(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号:12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)、およびC末端のLysを欠いている配列番号:16のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、β-アミロイドに結合する、ヒト化抗体またはそのエピトープ結合断片。
配列番号:13のアミノ酸配列を含む軽鎖、およびC末端のLysを欠いている配列番号:16のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、β-アミロイドに結合する、ヒト化抗体。
a)アミロイド単量体および/もしくは重合体可溶性アミロイドペプチド、ならびに/または、複数の該Aβ単量体単位を含む重合体可溶性β-アミロイドペプチド、ならびに/またはAβ重合体可溶性アミロイドペプチドとのコインキュベーションによって、Aβ単量体の高分子重合体のフィブリルまたはフィラメントへの凝集を阻害し、かつ
b)アミロイド単量体ペプチドの凝集によって形成された前形成された高分子重合体アミロイドのフィブリルまたはフィラメントとのコインキュベーションによって、前形成された重合体のフィブリルまたはフィラメントを脱凝集させることができる、
請求項1〜3のいずれか一項記載のヒト化抗体またはそのエピトープ結合断片。
アミロイド単量体および/もしくは重合体可溶性アミロイドペプチドがAβ単量体ペプチド1-39、1-40、1-41もしくは1-42を含む、請求項5記載のヒト化抗体またはそのエピトープ結合断片。
アミロイド単量体ペプチドがβ-アミロイド単量体ペプチド1-39、1-40、1-41および1-42を含む、請求項5記載のヒト化抗体またはそのエピトープ結合断片。
2つの異なる核酸分子を含む細胞であって、第一の核酸分子が、請求項1〜3のいずれか一項記載のヒト化抗体またはそのエピトープ結合断片の重鎖をコードし、かつ、第二の核酸分子が、請求項1〜3のいずれか一項記載のヒト化抗体またはそのエピトープ結合断片のLCVRまたは軽鎖をコードする、細胞。
アミロイドーシスが、続発性アミロイド―シスもしくは加齢に関係のあるアミロイドーシス、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、ダウン症候群、または、アミロイド―シスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型)である、請求項17記載の薬学的組成物。
アミロイドーシスが、グアム・パーキンソン-認知症複合、進行性核上麻痺、多発性硬化症、コロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病、老人心アミロイドーシス、内分泌腫瘍、または、黄斑変性症である、請求項17記載の薬学的組成物。
抗酸化ストレス化合物;抗アポトーシス性化合物;金属キレート剤;DNA修復の阻害剤;3-アミノ-1-プロパンスルホン酸(3APS);1,3-プロパンジスルホネート(1,3PDS);α-セクレターゼ活性化剤;β-セクレターゼ阻害剤;γ-セクレターゼ阻害剤;タウタンパク質;神経伝達物質;β-シート破壊剤(breaker);アミロイドβを除去し/枯渇させる細胞成分の誘引剤;N末端切断型アミロイドβの阻害剤;抗炎症分子;コリンエステラーゼ阻害剤(ChEI);MIアゴニスト;またはアミロイドもしくはタウを修飾する薬物もしくは栄養補給剤のうちの少なくとも1つの化合物をさらに含む、請求項23記載の混合物。
(i) DNA修復の阻害剤がピレンゼピン、(ii) N末端切断型アミロイドβの阻害剤がピログルタミン酸化したアミロイドβ3-42、または(iii)コリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)がタクリン、リバスチグミン、ドネペジルもしくはガランタミンである、請求項24記載の混合物。
動物におけるアミロイドーシスの1つまたは複数の影響を処置または緩和するための医薬の調製用の、請求項1〜3のいずれか一項記載のヒト化抗体もしくはそのエピトープ結合断片の、使用。
アミロイドーシスが、続発性アミロイドーシス、加齢に関係のあるアミロイドーシス、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型)、進行性核上麻痺、多発性硬化症、グアム・パーキンソン-認知症複合、クロイツフェルトヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病、老人心アミロイドーシス、内分泌腫瘍、または、黄斑変性症である、請求項26記載の使用。
アミロイド―シスが、続発性アミロイドーシス、加齢に関係のあるアミロイドーシス、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型)、グアム・パーキンソン-認知症複合、進行性核上麻痺、多発性硬化症、クロイツフェルトヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病、老人心アミロイドーシス、内分泌腫瘍、または、黄斑変性症である、請求項32記載の方法。
アミロイドに関連する疾患および状態の検出および診断のためのキットであって、請求項1〜3のいずれか一項記載のヒト化抗体またはそのエピトープ結合断片、および、前記抗体またはそのエピトープ結合断片を用いるための取扱説明書を含む、キット。
Aβオリゴマーへの曝露によるニューロンの変性を防止するための医薬の調製用の、請求項1〜3のいずれか一項記載のヒト化抗体またはそのエピトープ結合断片の使用。
【発明の概要】
【0028】
ある態様において、本発明は、1つ、少なくとも2つ、および少なくとも3つの結合部位が各々、抗体の結合に主に関与する少なくとも1つまたは2つの連続するアミノ酸残基を含むβ-アミロイドタンパク質上の、少なくとも1つの別個の結合部位、特に少なくとも2つの別個の結合部位、およびより特には少なくとも3つの別個の結合部位を認識しかつ該結合部位に結合する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片に関する。
【0029】
特に、本発明によるキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片は、3つの別個の結合部位のうちの少なくとも2つが、抗体の結合に主に関与する少なくとも2つの連続するアミノ酸残基を含み、かつ3つの別個の結合部位のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのアミノ酸残基を含む、β-アミロイドタンパク質上の少なくとも2つ、特に少なくとも3つの別個の結合部位に結合する。
【0030】
抗体の結合に主に関与する少なくとも2つの連続するアミノ酸残基を含む少なくとも2つの別個の結合部位は、抗原上で互いにごく近接して位置し、抗体結合に関与しないかまたは前記少なくとも2つの連続するアミノ酸残基と比較した場合に著しくより少ない程度に関与する少なくとも1つのアミノ酸残基によって隔てられかつ/または該少なくとも1つのアミノ酸残基と隣接し、それゆえ立体構造的な不連続エピトープを形成する。
【0031】
抗体の結合に主に関与する、それぞれ、少なくとも2つの連続するアミノ酸残基および少なくとも1つのアミノ酸残基を含む少なくとも3つの別個の結合部位は、エピトープ上で互いにごく近接して位置し、抗体結合に関与しないかまたは前記アミノ酸残基と比較した場合に著しくより少ない程度に関与する少なくとも1つのアミノ酸残基によって隔てられかつ/または該アミノ酸残基と隣接する。これらは抗体の結合に主に関与し、それゆえ立体構造的な不連続エピトープを形成する。
【0032】
特に、β-アミロイドタンパク質上の少なくとも1つの別個の結合部位、特に少なくとも2つの別個の結合部位、より特には少なくとも3つの別個の結合部位を認識しかつ該結合部位に結合する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。ここで、前記少なくとも1つまたは少なくとも2つの別個の結合部位は各々、抗体の結合に主に関与する少なくとも2つの連続するアミノ酸残基を含み、第一の結合部位を表す該少なくとも2つの連続するアミノ酸残基は、以下のコア配列(配列番号:9)の中に埋め込まれた-Phe-Phe-である:
Xaa
3 - Phe - Phe - Xaa
4 - Xaa
5 - Xaa
6
式中
Xaa
3が、Ala、Val、Leu、ノルロイシン、Met、Phe、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
4が、Ala、Val、Leu、Ser、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
5が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、かつ
Xaa
6が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、かつ
アミノ酸残基Xaa
3、Xaa
4、Xaa
5、およびXaa
6が、抗体結合に関与しないかまたは-Phe-Phe-結合部位と比較した場合に著しくより少ない程度に関与する。
【0033】
本発明の別の態様において、
Xaa
3がValまたはLeu、特にValであり;
Xaa
4がAlaまたはVal、特にAlaであり;
Xaa
5がGluまたはAsp、特にGluであり;
Xaa
6がGluまたはAsp、特にAspである、
キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。
【0034】
特に、β-アミロイドタンパク質上の少なくとも1つの別個の結合部位、特に少なくとも2つの別個の結合部位、より特には少なくとも3つの別個の結合部位を認識しかつ該結合部位に結合する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。ここで、前記別個の結合部位がそれぞれ、抗体の結合に主に関与する少なくとも1つおよび少なくとも2つの連続するアミノ酸残基を含み、第一の結合部位を表す少なくとも2つの連続するアミノ酸残基は、以下のコア配列の中に埋め込まれた-Phe-Phe-でありかつ少なくとも1つのアミノ酸残基は該コア配列中に埋め込まれた-His-である:
-Xaa
1 _ His - Xaa
3 - Xaa
4 - Xaa
5 - Xaa
6 - Phe - Phe - Xaa
7 - Xaa
8 - Xaa
9-
式中、
Xaa
1が、His、Asn、Gln、Lys、およびArgからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
3が、AsnおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
4が、His、Asn、Gln、Lys、およびArgからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
5が、Ala、Val、Leu、Ser、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
6が、Ala、Val、Leu、ノルロイシン、Met、Phe、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
7が、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
8が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
9が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、かつ
アミノ酸残基Xaa
1、Xaa
3、Xaa
6、Xaa
7、Xaa
8、およびXaa
9がそれぞれ、抗体結合に関与しないか、または-His-および-Phe-Phe-結合部位と比較した場合に著しくより少ない程度に関与する。
【0035】
本発明の別の態様において、
Xaa
3がGlnまたはAsn、特にGlnであり;
Xaa
4がLysであり;
Xaa
5がLeuであり;
Xaa
6がValまたはLeu、特にValであり;
Xaa
7がAlaまたはVal、特にAlaであり;
Xaa
8がGluまたはAsp、特にGluであり;かつ
Xaa
9がAspまたはGlu、特にAspである、
キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。
【0036】
本発明の別の態様において、β-アミロイドタンパク質上の少なくとも1つの別個の結合部位、特に少なくとも2つの別個の結合部位、より特には少なくとも3つの別個の結合部位を認識しかつ該結合部位に結合する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。ここで、前記少なくとも1つまたは少なくとも2つの別個の結合部位は各々、抗体の結合に主に関与する少なくとも2つの連続するアミノ酸残基を含み、第二の結合部位を表す少なくとも2つの連続するアミノ酸残基は、以下のコア配列(配列番号:10)の中に埋め込まれた-Lys-Leu-である:
Xaa
1 - Xaa
2 - Lys - Leu - Xaa
3
式中、
Xaa
1が、His、Asn、Gln、Lys、およびArgからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
2が、AsnおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
3が、Ala、Val、Leu、ノルロイシン、Met、Phe、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;かつアミノ酸残基Xaa
2、Xaa
3が、抗体結合に関与しないかまたは-Lys-Leu-結合部位と比較した場合に著しくより少ない程度に関与する。
【0037】
本発明の別の態様において、β-アミロイドタンパク質上の少なくとも1つの別個の結合部位、特に少なくとも2つの別個の結合部位、より特には少なくとも3つの別個の結合部位を認識しかつ該結合部位に結合する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。ここで、前記別個の結合部位はそれぞれ、抗体の結合に主に関与する少なくとも1つおよび少なくとも2つの連続するアミノ酸残基を含み、前記少なくとも1つおよび少なくとも2つの連続するアミノ酸は、抗体結合に関与しないかまたは抗体の結合に主に関与するアミノ酸残基と比較した場合に著しくより少ない程度に関与する少なくとも1つのアミノ酸残基によって隔てられており、それぞれ以下のコア配列の中に埋め込まれた-His-および-Lys-Leu-である:
His - Xaa
2 - Lys - Leu - Xaa
3 - Xaa
4 - Xaa
5 - Xaa
6 - Xaa
7 - Xaa
8-
式中、
Xaa
2が、AsnおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
3が、Ala、Val、Leu、ノルロイシン、Met、Phe、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
4が、Ala、Val、Leu、ノルロイシン、Met、Phe、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
5が、Ala、Val、Leu、ノルロイシン、Met、Phe、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
6が、Ala、Val、Leu、Ser、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
7が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、
Xaa
8が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、
かつアミノ酸残基Xaa
2、Xaa
3、Xaa
6、Xaa
7、Xaa
8がそれぞれ、抗体結合に関与しないか、または-His-および-Lys-Leu-結合部位と比較した場合に著しくより少ない程度に関与する。
【0038】
本発明の別の態様において、
Xaa
2がGlnまたはAsn、特にGlnであり;
Xaa
3がValまたはLeu、特にValであり;
Xaa
4がPheであり;
Xaa
5がPheであり;
Xaa
6がAlaまたはVal、特にAlaであり;
Xaa
7がGluまたはAsp、特にGluであり;かつ
Xaa
8がAspまたはGlu、特にAspである、
キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。
【0039】
本発明の別の態様において、少なくとも2つの別個の結合部位が各々、抗体の結合に主に関与する少なくとも2つの連続するアミノ酸残基を含む、β-アミロイドタンパク質上の該少なくとも2つの別個の結合部位を認識しかつ該結合部位に結合する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。ここで、前記少なくとも2つの連続するアミノ酸は、抗体結合に関与しないかまたは連続するアミノ酸残基よりも著しくより少ない程度に関与する少なくとも1つのアミノ酸残基によって隔てられており、該連続するアミノ酸残基は、以下のコア配列の中に埋め込まれた第一および第二の結合部位をそれぞれ表す、-Phe-Phe-および-Lys-Leu-である:
Xaa
1 - Xaa
2 - Lys - Leu - Xaa
3 - Phe - Phe -Xaa
4 - Xaa
5 - Xaa
6
式中、
Xaa
1が、His、Asn、Gln、Lys、およびArgからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
2が、AsnおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
3が、Ala、Val、Leu、ノルロイシン、Met、Phe、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
4が、Ala、Val、Leu、Ser、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
5が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、
Xaa
6が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、かつ
アミノ酸残基Xaa
2、Xaa
3、Xaa
4、Xaa
5、およびXaa
6がそれぞれ、抗体結合に関与しないかまたは、-Lys-Leu-および-Phe-Phe-結合部位と比較した場合に著しくより少ない程度に関与する。
【0040】
本発明の別の態様において、β-アミロイドタンパク質上の少なくとも1つの別個の結合部位、特に少なくとも2つの別個の結合部位、より特には少なくとも3つの別個の結合部位を認識しかつ該結合部位に結合する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。ここで前記別個の結合部位はそれぞれ、抗体の結合に主に関与する少なくとも1つおよび少なくとも2つの連続するアミノ酸残基を含み、該少なくとも1つおよび少なくとも2つの連続するアミノ酸は、抗体結合に関与しないかまたは抗体の結合に主に関与するアミノ酸残基と比較した場合に著しくより少ない程度に関与する少なくとも1つのアミノ酸残基によって隔てられ、かつ抗体の結合に主に関与するアミノ酸残基はそれぞれ、以下のコア配列の中に埋め込まれた-His-および-Phe-Phe-および-Lys-Leu-である:
His - Xaa
2 - Lys - Leu - Xaa
3 - Phe - Phe - Xaa
4 _ Xaa
5 _ Xaa
6
式中、
Xaa
2が、AsnおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
3が、Ala、Val、Leu、ノルロイシン、Met、Phe、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
4が、Ala、Val、Leu、Ser、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
5が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、
Xaa
6が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、かつ
アミノ酸残基Xaa
2、Xaa
3、Xaa
4、Xaa
5、Xaa
6がそれぞれ、抗体結合に関与しないか、または-His-、-Lys-Leu-、および-Phe-Phe-結合部位と比較した場合に著しくより少ない程度に関与する。
【0041】
本発明の別の態様において、
Xaa
2がGlnまたはAsn、特にGlnであり;
Xaa
3がValまたはLeu、特にValであり;
Xaa
4がAlaまたはVal、特にAlaであり;
Xaa
5がGluまたはAsp、特にGluであり;かつ
Xaa
6がAspまたはGlu、特にAspである、
キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。
【0042】
本発明の別の態様において、β-アミロイドタンパク質上の少なくとも2つの別個の結合部位を認識しかつ該結合部位に結合する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。ここで前記少なくとも2つの別個の結合部位は各々、抗体の結合に主に関与する少なくとも2つの連続するアミノ酸残基を含み、該少なくとも2つの連続するアミノ酸は、抗体結合に関与しないかまたは連続するアミノ酸残基よりも著しくより少ない程度に関与する少なくとも1つのアミノ酸残基によって隔てられている、以下のコア配列の中に埋め込まれた第一および第二の結合部位をそれぞれ表す、-Phe-Phe-および-Lys-Leu-である:
Xaa
1 - Xaa
2 - Lys - Leu - Xaa
3 - Phe - Phe -Xaa
4 - Xaa
5 - Xaa
6
式中、
Xaa
1が、His、Asn、Gln、Lys、およびArgからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
2が、AsnおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
3が、Val、Ala、Leu、Met、Phe、ノルロイシン、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり
Xaa
4が、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
5が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、
Xaa
6が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、かつ
アミノ酸残基Xaa
2、Xaa
3、Xaa
4、Xaa
5、Xaa
6がそれぞれ、抗体結合に関与しないか、または-Lys-Leu-および-Phe-Phe結合部位と比較した場合に著しくより少ない程度に関与する。
【0043】
本発明の別の態様において、
Xaa
1がHisまたはArg、特にHisであり;
Xaa
2がGlnまたはAsn、特にGlnであり;
Xaa
3がValまたはLeu、特にValであり;
Xaa
4がAlaまたはVal、特にAlaであり;
Xaa
5がGluまたはAsp、特にGluであり;かつ
Xaa
6がAspまたはGlu、特にAspである、
キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。
【0044】
本発明のある態様において、β-アミロイドタンパク質上の少なくとも2つの別個の結合部位を認識しかつ該結合部位に結合する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。ここで前記少なくとも2つの別個の結合部位は各々、それぞれ、- Phe - Phe - Ala - Glu -、特に- Phe - Phe - Ala -、とりわけ- Phe - Phe -および- Lys - Leu -である、抗体の結合に主に関与する少なくとも2つの連続するアミノ酸残基を含み、かつ少なくとも2つの別個の結合部位はそれぞれ、配列番号:7に示されるアミノ酸配列-Val - Phe - Phe - Ala - Glu - Asp -および配列番号:8に示されるアミノ酸配列His - Gln - Lys - Leu - Val -を示す。
【0045】
本発明のある態様において、β-アミロイドタンパク質上の少なくとも1つの別個の結合部位、特に少なくとも2つの別個の結合部位、より特には少なくとも3つの別個の結合部位を認識しかつ該結合部位に結合する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。ここで前記少なくとも1つまたは少なくとも2つの別個の結合部位が、それぞれ- Phe - Phe -および- Lys - Leu -、ならびに- His -である、抗体の結合に主に関与する少なくとも1つおよび少なくとも2つの連続するアミノ酸残基をそれぞれ含み、別個の結合部位がそれぞれ、アミノ酸配列-Val - Phe - Phe - Ala - Glu -、およびアミノ酸配列- His - Gln - Lys - Leu - Val -に埋め込まれている。
【0046】
本発明の別の態様において、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片は、少なくとも2つの別個の結合部位が各々、それぞれ配列番号:7および8に示したアミノ酸配列中に少なくとも2つの連続するアミノ酸残基を含み、連続するアミノ酸残基、特に-Phe-Phe-および-Lys-Leu-が、β-アミロイドタンパク質の結合に主に関与するβ-アミロイドタンパク質上の少なくとも2つの別個の結合部位を認識しかつ該結合部位に結合する、抗原認識部位および抗原結合部位を含む。
【0047】
本発明のさらに具体的な態様において、4つの別個の結合部位が、各々が1つのアミノ酸残基を含む2つの結合部位、および抗体の結合に主に関与する2つの連続するアミノ酸残基を各々が含む2つの結合部位を含む、β-アミロイドタンパク質上の4つの別個の結合部位に結合する、本発明による抗体またはその断片を提供する。ここで、該4つの別個の結合部位は、β-アミロイドタンパク質上で互いにごく近接して位置し、かつ該4つの結合部位は抗体結合に関与しないか、または結合はするが、4つの別個の結合部位の1つのアミノ酸残基および2つの連続するアミノ酸残基と比較した場合に著しくより少ない程度に関与する少なくとも1つのアミノ酸残基によって隔てられており、そのため4つの別個の結合部位の2つの連続するアミノ酸残基は、立体構造的な不連続エピトープを形成する。
【0048】
特に、抗体の結合に主に関与する、第一の2つの連続するアミノ酸残基は、以下のコア配列の中に埋め込まれた-Lys-Leu-であり、かつ第2の少なくとも2つの連続するアミノ酸残基のは該コア配列中に埋め込まれた-Phe-Phe-であり、第1の単一のアミノ酸残基は該コア配列中に埋め込まれた-His-であり、かつ第2の単一のアミノ酸残基は該コア配列中に埋め込まれた-Asp-である:
- Xaa
1 - His - Xaa
2 - Lys - Leu - Xaa
3 - Phe - Phe - Xaa
4 - Xaa
5 - Asp - Xaa
6
式中、
Xaa
1が、His、Asn、Gln、Lys、およびArgからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にHisであり;
Xaa
2が、AsnおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にGlnであり;
Xaa
3が、Ala、Val、Leu、ノルロイシン、Met、Phe、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にValであり;
Xaa
4が、Ala、Val、Leu、Ser、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にAlaであり;
Xaa
5が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にGluであり;
Xaa
6が、Ala、Val、Leu、ノルロイシン、Met、Phe、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にValであり;かつアミノ酸残基Xaa
1、Xaa
2、Xaa
3、Xaa
4、Xaa
5、Xaa
6が、抗体結合に関与しないか、または結合に関与するが、-His-、-Asp-、-Lys-Leu、および-Phe-Phe-結合部位と比較した場合に著しくより少ない程度に関与する。
