【文献】
SINGH BIMAL P,STABILITY OF DISPERSIONS OF COLLOIDAL ALUMINA PARTICLES IN AQUEOUS SUSPENSIONS,JOURNAL OF COLLOID AND INTERFACE SCIENCE,米国,ACADEMIC PRESS,2005年11月 1日,V291 N1,P181-186
【文献】
S. HARJANTO,AIP CONFERENCE PROCEEDINGS,2011年 1月 1日,V1415,P110-113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分散媒(102)及び前記金属酸化物粉末(106)に対する複数の見込みがある分散剤の相互作用エネルギーを、分子モデリング技法を用いて計算する計算ステップと、
前記複数の見込みがある分散剤から計算された相互作用エネルギーに基づいて分散剤(104)を選択する選択ステップと、をさらに含む請求項1に記載の方法。
前記一次混合物(110)を磨砕する間、前記一次混合物(110)中の金属酸化物粒子の粒径を定期的に測定する測定ステップをさらに含み、前記一次混合物(110)が、金属酸化物粒子の平均粒径が100nm未満になるまで磨砕される、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書のいかなるブロック図も、本件主題の原理を具現化する例示的なシステムの概念図を表すと当業者に評価されるべきである。
【0009】
ここに、無機ナノ粒子の懸濁液の調製方法を記載する。ここに記載される方法は、様々な金属酸化物、例えばチタン、鉄、ケイ素、ジルコニウム、及び亜鉛などの金属の酸化物のナノ粒子の懸濁液の調製のために実施することができる。無機ナノ粒子の懸濁液は広い範囲の用途で用いられ、例えば、二酸化チタン(TiO
2)、つまりチタニアは、高級塗料で白色顔料として、特質を向上させるために接着剤における増量剤(filler)として、光学透過性のUV吸収コーティングで、空気及び水を清浄にする光触媒反応のために、並びに抗菌用途で用いられる。
【0010】
無機ナノ粒子の懸濁液の調製のために様々な方法が用いられうる。例えば、チタンのナノ粒子の懸濁液は、焼成、四塩化チタン(TiCl
4)の火炎加水分解が後続する酸塩基化学を通しての硫酸チタンの加水分解や、チタニア粒子を生成する縮合反応が後続する酸化チタンの加水分解によって調製することができる。しかし、懸濁液を作製するために得られたナノ粒子を媒体に分散させるとき、粒子は凝集する傾向がある。一般に、それらの使用目的のために用いることができる適当な懸濁液を作製するために、さらなる処理が要求される。
【0011】
本件主題の一実施形態により、無機ナノ粒子の安定した懸濁液の調製方法が本明細書に記載される。安定した懸濁液は、無機ナノ粒子が長期間、即ち数カ月若しくは数年凝集しないか、小さなエネルギーを付与することによって崩壊させることができる弱い集塊を形成する懸濁液と理解してよい。一実施態様では、金属酸化物粉末、分散媒及び分散剤が混合されて一次混合物を形成する。金属酸化物粉末での平均粒径は、約0.1〜100ミクロンの範囲内であってよい。分散媒は、水性媒体又は非水性媒体であってよい。
【0012】
さらに、分散剤は、粒子の均一な懸濁を促進して、凝集を阻止するために媒体に加えられる物質と理解してよい。一実施態様では、分散剤は、分散剤と所与の金属酸化物粉末及び分散媒との相互作用に関する測定に基づいて選択される。相互作用は、分散媒の存在下での所与の分散剤と金属酸化物粒子の表面との相互作用エネルギーとして測定することができる。相互作用エネルギーに基づく分散剤の選択は、金属酸化物粒子表面に強く引きつけられ、強力な分散剤吸収を可能にする分散剤を特定するために役立つ。その結果、金属酸化物粒子は互いに反発し、凝集を阻止する。用いることができる分散剤には、例えば、カルボン酸が含まれ、それに限定されない。それらは脂肪族、芳香族又はポリマーの酸、エステル、エーテル、アルコール、セルロース、糖誘導体又はそれらの任意の組合せであってよい。
