、多層配線構造を有する配線基板の層単位の電気容量を測定する配線基板の検査方法を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の態様は、最上層から最下層までの異なる複数層の配線が互いに電気的に接続されて形成された多層構造の多層配線と、その多層配線の最上層の配線以外の配線近傍にその多層配線に電気的に絶縁するように形成された少なくとも1つのグランド配線とを有する配線基板を検査する配線基板の検査装置であって、
配線基板の上部面と対向して配置される対向電極と、
対向電極および多層配線に電気的に接続して、対向電極および多層配線の間の電気容量を測定する電気容量計と、
アースと、
グランド配線、対向電極およびアースに接続して、グランド配線が全て対向電極に電気的に接続する第1の接続状態と、1つのグランド配線がアースに電気的に接続する第2の接続状態とを切り替えて選択するスイッチボックスと、
第1の接続状態で電気容量計により測定された第1の電気容量および第2の接続状態で電気容量計により測定された第2の電気容量を差分して、電気容量値を抽出するよう構成された制御部とを有し、
制御部により抽出された電気容量値により、多層配線の層単位の電気容量を測定するよう構成されたことを特徴とする配線基板の検査装置に関する。
【0023】
本発明の第1の態様において、グランド配線は複数あって、多層配線の最上層の配線以外の各配線の近傍にそのグランド配線の1つがその多層配線に電気的に絶縁するように配置されており、
第2の接続状態は、1つのグランド配線がアースに電気的に接続して残余のグランド配線が対向電極に電気的に接続する複数種類の接続状態を含み、スイッチボックスは、第1の接続状態と、アースに電気的に接続するグランド配線がそれぞれ異なる複数種類の第2の接続状態とから、1つの接続状態を選択して切り替えるものであり、
制御部は、第1の電気容量と、複数種類の第2の接続状態のうちの1つで電気容量計により測定された第2の電気容量とを差分して、電気容量値を抽出するものであることが好ましい。
【0024】
本発明の第1の態様において、配線基板の前記多層配線は、下層配線と上層配線とからなる2層配線構造を有し、グランド配線は1つであって、その下層配線の近傍に設けられたものであり、
第1の接続状態は、1つのグランド配線が対向電極に電気的に接続する状態であり、
第2の接続状態は、1つのグランド配線がアースに電気的に接続する状態であり、
制御部は、第1の電気容量と、第2の接続状態で電気容量計により測定された第2の電気容量とを差分して、電気容量値を抽出するものであることが好ましい。
【0025】
本発明の第2の態様は、最上層から最下層までの異なる複数層の配線が互いに電気的に接続されて形成された多層構造の多層配線と、その多層配線の最上層の配線以外の配線近傍にその多層配線に電気的に絶縁するように形成された少なくとも1つのグランド配線とを有する配線基板を検査する配線基板の検査方法であって、
配線基板の上部面と対向するように対向電極を配置し、
グランド配線、対向電極およびアースに接続して、グランド配線が全て対向電極に電気的に接続する第1の接続状態と、1つのグランド配線がアースに電気的に接続する第2の接続状態とを切り替えて選択するスイッチボックスを設け、
スイッチボックスで配線の切り替えを行って第1の接続状態で第1の電気容量を測定し、
スイッチボックスで配線の切り替えを行って第2の接続状態で第2の電気容量を測定し、
第1の電気容量および第2の電気容量を差分して電気容量値を抽出し、多層配線の層単位の電気容量を測定するよう構成されたことを特徴とする配線基板の検査方法に関する。
【0026】
本発明の第2の態様において、グランド配線は複数あって、多層配線の最上層の配線以外の各配線の近傍にそのグランド配線の1つがその多層配線に電気的に絶縁するように配置されており、
第2の接続状態は、1つのグランド配線がアースに電気的に接続して残余のグランド配線が対向電極に電気的に接続する複数種類の接続状態を含み、スイッチボックスは、第1の接続状態と、アースに電気的に接続するグランド配線がそれぞれ異なる複数種類の第2の接続状態とから、1つの接続状態を選択して切り替えるものであり、
第2の電気容量の測定は、スイッチボックスにより配線の切り替えを行って、アースに電気的に接続するグランド配線が互いに異なる複数種類の第2の接続状態のそれぞれについて行われ、複数種類の第2の電気容量を取得するものであり、
電気容量値の抽出は、第1の容量値と複数種類の第2の電気容量のそれぞれとを用いて複数回行われ、抽出された複数種類の各電気容量値により、多層配線の層単位の電気容量を測定するよう構成されることが好ましい。
【0027】
本発明の第2の態様において、配線基板の多層配線は、下層配線と上層配線とからなる2層配線構造を有し、グランド配線は1つであって、下層配線の近傍に設けられたものであり、
第1の接続状態は、1つのグランド配線が対向電極に電気的に接続する状態であり、
第2の接続状態は、1つのグランド配線がアースに電気的に接続する状態であることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の第1の態様によれば、多層配線構造を有する配線基板の層単位の電気容量を測定する配線基板の検査装置が提供される。
【0029】
また、本発明の第2の態様によれば、多層配線構造を有する配線基板の層単位の電気容量を測定する配線基板の検査方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施形態1.