【0049】
ある態様において、本発明は、β-アミロイドタンパク質上の4つの別個の結合部位に結合する、本発明による抗体またはその断片に関する。ここで、前記4つの別個の結合部位は、各々が1つのアミノ酸残基を含む2つの結合部位および各々が2つの連続するアミノ酸残基を含む2つの結合部位を含み、抗体の結合に主に関与する第1の2つの連続するアミノ酸残基が、以下のコア配列の中に埋め込まれた-Lys-Leu-であり、かつ第2の少なくとも2つの連続するアミノ酸残基が該コア配列中に埋め込まれた-Phe-Phe-であり、第1の単一のアミノ酸残基が該コア配列中に埋め込まれた-His-であり、かつ第2の単一のアミノ酸残基が該コア配列中に埋め込まれた-Asp-である:
- Xaa
1 - His - Xaa
2 - Lys - Leu - Xaa
3 - Phe - Phe - Xaa
4 - Xaa
5 - Asp - Xaa
6
式中、
Xaa
1が、His、Asn、Gln、Lys、およびArgからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にHisであり;
Xaa
2が、AsnおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にGlnであり;
Xaa
3が、Ala、Val、Leu、ノルロイシン、Met、Phe、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にValであり;
Xaa
4が、Ala、Val、Leu、Ser、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にAlaであり;
Xaa
5が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にGluであり;
Xaa
6が、Ala、Val、Leu、ノルロイシン、Met、Phe、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にValであり;かつアミノ酸残基Xaa
1、Xaa
2、Xaa
3、Xaa
4、Xaa
5、Xaa
6が、抗体結合に関与しないか、または結合に関与するが、-His-、-Asp-、-Lys-Leu-、および-Phe-Phe-結合部位と比較した場合に著しくより少ない程度に関与する。
【0050】
本発明の具体的な態様において、本明細書で先に定義したような認識部位および結合部位は、アミノ酸残基12〜24の間、特に残基14〜23の間、より特にはアミノ酸残基14〜20の間のβ-アミロイドタンパク質の領域に局在する立体構造的な不連続エピトープを形成している。ここで、各々が少なくとも2つのアミノ酸残基を含む少なくとも2つの別個の認識部位および結合部位がそれぞれ、位置16および17ならびに位置19および20に位置し、かつ少なくとも1アミノ酸残基を含む少なくとも1つの別個の認識部位および結合部位は、その残基がβ-アミロイドタンパク質の結合に主に関与する位置14に位置し、かつ別個の認識部位および結合部位は、アミノ酸残基、特に残基21および22が隣接する少なくとも一方の側にあり、かつアミノ酸残基が抗原の結合に直接関与しないかまたは、少なくとも、実質的により少ない程度に関与する、位置15および18に位置する1つのアミノ酸残基によって隔てられている。
【0051】
本発明のまた別の態様において、少なくとも3つの別個の認識部位および結合部位は、アミノ酸残基、特に残基12および13、ならびに残基21および22が両側に隣接し、かつ抗原の結合に直接関与しないか、または少なくとも、実質的により少ない程度に関与する、位置15および18に位置する1つのアミノ酸残基によって隔てられている。
【0052】
具体的な態様において、β-アミロイドタンパク質の結合に主に関与する、連続するアミノ酸残基、特に位置16および17の-Lys-Leu-ならびに位置19および20の-Phe-Phe-が、以下のコア領域中に埋め込まれている。
【0053】
別の具体的な態様において、β-アミロイドタンパク質の結合に主に関与する、アミノ酸残基、特に位置16および17の-Lys-Leu-ならびに位置19および20の-Phe-Phe-、ならびに位置14の-His-が、以下のコア領域中に埋め込まれている。
【0054】
本発明の別の態様において、軽鎖および重鎖の可変領域に、それぞれ、1つまたは複数のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域に埋め込まれた、非ヒト起源の少なくとも1つのCDR、特に非ヒト起源の2つのCDR、より特には非ヒト起源の3つのCDR、および任意で、ヒトまたは霊長類が源の抗体に由来する定常領域を含む、ヒト化抗体またはその断片を提供する。ヒト化抗体またはその断片は、以下のアミノ酸配列(配列番号:11)を含むエピトープにて、孤立しているかまたはβ-アミロイド斑の一部としてのβ-アミロイドタンパク質、特にβ-アミロイド単量体ペプチド、より特にはβ-アミロイド重合体ペプチド、さらにより特にはβ-アミロイドの繊維、フィブリル、またはフィラメントを特異的に認識および結合することができる:
Xaa
1 - Xaa
2 - Lys - Leu - Xaa
3 - Phe - Phe -Xaa
4 _ Xaa
5 _ Xaa
6
式中、
Xaa
1が、His、Asn、およびGlnからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にHisであり;
Xaa
2が、AsnおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にGlnであり;
Xaa
3が、Val、Leu、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にValであり
Xaa
4が、AlaおよびValからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にAlaであり;
Xaa
5が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にGluであり;
Xaa
6が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にAspである。
【0055】
本発明のまた別の態様において、軽鎖および重鎖の可変領域に、それぞれ、1つまたは複数のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域に埋め込まれた、非ヒト起源の少なくとも1つのCDR、特に非ヒト起源の2つのCDR、より特には非ヒト起源の3つのCDR、および任意で、ヒトまたは霊長類が源の抗体に由来する定常領域を含む、ヒト化抗体またはその断片を提供する。ヒト化抗体またはその断片は、以下のアミノ酸配列を含むエピトープにて、孤立しているかまたはβ-アミロイド斑の一部としてのβ-アミロイドタンパク質、特にβ-アミロイド単量体ペプチド、より特にはβ-アミロイド重合体ペプチド、さらにより特にはβ-アミロイドの繊維、フィブリル、またはフィラメントを特異的に認識および結合することができる:
His - Xaa
2 - Lys - Leu - Xaa
3 - Phe - Phe - Xaa
4 _ Xaa
5 _ Xaa
6
式中、
Xaa
2が、AsnおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にGlnであり;かつ
Xaa
3が、Val、Leu、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にValであり;
Xaa
4が、AlaおよびValからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にAlaであり;
Xaa
5が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にGluであり;
Xaa
6が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にGluであり;かつアミノ酸残基Xaa
2、Xaa
3、Xaa
4、Xaa
5、Xaa
6が、抗体結合に関与しないかまたは-His-および-Lys-Leu-および-Phe-Phe-結合部位と比較した場合に著しくより少ない程度に関与する。
【0056】
本発明の具体的な態様において、非ヒト起源のCDRは、別個の結合部位を含まない抗原断片に対して作製されたドナー抗体から、特にマウスドナー抗体から得られる。このエピトープ領域の変換は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)などの親水性部分で修飾されたβ-アミロイドペプチドの、特にβ-アミロイドペプチドAβ
1-16のアミノ酸配列に対応する抗原ペプチドを含む超分子抗原性構築物の使用によって少なくとも一部は生じている場合があり、親水性部分は、本明細書で以下の免疫化過程で記載するように、例えば、リジン、グルタミン酸、およびシステインまたは親水性部分をペプチド断片にカップリングするための接続装置として機能することができる任意の他の好適なアミノ酸もしくはアミノ酸類似体の少なくとも1つ、特に1つまたは2つのアミノ酸を通じて抗原性ペプチドの末端の各々に共有結合している。PEGを親水性部分として用いる場合、遊離のPEG末端を、ホスファチジルエタノールアミン、または例えば抗原性構築物を本明細書に記載のリポソームの二重層に埋め込むための、固定要素として機能するために好適な任意のその他の化合物に共有結合させる。
【0057】
特に、非ヒト起源のCDRは、2005年12月1日にBraunschweig, Mascheroder Weg 1B, 38124 BranuschweigのDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に、ブダペスト条約の条項に基づいてアクセッション番号:DSM ACC2750の下で寄託された(本出願を通じて「mC2」とも名付けられている)ACI-O1-Ab7C2の特徴的な特性を示すマウスドナー抗体から得られる。
【0058】
本発明のある態様において、非ヒト起源のCDRは、2005年12月1日にBraunschweig, Mascheroder Weg 1B, 38124 BranuschweigのDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に、ブダペスト条約の条項に基づいてアクセッション番号:DSM ACC2750の下で寄託された(本出願を通じて「mC2」とも名付けられている)マウスドナー抗体ACI-O1-Ab7C2から得られる。
【0059】
免疫化プロトコルの一部としてのリピドAの使用もまた、エピトープ領域の変換に寄与している可能性がある。
【0060】
具体的な態様において、本発明は、ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR2を表す配列番号:2およびCDR3を表す配列番号:3ならびに軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ少なくとも1つのペプチドを含む、ヒト化抗体またはその断片に関する。
【0061】
別の態様において、本発明は、ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR2を表す配列番号:2およびCDR3を表す配列番号:3からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ少なくとも1つのペプチドを含む、ヒト化抗体またはその断片に関する。
【0062】
また別の態様において、本発明は、ヒト由来または霊長類由来の軽鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4のアミノ酸配列を持つペプチドを含む、ヒト化抗体またはその断片に関する。
【0063】
特に、本発明は、ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中に組み込まれた、軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4のアミノ酸配列を持つ少なくとも1つのペプチドを含む軽鎖可変領域(LCVR)に関する。
【0064】
別の具体的な態様において、本発明は、ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR2を表す配列番号:2およびCDR3を表す配列番号:3からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ少なくとも1つのペプチドを含む重鎖可変領域(HCVR)に関する。
【0065】
本発明はさらに、ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中に組み込まれた、少なくとも2つのペプチドを含む、ヒト化抗体またはその断片に関する。これらのペプチドは異なっており、かつ重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3ならびに軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を示し、同じCDRは抗体中に二度は存在し得ない。特に、存在する少なくとも2つのCDRが両方とも軽鎖可変領域(LCVR)のCDRである場合、CDRのうちの少なくとも1つは、配列番号:4で表されるCDR1でなければならない。
【0066】
ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ少なくとも2つのペプチドを含むヒト化抗体またはその断片、特に同じCDRが抗体中に二度は存在し得ないヒト化抗体またはその断片もまた、本発明によって含まれる。
【0067】
特に、本発明は、ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ少なくとも2つのペプチドを含む、重鎖可変領域(HCVR)に関する。
【0068】
さらなる態様において、本発明は、ヒト由来または霊長類由来の軽鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ少なくとも2つのペプチドを含む、ヒト化抗体またはその断片に関する。
【0069】
特に、本発明は、ヒト由来または霊長類由来の軽鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ少なくとも2つのペプチドを有し、同じCDRが抗体中に二度は存在し得ず、かつ特にCDRの少なくとも1つは配列番号:4で表されるCDR1でなければならない、軽鎖可変領域(LCVR)に関する。
【0070】
本発明はまた、ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3のアミノ酸配列を、特に上記で示した順序で持つペプチドを含む、ヒト化抗体またはその断片に関する。
【0071】
特に、本発明は、ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3のアミノ酸配列を、特に上記で示した順序で持つペプチドを含む、重鎖可変領域(HCVR)に関する。
【0072】
ヒト由来または霊長類由来の軽鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6のアミノ酸配列を、特に上記で示した順序で持つペプチドを含むヒト化抗体またはその断片もまた、本発明によって含まれる。
【0073】
特に、本発明は、ヒト由来または霊長類由来の軽鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6のアミノ酸配列を、特に上記で示した順序で持つペプチドを含む軽鎖可変領域(LCVR)に関する。
【0074】
本発明はまた、ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3、ならびに軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ少なくとも3つのペプチドを含む、ヒト化抗体またはその断片、特に同じCDRが抗体中に二度は存在し得ないヒト化抗体またはその断片に関する。
【0075】
別の態様において、本発明は、抗体が、ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3、ならびに軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ少なくとも4つのペプチドを含む、ヒト化抗体またはその断片、特に同じCDRが抗体中に二度は存在し得ないヒト化抗体またはその断片に関する。
【0076】
また別の態様において、本発明は、ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3、ならびに軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ少なくとも5つのペプチドを含む、ヒト化抗体またはその断片、特に同じCDRが抗体中に二度は存在し得ないヒト化抗体またはその断片に関する。
【0077】
また別の態様において、本発明は、ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3、ならびに軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6のアミノ酸配列を持つペプチドを含む、ヒト化抗体またはその断片に関する。
【0078】
具体的な態様において、本発明は、ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR2を表す配列番号:2のアミノ酸配列を持つ少なくとも1つのペプチドを含む、ヒト化抗体、重鎖可変領域(HCVR)、またはその断片に関する。
【0079】
別の具体的な態様において、本発明は、ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR3を表す配列番号:3のアミノ酸配列を持つ少なくとも1つのペプチドを含む、ヒト化抗体、重鎖可変領域(HCVR)、またはその断片に関する。
【0080】
別の具体的な態様において、本発明は、ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1およびCDR2を表す配列番号:2のアミノ酸配列を持つ少なくとも2つのペプチドを含む、ヒト化抗体、重鎖可変領域(HCVR)、またはその断片に関する。
【0081】
別の具体的な態様において、本発明は、ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1およびCDR3を表す配列番号:3のアミノ酸配列を持つ少なくとも2つのペプチドを含む、ヒト化抗体、重鎖可変領域(HCVR)、またはその断片に関する。
【0082】
別の具体的な態様において、本発明は、ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、重鎖可変領域(HCVR)のCDR2を表す配列番号:2およびCDR3を表す配列番号:3のアミノ酸配列を持つ少なくとも2つのペプチドを含む、ヒト化抗体、重鎖可変領域(HCVR)、またはその断片に関する。
【0083】
別の具体的な態様において、本発明は、ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4およびCDR2を表す配列番号:5のアミノ酸配列を持つ少なくとも2つのペプチドを含む、ヒト化抗体、軽鎖可変領域(LCVR)、またはその断片に関する。
【0084】
別の具体的な態様において、本発明は、ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域中に組み込まれた、軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4およびCDR3を表す配列番号:6のアミノ酸配列を持つ少なくとも2つのペプチドを含む、ヒト化抗体、軽鎖可変領域(LCVR)、またはその断片に関する。
【0085】
マウスC2抗体の重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)の両方が各々、そのCDR領域のうちの少なくとも1つをヒト化抗体の少なくとも2つのCDR領域に与える、ヒト化抗体またはその断片が、本発明によってさらに含まれる。したがって、結果として生じるヒト化抗体またはその断片は、以下を含んでもよい:
-少なくともCDR1(LCVR)を表す配列番号:4のアミノ酸配列と組み合わせたCDR1(HCVR)を表す配列番号:1のアミノ酸配列;
-少なくともCDR1(LCVR)を表す配列番号:4のアミノ酸配列と組み合わせたCDR2(HCVR)を表す配列番号:2のアミノ酸配列;
-少なくともCDR1(LCVR)を表す配列番号:4のアミノ酸配列と組み合わせたCDR3(HCVR)を表す配列番号:3のアミノ酸配列;
-少なくともCDR2(LCVR)を表す配列番号:5のアミノ酸配列と組み合わせたCDR1(HCVR)を表す配列番号:1のアミノ酸配列;
-少なくともCDR2(LCVR)を表す配列番号:5のアミノ酸配列と組み合わせたCDR2(HCVR)を表す配列番号:2のアミノ酸配列;
-少なくともCDR3(LCVR)を表す配列番号:6のアミノ酸配列と組み合わせたCDR2(HCVR)を表す配列番号:2のアミノ酸配列;
-少なくともCDR3(LCVR)を表す配列番号:6のアミノ酸配列と組み合わせたCDR1(HCVR)を表す配列番号:1のアミノ酸配列;
-少なくともCDR2(LCVR)を表す配列番号:5のアミノ酸配列と組み合わせたCDR3(HCVR)を表す配列番号:3のアミノ酸配列;
-少なくともCDR3(LCVR)を表す配列番号:6のアミノ酸配列と組み合わせたCDR3(HCVR)を表す配列番号:3のアミノ酸配列。
【0086】
また別の態様において、本発明は、ヒト起源または霊長類起源の軽鎖および/または重鎖の定常領域を含む、本明細書で前述した通りのキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片に関する。
【0087】
さらなる態様において、本発明は、配列番号:1〜6に示される軽鎖および/または重鎖のCDR領域を代表するアミノ酸のうちの、少なくとも1つ、特に少なくとも1つだが多くても5つ、より特には少なくとも1つだが多くても4つ、さらにより特には少なくとも1つだが多くても3つ、とりわけ少なくとも1つだが多くても2つを、抗体がその完全な機能性を維持するように保存的置換を通じて変化させる、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片に関する。
【0088】
特に、本発明は、配列番号:5に示される軽鎖可変領域(LCVR)のCDR2で、Kabat位置50のLysが、Arg、Gln、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基によって、特にArgによって置き換えられている、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片に関する。
【0089】
特に、本発明は、配列番号:5に示されるCDR2で、Kabat位置50のLysが、Arg、Gln、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基によって、特にArgによって置き換えられている、軽鎖可変領域(LCVR)に関する。
【0090】
別の態様において、本発明は、配列番号:5に示される軽鎖可変領域(LCVR)のCDR2で、Kabat位置53のSerが、AsnおよびThrからなる群より選択されるアミノ酸残基によって、特にAsnによって置き換えられている、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片に関する。
【0091】
特に、本発明は、配列番号:5に示されるCDR2で、Kabat位置53のSerが、AsnおよびThrからなる群より選択されるアミノ酸残基によって、特にAsnによって置き換えられている、軽鎖可変領域(LCVR)に関する。
【0092】
本発明のある態様において、重鎖可変領域(HCVR)が、それぞれ、配列番号:15および16に示した配列と90%、特に95%、より特には98%同一であるアミノ酸配列を有する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。
【0093】
本発明の別の態様において、軽鎖可変領域(LCVR)が、それぞれ、配列番号:12および13に示した配列と90%、特に95%、より特には98%同一であるアミノ酸配列を有する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。
【0094】
本発明のまた別の態様において、重鎖可変領域(HCVR)のCDR領域のうちの少なくとも2つ、とりわけ3つが、配列番号:1〜3に示される対応するCDR領域と90%、特に95%、より特には98%同一であるアミノ酸配列を有する、ヒト化抗体またはその断片を提供する。
【0095】
本発明のさらなる態様において、軽鎖可変領域(LCVR)のCDR領域のうちの少なくとも2つ、とりわけ3つが、配列番号:4〜6に示される対応するCDR領域と90%、特に95%、より特には98%同一であるアミノ酸配列を有する、ヒト化抗体またはその断片を提供する。
【0096】
また別の態様において、本発明は、重鎖可変領域(HCVR)が、それぞれ、配列番号:15および16に示した配列と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有する、本明細書で前述した通りの本発明によるキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片に関する。
【0097】
また別の態様において、本発明は、軽鎖可変領域(LCVR)が、それぞれ、配列番号:12および13に示した配列と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有する、本明細書で前述した通りの本発明によるキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片に関する。
【0098】
また別の態様において、本発明は、重鎖可変領域(HCVR)のCDR領域のうちの少なくとも1つ、特に少なくとも2つ、とりわけ3つが、配列番号:1〜3に示される対応するCDR領域と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有する、本明細書で前述した通りの本発明によるキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片に関する。
【0099】
また別の態様において、本発明は、軽鎖可変領域(LCVR)のCDR領域のうちの少なくとも1つ、特に少なくとも2つ、とりわけ3つが、配列番号:4〜6に示される対応するCDR領域と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有する、本明細書で前述した通りの本発明によるキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片に関する。
【0100】
また別の態様において、本発明は、それぞれ、ヒト生殖系列V
HおよびV
K配列から得られるアクセプターフレームワーク配列を代表するアミノ酸の少なくとも1つが、マウス抗体ACI-01-Ab7C2の対応する領域由来のアミノ酸に対する置換またはそれに対する保存的置換を通じて変化している、本発明による、本明細書で前述した通りのヒト化抗体に関する。
【0101】
特に、本発明はそれぞれ、重鎖可変領域のKABATサブグループV
HIIIのヒト生殖系列V
H配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置47のTrpが、配列番号:15に示すようなLeu、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、およびPheからなる群より選択されるアミノ酸、特にLeuおよびIle、とりわけLeuによって置き換えられている、重鎖可変領域およびこの重鎖可変領域を含むヒト化抗体に関する。
【0102】
本発明はさらに、重鎖可変領域のKABATサブグループV
HIIIのヒト生殖系列V
H配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置94のArgが、配列番号:15に示すようなSerおよびThrからなる群より選択されるアミノ酸によって、とりわけSerによって置き換えられている、重鎖可変領域およびこの重鎖可変領域を含むヒト化抗体にそれぞれ関する。
【0103】
また別の態様において、本発明はそれぞれ、重鎖可変領域のKABATサブグループV
HIIIのヒト生殖系列V