【0013】
一次混合物は、次に磨砕されてナノ粒子の懸濁液を生成する。一実施態様では、一次混合物を磨砕する前に、金属酸化物粉末及び分散剤を例えば磁気撹拌を用いて分散媒に分散させ、一次混合物スラリーを形成する。これは、一次混合物に金属酸化物の粒子を一様に分配するのを助けて、粒子の凝集を回避する。一次混合物を分散して、一次混合物のスラリー(slurry)を形成するために、当技術分野で公知である異なる分散方法、例えば超音波処理を用いることもできることを当業者なら理解するであろう。
【0014】
分散後、一次混合物を磨砕してナノ粒子の懸濁液を形成することができる。一実施態様では、一次混合物は湿式粉砕技術を用いて磨砕される。一次混合物は、平均粒径が100nm以下程度になるまで磨砕することができる。さらに、一次混合物が磨砕されている間、粘度及び分散の状態を維持するために、分散剤及び分散媒は所定の期間後に加えることができる。分散剤及び分散媒は、別々に又は混合物として加えてよいことが理解されよう。
【0015】
こうして生成されるナノ粒子の懸濁液は高濃度のナノ粒子を含有することができ、濃度は10から40重量%(重量百分率)の間で変動してよく、そこで、重量百分率の濃度は一次混合物中の金属酸化物粒子の重量百分率を反映する。一次混合物の調製及び磨砕工程の間、相互作用エネルギー基準に基づいて選択される分散剤の添加は、より長い期間安定した懸濁液を可能にする。さらに、得られた懸濁液中のナノ粒子は分散剤及び分散媒の存在下で湿式粉砕によって形成されたので、ナノ粒子は凝集する傾向がない。さらに、所定の期間後の磨砕中の分散剤の添加は、さらなる安定性も提供し、凝集を阻止する。さらに、安定した懸濁液を調製するために、磨砕時間、磨砕媒体のサイズ、磨砕媒体と粉末の比、一次混合物スラリーの濃度及び分散剤の量などの様々なプロセスパラメーターを制御し、監視することもできる。
【0016】
一実施態様では、懸濁液は、ナノ粒子の希釈懸濁液を得るために、分散剤及び分散媒で希釈することができる。形成される希釈懸濁液は、当技術分野で公知の分散技術、例えば超音波処理、及び磁気分散を用いて次に分散させることもできる。
【0017】
適する分散剤は懸濁液の調製の前に相互作用エネルギー基準に基づいて選択されるので、適する分散剤を最終的に特定するために、異なる分散剤による複数の懸濁液を調製して安定性について検査する必要がない。したがって、本方法は、所与の金属酸化物の安定した懸濁液を得るために必要な分散剤を特定する費用を低減する。さらに、本方法は、小規模生産だけでなく、費用を削減して金属酸化物ナノ粒子の懸濁液の商業生産も促進することができる。
【0018】
記載は本件主題の原理を単に例示するだけであることに注意すべきである。したがって、当業者は、本明細書で明示的に記載されないが、本件主題の原理を具現化し、その精神及び範囲に含まれる様々な構成を考案することができると理解されよう。さらに、本明細書に挙げられる全ての例は、主に、本件主題の原理及び当該技術をさらに進めるために発明者によって提供される概念の読者による理解を助けるために、教育的目的のためだけであることを明示的に意図するものであり、そのような具体的に挙げられる例及び条件に限定されないと解釈されるべきである。さらに、本件主題の原理、態様及び実施形態、並びにその具体例を挙げている本明細書の記載の全ては、それらの等価物を包含するものとする。
【0019】
金属酸化物ナノ粒子の安定した懸濁液を調製するための記載される方法の態様は、いかなる数の異なる生産環境及び構成、その生産環境又はその構成でも実施することができるが、実施形態は以下の環境の事情について記載する。
【0020】
図1は、本件主題の実施形態による、無機ナノ粒子の懸濁液の調製のための系100のブロック図表示を例示する。当業者によって理解されるように、懸濁液の調製の異なるレベル及び段階で生成される中間混合物は、異なるバッチ及び様々な量で生成することができることが理解されよう。
【0021】
