特許第6076216号(P6076216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076216
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】多軸骨固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/86 20060101AFI20170130BHJP
   A61B 17/70 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   A61B17/86
   A61B17/70
【請求項の数】22
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-147396(P2013-147396)
(22)【出願日】2013年7月16日
(65)【公開番号】特開2014-18664(P2014-18664A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月25日
(31)【優先権主張番号】12176959.0
(32)【優先日】2012年7月18日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/673,110
(32)【優先日】2012年7月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/789,431
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ・ビーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ビルフリート・マティス
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0143266(US,A1)
【文献】 特開2010−099293(JP,A)
【文献】 特開2010−194309(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0105770(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/86
A61B 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸骨固定装置であって、
ヘッド(3)およびシャンク(2)を含む骨固定要素(1)と、
ロッド(100)を前記骨固定要素に結合するために前記ロッドを受け入れるための受入部分(4,4′,4″)とを含み、前記受入部分は、第1の端部(4a)と、対向する第2の端部(4b)と、前記第1の端部および前記第2の端部を通って延在する中心軸(C)とを含み、前記多軸骨固定装置はさらに、
前記ロッドを受け入れるためのチャネル(9)および前記ヘッドを受け入れるための収容スペース(11)と、
前記受入部分に配されるとともに圧力を前記ヘッドにかけるよう構成される圧力要素(6,6′,6″)とを含み、
前記圧力要素(6,6′)は、少なくとも1つの柔軟なセクション(66a,66b;66a′,66b′)を含む多軸骨固定装置において、前記少なくとも1つの柔軟なセクション(66a,66b;66a′,66b′;66a″,66b″)は、前記ヘッドがロックされる前に前記ヘッドに予荷重をかける位置に前記圧力要素(6,6′;6″)を保持するよう、前記受入部分(4,4′;4″)の傾斜した表面部分(15a,15b;32a,32b;15a″,15b″)と協働する自由端部分(69a,69b;69a′,69b′,69a″,69b″)を有することを特徴とする、多軸骨固定装置。
【請求項2】
多軸骨固定装置であって、
ヘッド(3)およびシャンク(2)を含む骨固定要素(1)と、
ロッド(100)を前記骨固定要素に結合するために前記ロッドを受け入れるための受入部分(4′″)とを含み、前記受入部分は、第1の端部(4a)と、対向する第2の端部(4b)と、前記第1の端部および前記第2の端部を通って延在する中心軸(C)とを含み、前記多軸骨固定装置はさらに、
前記ロッドを受け入れるためのチャネル(9)および前記ヘッドを受け入れるための収容スペース(11)と、
前記受入部分に配されるとともに圧力を前記ヘッドにかけるよう構成される圧力要素(6)とを含み、
前記圧力要素(6)は、少なくとも1つの柔軟なセクション(66a,66b)を含む多軸骨固定装置において、前記少なくとも1つの柔軟なセクション(66a,66b)は、前記ヘッドがロックされる前に前記ヘッドに予荷重をかける位置に前記圧力要素(6)を保持するよう、前記受入部分(4′″)の突出した縁部(151a,151b)と協働する少なくとも1つの傾斜した表面部分を有する自由端部分(69a,69b)を有することを特徴とする、多軸骨固定装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの柔軟なセクション(66a,66b;66a′,66b′;66a″,66b″)は少なくとも1つの直立した弾力のある指部(66a,66b;66a′,66b′;66a″,66b″)によって形成される、請求項1または2に記載の多軸骨固定装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの柔軟なセクション(66a,66b;66a′,66b′;66a″,66b″)は、前記受入部分の前記中心軸(C)に向かって屈曲するよう構成される、請求項1から3のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項5】
