(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0017】
<実施の形態1>
(全体構成について)
図1は、本発明の実施の形態1における負荷予測装置901の構成を概略的に示す。負荷予測装置901は、複数の配電区間を有し負荷機器に電力供給を行う配電系統の電力負荷を予測するものである。電力負荷の予測は、後述するように、配電系統のおける任意の配電区間に対して可能である。電力供給が行われる負荷機器は、たとえば、IH(Induction Heating)クッキングヒータ、食器洗い機、給湯機、リビングコンセント、エアコンなどである。なお以下において、これら各機種を「機種n」と総称することもあり、また数式において「n」で表すことがある。また、任意の同一配電区間から電力供給を受ける負荷機器を「同一配電区間機器」と呼ぶことがある。
【0018】
負荷予測装置901は、情報記憶部101と、制御部201と、入力部300と、出力部400とを有する。情報記憶部101は、機種別推定機器数記憶部110と、モード別稼働確率モデル記憶部120と、モード別消費電力モデル記憶部130とを有する。制御部201は、モード別稼働機器数推定部220と、モード別消費電力推定部230と、負荷合計部240とを有する。
【0019】
情報記憶部101は、たとえば、RAM、ROMおよびハードディスクの少なくともいずれかから構成されている。制御部201は、たとえば、CPUなどから構成されている。入力部300は、たとえば、キーボードなどから構成されている。出力部400は、たとえば、ディスプレイなどから構成されている。このようなハードウェア構成は、他の実施の形態においても同様である。
【0020】
(機種別推定機器数記憶部110について)
機種別推定機器数記憶部110は、予測の対象となる配電区間における負荷機器の機種別の台数またはその推定台数の情報を記憶するためのものである。この情報は、負荷予測装置901が使用される際に情報記憶部101に格納されてもよく、あるいは情報記憶部101にあらかじめ記憶されていてもよい。
【0021】
前者の場合、台数の情報は入力部300によって受け付けられてもよく、たとえば、ユーザにより手入力されてもよい。台数の情報そのものの代わりに、これに対応する情報が用いられてもよい。台数の情報は、たとえば、同一配電区間内の需要家数と機種別の普及率とを乗じることにより求められ得る。普及率はアンケートや統計調査などに基づいて見積もることができる。
【0022】
後者の場合には、負荷機器の機種別の台数の情報が複数の配電区間について記憶されていてもよい。この場合、負荷予測装置901が使用される際に、予測の対象となる配電区間の指定が入力部300によって受け付けられてもよい。
【0023】
(モード別稼働確率モデル記憶部120について)
図2は、モード別稼働確率モデル記憶部120に記憶される稼働確率モデルの一例を示す。モード別稼働確率モデル記憶部120は負荷機器の各機種についてモード別かつ時刻別に稼働確率モデルを記憶する。稼働確率モデルは、負荷機器の稼働確率(稼動割合)を、機種別および時刻別に示すモデルである。
図2に示す例では、稼働確率モデルとして、時刻tのときに機種nがモードkで起動(稼動)している確率(割合)(%)を示す確率式である関数f
n, k(t)が適用されている。関数f
n, k(t)には、たとえばm次式などの近似式が用いられる。なお「モード」の詳細については後述する。
【0024】
なお、モード別稼働確率モデル記憶部120には、
図2に示すような関数(式)に限ったものではなく、たとえば、稼働確率(稼動割合)と時刻とが対応付けられた表(図示しない)が適用されてもよい。また、モード別稼働確率モデル記憶部120に適用される関数(式)や表は、ユーザにより手入力されて上述の記憶部に記憶されたものであってもよいし、他システムが自動生成するものであってもよい。
【0025】
以上のようなモード別稼働確率モデル記憶部120により、IHクッキングヒータや食器洗い機の稼働確率のように、生活パターンによって異なる負荷機器の稼働確率(稼動割合)を、機種別および時刻別に表現することが可能となる。そして、平日昼間に稼働されないことが多い場合にはモード別稼働確率モデル記憶部120の昼間の稼働確率を下げる、あるいは、料金プラン設定やタイマー付き機器(食器洗い機)の普及が高くなった場合にはその稼働確率モデルの稼働確率のピークを夜中にシフトさせるなど、機種別および時刻別の稼働確率を適宜変更するシミュレーションを実施することが可能となる。
【0026】
なおモデルの変更および入力の少なくともいずれかにはグラフィカルユーザインターフェース(GUI)が用いられてもよい。たとえば、現在入力されている関数(式)や表の内容が出力部400にグラフで表示され、入力部300のマウスが受け付けるユーザのドラッグアンドドロップ操作などで稼働確率が部分的に変更されてもよい。その際、特定の1つの時間を選択して数値を移動させた場合に、グラフの滑らかさが保たれるように、時間的に近い周囲の数値が自動で調整されるような補間がなされてもよい。この補間は、グラフの凸および凹を利用することで、グラフが凹凸単位で滑らかに変化するようになされてもよい。たとえば、時刻t
1の点を選択し、数値を少し下げた場合、山の頂点(t
1,f
n, k(t
1))のみの数値が下がることで山の頂点に凹みができるのではなく、f1
n, k(t)のように(t
1,f
n, k(t
1))を頂点とする山の高さが全体的になだらかに下がる。また、夕方の時間帯の山の頂点であるピーク時刻を選択し、遅い時間にシフトした例をf2
n, k(t)に示す。グラフの上方に凸である頂点を選択して操作するだけでなく、グラフの下方に凸部分の頂点を選択して操作してもよい。また、グラフ全体や部分を指定して、上下に並行移動させたり、各時刻で元の値からx%増加・減少させたりするなどの操作をしてもよく、上方または下方に凸の頂点の増減をさせてもよい。その際、100%を超える変形がなされた場合には100%以下になるように、0%を下回る変形がなされた場合には0%以上となるような補正が行われる。以上、マウスのドラッグアンドドロップ操作によりグラフの凸または凹グラフを変更することで稼働確率モデルを変更する例を示したが、マウスのドラッグアンドドロップ操作ではなく、変更したいグラフの部分を選択(選択の際、自動でグラフを凹凸で領域分割し、選択できるようにしてもよい)し、頂点の追加(頂点時刻と値を指定)や、ピーク値の変更(ピーク値を指定)、ピーク時刻の変更(時刻を指定)、上下に並行移動させる(並行移動値を指定)、各時刻で元の値からx%増加・減少させる、などのメニューを選択してもよい。GUIにより、直感的に容易に確率モデルを変更することができる。特に、グラフの凸または凹部分を考慮した変形を行うことで、ピークを考慮したシミュレーションが容易となる。
【0027】
図2における稼働確率モデルは各時刻における機種nが稼働している確率の平均値であるが、稼働確率モデルは、平均値のような時刻毎に単一の値ではなく、確率分布を有するものであってもよい。
図3は、機種nの時刻t
1における起動確率f
n, k(t
1)の確率分布が標準偏差σ
nの正規分布である例を示している。モード別稼働確率モデル記憶部120が稼働確率モデルをこのような確率分布で持つことにより、たとえば2×σ
nを誤差(所定誤差)として見積もって、稼働確率を平均値からその誤差(2×σ
n)だけ増加方向に変更するといったことが可能となる(
図2の2点鎖線のグラフf
n, k(t)+2σnを参照)。所定誤差は入力部300によってユーザから受け付けられてもよい。
【0028】
なお、以上の説明では、稼働確率の誤差(所定誤差)は2×σ
nであり、機種n毎に設定されるものの、時刻に関しては一定であった。しかし、起動確率の誤差(所定誤差)は、これに限ったものではなく、たとえばσ