一実施態様では、分散媒102、分散剤104及び少なくとも1種の金属酸化物の粒子を含むことができる金属酸化物粉末106がともに混合されて一次混合物110を形成する。金属酸化物粉末106は、金属、例えば、チタン、鉄、ケイ素、ジルコニウム及び亜鉛の酸化物を含むことができる。さらに、他の実施態様では、金属酸化物粉末106は、金属、金属合金及びそれらの組合せの粒子を含むことができると理解されよう。一例では、金属酸化物粉末106が二酸化チタンを含む場合は、金属酸化物粉末106はルチル型又はアナターゼ型であってよい。一実施態様では、金属酸化物粉末の平均粒径は100nmを超え、例えば約0.1から1.0ミクロンの範囲内である。前記実施態様の一例では、金属酸化物粉末の平均粒径は、約0.5〜0.7ミクロンの範囲内である。
【0022】
さらに、分散媒102は、水性溶液又は有機溶媒であってよい。分散媒102の例には、それらに限定されないが、水、無機テレビン油などの油;エステル、例えばエチルアセテート若しくはn-ブチルアセテートのような脂肪族エステル;アルコール、例えばエチルアルコール若しくはプロピルアルコールのような脂肪族アルコール;グリコール、又はそれらの組合せが含まれる。
【0023】
同様に、分散剤104は選択された分散媒102に適する物質であってよく、それらに限定されないがカルボン酸、エステル、エーテル、アルコール、糖及びその誘導体若しくはポリマー、ホスフェート、アミンなど、又はそれらの組合せを含めることができる。一実施態様では、所与の分散媒102及び金属酸化物粉末106のための分散剤104は、相互作用エネルギーに基づいて選択される。一実施態様では、相互作用エネルギーは分子モデリング技法を用いて計算することができる。分子モデリング技法は、分散剤分子と分散媒102及び金属酸化物粉末106中の金属酸化物の粒子表面との相互作用を定量化するために用いられる理論的技術又はコンピューター技術と理解することができる。その目的のために、当技術分野で公知である任意の分子モデリング技法を用いることができる。所与の分散媒102及び金属酸化物粉末106のために適する分散剤104を選択するために、計算した相互作用エネルギーを用いることができる。例えば、複数の見込みがある分散剤のセットから、最も高い負の相互作用エネルギーを有する分散剤を、所与の分散媒102及び金属酸化物粉末106のための分散剤104として選択することができる。別の例では、相互作用エネルギーは実験的に決定することができる。
【0024】
例えば、分散媒として水の存在下で二酸化チタンの懸濁液を調製するために用いることができる見込みがある分散剤として、クエン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸を考慮する。Accelrys(登録商標)からのマテリアルスタジオソフトウェア(material studio software)を用いて見込みがある分散剤の各々について計算した相互作用エネルギーを、表1に表す。
【0026】
前記の表から、クエン酸が最も低い相互作用エネルギーを有すること、或いは最も負の相互作用エネルギーを有することを観察することができ、したがって、水の存在下で二酸化チタンの懸濁液を調製するために適する分散剤であると考えられる。別の実施態様では、適する分散剤を選択するために、費用などの他の基準を相互作用エネルギーデータとともに用いることができる。
【0027】
知られているように、粒径がより小さく、表面積がより大きいと、粒子間、この場合金属酸化物粒子間のファンデルワールス力がより強い。さらに、強力なファンデルワールス力のために、粒子は互いに向かって流れ、集塊を形成する傾向がある。しかし、適切な分散剤の添加は、懸濁液中の金属酸化物粒子の凝集を阻止する。粒子がそれ以降互いに反発するように、分散剤は金属酸化物粒子にキャップをするかコーティングし、その結果、金属酸化物が懸濁液に分散したままになる。したがって、適切な分散剤がない場合、金属酸化物粒子は長期間の間分散したままでなく、結局凝集する。
【0028】
