特許第6076219号(P6076219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076219
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】水晶デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20170130BHJP
   H03H 9/10 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   H03H9/02 A
   H03H9/10
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-157507(P2013-157507)
(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-29177(P2015-29177A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104722
【氏名又は名称】京セラクリスタルデバイス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 文生
(72)【発明者】
【氏名】河森 慎介
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−222537(JP,A)
【文献】 実開昭60−153021(JP,U)
【文献】 特開2007−043351(JP,A)
【文献】 特開2001−358241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007−3/10
H03H9/00−9/76
H01L23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の基板と、
前記基板の上面に設けられた電極パッドと、
前記基板の下面に設けられた外部端子と、
矩形状の封止基部と、前記封止基部の下面の外周縁に沿って設けられた封止枠部とから構成されており、前記封止基部の下面と前記封止枠部の内側側面とで収容空間が形成されている金属製の封止蓋体と、
前記電極パッド上に設けられた水晶素子と、
前記封止枠部の下面に設けられたガラス保護部材と、
前記ガラス保護部材の下面に設けられ、前記ガラス保護部材よりも融点が低いガラス接合部材と、
を備え、
前記電極パッドと前記外部端子とは、前記基板の上面及び下面に設けられた配線パターンと、前記基板の角部に設けられ前記配線パターンと電気的に接続する導体部により接続されており、
前記封止蓋体が、前記ガラス保護部材と前記基板の上面の前記配線パターンとを接触させつつ、前記基板の上面に前記水晶素子を前記収容空間内に収容して載置されている
ことを特徴とする水晶デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の水晶デバイスであって、
前記電極パッドは矩形状であり、
前記電極パッドの角のうち、前記水晶素子を前記電極パッドに設けた際に、前記水晶素子に設けられた励振用電極側を向いている角に、面取り部が設けられている
ことを特徴とする水晶デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子機器等に用いられる水晶デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶デバイスは、水晶素子の圧電効果を利用して、特定の周波数を発生させるものである。例えば、矩形状の基板の上面の一辺に沿って設けられた一対の電極パッドに導電性接着剤を介して実装された水晶素子と、基板の上面に接合部材を介して接合され、水晶素子を気密封止するための金属製の封止蓋体と、を備えた水晶振動子が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。接合部材は、ガラスが用いられ、熱を印加することで、金属製の封止蓋体と基板の上面とを接合することができる。また、水晶デバイスを構成する基板の下面の四隅には、外部端子が設けられており、電子機器等のマザーボードに実装されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−141234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した水晶デバイスは、金属製の封止蓋体と基板の配線パターンが、接合部材により絶縁されている。このような水晶デバイスは、封止蓋体と基板とを接合する際に、封止蓋体と基板に圧力が掛かり、接合部材が薄くなった状態で、封止蓋体と基板とが密着される場合には、基板の上面に設けられている配線パターンと、金属製の封止蓋体とが接触して短絡してしまう虞があった。