H配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置47のTrpが、配列番号:15に示すようなLeu、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、およびPheからなる群より選択されるアミノ酸、特にLeuおよびIle、とりわけLeuによって置き換えられ、かつKabat位置94のArgが、配列番号:15に示すSerおよびThrからなる群より選択されるアミノ酸によって、とりわけSerによって置き換えられている、重鎖可変領域およびこの重鎖可変領域を含むヒト化抗体に関する。
【0104】
本発明はさらに、軽鎖可変領域のKABATサブグループV
KIIのヒト生殖系列V
K配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置45のGlnが、Lys、Arg、Gln、およびAsnからなる群より選択されるアミノ酸によって、特にLysおよびArgによって、とりわけLysによって置き換えられている、軽鎖可変領域およびこの軽鎖可変領域を含むヒト化抗体にそれぞれ関する。
【0105】
本発明はさらに、軽鎖可変領域のKABATサブグループV
KIIのヒト生殖系列V
K配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置87のTyrが、Phe、Leu、Val、Ile、およびAlaからなる群より選択されるアミノ酸によって、特にLeuおよびPheによって、とりわけPheによって置き換えられている、軽鎖可変領域およびこの軽鎖可変領域を含むヒト化抗体にそれぞれ関する。
【0106】
本発明はさらに、配列番号:12に示すような、マウスモノクローナル抗体、特にマウス抗体ACI-01-Ab7C2から得られるCDR2領域中のKabat位置50のLysが、Arg、Gln、His、およびAsnからなる群より選択されるアミノ酸によって、とりわけArgによって置き換えられている、軽鎖可変領域およびこの軽鎖可変領域を含むヒト化抗体にそれぞれ関する。
【0107】
また別の態様において、本発明はそれぞれ、配列番号:12に示したような、マウスモノクローナル抗体、特にマウス抗体ACI-01-Ab7C2から得られるCDR2領域中のKabat位置53のAsnが、Ala、Val、Leu、Ser、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸;とりわけSerによって置き換えられている、軽鎖可変領域およびこの軽鎖可変領域を含むヒト化抗体に関する。
【0108】
また別の態様において、本発明はそれぞれ、重鎖可変領域のKABATサブグループV
HIIIのヒト生殖系列V
H配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置47のTrpが、Leu、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、およびPheからなる群より選択されるアミノ酸、特にLeuおよびIle、とりわけLeuによって置き換えられ、かつ重鎖可変領域のKABATサブグループV
HIIIのヒト生殖系列V
H配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置94のArgが、配列番号:15に示すSerおよびThrからなる群より選択されるアミノ酸によって、とりわけSerによって置き換えられ、かつ軽鎖可変領域のKABATサブグループV
KIIのヒト生殖系列V
K配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置87のTyrが、Phe、Leu、Val、Ile、およびAlaからなる群より選択されるアミノ酸によって、特にLeuおよびPheによって、とりわけPheによって置き換えられている、ヒト化抗体に関する。
【0109】
また別の態様において、本発明はそれぞれ、配列番号:15に示す重鎖可変領域のKABATサブグループV
HIIIのヒト生殖系列V
H配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置47のTrpが、Leuによって置き換えられている、重鎖可変領域およびこの重鎖可変領域を含むヒト化抗体に関する。
【0110】
また別の態様において、本発明は、それぞれ、重鎖可変領域のKABATサブグループV
HIIIのヒト生殖系列V
H配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置94のArgが、配列番号:15に示すSerによって置き換えられている、重鎖可変領域およびこの重鎖可変領域を含むヒト化抗体に関する。
【0111】
また別の態様において、本発明はそれぞれ、重鎖可変領域のKABATサブグループV
HIIIのヒト生殖系列V
H配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置47のTrpが、LeuおよびIle、とりわけLeuによって置き換えられ、かつ重鎖可変領域のKABATサブグループV
HIIIのヒト生殖系列V
H配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置94のArgが、配列番号:15に示すSerによって置き換えられている、重鎖可変領域およびこの重鎖可変領域を含むヒト化抗体に関する。
【0112】
また別の態様において、本発明はそれぞれ、軽鎖可変領域のKABATサブグループV
KIIのヒト生殖系列V
K配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置87のTyrが、Pheによって置き換えられている、軽鎖可変領域およびこの重鎖可変領域を含むヒト化抗体に関する。
【0113】
また別の態様において、本発明はそれぞれ、重鎖可変領域のKABATサブグループV
HIIIのヒト生殖系列V
H配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置47のTrpが、LeuおよびIle、とりわけLeuによって置き換えられ、かつ重鎖可変領域のKABATサブグループV
HIIIのヒト生殖系列V
H配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置94のArgが、配列番号:15に示したようなSerによって置き換えられ、かつ軽鎖可変領域のKABATサブグループV
KIIのヒト生殖系列V
K配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置87のTyrが、Pheによって置き換えられている、重鎖可変領域およびこの重鎖可変領域を含むヒト化抗体に関する。
【0114】
ある態様において、本発明はそれぞれ、重鎖可変領域のKABATサブグループV
HIIIのヒト生殖系列V
H配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置47のTrpが、Leu、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、およびPheからなる群より選択されるアミノ酸、特にLeuおよびIle、とりわけLeuによって置き換えられ、かつKabat位置94のArgが、配列番号:15に示したようなSerおよびThrからなる群より選択されるアミノ酸、とりわけSerによって置き換えられ、かつマウスモノクローナル抗体、特にマウス抗体ACI-01-Ab7C2から得られるCDR2領域中のKabat位置50のLysが、Arg、Gln、His、およびAsnからなる群より選択されるアミノ酸によって、とりわけArgによって置き換えられている、重鎖可変領域およびこの重鎖可変領域を含むヒト化抗体に関する。
【0115】
ある態様において、本発明はそれぞれ、重鎖可変領域のKABATサブグループV
HIIIのヒト生殖系列V
H配列から得られるアクセプターフレームワーク配列中のKabat位置47のTrpが、Leu、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、およびPheからなる群より選択されるアミノ酸、特にLeuおよびIle、とりわけLeuによって置き換えられ、かつKabat位置94のArgが、配列番号:15に示すSerおよびThrからなる群より選択されるアミノ酸によって、とりわけSerによって置き換えられ、かつマウスモノクローナル抗体、特にマウス抗体ACI-01-Ab7C2から得られるCDR2領域中のKabat位置53のAsnが、Ala、Val、Leu、Ser、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸;とりわけSerによって置き換えられている、重鎖可変領域およびこの重鎖可変領域を含むヒト化抗体に関する。
【0116】
具体的な態様において、本発明は、配列番号:12の軽鎖可変領域に関する。
【0117】
本発明の別の具体的な態様において、配列番号:12の軽鎖可変領域を含む、ヒト化抗体を提供する。
【0118】
具体的な態様において、本発明は、配列番号:13に示すシグナル配列を含む軽鎖可変領域に関する。
【0119】
本発明の別の具体的な態様において、配列番号:13に示すシグナル配列を含む完全な軽鎖可変領域を含む、ヒト化抗体を提供する。
【0120】
本発明の別の具体的な態様において、配列番号:12の軽鎖可変領域および配列番号:14の軽鎖定常領域を含む、ヒト化抗体を提供する。
【0121】
本発明の別の具体的な態様において、配列番号:13の完全な軽鎖可変領域および配列番号:14の軽鎖定常領域を含む、ヒト化抗体を提供する。
【0122】
具体的な態様において、本発明は、配列番号:15の重鎖可変領域に関する。
【0123】
本発明の別の具体的な態様において、配列番号:15の重鎖可変領域を含む、ヒト化抗体を提供する。
【0124】
具体的な態様において、本発明は、配列番号:16に示すシグナル配列を含む重鎖可変領域に関する。
【0125】
本発明の別の具体的な態様において、配列番号:16に示すシグナル配列を含む完全な重鎖可変領域を含む、ヒト化抗体を提供する。
【0126】
本発明の別の具体的な態様において、配列番号:15の重鎖可変領域および配列番号:17の重鎖定常領域を含む、ヒト化抗体を提供する。
【0127】
本発明の別の具体的な態様において、配列番号:16の重鎖可変領域および配列番号:17の重鎖定常領域を含む、ヒト化抗体を提供する。
【0128】
ある態様において、本発明による、本明細書に記載のヒト化抗体は、少なくとも30、特に少なくとも35、より特には少なくとも38、さらにより特には少なくとも40アミノ酸残基を有するAβ単量体ペプチドおよび/または複数のAβ単量体単位を含むAβ重合体可溶性アミロイドペプチドと、とりわけAβ
1-42単量体ペプチドおよび/または複数のAβ
1-42単量体単位を含むAβ重合体可溶性アミロイドペプチドと、特に最大で1:1000の、特に最大で1:500の、より特には最大で1:300の、さらにより特には最大で1:200の抗体 対 Aβ1-42のモル濃度比で、とりわけ最大で1:10〜1:100の抗体 対 Aβ1-42のモル濃度比で、コインキュベーションすることによって、Aβ単量体の高分子重合体フィブリルへの凝集を阻害する。
【0129】
特に、本発明による抗体と、アミロイド単量体および/または重合体の可溶性アミロイドペプチドとのコインキュベーションを、24時間〜60時間、特に30時間〜50時間、より特には48時間、とりわけ24時間、28℃〜40℃の、特に32℃〜38℃の温度で、より特には37℃で実行する。
【0130】
本発明の具体的な態様において、アミロイド単量体および/または重合体の可溶性アミロイドペプチドとのコインキュベーションを24時間、37℃の温度で遂行する。
【0131】
特に、抗体、特に任意の機能的に等価な抗体またはその機能性部分を含む本発明によるヒト化抗体は、Aβ
1-42単量体ペプチドおよび/または複数のAβ
1-42単量体単位を含むAβ重合体可溶性アミロイドペプチドに結合し、かつAβ
1-42単量体ペプチドおよび/または複数のAβ
1-42単量体単位を含むAβ重合体可溶性アミロイドペプチドとのコインキュベーションによって、Aβ単量体および/または重合体の高分子重合体フィブリルへの凝集を阻害する。
【0132】
ある態様において、抗体、特に任意の機能的に等価な抗体またはその機能性部分を含む本発明によるヒト化抗体は、最大で1:1000の抗体 対 Aβ1-42のモル濃度比で、特に1:10〜1:100のモル濃度比で、とりわけ1:10のモル濃度比で、緩衝剤中でインキュベートしたそれぞれのアミロイドペプチド単量体(対照)と比較した場合に、Aβ単量体および/または複数のAβ単量体単位を含むAβ可溶性重合体の高分子重合体フィブリルへの凝集を、少なくとも50%、特に少なくとも60%、特に少なくとも65%、より特には少なくとも75%、さらにより特には少なくとも80%、とりわけ少なくとも85%〜90%、またはそれを上回って阻害する。
【0133】
本発明の具体的な態様において、抗体、特に任意の機能的に等価な抗体またはその機能性部分を含む本発明によるヒト化抗体は、1:100の抗体 対 Aβ1-42のモル濃度比で、Aβ単量体および/または複数のAβ単量体単位を含むAβ可溶性重合体の高分子重合体フィブリルへの凝集を少なくとも30%阻害する。
【0134】
本発明の別の具体的な態様において、抗体、特に任意の機能的に等価な抗体またはその機能性部分を含む本発明によるヒト化抗体は、1:10の抗体 対 Aβ1-42のモル濃度比で、Aβ単量体および/または複数のAβ単量体単位を含むAβ可溶性重合体の高分子重合体フィブリルへの凝集を少なくとも80%阻害する。
【0135】
本発明による、本明細書に記載の抗体の、アミロイド生成性の単量体ペプチドおよび/または重合体ペプチド、特にアミロイド形態(1-42)との結合は、単量体アミロイド生成性ペプチドおよび/または重合体アミロイド生成性ペプチドの高分子フィブリルまたはフィラメントへの凝集の阻害を招く。アミロイド生成性の単量体ペプチドおよび/または重合体ペプチドの凝集の阻害を通じて、本発明による抗体は、アミロイド斑、特に、二次立体構造の変化によって不溶性になること、および罹患した動物またはヒトの脳内でのアミロイド斑の主要部分であることが知られているアミロイド形態(1-42)の形成を防止または遅らせることができる。
【0136】
本発明による抗体の凝集阻害能力は、当技術分野で公知の任意の適した方法によって、特に密度勾配超遠心法、それに続く予め形成された勾配でのSDS-PAGE沈降解析によって、および/またはチオフラビンT(Th-T)蛍光アッセイ法によって、決定することができる。
【0137】
ある態様において、本発明は、少なくとも30、特に少なくとも35、より特には少なくとも38、さらにより特には少なくとも40アミノ酸残基を有するAβ単量体ペプチド、とりわけAβ
1-42単量体ペプチドの凝集によって形成される前形成された高分子重合体アミロイドのフィブリルまたはフィラメントと、1:5〜1:1000の、特に1:10〜1:500のモル濃度比で、より特には1:10〜1:300の比で、さらにより特には1:10〜1:100の比で、コインキュベーションすることによって、少なくとも20%、特に少なくとも30%、より特には少なくとも35%、さらにより特には少なくとも40%、とりわけ少なくとも50%、またはそれを上回って前形成された重合体アミロイドのフィブリルまたはフィラメントを脱凝集する、任意の機能的に等価な抗体またはその機能性部分を含む本明細書に記載の抗体、特にヒト化抗体に関する。
【0138】
本発明の具体的な態様において、抗体の凝集阻害能力および脱凝集能力を、それぞれ、密度勾配超遠心分離法、それに続く予め形成された勾配でのSDS-PAGE沈降解析によって決定する。
【0139】
本発明の別の具体的な態様において、抗体の凝集阻害能力および脱凝集能力を、それぞれ、チオフラビンT(Th-T)蛍光アッセイ法によって決定する。
【0140】
別の具体的な態様において、本発明による抗体は、アミロイドが前形成された高分子重合体アミロイドのフィブリルまたはフィラメントと、12時間〜36時間、特に18時間〜30時間、より特に24時間、28℃〜40℃、特に32℃〜38℃、より特に37℃の温度で、コインキュベーションされる。
【0141】
特に、前形成された高分子重合体アミロイドのフィブリルまたはフィラメントとのコインキュベーションを24時間、37℃の温度で行う。
【0142】
本発明の具体的な態様において、抗体、特に任意の機能的に等価な抗体またはその機能性部分を含む本発明によるヒト化抗体は、1:100の抗体 対 Aβ1-42のモル濃度比で、前形成された重合体のフィブリルまたはフィラメントを少なくとも24%脱凝集させることができる。
【0143】
本発明の別の具体的な態様において、抗体、特に任意の機能的に等価な抗体またはその機能性部分を含む本発明によるヒト化抗体は、1:10の抗体 対 Aβ1-42のモル濃度比で、前形成された重合体アミロイドのフィブリルまたはフィラメントを少なくとも32%脱凝集させることができる。
【0144】
アミロイド生成性重合体のフィブリルまたはフィラメントの脱凝集を通じて、本発明による抗体は、アミロイド斑の形成を防止または遅らせることができ、それは疾患に伴う症状の緩和およびその進行の遅延または逆転をもたらす。
【0145】
したがって、本明細書に記載の任意の機能的に等価な抗体またはその機能性部分を含む抗体、特にヒト化抗体であって、脳内でのAβの濃度の上昇を招く疾患または状態に罹患した動物、特に哺乳動物、とりわけヒトの脳内でのAβの総量を減少させることができる抗体を提供することは、本発明の1つのさらなる態様である。
【0146】
別の態様において、本発明は、それが高度の立体構造感受性(conformational sensitivity)と特に組み合わさった、凝集阻害特性と脱凝集特性の両方を示すという点で二重に効果的(bi-effective)である、本発明による、本明細書で前述した通りのヒト化抗体に関する。
【0147】
特に、本発明は、アミロイド単量体および/または重合体の可溶性アミロイドペプチドとの、特に例えば、Aβ単量体ペプチド1-39;1-40、1-41、もしくは1-42などのβ-アミロイド単量体ペプチド、および/または複数のAβ単量体単位を含む重合体可溶性β-アミロイドペプチドとの、とりわけAβ
1-42単量体および/または複数のAβ
1-42単量体単位を含むAβ重合体の可溶性アミロイドペプチドとのコインキュベーションによって、Aβ単量体の高分子重合体フィブリルまたはフィラメントへの凝集を阻害し、さらにアミロイド単量体ペプチド、特に例えば、Aβ単量体ペプチド1-39;1-40、1-41、もしくは1-42などのβ-アミロイド単量体ペプチド、とりわけAβ
1-42単量体ペプチドの凝集によって形成される前形成された高分子重合体アミロイドのフィブリルまたはフィラメントとのコインキュベーションによって、前形成された重合体のフィブリルまたはフィラメントを脱凝集させることができる、本発明による、本明細書で前述した通りのキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片に関する。
【0148】
別の局面において、本発明は、β-シート立体構造を代償にしたランダムコイル立体構造の増加および前形成された高分子重合体アミロイドのフィブリルまたはフィラメントの向上した可溶化をもたらす、α-ヘリックスおよび/またはランダムコイル立体構造、特にランダムコイル立体構造、さらにより特には分子中の所与の場所での、とりわけAβタンパク質のTyr 10およびVal 12の環境におけるランダムコイル立体構造へのβ-シート立体構造の転換を誘導することができる、本発明による、本明細書で前述した通りのキメラ抗体もしくはその断片、またはヒト化抗体もしくはその断片に関する。特に、β-シート立体構造の減少は、緩衝剤中でインキュベートした各々の前形成されたアミロイド重合体フィブリルまたはフィラメント(対照)と比較して、少なくとも30%、特に少なくとも35%、より特に少なくとも40%およびそれ以上に達する。
【0149】
二次構造における転移を誘導する抗体の能力は、固体13C NMR分光法によって、特にAβ
1-42ペプチドにおけるTyr 10およびVal 12 Cβの立体構造の積分強度を測定することによって決定される。
【0150】
本発明のさらなる態様において、少なくとも約1×10
-7 M〜少なくとも約1×10
-12 Mの、特に少なくとも約1×10
-8 M〜少なくとも約1×10
-11 Mの、より特には少なくとも約1×10
-9 M〜少なくとも約1×10
-10 Mの、さらにより特には少なくとも約1×10
-8 M〜少なくとも約2×10
-8 Mの範囲内のK
Dを持つ高い結合親和性でAβ単量体に結合するが、好ましくは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)との顕著な交差反応性を少しも示さない、少なくとも1つの軽鎖もしくはその断片または少なくとも1つの重鎖もしくはその断片を含む、本発明による、本明細書で前述した通りのキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。
【0151】
本発明の別の態様において、少なくとも約1×10
-7 M〜少なくとも約1×10
-12 Mの、特に少なくとも約1×10
-8 M〜少なくとも約1×10
-11 Mの、より特には少なくとも約1×10
-9 M〜少なくとも約1×10
-10 Mの、さらにより特には少なくとも約2×10
-9 M〜少なくとも約5×10
-9 Mの範囲内のK
Dを持つ高い結合親和性でAβの繊維、フィブリル、またはフィラメントに結合するが、好ましくは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)との顕著な交差反応性を少しも示さない、少なくとも1つの軽鎖もしくはその断片または少なくとも1つの重鎖もしくはその断片を含む、本発明による、本明細書で前述した通りのキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。
【0152】
別の態様において、本発明による、本明細書で前述した通りの抗体またはその断片は、Aβ単量体に対する結合親和性よりも少なくとも2倍、特に少なくとも4倍、特に少なくとも10倍、特に少なくとも15倍、より特には少なくとも20倍、とりわけ少なくとも25倍高いAβの繊維、フィブリル、またはフィラメントに対する結合親和性を示す。
【0153】
また別の態様において、哺乳動物の、特にヒトの脳内のAβ斑を含む凝集したAβに実質的に結合するが、好ましくはアミロイド前駆体タンパク質(APP)との顕著な交差反応性を少しも示さない、本明細書で前述した通りの、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。
【0154】
本発明の別の局面において、哺乳動物の、特にヒトの脳内のAβ単量体を含む、可溶性重合体アミロイド、特にアミロイドβ(Aβ)に実質的に結合するが、好ましくはアミロイド前駆体タンパク質(APP)との顕著な交差反応性を少しも示さない、本明細書で前述した通りの、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。
【0155】
哺乳動物の、特にヒトの脳内のAβ斑負荷を顕著に低下させる、本明細書で前述した通りの、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片をさらに提供する。このことは、抗体の斑への結合によるか、または立体構造の転換を誘導することで繊維を可溶性の重合体形態および単量体形態まで脱凝集させ、組織および/または体液中、特に脳内の脱凝集および可溶化したアミロイド形態、特にアミロイドβ(Aβ)形態に結合しかつ該Aβ形態を安定化することによって、アミロイド、特にアミロイドβ(Aβ)の不溶性の状態と凝集した状態との間の平衡をその可溶性の形態へと移動させることによるかのいずれかで、達成することが可能である。したがって、本発明による抗体の活性を通じて、組織および/または体液中、特に脳内での堆積よりもむしろ、末梢での除去および異化に有利に働く。したがって、本発明による抗体の有利な効果を、抗体の斑への結合を伴わずに得ることができる。
【0156】
この安定化活性を通じて、本発明による抗体は、組織および/または体液中の、重合体でかつあまり凝集していない可溶性アミロイドタンパク質、特にアミロイドβ(Aβ)タンパク質の毒性作用を中和することができる。したがって、本発明の具体的な態様において、本発明による抗体は、脳内の凝集したアミロイドβに必ずしも結合することなくその有利な効果を達成する可能性がある。
【0157】
本発明のさらなる局面において、マウスドナー抗体の親和性よりも少なくとも5倍、特に少なくとも8倍、より特には少なくとも10倍、とりわけ少なくとも15倍のAβに対する親和性を有するマウスドナー抗体から、特に2005年12月1日にBraunschweig, Mascheroder Weg 1B, 38124 BraunschweigのDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に、アクセッション番号:DSM ACC2750の下で寄託された(本出願の全体を通じて、「mC2」と名付けられかつヒト化C2抗体についてはhC2と名付けられている)マウス抗体ACI-01-Ab7C2から得られる少なくとも1つ、特に2つ、より特には3つのCDR領域を組み入れた少なくとも1つの軽鎖もしくはその断片または少なくとも1つの重鎖もしくはその断片を含む、本発明による、本明細書で前述した通りのヒト化抗体またはその断片を提供する。
【0158】
本発明の抗体は、ある態様において、任意のアイソタイプおよびサブタイプ(例えば、IgM、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgA1、およびIgA2)の(例えば、2つの全長軽鎖および2つの全長重鎖を持つ)完全な抗体;とりわけIgG4アイソタイプの抗体であり得;あるいは、別の態様において、それは完全な抗体の抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab')
2、およびFv)であり得る。
【0159】
したがって、本発明はまた、本明細書で記載した抗体の抗原結合断片に関する。本発明のある態様において、断片は、Fab免疫グロブリン発現ライブラリーの産物ならびに上記で言及した抗体および断片のいずれかのエピトープ結合断片を含む、Fab断片、Fab'断片、F(ab)
2断片、およびF
v断片からなる群より選択される。
【0160】
別の態様において、本発明の抗体または抗原結合断片をポリエチレングリコールに結合する。さらに別の態様において、本発明の抗体の定常領域を修飾し、未修飾の抗体と比べて少なくとも1つの定常領域を介する生物学的エフェクター機能を低下させる。また別の態様において、本発明の抗体または抗原結合断片は、改変されたエフェクター機能を有するFc領域を含む。
【0161】
本発明はさらに、本発明による、本明細書で先に開示したような、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む、ヌクレオチド分子に関する。
【0162】
特に、本発明は、それぞれ重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)2および3を示す、配列番号:2および3に示される一続きの連続的なアミノ酸分子をコードするヌクレオチド配列または相補配列を含む、ヌクレオチド分子に関する。
【0163】
より特には、本発明は、軽鎖可変領域(LCVR)の相補性決定領域(CDR)1を示す、配列番号:4に示される一続きの連続的なアミノ酸分子をコードするヌクレオチド配列または相補配列を含む、ヌクレオチド分子に関する。
【0164】
本発明の別の態様において、重鎖可変領域(HCVR)の、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれコードする、配列番号:18および配列番号:19に示されるヌクレオチド配列または相補配列を含む、ヌクレオチド分子を提供する。
【0165】
本発明の別の態様において、軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1のヌクレオチド配列をコードする、配列番号:20に示されるヌクレオチド配列または相補配列を含む、ヌクレオチド分子を提供する。
【0166】
本発明の別の態様において、軽鎖可変領域をコードする配列番号:21のヌクレオチド配列または相補配列を含む、ヌクレオチド分子を提供する。
【0167】
本発明の別の態様において、シグナル配列を含む完全な軽鎖可変領域をコードする、配列番号:22のヌクレオチド配列または相補配列を含む、ヌクレオチド分子を提供する。
【0168】
本発明の別の態様において、配列番号:22の軽鎖可変領域および配列番号:23の軽鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むヌクレオチド分子を提供する。本発明はまた、本ヌクレオチド分子の相補鎖を含む。
【0169】
本発明の別の態様において、重鎖可変領域をコードする配列番号:24のヌクレオチド配列を含むヌクレオチド分子を提供する。本発明はまた、本ヌクレオチド分子の相補鎖を含む。
【0170】
本発明の別の態様において、シグナル配列を含む完全な重鎖可変領域をコードする配列番号:25のヌクレオチド配列を含むヌクレオチド分子を提供する。本発明はまた、本ヌクレオチド分子の相補鎖を含む。
【0171】