したがって、分散媒の分子の存在下で金属酸化物表面に対するその相互作用エネルギーが低いように分散剤が選択されるならば、分散剤分子は金属酸化物粒子と分散媒分子の間の界面に包埋され、それによって金属酸化物粒子の凝集を阻止する。
【0029】
一次混合物110の調製に戻ってみると、一例では、一次混合物は、分散媒102及び分散剤104と約30〜40重量%の金属酸化物粉末106とを混合することによって調製される。一実施態様では、金属酸化物粒子の凝集及び沈殿を阻止するために、一次混合物110はディスパーサー112を用いて分散させる。ディスパーサー112は、一次混合物110を分散させるために、当技術分野で公知である任意の物理的分散技術、例えば超音波処理、及び磁気撹拌を用いてもよい。
【0030】
分散した一次混合物は、金属酸化物ナノ粒子の懸濁液116を提供するために金属酸化物粉末106の粒径を低減するために、グラインダー114を用いて磨砕することができる。しかし、未分散一次混合物110をグラインダー114で直接に磨砕することもできることが理解されよう。一実施態様では、グラインダー114は、粉砕装置、例えばプラネタリーボールミル、撹拌媒体ミル、アトリションミル、及びビーズミルである。一実施態様では、一次混合物110は、湿式粉砕を用いて磨砕することができる。さらに、グラインダー114は、一次混合物を受けて磨砕するための、複数のジャーを有してもよい。さらに、グラインダー114は、イットリウム安定化二酸化ジルコニウムなどの磨砕媒体を含む。粉砕中に、磨砕時間、磨砕速度、磨砕媒体のサイズ、ジャーの充填率、磨砕媒体と金属酸化物粉末の比、一次混合物の濃度、及び分散剤の量などの様々なプロセスパラメーターを制御し、監視することができる。
【0031】
一実施態様では、磨砕媒体の平均粒径は、約0.4〜3.3ミリメートル(mm)の範囲内であり、グラインダー114での磨砕媒体と金属酸化物粉末の比は、約16.67:1から40:1の範囲内であり、ジャーの充填率は、約50〜70%の範囲内であり、磨砕時間は、約30分〜24時間の範囲内であり、磨砕速度は、約420毎分回転数(rpm)であってよい。前記実施態様の一例では、磨砕媒体の平均粒径は、約0.4〜0.7mmの範囲内であり、グラインダー114での磨砕媒体と金属酸化物粉末の重量比は、約25:1〜40:1の範囲内であり、ジャーの充填率は、約55〜65%の範囲内であり、磨砕時間は、約2〜6時間の範囲内である。
【0032】
さらに、磨砕中に、所定の時間間隔の後ごとに粒径分析器118を用いて金属酸化物の粒径を分析することができる。一例において、所定の時間間隔は1時間である。しかし、粉砕工程が完了に近づくにしたがって、粒径を分析するまでの時間は、粉砕工程の初期段階と比較してより短くてよいことが理解されよう。粒径分析器118は、粒径を分析するために当技術分野で公知である異なる技術、例えばレーザー回折技術、音響分光技術及び超音波減衰分光技術を利用することができる。一実施態様では、グラインダー114で粒径を分析するためにレーザー散乱粒径分析器が用いられる。
【0033】
一実施態様では、粘度を変更して生成されたナノ粒子を良好に分散させておくために、すなわち、懸濁液116が良好に分散し、安定を保つことを保障するために、所定の時間間隔の後ごとにグラインダー114の中の混合物に少量の分散媒102及び分散剤104が加えられる。上で述べたように、凝集を阻止するために、分散剤104は金属酸化物粒子をコーティングする。一例において、懸濁液中のナノ粒子の平均径は、約5〜300nmの範囲内である。
【0034】
さらに、一実施態様では、懸濁液は分散媒102及び分散剤104を用いて希釈することができる。このように調製される希釈懸濁液は、金属酸化物粉末106のナノ粒子を一様に混合して希釈懸濁液に安定性を与えるために、第2のディスパーサーを用いて分散させることができる。ディスパーサー112と同様に、分散した希釈懸濁液を得るために、別のディスパーサーは、一次混合物110を分散させるための、当技術分野で公知である任意の物理的分散技術を用いることができる。一実施態様では、分散した希釈懸濁液を得るために、第2のディスパーサーは、超音波処理技術を実施することができる。