n(t)のように時刻tおよび機種n毎に設定されてもよい。また、機種nの起動確率の誤差(所定誤差)は、増加方向の誤差(たとえば標準偏差σ
n+)と減少方向の誤差(たとえば標準偏差σ
n-)とに分けて設定されてもよい。さらに、機種nの起動確率の誤差(所定誤差)は、関数(式)の形式であってもよいし、表の形式であってもよい。また、誤差(所定誤差)に適用される関数(式)や表は、ユーザにより手入力されて上述の記憶部に記憶されたものであってもよいし、他システムが自動生成するものであってもよい。
【0029】
モード別稼働確率モデル記憶部120に記憶される稼働確率モデルは気温や季節毎に異なるモデルを記憶してもよい。具体的には、モード別稼働確率モデル記憶部120にさらに補正モデルが記憶されてもよい。たとえば、
図4に示すような、気温Tをパラメータとする補正比率を示す補正関数C1
n(T)を
図2の稼働確率f
n, k(t)に乗じることにより、稼働確率モデルが補正される。すなわち、稼働確率f
n, k(t,T)が、次式のように求められる。
【0030】
f
n, k(t,T) = f
n, k(t) × C1
n(T)
ただしf
n, k(t,T)>100%のときはf
n, k(t,T)=100%とみなす。以下においても同様である。
【0031】
なおここでは、補正関数の一例として、乗算によって稼働確率モデル(関数f
n, k(t))を補正する補正関数C1
n(T)を説明したが、補正関数はこれに限ったものではない。次式に示すように、加算によって起動確率モデル(関数f
n, k(t))を補正する補正関数C2
n(T)が適用されてもよい。
【0032】
f
n, k(t,T) = f
n, k(t) + C2
n(T)
ただしf
n, k(t,T)<0%のときはf
n, k(t,T)=0%とみなす。以下においても同様である。
【0033】
また、以上では、補正関数として、気温Tをパラメータとする関数C1
n(T)またはC2
n(T)を適用する構成について説明したが、補正関数はこれに限ったものではない。たとえば、さらに時刻tへの依存性を有する補正関数C1
n(t,T)またはC2
n(t,T)が適用されてもよい。
【0034】
f
n, k(t,T) = f
n, k(t) × C1
n(t,T)
f
n, k(t,T) = f
n, k(t) + C2
n(t,T)
【0035】
また、稼働確率モデルおよび補正関数は、上述したように関数(式)によって規定されるものに限定されるわけではない。たとえば、稼働確率モデルとして、稼働確率と時刻とが対応付けられた表が適用されてもよく、また、補正値と気温とが対応付けられた表(あるいは補正値と気温と時刻とが対応付けられた表)が適応されてもよい。また、稼働確率モデルを稼働確率と補正関数とで表してもよいし、起動確率および補正関数の関数や表を計算・展開してf
n, k(t,T)の形式で表してもよい。
【0036】
また、補正モデルに適用される関数や表は、ユーザにより手入力されて上述の記憶部に記憶されたものであってもよいし、他システムが自動生成するものであってもよい。
【0037】
上述したように、モード別稼働確率モデル記憶部120では、上記の機種別時刻別の稼働確率モデルf
n, k(t)を機種nが保有するモードk毎に持つ。ここでモードとは、各機種における稼働状態の基本的な種類に対応するものである。たとえば、ヒートポンプ式給湯器における凍結防止モード・通常運転モード、食器洗い機における間欠運転モード・連続運転モード、およびエアコンにおけるパワフルモード・除湿モード・加湿モード・冷房モード・暖房モード、冷蔵庫における高電力モード・低電力モードなどがある。
図5を参照して、冷蔵庫について具体的に説明すると、定期的に高電力運転(モード1)と低電力運転(モード2)とが繰り返されている。図中、閾値P
Thはモードm1およびm2を区別するための指標となる電力の値である。
【0038】
同機種同時刻のモード別稼働確率の合計が100%を超えることはない。すなわち、ある時刻t
1について
【0042】
は、機種nおよびモードkのすべての組み合わせについての和を表す。
【0043】
図6は、ヒートポンプ式給湯器のモードkとして2つのモードm1およびm2(m1=通常運転モード、m2=凍結防止モード)が存在する場合の稼働確率の例である。ヒートポンプ式給湯器は夜間の電気料金の安い時間帯にその通常運転が行われるよう設計されている。よってモードm1(通常運転モード)の稼働確率は時刻tに依存し、その稼働確率はf
n, m1(t)となる。またヒートポンプ式給湯器は寒冷地での凍結防止に備え、外気温が一定温度以下になると、凍結防止のために夜間時間帯か否かに関わらず一定時間間隔をあけてモードm2(凍結防止モード)で稼働する。このモードm2での稼働確率をf
n, m2(t)とする。モードm1はお湯を沸かすための稼働であり、モードm2は凍結防止のための稼働であるため、モードm1とモードm2とでは稼働時の消費電力は異なる。時刻t
1におけるモード別稼働確率は、それぞれ、モードm1の稼働確率=f
n, m1(t
1)、モードm2の稼働確率=f
n, m2(t
1)となり、f
n, m1(t
1)+f
n, m2(t
1)≦100%である。
【0044】
また、モードm1およびm2の両方とも外気温Tによって稼働条件が異なるため、気温による補正を行ってもよい。その際、気温による補正関数は、モード毎に異なる補正関数を用いてもよいし、時刻毎に異なる補正関数を用いてもよい。
図6においては、モードm1の稼働確率f
n, m1(t)を気温T2で補正した稼働確率f
n, m1(t,T2)の例を示す。f
n, m1(t1)の気温をT
0とすると、T
0<T
1≦T
2である気温T
1の稼働確率は、下記式のように線形補間で求めてもよい。
【0045】
{(T
2−T
1)×f
n, m1(t)+(T
1−T
0)×f
n, m1(t,T
2)}/(T
2−T
0)
【0046】
モードm1は通常運転モードのため、稼働確率は外気温に応じて滑らかに変化する。
【0047】
また、モードm2における稼働確率=f
n, m2(t
1)について気温Tを考慮するための補正関数C1
n, m2(T)の例を
図7に示す。モードm2は凍結防止モードのため、ある一定気温を閾値として稼働率が急激に変化する。この場合、気温によるモードm2の稼働確率f
n, m2(t,T)は、次式で求められる。
【0048】
f
n, m2(t,T) = f
n, m2(t) × C1
n, m2(T)
【0049】
なお同時刻同気温の各モードの稼働確率の合計は100%以下となる。すなわち次式が満たされる。
【0050】
f
n, m1(t
1,T
2) + f
n, m2(t
1,T
2) ≦ 100%
【0051】
なお、上記はモード別稼働確率の平均値についてのみ述べたが、モード毎に異なる誤差確率分布で表してもよく、モード別の誤差確率分布を気温および時刻の少なくともいずれかをパラメータとする式で表してもよい。さらに、モード別の稼働確率モデルは曜日(平日・休日・祝日)別に記憶されてもよい。これにより、休日や祝日の方が平日より洗濯機の槽洗浄モードの確率が高くなることなどを表現することが可能となる。
【0052】
このように、機種別モード別に稼働確率モデルを記憶することにより、同種の機器でもモードが変わると大きく稼働特性の異なるような機器、(たとえば、1つのモードでは気温に応じて大きく稼働確率が異なり、1つのモードでは時刻に応じて稼働確率が異なるなど)において、稼働確率モデルを適切に表現することが可能となる。
【0053】
(モード別消費電力モデル記憶部130について)
モード別消費電力モデル記憶部130(
図1)は負荷機器の各機種についてモード別に消費電力モデルを記憶するものである。
図8は、モード別消費電力モデル記憶部130が記憶する消費電力モデルの例を示す。消費電力モデルは、1台の負荷機器が起動中(稼動中)に消費する消費電力を機種別かつモード別に示すモデルである。
