特許第6076234号(P6076234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6076234鋼板コイルの冷間圧延方法およびその冷間圧延設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076234
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】鋼板コイルの冷間圧延方法およびその冷間圧延設備
(51)【国際特許分類】
   B21C 47/26 20060101AFI20170130BHJP
   B21B 1/36 20060101ALI20170130BHJP
   B21B 1/32 20060101ALI20170130BHJP
   B21B 15/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   B21C47/26 A
   B21B1/36
   B21B1/32
   B21B15/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-227819(P2013-227819)
(22)【出願日】2013年11月1日
(65)【公開番号】特開2015-85371(P2015-85371A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2015年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000200334
【氏名又は名称】JFEプラントエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】依光 立嗣
(72)【発明者】
【氏名】倉本 大地
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−085308(JP,A)
【文献】 特開2009−101367(JP,A)
【文献】 特開昭61−176404(JP,A)
【文献】 特開平05−057346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 47/26
B21B 15/00
B21B 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペイオフリールによって送出された鋼板コイルを、出側テンションリールと入側テンションリールにそれぞれ巻き掛け、その相互間に配設された圧延機にて前記鋼板コイルを往復移動させつつ交互に繰り返し圧下することによって冷間圧延を行う鋼板コイルの冷間圧延方法において、
前記冷間圧延を終えた後、前記入側テンションリールに残存する残巻き鋼板コイルを該入側テンションリールから取り外すとともに、前記ペイオフリールに新たな鋼板コイルを装填し、次いで、前記残巻き鋼板コイルと前記新たな鋼板コイルをそれぞれ相互につなぎ合わせて該残巻き鋼板コイルを前記ペイオフリールにて巻き取り、さらに、巻き取られた前記残巻き鋼板コイルを先頭にしてこれにつながる前記新たな鋼板コイルを前記ペイオフリールより送出するとともに前記出側テンションリール及び前記入側テンションリールの相互間に巻き掛けて次の冷間圧延を開始することを特徴とする鋼板コイルの冷間圧延方法。
【請求項2】
前記残巻き鋼板コイルと前記新たな鋼板コイルとのつなぎ合わせが、各鋼板コイルの端部をシャーにより切断してその切断端面同士を相互に突き合わせて接合する突き合わせ溶接によるものであることを特徴とする請求項1に記載した鋼板コイルの冷間圧延方法。
【請求項3】
出側テンションリール及び入側テンションリールを有し、その相互間にわたって巻き掛けられた鋼板コイルを往復移動させつつ該鋼板コイルに冷間圧延を施す圧延機と、この圧延機の入側テンションリールに隣接配置され、冷間圧延前の新たな鋼板コイルを装填するとともに該冷間圧延前の新たな鋼板コイルを送出して前記出側テンションリール及び入側テンションリールに該鋼板コイルを巻き掛けるペイオフリールとを備えた冷間圧延設備であって、
前記ペイオフリールの隣接部位に、前記入側テンションリールより取り外された残巻き鋼板コイルと前記ペイオフリールに装填された冷間圧延前の新たな鋼板コイルとを相互につなぎ合わせる接合装置を設け、