【0005】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、金属製の封止蓋体と、基板の上面に設けられている配線パターンとの短絡を低減することが可能な水晶デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様による水晶デバイスは、矩形状の基板と、基板の上面に設けられた電極パッドと、基板の下面に設けられた外部端子と、矩形状の封止基部と、この封止基部の下面の外周縁に沿って設けられた封止枠部とから構成されており、封止基部の下面と封止枠部の内側側面とで収容空間が形成されている金属製の封止蓋体と、電極パッド上に設けられた水晶素子と、封止枠部の下面に設けられたガラス保護部材と、ガラス保護部材の下面に設けられ、ガラス保護部材よりも融点が低いガラス接合部材と、を備え、電極パッドと外部端子とは、基板の上面及び下面に設けられた配線パターンと、基板の角部に設けられ配線パターンと電気的に接続する導体部により接続されており、封止蓋体が、ガラス保護部材と基板の上面の前記配線パターンとを接触させつつ、基板の上面に水晶素子を収容空間内に収容して載置されている特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様による水晶デバイスは、矩形状の基板と、基板の上面に設けられた電極パッドと、基板の下面に設けられた外部端子と、矩形状の封止基部と、この封止基部の下面の外周縁に沿って設けられた封止枠部とから構成されており、封止基部の下面と封止枠部の内側側面とで収容空間が形成されている金属製の封止蓋体と、電極パッド上に設けられた水晶素子と、封止枠部の下面に設けられたガラス保護部材と、ガラス保護部材の下面に設けられ、ガラス保護部材よりも融点が低いガラス接合部材と、を備え、電極パッドと外部端子とは、基板の上面及び下面に設けられた配線パターンと、基板の角部に設けられ配線パターンと電気的に接続する導体部により接続されており、封止蓋体が、ガラス保護部材と基板の上面の前記配線パターンとを接触させつつ、基板の上面に水晶素子を収容空間内に収容して載置されている。このようにすることにより、水晶デバイスは、封止蓋体と基板とを接合する際に、封止蓋体と基板に圧力がかかったとしても、基板の上面に設けられている配線パターンと、ガラス保護部材が接触することになるので、金属製の封止蓋体と配線パターンとが短絡してしまうことを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態における水晶デバイスを示す分解斜視図である。
図2】(a)図1に示された水晶デバイスのA−Aにおける断面図であり、(b)図1に示された水晶デバイスのB−Bにおける断面図であり、(c)図1に示された水晶デバイスのC−Cにおける断面図である。
図3】本実施形態における水晶デバイスの水晶素子を実装した状態を示す平面図である。
図4】(a)本実施形態における水晶デバイスを構成する基板を上面から見た平面図であり、(b)本実施形態における水晶デバイスを構成する基板を下面から見た平面図である。
図5】本実施形態の第一変形例における水晶デバイスを示す分解斜視図である。
図6】本実施形態の第一変形例における水晶デバイスの水晶素子を実装した状態を示す平面図である。
図7】(a)本実施形態の第一変形例における水晶デバイスを構成する基板を上面から見た平面図であり、(b)本実施形態の第一変形例における水晶デバイスを構成する基板を下面から見た平面図である。
図8】(a)本実施形態の第二変形例における水晶デバイスを構成する基板を上面から見た平面図であり、(b)本実施形態の第二変形例における水晶デバイスを構成する基板を下面から見た平面図である。
図9】(a)本実施形態の第三変形例における水晶デバイス水晶素子を実装した状態を示す平面図であり、(b)本実施形態の第三変形例における水晶デバイスを構成する基板を下面から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態における水晶デバイスは、図1及び図2に示されているように、基板110と、基板110の上面に接合された水晶素子120と、水晶素子120を気密封止するための蓋体130と、を含んでいる。このような水晶デバイスは、電子機器等で使用する基準信号を出力するのに用いられる。
【0010】
基板110は、矩形状であり、上面で実装された水晶素子120を実装するための実装部材として機能するものである。基板110の上面の対角の位置には、水晶素子120を接合するための一対の電極パッド111が設けられ、基板110の下面の四隅には、外部端子112が設けられている。また、四つの外部端子112の内の二つが、水晶素子120と電気的に接続されて、水晶素子120の入出力端子として用いられる。
【0011】