図8に示す例では、消費電力モデルとして、1台の機種nがモードkで起動中(稼動中)に消費する消費電力の確率分布が、平均P
n, k、標準偏差σ
nの正規規分布である例を示している。
【0054】
なお、消費電力モデルは、正規分布に限ったものではなく、他の確率分布であってもよく、たとえばm次式などの近似式であってもよい。また、
図8に示すような関数(式)に限ったものではなく、たとえば、平均消費電力や最大・最小値、第1四分位点、第3四分位点など(たとえば算術平均、中央値、最頻値など)と時刻とが対応付けられた表(図示しない)が適用されてもよい。また、消費電力モデルに適用される関数(式)や表は、ユーザにより手入力されて記憶されたものであってもよいし、他システムが自動生成するものであってもよい。
【0055】
以上のような消費電力モデルにより、機種nによって異なる消費電力特性を表現することが可能となる。そして、将来、省エネ機器が開発され、機種nの消費電力が変化する場合には、消費電力モデルの機種nの消費電力を変化させるなど、機種別の平均消費電力を適宜変更するミュレーションを実施することが可能となる。
【0056】
モード別消費電力モデル記憶部130で記憶される消費電力モデルは、気温や季節毎に異なるモデルでもよい。
図9は、機種nの平均消費電力P
n, kを、気温Tをパラメータとした関数P
n, k(T)で表す消費電力モデルの例を示す。
図9に示すような消費電力モデルは、たとえば、
図8に示した関数(式)に、気温Tの関数を乗算または加算することにより得られる。
【0057】
なお、消費電力モデルは、
図9に示すような関数(式)に限ったものではなく、たとえば、機種nの1台の平均消費電力と気温Tとが対応付けられた表(図示しない)が適用されてもよい。また、消費電力モデルに適用される関数(式)や表は、ユーザにより手入力されて上述の記憶部に記憶されたものであってもよいし、他システムが自動生成するものであってもよい。
【0058】
モード別消費電力モデル記憶部130に記憶される消費電力モデルを用いると、機種nの消費電力の平均値P
nを得ることが可能である。また、たとえばσ
nを誤差(所定誤差)として見積もって、消費電力モデルの平均消費電力P
n, kの代わりに、(P
n, k+σ
n)を用いることも可能であるし、最大値や第1四分位点を用いることも可能となる。
【0059】
なお、以上の説明では、消費電力の誤差(所定誤差)はσ
nであり、機種n毎に設定されるものの、気温に関して一定であった。しかし、消費電力の誤差(所定誤差)は、これに限ったものではなく、たとえばσ
n(T)のように気温Tおよび機種n毎に設定されてもよい。
図9に、消費電力モデルの平均消費電力P
n, kを実線で示すとともに、それを誤差(σ
n(T))だけ増加方向に変更したものを破線で示す。
【0060】
また、消費電力P
n, kの誤差(所定誤差)は、増加方向の誤差(たとえば標準偏差σ
n+)と減少方向の誤差(たとえば標準偏差σ
n-)とに分けて設定されてもよい。さらに、消費電力P
nの誤差(所定誤差)は、関数(式)の形式であってもよいし、表の形式であってもよい。また、誤差(所定誤差)に適用される関数(式)または表は、ユーザにより手入力されて上述の記憶部に記憶されたものであってもよいし、機種別および気温別に計測された稼動電力の計測データに基づいて制御部201(
図1)が自動生成するものであってもよい。また、誤差分はσ
nに限らず、機種nにおける消費電力モデルでのモードk毎の標準偏差σ
n, kを用いて計算してもよい。
【0061】
冷蔵庫のモード1および2(
図5)の各々における消費電力の確率分布を求めた例を
図10に示す。
図10では、モード1の消費電力の確率分布を正規分布N(P
n, m1, (σ
n, m1)
2)、モード2の消費電力の確率分布を正規分布N(P
n, m2, (σ
n, m2)
2)で表している。なお、
図10ではモード毎の消費電力の確率分布を正規分布で表現したが、他の確率分布でもよく、それぞれモード毎に異なる確率分布でもよい。また、モード毎に気温による補正が行われてもよい。
【0062】
(モード別稼働機器数推定部220について)
モード別稼働機器数推定部220(
図1)は、配電系統をなす複数の配電区間に含まれる一の配電区間内における負荷機器の機種別の推定機器数と、モード別稼働確率モデル記憶部120に記憶された稼働確率モデルとに基づいて、一の配電区間について機種別かつモード別の稼働機器数を推定するものである。すなわち、モード別稼働機器数推定部220は、モード別稼働確率モデル記憶部120に機種(n)別かつモード(k)別に記憶されたモード別稼働確率モデル(f
n, k(t))に、上述した同一配電区間機器の機種別の台数を乗じることにより、同一配電区間機器の機種別および時刻別およびモード別の起動台数の期待値g
n, k(t)を計算するものである。たとえば、モード別稼働機器数推定部220は、次式により、同一配電区間機器の時刻tおよび機種nおよびモードk毎の起動台数の期待値g
n, k(t)を計算する。
【0063】
g
n, k(t) = 同一配電区間機器の機種nの台数 × f
n, k(t)/100
【0064】
(モード別消費電力推定部230について)
モード別消費電力推定部230(
図1)は、モード別稼働機器数推定部220によって推定された稼働機器数と、モード別消費電力モデル記憶部130に記憶された消費電力モデルと、に基づいて、機種別かつモード別の消費電力を推定する。すなわちモード別消費電力推定部230は、モード別消費電力モデル記憶部130が記憶する消費電力モデルから求められる機器の消費電力に、モード別稼働機器数推定部220により計算された起動台数の期待値g
n, k(t)を乗じることにより、同一配電区間機器の機種別および時刻別およびモード別の消費電力の期待値h
n, k(t)を計算する。すなわち、次式でしめされる計算が行われる。
【0065】
h
n, k(t) = 機種nかつモードkの消費電力モデルから求められる消費電力
×g
n, k(t)
【0066】
(負荷合計部240について)
負荷合計部240(
図1)は、モード別消費電力推定部230によって推定された機種別かつモード別の消費電力を合計することにより、一の配電区間における総消費電力の予測値を計算する。
【0067】
たとえば、まず機種nの各々が持つ全てのモードkに対して、期待値h
n, k(t)を合計することで、同一配電区間機器の時刻tおよび機種nの消費電力の期待値h
n(t)を計算する。すなわち、次式で示される計算が行われる。
【0069】
図11には、負荷合計部240により、まず期待値h
n, k(t)から期待値h
n(t)が算出された結果が示されている。具体的には、通常運転モードと凍結防止モードとを有するヒートポンプ式給湯器の期待値h
n(t)が示されている。期待値h
n(t)は、同一配電区間の配電系統から電力供給を受ける全てのヒートポンプ式給湯器が時刻tにて消費する消費電力である。
【0070】
そして全機種nの消費電力の期待値h
n(t)が時刻別に合計されることにより、任意の同一配電区間から電力供給を受ける全ての負荷機器(全ての同一配電区間機器)の時刻別の消費電力総和E(t)が計算される。たとえば、負荷合計部240は、次式により、同一配電区間機器全体の時刻tの総消費電力E(t)を計算する。
【0072】
図12は、負荷合計部240により上式で計算された総消費電力E(t)の例を示す。
図13には、
図12に示した消費電力総和E(t)を得た後に、より寒冷な気候を想定して、モード別稼働機器数推定部220にて外気温を0℃としてシミュレーションを行うことで、ヒートポンプ式給湯器の凍結防止モードによる消費電力が加算された場合が示されている。
【0073】
(負荷予測方法のまとめ)
以上、