以下、本発明の第1実施形態である配線基板の検査装置について、図面を用いて説明する。
【0032】
図1は、本発明の第1実施形態である配線基板の検査装置の構成を示す図である。
【0033】
図1に示すように、本発明の第1実施形態の配線基板の検査装置1は、多層配線構造を有する配線基板を検査の対象とすることができる。すなわち、検査装置1は、最上層から最下層までの異なる複数層の配線が互いに電気的に接続されて形成された多層構造の多層配線を有する配線基板を検査の対象とすることができる。
図1に示す多層配線基板10は、検査対象である多層配線構造を有する配線基板の例である。本発明の第1実施形態の配線基板の検査装置1は、多層配線基板10の構成要素である電気容量を、多層配線基板10を構成する層単位で測定するように構成されており、多層配線基板10の検査を可能とする。
【0034】
図1に示すように、本発明の第1実施形態の配線基板の検査装置1は、対向電極2と、測定針3と、電気容量計4と、スイッチボックス5と、アース6と、制御部7と、GND測定針8とを有して構成される。
【0035】
そして、被検査対象である多層配線基板10は、絶縁性の材料から基板本体が構成され、その基板本体内部に、
図1の下層側の下層配線11と上層側の上層配線12とから構成される電気配線13を備えて2層配線構造を有する。すなわち、電気配線13は、最上層から最下層までの離間配置された異なる2層の上層配線12と下層配線11とが、導電性の接続部分18によって互いに電気的に接続されて構成される。電気配線13は、多層構造を有する多層配線の一例である。多層配線基板10の上部面には測定端子14が設けられ、測定端子14は、基板内部の電気配線13の上層配線12と電気的に接続されている。
【0036】
また、多層配線基板10は、基板内部に、電気配線13と電気的に絶縁するように形成された配線を有している。多層配線基板10は、この電気配線13と電気的に絶縁するように基板内部に設けられている配線を、グランド配線として機能する内層グランド層15に用いる。内層グランド層15は、電気配線13の最上層にある上層配線12を除く、下層配線11の近傍に設けられる。すなわち、内層グランド層15は、下層配線11の近傍に、電気配線13と電気的に絶縁するように離間して形成されている。そのため、内層グランド層15と上層配線12との間の距離は、内層グランド層15と下層配線11との間の距離に比べてはるかに大きい。そして、内層グランド層15は、多層配線基板10の上部面に設けられたGND測定端子16に電気的に接続されている。
【0037】
本実施形態の配線基板の検査装置1において、対向電極2は、多層配線基板10に対向配置されて使用される。より具体的には、対向電極2は、多層配線基板10の上部面と対向配置される。対向電極2は、多層配線基板10を十分に覆うことができる大きさの導電性材料からなる。対向電極2は、例えば、金属板からなる。対向電極2は電気容量計4に電気的に接続されている。
【0038】
測定針3は、その先端が検査対象の電極に接触するようにして使用される。例えば、測定針3は、多層配線基板10の測定端子14に接触するようにして使用される。そして、測定針3は、一方で電気容量計4に接続されている。したがって、測定針3は、検査対象の電極と電気容量計4との間を電気的に接続することができる。
【0039】
電気容量計4は、電気容量を測定するための計測機器である。電気容量計4は、対向電極2と電気的に接続しており、対向電極2と、測定針3を介して接続された電極との間の電気容量を測定することができる。より具体的には、電気容量計4は、対向電極2および電気配線13に電気的に接続して、対向電極2および電気配線13の間の電気容量を測定することができる。
【0040】
スイッチボックス5は、本実施形態の検査装置1において、所望とする方法の電気容量の測定が可能となるように、配線の切り替えが行えるように構成されている。すなわち、スイッチボックス5は、対向電極2に接続し、アース6に接続し、さらに、GND測定針8に接続する。GND測定針8は、その先端が検査対象の多層配線基板10のGND測定端子16に接触するようにして使用されて、スイッチボックス5と、多層配線基板10の内層グランド層15との間を電気的に接続することができる。
【0041】
そして、スイッチボックス5は、対向電極2とGND測定針8との間を電気的に接続するか、または、アース6とGND測定針8との間を電気的に接続するかを切り替えて選択できるように構成されている。そのため、本実施形態の検査装置1は、スイッチボックス5を用いることにより内層グランド層15が対向電極2と電気的に接続する第1の接続状態、または、多層配線基板10の内層グランド層15がアース6と電気的に接続する第2の接続状態を切り替えて選択することができる。
【0042】
尚、本実施形態の検査装置1において、スイッチボックス5における上述の配線の切り替えは、次の制御部7によって制御がなされるように構成されている。
【0043】
本実施形態の検査装置1の制御部7は、電気容量計4およびスイッチボックス5に接続する。そして、スイッチボックス5における上述の配線の切り替えを制御する制御装置としての機能を有する。併せて、電気容量計4を用いて測定された電気容量を記憶して記憶装置としての機能を有する。さらに、制御部7は、記憶された所定の電気容量を用いて差分演算を行い、所望とする電気容量値を抽出する差分演算装置としての機能を有する。