本発明の別の態様において、配列番号:25の重鎖可変領域および配列番号:26の重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むヌクレオチド分子を提供する。本発明はまた、本ヌクレオチド分子の相補鎖を含む。
【0172】
上記の抗体をコードする本発明のヌクレオチド配列のうちの1つに、特にその相補鎖に、孤立してかまたはより長いヌクレオチド分子の一部としてかのいずれかでハイブリダイズするヌクレオチド配列もまた、本発明によって含まれる。
【0173】
特に、本発明は、従来のハイブリダイゼーション条件下で、特にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号:18〜26および29〜32に示したヌクレオチド配列のいずれかに、特にその相補鎖にハイブリダイズするヌクレオチド配列に関する。
【0174】
本発明の別の態様において、本発明による、本明細書で先に言及したような核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
【0175】
本発明の別の態様において、本発明による、本明細書で先に言及したような核酸を含む発現ベクターを含む、細胞を提供する。
【0176】
また別の態様において、本発明は、本発明による抗体、特に治療的有効量の、機能的に等価な抗体またはその任意の誘導体もしくは機能性部分を含む、本発明による本明細書で前述した通りのキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を含む組成物、特に薬学的に許容される担体を任意でさらに含む薬学的組成物である組成物に関する。
【0177】
本発明の別の態様において、組成物は治療的有効量の抗体を含む。
【0178】
抗体、特に本発明によるモノクローナル抗体、特に治療的有効量の、任意の機能的に等価な抗体またはその誘導体もしくは機能性部分を含む、本発明による本明細書で前述した通りのキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片、ならびに任意で、さらなる生物活性物質および/または薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/または賦形剤を含む混合物が、本発明によってさらに含まれる。
【0179】
特に、本発明は、さらなる生物活性物質が、アルツハイマー病に関与するAβタンパク質などのアミロイドまたはアミロイド様タンパク質と関連する一群の疾患および障害であるアミロイドーシスの薬物治療で用いられる化合物である、混合物に関する。
【0180】
本発明の別の態様において、その他の生物活性物質または化合物はまた、アミロイドβによって引き起こされるアミロイドーシスの処置で使用し得るかまたはその他の神経学的障害の薬物治療で使用し得る治療的薬剤であってもよい。
【0181】
他の生物活性物質または化合物は、その生物学的効果を、本発明による抗体と同じもしくは類似の機序によって発揮してもよく、または関係のない作用機序によって、または複数の関係のあるおよび/もしくは関係のない作用機序によって発揮してもよい。
【0182】
一般に、他の生物活性化合物には、ニューロン伝達賦活薬、精神治療薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、カルシウムチャネル拮抗薬、生体アミン、ベンゾジアゼピン系精神安定剤、アセチルコリンの合成、貯蔵または放出の賦活薬、アセチルコリンシナプス後受容体アゴニスト、モノアミンオキシダーゼ-Aまたは-Bの阻害剤、N-メチル-D-アスパラギン酸グルタミン酸受容体アンタゴニスト、非ステロイド性抗炎症薬、抗酸化剤、およびセロトニン作動性受容体アンタゴニストが含まれ得る。
【0183】
より特には、本発明は、本発明による抗体ならびに、任意で、薬学的に許容される担体および/もしくは希釈剤および/もしくは賦形剤と共に、酸化ストレスに対して有効な化合物、抗アポトーシス性化合物、金属キレート剤、ピレンゼピンおよび代謝物などのDNA修復の阻害剤、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸(3APS)、1,3-プロパンジスルホネート(1,3PDS)、α-セクレターゼ活性化剤、β-およびγ-セクレターゼ阻害剤、タウタンパク質、神経伝達物質、β-シート破壊剤(breaker)、アミロイドβを除去する/枯渇させる細胞成分の誘引剤、ピログルタミン酸化したアミロイドβ3-42を含むN末端切断型アミロイドβの阻害剤、抗炎症分子、またはタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、および/もしくはガランタミンなどのコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)、M1アゴニスト、ならびに任意のアミロイドもしくはタウの修飾薬物を含むその他の薬物、ならびに栄養補給剤からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む混合物に関する。
【0184】
本発明はさらに、化合物がコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)である混合物、特に化合物がタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、ガランタミン、ナイアシン、およびメマンチンからなる群より選択される化合物である、混合物に関する。
【0185】
さらなる態様において、本発明による混合物は、本発明による抗体と共にナイアシンまたはメマンチンを、ならびに任意で、薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/または賦形剤を含んでもよい。
【0186】
本発明のまた別の態様において、抗体、特に本発明によるモノクローナル抗体、特に本発明による本明細書に記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片、ならびに任意で、さらなる薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/または賦形剤と共に、幻覚、妄想、(際立った思考散乱、脱線、脱線思考が現れる)思考障害、および突飛な行動または混乱した行動だけでなく、無快感症、抑揚のない感情、無気力症、および社会的引きこもりも含む陽性および陰性の精神病症状の処置用の、例えば、クロザピン、ジプラシドン、リスペリドン、アリプラゾール、またはオランザピンなどの「非定型抗精神病薬」を含む混合物を提供する。
【0187】
本発明の1つの特定の態様において、本発明による、および本明細書に前述した通りの組成物および混合物は、抗体および生物活性物質をそれぞれ治療的有効量で含む。
【0188】
本発明による抗体と組み合わせた混合物中で好適に用いることができるその他の化合物は、WO 2004/058258(とりわけ16〜17ページを参照)に記載されており、これには治療薬標的(36〜39ページ)、アルカンスルホン酸およびアルカノール硫酸(39〜51ページ)、コリンエステラーゼ阻害剤(51〜56ページ)、NMDA受容体アンタゴニスト(56〜58ページ)、エストロゲン(58〜59ページ)、非ステロイド性抗炎症薬(60〜61ページ)、抗酸化剤(61〜62ページ)、ペルオキシソーム増殖活性化受容体(PPAR)アゴニスト(63〜67ページ)、コレステロール低下剤(68〜75ページ);アミロイド阻害剤(75〜77ページ)、アミロイド形成阻害剤(77〜78ページ)、金属キレート剤(78〜79ページ)、抗精神病薬および抗鬱薬(80〜82ページ)、栄養補給物質(83〜89ページ)ならびに脳内での生物活性物質の生物学的利用能を高める化合物(89〜93ページ参照)およびプロドラッグ(93および94ページ)が含まれ、この文書は参照により本明細書に組み入れられる。
【0189】
別の態様において、本発明は、抗体、特に本発明によるモノクローナル抗体、特に本発明による本明細書で前述した通りのキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片、ならびに/あるいは生物活性物質を治療的有効量で含む混合物に関する。
【0190】
本発明はさらに、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム・パーキンソン-認知症複合などの神経学的障害;ならびに進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルトヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、および黄斑変性症を含む、その他の疾患などのアミロイド様タンパク質に基づくかまたはアミロイド様タンパク質と関連するその他の疾患も含むが、これらに限定されない、続発性アミロイドーシスおよび加齢に関係のあるアミロイドーシスを含むアミロイド斑形成と関連する一群の疾患および障害であるアミロイドーシスの影響を処置または緩和するための医薬の調製のための、抗体、特に本発明によるモノクローナル抗体、特に本発明による本明細書で前述した通りのキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片、および/もしくはその機能性部分、ならびに/または本抗体を含む薬学的組成物もしくは混合物、の使用に関する。
【0191】
アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム・パーキンソン-認知症複合などの神経学的障害;ならびに進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルトヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、および黄斑変性症を含む、その他の疾患などのアミロイド様タンパク質に基づくかまたはアミロイド様タンパク質と関連するその他の疾患も含むが、これらに限定されない、続発性アミロイドーシスおよび加齢に関係のあるアミロイドーシスを含むアミロイド斑形成と関連する一群の疾患および障害である、アミロイドーシスの影響を防止するか、処置するか、または緩和する方法で使用するための、抗体、特に本発明によるモノクローナル抗体、特に本発明による本明細書で前述した通りのキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片、および/もしくはその機能性部分、ならびに/または特に治療的有効量の、抗体および/もしくはその機能性部分を含む薬学的組成物もしくは混合物の調製のための方法であって、抗体、特に本発明によるモノクローナル抗体、特に薬学的に許容される形態の本発明によるキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を製剤化する工程を含む方法もまた、本発明によって含まれる。
【0192】
抗体および/もしくはその機能性部分、特にヒト化抗体および/もしくはその機能性部分、またはそのような抗体および/もしくはその機能性部分を含む組成物もしくは混合物を以下のような障害によって冒された動物またはヒトに投与することによって、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム・パーキンソン-認知症複合などの神経学的障害;ならびに、進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルトヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、および黄斑変性症を含む、その他の疾患などのアミロイド様タンパク質に基づくかまたはアミロイド様タンパク質と関連するその他の疾患も含むがこれらに限定されない、続発性アミロイドーシスおよび加齢に関係のあるアミロイドーシスを含む、アミロイド斑形成と関連する一群の疾患および障害であるアミロイドーシスの影響を防止するか、処置するか、または緩和するための方法であって、治療的有効量の抗体を投与する工程を含む方法がさらに、本発明によって含まれる。
【0193】
動物、特に哺乳動物またはヒトに、抗体、特に本発明による、本明細書に記載の薬学的組成物を投与することによって、アルツハイマー病(AD)などの神経学的障害、特に認知的記憶能力の喪失を特徴とする疾患または状態を含むがこれらに限定されない続発性アミロイドーシスおよび加齢に関係のあるアミロイドーシスを含む、アミロイド斑形成と関連する一群の疾患および障害であるアミロイドーシスの処置のための方法を提供することも、本発明の目的である。
【0194】
具体的な態様において、本発明は、動物、特に哺乳動物またはヒトに、抗体、特に本発明による本明細書で前述した通りの薬学的組成物を投与することによって、認知的記憶能力を保持するかまたは増加させるための、特に、記憶障害(impairment)に罹患している、動物、特に哺乳動物またはヒトの認知的記憶能力を回復させるための方法を提供する。
【0195】
治療的組成物およびそのような組成物を生産する方法だけでなく、本発明による、本明細書で前述した通りの抗体を用いた、アルツハイマー病(AD)などの神経学的障害、特に認知的記憶能力の喪失を特徴とする疾患または状態を含むがこれらに限定されない続発性アミロイドーシスおよび加齢に関係のあるアミロイドーシスを含む、アミロイド斑形成と関連する一群の疾患および障害であるアミロイドーシスの処置のための方法を提供することも、本発明のさらなる目的である。
【0196】
特に、本発明は、認知的記憶能力の保持をもたらす、認知的記憶能力の喪失を特徴とするアミロイド関連の状態に罹患している、動物、特に哺乳動物またはヒトの処置に関する。
【0197】
本発明はさらに、アミロイドタンパク質のエピトープに対する抗体またはその活性断片の免疫特異的結合を試料中でまたはインサイチューで検出する工程を含む、患者におけるアミロイド関連疾患または状態の診断の方法であって、
(a)アミロイドタンパク質を含むことが疑われる試料または特定の身体部分もしくは身体部位を、アミロイドタンパク質のエピトープに結合する、抗体、特に本発明によるモノクローナル抗体、特に本発明による、本明細書で前述した通りのキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片、および/またはその機能性部分と接触させる工程;
(b)該抗体および/またはその機能性部分をアミロイドタンパク質と結合させて免疫学的複合体を形成させる工程;
(c)該免疫学的複合体の形成を検出する工程;ならびに
(d)免疫学的複合体の有無と、試料または特定の身体部分もしくは部位におけるアミロイドタンパク質の有無とを相関付ける工程
を含む方法に関する。
【0198】
組織および/または体液中のアミロイド形成的な斑負荷(burden)の程度を決定する方法であって、
(a)調査中の組織および/または体液を代表する試料を得る工程;
(b)抗体、特に本発明によるモノクローナル抗体、特に本発明による、本明細書で前述した通りのキメラ抗体もしくはその断片、もしくはヒト化抗体もしくはその断片、ならびに/またはその機能性部分を用いて、アミロイドタンパク質の存在に関して該試料を検査する工程;
(c)該タンパク質に結合した抗体の量を決定する工程;ならびに
(d)該組織および/または体液中の斑負荷を計算する工程
を含む方法も含まれる。
【0199】
特に、本発明は、免疫学的複合体の有無が、アミロイドタンパク質の有無と相関するように工程(c)において免疫学的複合体の形成を決定する、組織および/または体液中のアミロイド形成的な斑負荷の程度を決定する方法に関する。
【0200】
本発明の別の態様において、抗体、特に本発明によるモノクローナル抗体、特に本発明による、本明細書で前述した通りのキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片、および/またはその機能性部分を含む、アミロイド関連の疾患または状態の検出および診断のための検査キットを提供する。
【0201】
特に、本発明は、本発明による1つもしくは複数の抗体、および/またはその機能性部分を入れた容器、ならびに免疫学的複合体の有無がアミロイドタンパク質の有無と相関するように、アミロイドタンパク質に結合させて免疫学的複合体を形成させかつ該免疫学的複合体の形成を検出する目的のために抗体を用いるための取扱説明書を含む、アミロイド関連の疾患または状態の検出および診断のための検査キットに関する。
【0202】
別の局面において、本発明は、配列番号:27に挙げたような可変領域を含む抗体またはその変異体を提供する。ある態様において、細胞株は本抗体を発現する。
【0203】
別の局面において、本発明は、配列番号:29に挙げたような可変領域を含む抗体遺伝子またはその変異体を提供する。ある態様において、細胞株は本抗体を発現する。
【0204】
別の局面において、本発明は、hC2抗体を前形成されたβ-アミロイド繊維と相互作用させる工程を含む、前形成されたβ-アミロイド繊維を脱凝集させるための方法を提供する。
【0205】
別の局面において、本発明は、Aβ誘導性の分解からニューロンを保護する、記載の特許請求の範囲のいずれかによるヒト化抗体またはその断片を提供する。
【0206】
別の局面において、本発明は、本明細書での開示による有効量のヒト化抗体またはその断片でニューロンを処置する工程を含む、Aβ誘導性のニューロン分解を防止するための方法を提供する。
【0207】
別の局面において、本発明は、Aβオリゴマーへの曝露によるニューロンの変性を防止するための医薬の調製用の、本明細書記載によるヒト化抗体またはその断片の使用を提供する。
【0208】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、以下に開示する態様および添付する特許請求の範囲の詳細な記述を吟味することによって明らかになると考えられる。
[請求項1001]
β-アミロイドタンパク質上の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片であって、
該エピトープが、抗体への結合に主に関与する少なくとも2つの連続するアミノ酸残基を含み、該少なくとも2つの連続するアミノ酸残基が、以下のコア配列(配列番号:10):
Xaa
1 - Xaa
2 - Lys - Leu - Xaa
3
の中に埋め込まれた-Lys-Leu-であり、
式中、
Xaa
1が、His、Asn、Gln、Lys、およびArgからなる群より選択されるアミノ酸であり、
Xaa
2が、AsnおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸であり;かつ
Xaa
3が、Ala、Val、Leu、ノルロイシン、Met、Phe、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸である、
キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1002]
β-アミロイドタンパク質上の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片であって、
該エピトープが、抗体への結合に主に関与する少なくとも2つの連続するアミノ酸残基を含み、該少なくとも2つの連続するアミノ酸残基が、以下のコア配列(配列番号:9):
Xaa
3 - Phe - Phe - Xaa
4 - Xaa
5 - Xaa
6
の中に埋め込まれた-Phe-Phe-であり、
式中、
Xaa
3が、Ala、Val、Leu、ノルロイシン、Met、Phe、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
4が、Ala、Val、Leu、Ser、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基であり;
Xaa
5が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基であり、かつ
Xaa
6が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基である、
キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1003]
β-アミロイドタンパク質上の少なくとも2つのエピトープに特異的に結合する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片であって、
該少なくとも2つのエピトープが各々、抗体の結合に主に関与する少なくとも2つの連続するアミノ酸残基を含み、該少なくとも2つの連続するアミノ酸が、抗体結合に関与しないかまたは該連続するアミノ酸残基よりも顕著に小さい程度に関与する少なくとも1つのアミノ酸残基によって隔てられており、該連続するアミノ酸残基がそれぞれ以下のコア配列:
Xaa
1 - Xaa
2 - Lys - Leu - Xaa
3 - Phe - Phe - Xaa
4 _ Xaa
5 _ Xaa
6
の中に埋め込まれた-Phe-Phe-および-Lys-Leu-であり、
式中、
Xaa
1が、His、Asn、Gln、Lys、およびArgからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Xaa
2が、AsnおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Xaa
3が、Ala、Val、Leu、ノルロイシン、Met、Phe、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Xaa
4が、Ala、Val、Leu、Ser、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Xaa
5が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸であり、かつ
Xaa
6が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸である、
請求項1001または1002記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1004]
Xaa
1が、HisおよびArgからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Xaa
2が、AsnおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Xaa
3が、ValおよびLeuからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Xaa
4が、AlaおよびValからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Xaa
5が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸であり;かつ
Xaa
6が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸である、
請求項1001〜1003のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1005]
Xaa
1がHisであり;
Xaa
2がGlnであり;
Xaa
3がValであり;
Xaa
4がAlaであり;
Xaa
5がGluであり;かつ
Xaa
6がAspである、
請求項1004記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1006]
β-アミロイドタンパク質上の少なくとも2つのエピトープに特異的に結合する、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片であって、
前記少なくとも2つのエピトープが、それぞれ、- Phe -Phe - および - Lys - Leu -である抗体の結合に主に関与する少なくとも2つの連続するアミノ酸残基を各々含み、かつ少なくとも2つの別個の結合部位がそれぞれ、配列番号:7に示すアミノ酸配列-Val - Phe - Phe - Ala - Glu - Asp -および配列番号:8に示すアミノ酸配列His - Gln - Lys - Leu - Val -を示す、
請求項1001〜1005のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1007]
可変領域中に非ヒト起源の少なくとも1つのCDRおよび1つまたは複数のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域、ならびに任意で、ヒトまたは霊長類が源の抗体に由来する定常領域を含む、ヒト化抗体またはその断片であって、
β-アミロイドタンパク質、β-アミロイド単量体ペプチド、複数のβ-アミロイド単量体単位を含む重合体可溶性アミロイドペプチド、β-アミロイドの繊維、フィブリル、またはフィラメント、および孤立しているかまたはβ-アミロイド斑の一部としてのβ-アミロイド重合体ペプチドに、以下のアミノ酸配列(配列番号:11):
Xaa
1 - Xaa
2 - Lys - Leu - Xaa
3 - Phe - Phe- Xaa
4 _ Xaa
5 _ Xaa
6
を含むエピトープで特異的に結合することができ、
式中、
Xaa
1が、His、Asn、Glnからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にHisであり;
Xaa
2が、AsnおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にGlnであり;かつ
Xaa
3が、Val、Leu、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にValであり;
Xaa4が、AlaおよびValからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にAlaであり;
Xaa5が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にGluであり、かつ
Xaa6が、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸残基、特にAspである、
ヒト化抗体またはその断片。
[請求項1008]
非ヒト起源のCDRが、エピトープを含まない抗原断片に対して作製されたドナー抗体から得られる、請求項1001〜1007のいずれか一項記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1009]
ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域、ならびに
重鎖可変領域(HCVR)のCDR2を表す配列番号:2およびCDR3を表す配列番号:3、ならびに軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ、少なくとも1つのCDR
を有する可変領域を含む、ヒト化抗体またはその断片。
[請求項1010]
ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域、ならびに
重鎖可変領域(HCVR)のCDR2を表す配列番号:2およびCDR3を表す配列番号:3からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ、少なくとも1つのCDR
を有する重鎖可変領域を含む、請求項1009記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1011]
ヒト由来または霊長類由来の軽鎖フレームワーク領域、および
軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4のアミノ酸配列を持つ1つのCDR
を有する軽鎖可変領域を含む、請求項1009記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1012]
ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域、ならびに
重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3、ならびに軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ、少なくとも2つのCDR
を有する可変領域を含む、請求項1009記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1013]
ヒト化抗体が、
ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域、ならびに
重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ、少なくとも2つのCDR
を有する重鎖可変領域を含むヒト化抗体であって、同じCDRが該抗体中に二度は存在し得ない、請求項1012記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1014]
ヒト化抗体が、
ヒト由来または霊長類由来の軽鎖フレームワーク領域、ならびに
軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ、少なくとも2つのCDR