前記接合装置は、前記残巻き鋼板コイルを巻き戻すクレードルロールと、このクレードルロールと前記ペイオフリールとの間に配され該クレードルロールによって巻き戻された残巻き鋼板コイルの端部及び前記ペイオフリールによって巻き戻された圧延前の新たな鋼板コイルの端部を切断するシャーと、このシャーにより切断された各鋼板コイルの切断端面同士を相互に突き合わせ接合する溶接機からなることを特徴とする鋼板コイルの冷間圧延設備。
【請求項4】
前記シャー及び溶接機は、それらを共に載置し、前記クレードルロールと前記ペイオフリールとの相互間において往復移動可能な移動手段を有することを特徴とする請求項3に記載した鋼板コイルの冷間圧延設備。
【請求項5】
前記溶接機は、その出側に、出側クランプを有し、また、その入側には、入側クランプを有し、
該出側クランプは、前記ペイオフリールによって巻き戻された圧延前の新たな鋼板コイルの端部近傍域をその上下において挟持し、かつ、その挟持姿勢を保持したまま該鋼板コイルをその長手方向に沿って進退移動させるものであり、
該入側クランプは、前記クレードルロールによって巻き戻された残巻きコイルの端部近傍域をその上下において挟持し、かつ、その挟持姿勢を保持したまま該残巻きコイルをその長手方向に沿って進退移動させるものであることを特徴とする請求項3または4に記載した鋼板コイルの冷間圧延設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆式圧延機を用いて鋼板コイルを冷間圧延するのに好適な鋼板コイルの冷間圧延方法およびその方法の実施に好適な冷間圧延設備に関するものである
【背景技術】
【0002】
ペイオフリールによって送出された鋼板コイルを、出側テンションリールと入側テンションリールにそれぞれ巻き掛け、その相互間に配設された可逆式の圧延機にて該鋼板コイルを往復移動させながら交互に繰り返し圧下することによって冷間圧延を行う冷間圧延ラインでは、圧延最終パスにおいて、入側テンションリールから鋼板コイルの尾端が外れる前に圧延機の出側に配設されたシャーによって鋼板コイルを切断し出側テンションリールで鋼板コイルを完全に巻き取ってから払い出しを行うようにしている。
【0003】
ところで、上記冷間圧延方式においては、入側テンションリールに残った残巻きコイルは、オフゲージ(未圧延部)となる部位であって、通常は、スクラップとして搬出されるのが普通であり、これが歩留りの低下を招く原因になっていた。
【0004】
可逆式圧延機を用いた冷間圧延において従来避けられなかったスクラップの発生を軽減する先行技術として特許文献1には、圧延機の入出側に板厚計、板速計を設け、ストリップ先端が圧延機出側の板速計に達したら、圧延機のロールギャップを所定の値に設定して圧延を開始し、そのままストリップ先端を圧延機出側の巻き取りリールに巻き付かせて圧延を続けるとともに、圧延終了時はストリップ尾端を圧延しながら圧延機を尻抜けさせ、出側の巻き取りリールに巻き付かせる圧延方法を基本に、同様の操作で複数パスの圧延を繰り返し、所定の板厚のストリップを生産する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−263613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記先行文献1に開示された圧延方法は、ストリップに張力が付与されていない状態で圧延しつつその尾端を尻抜けさせることから、板厚変動が不可避であり、しかも、ストリップの通板が不安定になる不具合も有しており未だ改善の余地が残されている。
【0007】
本発明の課題は、オフゲージとなる部分の発生を極力抑制し、製品部分となる長さをより長くして歩留りの改善を図ることができる鋼板コイルの冷間圧延方法およびその冷間圧延設備を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ペイオフリールによって送出された鋼板コイルを出側テンションリールと入側テンションリールにそれぞれ巻き掛け、その相互間に配設された圧延機にて前記鋼板コイルを往復移動させつつ交互に繰り返し圧下することによって冷間圧延を行う鋼板の冷間圧延方法において、前記冷間圧延を終えた後、前記入側テンションリールに残存する残巻き鋼板コイルを該入側テンションリールから取り外すとともに、前記ペイオフリールに新たな鋼板コイルを装填し、次いで前記残巻き鋼板コイルと前記新たな鋼板コイルをそれぞれ相互につなぎ合わせて該残巻き鋼板コイルを前記ペイオフリールにて巻き取り、さらに、巻き取られた残巻き鋼板コイルを先頭にしてこれにつながる前記新たな鋼板コイルを前記ペイオフリールより送出するとともに前記出側テンションリール及び前記入側テンションリールの相互間に巻き掛けて次の冷間圧延を開始することを特徴とする鋼板コイルの冷間圧延方法である。