【0044】
すなわち、制御部7は、スイッチボックス5を制御して、配線の切り替えを選択する。その結果、GND測定針8と対向電極2との間を電気的に接続し、多層配線基板10の内層グランド層15が対向電極2と電気的に接続する第1の接続状態をとれるようにする。そして、第1の接続状態で電気容量計4が対向電極2と多層配線基板10の電気配線13との間の電気容量を測定した後、制御部7は、得られた電気容量値を第1の電気容量とし、例えば、保持値Aとして記憶する。
【0045】
また、制御部7は、スイッチボックス5を制御して配線の切り替えを選択し、アース6とGND測定針8との間を電気的に接続し、多層配線基板10の内層グランド層15がアース6と電気的に接続する上述の第2の接続状態をとれるようにする。そして、第2の接続状態で電気容量計4が対向電極2と多層配線基板10の電気配線13との間の電気容量を測定した後、制御部7は、得られた電気容量値を第2の電気容量とし、例えば、保持値Bとして記憶する。
【0046】
そして、制御部7は記憶された上述の保持値Aと保持値Bとを差分する機能を備え、第1の電気容量である保持値Aと第2の電気容量である保持値Bとから、所望とする電気容量値を抽出することができる。
【0047】
以上の構成を備えた本実施形態の検査装置1は、2層配線構造を有する多層配線基板10に対して、層単位の電気容量を測定して評価することができる。
【0048】
すなわち、本実施形態の検査装置1は、制御部7を用いてスイッチボックス5での配線切り替えを制御し、対向電極2が内層グランド層15と電気的に接続する第1の接続状態をとれるようにする。そして、その接続状態で電気容量計4により対向電極2と多層配線基板10の電気配線13との間の電気容量を測定することができる。このとき、測定される電気容量は、電気配線13の上層配線12および対向電極2の間に発生する電気容量C1と、下層配線11および内層グランド層15の間に発生する電気容量C2との合成容量となる。そして、測定された合成電気容量は、制御部7に上述の保持値Aとして記憶することができる。
【0049】
尚、このとき、上層配線12および内層グランド層15の間に電気容量が発生する。しかし、上層配線12と内層グランド層15との間の距離は、下層配線11と内層グランド層15との間の距離に比べて、上述したようにはるかに大きい。そのため、上層配線12および内層グランド層15の間に発生する電気容量は、極めて小さくなって無視することができる。
【0050】
同様に、下層配線11および対向電極2の間に電気容量が発生する。しかし、下層配線11と対向電極2との間の距離は、上層配線12と対向電極2との間の距離に比べて、はるかに大きい。そのため、下層配線11および対向電極2の間に発生する電気容量は極めて小さくなって無視することができる。
【0051】
また、本実施形態の検査装置1は、制御部7を用いてスイッチボックス5での配線切り替えを制御し、アース6が内層グランド層15と電気的に接続する第2の接続状態をとれるようにする。そして、その接続状態で、電気容量計4により対向電極2と多層配線基板10の電気配線13との間の電気容量を測定する。このとき、測定される電気容量値は、電気配線13の上層配線12および対向電極2の間に発生する電気容量C1となる。下層配線11および内層グランド層15の間に発生する電気容量C2は、内層グランド層15が、GND測定端子16およびGND測定針8を介してアース6に接続されているために測定されない。そして、得られた電気容量値は、制御部7に上述の保持値Bとして記憶される。
【0052】
制御部7に記憶された第2の電気容量である保持値Bは、電気容量C2が0(ゼロ)となって、電気配線13の上層配線12の電気容量C1となる。すなわち、多層配線基板10において、上層配線12の電気容量を求めることができる。そして、制御部7において、それぞれ記憶された第1の電気容量である保持値Aと第2の電気容量である保持値Bとを差分することで、電気配線13の下層配線12の電気容量C2を抽出することができる。すなわち、多層配線基板10において、下層配線11の電気容量を求めることができる。
【0053】
その結果、本実施形態の検査装置1は、下層配線11と上層配線12とからなる2層配線構造の電気配線13を有する多層配線基板10に対して、層単位の電気容量を評価することができる。
【0054】
以上より、本実施形態の配線基板の検査装置1は、スイッチボックス5内の配線接続を切り替え、電気容量計4により電気容量測定を複数回実施することで、多層配線基板10の層単位の電気容量値を測定することができる。そして、配線基板完成後の層単位の電気容量値が設計期待値か否かの確認に用いることができる。
【0055】
その結果、例えば、配線基板の多層配線構造のある層の電気容量値が、設計期待値から外れている場合等、必要に応じて配線基板の製造工程に情報をフィードバックすることができる。そして、配線基板の製造工程を改善して最適化するために使用することができる。
【0056】
次に、本実施形態の検査装置1を用いて実施される本発明の第2実施形態の配線基板の検査方法について、
図1およびフローチャートを用い、より詳しく説明する。
【0057】
実施形態2.