を有する軽鎖可変領域を含むヒト化抗体であって、同じCDRが該抗体中に二度は存在し得ない、請求項1012記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1015]
ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域、ならびに
重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3のアミノ酸配列を特に示した順序で持つCDR
を有する重鎖可変領域を含む、請求項1009記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1016]
ヒト由来または霊長類由来の軽鎖フレームワーク領域、ならびに
軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6のアミノ酸配列を特に示した順序で持つCDR
を有する軽鎖可変領域を含む、請求項1009記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1017]
ヒト化抗体が、
ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域、ならびに
重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3、ならびに軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ、少なくとも3つのCDR
を有する可変領域を含むヒト化抗体であって、同じCDRが該抗体中に二度は存在し得ない、請求項1009記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1018]
ヒト化抗体が、
ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域、ならびに
重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3、ならびに軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ、少なくとも4つのCDR
を有する可変領域を含むヒト化抗体であって、同じCDRが該抗体中に二度は存在し得ない、請求項1009記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1019]
ヒト化抗体が、
ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域、ならびに
重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3、ならびに軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ、少なくとも5つのCDR
を有する可変領域を含むヒト化抗体であって、同じCDRが該抗体中に二度は存在し得ない、請求項1009記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1020]
ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域、ならびに
重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3、ならびに軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6のアミノ酸配列を持つCDR
を有する可変領域を含む、請求項1009記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1021]
少なくとも1つのCDRが、重鎖可変領域(HCVR)のCDR2を表す配列番号:2のアミノ酸配列を持つCDRである、請求項1010記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1022]
少なくとも1つのCDRが、重鎖可変領域(HCVR)のCDR3を表す配列番号:3のアミノ酸配列を持つCDRである、請求項1010記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1023]
少なくとも2つのCDRが、重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1およびCDR2を表す配列番号:2のアミノ酸配列を持つCDRである、請求項1013記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1024]
少なくとも2つのCDRが、重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1およびCDR3を表す配列番号:3のアミノ酸配列を持つCDRである、請求項1013記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1025]
少なくとも2つのCDRが、重鎖可変領域(HCVR)のCDR2を表す配列番号:2およびCDR3を表す配列番号:3のアミノ酸配列を持つCDRである、請求項1013記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1026]
少なくとも2つのCDRが、軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4およびCDR2を表す配列番号:5のアミノ酸配列を持つCDRである、請求項1014記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1027]
少なくとも2つのCDRが、軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4およびCDR3を表す配列番号:6のアミノ酸配列を持つCDRである、請求項1014記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1028]
少なくとも2つのCDRが、請求項1023〜1027のいずれか一項記載のCDRの群より選択される、請求項1012記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1029]
ヒト起源または霊長類起源の、軽鎖および/または重鎖の定常領域を含む、請求項1009〜1028のいずれか一項記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1030]
抗体がその完全な機能性を維持するように、配列番号:1〜6に示す軽鎖および重鎖のCDR領域のアミノ酸のうちの少なくとも1つを、保存的置換によって変化させる、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1031]
配列番号:5に示す軽鎖可変領域(LCVR)のCDR2のアミノ酸配列内で、Kabat位置50のLysをArg、Gln、もしくはGluによって、特にArgによって置き換え、かつ/またはKabat位置53のAsnをAla、Val、Leu、Ser、およびIle;とりわけSerによって置き換える、請求項1030記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1032]
フレームワーク配列が、KABATサブグループV
KIIのヒト生殖系列V
K配列である、請求項1009〜1031のいずれか一項記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1033]
フレームワーク配列が、KABATサブグループV
HIIIのヒト生殖系列V
H配列である、請求項1009〜1031のいずれか一項記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1034]
ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域のアミノ酸うちの少なくとも1つを、マウスのヒト化抗体ACI-01-Ab7C2の対応する領域由来のアミノ酸に対する置換またはそれに対する保存的置換によって変化させる、請求項1001〜1033のいずれか一項記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1035]
ヒト由来または霊長類由来の重鎖可変領域のフレームワーク領域中のKabat位置47のTrpを、Leu、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、およびPheからなる群より選択されるアミノ酸によって置き換える、請求項1034記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1036]
配列番号:15に示すヒト由来または霊長類由来の重鎖可変領域のフレームワーク領域中のKabat位置94のArgを、SerおよびThrからなる群より選択されるアミノ酸、とりわけSerによって置き換える、請求項1034記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1037]
配列番号:15に示すヒト由来または霊長類由来の重鎖可変領域のフレームワーク領域中のKabat位置47のTrpを、Leu、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、およびPheからなる群より選択されるアミノ酸、特にLeuおよびIle、とりわけLeuによって置き換え、かつ
配列番号:15に示すヒト由来または霊長類由来の重鎖可変領域のフレームワーク領域中のKabat位置94のArgを、SerおよびThrからなる群より選択されるアミノ酸、とりわけSerによって置き換える、請求項1034記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1038]
配列番号:12に示すヒト由来または霊長類由来の軽鎖可変領域のフレームワーク領域中のKabat位置87のTyrを、Phe、Leu、Val、Ile、およびAlaからなる群より選択されるアミノ酸によって、特にLeuおよびPheによって、とりわけPheによって置き換える、請求項1034記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1039]
配列番号:15に示すヒト由来または霊長類由来の重鎖可変領域のフレームワーク領域中のKabat位置47のTrpを、Leu、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、およびPheからなる群より選択されるアミノ酸、特にLeuおよびIle、とりわけLeuによって置き換え、かつ
配列番号:15に示すヒト由来または霊長類由来の重鎖可変領域のフレームワーク領域中のKabat位置94のArgを、SerおよびThrからなる群より選択されるアミノ酸、とりわけSerによって置き換え、かつ
配列番号:12に示すヒト由来または霊長類由来の軽鎖可変領域のフレームワーク領域中のKabat位置87のTyrを、Phe、Leu、Val、Ile、およびAlaからなる群より選択されるアミノ酸によって、特にLeuおよびPheによって、とりわけPheによって置き換える、請求項1034記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1040]
配列番号:15に示すヒト由来または霊長類由来の重鎖可変領域のフレームワーク領域中のKabat位置47のTrpを、Leu、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、およびPheからなる群より選択されるアミノ酸、特にLeuおよびIle、とりわけLeuによって置き換える、請求項1035記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1041]
配列番号:15に示すヒト由来または霊長類由来の重鎖可変領域のフレームワーク領域中のKabat位置94のArgを、SerおよびThrからなる群より選択されるアミノ酸によって、とりわけSerによって置き換える、請求項1036記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1042]
配列番号:15に示すヒト由来または霊長類由来の重鎖可変領域のフレームワーク領域中のKabat位置47のTrpを、LeuおよびIleからなる群より選択されるアミノ酸、とりわけLeuによって置き換える、請求項1037記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1043]
配列番号:12に示すヒト由来または霊長類由来の軽鎖可変領域のフレームワーク領域中のKabat位置87のTyrを、Pheによって置き換える、請求項1038記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1044]
配列番号:15に示すヒト由来または霊長類由来の重鎖可変領域のフレームワーク領域中のKabat位置47のTrpを、LeuおよびIleからなる群より選択されるアミノ酸、とりわけLeuによって置き換え、かつ
配列番号:15に示すヒト由来または霊長類由来の重鎖可変領域のフレームワーク領域中のKabat位置94のArgをSerによって置き換え、かつ
配列番号:12に示すヒト由来または霊長類由来の軽鎖可変領域のフレームワーク領域中のKabat位置87のTyrをPheによって置き換える、請求項1039記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1045]
重鎖可変領域(HCVR)が、それぞれ配列番号:15および16に示す配列と90%、特に95%、より特には98%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1001〜1044のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその抗体の断片。
[請求項1046]
軽鎖可変領域(LCVR)が、それぞれ配列番号:12および13に示す配列と90%、特に95%、より特には98%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1001〜1044のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1047]
重鎖可変領域(HCVR)のCDR領域のうちの少なくとも2つ、とりわけ3つが、配列番号:1〜3に示す対応するCDR領域と90%、特に95%、より特には98%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1001〜1044のいずれか一項記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1048]
軽鎖可変領域(LCVR)のCDR領域のうちの少なくとも2つ、とりわけ3つが、配列番号:4〜6に示す対応するCDR領域と90%、特に95%、より特には98%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1001〜1044のいずれか一項記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1049]
配列番号:13の軽鎖可変領域を含む、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1050]
配列番号:14の軽鎖定常領域をさらに含む、請求項1049記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1051]
配列番号:13の軽鎖可変領域および配列番号:14の軽鎖定常領域を含む、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1052]
配列番号:16の重鎖可変領域を含む、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1053]
配列番号:17の重鎖定常領域をさらに含む、請求項1052記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1054]
配列番号:16の重鎖可変領域および配列番号:17の重鎖定常領域を含む、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1055]
重鎖定常領域のN末端のLysが除去されている、請求項1050、1051、1053、および1054のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1056]
抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、または突然変異したIgG4を含むIgG4アイソタイプ、特にIgG
4アイソタイプである、前記請求項のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1057]
高度の立体構造感受性(conformational sensitivity)と特に組み合わさった、凝集阻害特性と脱凝集特性の両方を示すという点で、抗体が二重に効果的(bi-effective)である、前記請求項のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1058]
アミロイド単量体および/または重合体の可溶性アミロイドペプチドとの、特に例えば、Aβ単量体ペプチド1-39;1-40、1-41、もしくは1-42などのβ-アミロイド単量体ペプチド、および/または複数の該Aβ単量体単位を含む重合体可溶性β-アミロイドペプチドとの、とりわけAβ
1-42単量体および/または複数の該Aβ
1-42単量体単位を含むAβ重合体の可溶性アミロイドペプチドとのコインキュベーションによって、抗体が、Aβ単量体の高分子重合体のフィブリルまたはフィラメントへの凝集を阻害し、かつ
アミロイド単量体ペプチド、特に例えば、Aβ単量体ペプチド1-39;1-40、1-41、または1-42などのβ-アミロイド単量体ペプチド、とりわけAβ
1-42単量体ペプチドの凝集によって形成された前形成された高分子重合体アミロイドのフィブリルまたはフィラメントとのコインキュベーションによって、抗体が、前形成された重合体のフィブリルまたはフィラメントをさらに脱凝集させることができる、
前記請求項のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1059]
哺乳動物脳、特にヒト脳中に凝集したAβに実質的に結合する、前記請求項のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1060]
哺乳動物脳、特にヒト脳中のAβ斑負荷を低下させる、前記請求項のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1061]
請求項1001〜1060のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
[請求項1062]
重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)2および3を表す配列番号:2および3を含む抗体可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
[請求項1063]
軽鎖可変領域(LCVR)の相補性決定領域(CDR)1を表す配列番号:4を含む抗体可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
[請求項1064]
配列番号:18および配列番号:19に示すヌクレオチド配列を含む、請求項1062記載の核酸分子。
[請求項1065]
配列番号:20に示すヌクレオチド配列を含む、請求項1063記載の核酸分子。
[請求項1066]
配列番号:22の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子。
[請求項1067]
配列番号:22の軽鎖可変領域および配列番号:23の軽鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
[請求項1068]
配列番号:25の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子。
[請求項1069]
配列番号:25の重鎖可変領域および配列番号:26の重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
[請求項1070]
請求項1060〜1069のいずれか一項記載のヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
[請求項1071]
請求項1060〜1068のいずれか一項記載のヌクレオチド配列を含む発現ベクターまたは請求項1070記載の発現ベクターを含む、細胞。
[請求項1072]
治療的有効量の任意の機能的に等価な抗体またはその機能性部分を含む請求項1001〜1060のいずれか一項記載の抗体を含む、組成物。
[請求項1073]
薬学的に許容される担体を任意でさらに含む薬学的組成物である、請求項1072記載の組成物。
[請求項1074]
治療的有効量の抗体を含む、請求項1072〜1073のいずれか一項記載の組成物。
[請求項1075]
治療的有効量の任意の機能的に等価な抗体またはその機能性部分を含む請求項1001〜1060のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片、ならびに任意で、さらなる生物活性物質および/または薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/または賦形剤を含む、混合物。
[請求項1076]
さらなる生物活性物質が、アルツハイマー病に関与するAβタンパク質などのアミロイドまたはアミロイド様タンパク質と関連する一群の疾患および障害であるアミロイドーシスの処置で用いられる化合物である、請求項1075記載の混合物。
[請求項1077]
本発明の抗体ならびに、任意で薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/または賦形剤と共に、酸化ストレスに対する化合物、抗アポトーシス性化合物、金属キレート剤、ピレンゼピンおよび代謝物などのDNA修復の阻害剤、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸(3APS)、1,3-プロパンジスルホネート(1,3PDS)、α-セクレターゼ活性化剤、β-およびγ-セクレターゼ阻害剤、タウタンパク質、神経伝達物質、β-シート破壊剤(breaker)、アミロイドβを除去する/枯渇させる細胞成分の誘引剤、ピログルタミン酸化したアミロイドβ3-42を含むN末端切断型アミロイドβの阻害剤、抗炎症分子、またはタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、および/もしくはガランタミンなどのコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)、M1アゴニスト、ならびに任意のアミロイドもしくはタウの修飾薬物を含むその他の薬物、ならびに栄養補給剤からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項1076記載の混合物。
[請求項1078]
化合物がコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)である、請求項1077記載の混合物。
[請求項1079]
化合物が、タクリン、リバスチグミン、ドネペジル、ガランタミン、ナイアシン、およびメマンチンからなる群より選択される化合物である、請求項1075〜1077のいずれか一項記載の混合物。
[請求項1080]
治療的有効量の抗体および/または生物活性物質を含む、請求項1075〜1079のいずれか一項記載の混合物。
[請求項1081]
アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム・パーキンソン-認知症複合などの神経学的障害;ならびに進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルトヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、および黄斑変性症を含む、その他の疾患などのアミロイド様タンパク質に基づくかまたはアミロイド様タンパク質と関連するその他の疾患、などの疾患を含むが、これらに限定されない、続発性アミロイドーシスおよび加齢に関係のあるアミロイドーシスを含む、アミロイド斑形成と関連する一群の疾患および障害であるアミロイドーシスの影響を処置または緩和するための医薬の調製用の、キメラ抗体もしくはその断片、またはヒト化抗体もしくはその断片、および/または請求項1001〜1060のいずれか一項記載のその機能性部分、および/または請求項1072〜1074のいずれか一項記載の薬学的組成物、または請求項1075〜1080のいずれか一項記載の混合物の、使用。
[請求項1082]
アミロイド関連の疾患または状態がアルツハイマー病である、請求項1081記載の使用。
[請求項1083]
アミロイド関連の状態が、動物、特に哺乳動物またはヒトにおける認知的記憶能力の喪失を特徴とする、請求項1081記載の使用。
[請求項1084]
認知的記憶能力の喪失を特徴とするアミロイド関連の状態に罹患している、動物、特に哺乳動物またはヒトの処置が、認知的記憶能力の増加をもたらす、請求項1081記載の使用。
[請求項1085]
認知的記憶能力の喪失を特徴とするアミロイド関連の状態に罹患している、動物、特に哺乳動物またはヒトの処置が、認知的記憶能力の完全な回復をもたらす、請求項1081記載の使用。
[請求項1086]
アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム・パーキンソン-認知症複合などの神経学的障害;ならびに、進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルトヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、および黄斑変性症を含む、その他の疾患などのアミロイド様タンパク質に基づくかまたはアミロイド様タンパク質と関連するその他の疾患も含むが、これらに限定されない、続発性アミロイドーシスおよび加齢に関係のあるアミロイドーシスを含む、アミロイド斑形成と関連する一群の疾患および障害である、アミロイドーシスの影響を防止するか、処置するか、または緩和する方法で使用するための、請求項1072〜1074のいずれか一項記載の薬学的組成物または請求項1075〜1080のいずれか一項記載の混合物の調製のための方法であって、本発明の抗体を薬学的に許容される形態で製剤化する工程を含む、方法。
[請求項1087]
抗体が組成物中に治療的有効量で含まれる、請求項1086記載の方法。
[請求項1088]
アミロイド関連の疾患または状態がアルツハイマー病である、請求項1086記載の方法。
[請求項1089]
アミロイド関連の状態が、動物、特に哺乳動物またはヒトにおける認知的記憶能力の喪失を特徴とする、請求項1086記載の方法。
[請求項1090]
認知的記憶能力の喪失を特徴とするアミロイド関連の状態に罹患している、動物、特に哺乳動物またはヒトの処置が、認知的記憶能力の増加をもたらす、請求項1086記載の方法。
[請求項1091]
アミロイド関連の状態が、動物、特に哺乳動物またはヒトにおける認知的記憶能力を損なうことを特徴とする、請求項1086記載の方法。
[請求項1092]
認知的記憶能力の喪失を特徴とするアミロイド関連の状態に罹患している、動物、特に哺乳動物またはヒトの処置が、認知的記憶能力の逆転および、特に、認知的記憶能力の完全な回復をもたらす、請求項1086記載の方法。
[請求項1093]
アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム・パーキンソン-認知症複合などの神経学的障害;ならびに、進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルトヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、および黄斑変性症を含む、その他の疾患などのアミロイド様タンパク質に基づくかまたはアミロイド様タンパク質と関連するその他の疾患も含むが、これらに限定されない、続発性アミロイドーシスおよび加齢に関係のあるアミロイドーシスを含む、アミロイド斑形成と関連する一群の疾患および障害である、アミロイドーシスの影響を、請求項1001〜1060のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片、および/あるいはその機能性部分、および/あるいは請求項1072〜1074のいずれか一項記載の薬学的組成物、あるいは請求項1075〜1080のいずれか一項記載の混合物をそのような障害によって冒された動物またはヒトに投与することによって、防止するか、処置するか、または緩和する方法であって、前記抗体を治療的有効量で投与する工程を含む、方法。