前記圧力要素(6,6′,6″)は、前記少なくとも1つの柔軟なセクション(66a,66b;66a′,66b′;66a″,66b″)上の自由端部分(69a,69b;69a′,69b′,69a″,69b″)に少なくとも1つの傾斜した表面部分を含むとき、前記圧力要素の前記柔軟なセクション(66a,66b;66a′,66b′;66a″,66b″)が屈曲した構成で、前記圧力要素の前記傾斜した表面部分と、前記受入部分の対応する傾斜した表面部分(15a,15b;32a,32b;15a″,15b″)または縁部(151a,151b)とは係合する、請求項1〜のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項6】
前記圧力要素(6,6′,6″)が前記ヘッド(3)に向かって動かされる際でも、前記圧力要素(6,6′,6″)の柔軟なセクションの自由端部分(69a,69b;69a′,69b′;69a″,69b″)と、前記受入部分(4,4′,4″)の対応する傾斜した表面部分(15a,15b;32a,32b;15a″,15b″)または縁部とは、係合したままである、請求項1〜のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項7】
中心軸(C)に対する前記受入部分(4,4′)の傾斜した表面部分(15a,15b;32a,32b)の傾斜角(α)は、前記圧力要素の柔軟なセクションの自由端部分(69a,69b;69a′,69b′,69a″,69b″)と、前記受入部分の傾斜した表面部分(15a,15b;32a,32b)または縁部(151a,151b)との係合によって、前記ヘッドに向かうよう方向付けされた力が前記圧力要素上に生成されるような傾斜角である、請求項1または3から5のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項8】
前記受入部分(15a,15b;32a,32b)の傾斜した表面部分の傾斜角(α)は約70°未満であって、好ましくは約25°である、請求項1または3から7のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項9】
前記柔軟なセクション(66a,66b′)の傾斜した表面部分の傾斜角は、前記中心軸(C)に対する前記受入部分の傾斜した表面部分(15a,15b;32a,32b)の傾斜角(α)よりも小さいかまたは傾斜角(α)と同じである、請求項2〜8のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項10】
前記ロッド(100)を間に囲うよう構成される2つの柔軟なセクション(66a,66b;66a′,66b′;66a″,66b″)が前記圧力要素(6,6′,6″)上に設けられる、請求項1〜のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項11】
前記受入部分(4,4′)は、前記圧力要素(6,6′)を収容するための同軸孔(8)を含み、前記受入部分(4)の傾斜した表面部分(15a,15b)は、前記受入部分の内壁に形成される円錐形に形状決めされた凹部(15)によって与えられている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項12】
前記受入部分の傾斜した表面部分(32a,32b)は、前記受入部分(4′)の壁を通って延在するピン(30a,30b)によって与えられている、請求項1または3〜11のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項13】
前記中心軸(C)に向かうよう方位付けされた前記ピン(30a,30b)の表面(32a,32b)はテーパされている、請求項1に記載の多軸骨固定装置。
【請求項14】
前記圧力要素の前記柔軟なセクションの自由端部分は、前記受入部分(4″)の傾斜した表面部分(15a″,15b″)と係合する丸くされた縁部(69a″,69b″)を含む、請求項1〜1のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項15】
前記圧力要素の柔軟なセクションの自由端部分は、傾斜した表面部分(15a,15b,15a′,15b′)を含み、前記受入部分(4′″)は、前記傾斜した表面部分と協働する縁部(151a,151b)を含む、請求項1〜1のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項16】
前記圧力要素(6,6′;6″)は、前記受入部分(4,4′)の第1の端部(4a)を通って外れないように固定される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項17】
前記固定装置は、受入部分(4″)の内壁に設けられ周方向に延在し受入部分(4″)内でモノリシックに形成される停止部(8b)によって外れないように固定される、請求項1に記載の多軸骨固定装置。
【請求項18】
前記ヘッド(3)は、前記収容スペース(11)に収容されるスリーブ状の挿入片(5)に配置されており、前記ヘッドが前記受入部分(4,4′,4″)の第2の端部(4b)にある開口部(12)を通って外れるのを防止する、請求項1〜1のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項19】
前記受入部分(4,4′,4″;4′″)に対して前記ヘッドをロックするよう前記圧力要素(6,6′,6″)に直接的または間接的に圧力をかけるよう構成されるロック装置(7)が設けられる、請求項1〜1のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項20】
前記スリーブ状の挿入片(5)が、前記収容スペース(11)において回転および旋回するよう構成される、請求項1または1に記載の多軸骨固定装置。
【請求項21】
前記柔軟なセクション(66a,66b;66a′,66b′,66a″,66b″)は、前記圧力要素の、前記ヘッド(3)に面する側とは反対の側上に配置されている、請求項1〜20のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項22】