【0009】
上記の構成からなる鋼板コイルの冷間圧延方法においては、前記残巻き鋼板コイルと前記冷間圧延前の新たな鋼板コイルとのつなぎ合わせが、各鋼板コイルの端部をシャーにより切断してその切断端面同士を相互に突き合わせて接合する突き合わせ溶接によるものであることが、課題解決のための具体的手段として好ましい。
【0010】
また、本発明は、出側テンションリール及び入側テンションリールを有し、その相互間にわたって巻き掛けられた鋼板コイルを往復移動させつつ交互に繰り返し圧下することによって冷間圧延を行う圧延機と、この圧延機の入側テンションリールに隣接配置され、冷間圧延前の新たな鋼板コイルを装填するとともに該冷間圧延前の新たな鋼板コイルを前記出側テンションリールに向けて送出するペイオフリールとを備えた冷間圧延設備であって、前記ペイオフリールの隣接部位に、前記入側テンションリールより取り外された残巻き鋼板コイルと前記ペイオフリールに装填された冷間圧延前の新たな鋼板コイルとを相互につなぎ合わせる接合装置を設け、前記接合装置は、前記残巻き鋼板コイルを巻き戻すクレードルロールと、このクレードルロールと前記ペイオフリールとの間に配され該クレードルロールによって巻き戻された残巻き鋼板コイルの端部及び前記ペイオフリールによって巻き戻された圧延前の新たな鋼板コイルの端部を切断するシャーと、このシャーにより切断された各鋼板コイルの切断端面同士を相互に突き合わせ接合する溶接機からなることを特徴とする鋼板コイルの冷間圧延設備である。
【0011】
上記の冷間圧延設備において、前記シャー及び溶接機は、それらを共に載置し、前記クレードルロールと前記ペイオフリールとの相互間において往復移動可能な移動手段を有すること、また、溶接機は、その出側に、出側クランプを有し、また、その入側には、入側クランプを有し、該出側クランプは、前記ペイオフリールによって巻き戻された圧延前の新たな鋼板コイルの端部近傍域をその上下において挟持し、かつ、その挟持姿勢を保持したまま該鋼板コイルをその長手方向に沿って進退移動させるものであり、該入側クランプは、前記クレードルロールによって巻き戻された残巻きコイルの端部近傍域をその上下において挟持し、かつ、その挟持姿勢を保持したまま該残巻きコイルをその長手方向に沿って進退移動させるものであることが、課題解決のための具体的手段として好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の鋼板コイルの冷間圧延方法によれば、冷間圧延を終えた後、入側テンションリールに残存する残巻き鋼板コイルを該入側テンションリールから一旦取り外すとともに、ペイオフリールに新たな鋼板コイルを装填し、次いで、残巻き鋼板コイルと新たな鋼板コイルをそれぞれ相互につなぎ合わせて該残巻き鋼板コイルを前記ペイオフリールにて巻き取り、さらに、巻き取られた残巻き鋼板コイルを先頭にしてこれにつながる新たな鋼板コイルを出側テンションリール及び前記入側テンションリールの相互間に巻き掛けて次の冷間圧延を開始するようにしたため、前回の圧延でオフゲージとなった部分の再利用が可能となりその分、次回の圧延に供される鋼板コイルの製品部分が延長され、歩留りの改善を図ることができる。
【0013】
また、本発明の鋼板コイルの冷間圧延方法によれば、残巻き鋼板コイルと前記冷間圧延前の新たな鋼板コイルとのつなぎ合わせが、各鋼板コイルの端部をシャーにより切断してその切断端面同士を相互に突き合わせて接合する突き合わせ接合としたため、鋼板コイルのスムーズな送出、圧延が可能となる。
【0014】