[請求項1094]
アミロイド関連の疾患または状態がアルツハイマー病である、請求項1093記載の方法。
[請求項1095]
アミロイド関連の状態が、動物、特に哺乳動物またはヒトにおける認知的記憶能力の喪失を特徴とする、請求項1093記載の方法。
[請求項1096]
認知的記憶能力の喪失を特徴とするアミロイド関連の状態に罹患している、動物、特に哺乳動物またはヒトの処置が、認知的記憶能力の保持の増加をもたらす、請求項1093記載の方法。
[請求項1097]
アミロイド関連の状態が、動物、特に哺乳動物またはヒトにおける認知的記憶能力を損なうことを特徴とする、請求項1093記載の方法。
[請求項1098]
認知的記憶能力の喪失を特徴とするアミロイド関連の状態に罹患している、動物、特に哺乳動物またはヒトの処置が、認知的記憶能力の完全な回復をもたらす、請求項1093記載の方法。
[請求項1099]
患者におけるアミロイド関連の疾患または状態の診断の方法であって、
(a)アミロイドタンパク質を含むことが疑われる試料または特定の身体部分もしくは身体部位を、請求項1001〜1060のいずれか一項記載の抗体と接触させる工程;
(b)該抗体をアミロイドタンパク質に結合させる工程;
(c)該タンパク質に結合した抗体を検出する工程;および
(d)抗体結合の有無と、試料または特定の身体部分もしくは部位におけるアミロイドタンパク質の有無とを相関付ける工程
を含む、方法。
[請求項1100]
組織および/または体液中のアミロイド形成的な斑負荷(burden)の程度を決定する方法であって、
(a)調査中の組織および/または体液を代表する試料を得る工程;
(b)請求項1001〜1060のいずれか一項記載の抗体を用いて、アミロイドタンパク質の存在について該試料を検査する工程;
(c)該タンパク質に結合した抗体の量を決定する工程;ならびに
(d)該組織および/または体液中の斑負荷を計算する工程
を含む、方法。
[請求項1101]
請求項1001〜1060のいずれか一項記載の抗体を含む、アミロイドに関連する疾患および状態の検出および診断のための検査キット。
[請求項1102]
本発明による1つまたは複数の抗体を入れた容器、および
免疫学的複合体の有無がアミロイドタンパク質の有無と相関するように、アミロイドタンパク質に結合させて免疫学的複合体を形成させかつ該免疫学的複合体の形成を検出する目的のために抗体を用いるための、取扱説明書
を含む、請求項1101記載の検査キット。
[請求項1103]
ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域、および
軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4のアミノ酸配列を持つ少なくとも1つのCDR
を含む、軽鎖可変領域(LCVR)。
[請求項1104]
ヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域、および
重鎖可変領域(HCVR)のCDR2を表す配列番号:2およびCDR3を表す配列番号:3からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ少なくとも1つのCDR
を含む、重鎖可変領域(HCVR)。
[請求項1105]
ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域、および
重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ少なくとも2つのCDR
を含む、重鎖可変領域(HCVR)。
[請求項1106]
ヒト由来または霊長類由来の軽鎖フレームワーク領域、および
軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6からなる配列の群より選択されるアミノ酸配列を持つ少なくとも2つのCDR
を含む、軽鎖可変領域(LCVR)。
[請求項1107]
ヒト由来または霊長類由来の重鎖フレームワーク領域、および
特に上記で示した順序で、重鎖可変領域(HCVR)のCDR1を表す配列番号:1、CDR2を表す配列番号:2、およびCDR3を表す配列番号:3のアミノ酸配列を持つCDR
を含む、重鎖可変領域(HCVR)。
[請求項1108]
組み込まれたヒト由来または霊長類由来の軽鎖フレームワーク領域、および
軽鎖可変領域(LCVR)の、CDR1を表す配列番号:4、CDR2を表す配列番号:5、およびCDR3を表す配列番号:6のアミノ酸配列を特に上記で示した順序で持つCDR
を含む、軽鎖可変領域(LCVR)。
[請求項1109]
配列番号:12の軽鎖可変領域(LCVR)。
[請求項1110]
配列番号:12の軽鎖可変領域(LCVR)を含む、ヒト化抗体またはその断片を提供する。
[請求項1111]
配列番号:13に示すシグナル配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)。
[請求項1112]
配列番号:13に示すシグナル配列を含む完全な軽鎖可変領域(LCVR)を含む、ヒト化抗体またはその断片。
[請求項1113]
配列番号:12の軽鎖可変領域(LCVR)および配列番号:14の軽鎖定常領域を含む、ヒト化抗体またはその断片。
[請求項1114]
配列番号:13の完全な軽鎖可変領域(LCVR)および配列番号:14の軽鎖定常領域を含む、ヒト化抗体またはその断片。
[請求項1115]
配列番号:15の重鎖可変領域(HCVR)。
[請求項1116]
配列番号:15の重鎖可変領域(HCVR)を含む、ヒト化抗体またはその断片。
[請求項1117]
配列番号:16に示すシグナル配列を含む重鎖可変領域(HCVR)。
[請求項1118]
配列番号:16に示すシグナル配列を含む完全な重鎖可変領域(HCVR)を含む、ヒト化抗体またはその断片。
[請求項1119]
配列番号:15の重鎖可変領域(HCVR)および配列番号:17の重鎖定常領域を含む、ヒト化抗体またはその断片。
[請求項1120]
配列番号:16の重鎖可変領域(HCVR)および配列番号:17の重鎖定常領域を含む、ヒト化抗体またはその断片。
[請求項1121]
Aβ単量体に実質的に結合するが、好ましくは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)との顕著な交差反応性を少しも示さない、前記請求項のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1122]
少なくとも約1×10
-7 M〜少なくとも約1×10
-12 Mの、特に少なくとも約1×10
-8 M〜少なくとも約1×10
-11 Mの、より特には少なくとも約1×10
-8 M〜少なくとも約1×10
-10 Mの、さらにより特には少なくとも約1×10
-8 M〜少なくとも約5×10
-8 Mの範囲のK
Dによって表される結合親和性でAβ単量体に結合するが、好ましくは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)との顕著な交差反応性を少しも示さない、請求項1122記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1123]
Aβの繊維、フィブリル、またはフィラメントに実質的に結合するが、好ましくは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)との顕著な交差反応性を少しも示さない、前記請求項のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1124]
少なくとも約1×10
-7 M〜少なくとも約1×10
-12 Mの、特に少なくとも約1×10
-8 M〜少なくとも約1×10
-11 Mの、より特には少なくとも約1×10
-9 M〜少なくとも約1×10
-10 Mの、さらにより特には少なくとも約2×10
-9 M〜少なくとも約8×10
-9 Mの範囲内のK
Dによって表される結合親和性でAβ繊維、フィブリル、またはフィラメントに結合するが、好ましくは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)との顕著な交差反応性を少しも示さない、請求項1123記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1125]
可溶性重合体アミロイドβに実質的に結合するが、好ましくは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)との顕著な交差反応性を少しも示さない、前記請求項のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1126]
Aβ単量体、および/もしくはAβの繊維、フィブリル、もしくはフィラメント、および/または可溶性重合体アミロイドβに実質的に結合するが、好ましくは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)との顕著な交差反応性を少しも示さない、前記請求項のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1127]
結合親和性が昇順に増加する、請求項1126記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1128]
Aβ繊維、フィブリル、またはフィラメントに対して、Aβ単量体に対する結合親和性よりも少なくとも10倍、特に少なくとも15倍、より特には少なくとも20倍、とりわけ少なくとも25倍高い結合親和性を示す、請求項1127記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1129]
哺乳動物の、特にヒトの脳内のAβ斑を含む凝集したAβに実質的に結合するが、好ましくはアミロイド前駆体タンパク質(APP)との顕著な交差反応性を少しも示さない、前記請求項のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1130]
哺乳動物の、特にヒトの脳内のAβ単量体を含む可溶性の繊維に実質的に結合するが、好ましくはアミロイド前駆体タンパク質(APP)との顕著な交差反応性を少しも示さない、前記請求項のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1131]
立体構造の変換を誘導することで繊維を可溶性の重合体形態および単量体形態まで脱凝集させ、かつ組織および/または体液中、特に脳内の、脱凝集および可溶化したAβ形態に結合しかつ該Aβ形態を安定化することによって、その可溶性の状態のAβと凝集した状態のAβとの間の平衡をその可溶性の形態へと移動させることができる、前記請求項のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1132]
α-ヘリックスおよび/またはランダムコイル立体構造、特にランダムコイル立体構造、さらにより特には分子中の所与の場所における、とりわけAβタンパク質のTyr 10およびVal 12の環境におけるランダムコイル立体構造へのβ-シート立体構造の転移を誘導することができる抗体またはその断片であって、β-シート立体構造を代償にしたランダムコイル立体構造の増加、および前形成された高分子重合体アミロイドのフィブリルまたはフィラメントの向上した可溶化をもたらす、請求項1131記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1133]
β-シート立体構造の減少が、緩衝剤中でインキュベートしたそれぞれの前形成されたアミロイド重合体のフィブリルまたはフィラメント(対照)と比較して、少なくとも30%、特に少なくとも35%、およびより特には少なくとも40%、およびそれより多くにまで達する、請求項1132記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1134]
単量体形態を含む、重合体でかつあまり凝集していない可溶性のAβタンパク質種に実質的に結合し、したがってこれらのAβタンパク質種の末梢での除去および異化を修飾しかつそれらの毒性作用を低下させる、請求項1131記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1135]
マウスドナー抗体から、特にマウス抗体ACI-01-Ab7C2から得られる少なくとも1つ、特に2つ、およびより特には3つのCDR領域を組み入れた少なくとも1つの軽鎖もしくはその断片または少なくとも1つの重鎖もしくはその断片を含む抗体またはその断片であって、Aβ抗原に対して、マウスドナー抗体の親和性よりも少なくとも5倍、特に少なくとも8倍、より特には少なくとも10倍、とりわけ少なくとも15倍高い親和性を有する、前記請求項のいずれか一項記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1136]
ヒト化抗体またはその断片が、脳内の凝集したアミロイドβと必ずしも結合するわけではない、請求項1083〜1085のいずれか一項記載の使用。
[請求項1137]
ヒト化抗体またはその断片が、脳内の凝集したアミロイドβと必ずしも結合するわけではない、請求項1089〜1091のいずれか一項記載の方法。
[請求項1138]
認知的記憶能力の喪失を特徴とするアミロイド関連の状態に罹患している、動物、特に哺乳動物またはヒトの処置が、認知的記憶能力の保持をもたらす、請求項1081記載の使用。
[請求項1139]
認知的記憶能力の喪失を特徴とするアミロイド関連の状態に罹患している、動物、特に哺乳動物またはヒトの処置が、認知的記憶能力の保持をもたらす、請求項1086記載の方法。
[請求項1140]
可溶性の状態のAβと凝集した状態のAβとの間の平衡をその可溶性の形態へと移動させることができる、前記請求項のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1141]
繊維を可溶性の重合体形態および単量体形態まで脱凝集させることによって、可溶性の状態のAβと凝集した状態のAβとの間の平衡をその可溶性の形態へと移動させることができる、前記請求項のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1142]
ヒト組織および/または体液中、特に脳内のAβには実質的に結合しないが、立体構造の変換を誘導することで繊維を可溶性の重合体形態および単量体形態まで脱凝集させ、かつ組織および/または体液中、特に脳内の、脱凝集および可溶化したAβ形態に結合しかつ該Aβ形態を安定化することによって、その可溶性の状態のAβと凝集した状態のAβとの間の平衡をその可溶性の形態へと移動させることができる、前記請求項のいずれか一項記載のキメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片。
[請求項1143]
マウス抗体の結合親和性よりも少なくとも5倍、10倍、特に少なくとも15倍、より特には少なくとも20倍、とりわけ少なくとも100倍高い結合親和性を示す、前記請求項のいずれか一項記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1144]
抗体またはその断片の親和性、特異性、および安定性がグリコシル化プロファイルの変化によって修飾されている、前記請求項のいずれか一項記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1145]
配列番号:27に挙げた可変領域を含む、抗体またはその変異体。
[請求項1146]
請求項1145記載の抗体を発現する細胞株。
[請求項1147]
配列番号:29に挙げた可変領域を含む、抗体遺伝子またはその変異体。
[請求項1148]
請求項1147記載の抗体を発現する細胞株。
[請求項1149]
hC2抗体を前形成されたβ-アミロイド繊維と相互作用させる工程を含む、前形成されたβ-アミロイド繊維を脱凝集させるための方法。
[請求項1150]
Aβ誘導性の分解からニューロンを保護する、前記請求項のいずれか一項記載のヒト化抗体またはその断片。
[請求項1151]
前記請求項のいずれか一項記載のヒト化抗体またはその断片の有効量で、ニューロンを処置する工程を含む、Aβ誘導性のニューロン分解を防止する方法。
[請求項1152]
Aβオリゴマーへの曝露によるニューロンの変性を防止するための医薬の調製用の、前記請求項のいずれか一項記載のヒト化抗体またはその断片の使用。
【発明を実施するための形態】
【0210】
定義
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書で用いる場合、互換的であり、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸で構成される生体分子を意味するものと定義される。
【0211】
本明細書で用いる「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」という用語は、「1つまたは複数の」を意味し、文脈が不適切である場合を除き、複数を含むものと定義される。
【0212】
「アミロイドまたはアミロイド様タンパク質によって引き起こされるかまたはアミロイドまたはアミロイド様タンパク質と関連する疾患および障害」という言葉には、単量体、フィブリル、もしくは重合体の状態か、または3つの任意の組み合わせのアミロイド様タンパク質の存在または活性によって引き起こされる疾患および障害が含まれるが、これらに限定されない。そのような疾患および障害には、アミロイドーシス、内分泌腫瘍、および黄斑変性症が含まれるが、これらに限定されない。
【0213】
「アミロイドーシス」という用語は、例えば、軽度の認知的障害(impairment)(MCI)などの認知的記憶能力の喪失を特徴とする疾患または状態を含む、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム・パーキンソン-認知症複合などの神経学的障害;ならびに進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルトヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、封入体筋炎(IBM)、成人発症型糖尿病、および老人心アミロイドーシス;ならびに黄斑変性症、ドルーゼ関連視神経症、およびβ-アミロイド堆積による白内障を含む、様々な眼疾患などのアミロイド様タンパク質に基づくかまたはアミロイド様タンパク質と関連するその他の疾患も含むが、これらに限定されない、疾患などの続発性アミロイドーシスおよび加齢に関係のあるアミロイドーシスを含むが、これらに限定されない、アミロイド斑形成と関連する一群の疾患および障害を指す。
【0214】
本明細書で用いる「検出すること」または「検出された」という用語は、免疫化学的方法または組織学的方法といった生体分子の検出のための公知の方法を用いることを意味し、調査中の生体分子の存在または濃度を質的または量的に決定することを指す。
【0215】
「重合体可溶性アミロイド」は、哺乳動物もしくはヒトの身体で、より特には脳で可溶性であるアミロイドペプチドの、またはアミロイド様ペプチドの、または修飾もしくは切断されたアミロイドペプチドの、またはオリゴマー構造もしくは重合体構造を形成するアミロイドペプチドのその他の誘導体の複数の凝集した単量体を指し、特に哺乳動物もしくはヒトの身体で、より特には脳で可溶性である、アミロイドβ(Aβ)のまたは修飾もしくは切断されたアミロイドβ(Aβ)ペプチドの、もしくはその誘導体の、複数の凝集した単量体を指す。
【0216】
「アミロイドβ、Aβまたはβ-アミロイド」とは、当技術分野で認知されている用語であり、アミロイドβタンパク質およびペプチド、アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)、ならびにそれらの修飾物、断片および任意の機能的等価物のことを指す。特に、本明細書で用いるアミロイドβは、APPのタンパク質分解性切断によって生成される任意の断片、とりわけ、Aβ
1-38、Aβ
1-39、Aβ
1-40、Aβ
1-41 Aβ
1-42、およびAβ
1-43を含むがこれらに限定されない、アミロイド病態に関与するか、またはそれと関連のある断片のことを意味する。
【0217】
上述したアミロイドβペプチドの構造および配列は当業者に周知であり、前記ペプチドを生産する方法またはそれらを脳および他の組織から抽出する方法は、例えば、Glenner and Wong, Biochem Biophys Res Comm 129, 885-890 (1984)に記載されている。さらに、アミロイドβペプチドは様々な形態で市販されてもいる。
【0218】
「単離された」とは、天然の状態で存在する構成要素の少なくとも一部を含まない生体分子のことを意味する。
【0219】
本明細書で用いる「抗体」または「抗体」という用語は、当技術分野で認知されている用語であり、公知の抗原と結合する分子または分子の活性断片、特に免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち、抗原と特異的に結合する結合部位を含む分子を指すものと解釈される。免疫グロブリンは、免疫グロブリンのカッパおよびラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、およびミュー定常領域遺伝子だけでなく、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子によっても実質的にコードされる1つまたは複数のポリペプチドを含むタンパク質である。軽鎖はカッパまたはラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、それぞれ、順に免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを規定する、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンとして分類される。重鎖のサブクラスも公知である。例えば、ヒトにおけるIgG重鎖は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4サブクラスのいずれかであり得る。本発明による免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子の任意のクラス(IgG、IgM、IgD、IgE、IgA、およびIgY)またはサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)であり得る。
【0220】
本明細書で用いる場合、抗体に関して「特異的に結合する」とは、それが構造的に異なる抗原に結合するよりも大きい親和性で、抗体がその標的抗原に結合するということを意味する。
【0221】
典型的な免疫グロブリン構造単位は、テトラマーを含むことが公知である。各々のテトラマーは、2つの同一のポリペプチド鎖の対から構成され、各々の対は1つの「軽」鎖(約25 kD)および1つの「重」鎖(約50〜70 kD)を有する。各々の鎖のN末端は、抗原認識に主として関与する約100〜110またはそれより多くのアミノ酸の可変領域を規定する。可変軽鎖(V
L)および可変重鎖(V
H)という用語は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖を指す。
【0222】
抗体は、全長の未変化の抗体として、または様々なペプチダーゼもしくは化学物質による消化によって産生される多くの十分に特徴付けられた断片として存在する。したがって、例えば、ペプシンは、抗体をヒンジ領域中のジスルフィド連結より下で消化し、それ自体ジスルフィド結合によってV
H-CH
1に接続された軽鎖であるFabのダイマーである、F(ab')
2を産生する。F(ab')
2を穏和な条件下で還元してヒンジ領域中のジスルフィド連結を破壊し、それによってF(ab')
2ダイマーをFab'単量体に変換してもよい。Fab'単量体は、本質的にヒンジ領域の一部を持つFab断片である(その他の抗体断片のより詳細な説明については、Fundamental Immunology, W. E. Paul編, Raven Press, N.Y.(1993)参照)。様々な抗体断片が、未変化の抗体の消化の観点から規定されているが、当業者は、種々の抗体断片のいずれかを、化学的にかまたは組換えDNA方法論を利用することによるかのいずれかでデノボ合成し得るということを正しく理解すると考えられる。したがって、本明細書で用いる場合の、抗体という用語には、抗体全体の修飾によって産生されるかもしくはデノボ合成されるかのいずれかの抗体断片、または組換えDNA方法論を用いることによって得られる抗体および断片も含まれる。
【0223】
「抗体」は、本発明の範囲において、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、サル化抗体、ヒト抗体およびヒト化抗体、ならびにそれらの活性断片を含むものとする。公知の抗原と結合する分子の活性断片の例には、Fab免疫グロブリン発現ライブラリーの産物、ならびに上述した抗体および断片の任意のもののエピトープ結合性断片を含む、分離された軽鎖および重鎖、Fab、Fab/c、Fv、Fab'、およびF(ab')
2断片が含まれる。
【0224】
これらの活性断片は、数多くの手法によって本発明の抗体から導き出すことができる。例えば、モノクローナル抗体をペプシンなどの酵素で切断して、HPLCゲル濾過に供することができる。続いて、Fab断片を含む適切な画分を収集して、膜濾過によって濃縮することなどができる。抗体の活性断片の単離のための一般的な手法に関するさらなる記述については、例えば、Khaw, B. A. et al. J. Nucl. Med. 23:1011-1019 (1982);Rousseaux et al. Methods Enzymology, 121:663-69, Academic Press, 1986を参照のこと。
【0225】
組換えによって作製された抗体は、従来の全長抗体、タンパク質分解による消化由来の公知の活性抗体断片、Fvまたは単鎖Fv(scFV)などの独特の活性抗体断片、ドメイン欠失抗体などであってもよい。Fv抗体は、サイズが約50 Kdでありかつ軽鎖および重鎖の可変領域を含む。単鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、直接的に接続されているかまたはペプチドをコードするリンカーによって接続されているかのいずれかのVHおよびVLコード配列を含む核酸から発現し得る、共有結合的に連結されたVH::VLヘテロダイマーである。Huston, et al. (1988) Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883を参照されたい。抗体V領域由来の、自然に凝集されているが化学的に分離されている軽および重ポリペプチド鎖を、抗原結合部位と実質的に同様の3次元構造に折り畳まれると考えられるscFv分子に変換するための多くの構造。例えば、米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号、および同第4,956,778号を参照されたい。
【0226】
結合部位とは、抗原結合に関与する抗体分子の部分を指す。抗原結合部位は、重(「H」)鎖および軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。抗体可変領域は、「フレームワーク領域」(FR)として知られるより保存された隣接するストレッチの間に介在している「超可変領域」または「相補性決定領域」(CDR)と称される3つの極めて相違するストレッチを含む。抗体分子中で、軽鎖の3つの超可変領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)ならびに重鎖の3つの超可変領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)は、互いに対して3次元空間で抗原結合表面またはポケットを形成するように配置されている。それゆえに、抗体結合部位は、抗体のCDRを構成するアミノ酸および結合部位ポケットを構成する任意のフレームワーク残基に相当する。
【0227】