本発明の第2実施形態の配線基板の検査方法は、
図1に示した本発明の第1実施形態の配線基板の検査装置1を使用し、多層配線構造を有する配線基板を検査の対象とすることができる。すなわち、本実施形態の検査方法の検査対象は、最上層から最下層までの異なる複数層の配線が互いに電気的に接続されて形成された多層構造の多層配線を基板内部に有する配線基板とすることができる。
【0058】
そして、本実施形態の配線基板の検査方法は、
図1に示すように、例えば、2層配線構造の多層配線基板10を検査対象とすることができる。2層配線構造の多層配線基板10は、本発明の検査方法の対象となる多層配線構造を有する配線基板の例である。本発明の第2実施形態の配線基板の検査方法は、第1実施形態の検査装置1を用い、多層配線基板10の構成要素である電気容量を、多層配線基板10を構成する層単位で測定して評価することができ、それによって多層配線基板10の検査を行う。
【0059】
図2は、本発明の第2実施形態の配線基板の検査方法を示すフローチャートである。
【0060】
図2に示す本発明の第2実施形態の配線基板の検査方法では、先ず、
図1に示した検査装置1の測定針3を、先端側から多層配線基板10の測定端子14に接触させ、電気的な接続を行う(ステップ1)。
【0061】
検査装置1の測定針3は、一方で電気容量計4に接続されており、測定針3は、多層配線基板10の測定端子14と電気容量計4との間を電気的に接続することができる。また、測定端子14は、多層配線基板10の上部面に設けられ、基板内部の電気配線13の上層配線12と電気的に接続されている。したがって、測定針3を測定端子14に電気的に接続することで、電気容量計4を多層配線基板10の電気配線13に接続することができる。
【0062】
次いで、検査装置1のGND測定針8を、先端側から多層配線基板10のGND測定端子16に接触させ、電気的な接続を行う(ステップ2)。
【0063】
検査装置1のGND測定針8は、スイッチボックス5に電気的に接続している。また、GND測定端子16は、多層配線基板10の上部面に設けられ、多層配線基板10の内部に配置された内層グランド層15と電気的に接続している。したがって、GND測定針8は、その先端が検査対象の多層配線基板10のGND測定端子16に接触するようにして使用されて、スイッチボックス5と、内層グランド層15との間を電気的に接続する。
【0064】
次いで、制御部7の制御により、スイッチボックス5内で、GND測定針8と、スイッチボックス5に接続された対向電極2とが短絡して接続するように、配線の切り替えを行う(ステップ3)。本ステップの配線の切り換えにより、多層配線基板10の内層グランド層15は、対向電極2と電気的に接続する。すなわち、本ステップによって、検査装置1は、多層配線基板10の内層グランド層15が対向電極2と電気的に接続する上述の第1の接続状態をとることができる。
【0065】
次いで、電気容量計4を用い、対向電極2と測定針3との間の電気容量を測定する(ステップ4)。
【0066】
ここで、上述のステップ3で、スイッチボックス5内での配線切り替えにより、対向電極2とGND測定針8との間は短絡されており、多層配線基板10の内層グランド層15は対向電極2と電気的に接続されている。したがって、測定される電気容量値は、電気配線13の上層配線12および対向電極2の間に発生する電気容量C1と、下層配線11および内層グランド層15の間に発生する電気容量C2との合成容量となる。
【0067】
尚、このとき、上層配線12および内層グランド層15の間に電気容量が発生する。しかし、上層配線12と内層グランド層15との間の距離は、下層配線11と内層グランド層15との間の距離に比べて、上述したようにはるかに大きい。そのため、上層配線12および内層グランド層15の間に発生する電気容量は、極めて小さくなって無視することができる。
【0068】
同様に、下層配線11および対向電極2の間に電気容量が発生する。しかし、下層配線11と対向電極2との間の距離は、上層配線12と対向電極2との間の距離に比べて、はるかに大きい。そのため、下層配線11および対向電極2の間に発生する電気容量は極めて小さくなって無視することができる。
【0069】
次いで、上述のステップ4で測定された合成電気容量を制御部7に記憶させ、上述の第1の電気容量である保持値Aとする(ステップ5)。
【0070】
次いで、測定針3が電気配線13の測定端子14に接続された状態、および、GND測定針8が内層グランド層15のGND測定端子16に接続された状態を維持する。そして、そのままの接続状態で、制御部7の制御により、スイッチボックス5内で、GND測定針8と、スイッチボックス5に接続されたアース6とが短絡して接続するように、配線の切り替えを行う(ステップ6)。
【0071】
本ステップの配線の切り換えにより、多層配線基板10の内層グランド層15は、アース6と電気的に接続する。すなわち、本ステップによって、検査装置1は、多層配線基板10の内層グランド層15がアース6と電気的に接続する上述の第2の接続状態をとることができる。
【0072】
次いで、電気容量計4を用い、対向電極2と測定針3との間の電気容量を測定する(ステップ7)。
【0073】