また、上記の構成からなる本発明の冷間圧延設備によれば、該冷間圧延設備を、出側テンションリール及び入側テンションリールを有し、その相互間にわたって巻き掛けられた鋼板コイルを往復移動させつつ交互に繰り返し圧下することによって冷間圧延を行う圧延機と、この圧延機の入側テンションリールに隣接配置され、冷間圧延前の新たな鋼板コイルを前記出側テンションリールに向けて送出するペイオフリールとを備えたもので構成し、ペイオフリールの隣接部位に、入側テンションリールより取り外された残巻き鋼板コイルとペイオフリールに装填された冷間圧延前の新たな鋼板コイルとを相互につなぎ合わせる接合装置を設け、接合装置を、残巻き鋼板コイルを巻き戻すクレードルロールと、このクレードルロールとペイオフリールとの間に配され該クレードルロールによって巻き戻された残巻き鋼板コイルの端部及び前記ペイオフリールによって巻き戻された圧延前の新たな鋼板コイルの端部を切断するシャーと、このシャーにより切断された各鋼板コイルの切断端面同士を相互に突き合わせ接合する溶接機からなるものとしたため、鋼板コイル同士の効率的な接合と、接合された鋼板コイルの迅速な圧延が可能となる。
【0015】
また、本発明の冷間圧延設備によれば、シャー及び溶接機は、それらを共に載置し、クレードルロールとペイオフリールとの相互間において往復移動可能な移動手段を有するものとしたことにより、鋼板コイル自体を移動させることなしに端部の切断が可能となるとともに、切断端面での正確な突き合わせ接合を行うことができる。
【0016】
さらに、本発明の冷間圧延設備によれば、溶接機の出側および入側に、残巻き鋼板コイルの端部近傍域と前記ペイオフリールによって巻き戻された圧延前の新たな鋼板コイルの端部近傍域をその上下においてそれぞれ個別に挟持するとともに、その挟持姿勢を保持したまま該残巻き鋼板コイル、該ペイオフリールによって巻き戻された圧延前の新たな鋼板コイルをその長手方向に沿って移動させて切断端面同士を相互に突き合わせるクランプ
出側クランプ、入側クランプ)を設けるようにしたため、鋼板コイル同士を接合する際に切断端面を正確に突き合せることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に従う冷間圧延設備の実施の形態を模式的に示した図である。
図2】接合装置を構成する溶接機の要部構成を模式的に示した図である。
図3】(a)(b)は、溶接機に設置された接合位置調整クランプの構成例を示した図であり、(a)は、側面を断面にして示した図であり、(b)は、正面図である。
図4】(a)〜(e)は、残巻き鋼板コイルと、新たな鋼板コイルの接合状況を示した図である。
図5】従来法に従って冷間圧延した場合と、本発明に従って冷間圧延した場合の鋼板コイルを比較して示した図である。
図6】(a)(b)は、サイドガイドの構成を模式的に示した図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従う方法を実施するのに用いて好適な冷間圧延設備を模式的に示した図である。
【0019】
図における符号1は、可逆式圧延機(以下、単に圧延機という)、2は、圧延機1の一方(払い出し側)に配置された出側テンションリール、3は、圧延機1の他方(鋼板コイルの供給側)に配置された入側テンションリール、4は、入側テンションリール3の直近に配置され、酸洗ライン等より搬入された鋼板コイルCを装填するとともに装填された鋼板コイルCを出側テンションリール2に向けて送出するためのペイオフリールである。
【0020】
ペイオフリール4より送出された鋼板コイルCは、その尾端が該ペイオフリール4から外れた後においては、入側テンションリール3に巻き掛けられることになり、出側テンションリール2と入側テンションリール3の相互間で鋼板コイルCを往復移動させながら圧延機1により交互に繰り返し圧下することによって所定の厚さまで圧延される。
【0021】
また、5は、圧延機1の払い出し側(出側テンションリール2が設置されている側)直近に設けられ、冷間圧延終了後に鋼板コイルCを切断するシャーである。鋼板コイルCの切断は、該鋼板コイルCの尾端が入側テンションリール2から外れる前に行われるものであって、鋼板コイルCの切断によって入側テンションリール2に残された鋼板コイルが残巻き鋼板コイルCとなる。
【0022】
また、6は、ペイオフリール4の隣接部位に設けられ、入側テンションリール2より取り外された残巻き鋼板コイルCの先端と、ペイオフリール4に装填された冷間圧延前の新たな鋼板コイルCの先端とを相互につなぎ合わせる接合装置である。
【0023】