【0035】
一実施形態によれば、無機ナノ粒子の懸濁液の調製方法が記載される。本方法は、分散媒102を分散剤104及び金属酸化物粉末106と混合して一次混合物110を形成することを含む。前記実施形態で、分散剤104は、分散媒102及び金属酸化物粉末106に対する分散剤104の相互作用エネルギーに基づいて選択される。金属酸化物粉末106は、100nmを超える平均粒径を有する少なくとも1種の金属酸化物の粒子を含む。一例では、混合することは、一次混合物110を分散させて一次混合物110のスラリーを形成することをさらに含むことができる。一次混合物110は、超音波処理及び磁気撹拌の1つを用いて分散させることができる。
【0036】
一例では、分散媒102及び金属酸化物粉末106に対する複数の見込みがある分散剤の相互作用エネルギーは、計算された相互作用エネルギーに基づいて複数の見込みがある分散剤から分散剤104を選択するための分子モデリング技法を用いて計算することができる。別の例では、相互作用エネルギーは実験的に決定することができる。
【0037】
さらに、本方法は、一次混合物110を磨砕、例えば湿式粉砕して懸濁液116を得ることを含む。さらに、分散剤104が所定の時間間隔の後に磨砕中に一次混合物110に加えられる。例えば、一次混合物110は、プラネタリーミル(planetary mill)を用いて磨砕されてもよい。
【0038】
一実施態様では、本方法は、一次混合物110を磨砕する間に、一次混合物110中の金属酸化物粉末の粒径を定期的に測定することをさらに含む。さらに、一次混合物110は、金属酸化物粉末の平均粒径が約100nm未満になるまで磨砕することができる。
【0039】
本方法は、希釈懸濁液を得るために懸濁液116に分散剤104及び分散媒102を加えること、並びに分散した希釈懸濁液を得るために希釈懸濁液を分散させることをさらに含むことができる。希釈懸濁液は、超音波処理及び磁気撹拌の1つを用いて分散させることができる。
【0040】
さらに、懸濁液及び分散した希釈懸濁液の少なくとも1つでの金属酸化物粒子は、100nm未満の平均径を有することができる。
【0041】
一実施態様では、分散媒102は、水、ポリオール、グリコール、アルコール及び油の少なくとも1つであり、分散剤104は、カルボン酸、エステル、エーテル、アルコール、糖、糖誘導体、ホスフェート及びアミンの少なくとも1つであり、金属酸化物粉末106は、チタン、鉄、ケイ素、ジルコニウム及び亜鉛の少なくとも1つの酸化物を含む。
【0042】
したがって、本方法は、ナノ粒子の懸濁液の現場生産(in-situ production)を可能にする。本明細書に記載される方法を通して調製される懸濁液は、より長い期間の間安定している。一般的に、懸濁液は数日か数カ月の間安定しているが、凝集が起こったとしても、弱い集塊の形成をもたらし、それらは、例えば磁気撹拌又は超音波処理を用いて少量のエネルギーで破壊することができる。さらに、ここに記載される希釈懸濁液は、一般的に数年間凝集しない。したがって、金属酸化物粒子に対するその相互作用エネルギーに基づいて選択される分散剤を用いるナノ粒子懸濁液の調製は、安定した懸濁液の調製を容易にする。さらに、本方法は高い圧力又は温度を伴わないので、製造費用の低減を可能にし、したがって、ナノ粒子懸濁液の商業生産のために用いることができる。
【0043】
検証及び結果 ナノ粒子の懸濁液を調製するための方法の結果は二酸化チタンを用いて検証し、それを以下の実施例に示す。本明細書で議論される実施例はもっぱら説明目的であり、本件主題の範囲を限定するものではないことが理解されよう。
【0044】
<実施例1>