図1の各機能ブロックについて説明しつつ、負荷機器に電力供給を行う配電系統の電力負荷を予測する負荷予測方法の詳細について説明した。
図14を参照して、この負荷予測方法の概略をまとめると、以下のとおりである。
【0074】
ステップS10にて、配電系統をなす複数の配電区間に含まれる一の配電区間内における負荷機器の機種別の推定機器数と、モード別稼働確率モデル記憶部120に負荷機器の各機種についてモード別かつ時刻別に記憶された稼働確率モデルとに基づいて、モード別稼働機器数推定部220が一の配電区間について機種別かつモード別の稼働機器数を推定する。
【0075】
ステップS20にて、モード別稼働機器数推定部220によって推定された稼働機器数と、モード別消費電力モデル記憶部130に負荷機器の各機種についてモード別に記憶された消費電力モデルとに基づいて、モード別消費電力推定部230が機種別かつモード別の消費電力を推定する。
【0076】
ステップS30にて、モード別消費電力推定部230によって推定された消費電力を合計することにより、負荷合計部240が一の配電区間における総消費電力の予測値を計算する。
【0077】
(作用効果)
本実施の形態によれば、機種別推定機器数記憶部110に記憶される推定機器数と、モード別稼働確率モデル記憶部120のモデルとに基づいて、同一配電区間機器の機種別および時刻別およびモード別の起動台数の期待値g
n, k(t)が求められる。この期待値g
n, k(t)と、モード別消費電力モデル記憶部130のモデルとに基づいて、同一配電区間機器の機種別および時刻別の消費電力の期待値h
n(t)が求められる。この構成により、任意の配電区間について、負荷機器に起因する電力負荷を機種別および時刻別に、モードの差異を考慮しつつ予測することができる。よって配電系統の電力負荷を精度よく予測することができる。以下、より具体的に説明する。
【0078】
時間帯別電気料金メニューの変更または機器の電力効率の改善などに起因して、負荷機器の機種別の機器普及率、機器稼動時間帯、および負荷機器の消費電力は将来変化すると考えられる。機器普及率の変化には、機種別推定機器数記憶部110に記憶される推定機器数の調整によって対応することができる。機器稼動時間帯の変化には、モード別稼働確率モデル記憶部120のモデルの調整によって対応することができる。負荷機器の消費電力の変化には、モード別消費電力モデル記憶部130のモデルの調整によって対応することができる。よって本実施の形態によれば、電力負荷の将来の変化も精度よく予測することができる。
【0079】
モード別稼働確率モデルは、人の行動パターン(機器を稼働するタイミングおよび稼働モードの選択)に関係していることが多い。このため、人の行動パターンが変化するような場合(電気料金または時間帯別料金設定の時間帯変更など)では、モード別稼働確率モデルを変化させることでシミュレーションが可能となる。またモード別消費電力モデルは負荷機器の電力特性を表している。このため、機器性能の向上などがある場合では、モード別消費電力モデルを変化させることでシミュレーションが可能となる。
【0080】
またモード別稼働確率モデル記憶部120およびモード別消費電力モデル記憶部130の各々のモデルがモード毎に設定されるため、モード毎に異なる稼働特性または稼働電力を持つような負荷機器についても精確な予測が可能である。
【0081】
さらに、モードXが搭載された負荷機器の将来における増加、または、将来における機能向上によるモードXの消費電力特性の変化に対応したシミュレーションも、モード別稼働確率モデル記憶部120およびモード別消費電力モデル記憶部130の各々のモデルを変更することにより可能である。また機種の稼働モードが特に偏るような場合(たとえば、多くの機器が停電復旧時に一斉に消費電力の大きいモードで稼働を開始する場合)においても、モードに依存した消費電力の相違を反映した精確な予測を行うことが可能である。たとえば、夏季における停電復旧時には多数のエアコンが高電力モードで一斉に稼働を開始する。このような場合にも精確な予測を行うことが可能である。この際に気温などの条件を反映させるとさらに精度を高め得る。
【0082】
<実施の形態2>
(構成の概要について)
図15は、本発明の実施の形態2における負荷予測装置902の構成を概略的に示す。負荷予測装置902の構成において、実施の形態1で説明した機能ブロックと同一または類似のものについては同じ符号を付し、異なるものについて主に説明する。負荷予測装置902は、情報記憶部102および制御部202を有する。情報記憶部102はモード別稼働確率モデル記憶部120Vを有する。モード別稼働確率モデル記憶部120Vは機種別稼働確率モデル記憶部121およびモード確率モデル記憶部122を有する。制御部202はモード別稼働機器数推定部220Vを有する。モード別稼働機器数推定部220Vは機種別稼働機器数推定部221およびモード推定部222を有する。
【0083】
(モード別稼働確率モデル記憶部120Vについて)
機種別稼働確率モデル記憶部121は負荷機器の機種別の稼働有無の確率モデルを記憶するものである。すなわち機種別稼働確率モデル記憶部121は、機種nが時刻tに稼働する確率f
n(t)を記憶するものである。実施の形態1のモード別稼働確率モデル記憶部120は機種nが時刻tにモードkで稼働する確率f
n, k(t)を記憶するが、機種別稼働確率モデル記憶部121は機種nが時刻tに稼働しているか否かの確率をモードを問わずに記憶する。このようにモードを不問とする点以外は、機種別稼働確率モデル記憶部121が記憶するモデルは、実施の形態1のモード別稼働確率モデル記憶部120が記憶するモデルと同様であり、気温や曜日(平日・休日・祝日など)をパラメータとして求めてられてもよいし、確率分布で記憶されてもよい。
【0084】
モード確率モデル記憶部122は、モード確率モデル、すなわち、負荷機器の各機種について稼働時におけるモードの割合のモデルを記憶するものである。すなわちモード確率モデル記憶部122は、稼働している機種nが時刻tにモードkをとる確率M
n, k(t)を記憶するものである。よって確率M
n, k(t)の全モードについての和は100%である。なおモード確率モデル記憶部122が記憶するモデルは、実施の形態1のモード別稼働確率モデル記憶部120が記憶するモデルと同様に、気温または曜日(平日・休日・祝日など)をパラメータとして求めてられてもよいし、両方をパラメータとして求められてもよいし、確率分布で記憶されてもよい。
【0085】
図16に冷房利用時のエアコンの稼働電力の例を示す。稼働電力の分布から冷房利用時のこのエアコンの稼働電力には3段階のモード(m1,m2,m3)があることがわかる。このエアコン(AC)の冷房利用時のモード確率の例を
図17に示す。気温Tにおけるモード確率をM
n, k(T)(n=AC、k=m1,m2,m3)とすると、気温T
1におけるモード確率はそれぞれ、M
AC, m1(T
1)、M
AC, m2(T
1)およびM
AC, m3(T
2)、となる。
【0086】
(モード別稼働機器数推定部220Vについて)
機種別稼働機器数推定部221は、配電系統をなす複数の配電区間に含まれる一の配電区間内における負荷機器の機種別の推定機器数と、機種別稼働確率モデル記憶部121に記憶された稼働確率モデルとに基づいて、一の配電区間について機種別の稼働機器数を推定するものである。
【0087】
機種別稼働機器数推定部221(
図15)は、機種別稼働確率モデル記憶部121に記憶される稼働確率モデル(f
n(t))に、配電区間内の機種別推定機器数記憶部110に記憶される同一配電区間機器の機種別の台数を乗じることにより、同一配電区間機器の機種別および時刻別の起動台数の期待値g
n(t)を計算する。たとえば、機種別稼働機器数推定部221は、次式により、同一配電区間機器の時刻tおよび機種n毎の稼働台数の期待値g