前記圧力要素または前記受入部分のいずれかの傾斜した表面部分(15a,15b;32a,32b;15a″,15b″,69a,69b,69a′,69b′)は、前記圧力要素が前記受入部分内に配される際に、前記受入部分の上端部(4a)により近い上部端部と、前記受入部分の底端部(4b)により近い下部端部とを有し、傾きは、前記上部端部が前記下部端部よりも前記中心軸(C)により近いような傾きである、請求項1〜2のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドおよびシャンクを有する骨固定要素と、当該骨固定要素をロッドに結合するための受入部分とを含む多軸骨固定装置に関する。この受入部分には、柔軟なセクションを含む圧力要素が設けられる。ヘッドがロックされる前に低摩擦によってある角度位置にヘッドを保持するよう当該柔軟なセクションが屈曲する構成において、柔軟なセクションの各々は、受入部分に設けられる対応する傾斜した表面部分と協働する傾斜した表面部分を有する。
【背景技術】
【0002】
US2010/0234902 A1は、ロッドを骨固定要素に結合するためにロッドを受け入れるための受入部分を記載している。この受入部分は、骨固定要素のヘッドを収容するための収容スペースと、この収容スペースに少なくとも部分的に配される圧力要素とを含む。一実施例では、圧力要素は2つの直立した弾力のある指部を有し、受入部分は圧力要素を受入部分に固定するよう2つのピンを含む。ピンは、圧力要素がピンの下の位置にあるとともに弾力のある指部が屈曲しない状態を取る場合に、圧力要素の指部に対する当接部を形成する。この構成では圧力要素は、予応力または予荷重をヘッドに加え、これによりヘッドが受入部分に摩擦嵌合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US2010/0234902 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、圧力要素を用いて予荷重をヘッドに加えることにより、ヘッドを受入部分に摩擦嵌合する多軸骨固定装置の向上を提供することである。
【0005】
この目的は請求項1に記載の多軸骨固定装置によって達成される。さらに別の発展例が従属項において与えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
多軸骨固定装置は、低い摩擦力によって受入部分においてヘッドの摩擦嵌合を達成するよう設計される圧力要素を含む。これにより、たとえば手動で力を受入部分に適用して、挿入されるロッドに骨固定要素を整列させることにより、受入部分が骨固定要素に対して旋回され得るので、外科手術の間に当該装置の取り扱いが向上する。
【0007】
圧力要素が下方向に移動すると、圧力要素の傾斜した表面部分と、受入部分の対応する傾斜した表面部分とが互いに接触するので、受入部分と、ヘッドと、圧力要素との間の連続する公差が規定された予荷重がヘッドに加えられるような態様でバランスされ得る。さらに、圧力要素を介してヘッドに加えられる予荷重は再現可能である、すなわち、圧力要素および受入部分の正確な寸法および正確な相対位置に依存しない。
【0008】
多軸骨固定装置は、受入部分に対する固定要素の旋回角度が拡大した多軸骨固定装置として設計され得る。この場合、骨固定要素のヘッドは、回転可能および旋回可能に受入部分に収容されるスリーブ状の挿入片内に配置される。このような構成により、連続する公差はスリーブ状の挿入片も含む。
【0009】
低い摩擦力でのヘッドの摩擦嵌合を達成するために、公知の多軸骨固定装置と比較して、追加の要素は必要ではない。
【0010】
本発明のさらに別の特徴および利点は、添付の図面を用いて実施例の記載から明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施例に従った脊柱ロッドを有する多軸骨固定装置の分解斜視図を示す図である。
図2】組み付けられた状態にある図1の骨固定装置の斜視図を示す図である。
図3】第1の実施例に従った多軸骨固定装置の受入部分の底部からの斜視図を示す図である。
図4図3の受入部分の上面図を示す図である。
図5図4における線A−Aに沿った受入部分の断面図を示す図である。
図6】第1の実施例に従った多軸骨固定装置のスリーブ状の挿入片の一部の拡大断面図を示す図である。
図7】第1の実施例に従った多軸骨固定装置の圧力要素の上部からの斜視図を示す図である。
図8図7の圧力要素の底部からの斜視図を示す図である。
図9】圧力要素の断面図を示す図であって、当該断面は、中心軸を含むとともに第1の屈曲しない構成にある圧力要素の弾力のある指部の中央部を通って延在する面において取られた図である。
図10】第2の屈曲した構成にある圧力要素の断面図を示す図である。
図11a】ロッドが挿入されていない組み付け状態にある多軸骨固定装置の断面図を示す図であって、当該断面は受入部分に対して図4における線A−Aに沿った図である。
図11b図11aの一部の拡大断面図を示す図である。
図12】第2の実施例に従った脊柱ロッドを有する多軸骨固定装置の分解斜視図を示す図である。
図13】第2の実施例に従った受入部分の上面図を示す図である。
図14図13における線B−Bに沿った受入部分の断面図を示す図である。
図15】第2の実施例に従った多軸骨固定装置の圧力要素の斜視図を示す図である。
図16】第1の屈曲しない構成にある圧力要素の断面図を示す図であって、当該断面は、中心軸を含むとともに圧力要素の弾力のある指部の中央部を通って延在する面において取られた図である。
図17】第2の屈曲した構成にある圧力要素の断面図を示す図である。
図18a】ロッドが挿入されていない第2の実施例に従った多軸骨固定装置の断面図を示す図であって、当該断面は受入部分に対して図13における線B−Bに沿った図である。
図18b図18aの一部の拡大断面図を示す図である。
図19】第3の実施例に従った脊柱ロッドを有する多軸骨固定装置の分解斜視図を示す図である。