ここで、上述のステップ6におけるスイッチボックス5内での配線切り替えにより、アース6とGND測定針8との間は短絡されており、多層配線基板10の内層グランド層15はアース6と電気的に接続されている。したがって、測定される電気容量値は、電気配線13の上層配線12および対向電極2の間に発生する電気容量C1となる。下層配線11および内層グランド層15の間に発生する電気容量C2は、内層グランド層15が、GND測定端子16およびGND測定針8を介してアース6に接続されているために測定されない。
【0074】
次いで、上述のステップ7で測定された電気容量を制御部7に記憶させ、上述の第2の電気容量である保持値Bとする(ステップ8)。
【0075】
制御部7に記憶された保持値Bは、電気容量C2が0(ゼロ)となって、電気配線13の上層配線12の電気容量C1となる。すなわち、多層配線基板10において、上層配線12の電気容量を求めることができる。
【0076】
次いで、制御部7において、それぞれ記憶された保持値Aと保持値Bとを用い、差分演算を行う(ステップ9)。すなわち、保持値A(C1+C2)から保持値B(C1)を差分することで、電気配線13の下層配線11の電気容量C2を抽出することができる。その結果、多層配線基板10において、下層配線11の電気容量が求められる。
【0077】
したがって、本実施形態の配線基板の検査方法は、下層配線11と上層配線12とからなる2層配線構造の電気配線13を有する多層配線基板10に対して、層単位の電気容量を評価することができる。
【0078】
以上より、本実施形態の配線基板の検査方法は、検査装置1のスイッチボックス5内の配線接続を切り替え、電気容量計4により容量測定を複数回実施することで、多層配線基板10の層単位の電気容量値を測定することができる。そして、配線基板完成後の層単位の電気容量値が設計期待値か否かを確認することができる。
【0079】
その結果、例えば、配線基板の多層配線構造のある層の電気容量値が、設計期待値から外れている場合等、必要に応じて配線基板の製造工程に情報をフィードバックすることができる。そして、配線基板の製造工程を改善し、最適化をすることができる。
【0080】
実施形態3.
本発明の配線基板の検査装置は、多層配線構造を有する配線基板を検査の対象とすることができる。その場合、検査対象となる配線基板は、上述した本発明の第1実施形態および第2実施形態で例示した2層配線構造の配線基板に限られず、3層配線構造等のより多い配線層数の多層配線基板も検査対象とすることができる。
【0081】
以下、3層配線構造を有する配線基板を検査対象とする本発明の第3実施形態の配線基板の検査装置について、図面を用いて説明する。
【0082】
図3は、本発明の第3実施形態である配線基板の検査装置の構成を示す図である。
【0083】
本発明の第3実施形態である配線基板の検査装置100は、スイッチボックス105の構造が上述した本発明の第1実施形態の配線基板の検査装置1のスイッチボックス5と異なる以外は同様の構造を有する。したがって、
図3に示す本発明の第3実施形態の配線基板の検査装置100において、本発明の第1実施形態の配線基板の検査装置1と共通する構成要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0084】
図3に示すように、本発明の第3実施形態の配線基板の検査装置100は、多層配線構造の例である3層配線構造を有する多層配線基板110を検査の対象とすることができる。本発明の第3実施形態の配線基板の検査装置100は、多層配線基板110の構成要素である電気容量を、多層配線基板110を構成する層単位で測定するように構成されており、多層配線基板110の検査を可能とする。
【0085】
図3に示すように、本発明の第3実施形態の配線基板の検査装置100は、対向電極2と、測定針3と、電気容量計4と、スイッチボックス105と、アース6と、制御部7と、第1GND測定針108と、第2GND測定針109とを有して構成される。
【0086】
そして、被検査対象である多層配線基板110は、最上層から最下層までの異なる複数層の配線が互いに電気的に接続されて形成された多層構造の多層配線を備えて、多層配線構造を有する配線基板である。
【0087】
より具体的には、多層配線基板110は、基板下方側から上方側に向けて、第1層配線111と第2層配線112と第3層配線113とを順次設けて構成される電気配線130を基板内部に有し、3層配線構造を有する。電気配線130は、最上層から最下層までの離間配置された3層の第1層配線111、第2層配線112および第3層配線113が、導電性の接続部分118、119によって、互いに電気的に接続されてなる多層配線である。
【0088】
多層配線基板110の上部面には測定端子114が設けられ、測定端子114は、基板内部の電気配線130の最上層に設けられた第3層配線113と電気的に接続されている。
【0089】
また、多層配線基板110は、電気配線130と電気的に絶縁するように基板内部に形成された別の複数の配線を有している。多層配線基板110は、この電気配線130に電気的に絶縁するように基板内部に設けられている配線を用い、グランド配線として機能する第1内層グランド層151および第2内層グランド層152とする。第1内層グランド層151および第2内層グランド層152は、電気配線130の最上層にある第3層配線113以外の、第1層配線111および第2層配線112それぞれの近傍に、電気配線130と電気的に絶縁するように離間して配置されている。尚、第1内層グランド層151および第2内層グランド層152は、互いに電気的に絶縁するように設けられている。