接合装置6は、残巻き鋼板コイルCを載置するとともにそれを巻き戻すクレードルロール6aと、このクレードルロール6aとペイオフリール4との間に配され該クレードルロール6aによって巻き戻された残巻き鋼板コイルCの先端部およびペイオフリール4によって巻き戻された圧延前の新たな鋼板コイルCの先端部を切断するシャー6bと、このシャー6bにより切断された各鋼板コイルの切断端面同士を突き合せ接合する溶接機(TIG溶接等を行う溶接機が適用される)6cとから構成されている。
【0024】
溶接機6cとしては、その要部を拡大して図2に示すように、残巻き鋼板コイルCの先端部およびペイオフリール4によって巻き戻された圧延前の新たな鋼板Cの先端部をその下面にてそれぞれ受ける裏金6cと、この裏金6cの直上に位置して各鋼板C、Cの切断端面で溶接を行うTIG溶接用のトーチ6cと、各鋼板C、Cを押さえつけて切断端面の突き合わせ状態を安定的に保持する押さえ部材6cとを備えたものが適用される。
【0025】
なお、押さえ部材6cとしては、例えば、押さえ部材6cの主体をなす本体6c31を板ばねの如き弾性部材6c32にて保持し(図2の中心線の右側)、エアーの如き気体を充填することによってチューブ6c33を膨張させて本体6c31の先端を該弾性部材6c32の反発力に抗して各鋼板C、Cを裏金6cに押しつける(図2の中心線の左側参照)ものを用いることができる。
【0026】
また、7は、シャー6b、溶接機6cを載置するとともに、クレードルロール6aとペイオフリール4との相互間において往復移動可能な移動手段である。この移動手段7としては、例えば、クレードルロール6a乃至ペイオフリール4に向けて施設されたレールを有するベース7aと、このベース7aのレールに沿って転動する車輪を有する台車7bとからなるものが適用される。なお、移動手段7については、シャー6bを溶接機6cとともにスムーズに移動させることができるものであればよく、ベース7aと台車7bとの組み合わせから構成されるものには限定されない。
【0027】
また、8は、ペイオフリール4と接合装置6との相互間に配され、その表面に鋼板コイルCを吸着させたままで該鋼板コイルCの搬送を可能としたマグネット式ベルトコンベアである。このベルトコンベア8は、例えば、油圧シリンダー8aにて支持され、該油圧シリンダー8aの作動により接合装置6側の端部を支点にしてペイオフリール4側の端部を該ペイオフリール4に近接、離隔する向きに傾動させることができるようなっている。
【0028】
上記ベルトコンベア8は、ペイオフリール4に装填された鋼板コイルCの先端を、接合装置6のシャー6bに向けて送出するときと、接合を終えた後に鋼板コイル(C、C)をペイオフリール4に巻き取るときに該ペイオフリール4に近接配置されるものであって、これにより、鋼板コイル(C、C)のスムーズな誘導を可能とする。なお、ベルトコンベア8のペイオフリール4側の端部には、該ペイオフリール4に装填された鋼板コイルCの外周面に当接して転動可能な無駆動式のローラを備えておくことができ、このローラにより、該ベルトコンベア8の傾動姿勢を安定化させることができる。ベルトコンベア8としては、鋼板コイルCを吸着させて搬送するものについて説明したが、該鋼板コイルCを接合装置6のシャー6bまで簡便かつ確実に搬送できるものであれば他の手段を適用することも可能であり、マグネット式のベルトコンベアに限定されることはない。
【0029】
さらに、9は、溶接機6cの出側に設けられた板合わせ微調整クランプ(以下、出側クランプ9と記す)、10は、溶接機6cの入側に設けられた板合わせ微調整クランプ(以下、入側クランプ10と記す)である。ここで、溶接機6cを境にしてペイオフリール4が配置されている側を溶接機6cの出側とし、クレードルロール6aが配置されている側を溶接機6cの入側とする。
【0030】
出側クランプ9は、ペイオフリール4によって巻き戻された圧延前の新たな鋼板コイルCの端部近傍域をその上下において挟持し、かつ、その挟持姿勢を保持したまま該鋼板コイルCをその長手方向に沿って移動させることができるものであって、その構成を例えば図3において模式的に示したように、鋼板コイルCの上下面にそれぞれ位置する挟持板9a、9bと、この挟持板9a、9bを相互接近、離隔させるシリンダー9c、9dと、このシリンダー9c、9dを固定するとともに、溶接機6cの架台に設けられたガイドgに沿って前後(鋼板コイルCの長手方向)に移動可能な門形状のフレーム9eから構成される。