図20】第3の実施例に従った多軸骨固定装置の受入部分の底部からの斜視図を示す図である。
図21図20の受入部分の断面図を示す図であって、当該断面は、中心軸を通るとともにロッド軸に垂直な面において取られている図である。
図22図19の圧力要素の斜視図を示す図である。
図23図19の圧力要素の底部からの別の斜視図を示す図である。
図24図19の圧力要素の上面図を示す図である。
図25】圧力要素が第1の屈曲しない構成にある、図24の線C−Cに沿った図19および図22の圧力要素の断面図を示す図である。
図26】圧力要素が第2の屈曲した構成にある、図24の線C−Cに沿った圧力要素の断面図を示す図である。
図27a】第3の実施例に従った多軸骨固定装置を組み付けるステップを示す図である。
図27b】第3の実施例に従った多軸骨固定装置を組み付けるステップを示す図である。
図27c】第3の実施例に従った多軸骨固定装置を組み付けるステップを示す図である。
図27d】第3の実施例に従った多軸骨固定装置を組み付けるステップを示す図である。
図27e】第3の実施例に従った多軸骨固定装置を組み付けるステップを示す図である。
図27f】第3の実施例に従った多軸骨固定装置を組み付けるステップを示す図である。
図28a】ロッドが挿入されていない第3の実施例に従った多軸骨固定装置の断面図を示す図であって、当該断面は、中心軸を含むとともに圧力要素の弾力のある指部の中央部を通って延在する面において取られた図である。
図28b図28aの一部の拡大断面図を示す図である。
図29a】ロッドが挿入されていない第4の実施例に従った多軸骨固定装置の断面図を示す図であって、当該断面は、中心軸を含むとともに圧力要素の弾力のある指部の中央部を通って延在する面において取られた図である。
図29b図29aの一部の拡大断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1および図2に示されるように、第1の実施例に従った多軸骨固定装置は、ねじ山部を有するシャンク2とヘッド3とを有する骨ねじの形態にある骨固定要素1を含む。ヘッド3は典型的に、球形に形状決めされた外面部分を有するとともに、ドライバまたは他の工具との係合のためにその自由端に凹部3aを有する。ヘッド3は、骨固定要素1を安定化ロッド100に結合する受入部分4に保持され得る。受入部分4には、ヘッド3のための座部を提供するスリーブ状の挿入片5と、ヘッド3へ圧力を加えるための圧力要素6とが配される。さらに、たとえば固定ねじ7の形態にある固定要素が、ロッド100を受入部分4内に固定するために設けられる。
【0013】
特に図3図5を参照して、受入部分4は、上端部4aおよび底端部4bと、中心軸Cと、底端部4bの方向に上端部4aから延在する同軸孔8とを有する。上端部4aに隣接して、ロッド100を受け入れるためのチャネルを形成する実質的にU字型の凹部9が設けられる。凹部9により、2つの自由な脚部が形成される。これらの脚部には、固定ねじ7と協働するための雌ねじ10が設けられる。
【0014】
同軸孔8は、受入部分の下側部分に設けられる収容スペース11内、たとえば底端部4bにより近いところに開口している。収容スペース11は、受入部分の底端部4bに下側開口部12を有する。収容スペース11はさらに、受入部分の底端部4bの近くに、スリーブ状の挿入片5が設置され得る座部部分13を含む。座部部分13は、スリーブ状の挿入片5と受入部分4とによって形成される玉継手(ball and socket joint)のための受け口を提供するために球形状を有している。なお、座部部分13はさらに、テーパ状であり得るか、または玉継手を実現するよう用いられ得るさまざまな他の形状を有し得る。下側開口部12の内径は、収容スペース11の他の部分の内径よりも小さい。また、同軸孔8の内径は、同軸孔8が異なる直径を有する異なる部分を有し得るように変動し得る。
【0015】
スリーブ状の挿入片5が上端部4aから導入されるように、受入部分は、同軸孔の内壁および収容スペース11において、2つの凹部14a,14bを有する。凹部14a,14bは、U字型の凹部9と整列しており、U字型の凹部9の底部から収容スペース11の中に延在している。凹部14a,14bのサイズは、スリーブ状の挿入片が90°傾斜した姿勢で上端部4aから導入され得るようなサイズである。すなわち、凹部14a,14bの幅は、その軸方向において、スリーブ状の挿入片5の高さよりも大きい。凹部14a,14bは、座部13の中への当該挿入片の傾斜が可能な範囲で、収容スペース11の中に延在する。
【0016】
特に図1および図5において分かり得るように、受入部分4は、円周方向に延在するとともに受入部分4の両方の脚部に設けられる円錐状に形状決めされた切欠き15を含む。切欠き15は、収容スペース11と雌ねじ10との間の、中心軸Cに対する軸方向位置に配置されている。この円錐形の切欠き15の方位は、底端部4bに向かう方向に切欠き15が広がるような方位であり、これにより、中心軸Cに対して傾斜角αを含む円錐形に傾斜した表面部分15a,15bが各脚部上に設けられる。傾斜角αはたとえば、約25°(図11b)または少なくとも70°未満であってもよい。円錐形の切欠きのベース面15cは、中心軸Cに対して垂直に方向づけられてもよい。半径方向における切欠き15の最大深さは、孔8の内径よりも大きくてもよい。雌ねじ10を有する部分と円錐形の切欠き15との間には、円錐形の切欠き15の上部縁部の内径よりも大きな内径を有するアンダカット部分16が設けられてもよい。
【0017】