基板110は、例えばアルミナセラミックス又はガラス−セラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなる。基板110は、絶縁層を一層用いたものであっても、絶縁層を複数層積層したものであってもよい。基板110の上面及び下面には、上面に設けられた電極パッド111と下面の外部端子112とを電気的に接続するための配線パターン113がそれぞれ設けられている。
【0012】
基板110の電極パッド111は、図2に示すように、水晶素子120を実装するために用いられている。電極パッド111は、図3に示すように、基板110の上面の対角の位置に設けられている。電極パッド111は、基板110の上面及び下面に設けられた配線パターン113及び基板110の角部に設けられた導体部114を介して、電極パッド111と平面視して重なる位置に設けられた外部端子112と電気的に接続されている。
外部端子112は、基板110の下面の四隅に、基板110の外周縁に沿って設けられている。
【0013】
電極パッド111は、図4(a)に示すように、第一電極パッド111a及び第二電極パッド111bによって構成されている。また、外部端子112は、図4(b)に示すように第一外部端子112a、第二外部端子112b、第三外部端子112c及び第四外部端子112dによって構成されている。配線パターン113は、図4に示すように、第一配線パターン113a及び第二配線パターン113bによって構成され、導体部114は、第一導体部114a及び第二導体部114bによって構成されている。第一電極パッド111aと第一外部端子112aとは、基板110の上面及び下面に設けられた第一配線パターン113aと、基板110の角部に設けられた第一導体部114aにより接続されており、第二電極パッド111bと第三外部端子112cとは、基板110の上面及び下面に設けられた第二配線パターン113bと、基板110の角部に設けられた第二導体部114bにより接続されている。また、第二外部端子112b及び第四外部端子112dは、どこにも接続されておらず、接続用端子として用いられている。
【0014】
外部端子112は、外部の電子機器等を構成する実装基板上に実装するために用いられている。外部端子112は、基板110の下面の四隅に設けられている。外部端子112の内の二つの端子は、基板110の上面に設けられた一対の電極パッド111とそれぞれ電気的に接続されている。また、電極パッド111に電気的に接続されている外部端子112は、基板110の下面の対角に位置するように設けられている。
【0015】
また、電極パッド111及び外部端子112は、基板110に沿って設けられた形状となっている。ここで基板110を平面視したときの長辺の寸法が、1.2〜2.5mmであり、短辺の寸法が、1.0〜2.0mmである場合を例にして、電極パッド111及び外部端子112の大きさを説明する。電極パッド111の長辺の長さは、0.30〜0.90mmであり、短辺の長さは、0.20〜0.60mmとなっている。外部端子112の長辺の長さは、0.30〜0.90mmであり、短辺の長さは、0.20〜0.60mmとなっている。
【0016】
配線パターン113は、基板110の上下面に設けられ、電極パッド111及び外部端子112から近傍の基板110の角部に向けて引き出されている。第一配線パターン113aの長さと第二配線パターン113bの長さは、略等しい長さとなる。ここで、略等しい長さとは、基板110の上下面に設けられた第一配線パターン113aの長さと基板110の上下面に設けられた第二配線パターン113bの長さとの差が0〜200μm異なるものを含むものとする。配線パターン113の長さは、各配線パターン113の中心を通る直線の長さを測定したものとする。また、配線パターンの上下方向の厚みは、10〜25μmとなっている。
【0017】
導体部114は、基板110の角部に設けられた切れ込みの内部に設けられている。導体部114の両端は、配線パターン113と接続されている。このようにすることで、電極パッド111は、配線パターン113及び導体部114を介して外部端子112と電気的に接続されている。
【0018】
ここで、基板110の作製方法について説明する。基板110がアルミナセラミックスから成る場合、まず所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得た複数のセラミックグリーンシートを準備する。また、セラミックグリーンシートの表面或いはセラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿設しておいた貫通孔内に、従来周知のスクリーン印刷等によって所定の導体ペーストを塗布する。さらに、これらのグリーンシートを積層してプレス成形したものを、高温で焼成する。最後に、導体パターンの所定部位、具体的には、電極パッド111、外部端子112、配線パターン113及び導体部114となる部位にニッケルメッキ又、金メッキ、銀パラジウム等を施すことにより作製される。また、導体ペーストは、例えばタングステン、モリブデン、銅、銀又は銀パラジウム等の金属粉末の焼結体等から構成されている。
【0019】