本実施例では、二酸化チタン粉末が金属酸化物粉末106とされ、水が分散媒102とされる。さらに、 表1に基づき、クエン酸が分散剤104として選択される。前記実施例では、10グラム(gm)のクエン酸ナトリウムを100ミリリットル(ml)の水に溶解し、この溶液に40gmの二酸化チタン、つまりチタニア粉末(Sumitomo Co. Japanから入手される)を加えて一次混合物110を得た。一次混合物110は、磁気撹拌を用いて分散させた。さらに、一次混合物110を磨砕するために、各々容積500mlを有する4つのよく洗浄されたメノウジャーを有するプラネタリーボールミルを用いた。ジャーに、1000gmの0.4〜0.7mmのZirconox磨砕媒体(Jyothi Ceramics、Nasik、Indiaから入手される)を詰め、ジャーの有効容積を総容積の約2/3に対応させた。
【0045】
分散した一次混合物を各ジャーに注ぎ、234rpmで1時間磨砕した。体積1mlの試料を磨砕間隔1時間後ごとに抜き、30mlのクエン酸水溶液で希釈し、本実施例では粒径分析器118(Horiba LA-910, Horiba, Japan)によって分析した。さらに6時間磨砕を続け、さらなる磨砕、すなわち粒径の低減が最小限であることが観察されたときまで、磨砕スラリーの粒径を毎時分析した。さらに、粘度を改変して、生成されるナノ粒子をよく分散させておくために、磨砕の4時間後にクエン酸の2gmの追加供与量及び10mlの水を加えた。実験は、4セット、A、B、C及びDについて繰り返した。これらのセットの各々でこのように得られたチタニアナノ粒子懸濁液の特性を表2に示す。
【0047】
表2から観察されるように、粉砕後に得られた二酸化チタンの粒子の径中央値及び平均径は100nm未満である。さらに、100nm未満の直径の粒子の割合は90%を超える。
【0048】
<実施例2>
さらに、懸濁液の安定性を検査するために、懸濁液を時間に応じて監視した。この目的のために、実施例1に記載された手順によって4時間の磨砕後に得られた一次懸濁液の試料を、室温及び大気圧で30日間保存した。この元の試料中の粒子は80nmのd
50径を有し、92.3%の粒子は100nmより微細であった。d
50粒径は、体積で測定される粒径分布の中央値又は50パーセンタイルを表す。d
50粒径は、粒子の50%がこの値以下の体積を有するような粒径分布に関する値である。保存された試料をクエン酸水で希釈し、4分間超音波処理し、粒径分析にかけた。試料は多少の凝集を示し、41.2%の割合は100nm未満であった。
【0049】
さらに、集塊が柔らかいか弱いかを検査するために、実施例1に記載されたのと類似した条件で試料を1時間再び再磨砕し、粒径分布について分析した。
図2aに示す粒径分析グラフ200及び202から、懸濁液がその元の状態を回復し、粒径分布が元の懸濁液のそれとほとんど同一であったこと、すなわち、懸濁液が80nmのd
50を有し、92.0%の粒子が100nmより微細であったことを観察することができる。
【0050】
さらに、別の事例では、実施例1に記載される手順によって4時間の磨砕後に得られた、80nmのd
50径を有し、100nmより微細な92.3%の粒子を有する試料は、水中の5重量%のナノチタニアに希釈し、希釈試料を室温及び大気圧でさらに3年間保存し、粒径分布について分析した。3年間保存した懸濁液は81nmのd
50径を有し、92%の粒子は100nmより微細であった。したがって、懸濁液は元の懸濁液のそれに類似した粒径分布を示した。したがって、上記の実施例から、ここに記載される方法が数年間安定であるナノ粒子の懸濁液の調製を可能にしたことがわかる。
【0051】
<実施例3>
様々な分散剤の効果を研究して、相互作用エネルギーに基づく分散剤の選択を検証するために、ポリアクリル酸及びカルボキシメチルセルロースを分散剤として、二酸化チタンを金属酸化物粉末として、及び水を分散媒として実施例1を繰り返した。
【0052】
図2bは、磨砕時間に対しての二酸化チタン粒子の径に及ぼすクエン酸、ポリアクリル酸、及びカルボキシメチルセルロースの影響を例示する。図示の通り、曲線205は粒径に及ぼすクエン酸の影響を表し、曲線210はポリアクリル酸の影響を表し、曲線215はカルボキシメチルセルロースの影響を表す。