結合部位を構成する特定の抗体中のアミノ酸残基の正体を、当技術分野において周知の方法を用いて決定することができる。例えば、抗体CDRを、Kabatらによって最初に定義された超可変領域として同定してもよい(「Sequences of Proteins of Immunological Interest」, E. Kabat et al., U.S. Department of Health and Human Services; Johnson, G and Wu, TT (2001) Kabat Database and its applications: future directions. Nucleic Acids Research, 29: 205-206; http://immuno.bme.nwa.edu参照)。また、CDRの位置を、Chothiaおよびその他によって最初に記載された構造的ループ構造として同定してもよい(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196, 901 (1987), Chothia et al., Nature 342, 877 (1989)、およびTramontano et al., J. Mol. Biol. 215, 175 (1990)参照)。その他の方法として、KabatとChothiaの折衷でかつOxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(現在はAccelrys)を用いて得られる「AbM定義」またはMacallumら(「Antibody-antigen interactions: contact analysis and binding site topography」, J Mol Biol. 1996 Oct 11;262(5):732-45)によるCDRの「接触定義」が含まれる。以下の章は、様々な公知の定義に基づいてCDRを同定する。
【0228】
配列のみから抗体中のCDRを同定し得る一般的な指針は以下の通りである。
【0229】
LCDR1:
開始 - 残基24前後。
前の残基は常にCysである。
後ろの残基は常にTrpである。典型的には、TRPに続いてTYR-GLNであるが、LEU-GLN、PHE-GLN、またはTYR-LEUも続き得る。
長さは10〜17残基である。
【0230】
LCDR2:
開始 - L1の末端の16残基後ろ。
前の配列は通常、ILE-TYRであるが、VAL-TYR、ILE-LYS、またはILE-PHEである場合もある。
長さは通常7残基である。
【0231】
LCDR3:
開始 - 通常L2の末端の33残基後ろ。
前の残基はCysである。
後ろの残基はPHE-GLY-X-GLYである。
長さは7〜11残基である。
【0232】
HCDR1:
開始 - 残基26(CYSの4残基後ろ)前後[Chothia / AbM定義]に。Kabat定義は5残基後ろで始まる。
前の配列はCYS-X-X-Xである。
後ろの残基はTRPで、典型的にはVALがその後に続くが、ILE、またはALAも続く。
長さはAbM定義によると10〜12残基であるが、Chothia 定義は最後の4残基を除外する。
【0233】
HCDR2:
開始 - Kabat/AbM定義のCDR-H1の末端の15残基後ろ。
前の配列は典型的には、LEU-GLU-TRP-ILE-GLY(配列番号:1)であるが、多くの変形があり得る。
後ろの残基はLYS/ARG-LEU/ILE/VAL/PHE/THR/ALA-THR/SER/ILE/ALAである。
長さは、Kabat定義によると16〜19残基である(AbM定義は7残基より早く終わる)。
【0234】
HCDR3:
開始 - CDR-H2の末端の33残基後ろ(CYSの2残基後ろ)。
前の配列はCYS-X-X(典型的にはCYS-ALA-ARG)である。
後ろの配列は、TRP-GLY-X-GLYである。
長さは、3〜25残基である。
【0235】
CDRの外側にあるが、それでもやはり結合部位の裏打ちの一部である側鎖を有する(すなわち、それが結合部位を通じた連結に利用可能である)ことによって結合部位の一部を構成する特定の抗体中のアミノ酸残基の正体を、分子モデリングおよびX線結晶学などの当技術分野において周知の方法を用いて決定することができる。例えば、Riechmann et al., (1988) Nature, 332:;323-327を参照されたい。
【0236】
キメラ抗体は、抗体の1つまたは複数の領域がある種の動物由来であり、かつ抗体の1つまたは複数の領域が異なる種の動物由来である抗体である。好ましいキメラ抗体は、霊長類免疫グロブリン由来の領域を含む抗体である。ヒトの臨床使用のためのキメラ抗体は典型的には、ヒト由来の定常領域と共に、非ヒト動物、例えば、齧歯類由来の可変領域を有すると理解されている。対称的に、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン由来の可変フレームワーク領域の大部分または全ておよびヒト免疫グロブリン由来の定常領域全てと共に、非ヒト抗体由来のCDRを用いている。ヒトキメラ抗体は典型的には、齧歯類由来の可変領域を有すると理解されている。典型的なヒトキメラ抗体は、齧歯類抗体に由来する重鎖および軽鎖両方の可変領域と共に、ヒト重鎖定常領域およびヒト軽鎖定常領域を有する。キメラ抗体は、ヒト定常領域のネイティブなアミノ酸配列およびネイティブな齧歯類可変領域配列に対する若干の変化を含んでもよい。キメラ抗体およびヒト化抗体を、CDR接合アプローチ(例えば、米国特許第5,843,708号;同第6,180,370号;同第5,693,762号;同第5,585,089号;同第5,530,101号参照)、鎖シャッフリング戦略(例えば、米国特許第5,565,332号;Rader et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1998) 95:8910-8915参照)、分子モデリング戦略(米国特許第5,639,641号参照)などを含む当技術分野において周知の方法で調製してもよい。
【0237】
2つの鎖の抗体の場合に本明細書で用いるような「ヒト化抗体」は、少なくとも1つの鎖がヒト化されている抗体である。ヒト化抗体鎖は、フレームワーク領域の1つまたは複数がヒトである可変領域を有する。単鎖であるヒト化抗体は、フレームワーク領域の1つまたは複数がヒトである可変領域を、鎖が有する抗体である。ヒト化抗体鎖またはその断片の可変領域の非ヒト部分は、非ヒト源、特に典型的には齧歯類起源の、非ヒト抗体に由来する。ヒト化抗体に対する非ヒトの寄与は、典型的には、1つ(または複数)のヒト免疫グロブリンに由来するフレームワーク領域中に散在する少なくとも1つのCDR領域の形態でもたらされる。さらに、フレームワーク支持残基を改変し、結合親和性を保存してもよい。
【0238】
ヒト化抗体はさらに、定常領域(例えば、軽鎖の場合には、少なくとも1つの定常領域またはその部分、および重鎖の場合には、好ましくは3つの定常領域)を含んでもよい。ヒト化抗体の定常領域は、存在する場合には、通常ヒトである。
【0239】
「ヒト化抗体」を入手するための方法は当業者に周知である(例えば、Queen et al., Proc. Natl Acad Sci USA, 86:10029-10032 (1989), Hodgson et al., Bio/Technoloy, 9:421 (1991)を参照)。
【0240】
「ヒト化抗体」を、例えばウサギおよびマウスなどの大型動物における親和性が成熟したヒト様ポリクローナル抗体の生産を可能にする、新規な遺伝子操作アプローチによって入手することもできる。例えば、米国特許第6,632,976号を参照されたい。
【0241】
本明細書で用いる場合の定常領域(CR)という用語は、免疫グロブリンの定常領域遺伝子を指す。定常領域遺伝子は、エフェクター機能を付与する抗体分子の部分をコードする。キメラヒト抗体およびヒト化抗体について、典型的には非ヒト(例えば、マウス)の定常領域を、ヒト定常領域によって置換する。本キメラ抗体またはヒト化抗体の定常領域は典型的には、ヒト免疫グロブリンに由来する。重鎖定常領域を5つのアイソタイプ:アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、またはミューのいずれかより選択することができる。さらに、(重鎖のIgGサブクラスなどの)様々なサブクラスの重鎖は、異なるエフェクター機能に関与し、したがって所望の重鎖定常領域を選ぶことによって、所望のエフェクター機能を持つ抗体を産生することができる。本発明の範囲内で使用し得る定常領域は、ガンマ1(IgG1)、特にガンマ1(IgG1)アイソタイプ、ガンマ3(IgG3)、およびとりわけガンマ4(IgG4)のFc領域である。軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ型、特にカッパ型であり得る。ある態様において、軽鎖定常領域は、ヒトカッパ定常鎖であり(Heiter et al. (1980) Cell 22:197-207)かつ重定常鎖は、ヒトIgG4定常鎖である。
【0242】
「モノクローナル抗体」という用語も、当技術分野でよく認知されており、単一のクローン化された抗体産生細胞の産物である抗体のことを指す。モノクローナル抗体は典型的には、通常の短寿命の抗体産生性B細胞を、癌細胞(時には「不死」細胞と呼ばれる)などの急速増殖性細胞と融合させることによって作製される。その結果得られるハイブリッド細胞またはハイブリドーマは、急速に増加して、抗体を産生するクローンを作り出す。
【0243】
本発明の目的において、「モノクローナル抗体」は、完全な単クローン性にはまだ達していない母クローン(mother clone)によって産生される抗体も含むものと解釈されるべきである。
【0244】
「機能的に等価な抗体」は、β-アミロイドタンパク質に対する、特にAβ
1-42タンパク質に対する、より特にはAβ
1-42タンパク質の16-21エピトープ領域に対する結合特異性、インビトロでの免疫反応性、Aβ
1-42単量体の高分子重合体フィブリルへの凝集の阻害および/または前形成されたAβ
1-42重合体フィブリルの脱凝集、および/またはβ-シート破壊特性、ならびに予防的または治療的に投与された場合に、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム・パーキンソン-認知症複合などの神経学的障害;ならびに進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルトヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、および黄斑変性症を含む、その他の疾患などのアミロイド様タンパク質に基づくかまたはアミロイド様タンパク質と関連するその他の疾患も含むが、これらに限定されない、続発性アミロイドーシスおよび加齢に関係のあるアミロイドーシスを含む、アミロイド斑形成と関連する一群の疾患および障害であるアミロイドーシスの影響を緩和することを含む、上で言及しかつ本明細書で記載した抗体と少なくとも1つの主な機能的特性を実質的に共有する抗体を指すことが本発明の範囲内で理解される。抗体は、IgG、IgMもしくはIgAなどの任意のクラス、またはIgG1、IgG2aなどの任意のサブクラス、および本明細書に上述したかまたは当技術分野で公知である他のサブクラスのもの、特にIgG4クラスのものであってよい。さらに、抗体をファージディスプレイなどの任意の方法によって生産すること、または細菌、昆虫、哺乳動物、もしくはヒト化抗体のように所望の特性を備える抗体を産生する他の種類の細胞もしくは細胞株を含む、任意の生物もしくは細胞株において産生させることもできる。抗体をまた、異なる種からのFab部分およびFc領域を組み合わせることによって形成させることもできる。
【0245】
使用する場合の「ハイブリダイズする」という用語は、従来のハイブリダイゼーション条件、好ましくは5×SSPE、1% SDS、1×デンハルト溶液を溶液として用い、かつ/またはハイブリダイゼーション温度が35℃〜70℃、好ましくは65℃であるハイブリダイゼーション条件を指す。ハイブリダイゼーション後、洗浄を好ましくは最初2×SSC、1% SDSで、その後0.2×SSCで35℃〜70℃の温度で、好ましくは65℃で実行する(SSPE、SSC、およびデンハルト溶液の定義に関しては、Sambrook et al、前に引用された場所、参照)。例えば、Sambrook et al、前記で記載されたようなストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が特に好ましい。特に好ましいストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、例えば、ハイブリダイゼーションおよび洗浄が、上記で示したような65℃で生じる場合に存在する。例えば、ハイブリダイゼーションおよび洗浄が45℃で実行される、ストリンジェントでないハイブリダイゼーション条件は、あまり好ましくなく、かつ35℃で実行されるストリンジェントでないハイブリダイゼーション条件は、さらにあまり好ましくない。
【0246】
2つの配列間の「相同性」は、配列同一性によって決定される。互いに比較しようとする2つの配列の長さが異なるならば、配列同一性は好ましくは、長い方の配列のヌクレオチド残基と同一である短い方の配列のヌクレオチド残基のパーセンテージに関係する。配列同一性は、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix(登録商標), Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive Madison, WI 53711)などのコンピュータプログラムの使用によって慣例的に決定することができる。Bestfitは、2つの配列間で最も高い配列同一性を有するセグメントを見つけ出すために、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2 (1981), 482-489の局所相同性アルゴリズムを利用する。ある特定の配列が本発明の参照配列に対して例えば95%の同一性を有するか否かを判定するために、Bestfitまたは別の配列アラインメントプログラムを用いる場合には、パラメータは好ましくは、一致度(percentage of identity)が参照配列の全長にわたって計算され、参照配列中のヌクレオチドの総数の最大で5%の相同性ギャップが許容されるように調整される。Bestfitを用いる場合には、いわゆる随意的パラメータは好ましくはそのプリセット(「デフォルト」)値のままにする。所定の配列と本発明の上記の配列との間の比較において認められる偏差は、例えば、付加、欠失、置換、挿入または組換えに起因し得る。そのような配列比較を、好ましくは、プログラム「fasta20u66」(バージョン2.0u66, September 1998、William R. PearsonおよびUniversity of Virginiaによる;W.R. Pearson (1990), Methods in Enzymology 183, 63-98, 添付の例およびhttp://workbench.sdsc.edu/も参照のこと)を用いて行うこともできる。この目的のために、「デフォルト」パラメータセッティングが用いられてもよい。
【0247】
本発明による抗体は、(多価の場合に)同一なその結合部位の各々を有すると理解される、免疫グロブリンもしくは抗体であってもよく、または代わりになるものとして、「二重特異性抗体」もしくは「二重機能性抗体」であってもよい。
【0248】
「二重特異性抗体」または「二重機能性抗体」は、2つの異なる重/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工的なハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab'断片の連結を含む種々の方法で産生することができる。例えば、Songsivilai & Lachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315-321 (1990);Kostelny et al., J. Immunol. 148, 1547-1553(1992)を参照されたい。
【0249】
「断片」という用語は、未変化のまたは完全な抗体または抗体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含む、抗体または抗体鎖の一部または部分を指す。断片は、未変化のまたは完全な抗体または抗体鎖の、化学的または酵素的な処置によって得ることができる。断片は、組換え手段によって得ることもできる。例示的な断片には、Fab、Fab'、F(ab')2、Fabc、および/またはFv断片が含まれる。「抗原結合断片」という用語は、抗原に結合するか、または未変化の抗体と(すなわち、それらが由来した未変化の抗体と)抗原結合(すなわち、特異的結合)を競合する、免疫グロブリンまたは抗体のポリペプチド断片を指す。
【0250】
結合断片を、組換えDNA技術によるか、または未変化の免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的な切断によって産生する。結合断片には、Fab、Fab'、F(ab')
2、Fabc、Fv、単鎖、および単鎖抗体が含まれる。
【0251】
「断片」は、別のポリペプチドの、アミノ酸配列の少なくとも5つの連続的なアミノ酸残基、少なくとも10の連続的なアミノ酸残基、少なくとも15の連続的なアミノ酸残基、少なくとも20の連続的なアミノ酸残基、少なくとも25の連続的なアミノ酸残基、少なくとも40の連続的なアミノ酸残基、少なくとも50の連続的なアミノ酸残基、少なくとも60の連続的なアミノ酸残基、少なくとも70の連続的なアミノ酸残基、少なくとも80の連続的なアミノ酸残基、少なくとも90の連続的なアミノ酸残基、少なくとも100の連続的なアミノ酸残基、少なくとも125の連続的なアミノ酸残基、少なくとも150の連続的なアミノ酸残基、少なくとも175の連続的なアミノ酸残基、少なくとも200の連続的なアミノ酸残基、または少なくとも250の連続的なアミノ酸残基のアミノ酸配列を含む、ペプチドまたはポリペプチドも指す。具体的な態様において、ポリペプチドの断片は、ポリペプチドの少なくとも1つの機能を保持する。
【0252】
「抗原」という用語は、抗体に結合することができる実体またはその断片を指す。免疫原は、生物、特に動物、より特にはヒトを含む哺乳動物で免疫応答を誘発することができる抗原を指す。抗原という用語には、(接触しているかまたは抗原中にあり抗原性または抗原決定基に関与する接触を支持するのに重要な役割を果たしている)抗原の一部を指す、抗原決定基またはエピトープとして知られる領域が含まれる。
【0253】
本明細書で用いる場合、「可溶性」という用語は、水性溶液中に部分的または完全に溶解することを意味する。
【0254】
同じく本明細書で用いる場合、「免疫原の」という用語は、免疫原の抗原に対して向けられる、抗体、T細胞および他の反応性免疫細胞の産生を誘発する物質のことを意味する。
【0255】
免疫応答が起こるのは、個体が、投与された本発明の免疫原性組成物に対して十分な抗体、T細胞および他の反応性免疫細胞を産生して、処置しようとする障害が和らいだり緩和されたりする場合である。
【0256】
本明細書で用いる場合の免疫原性という用語は、レシピエントに投与された場合に免疫応答(液性または細胞性)を誘発する抗原の能力の大きさを指す。本発明は、本ヒトキメラ抗体またはヒト化抗体の免疫原性を低下させるアプローチに関係する。
【0257】
低下した免疫原性のヒト化抗体とは、もとの抗体、例えば、マウス抗体と比べて低下した免疫原性を示すヒト化抗体を指す。
【0258】
もとの抗体の結合特性を実質的に保持するヒト化抗体とは、そのようなヒト化抗体を産生するのに用いたもとの抗体によって認識される抗原に特異的に結合する能力を保持するヒト化抗体を指す。好ましくは、ヒト化抗体は、もとの抗体と同じかまたは実質的に同じ抗原結合親和性および結合活性(avidity)を示すと考えられる。理想的には、抗体の親和性は、もとの抗体の親和性の10%未満ではなく、より好ましくは約30%未満ではないと考えられ、最も好ましくは、親和性は、もとの抗体の50%未満ではないと考えられる。抗原結合親和性をアッセイするための方法は、当技術分野において周知であり、かつ最大半減結合アッセイ法、競合アッセイ法、およびスキャッチャード解析を含む。好適な抗原結合アッセイ法を本出願で記載する。
【0259】
「復帰突然変異」とは、ヒト化抗体をコードするヌクレオチド配列に導入された突然変異であり、本突然変異は、もとの抗体(例えば、ドナー抗体、例えば、マウス抗体)中のアミノ酸に対応するアミノ酸を結果的に生じる。結果として得られる抗体の潜在的免疫原性を同時に最小化しつつ、もとの抗体の結合特性を実質的に保持するために、もとの抗体に由来する、あるフレームワーク残基を本発明の抗体のヒト化の間ずっと保持してもよい。本発明のある態様において、もとの抗体はマウス起源である。例えば、復帰突然変異によって、ヒトのフレームワーク残基がもとのマウス残基に変化する。復帰突然変異し得るフレームワーク残基の例として、カノニカル(canonical)残基、界面充填残基、結合部位に近い稀なもとの残基、(CDRが基礎を置くプラットフォームを形成する)「バーニアゾーン(Vernier Zone)」中の残基(Foote & Winter, 1992, J. Mol. Biol. 224, 487-499)、およびCDR3 H3に近い残基が含まれるが、これらに限定されない。
【0260】
本明細書で用いる場合、「保存的変化」は、ネイティブなタンパク質と比較した場合に、実質的に立体構造または抗原性が中立であり、それぞれ、突然変異体ポリペプチドの三次構造の最小限の変化をもたらすか、または突然変異体ポリペプチドの抗原決定基の最小限の変化をもたらす改変を指す。本発明の抗体および抗体断片に言及する場合、保存的変化は、抗体を本受容体に結合することができないようにしないアミノ酸置換を意味する。当業者は、立体構造および抗原性が中立である高い可能性を維持しつつ、どのアミノ酸置換を行うことができるかを予測することができると考えられる。そのような指針は、例えば、Berzofsky, (1985) Science 229:932-940およびBowie et al. (1990) Science 247:1306-1310で提供されている。考慮されるべき、立体構造および抗原性の中立性を維持する可能性に影響を及ぼす要因として、(a)疎水性残基はタンパク質の内部に位置する可能性がより高いので、疎水性アミノ酸の置換が抗原性に影響を及ぼす可能性はあまり高くないということ;(b)置換されたアミノ酸はネイティブなアミノ酸を構造的に模倣するので、物理化学的に類似したアミノ酸の置換が立体構造に影響を及ぼす可能性はあまり高くないということ;および(c)そのような保存によって、アミノ酸配列が機能的な重要性を有し得るということが示唆されるので、進化的に保存された配列の改変は立体構造に悪影響を及ぼす可能性が高いということが含まれるが、これらに限定されない。当業者は、微小補体固定法(microcomplement fixation methods)(Wasserman et al. (1961) J. Immunol. 87:290-295; Levine et al. (1967) Meth. Enzymol. 11:928-936)などの、しかしこれらに限定されない、周知のアッセイ法を用いて、および立体構造依存的なモノクローナル抗体を用いる結合検討(Lewis et al. (1983) Biochem. 22:948-954)を通じて、タンパク質立体構造の改変を評価することができると考えられる。
【0261】
さらに、「治療的有効量」という用語は、ヒトまたは動物に投与された場合に、ヒトまたは動物で治療的効果を結果的にもたらすのに十分である、抗体の量を指す。有効量は、日常的な手順に従って当業者により容易に決定される。
【0262】
本明細書で用いる場合、「処置する」、「防止する(prevent)」、「防止する(preventing)」、および「防止(prevention)」という用語は、予防的または治療的薬剤の投与が結果としてもたらす、対象における障害の1つまたは複数の症状の再発または発症の防止を意味する。
【0263】
ヒト化抗体の構築
本発明は、本明細書に含まれる特定の態様に関する以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解されると思われる。本発明をその特定の態様の具体的な詳細を参照しながら説明しているが、このような詳細は本発明の範囲を制限するものとみなされるべきではない。
【0264】
本発明は、様々なβ-アミロイド抗原由来の特異的エピトープを特異的に認識しかつ該エピトープに特異的に結合する能力を有する、極めて特異的でかつ極めて効果的な抗体を含む新規の方法および組成物を提供する。本発明の教示により可能になる抗体は、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム・パーキンソン-認知症複合などの神経学的障害;ならびに進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルトヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、およびほんの一例を挙げると、黄斑変性症を含む、その他の疾患などのアミロイド様タンパク質に基づくかまたはアミロイド様タンパク質と関連するその他の疾患も含むが、これらに限定されない、続発性アミロイドーシスおよび加齢に関係のあるアミロイドーシスを含む、アミロイド斑形成と関連する一群の疾患および障害であるアミロイドーシスの処置に特に有用である。
【0265】
本発明による完全にヒト化されているかまたは再形成されている可変領域を、非ヒト、特に齧歯類由来のCDR、とりわけヒト由来フレームワーク配列中に埋め込まれた(本出願の全体を通じて「mC2」と名付けられかつ2005年12月1日にBraunschweig, Mascheroder Weg 1B, 38124 BranuschweigのDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に、ブダペスト条約の条項および所与のアクセッション番号:DSM ACC2750の下で寄託されている)マウス抗体ACI-01-Ab7C2に由来するCDRを含む可変領域アミノ酸配列をまず設計することによって、本発明の範囲内で創出してもよい。本発明による抗体から得てもよい、非ヒト、特に齧歯類由来のCDRは、所望の特異性を提供する。したがって、これらの残基は、本質的に不変の再形成された可変領域の設計に含まれるべきである。したがって、任意の修飾を最小限に制限し、かつ抗体の特異性および親和性の変化を念入りに注意すべきである。他方、フレームワーク残基は、理論的には、任意のヒト可変領域から得ることができる。
【0266】
許容される親和性または向上すらした親和性を示す再形成された抗体を創出するために、再形成された可変領域を創出しかつ抗体親和性を保持するのに等しく好適である、ヒトフレームワーク配列を選ぶべきである。
【0267】
この目的を達成するために、最適戦略が開発された。フレームワーク配列はCDRを抗原との相互作用のためにその正しい空間的配向を保つよう機能するということ、およびフレームワーク残基は時に抗原結合に関与することさえできるということが知られているので、この戦略は、抗体再形成に用いられるヒトフレームワーク配列を、非ヒト、特に齧歯類由来の可変領域と最も相同であるかまたは類似しているヒト可変領域から得ることによって、3次元構造に負の影響をもたらし得る変化を最小化することを目指す。これは、親和性が再形成された抗体中で保持される可能性を最大化するとも考えられる。
【0268】
その最も単純なレベルで、「最適」戦略は、ドナー齧歯類V領域を全ての公知のヒトV領域アミノ酸配列と比較し、かつその後ヒト化実行用のアクセプターフレームワーク領域を提供するために最も相同なものを選択する工程を伴う。実際には、考慮すべき、かつアクセプターフレームワーク領域の最終的な選択に影響し得る幾つかのその他の因子がある。この点に関して、結果として得られる再形成された抗体の親和性を最大化しようとする任意の実験研究の前に、分子モデリング予測を用いてもよい。本質的に、モデリングの目的は、再形成された抗体で最高の親和性を得るために、最も相同なヒトフレームワークの(もしあるとすれば)どの鍵残基を齧歯類と同じように残すべきかということを予測することである。
【0269】
本発明のある態様において、CDRは、マウスモノクローナル抗体から、特にその開示が参照により本明細書に組み入れられる、2005年12月12日に出願された同時係属中の出願であるEP 05 02 7092.5で記載された(本出願の全体を通じて「mC2」と名付けられている)マウスモノクローナル抗体ACI-O1-Ab7C2から得られる。
【0270】
マウスモノクローナル抗体ACI-O1-Ab7C2(本出願の全体を通じて、「mC2」と名付けられかつヒト化C2抗体についてはhC2と名付けられている)を産生する、ハイブリドーマ細胞FP-12H3-C2は、2005年12月1日に、同時係属中の出願であるEP05027092.5において、Braunschweig, Mascheroder Weg 1B, 38124 BraunschweigのDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に、ブダペスト条約の条項および所与のアクセッション番号:DSM ACC2750の下で寄託された。
【0271】
マウス抗体を、例えばパルミチン酸などの疎水性部分、もしくは例えばポリエチレングリコール(PEG)などの親水性部分、または両方の組み合わせにより修飾された、β-アミロイドペプチド、特にβ-アミロイドペプチドAβ
1-15、Aβ
1-16、およびAβ