水晶素子120は、図2に示されているように、導電性接着剤140を介して電極パッド111上に接合されている。水晶素子120は、安定した機械振動と圧電効果により、電子装置等の基準信号を発振する役割を果たしている。
【0020】
水晶素子120は、図2に示されているように、水晶素板121の上面及び下面のそれぞれに励振用電極122及び引き出し電極123を被着させた構造を有している。励振用電極122は、水晶素板121の上下面のそれぞれに金属を所定のパターンで被着・形成したものである。励振用電極122は、上面に第一励振用電極122aと、下面に第二励振用電極122bを備えている。引き出し電極123は、励振用電極122から水晶素板121の向かい合う辺に向かってそれぞれ延出されている。引き出し電極123は、上面に第一引き出し電極123aと、下面に第二引き出し電極123bとを備えている。第一引き出し電極123aは、第一励振用電極122aから引き出されており、水晶素板121の一方の辺に向かって延出するように設けられている。第二引き出し電極123bは、第二励振用電極122bから引き出されており、水晶素板121の他方の辺に向かって延出するように設けられている。
【0021】
ここで、水晶素子120の動作について説明する。水晶素子120は、外部からの交番電圧が引き出し電極123から励振用電極122を介して水晶素板121に印加されると、水晶素板121が所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。また、水晶素子120は、電極パッド111と接続されている水晶素子120の両端を基板110の上面と接続した両持ち支持構造にて基板110上に固定されている。
【0022】
ここで、水晶素子120の作製方法について説明する。まず、水晶素子120は、人工水晶体から所定のカットアングルで切断し、水晶素板121の外周の厚みを薄くし、水晶素板121の外周部と比べて水晶素板121の中央部が厚くなるように設けるベベル加工を行う。そして、水晶素子120は、水晶素板121の両主面にフォトリソグラフィー技術、蒸着技術又はスパッタリング技術によって、金属膜を被着させることにより、励振用電極122、引き出し電極123を形成することにより作製される。
【0023】
水晶素子120の基板110への接合方法について説明する。まず、導電性接着剤140は、例えばディスペンサによって電極パッド111上に塗布される。水晶素子120は、導電性接着剤140上に搬送され、導電性接着剤140上に載置される。そして導電性接着剤140は、加熱硬化させることによって、硬化収縮される。水晶素子120は、電極パッド111に接合される。つまり、水晶素子120の第一引き出し電極123a及び第二引き出し電極123bは、第一電極パッド111a及び第二電極パッド111bと接合される。これによって、第一外部端子112aと第三外部端子112cが水晶素子120と電気的に接続されることになる。
【0024】
導電性接着剤140は、シリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、アルミニウム、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、銀、チタン、ニッケル又はニッケル鉄のうちのいずれか、或いはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。また、バインダーとしては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂又はビスマレイミド樹脂が用いられる。
【0025】
封止蓋体130は、矩形状の封止基部130aと、封止基部の下面の外周縁に沿って設けられている封止枠部130bとで構成されており、封止基部130aの下面と封止枠部130bの内側側面とで収容空間Kが形成されている。封止枠部130bは、封止基部130aの下面に収容空間Kを形成するためのものである。封止枠部130bは、封止基部130aの下面の外縁に沿って設けられている。
【0026】
封止基部130a及び封止枠部130bは、例えば、鉄、ニッケル又はコバルトの少なくともいずれかを含む合金からなり、一体的に形成されている。このような封止蓋体130は、真空状態にある収容空間K又は窒素ガスなどが充填された収容空間Kを気密的に封止するためのものである。具体的には、封止蓋体130は、所定雰囲気で、基板110の上面に載置され、基板110の上面とガラス保護部材150の下面との間に設けられたガラス接合部材160とが熱が印加されることで、溶融接合される。封止枠部130bの下面には、ガラス保護部材150が環状に設けられている。
【0027】