スリーブ状の挿入片5が特に図1および図6に示される。スリーブ状の挿入片5は、上部縁部5aおよび下部縁部5bとを有する。スリーブ状の挿入片5は、上部縁部5aと下部縁部5bとの間に、球状に形状決めされた外面部分51を有してもよい。スリーブ状の挿入片のもっとも大きな外径は、受入部分4の下側開口部12の内径よりも大きい。したがって、スリーブ状の挿入片5は、受入部分4内に配置されると、下側開口部12を通って外れ得ない。この球状の外面部分51の寸法または形状は、挿入片5が座部部分13に設置されると、スリーブ状の挿入片5が受入部分4において旋回および回転することができるような態様で、受入部分4における球状に形状決めされた座部部分13の寸法または形状に対応している。図11aにおいて分かり得るように、スリーブ状の挿入片5が、その中心軸5cが受入部分4の中心軸Cと同軸になるような同軸構成で座部部分13に配置されると、下部縁部5bは下側開口部12から突出する。スリーブ状の挿入片5が受入部分において旋回または角度付けされる場合でも、下部縁部5bの少なくとも一部が下側開口部12から突出する。
【0018】
スリーブ状の挿入片5は、中空であり、骨固定要素1のヘッド3の球状に形状決めされた外面部分の半径に対応する半径を有する球状に形状決めされた中心部分52を有する。中心部分52の下端部は、肩部53を形成する。肩部53の内径は、球形のヘッド3の最大の外径よりも小さいので、ヘッド3は、スリーブ状の挿入片5の球状の中心部分52内で、玉継手と同様に回転および旋回し得る。肩部53と下部縁部5bとの間には、テーパ部分54が設けられる。テーパ部分54は、外方向にテーパして、シャンク2が下部縁部5bに接触するまで骨固定要素1の角形成(angulation)を可能にする。球状の中心部分52と上部縁部5aとの間には、同様に外方向にテーパしているテーパ部分55が設けられる。テーパ部分55の内径と、当該テーパ部分55と球状の中心部分52との間の遷移部の内径とは、ヘッド3のもっとも大きな外径よりも大きいので、ヘッド3は上部縁部5aから挿入され得る。軸方向におけるスリーブ状の挿入片5の高さは、ヘッド3がスリーブ状の挿入片5の中に挿入される際に、ヘッド3の球状の外面の一部がそれでもまだスリーブ状の挿入片5の上部縁部5aから突出するように、軸方向におけるヘッド3の高さよりも小さい。
【0019】
図7および図8を参照して、圧力要素6は、第1の外径を有する第1の円筒部61と、第1の外径よりも小さい第2の外径を有する第2の円筒部62とを有する本体を含む。第1の円筒部61は上部表面6aを規定し、第2の円筒部62は下部縁部6bを規定する。球状の凹部63は、下部部分6bに隣接するよう設けられる。凹部63は、ヘッド3の球状の部分の形状に合致するようにサイズ決めされる。さらに、同軸の貫通穴64は、上部表面6aから凹部63中に延在し、工具のアクセスを可能にする。これにより、骨固定要素1のヘッド3に凹部4を係合する。上部表面6aにおいて、浅い実質的に円筒形セグメント形状の凹部65がロッドをガイドするために設けられてもよい。
【0020】
圧力要素はさらに、上部表面6aから上方向に延在する2つの直立の弾力のある指部66a,66bの形態にある柔軟なセクションを含む。図9に詳細が示されるように、弾力のある指部66a,66bの外壁は、第1の円筒部61の外面と実質的に面一である上面6aに隣接する。弾力のある指部66a,66bの内面は、上部表面6aに隣接する部分において若干凹型であり、指部の自由端に隣接する部分において実質的にまっすぐである。自由端では、指部66a,66bの各々は、それぞれ中心軸Cに実質的に垂直に延在する上面68a,68bを含む外方向に延在する部分67a,67bと、円錐形に傾斜する外面部分69a,69bとを含む。当該円錐は、下部縁部6bに向かって広がる。中心軸Cに対する、傾斜した表面部分69a,69bの傾斜角は、実質的に25°である。傾斜した表面部分69a,69bの傾斜角は、受入部分の傾斜した表面部分15a,15bの傾斜角αよりも小さいか、または実質的に同じであり得る。外方向に延在する部分67a,67bはさらに、受入部分4の中への圧力要素の挿入を促進する傾斜した表面部分69a,69bの傾きと反対の傾きを有する下方向に向く面70a,70bを含む。圧力要素6の寸法は、第1の円筒部61の第1の外径が、圧力要素が同軸孔8の内壁に沿って摺動し得るように、同軸孔8の内径よりも若干小さいだけであるような寸法である。
【0021】
図9における断面図において分かり得るように、弾力のある指部66a,66bの半径方向の厚さは、指部の上面68a,68bと第1の円筒部61の上面6aとの間の実質的に中間の位置でもっとも小さい。弾力のある指部66a,66bは、図10に示されるように互いに向かって若干湾曲し得るような態様で中心軸Cに向かって曲がり得る。
【0022】
スリーブ状の挿入片5を有するヘッド3が受入部分の中に挿入されるとともに座部部分13に配置され、かつ圧力要素6が挿入されると、弾力のある指部66a,66bの高さは、図11aに示されるように、傾斜した表面部分69a,69bが円錐形の切欠き15の傾斜した表面部分15a,15bの上部部分にそれぞれ係合するような高さである。
【0023】
骨固定装置は、その全体または一部が、たとえばチタンもしくはステンレススチールといった生体適合性金属、ニチノールといった生体適合性合金のような生体適合性材料、またはたとえばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のような生体適合性プラスチック材料から形成される。上記の部分は、同じ材料または異なる材料から形成されてもよい。
【0024】
多軸骨固定装置はあらかじめ組み付けられてもよい。以下では、固定装置を組み付けるステップを記載する。まずスリーブ状の挿入片5が、スリーブ状の挿入片が90°傾斜された態様で上端部4aから受入部分4に導入され、次いで凹部14a,14bの中へ延在するように当該受入部分の中に導入され、その後、座部部分13において自身の位置を取るように傾斜され得る。次いで、骨固定要素は、ヘッド3がスリーブ状の挿入片5の球状の中心部分52に配置されるように挿入され得る。
【0025】