n(t)を計算する。
【0088】
g
n(t) = f
n(t)/100 × 同一配電区間機器の機種nの台数
【0089】
モード推定部222(
図15)は、機種別稼働機器数推定部221によって推定された稼働機器数と、モード確率モデル記憶部122に記憶されたモード確率モデルとに基づいて、一の配電区間について機種別かつモード別の稼働機器数を推定するものである。すなわちモード推定部222では、モード確率モデル記憶部122に記憶される機種別のモード確率モデルM
n, k(t)に、機種別稼働機器数推定部221で求めた機種nの稼働台数の期待値g
n(t)を乗じることにより、機種nのモード毎の台数を計算する。機種nがモードkで稼働する台数の期待値をg
n, k(t)は次式で計算される。
【0090】
g
n, k(t) = M
n, k(t)/100 × g
n(t)
【0091】
(作用効果)
図18は、配電区間内の機種Aの機器数がX台の場合において、実施の形態1および実施の形態2の間での処理方法の差異を模式的に示す。
【0092】
実施の形態1では、モード別稼働確率モデル記憶部120がモード毎に稼働確率モデルを記憶している。このため、機器が稼働するか否かの稼働条件がモード毎(図中、モード1および2)に独立であるような機種の特性が適切にモデル化され得る。よってこのような機種での予測精度が特に向上する。このような機種としては、たとえば、稼働時から終了時までモードが変化せず、稼働の度にモードが異なるような洗濯機(洗濯漕洗浄モードと洗濯モード)などがある。モード毎の稼働確率(図中、Z%およびY%)は互いに独立であり、稼働確率の総計は100%以下である(図中、Z+Y≦100)。
【0093】
実施の形態2では、稼働確率モデルは機種別稼働確率モデル記憶部121に機種毎に記憶されている。すなわち、稼働条件が、モードによらず機種で1つにモデル化される(図中、α%)。稼働中にどのモードをとるか(図中、モード1および2)という確率条件(図中、Z%およびY%)がモード確率モデル記憶部122に記憶されており、その総計は100%となる(図中、Z+Y=100)。これにより、たとえば、稼働確率は時刻などでおおよそ決まっており、かつ稼働してから気温などの条件によりモードが切り変わるような機器の特性が適切にモデル化され得る。よってこのような機器での予測精度が特に向上する。
【0094】
<実施の形態3>
(構成の概要について)
図19は、本発明の実施の形態3における負荷予測装置903の構成を概略的に示す。負荷予測装置903の構成において、実施の形態1で説明した機能ブロックと同一または類似のものについては同じ符号を付し、異なるものについて主に説明する。負荷予測装置903は、情報記憶部103および制御部203を有する。情報記憶部103は機器毎計測電力記憶部140およびモード特性記憶部150を有する。制御部203はモデル生成部260を有する。
【0095】
(機器毎計測電力記憶部140について)
機器毎計測電力記憶部140は、負荷機器の機種別かつ時刻別の消費電力の計測結果(電力データ)が記録された計測電力データベース(計測電力DB)を記憶するものである。この計測結果は、たとえば、サンプルとされた住宅において取得されたものである。
【0096】
(モード特性記憶部150について)
モード特性記憶部150は、負荷機器の機種別のモード特性を記憶するものである。モード特性とは、モードの判別条件として用いることができるものであり、たとえば、モード毎の消費電力特性である。たとえば、
図6に示すヒートポンプ式給湯器における通常運転モード(モードm1)および凍結防止モード(モードm2)の例では、稼働時の時刻(夜間およびそれ以外)または稼働時間の長さなどがモードm1とモードm2のモード特性となる。通常運転モードは深夜電力時間帯を利用してお湯を沸かすことを目的としているため、稼働時間は夜間となる。凍結防止モードでは凍結防止ができればよいので、お湯を沸かすことを目的とした通常運手モードより稼働時間は短く、時間帯に関わらず気温が一定以下の条件で定期的に稼働する。
図5の冷蔵庫のモード1および2の例では、
図10に示すように、モード毎に消費電力の特性が大きく異なる。このモード特性の例としては、たとえば、モード1のモード特性は消費電力P
Th以上、モード2のモード特性は消費電力P
Th未満、である。
【0097】
なお、以上の例では消費電力や時刻・稼働時間を用いてモード毎の消費電力特性を記憶する例を示したが、気温・曜日(平日/休日/祝日)などを用いてもよく、消費電力の周波数成分や、消費電力と当該消費電力で稼働する時間とを複数組み合わせた消費電力パターン(消費電力W
1でX
1分稼働後、消費電力W
2でX
2分稼働するなど)を用いてモード毎の特性を記憶してもよい。また、稼働機器からモードの情報が直接取得されてもよい。
【0098】
(モデル生成部260について)
モデル生成部260は、上述した計測電力DBと、モード特性記憶部150に記憶されたモード特性とを用いて、モード別稼働確率モデル記憶部120に記憶される稼働確率モデルと、モード別消費電力モデル記憶部130に記憶される消費電力モデルとを生成するものである。
【0099】
第1に、稼働確率モデルを生成する方法について、以下に説明する。
【0100】
モデル生成部260はまず、計測電力DBから同じ機種に属する電力データを抽出する。次にモデル生成部260は、時間区間Δt(=[t
a,t
b))における機種nの計測データを抽出し、次式により、時刻tにて起動している機種nのモードkでの稼働確率(すなわちf
n, k(t))を計算する。
【0101】
f
n, k{(t
a+t
b)/2}=100×(抽出された計測データのうち稼働電力閾値P
Th以上かつ特定のモードkに属するデータの数)/(抽出された計測データの全数)
【0102】
特定のモードkに属する計測データは、特定の機種について抽出された電力データをモード特性によってモード毎に分類することで得られる。たとえば、ヒートポンプ式給湯器の電力データの一部が、その時刻依存性から、凍結防止モードに分類される。またたとえば、冷蔵庫の電力データの一部が、その消費電力が閾値以上であるか否かから、高電力運転モードに分類される。
【0103】
ここで、上式の右辺の分数の分子に示される稼動電力閾値P
Th(W)には、たとえば、機種n毎に異なる稼動時の最低電力(W)などが設定されている。したがって、当該分子に示される計測データ数は、稼働中の機種nの計測データ数に対応している。よって、たとえば、機種nがΔt(=[t
a,t
b))の間稼動し続けている(すなわちΔtの間、稼動電力が稼動電力閾値P
Th以上であり続ける)場合には、分子の計測データ数と、分母の計測データ数とが同数となり、時間区間Δt(=[t
a,t
b))における機種nの起動確率は100(%)となる。
【0104】
なお、計測データが、稼動電力だけでなくモード自体の情報も含んでいる場合には、次式により上述のf
n, kを計算してもよい。
【0105】
f
n, k{(t
a+t
b)/2}=100×(抽出された計測データのうち特定のモードkに属するデータの数)/(抽出された計測データの全数)
【0106】
上記では、稼働確率モデルを機種n別に時間区間Δt毎に求める例について説明した。さらに、気温区間ΔT(=[T
a,T
b))における機種nの計測データを抽出し、上記の方法と同様の方法で、気温Tをパラメータとして稼働確率を示す関数f
n, k(ΔT)を求めてもよい。あるいは曜日(平日/休日/祝日)がパラメータとして用いられてもよい。また、稼働確率の計算試行を2回以上、たとえば数回、繰り返すことにより、稼働確率の確率分布を求めてもよく、当該確率分布から平均値や標準偏差値σ
nを求めてもよい。計算試行の繰り返し方法としては、稼働確率の計算に用いる一定数の計測データを、そのデータサンプルを変えながらデータベースから抽出して起動確率を計算し、かつ当該起動確率のばらつきから標準偏差を計算する方法や、日毎に起動確率を計算し、かつ当該起動確率のばらつきから標準偏差を計算する方法などがある。