ガラス保護部材150は、配線パターン113が金属製の封止蓋体130と接触して短絡することを低減するために用いられている。また、ガラス保護部材150は、図1及び図3に示すように、封止蓋体130の封止枠部130bの下面に環状で設けられている。ガラス保護部材150は、ガラス接合部材160よりも融点が高くなるように設けられ、その融点が500〜800℃のものを用いている。これにより、ガラス接合部材160で接合する際には、ガラス保護部材150は、溶融せずに形成時の形状を保ち、上下方向の厚みを確保することができる。よって、金属製の封止蓋体130又は基板110に圧力がかかり押し付けられても、ガラス保護部材150の上下方向の厚み分確保されているので、ガラス保護部材150と基板110の配線パターン113とが接触することになる。このようにすることで、金属製の封止蓋体130と基板110の配線パターン113とが接触することを抑えつつ、この接触による金属製の封止蓋体130と配線パターン113との短絡を低減することが可能となる。
【0028】
また、ガラス保護部材150の上下方向の厚みは、10〜30μmとなっている。このようにすることにより、金属製の封止蓋体130又は基板110に圧力がかかり押し付けられても、封止枠部130bの下面が露出することを低減することができる。また、ガラス保護部材150は、例えば、ガラスフリットペーストがスクリーン印刷法で封止枠部130bの下面の外周縁に沿って環状に塗布され乾燥することで設けられる。ガラス保護部材150が封止蓋体130の封止枠部130bの下面に設けられていることにより、封止蓋体を基板の上面に載置する際に、ガラス保護部材150が緩衝する役割を果たすため、封止枠部130bに欠けが生じることを低減することができる。
【0029】
ガラス接合部材160は、封止蓋体130の下面と基板110の上面の外周縁とを接合するために用いられている。ガラス接合部材160は、図2に示すように、ガラス保護部材150の下面から基板110上の外周縁上にかけて設けられている。ガラス接合部材160は、300℃〜400℃で溶融するガラスである例えばバナジウムを含有した低融点ガラス又は酸化鉛系ガラスから構成されている。ガラスは、バインダーと溶剤とが加えられペースト状であり、溶融された後固化されることで他の部材と接着する。ガラス接合部材160は、例えば、ガラスフリットペーストをスクリーン印刷法で基板110の外周縁に沿って塗布され乾燥することで設けられる。また、この酸化鉛系ガラスの組成は、酸化鉛、フッ化鉛、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ビスマス、酸化ホウ素、酸化亜鉛、酸化第二鉄、酸化銅及び酸化カルシウムとから構成されている。また、ガラス接合部材160の上下方向の厚みは、10〜50μmとなっている。この厚みにすることにより、収容空間内の気密封止性を維持することができる。
【0030】
本実施形態における水晶デバイスは、矩形状の基板110と、基板110の上面に設けられた電極パッド111と、基板110の下面に設けられた外部端子112と、電極パッド111上に設けられた水晶素子120と、基板110と接合された金属製の封止蓋体130と、封止蓋体130の下面に設けられたガラス保護部材150と、ガラス保護部材150の下面に設けられたガラス接合部材160と、を備えている。このようにすることにより、水晶デバイスは、封止蓋体130と基板110とを接合する際に、封止蓋体130又は基板110に圧力がかかったとしても、基板110の上面に設けられている配線パターン113と、封止枠部130bの下面に設けられたガラス保護部材150が接触することになるので、金属製の封止蓋体130と配線パターン113とが短絡してしまうことを低減することができる。
【0031】
(第一変形例)
以下、本実施形態の第一変形例における水晶デバイスについて説明する。なお、本実施形態の第一変形例における水晶デバイスのうち、上述した水晶デバイスと同様な部分については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。本実施形態の第一変形例における水晶デバイスは、図5図7に示されているように、電極パッド211が、基板210の上面の四隅に設けられており、外部端子212が、基板210の下面の四隅に設けられていること点において本実施形態と異なる。
【0032】
基板210の上面の四隅には、水晶素子120を接合するための電極パッド211が設けられ、基板210の下面の四隅には、外部端子212が設けられている。また、四つの外部端子212の内の二つが、水晶素子120と電気的に接続されて、水晶素子120の入出力端子として用いられる。
【0033】
電極パッド211は、図5図7に示すように、基板210の上面の四隅に設けられている。電極パッド211は、基板210に上下面に設けられた配線パターン213と側面に設けられた導体部214を介して、電極パッド211と平面視して重なる位置に設けられた外部端子212と電気的に接続されている。
【0034】