【0090】
第1内層グランド層151は、第1層配線111の近傍にそれと離間して配置されている。そのため、第1内層グランド層151と第2層配線112との間の距離は、第1内層グランド層151と第1層配線111との間の距離に比べてはるかに大きい。同様に、第1内層グランド層151と第3層配線113との間の距離は、第1内層グランド層151と第1層配線111との間の距離に比べてはるかに大きい。
【0091】
したがって、第1内層グランド層151と第2層配線112との間に発生する電気容量は、第1内層グランド層151と第1層配線111との間に発生する電気容量に比べてはるかに小さい。同様に、第1内層グランド層151と第3層配線113との間に発生する電気容量は、第1内層グランド層151と第1層配線111との間に発生する電気容量に比べてはるかに小さい。
【0092】
そして、第1内層グランド層151は、多層配線基板110の上部面に設けられた第1GND測定端子161に電気的に接続されている。
【0093】
また、第2内層グランド層152は、第2層配線112の近傍にそれと離間して配置されている。そのため、第2内層グランド層152と第3層配線113との間の距離は、第2内層グランド層152と第2層配線112との間の距離に比べてはるかに大きい。同様に、第2内層グランド層152と第1層配線111との間の距離は、第2内層グランド層152と第2層配線112との間の距離に比べてはるかに大きい。
【0094】
したがって、第2内層グランド層152と第3層配線113との間との間に発生する電気容量は、第2内層グランド層152と第2層配線112との間に発生する電気容量に比べてはるかに小さい。同様に、第2内層グランド層152と第1層配線111との間に発生する電気容量は、第2内層グランド層152と第2層配線112との間に発生する電気容量に比べてはるかに小さい。
【0095】
そして、第2内層グランド層152は、多層配線基板110の上部面に設けられた第2GND測定端子162に電気的に接続されている。
【0096】
本実施形態の配線基板の検査装置100において、対向電極2は、多層配線基板110に対向配置されて使用される。より具体的には、対向電極2は、多層配線基板110の上部面と対向配置される。対向電極2は、多層配線基板110を十分に覆うことができる大きさの導電性材料からなる。対向電極2は、例えば、金属板からなる。対向電極2は電気容量計4に電気的に接続されている。
【0097】
測定針3は、その先端が検査対象の電極に接触するようにして使用される。例えば、測定針3は、多層配線基板110の測定端子114に接触するようにして使用される。そして、測定針3は、もう一方で電気容量計4に接続されている。したがって、測定針3は、検査対象の電極と電気容量計4との間を電気的に接続することができる。
【0098】
スイッチボックス105は、本実施形態の検査装置100において、所望とする方法の電気容量の測定が可能となるように、配線の切り替えが行えるように構成されている。すなわち、スイッチボックス105は、対向電極2に接続し、アース6に接続し、さらに、第1GND測定針108および第2GND測定針109に接続する。
【0099】
第1GND測定針108は、その先端が検査対象の多層配線基板110の第1GND測定端子161に接触するようにして使用されて、スイッチボックス105と、第1内層グランド層151との間を電気的に接続することができる。
【0100】
また、第2GND測定針109は、その先端が検査対象の多層配線基板110の第2GND測定端子162に接触するようにして使用されて、スイッチボックス105と、第2内層グランド層152との間を電気的に接続することができる。
【0101】
そして、スイッチボックス105は、第1GND測定針108および第2GND測定針109がそれぞれ独立に、対向電極2と電気的に接続するか、または、アース6と電気的に接続するかを切り替えて選択できるように構成されている。
【0102】
そのため、本実施形態の検査装置100は、スイッチボックス105を用いることにより、第2内層グランド層152とは独立に、第1内層グランド層151が、アース6と電気的に接続するのか、または、対向電極2と電気的に接続するのかを切り替えて選択することができる。同様に、本実施形態の検査装置100は、スイッチボックス105を用いることにより、第2内層グランド層152が、第1内層グランド層151とは独立に、アース6と電気的に接続するのか、または、対向電極2と電気的に接続するのかを切り替えて選択することができる。
【0103】
すなわち、本実施形態の検査装置100のスイッチボックス105は、第1内層グランド層151、第2内層グランド層152、対向電極2およびアース6に接続し、第1内層グランド層151および第2内層グランド層152が全て対向電極2と電気的に接続する第1の接続状態と、第1内層グランド層151および第2内層グランド層152のうちの1つがアース6と電気的に接続し、残余の全てが対向電極2と電気的に接続する第2の接続状態とを切り替えて選択することができる。さらに、スイッチボックス105は、第1内層グランド層151および第2内層グランド層152が全てアース6と電気的に接続するように配線を切り替えることができる。
【0104】
尚、本実施形態の検査装置100において、スイッチボックス105における上述の配線の切り替えは、次に説明する制御部7によって制御がなされるように構成されている。