【0107】
第2に、計測電力DBとモード特性とから、モード別消費電力モデル記憶部130で記憶されるモード別消費電力モデルを生成する方法について、以下に説明する。
【0108】
モデル生成部260はまず、計測電力DBから同じ機種に属する電力データを抽出する。次に上述した方法と同様の方法によって、特定の機種について抽出された電力データがモード特性によってモード毎に分類される。次に、モード毎に分類された機種n、モードkのデータを用いて、モード別消費電力モデルが生成される。この方法としては、たとえば、最小二乗近似を用いてm次式で近似したり、正規分布で近似したりすることができる。
【0109】
なおモードに加えてさらに他のパラメータに依存する消費電力モデルが求められてもよい。たとえば気温がパラメータとされてもよい。
【0110】
また、モード別消費電力モデルの生成を2回以上、たとえば数回、繰り返すことにより、消費電力の確率分布を求めてもよく、当該確率分布から平均値や標準偏差値σ
nを求めてもよい。計算試行の繰り返し方法としては、消費電力の計算に用いる一定数の計測データを、そのデータサンプルを変えながらデータベースから抽出して消費電力を計算し、かつ当該消費電力のばらつきから標準偏差を計算する方法や、日毎に消費電力を計算し、かつ当該消費電力のばらつきから標準偏差を計算する方法などがある。
【0111】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1〜3の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0112】
(作用効果)
本実施の形態によれば、モード別稼働確率モデル記憶部120で記憶される稼働確率モデルと、モード別消費電力モデル記憶部130で記憶されるモード別消費電力モデルと、を自動生成することが可能である。モード特性記憶部150にモード特性が記憶されており、それに基づいてモードが判別されるため、計測電力DBのデータの内容を変えるだけで、モデルを自動生成・更新することが可能である。
【0113】
また、モード特性記憶部150のモード特性を変更することで、将来の機器性能の変化に対応が可能である。たとえば、省エネ機器などの登場により各モードの消費電力が小さくなった場合には、各モードを判定する消費電力閾値を小さくすることにより対応が可能である。
【0114】
(変形例1)
上記本実施の形態は、実施の形態1の負荷予測装置901(
図1)におけるモード別稼働確率モデル記憶部120およびモード別消費電力モデル記憶部130の各々のモデルが生成されるものに対応する。その変形例として、実施の形態2の負荷予測装置902(
図15)におけるモード別稼働確率モデル記憶部120Vおよびモード別消費電力モデル記憶部130の各々のモデルが生成されてもよい。
図20に、その場合の負荷予測装置の構成の一部を示す。
【0115】
本変形例においては、モデル生成部260Vはまず、計測電力DBから同じ機種に属する電力データを抽出する。次にモデル生成部260は、時間区間Δt(=[t
a,t
b))における機種nの計測データを抽出し、次式により、時刻tにて起動している機種nの稼働確率(すなわちf
n, k(t))を計算する。
【0116】
f
n{(t
a+t
b)/2}=100×(抽出された計測データのうち稼働電力閾値A
Th以上に属するデータの数)/(抽出された計測データの全数)
ここでA
Thは、負荷機器が稼働しているか否かを判断する指標とされる電力である。
【0117】
モード確率モデル記憶部122に記憶されるモード確率M
n, kは、たとえば次式で計算される。
【0118】
M
n, k{(t
a+t
b)/2}=100×(特定のモードkに属するデータの数)/(抽出された計測データのうち稼働電力閾値A
Th以上のデータの数)
【0119】
なお本変形例における上述した以外の構成は、実施の形態2(
図15)とほぼ同様である。
【0120】
(変形例2)
図21を参照して、本変形例においては、負荷予測装置単体に代わって負荷予測装置を有するシステムが用いられる。具体的には、負荷予測システム903Sは、負荷予測装置903Dと、それにネットワーク999を介して接続された計測電力データベースサーバ990とを有する。負荷予測装置903Dは、ネットワーク999に接続されるための通信部290を有する。負荷予測装置903Dは、負荷予測装置903(
図19)と異なり、機器毎計測電力記憶部140を有しない。代わりに計測電力データベースサーバ990が機器毎計測電力記憶部140を有する。本変形例によれば、機器毎計測電力記憶部140、言い換えればそれに記憶される計測電力DB、を負荷予測装置自体が有する必要がない。
【0121】
<実施の形態4>
図22は、本発明の実施の形態4における負荷予測装置904の構成を概略的に示す。負荷予測装置904の制御部204は、実施の形態3の負荷予測装置903(
図19)の制御部203の構成に加えてさらに、自動モード特性判別部270を有する。自動モード特性判別部270は、機器毎計測電力記憶部140に記憶された計測電力DBから、モード特性記憶部150に記憶されるモード特性を自動で生成する。モード特性としては、たとえば、各モードの消費電力の範囲、時刻、気温、曜日(平日/休日/祝日)などを用いてもよく、消費電力の周波数成分や、消費電力と当該消費電力で稼働する時間を複数組み合わせた消費電力パターン(消費電力W
1でX
1分稼働後、消費電力W
2でX
2分稼働するなど)を用いてもよい。
【0122】
図23を参照して、たとえば、消費電力のヒストグラムを作成することで、各モードの消費電力の範囲をモード特性として得ることができる。ヒストグラムは、機種nの消費電力を計測電力DBから抽出することで作ることができる。自動モード特性判別部270は、このヒストグラムから、山が2つあることを判別し、さらに2つのモードの閾値P
Thを自動で判別する。山や閾値の求め方としては、ヒストグラムをm次式で近似し、上に凸である点の数から山の数(=モードの数)を求め、下に凸である点の頂点から閾値を求めてもよい。山の頂点位置間の中間位置(図中、(P
1+P
2)/2の位置)から閾値を求めてもよい。また、ヒストグラムの頻度の上からX%、下からY%の閾値をもうけることにより、ヒストグラムの山や谷の位置を求め、モード数や閾値を決めてもよい。さらに、ヒストグラムを平滑化して滑らかにし、部分的に線形近似することで傾きを求め、傾きの変化する点をヒストグラムの山や谷として、モード数や閾値を求めてもよい。
【0123】
以上の例ではヒストグラムからモード数および消費電力の範囲を求める方法について述べたが、一般的な階層的クラスタリングの手法(ウォード法など)、自己組織化マップ、非階層的クラスタリング手法(K-means法など)などを利用してモード数およびモード特性を定めてもよい。階層的クラスタリングを用いる場合では、最終的に1つのクラスタに統合されるため、クラスタ(=モード)を統合するか分割するかの閾値をあらかじめ定めておいてもよい。また、非階層的クラスタリングの場合はクラスタ数をあらかじめ与えておくことが必要となるが、あらかじめモード数を与えておいてもよいし、モード数を1、2、3、4・・・と増やしていったときの、クラスタ間の重心の距離、クラスタ内のデータと重心との距離や距離の分散、などから、いくつにクラスタ分割するのが適切かを自動判別するようにしてもよい。
【0124】
また以上の例では、機種毎の消費電力をモード毎に分割することで、モード数および閾値などのモード特性を求めたが、消費電力の周波数成分、または、消費電力および当該消費電力で稼働する時間を複数組み合わせた消費電力パターン(消費電力W
1でX
1分稼働後、消費電力W