電極パッド211は、図7(a)に示すように、第一電極パッド211a、第二電極パッド211b、第三電極パッド211c及び第四電極パッド211dによって構成されている。また、外部端子212は、図7(b)に示すように、第一外部端子212a、第二外部端子212b、第三外部端子212c及び第四外部端子212dによって構成されている。配線パターン213は、図7に示すように、第一配線パターン213a、第二配線パターン213b、第三配線パターン213c及び第四配線パターン213dによって構成されている。導体部214は、図7に示すように、第一導体部214a、第二導体部214b、第三導体部214c及び第四導体部214dによって構成されている。第一電極パッド211aと第一外部端子212aとは、基板210の上下面に設けられた第一配線パターン213aと、基板210の角の一つに設けられた第一導体部214aにより接続されており、第二電極パッド211bと第二外部端子212bとは、基板210の上下面に設けられた第二配線パターン213bと、基板210の角の一つに設けられた第二導体部214bにより接続されている。また、第三電極パッド211cと第三外部端子212cとは、基板210上下面に設けられた第三配線パターン213cと、基板210の角の1つに設けられた第三導体部214cにより接続されており、第四電極パッド211dと第四外部端子212dとは、基板210上下面に設けられた第四配線パターン213dと、基板210の角の1つに設けられた第四導体部214dにより接続されている。
【0035】
また、電極パッド211と外部端子212とが、それぞれ平面視して重なる位置に配置され、重なる位置にある電極パッド211と外部端子212とが電気的に接続されている。このようにすることにより、基板210の上面と下面との熱膨張係数が近似することになるので、基板210の反りを低減することができる。また、仮に、基板210が反ったとしても、水晶素子120を対角にて保持することにより、水晶素子120にかかる応力を両保持により均等にすることができる。よって、導電性接着剤140にかかる応力が水晶素子120に伝わることにより生じる水晶素子120の発振周波数の変動を低減することができる。
【0036】
また、水晶デバイスに構成されている基板210は、上面及び下面に設けられている電極パッド211と外部端子212が平面透視して重なる位置に設けられている。また、基板210の上面及び下面は、基板210の長辺の中間点を通る軸線に対して左右対称となっている。この基板210を製造装置に搬入させる際に、整列治具に整列させると、基板210の上面及び下面の確認や基板210の方向の確認を画像処理で確認する必要がない。仮に、従来の水晶デバイスで使用されている基板を用いた場合、製造装置に搬入する際に、整列治具に基板を整列させると、基板の上面及び下面の確認や基板の方向の確認を画像処理等で行う必要があり、生産性が低下してしまう。このようにすることで、整列させた基板210を画像処理で確認する必要がないので、水晶デバイスの生産性を向上させることができる。
【0037】
また、水晶素子120の第一引き出し電極123a及び第二引き出し電極123bと、第一電極パッド211a及び第三電極パッド211cとが接合している箇所を軸として傾いても、水晶素子120の接合していない角が第二電極パッド211b又は第四電極パッド211dに接触するので、基板210の上面に水晶素子120の接合していない角が接触することを抑制することできる。仮に、水晶素子120の接合していない角が基板210に接触した状態で、落下試験等を行うと、水晶素子120の接合していない角が欠けてしまう虞がある。このようにすることで、水晶素子120の角が欠けてしまうことを抑え、水晶素子120の発振周波数が変動することを低減することができる。
【0038】
(第二変形例)
以下、本実施形態の第二変形例における水晶デバイスについて説明する。なお、本実施形態の第二変形例における水晶デバイスのうち、上述した水晶デバイスと同様な部分については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。本実施形態の第二変形例における水晶デバイスは、図8に示されているように、電極パッド311は矩形状であり、平面視して、励振用電極122と重なる位置にある電極パッド311に面取り部315が設けられている点において本実施形態と異なる。
【0039】
面取り部315は、励振用電極122側を向いている角に、電極パッド311の一辺から一辺と隣接する一辺にかけて横断するようにして直線状に設けられている。このようにすることによって、励振用電極122と電極パッド311との間で十分な距離が確保できているため、励振用電極122と電極パッド311との接触を低減することができる。
【0040】
また、電極パッド311は、基板310に沿って設けられた形状となっている。ここで基板310を平面視したときの長辺の寸法が、1.2〜2.5mmであり、短辺の寸法が、1.0〜2.0mmである場合を例にして、電極パッド311の大きさを説明する。電極パッド311の長辺の長さは、0.40〜0.90mmであり、短辺の長さは、0.30〜0.60mmとなっている。また、面取り部315は、矩形状の電極パッド311の角を三角形状に除去したものであり、電極パッド311を平面視したときの縦寸法と平行となる寸法が0.05〜0.15mmであり、平面視したときの横寸法が0.05〜0.15mmである。また、面取り部315が設けられた電極パッド311は、矩形状の電極パッド311に比べて、その面積が97〜99%となるように形成されている。