その後、弾力のある指部がU字型の凹部に配されるような方位で圧力要素が上端部4aから挿入される。次いで、圧力要素は、その浅い凹部65が受入部分のU字型の凹部9と整列するように回転される。弾力のある指部66a,66bが円錐形の切欠き15の中に移動される。弾力のある指部の傾斜した部分69a,69bが切欠き15の傾斜した表面部分15a,15bに係合すると、当該指部は若干内側方向に湾曲する。この構成では、弾力のある指部66a,66bが互いに離れるよう移動する傾向があるので、図11aに示されるように、傾斜した表面部分69a,69bが、切欠きの傾斜した表面部分15aにそれぞれ接触する際に反力が生成される。弾力のある指部66a,66bの弾性変形によって、図11aおよび図11bに示されるように圧力要素6を介してヘッド3上に伝えられる下方への軸方向力Fが生成される。したがって、ヘッド3を低摩擦力にて保持するよう予荷重がヘッド3に適用される。
【0026】
円錐形の切欠き15の傾斜した表面部分15a,15bの表面積が傾斜した表面部分69a,69bの表面積よりもそれぞれ大きいので、傾斜した表面部分69a,69bは、圧力要素が下方向に移動した際に、傾斜した表面部分15a,15bに沿って移動し得る。これにより、ヘッドと、スリーブ状の挿入片と、圧力要素との間の寸法公差が圧力要素6の適切な位置決めによってバランスされ得る。したがって、ヘッドに作用する再現可能な低摩擦力が生成される。
【0027】
圧力要素はさらに、上端部4aを通って外れないよう固定され得る。たとえば、この固定は、クリンピング(示さず)によって達成され得る。これは、圧力要素6が上端部4aを通って押し出されることを防止し得る。なぜならば、指部の弾性変形および生成された低摩擦力は、受入部分において圧力要素をあらかじめ組み付けられた状態に保持するには十分でない場合があるからである。
【0028】
使用時には、あらかじめ組み付けられた多軸骨固定装置は、骨または脊椎の中に挿入される。典型的に、少なくとも2つの骨固定装置が用いられ、ロッド100に接続される。受入部分は、骨固定要素に対してそれらを回転および/または旋回させることにより整列される。ヘッド上に加えられる予荷重は、受入部分を手動で回転および/または旋回することにより克服され得る。ヘッドと圧力要素との間の低摩擦により、固定装置は扱いが簡便である。
【0029】
スリーブ状の挿入片5が受入部分4内で回転可能および旋回可能であるので、多軸骨固定装置では、骨固定要素1に対して受入部分4の360°内の任意の位置にて達成され得る角形成の範囲が拡大されている。受入部分4が骨固定要素1に対して旋回されると、骨固定要素1のシャンク2は、スリーブ状の挿入片の下部縁部5bと接触し、スリーブ状の挿入片5も骨固定要素1に対して旋回される。シャンク2は、シャンク2が受入部分4の下側開口部12の縁部に当接するまで挿入片5を押し得る。達成され得る最大の旋回角度は、スリーブ状の挿入片5、受入部分4、および骨固定要素1の寸法に依存しているが、典型的には、受入部分4と骨固定要素1との間の真っすぐまたはゼロの角度位置から測定して45°以上である。
【0030】
受入部分の整列の後、ロッド100はチャネル内に挿入され、次いで、固定ねじ7が挿入および締められる。これにより、圧力要素は若干下方向に移動され、ヘッド3を座部内へと押すとともにスリーブ状の挿入片を座部部分13内へと押す。内部ねじ7が挿入されるとともに締められ、圧力要素およびロッドがロックされる。
【0031】
第2の実施例に従った多軸骨固定装置を図12図18bを参照して記載する。第1の実施例と同じまたは同様の部および部分を同じ参照番号により指定し、その説明は繰り返さない。第2の実施例の骨固定装置は、受入部分および圧力要素の構成が第1の実施例の骨固定装置とは異なる。他のすべての部分は、第1の実施例と同じまたは同様である。
【0032】
図12図14に示されるように、受入部分4′はアンダカット部分16′を有するが円錐形の切欠きは有さない。アンダカット部分16′の下端部では、2つの対向する横断孔20a,20bが、受入部分の壁を完全に通って延在し、アンダカット部分16′の中に開口する。孔20a,20bは、外部に隣接する、より大きな直径を有する拡大セクション21a,21bを有し得る。ヘッド部分31a,31bを有する2つのピン30a,30bは、ヘッド部分31a,31bが図18aに示されるように当該拡大部分21a,21bに配置されるように、孔20a,20b中に配される。ピンは、挿入されると、受入部分の一部を形成し得る。受入部分の内部に延在するピンの自由端がそれぞれ傾斜した表面部分32a,32bを有する。傾斜した表面部分32a,32bは平坦でもよい、すなわち、第1の実施例と比較して円錐形でなくてもよい。ピン30a,30bの配置は、ピンが孔に挿入されると、傾斜した表面部分32a,32bに沿ったピン同士の間の距離が底端部4bに向かって増加するような配置である。傾斜角は、中心軸Cに対して測定され、約50°以下である。ピンは、圧力要素の対応する傾斜した表面部分69a,69bが傾斜した表面部分32a,32bに対して押圧し得る長さまで、受入部分の内部へと延在する。
【0033】
圧力要素6′は、弾力のある指部66a′,66b′を有する。弾力のある指部66a′,66b′の外面は、第1の円筒部61の外面と面一ではないが、第1の円筒部の外面からオフセットされている。したがって、圧力要素6′が受入部分の中に挿入されると、同軸孔8の内壁と弾力のある指部66a′,66b′の外側との間にスペース17が存在することになる。当該指部の傾斜した表面部分69a′,69b′は、この実施例では平坦である。
【0034】
弾力のある指部66a′,66b′は、図17に示されるように、中心軸Cに向かって曲がり得る。孔20a,20b内にピン30a,30bが搭載された受入部分4′内に圧力要素6′が挿入されると、傾斜した表面部分69a,69bは、ピンの傾斜した表面部分32a,32bと係合し、弾力のある指部は若干内側方向に湾曲する。この構成では、圧力要素6′は、ヘッド3をスリーブ状の挿入片および座部部分13内に低摩擦力で保持する予荷重をヘッド3にかける。圧力要素6′がさらに固定ねじを締める間にヘッド上に押圧されると、傾斜した表面部分69a,69bがそれぞれ、ピンの傾斜した表面部分32a,32bに沿って摺動する。弾力のある指部の最外縁部は、傾斜した表面部分32a,32bともはや接触していない場合には、スペース17内へと延在し得る。