【0105】
本実施形態の検査装置100の制御部7は、電気容量計4およびスイッチボックス105に接続する。そして、スイッチボックス105における上述の配線の切り替えを制御する制御装置としての機能を有する。併せて、電気容量計4を用いて測定された電気容量を記憶して記憶装置としての機能を有する。さらに、制御部7は、記憶された所定の電気容量を用いて差分演算を行い、所望とする電気容量値を抽出する差分演算装置としての機能を有する。
【0106】
すなわち、制御部7は、スイッチボックス105を制御して、配線の切り替えを選択する。その結果、対向電極2と第1GND測定針108との間を電気的に接続し、多層配線基板110の第1内層グランド層151が対向電極2と電気的に接続するようにする。同時に、制御部7は、スイッチボックス105を制御して、対向電極2と第2GND測定針109との間を電気的に接続し、多層配線基板110の第2内層グランド層152が対向電極2と電気的に接続するようにする。その結果、検査装置100は、スイッチボックス105により、第1内層グランド層151および第2内層グランド層152が全て対向電極2と電気的に接続する第1の接続状態をとることができる。
【0107】
そして、その第1の接続状態で電気容量計4が対向電極2と多層配線基板110の電気配線130との間の電気容量を測定した後、制御部7は、得られた電気容量を第1の電気容量とし、例えば、保持値A2として記憶する。このとき、保持値A2として制御部7に記憶された電気容量値は、電気配線130の第3層配線113および対向電極2の間に発生する電気容量C11と、第2層配線112および第2内層グランド層152の間に発生する電気容量C12と、第1層配線111および第1内層グランド層151の間に発生する電気容量C13との合成容量となる。例えば、第3層配線113および第2内層グランド層152の間に発生する電気容量や第2層配線112および第1内層グランド層151の間に発生する電気容量等の他の容量成分はいずれも極めて小さいので無視することができる。
【0108】
また、制御部7は、スイッチボックス105を制御して配線の切り替えを選択し、アース6と第1GND測定針108との間を電気的に接続し、多層配線基板110の第1内層グランド層151がアース6と電気的に接続するようにする。そして、同時に、スイッチボックス105を制御して配線の切り替えを選択し、アース6と第2GND測定針109との間を電気的に接続し、多層配線基板110の第2内層グランド層152がアース6と電気的に接続するようにする。その結果、検査装置100は、スイッチボックス105により、第1内層グランド層151および第2内層グランド層152が全てアース6と電気的に接続する接続状態をとることができる。
【0109】
そして、その接続状態で電気容量計4が対向電極2と多層配線基板110の電気配線130との間の電気容量を測定した後、制御部7は、得られた電気容量値を、例えば、保持値B2として記憶する。制御部7に記憶された保持値B2は、電気容量C13およびC12がいずれも0(ゼロ)となって、電気配線130の第3層配線113の電気容量C11となる。すなわち、多層配線基板110において、第3層配線113の電気容量を求めることができる。
【0110】
また、制御部7は、スイッチボックス105を制御して、配線の切り替えを選択する。その結果、対向電極2と第1GND測定針108との間を電気的に接続し、多層配線基板110の第1内層グランド層151が対向電極2と電気的に接続するようにする。一方、制御部7は、スイッチボックス105を制御して、アース6と第2GND測定針109との間を電気的に接続し、多層配線基板110の第2内層グランド層152がアース6と電気的に接続するようにする。その結果、検査装置100は、スイッチボックス105により、第1内層グランド層151および第2内層グランド層152のうちの1つがアース6と電気的に接続し、残る全てが対向電極2と電気的に接続する第2の接続状態をとることができる。
【0111】
そして、その第2の接続状態で電気容量計4が対向電極2と多層配線基板110の電気配線130との間の電気容量を測定した後、制御部7は、得られた電気容量値を第2の電気容量とし、例えば、保持値C2として記憶する。このとき、保持値C2として制御部7に記憶された電気容量値は、電気配線130の第3層配線113および対向電極2の間に発生する電気容量C11と、第1層配線111および第1内層グランド層151の間に発生する電気容量C13との合成容量となる。
【0112】
また、制御部7は、スイッチボックス105を制御して、配線の切り替えを選択する。その結果、対向電極2と第2GND測定針109との間を電気的に接続し、多層配線基板110の第2内層グランド層152が対向電極2と電気的に接続するようにする。一方、制御部7は、スイッチボックス105を制御して、アース6と第1GND測定針108との間を電気的に接続し、多層配線基板110の第1内層グランド層151がアース6と電気的に接続するようにする。その結果、検査装置100は、スイッチボックス105により、第1内層グランド層151および第2内層グランド層152のうちの1つがアース6と電気的に接続し、残る全てが対向電極2と電気的に接続する第2の接続状態をとることができる。具体的には、第2内層グランド層152がアース6に接続する上述の第2の接続状態とは異なる、別の例の第2の接続状態をとることができる。
【0113】