2でX
2分稼働するなど)を用いてもよく、これらを組み合わせてもよい。また、主成分分析などを用いて次元を落とした後、クラスタリングを行ってもよい。
【0125】
さらに、消費電力だけでなく、パラメータとして、時刻、気温、曜日(平日/休日/祝日)などを用いてもよい。また、機種nのモードが電力データと共に計測電力DBに部分的に記録されており、その正解データから機械学習またはニューラルネットなどの手法を用いて学習がなされてもよい。また、計測電力DBとは別に、正解データを与えて機械学習識別機またはニューラルネットワークの学習を行い、その結果を用いて自動モード特性判別部270にて判別が行われてよい。さらに、計測電力DBのデータを判別しつつ、そのデータを使って新たに学習が行われてもよい。
【0126】
(作用効果)
本実施の形態によれば、モード特性があらかじめ設定されていなくても、それを自動で判別して適切に設定することが可能である。これにより、モード数およびモード条件などのモード特性が明確でない機種でも、電力データを計測するだけでモード特性が自動判別・記憶される。さらに、計測電力DBの更新を反映してモード特性を生成し直すことにより、機種への新たなモードの追加、またはモード条件の変更(省エネ機器の普及または機器の機能向上に伴うモード間閾値の変化など)に自動で追従することができる。
【0127】
<実施の形態5>
図24は、本発明の実施の形態5における負荷予測装置905の構成を概略的に示す。実施の形態1〜4で説明した機能ブロックと同一または類似するものについては同じ符号を付し、異なる点を中心に説明する。負荷予測装置905は情報記憶部105を有する。情報記憶部105は、配電区間内の機種別推定機器数記憶部110およびモード別稼働確率モデル記憶部120(
図1)のそれぞれの代わりに、配電区間内の機種組み合わせ別推定機器数記憶部115およびモード別機種組み合わせ別稼働確率モデル記憶部125を有する。
【0128】
(機種組み合わせ別推定機器数記憶部115について)
本実施の形態においては、モード別稼働確率モデル記憶部に記憶される稼働確率モデルは、負荷機器の機種組み合わせ別の稼働確率モデルを含む。言い換えると、機種組み合わせ別推定機器数記憶部115は、予測の対象となる配電区間における負荷機器の機種組み合わせ別の台数またはその推定台数の情報を記憶するためのものである。この情報は、負荷予測装置905が使用される際に情報記憶部105に格納されてもよく、あるいは情報記憶部105にあらかじめ記憶されていてもよい。
【0129】
機種組み合わせ別推定機器数記憶部115は、機種組み合わせ、すなわち複数の負荷機器の組み合わせによる区分(たとえば、機器n´
11=機器n
1保有かつ機器n
2非保有、機器n´
12=機器n
2保有かつ機器n
1非保有、機器n´
13=機器n
1保有かつ機器n
2保有、など)毎に、台数を記憶するものである。
【0130】
(モード別機種組み合わせ別稼働確率モデル記憶部125)について
モード別機種組み合わせ別稼働確率モデル記憶部125は、機種組み合わせ別にモード別稼働確率を記憶するものである。
図25および
図26に、組み合わせ機器種別を用いたモード別稼働確率の例を示す。
図25では、蓄熱式暖房器具およびエアコンの保有状況を機種組み合わせとして用いたときのモード別稼働確率モデルの例である。具体的には、単に機種「n=エアコン」と扱う代わりに、「機種n´
1=エアコン保有かつ蓄熱式暖房器具非保有」および「機種n´
2=エアコン保有かつ蓄熱式暖房器具保有」として扱い、各々の稼働確率モデルが記憶される。
図26は、「機種n=エアコン」のモード1および2での稼働確率の代わりに、「機種n´
3=エアコン保有かつホットカーペット保有」および「機種n´
4=エアコン保有かつホットカーペット非保有」としたときの、機種n´
3およびn´
4それぞれのエアコンのモード別稼働確率モデルの例である。
【0131】
なおモード別稼働確率モデルは、実施の形態1のモード別稼働確率モデルと同様に、パラメータとして、時刻だけでなく、気温・曜日(平日/休日/祝日)を用いてもよく、平均値だけでなく確率モデルで表してもよい。
【0132】
(モード別稼働機器数推定部220について)
本実施の形態では、モード別稼働機器数推定部220は、上記の機種組み合わせ別推定機器数と、モード別機種組み合わせ別稼働確率モデル記憶部125に記憶される機種組み合わせ別稼働確率モデルとを用いて、モード別稼働機器数を推定する。
【0133】
なおモード別消費電力モデル記憶部130に記憶されるモード別消費電力モデルは実施の形態1と同様である。
図26の例を用いると、配電区間内のエアコンのモード別消費電力は次式で計算される。
【0134】
エアコンのモードkでの消費電力
=配電区間内の機種n´
3の機器数 × 機種n´
3のエアコンのモードmの稼働確率
+配電区間内の機種n´
4の機器数 × 機種n´
4のエアコンのモードmの稼働確率
(k=1,2)
【0135】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1〜4の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0136】
(作用効果)
本実施の形態によれば、機種組み合わせに応じて変化するモードおよび稼働確率を反映して配電区間内の電力予測をすることができる。冷房機器・暖房機器など、同種類の機器では、保有状況の組み合わせに応じて稼働確率および稼働モードが変化しやすい。
【0137】
たとえば、
図25に示すように、エアコンの暖房利用においては、蓄熱式暖房器具およびエアコンの両方を保有している場合と、エアコンのみ保有し蓄熱式暖房器具を保有していない場合とでは、エアコンの稼働確率が大きく異なる。
【0138】
また、機種組み合わせに応じて機種全体の稼働確率が変わら
なくても、併用がなされることで他機器の影響を受けてモードが変化する場合がある。
図26に示すように、エアコンとホットカーペットとを併用することにより、エアコンのみを利用する場合に比べて、エアコンが大きい電力で稼働するモード1の割合が小さく、小さい電力で稼働するモード2の割合が大きくなる。
【0139】
本実施の形態では、このような機器保有の組み合わせに応じて変化する稼働確率および稼働モードの割合を考慮した配電区間の負荷予測が可能である。
【0140】
<実施の形態6>
(構成の概要)
図27は、本発明の実施の形態6における負荷予測装置906の構成を概略的に示す。実施の形態1〜5で説明した機能ブロックと同一または類似するものについては同じ符号を付し、異なる点を中心に説明する。負荷予測装置906は情報記憶部106および制御部206を有する。
【0141】
情報記憶部106は、モード別稼働確率モデル記憶部120(
図1または
図19)または120V(
図15または
図20)の代わりに、モード別稼働確率モデル記憶部120Cを有する。モード別稼働確率モデル記憶部120Cは、負荷機器の起動開始からの経過時間および起動前の停止時間(両者を総称して「起動関連時間」ということがある)のうち少なくとも一方を用いたモード別稼働確率モデルを記憶する。具体的には、モード別稼働確率モデル記憶部120Cは、モード確率モデル記憶部として、モード確率の起動関連時間依存モデル記憶部122Cを有する。またモード別稼働確率モデル記憶部120Cは、機種別稼働確率の起動関連時間依存モデル記憶部121Vを有する。
【0142】
上述した「起動関連時間」は、一の配電区間における稼働中の全機器の「経過時間」および「停止時間」の少なくともいずれかを近似的に表す代表値である。典型的には、停電
復旧時