【0035】
第3の実施例に従った多軸骨固定装置を図19図28bを参照して記載する。第1および第2の実施例と同じまたは同様の部および部分を同じ参照番号により指定し、その説明は繰り返さない。第3の実施例の骨固定装置は、受入部分および圧力要素の設計が第1および第2の実施例の骨固定装置とは異なる。他のすべての部分は、第1および第2の実施例と同じまたは同様である。
【0036】
図19図21に示されるように、受入部分4″は、U字型の凹部9によって形成される自由脚部の内側側壁に、傾斜した表面部分15a″,15b″を含む。傾斜した表面部分15a″,15b″は、上端部4aに向かって狭くなる円錐形の孔によって与えられる。したがって、傾斜した表面部分15a″および15b″は、アンダカット16と同軸孔8との間に配される。以下に記載されるように、これらは、圧力要素6″の弾力のある指部との協働のために機能する。同軸孔8と収容スペース11との間には、同軸孔8の直径よりも大きな直径を有する第2の同軸の円筒孔部分8aが存在する。これにより、円周方向に延在するとともに、圧力要素の上方向の移動を制限するよう圧力要素6″の一部に対する当接部として機能する停止部8bが設けられる。この停止部8bは、受入部分4″とモノリシックに形成される。したがって、圧力要素6″を固定するための別個のクリンピングステップは必要ではない。
【0037】
図22図26を参照して、圧力要素6″は、下部縁部6bに隣接する円筒部62を有する本体を含む。円筒部62に続いて、上部表面6aを規定するとともに、ロッド100をガイドするための円筒形のセグメント形状の凹部65を含む上部部分61が存在する。上部部分61からは、凹部65の長手方向軸に対して90°で延在する2つの横方向突出部6c,6dが設けられる。横方向突出部6c,6dから、2つの弾力のある指部66a″,66b″が上部表面6aから上方向に延在する。第1および第2の実施例でのように、球状の凹部63が下部縁部6bに隣接して設けられる。さらに、同軸の貫通穴64は、上部表面6aから凹部63中に延在し、工具のアクセスを可能にする。これにより、骨固定要素1のヘッド3を係合する。
【0038】
弾力のある指部66a″,66b″の厚さはそれぞれ、自由端に向かって半径方向に減少する。これにより、十分な弾力性が提供される。弾力のある指部66a″,66b″は、上部表面6aの一部が弾力のある指部6a″,6b″の外側を取り囲むように、横方向突出部6c,6dのほぼ中心に配される。弾力のある指部66a″,66b″の上部自由端69a″,69b″は、弾力のある指部66a″の上部自由端66cと弾力のある指部66a″の外面66eとの間の角度が約90°であるような態様で丸くされるとともに、上部自由端66cと外面66eとの間の縁部69a″が丸くされる。同様に、第2の弾力のある指部66b″の上部自由端66dと第2の弾力のある指部66b″の外面66fとの間の角度は約90°であり、その間の縁部69b″は丸くされる。その結果、当該丸くされた縁部69a″,69b″は、受入部分4″の傾斜した表面部分15a″,15b″と協働する傾斜した表面部分として作用する。丸くされた縁部69a″,69b″の傾斜した表面部分は、弾力のある指部の外面66e,66fに対してある傾きを有する微小の表面部分から構成されてもよい。
【0039】
横方向突出部6c,6dの領域における圧力要素6″の外径は、横方向突出部6c,6dが組み付け状態で第2の円筒孔部分8aに収容され得るとともに弾力のある指部が同軸孔8内に延在するような態様で圧力要素6″が受入部分4″内に嵌合するように、同軸孔8の内径よりも大きいが、第2の円筒孔部分8aの内径よりも小さい。
【0040】
図25および図26に示されるように、弾力のある指部66a″,66b″は、矢印が示す半径方向の力が指部に作用すると、指部が屈曲していない図25に示される第1の構成から指部が内側方向に屈曲している図26に示される第2の構成へと若干内側方向に湾曲し得るような態様で弾力がある。
【0041】
第3の実施例に従った多軸骨固定装置を組み付けるステップを図27a〜図27fを参照して説明する。図27aに示される第1のステップでは、スリーブ状の挿入片5は、その中心軸500が受入部分の中心軸Cに垂直になるように90°傾斜される。この方位において、スリーブ状の挿入片5は、その中心軸500もU字型の凹部9のチャネル軸に垂直になるように、上端部4aから受入部分4″中に挿入される。スリーブ状の挿入片が図19および図21に示される受入部分4″の凹部14a,14b中に挿入され得るので、収容スペース11に到達するまで、下方向に移動され得る。次いで、図27bに示されるように、スリーブ状の挿入片5は、その中心軸が受入部分の中心軸Cと同軸になるとともにスリーブ状の挿入片5が収容スペース11に収容されるように傾斜される。
【0042】
その後、図27cに示されるように、骨固定要素1は、ねじ山が設けられたシャンク2が下側開口部を通って延在して最終的にヘッド3がスリーブ状の挿入片5に受け入れられるように、上端部4aから受入部分4″に導入される。
【0043】
次いで、弾力のある指部66a″,66b″が上端部4aの方向において上方に延在するとともに横方向突出部6c,6dがU字型の凹部9のチャネル軸の方向へと延在するように、圧力要素6″は上端部4aから受入部分に挿入される。したがって、圧力要素6″は、図28aに示されるように圧力要素6″がその上部部分61にて第2の同軸孔部分8aに到達するまで、その横方向突出部6c,6dが受入部分4″の凹部14a,14bが係合した状態で挿入され得る。図27eに示されるように、圧力要素6″は次いで、横方向突出部6c,6dが停止部8bの下に移動されて図28aに示されるように第2の円筒孔部分8aに収容されるように回転される。停止部8bにより、受入部分4″において上部表面6aの一部が停止部8bに当接するまで、圧力要素6″の上方向の移動が制限される。