【0041】
本実施形態の第二変形例における水晶デバイスは、電極パッド311及び外部端子312は矩形状であり、電極パッド311に面取り部315が設けられている。このようにすることによって、励振用電極122と電極パッド311との間で十分な距離が確保できているため、励振用電極122と電極パッド311との接触を低減することができる。よって、水晶デバイスは、水晶素子120の発振周波数が変動することを低減することができる。
【0042】
(第三変形例)
以下、本実施形態の第三変形例における水晶デバイスについて説明する。なお、本実施形態の第三変形例における水晶デバイスのうち、上述した水晶デバイスと同様な部分については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。本実施形態の第三変形例における水晶デバイスは、図9に示されているように、水晶素子220が片持ち支持構造であり、基板410の電極パッド411も基板410の短辺に隣接して設けられている点において本実施形態と異なる。
【0043】
電極パッド411は、基板410の上面に一対で設けられており、基板410の一辺に沿うように隣接して設けられている。電極パッド411は、基板410の上下面に設けられた配線パターン413及び基板410の側面に設けられた導体部414を介して、外部端子412と電気的に接続されている。外部端子412は、基板410の下面の四隅に、基板410の外周縁に沿って設けられている。
【0044】
水晶素子220は、図9に示されているように、水晶素板221の上面及び下面のそれぞれに励振用電極222及び引き出し電極223を被着させた構造を有している。励振用電極222は、水晶素板221の上面及び下面のそれぞれに金属を所定のパターンで被着・形成したものである。引き出し電極223は、励振用電極222から水晶素板221の短辺に向かって延出されており、水晶素板221の長辺又は短辺に沿った形状で設けられている。また、本実施形態においては、電極パッド411と接続されている水晶素子220の一端を基板410の上面と接続した固定端とし、他端を基板410の上面と間を空けた自由端とした片持ち支持構造にて水晶素子220が基板410上に固定されている。
【0045】
本実施形態の第三変形例における水晶デバイスは、金属製の封止蓋体130と基板410に圧力がかかったとしても、ガラス保護部材150の上下方向の厚みが確保されているので、金属製の封止蓋体130とガラス保護部材150とが密着されることになり、金属製の封止蓋体130と基板410の上面に設けられている配線パターン413とが短絡してしまうことを低減することができる。
【0046】
尚、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。上記の実施形態では、水晶素子は、AT用水晶素子を用いた場合を説明したが、基部と、基部の側面より同一の方向に延びる二本の平板形状の振動腕部とを有する音叉型屈曲水晶素子を用いても構わない。
【0047】
また、水晶素子120のベベル加工方法について説明する。所定の粒度のメディアと砥粒とを備えた研磨材と、所定の大きさに形成された水晶素板121とを用意する。円筒体に用意した研磨材と水晶素板121とを入れ、円筒体の開口した端部をカバーで塞ぐ。研磨材と水晶素板121とを入れた円筒体を、円筒体の中心軸線を回転軸として回転させる水晶素板121が研磨材で研磨されてベベル加工が行われる。
【0048】
上記の実施形態では、ガラス接合部材160が基板110上に設けられた場合を説明したが、ガラス接合部材160が封止蓋体130の封止枠部130bの下面に設けられるようにしても構わない。このようなガラス接合部材160は、例えば、ガラスフリットペーストがスクリーン印刷法で封止枠部130bの下面に沿って環状に塗布され乾燥することで設けられる。
【符号の説明】
【0049】
110、210、310、410・・・基板
111、211、311、411・・・電極パッド
112、212、312、412・・・外部端子
113、213、313、413・・・配線パターン
114、214、314、414・・・導体部
315・・・面取り部
120・・・水晶素子
121・・・水晶素板
122・・・励振用電極
123・・・引き出し電極
130・・・封止蓋体
130a・・・封止基部
130b・・・封止枠部
140・・・導電性接着剤
150・・・ガラス保護部材
160・・・ガラス接合部材
K・・・収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9