刻t1からの経過時間を起動関連時間Δtとして用いることができる。なぜならば、停電からの復旧が行われた直後は、多くの機器が停電復旧時刻に再稼働するので、「経過時間」を1つの代表値Δtで良好に近似できるためである。また、停電していた時間を機器の「停止時間」の代表値として用いることも良好な近似であることから、上記Δtに代わって、あるいは上記Δtとともに、停電していた時間が「起動関連時間」として考慮されてもよい。
【0143】
制御部206はモード別稼働機器数推定部220Cを有する。モード別稼働機器数推定部220Cは機種別稼働機器数推定部221Vを有する。
【0144】
(モード確率の起動関連時間依存モデル記憶部122Cについて)
モード別稼働確率モデル記憶部120Cに記憶されるモード確率モデルは、負荷機器の起動開始からの経過時間および起動前の停止時間のうち少なくとも一方への依存性を有する。具体的には、モード別稼働確率モデル記憶部120Cは、実施の形態2のモード確率モデル記憶部122の代わりに、モード確率の起動関連時間依存モデル記憶部122Cを有する。起動関連時間依存モデル記憶部122Cは、負荷機器の起動開始からの経過時間および起動前の停止時間のうち少なくとも一方への依存性を有する。この例について、以下に説明する。
【0145】
図28に食器洗い機の稼働電力の例を示す。稼働中の食器洗い機は、高い稼働電力を有するモードm1と、低い稼働電力を有するモードm2とを交互に繰り返す。モードm1およびモードm2の割合は、典型的には、食器洗い機の稼働開始(起動)からの経過時間に依存する。
図29を参照して、この依存性を、モード確率の起動関連時間依存モデル記憶部122Cが記憶する。食器洗い機のモードm1またはm2の割合、すなわち、機種n=「食器洗い機」におけるモードk=m1またはm2の確率は、起動からの経過時間Δtに依存する確率M
n, k(Δt)で表される。起動直後は、相対的に高い稼働電力を有するモードm1の確率が高く、時間の経過とともに、相対的に低い稼働電力を有するモードm2の確率が高くなる。
【0146】
また冷蔵庫の例(図示せず)においては、起動する前に停止していた時間に応じて庫内の温度変化の変化量が異なるため、起動前の停止時間に応じて、起動直後の稼働モードが異なる。停止時間が短ければ庫内の温度上昇は小さく、停止後再起動した直後も、それほど大きな電力のモードでは稼働しない。逆に停止時間が長くなると、庫内の温度が上昇し、停止後再起動した際に庫内を冷やすために大きな電力のモードで稼働する。
【0147】
(機種別稼働確率の起動関連時間依存モデル記憶部121Vについて)
機種別稼働確率の起動関連時間依存モデル記憶部121Vに記憶されるモード確率モデルは、負荷機器の起動開始からの経過時間および起動前の停止時間のうち少なくとも一方への依存性を有する。具体的には、起動関連時間依存モデル記憶部121Vは、実施の形態2と同様の機種別稼働確率モデル記憶部121に加えて、稼働確率の起動依存補正モデル記憶部121Cを有する。起動依存補正モデル記憶部121Cは、負荷機器の起動開始からの経過時間および起動前の停止時間のうち少なくとも一方への稼働確率の依存性を考慮するために、機種別稼働確率モデル記憶部121に記憶された稼働確率モデルを補正するものである。この例について、以下に説明する。
【0148】
図30に、通常時を想定した機種別稼働確率モデル(破線)と、停電復旧を想定して起動依存補正モデルによって補正されたもの(実線)との一例を示す。図中破線が機種別稼働確率モデル記憶部121に記憶されたものであり、それに対して起動依存補正モデル記憶部121Cを考慮することで、図中実線の、起動関連時間依存モデルが得られる。起動依存補正モデル記憶部121Cに記憶される補正モデルは、たとえば、機種別稼働確率モデル記憶部121に記憶された稼働確率に乗じられる補正係数K
n(Δt)である。この補正係数K
n(Δt)は、停電復旧時刻t1からの経過時間Δtに依存しており、Δt≦0の場合に0であり、Δt=0すなわち停電復旧時刻から所定の時間の後に1よりも大きい最大値をとった後、1へと収束するものである。このように、必要に応じて、シミュレーションが通常時のもの(たとえば実施の形態2のもの)から、停電復旧時のものへと、負荷予測装置の構成が切り替えられてもよい。
【0149】
なお
図30の例では起動関連時間として経過時間が考慮されるが、起動前の停止時間が考慮されてもよい。
【0150】
(モード別稼働機器数推定部220C)
起動依存補正モデル記憶部121Cが用いられる場合、モード別稼働機器数推定部220Cにおける機種別稼働機器数推定部221Vは、負荷機器の機種別の推定機器数と、機種別稼働確率モデル記憶部121に記憶された機種別の稼働有無の確率モデル(稼働確率f
n, k(t)(%))と、起動依存補正モデル記憶部121Cに記憶された補正モデル(補正係数K
n(Δt)=K
n(t−t
1))とに基づいて、一の配電区間について機種別の稼働機器数g
n, k(t)を推定する。
【0151】
g
n, k(t)=同一配電区間機器の機種nの台数×{f
n, k(t)/100}×K
n(t−t
1)
【0152】
なお上記実施の形態においては、モード別稼働確率モデル記憶部120Cが、起動関連時間依存モデル記憶部121Vおよび起動依存補正モデル記憶部121Cを有するが、前者が実施の形態2の機種別稼働確率モデル記憶部121に置き換えられたり、または、後者が実施の形態2のモード確率モデル記憶部122に置き換えられたりしてもよい。言い替えれば、起動関連時間の依存性を、機種別稼働確率モデルおよびモード確率モデルの両方について考慮する代わりにいずれか一方について考慮してもよい。
【0153】
(作用効果)
本実施の形態によれば、停電復旧時などのように起動関連時間による近似が有効な場合に、起動関連時間依存モデル記憶部122Cを用いることで、モードの偏りを精度よく考慮した予測が可能である。また機種別稼働確率の起動関連時間依存モデル記憶部121Vを用いることで、稼働確率の偏りを精度よく考慮した予測が可能である。
【0154】
(変形例)
図31を参照して、本変形例においては、起動関連時間が考慮されたモデルが、モード別稼働確率モデル記憶部120C(
図27)ではなく、モード別消費電力モデル記憶部としての、モード別消費電力の起動関連時間依存モデル記憶部130Vに記憶される。すなわち、モード別消費電力の起動関連時間依存モデル記憶部130Vに記憶される消費電力モデルは、負荷機器の起動開始からの経過時間および起動前の停止時間のうち少なくとも一方への依存性を有する。
【0155】
図32を参照して、たとえばエアコンの稼働電力は、起動からの経過時間Δtへの依存性が大きい。具体的には、エアコンの稼働電力は、起動直後に大きな値をとった後に徐々に低下していく傾向がある。よって、モード別消費電力の起動関連時間依存モデル記憶部130Vは、たとえば、
図33に示すような平均消費電力のモデルP
n, k(Δt)を記憶する。機種n(この場合はエアコン)におけるモードkの消費電力の期待値h
n, k(t)は、モード別消費電力推定部230において、以下のように計算される。
【0156】
h
n, k(t)= g
n, k(t) × P
n, k(Δt)
【0157】
なお消費電力の期待値h
n, k(t)を余裕を持って見積もる場合は、平均消費電力のモデルP
n, k(Δt)に対して、Δtに依存した標準偏差σ
n, k(Δt)を加えたもの(
図33の破線参照)が用いられてもよい。この場合、期待値h
n, k(t)は、以下のように計算される。
【0158】
h
n, k(t)= g
n, k(t) × {P
n, k(Δt)+σ
n, k(Δt)}
【0159】
標準偏差σ
n, k(Δt)のモデルとしては、たとえば、Δt=0、すなわち停電復旧時刻において最大であり、その後、時間の経過とともに減少するものを用い得る。そのようなモデルは、消費電力の不確定性が停電復旧直後に特に大きいことを考慮するのに適している。
【0160】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。