図2bから、9時間の磨砕後の粒径中央値が分散剤としてのクエン酸で約60nmであるが、11時間の磨砕後の粒径中央値が分散剤としてのポリアクリル酸で約200nmであり、6時間の磨砕後の粒径中央値が分散剤としてのカルボキシメチルセルロースで約210nmであることを観察することができる。
【0053】
図2bと同様に、
図2cは、磨砕時間に対しての二酸化チタン粒子の表面積に及ぼすクエン酸、ポリアクリル酸、及びカルボキシメチルセルロースの影響を例示する。図示の通り、曲線225は二酸化チタン粒子の表面積に及ぼすクエン酸の影響を表し、曲線230はポリアクリル酸の影響を表し、曲線235はカルボキシメチルセルロースの影響を表す。
図2cから、9時間の磨砕後の粒子の表面積が分散剤としてのクエン酸で約17m
2/gmであり、6時間の磨砕後の粒子の表面積がポリアクリル酸で約9m
2/gmであり、11時間の磨砕後の粒子の表面積が分散剤としてのカルボキシメチルセルロースで約9m
2/gmであることを観察することができる。
【0054】
同様に、
図2dは、クエン酸、ポリアクリル酸、及びカルボキシメチルセルロースが分散剤として用いられる場合の、磨砕時間に対する100nm未満の径を有する粒子の割合の変動を表す様々なグラフを例示する。図示の通り、曲線245は、クエン酸が分散剤として用いられる場合の、100nm未満の径を有する二酸化チタン粒子の割合の変動を表し、曲線250は、ポリアクリル酸が分散剤として用いられる場合の、100nm未満の径を有する二酸化チタン粒子の割合の変動を表し、曲線255は、カルボキシメチルセルロースが分散剤として用いられる場合の、100nm未満の径を有する二酸化チタン粒子の割合の変動を表す。
図2dから観察することができるように、クエン酸が分散剤として用いられる場合、100nm未満の二酸化チタン粒子の割合は約9時間の磨砕後に約90%であり、ポリアクリル酸の場合にはその割合は約11時間の磨砕後に20%であり、カルボキシメチルセルロースが用いられる場合はその割合は6時間の磨砕後に約10%である。
【0055】
したがって、
図2b、
図2c、及び
図2dは、分散剤としてのクエン酸は、ポリアクリル酸及びカルボキシメチルセルロースと比較してより優れた結果を与えることを示す。したがって、金属酸化物粉末及び分散媒に対するその相互作用エネルギーに基づく分散剤の選択は、ナノ粒子の安定した懸濁液の生成を容易にすることを理解することができる。さらに、正しい分散剤の選択は、磨砕中のナノ粒子の形成も可能にすることがわかる。
【0056】
<実施例4>
記載された方法は、分散剤及び分散媒の新たな組合せについても検査された。この目的のために、分散媒102としてエチルアルコールで実施例1を繰り返した。表3に基づき、p-ヒドロキシ安息香酸(SD Fine Chem Ltd. Indiaから入手された)を分散剤104として選択した。
【0058】
さらに、このように得られた非水性チタニアナノ粒子懸濁液の特性を、表4に提示する。
【0060】
したがって、100nm未満の直径を有する粒子の割合はほぼ90%であり、平均粒径は約79nmであることがわかる。
【0061】
<実施例5>
実施例3と同様に、記載された方法は、分散剤及び分散媒の新組合せについて再び検査された。この目的のために、p-Span-80 Fluka USA (SD Fine Chem Ltd. Indiaから入手される)を分散剤104として、n-ブチルアセテートを分散媒102として実施例1を繰り返した。このように得られた非水性チタニアナノ粒子懸濁液の特性を、表5に示す。
【0063】
したがって、表5からわかるように、100nm未満の直径を有する粒子の割合はほぼ94%であり、平均粒径は約74nmである。
【0064】
ナノ粒子の安定した懸濁液の調製のための実施態様が構造的特徴及び方法、その構造的特徴又はその方法に特有の用語で記載してきたが、添付の特許請求の範囲は記載した具体的な特徴又は方法に必ずしも限定されないものと解される。むしろ、具体的な特徴及び方法は、安定した懸濁液を調製するための実施例及び実施態様として開示されたものである。