【0044】
図27f、図28a、および図28bに示されるような組み付け状態において、弾力のある指部66a″,66b″は、それらの丸くされた上部縁部69a″,69b″が、受入部分4″の傾斜した表面部分15a″,15b″の最上部分に対して当接するように同軸孔8を通って延在し、これにより内側方向に若干湾曲する。
【0045】
図28aおよび図28bに詳細が示されるこの構成において、弾力のある指部66a″,66b″は、傾斜した表面部分15a″,15b″に対して矢印によって示される力Fにて押圧する。指部66a″,66b″は、受入部分4″の傾斜した表面部分15a″,15b″からの反力を経験し、その結果、矢印で示される、低い摩擦力によりヘッド3をクランプする軸方向下方への力Fがヘッド3へと作用する。したがって、ヘッド3をある角度位置に保持する予荷重がヘッド3に適用される。
【0046】
前述の実施例においてのように、圧力要素が下方向に動かされると、丸くされた縁部69a″,69b″は傾斜した表面部分15a″,15b″に沿って動かされる。これにより、ヘッド3と、スリーブ状の挿入片5と、圧力要素6″との間の寸法公差が、圧力要素6″の適切な位置決めによってバランスされ得る。この実施例においても、ヘッド3に作用する再現可能な低摩擦力が生成される。丸くされた縁部69a″,69b″は、詰まることなく、受入部分の傾斜した表面部分15a″,15b″に沿ってスムーズに摺動する。
【0047】
第4の実施例に従った多軸骨固定装置を図29aおよび図29bを参照して記載する。第1および第2の実施例と同じまたは同様の部および部分を同じ参照番号により指定し、その説明は繰り返さない。第4の実施例の骨固定装置は、第1の実施例でのように、弾力のある指部66a,66bの上部端部にて外方向に傾斜した表面69a,69bを含む圧力要素6を含む。なお、第2の実施例の圧力要素6′は、多軸骨固定装置の第4の実施例においても用いられ得る。第4の実施例の受入部分4′″は、第1〜第3の実施例の受入部分とは異なる。他のすべての部分は、第1〜第3の実施例と同じまたは同様である。
【0048】
受入部分4′″は、ねじ山10に隣接する第1のアンダカット部分16′″と、底端部4bに向かう方向に第1のアンダカット部分16′″から距離を置いた第2のアンダカット部分17とを含む。これらのアンダカット部分同士の間には、中心軸Cに向かって突出する円周方向に延在する突出部150a,150bが脚部の各々の上に存在する。突出部150a,150bは、丸くされ得る矩形の下部縁部151a,151bが形成されるように、実質的に矩形の断面を有する。突出部の内部表面152a,152bは、中心軸Cと実質的に同軸である。突出部150a,150bのサイズは、圧力要素が挿入されヘッド3上に配置される際に、傾斜した表面69a,69bが縁部151a,151bに対して当接するとともに弾力のある指部が若干内側方向に湾曲するようなサイズである。結果得られる反力により、ヘッドが特定の角度位置に摩擦により保持されるようにヘッドに作用する軸方向の下方の力Fが生成される。
【0049】
したがって、すべての実施例について、圧力要素に設けられた傾斜した表面もしくは縁部に対する相互作用、または一方の側上の受入部分および他方の側上の受入部分もしくは圧力要素の対応する位置にある縁部もしくは別の傾斜した表面に対する相互作用により、ヘッドを低摩擦力によって保持する下方向の力が生成される。圧力要素または受入部分のいずれかの傾斜した表面部分15a,15b;32a,32b;15a″,15b″,69a,69b,69a′,69b′は、圧力要素が受入部分に配される際に、受入部分の上端部4aにより近い上部端部と、受入部分の底端部4bにより近い下部端部とを有する。傾きは、上部端部が下部端部よりも中心軸Cに近いような傾きである。
【0050】
記載された実施例の修正例も作製され得る。たとえば、2つより多い弾力のある指部が存在してもよい。第2の実施例において、弾力のある指部の数に従って2つより多いピンが存在してもよい。さらに別の修正例では、ただ1つの柔軟なセクションが圧力要素上に設けられてもよい。圧力要素の下部部分が異なって設計されてもよい。スリーブ状の挿入片は省略されてもよい。この場合、受入部分の収容スペースは、より小さくてもよく、ヘッドは、受入部分の座部部分に直接的に配置されてもよい。受入部分は、底端部からの骨固定要素の挿入を可能にするよう構成されてもよい。さらに、圧力要素は、底端部から受入部分への挿入を可能にするよう構成されてもよい。さらに、傾斜した表面部分は、第1の実施例でのように円錐形に形状決めされる必要はなく、または第2の実施例でのように平坦である必要もない。これらの傾斜した表面部分は、下方向の力を生成することを可能にする任意の形状を有してもよい。
【0051】
骨固定要素の場合、さまざまな異なる種類の固定要素が用いられ得るとともに受入部分と組み合され得る。これらの固定要素はたとえば、異なる長さを有するねじ、異なる直径を有するねじ、カニューレ状のねじ、異なるねじ山形状、爪部、フックなどを有するねじであってもよい。いくつかの固定要素の場合、ヘッドおよびシャフトはさらに、互いに接続可能な別個の部品であってもよい。
【0052】
外側ナット、外側キャップ、バヨネットロック装置などを含む他の種類のロック装置も可能である。さらに、圧力要素にのみ作用する外側ロック装置と、ロッドを押圧する内側ロック装置とを有する2部分ロック装置を用いてもよい。圧力要素の内部表面分は、圧力をヘッドに加えるのに好適な任意の他の形状を有してもよい。
【0053】
なお、異なる記載された実施例の部分も、さまざまな異なる組合せで、互いに組み合わされ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18a
図18b
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27a
図27b
図27c
図27d
図27e
図27f
図28a
図28b
図29a
図29b