【0031】
また、入側クランプ10は、クレードルロール6aによって巻き戻された残巻きコイルCの端部近傍域をその上下において挟持し、かつ、その挟持姿勢を保持したまま該残巻きコイルCをその長手方向に沿って移動させることができるものである。かかる入側クランプ10も上記出側クランプ9と同様、一対の挟持板10a、10bと、この挟持板10a、10bを相互接近、離隔させるシリンダー10c、10dと、このシリンダー10c、10dを固定するとともに、溶接機6cの架台に設けられたガイドgに沿って前後に移動可能な門形状のフレーム10eから構成される(図3参照)。
【0032】
シャー6bによる切断を終えたのちに各鋼板コイルC、Cを、上記の如き出側クランプ9、入側クランプ10により挟持しそのままの状態で出側クランプ9、入側クランプ10をその長手方向に適宜移動させることによって切断端面同士を正確にき合わせる微調整が可能となる。なお、クランプの移動機構については図示のものに限定されることはない。
【0033】
酸洗ラインから搬入され、ペイオフリール4に装填された圧延前の新たな鋼板コイルCは、該ペイオフリール4による送出にて出側テンションリール2に巻き掛けられ、該出側テンションリール2で鋼板コイルを巻き取りつつ圧延機1により圧延がなされる。
【0034】
上記の圧延において鋼板コイルCの尾端がペイオフリール4から外れると、該尾端は入側テンションリール3に巻き掛けられ、該入側テンションリール3で鋼板コイルを巻き取りつつ圧延機1により逆転再圧延がなされる。
【0035】
上記逆転再圧延においては出側テンションリール2から鋼板コイルCの尾端が外れる前に圧延が一旦停止され、さらに、該出側テンションリール2で鋼板コイルCを巻き取りながら圧延機1により正転再々圧延がなされ、このように交互に適宜複数回繰り返すことによって鋼板コイルCは所定の厚さに仕上げられることになる。
【0036】
冷間圧延を終えた後は、入側テンションリール3から鋼板コイルCの尾端が外れる前に鋼板コイルCがシャー5により切断され、出側テンションリール2によって鋼板コイルCの巻き取りを終えた後に次工程へと払い出される。
【0037】
入側テンションリール3に残された残巻き鋼板コイルCについては、該入側テンションリール3から取り外されて接合装置6のクレードルロール6aへと搬送される一方、ペイオフリール4には、次の冷間圧延に供する新たな鋼板コイルCが装填される。
【0038】
ペイオフリール4に装填された新たな鋼板コイルCを冷間圧延(次回の圧延)するに当たっては、まず、残巻き鋼板コイルCを、クレードルロール6aによって巻き戻すとともに、図4(a)に示すように、その先端を接合装置6のシャー6bにより所定の切り代でもって幅方向の全体にわたって切断する。
【0039】
そして、次に、図4(b)、(c)に示すように、ペイオフリール4に装填された新たな鋼板コイルCの先端をベルトコンベア8を経て接合装置6のシャー6bまで送出し、切断された残巻き鋼板コイルCを上側とする重ね合わせ状態(傾動可能なフラッパーテーブル等を使用して残巻き鋼板コイルを一旦持ち上げ、新たな鋼板コイルの先端部を残巻き鋼板コイルの下側に位置させる)にして新たな鋼板コイルCの先端を切断する。
【0040】
シャー6bによる残巻き鋼板コイルCと新たな鋼板コイルCの切断は同一位置で行われ、この切断により、残巻き鋼板コイルCの切断端面と新た鋼板コイルCの切断端面とは図4(d)に示す如く、突き合わせ状態に保たれることになる。ここで、シャー6bによる鋼板コイルの切断は、残巻き鋼板コイルCを切断してから新たな鋼板コイルCを切断する場合について説明したが、新たな鋼板コイルCを切断した後、残巻き鋼板コイル残巻き鋼板コイルCを切断してもよく、この場合、切断後の新たな鋼板コイルCを残巻き鋼板コイルCの上に重ね合わせた状態で残巻き鋼板コイルCの切断を行う。
【0041】