そして、その別の例の第2の接続状態で電気容量計4が対向電極2と多層配線基板110の電気配線130との間の電気容量を測定した後、制御部7は、得られた電気容量値を第2の電気容量とし、例えば、保持値D2として記憶する。このとき、保持値D2として制御部7に記憶された電気容量値は、保持値C2とは異なる例となる第2の電気容量であって、電気配線130の第3層配線113および対向電極2の間に発生する電気容量C11と、第2層配線112および第2内層グランド層152の間に発生する電気容量C12との合成容量となる。
【0114】
したがって、制御部7は、記憶された上述の保持値A2と保持値C2を差分することで所望とする電気容量、すなわち、第2層配線112および第2内層グランド層152の間に発生する電気容量C12を抽出することができる。その結果、検査装置100は、多層配線基板110において、第2層配線112の電気容量を求めることができる。
【0115】
また、制御部7は、記憶された上述の保持値A2と保持値D2を差分することで所望とする電気容量、すなわち、第1層配線111および第1内層グランド層151の間に発生する電気容量C13を抽出することができる。その結果、検査装置100は、多層配線基板110において、第1層配線111の電気容量を求めることができる。
【0116】
すなわち、検査装置100において、スイッチボックス105は、上述の第1の接続状態と、アース6に電気的に接続するのが第1内層グランド層151であるのか第2内層グランド層152であるのかにより互いに異なる複数種類の第2の接続状態との中から、1つの接続状態を選択して切り替えることができるよう構成されるものである。
【0117】
そして、検査装置100において、第2の電気容量の測定は、スイッチボックス105により配線の切り替えを行って、アース6と電気的に接続するのが第1内層グランド層151であるのか第2内層グランド層152であるのかにより互いに異なる複数種類の第2の接続状態のそれぞれについて行われ、複数種類の異なる第2の電気容量をそれぞれ取得するものである。
【0118】
また、電気容量値の抽出は、第1の容量値と上述の複数種類の異なる第2の電気容量のそれぞれとを用い、複数種類の異なる第2の電気容量のそれぞれについて複数回行われる。そして、検査装置100は、複数回の抽出により得られた複数種類の電気容量値のそれぞれから、多層配線の層単位の電気容量を評価するよう構成されている。
【0119】
以上の構成を備えた本実施形態の検査装置100は、3層配線構造を有する多層配線基板110に対して、層単位の電気容量を測定することができる。
【0120】
したがって、本実施形態の配線基板の検査装置100は、スイッチボックス105内の配線接続を切り替え、電気容量計4により容量測定を複数回実施することで、多層配線基板110の層単位の電気容量値を測定することができる。そして、配線基板完成後の層単位の電気容量値が設計期待値か否かの確認に用いることができる。
【0121】
その結果、例えば、配線基板の多層配線構造のある層の電気容量値が、設計期待値から外れている場合等、必要に応じて配線基板の製造工程に情報をフィードバックすることができる。そして、配線基板の製造工程を改善して最適化するために使用することができる。
【0122】
尚、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。
【0123】
例えば、検査対象である多層配線基板が、最上層から最下層までの異なる複数層の配線を有し、その複数層の配線それぞれの近傍に、グランド配線として機能する内層グランド層を電気的に絶縁するように離間配置して有するものである場合がある。その場合、例えば、検査対象の多層配線基板の最上層の内層グランド層を、
図3に示した本発明の第3実施形態の配線基板の検査装置100の対向電極2と同様に使用し、多層配線基板の検査を行うことができる。
【0124】
具体的には、
図3に示した多層配線基板110を例とし、多層配線基板110が、電気配線130の第3層配線113の直上に、第2内層グランド層152と同等の内層グランド配線(
図3中には、図示されていない。)を形成して有する場合、その内層グランド配線を対向電極2と同様に使用し、多層配線基板110の検査を行うことができる。
【0125】
すなわち、検査装置100について、対向電極2を使用しないようにするか、または、検査装置100を、対向電極2を除いて構成する。そして、スイッチボックス105を、アース6、第1GND測定針108および第2GND測定針109に接続し、さらに、第3層配線130の直上に配置された内層グランド層に接続する。
【0126】
そのうえで、検査装置100は、対向電極2の代わりに、スイッチボックス105に接続された第3層配線130の直上に配置された内層グランド層を使用し、上述と同様の方法にしたがい、複数回の抽出により得られた複数種類の電気容量値のそれぞれから、多層配線の層単位の電気容量を評価することができる。
【0127】
したがって、検査対象となる多層配線基板110が、複数層の配線を有し、且つ、その複数層の配線それぞれの近傍に、内層グランド層を有する場合、検査装置100において、対向電極2は必須ではなくなる。そして、検査装置100は、スイッチボックス105を利用して、複数回の配線接続の切り替えを行って、例えば、3層配線構造を有する多層配線基板110に対して、層単位の電気容量を測定し、検査を行うことができる。