シャー6bによって鋼板コイルC、Cを切断した後においては、図4(e)に示すように、移動手段7の台車7aにより鋼板コイルの突き合わせ部位まで溶接機6cを移動させて出側クランプ9により新たな鋼板コイルCを挟持する一方、入側クランク10により残巻きコイルCを挟持するとともに、押さえ部材6cにて各鋼板コイルを裏金6cに押し付けて該溶接機6cにより鋼板コイル同士を相互につなぎ合わせる。その後、ペイオフリール4により残巻き鋼板コイルCを新たな鋼板コイルCとともに巻き取り、さらに、巻き取られた残巻き鋼板コイルCを先頭にして新たな鋼板コイルCを上述した手順と同様の手順に従って圧延する。なお、鋼板コイルC、Cのつなぎ合わせに際してその相互間にギャップが形成されている場合には、出側クランプ9、入側クランプ10にて鋼板コイルC、Cを挟持したまま該出側クランプ9、入側クランプ10をその長手方向に沿って適宜移動させて切断端面が相互に接触するよう板合わせのための微調整を行う。
【0042】
本発明に従う冷間圧延方法においては、従来、スクラップとなっていた残巻き鋼板コイルCを、次回に冷間圧延する新たな鋼板コイルCの圧延に再利用する(出側テンションリールの巻き付けに必要な部分として利用)ことができるものであり、これにより新たに冷間圧延される鋼板コイルはその先端から圧延することができオフゲージの軽減が可能となる。
【0043】
図5は、リールへの巻き付けに必要な長さが15m、残巻き部分(残巻き鋼板コイル)の長さが15mになる鋼板コイルにつき、従来方式に従って冷間圧延した場合と、本発明法に従って冷間圧延した場合(適合法)とを比較して示した図である。本発明においては、次の冷間圧延において、残巻き鋼板コイルCを新たな鋼板コイルCのリールの巻き付けに必要な部分として利用できるため、製品となる部分が15m延長される。
【0044】
溶接機6cには、新たな鋼板コイルCの端部と残巻き鋼板コイルCをそれらの端部でそれぞれ抑え込む押さえ部材6cを設ける場合について説明したが、切断端面の突き合わせ状態を安定的に保持することができ、かつ、滑らかに突き合わさる接合部を確保し得るものであれば他の構造のものを適用することも可能であり、図示のものに限定されることはない。
【0045】
また、新たな鋼板コイルCと残巻き鋼板コイルCとを接合するに当たっては、新たな鋼板コイルCの幅方向の中心と残巻き鋼板コイルCの幅方向の中心との間にずれが生じている場合に、残巻き鋼板コイルCの巻き取りに際や冷間圧延の際に蛇行等が発生することも懸念される。このため、接合装置6の出側および入側には鋼板コイルの幅方向の端部に位置して該鋼板コイルをその長手方向に沿って誘導するサイドガイドを適宜設けておくのがよい。
【0046】
図6(a)(b)は、サイドガイドを模式的に示した図である。サイドガイドは、各鋼板コイルの幅端に当接可能な当て板部材11と、この当て板部材11を保持するスライダー12と、このスライダー12を当て板部材11とともに鋼板コイルの幅方向に進退移動させるガイドロッド13と、このガイドロッド13を固定するベース部材14にて構成されたものを適用することができる。なお、当て板11の移動は、手動で行うこともできるが駆動源を利用して自動で制御してもよい。
【0047】
さらに、移動手段7の台車7bによって溶接機6c、シャー6bがベース7a上を移動すると、該溶接機6c、シャー6bが移動した分だけ空隙が形成されるためその部位において新たな鋼板コイルC、残巻きコイルCを安定的に支持することができなくなることも想定されるため、当該部位には、台車7bの移動に合わせて伸縮可能な畳み式のテーブルを設けておくことができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、鋼板コイルの冷間圧延で発生したオフゲージの部分を、次回の冷間圧延において再利用するようにしたため、製品部分の延長が可能となり、歩留りの改善を図ることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 圧延機(可逆式圧延機)
2 出側テンションリール
3 入側テンションリール
4 ペイオフリール
5 シャー
6 接合装置
6a クレードルロール
6b シャー
6c 溶接機
7 移動手段
7a ベース
7b 台車
8 ベルトコンベア
9 出側クランプ
9a 挟持板
9b 挟持板
9c シリンダー
9d シリンダー
9e 門型フレーム
10 入側クランプ
10a 挟持板
10b 挟持板
10c シリンダー
10d シリンダー
10e 門形状のフレーム
11 当て板部材
12 スライダー
13 ガイドロッド
14 ベース部材
g ガイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6