1-16(Δ14)のアミノ酸配列に対応する抗原ペプチドを含む超分子抗原構築物に対して作製してもよく、疎水性部分および親水性部分はそれぞれ、例えば、リジン、グルタミン酸、およびシステイン、または疎水性部分および親水性部分をペプチド断片に共役するための接続装置として機能することができる任意のその他の好適なアミノ酸もしくはアミノ酸類似体などの少なくとも1つ、特に1つまたは2つのアミノ酸を通じて、抗原ペプチドの末端の各々に共有結合している。PEGを親水性部分として用いる場合には、遊離のPEG末端を、ホスファチジルエタノールアミン、または例えば抗原構築物をリポソームの二重層中に埋め込むための固定要素として機能するのに好適な任意のその他の化合物に、共有結合させる。
【0272】
特に、マウス抗体を、例えばポリエチレングリコール(PEG)などの親水性部分で修飾されたβ-アミロイドペプチドのアミノ酸配列に対応する抗原ペプチドを含む超分子抗原構築物に対して作製してもよく、親水性部分は、例えばリジン、グルタミン酸、およびシステイン、または疎水性部分および親水性部分をペプチド断片に共役するための接続装置として機能することができる任意のその他の好適なアミノ酸もしくはアミノ酸類似体などの少なくとも1つ、特に1つまたは2つのアミノ酸を通じて、抗原ペプチドの末端の各々に共有結合している。PEGを親水性部分として用いる場合には、遊離のPEG末端を、ホスファチジルエタノールアミン、または例えば抗原構築物をリポソームの二重層中に埋め込むための、固定要素として機能するのに好適な任意のその他の化合物に、共有結合させる。
【0273】
本発明の態様において、可変領域中に、1つまたは複数のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中に埋め込まれかつヒトまたは霊長類源抗体に由来する定常領域と組み合わされた非ヒト起源のCDRの少なくとも1つを含み、β-アミロイド単量体ペプチドを特異的に認識しかつβ-アミロイド単量体ペプチドに特異的に結合することができる、キメラ抗体もしくはその断片またはヒト化抗体もしくはその断片を提供する。
【0274】
CDRは、抗原に結合する可能性が最も高い残基を含みかつ再形成された抗体中で保持されなければならない。 CDRは、Kabat et al, Sequence of Proteins of Immunological Interest, 第5版, The United States Department of Health and Human Services, The United States Government Printing Office, 1991による配列によって定義される。CDRは、カノニカルな部類(Chothia et al, 1989 Nature, 342, 877-883)に分類されており、その場合、鍵残基がかなりの程度までCDRループの構造的な立体構造を決定する。これらの残基はほとんど必ず再形成された抗体中で保持される。
【0275】
本発明によるヒト化抗体を調製するための過程で、C2重鎖および軽鎖可変領域(V
HおよびV
K)のアミノ酸配列を、NCBIおよびKabatデータベース中の齧歯類抗体のV
HおよびV
K配列と比較する。
【0276】
C2 V
Kに対して最も近似して一致するマウス生殖系列遺伝子は、bbl、Locus MMU231201である(Schable et al, 1999)。比較により、2つのアミノ酸がこの生殖系列配列とは異なっており、両方ともCDRL1内に位置することが明らかになった。類似しているが、同一ではない配列を持つ成熟マウス抗体を見出すことが可能である。幾つかは、同一のCDRL2および同一のCDRL3を有するが、C2のCDRL1は独特であるように思われる。ヒト生殖系列V
K配列との比較により、サブグループV
KII由来の遺伝子がC2 V
Kに対して最高に一致するものであるということが示されている(Cox et al, 1994)。したがって、C2 V
KをKabatサブグループMuV
KII配列に割り当てることができる。
【0277】
DPK15をヒトJ領域HuJ
K1と共に選択し、ヒト化V
K用のアクセプターフレームワーク配列を提供してもよい。
【0278】
可変軽鎖と可変重鎖との間の境界面の残基が規定されている(Chothia et al, 1985 J. Mol. Biol., 186, 651-663)。これらは通常、再形成された抗体中で保持されている。マウスC2 V
Kの位置87のPheは境界面では稀であり、境界面ではTyrがV
KIIサブグループでより一般的である。このことは、このフレームワーク残基が抗体活性に重要であり得るということを示している。Tyr 87は、ヒト生殖系列およびヒト化C2VK中に存在する。
【0279】
したがって、C2HuVK1が、DPK 15およびヒトJ
K1由来のフレームワークを持つマウスC2 V
K CDRからなるように、ヒト化V
K配列を設計してもよい。本発明の具体的な態様において、マウス残基を、ヒトフレームワーク領域中、位置45および/または87で置換してもよい。マウスモノクローナル抗体から、特にマウス抗体ACI-O1-Ab7C2から得られるCDR2領域において、アミノ酸置換をKabat位置50および/または53で行ってもよい。残基45は、CDRの立体構造を支持するのに関与する可能性がある。残基 87は、V
HおよびV
Kドメインの境界面に位置する。それゆえに、これらの残基は、抗体結合の維持に決定的に重要な意味を持つ可能性がある。
【0280】
C2 V
H AFに対して最も近似して一致するマウス生殖系列遺伝子は、VH7183、Locus AF120466である(Langdon et al, 2000)。ヒト生殖系列V
H配列との比較により、サブグループV
HIII由来の遺伝子がC2 V
Hに対して最高に一致するものであるということが示されている。C2 V
H AFをKabatサブグループMuV
HIIIDに割り当てることができる。配列DP54をヒトJ領域HuJ
H6と共に選択し、ヒト化V
H用のアクセプターフレームワーク配列を提供することができる。
【0281】
比較により、C2 VH配列とヒトアクセプター生殖系列配列DP54およびJ
H6,の間に9つのアミノ酸の違いがあり、大部分がCDRH2の中に位置することが示されている。同一もしくは類似の(1残基異なる)CDRH1を持つかまたは類似のCDRH2(1残基異なる)を持つ成熟マウス抗体が見出されるが、3つ全てのCDRがC2 V
H AFと同一である抗体はない。C2抗体のCDRH3は異常に短く、わずか3残基からなる。しかしながら、この長さのCDRH3を持つその他の抗体がデータベース中で見出される。C2 V
Hの残基47は、より一般的なTrpではなく、Leuであり、残基94は通常のArgではなくSerであり、これらのフレームワーク残基が抗体活性に有用であり得るということを示している。
【0282】
様々なヒト化V
H配列を設計してもよい。C2HuVH1は、DP54およびHuJ
H6由来のフレームワークを持つC2 V
H AF CDRからなる。本発明の具体的な態様において、マウス残基を、ヒトフレームワーク領域中、位置47もしくは94または両方で置換してもよい。フレームワーク2における残基47は、CDRおよびV
Kドメインの両方と接触する。残基 94は、CDRの立体構造を支持するのに関与する可能性がある。それゆえに、これらの残基は、抗体結合の維持に決定的に重要な意味を持つ可能性がある。
【0283】
ネイティブかまたは修飾されたヒト由来または霊長類由来フレームワーク領域中に埋め込まれた、ドナー抗体、例えばマウス抗体から得られる非ヒトCDRを含む、異なるHCVRおよびLCVR領域を設計してもよい。修飾は特に、それぞれのサブグループ中のこの位置でより一般的に見出される非ヒト残基、特にマウス残基によるかまたはそれぞれのサブグループ中のこの位置でより一般的に見出される残基と類似の特性を有する残基による、フレームワーク領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基の交換に関係してもよい。
【0284】
フレームワーク領域の修飾において、フレームワーク配列はCDRを抗原との相互作用のためにそれらの正しい空間的配向に保つよう機能し、かつそのフレームワーク残基は時に、抗原結合に関与することさえできる。本発明のある態様において、親和性が再形成された抗体中で保持される可能性を最大にするために、それらが齧歯類フレームワークの配列に最も類似するよう選択されたヒトフレームワーク配列をさらに適応させるための措置を講じる。
【0285】
したがって、ヒトフレームワーク領域中のマウス残基を置換してもよい。特に、マウス残基を、重鎖可変(HCVR)領域のヒトフレームワーク領域中、位置47もしくは94または両方で、および軽鎖可変(LCVR)領域のヒトフレームワーク領域中、位置45および/または87で置換してもよい。マウスモノクローナル抗体、特にマウス抗体ACI-01-Ab7C2から得られるCDR2領域において、アミノ酸置換をKabat位置50および/または53で行ってもよい。
【0286】
ヒトフレームワーク領域中の上で示した位置で見出される残基を、それぞれのサブグループ中のこの位置でより一般的に見出されるマウス残基と交換してもよい。特に、配列番号:15に示す重鎖可変領域のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中のKabat位置47のTrpを、Leuによって、または類似の特性を有しかつその置換によって実質的に立体構造もしくは抗原性が中立であり、突然変異体ポリペプチドの三次構造に最小限の変化をもたらすか、もしくは抗原決定基に最小限の変化をもたらす改変が生じるアミノ酸残基によって、置き換えてもよい。特に、配列番号:15に示す重鎖可変領域のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中のKabat位置47のTrpを、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、およびPheからなる群より選択されるアミノ酸によって、特にIleによってさらに置き換えてもよい。立体構造および抗原性が中立である代わりの保存的置換を企図してもよい。
【0287】
配列番号:15に示す重鎖可変領域のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中のKabat位置94のArgを、Serによって、または類似の特性を有しかつその置換によって実質的に立体構造もしくは抗原性が中立であり、突然変異体ポリペプチドの三次構造に最小限の変化をもたらすか、もしくは抗原決定基に最小限の変化をもたらす改変が生じるアミノ酸残基によって、置き換えてもよい。特に、配列番号:15に示す重鎖可変領域のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中のKabat位置94のArgを、Thrによって代わりに置き換えてもよい。
【0288】
本発明の別の態様において、両方の残基をヒト化抗体中で置き換えてもよい。
【0289】
配列番号:12に示す軽鎖可変領域のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中のKabat位置45のGlnを、Lysによって、または類似の特性を有しかつその置換によって実質的に立体構造もしくは抗原性が中立であり、突然変異体ポリペプチドの三次構造に最小限の変化をもたらすか、もしくは抗原決定基に最小限の変化をもたらす改変が生じるアミノ酸残基によって、置き換えてもよい。特に、配列番号:12に示す軽鎖可変領域のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中のKabat位置45のGlnを、Arg、Gln、およびAsnからなる群より選択されるアミノ酸によって、特にArgによって置き換えてもよい。
【0290】
配列番号:12に示す軽鎖可変領域のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中のKabat位置50のLeuを、Lysによって、または類似の特性を有しかつその置換によって実質的に立体構造もしくは抗原性が中立であり、突然変異体ポリペプチドの三次構造に最小限の変化をもたらすか、もしくは抗原決定基に最小限の変化をもたらす改変が生じるアミノ酸残基によって、置き換えてもよい。特に、配列番号:12に示す軽鎖可変領域のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中のKabat位置50のLeuを、Arg、Gln、およびAsnからなる群より選択されるアミノ酸によって、特にArgによって置き換えてもよい。
【0291】
配列番号:12に示す軽鎖可変領域のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中のKabat位置53のAsnを、HisおよびGlnによって、または類似の特性を有しかつその置換によって実質的に立体構造もしくは抗原性が中立であり、突然変異体ポリペプチドの三次構造に最小限の変化をもたらすか、もしくは抗原決定基に最小限の変化をもたらす改変が生じるアミノ酸残基によって、置き換えてもよい。特に、配列番号:12に示す軽鎖可変領域のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中のKabat位置53のAsnを、Gln、His、Lys、およびArgからなる群より選択されるアミノ酸によって置き換えてもよい。
【0292】
配列番号:12に示す軽鎖可変領域のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中のKabat位置87のThrを、Pheによって、または類似の特性を有しかつその置換によって実質的に立体構造もしくは抗原性が中立であり、突然変異体ポリペプチドの三次構造に最小限の変化をもたらすか、もしくは抗原決定基に最小限の変化をもたらす改変が生じるアミノ酸残基によって、置き換えてもよい。特に、配列番号:12に示す軽鎖可変領域のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中のKabat位置87のTyrを、Leu、Val、Ile、およびAlaからなる群より選択されるアミノ酸によって、特にLeuによって置き換えてもよい。
【0293】
1つまたは複数のヒト由来または霊長類由来のフレームワーク領域中に埋め込まれた非ヒト起源の少なくとも1つのCDRを含むように得られた可変領域を、次にヒトまたは霊長類が源の抗体に由来する定常領域と、特にヒトIgG4またはκの定常領域とそれぞれ組み合わせてもよい。IgG4定常領域を、例えばヒンジ領域中の位置228のセリンをプロリンに変化させることによって、修飾してもよい(HuIgG4 Ser-Pro)。この突然変異は、鎖間ジスルフィド結合を安定化し、かつネイティブなヒトIgG4調製物で起こり得る半分子の形成を防止する。IgG4定常領域を、配列番号:16に示す位置439の末端Lysの欠失によってさらに修飾してもよい。
【0294】
修飾された可変領域を、例えば、重複するPCR組換えなどの当技術分野において公知の方法で構築してもよい。キメラ抗体、C2 ChV
H AFおよびC2 ChV
K用の発現カセットを、フレームワーク領域の必要とされる配列への突然変異導入のための鋳型として用いてもよい。改変されるべき領域を包含する突然変異導入プライマー対の組を合成する。産生されるヒト化V
HおよびV
K発現カセットを、例えば、pUC19などの当技術分野において公知の適当なクローニングベクターにクローニングしてもよい。DNA配列全体が各々のV
HおよびV
Kについて正しいことを確認した後、修飾された重鎖および軽鎖のV領域遺伝子を、クローニングベクターから発現カセットとして切り出すことができる。これらを次に、それぞれヒトIgG4 Ser-Proまたはκの定常領域を含むpSVgptおよびpSVhygなどの適当な発現ベクターに移すことができる。
【0295】
発現ベクター
発現ベクターpSVgptは、pSV
2gpt(Mulligan and Berg, 1980)に基づいており、かつ細菌細胞での選択用のアンピシリン耐性遺伝子、哺乳動物細胞での選択用のgpt遺伝子、マウス重鎖免疫グロブリンエンハンサー領域、定常領域遺伝子をコードするゲノム配列、およびSV40ポリA配列を含む。発現用の重鎖可変領域をHindIII〜BamHI断片として挿入する。
【0296】
発現ベクターpSVhygは、細菌細胞での選択用のアンピシリン耐性遺伝子、哺乳動物細胞での選択用のhyg遺伝子、マウス重鎖免疫グロブリンエンハンサー領域、カッパ定常領域遺伝子をコードしかつカッパエンハンサーを含むゲノム配列、およびSV40ポリA配列を含む。発現用の軽鎖可変領域をHindIII〜BamHI断片として挿入する。
【0297】
DNA配列はその後、発現ベクター中のヒト化V
HおよびV
Kについて正しいことが確認されるべきである。
【0298】
抗体産生のために、ヒト化重鎖および軽鎖の発現ベクターを、例えば、NS0細胞などの当技術分野において公知の適当な産生細胞株に導入してもよい。発現ベクターの導入を、エレクトロポレーションを介するコトランスフェクション、または当技術分野において利用可能な任意のその他の好適な形質転換技術によって遂行してもよい。その後、抗体産生細胞株を選択しかつ増殖させ、かつヒト化抗体を精製することができる。その後、精製された抗体をSDS-PAGEなどの標準的技術によって解析することができる。
【0299】
向上した親和性、特異性、安定性を持つ抗体
マウスC2抗体のCDRL2配列(「KVSNRFS」)を、抗体活性に悪影響を及ぼすことなく少し修飾してもよい。保存的置換を、位置50におけるKとRの交換および位置53におけるNとSの交換によって行ってもよい。それゆえに、2つの代わりとなるCDRL2配列は、それぞれ「RVSNRFS」および「KVSSRFS」である。これらを、その他の変化を伴うことなく、それぞれC2 VK-RおよびC2 VK-SとしてマウスV
K配列に組み入れる。
【0300】
本明細書で前述した通りの本発明による抗体またはその断片の親和性、特異性、および安定性を、そのグリコシル化のプロファイルまたはパターンの変化によって修飾し、向上した治療的価値を結果的にもたらすことができる。
【0301】
このグリコシル化パターンの変化を達成するために、宿主細胞が、バイセクティング(bisecting)GlcNAcを持つ複合型のN結合型オリゴ糖を増加させる糖タンパク質を修飾する好ましい範囲の糖転移酵素活性を発現するように、宿主細胞を人工的に改変することができる。さらに、例えば完全な抗体分子、抗体断片、または免疫グロブリンのFc領域と等価な領域を含み、増強されたFc介在性の細胞性細胞毒性を有する融合タンパク質を含む、抗体などの糖タンパク質の修飾されたグリコフォームを得てもよい。
【0302】
修飾されたグリコシル化パターンを持つ抗体を得る方法は、当業者にとって公知であり、かつ例えば、EP1071700、US2005272128、Ferrara et al (2006) J Biol Chem 281(8), 5032-5036;Ferrara et al (2006) Biotechnology and Bioengineering 93(5), 851-861に記載されている。
【0303】
薬学的調製および投与
本発明による抗体、特に本発明によるモノクローナル抗体は、生理的に許容される製剤として調製することができ、かつ薬学的に許容される、担体、希釈剤、および/または賦形剤を公知の手法を用いて含んでもよい。例えば、任意の機能的に等価な抗体またはその機能性部分を含む、本発明によるおよび本明細書に前述した通りの抗体、特に任意の機能的に等価な抗体またはその機能性部分を含むモノクローナル抗体を、薬学的に許容される、担体、希釈剤および/または賦形剤と混ぜ合わせて、治療用組成物を形成させる。適した薬学的担体、希釈剤および/または賦形剤は当技術分野で周知であり、これには例えば、リン酸緩衝食塩水、水、水中油型エマルジョンなどのエマルジョン、様々な種類の湿潤剤、滅菌溶液などが含まれる。
【0304】
本発明による薬学的組成物の製剤化は、当技術分野で公知の標準的な方法に従って達成することができる。
【0305】
本発明の組成物を、適した薬学的有効量で固体、液体、またはエアロゾルの形態で対象に投与することができる。固体組成物の例には、丸剤、クリーム、および埋め込み型の投薬単位が含まれる。丸剤は経口的に投与することができる。治療用のクリームは局所的に投与することができる。埋め込み型の投薬単位は、局所的に、例えば腫瘍部位に投与することもでき、または治療用組成物の全身的な放出を目的として、例えば皮下に埋め込むことができる。液体組成物の例には、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内への注射に適した製剤、ならびに局所投与用および眼内投与用の製剤が含まれる。エアロゾル製剤の例には、肺への投与を目的とした吸入用製剤が含まれる。
【0306】
組成物を、標準的な投与経路によって投与することができる。一般に、組成物は、局所経路、経口経路、直腸内経路、鼻内経路、皮内経路、腹腔内経路、または非経口的な(例えば、静脈内、皮下もしくは筋肉内)経路で投与することができる。加えて、組成物を、送達が望まれる部位、例えば腫瘍部位の近傍に埋め込まれる重合体である生分解性重合体などの徐放性マトリックス中に組み入れることもできる。本方法は、単回投与、所定の間隔での反復投与、および所定の期間にわたる持続的投与を含む。
【0307】
本明細書で用いる場合、徐放性マトリックスは、酵素もしくは酸/塩基による加水分解によってまたは溶解によって分解する材料、通常は重合体でできたマトリックスである。このようなマトリックスは、身体内に挿入されると、酵素および体液の働きによる作用を受ける。徐放性マトリックスは望ましくは、リポソーム、ポリラクチド(ポリ乳酸)、ポリグリコリド(グリコール酸の重合体)、ポリラクチドコ-グリコリド(乳酸とグリコール酸の共重合体)、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリペプチド、ヒアルロン酸、コラーゲン、硫酸コンドロイチン、カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、多糖、核酸、ポリアミノ酸、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシンなどのアミノ酸、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドン、およびシリコーンなどの、生体適合性を有する材料から選択される。好ましい生分解性マトリックスは、ポリラクチド、ポリグリコリド、またはポリラクチドコ-グリコリド(乳酸とグリコール酸の共重合体)のうちいずれか1つのマトリックスである。
【0308】
組成物の用量が、例えば、処置される状態、用いる特定の組成物といった様々な要因、ならびに、患者の体重、サイズ、性別および全般的健康状態、体表面積、投与しようとする特定の化合物または組成物、同時に投与する他の薬剤および投与の経路といった他の臨床的因子に依存すると考えられることは、当業者には周知である。
【0309】
本組成物を、生物活性物質または化合物、特に酸化ストレスに対する化合物、抗アポトーシス性化合物、金属キレート剤、ピレンゼピンおよび代謝物などのDNA修復の阻害剤、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸(3APS)、1,3-プロパンジスルホネート(1,3PDS)、α-セクレターゼ活性化剤、β-およびγ-セクレターゼ阻害剤、タウタンパク質、神経伝達物質、β-シート破壊剤、アミロイドβを除去する/枯渇させる細胞成分の誘引剤、ピログルタミン酸化したアミロイドβ3-42を含むN末端切断型アミロイドβの阻害剤、抗炎症分子、例えば、クロザピン、ジプラシドン、リスペリドン、アリピプラゾール、もしくはオランザピンなどの「非定型抗精神病薬」、またはタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、および/もしくはガランタミンなどのコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)、M1アゴニスト、ならびに任意のアミロイドもしくはタウの修飾薬物を含むその他の薬物、ならびに例えば、ビタミンB12、システイン、アセチルコリンの前駆体、レシチン、コリン、ギンコビローバ(Ginkgo biloba)、アセチル-L-カルニチン、イデベノン、プロペントフィリン、もしくはキサンチン誘導体などの栄養補給剤からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含むその他の組成物と組み合わせて、本発明による抗体、ならびに、任意で、薬学的に許容される担体および/もしくは希釈剤および/もしくは賦形剤、ならびに疾患の処置用の手順と共に、投与してもよい。
【0310】
タンパク質性の薬学的活性物質は、1回の用量当たり1ng〜10mgの量で存在してよい。一般に、投与レジメンは、本発明による抗体が、0.1μg〜10mgの範囲、特に1.0μg〜1.0mgの範囲、より特に1.0μg〜100μgの範囲にあるべきであり、これらの範囲内にある全ての個々の数も同じく本発明の一部である。投与が連続注入によって行われる場合には、より適切な用量は、体重1kgおよび1時間当たり0.01μg〜10mgの範囲にあってよく、これらの範囲内にある全ての個々の数も同じく本発明の一部である。
【0311】
投与は一般に非経口的、例えば静脈内であると考えられる。非経口的投与のための調製物には、滅菌された水性または非水性溶液、懸濁液およびエマルジョンが含まれる。非水性溶媒には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機酸エステルが含まれるが、それらに限定されない。水性溶媒を、食塩液および緩衝媒質を含む、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液からなる群から選んでもよい。非経口用媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース液、デキストロース、および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または固定油が含まれる。静脈内用媒体には、液体および栄養分の補充液、電解質補充液(リンゲルデキストロース液を基にしたものなど)などが含まれる。また、例えば、抗菌薬、抗酸化物質、キレート剤および不活性ガスなどの、保存料が存在してもよい。
【0312】
薬学的組成物はさらに、例えば、血清アルブミンまたは免疫グロブリン、特にヒト起源のものなどのタンパク質性担体を含んでもよい。本発明の薬学的組成物中に、さらなる生物活性物質が、その意図した用途に応じて存在してもよい。
【0313】
結合標的が脳に位置する場合、本発明のある種の態様は、血液脳関門を横断する抗体またはその活性断片を提供する。ある種の神経変性疾患は、血液脳関門の透過性の増加と関連しており、そのために抗体またはその活性断片を脳に容易に導入させることができる。血液脳関門が無傷のままである場合、物理的方法、脂質に基づく方法、ならびに受容体およびチャネルに基づく方法を含むが、これらに限定されない、血液脳関門を横断して分子を輸送するための幾つかの当技術分野において公知のアプローチが存在する。
【0314】
血液脳関門を横断して抗体またはその活性断片を輸送する物理的方法として、血液脳関門を完全に回避するもの、または血液脳関門に開口部を創出することによるものが含まれるが、これらに限定されない。回避法として、脳内への直接注射(例えば、Papanastassiou et al., Gene Therapy 9: 398-406(2002)参照)ならびに脳に送達装置を埋め込むこと(例えば、Gill et al., Nature Med. 9: 589-595 (2003);およびGliadel Wafers(商標), Guildford Pharmaceutical)などが含まれるが、これらに限定されない。関門に開口部を創出する方法として、超音波(例えば、米国特許出願公開第2002/0038086号参照)、浸透圧(例えば、高張マンニトールの投与によるもの(Neuwelt, E. A., Implication of the Blood-Brain Barrier and its Manipulation, Vols 1 & 2, Plenum Press, N. Y (1989)))、例えば、ブラジキニンまたは透過剤A-7による透過処理(例えば、米国特許第5,112,596号、同第5,268,164号、同第5,506,206号、および同第5,686,416号参照)、ならびに抗体または抗原結合断片をコードする遺伝子を含むベクターによる血液脳関門にまたがるニューロンのトランスフェクション(例えば、米国特許出願公開第2003/0083299号参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0315】
血液脳関門を横断して抗体またはその活性断片を輸送する脂質に基づく方法として、血液脳関門の血管内皮上の受容体に結合する抗体結合断片と共役しているリポソームの中に抗体またはその活性断片をカプセル化すること(例えば、米国特許出願公開第20020025313号参照)、および低密度リポタンパク質粒子(例えば、米国特許出願公開第20040204354号参照)またはアポリポタンパク質E(例えば、米国特許出願公開第20040131692号参照)の中に抗体またはその活性断片をコーティングすることが含まれるが、これらに限定されない。
【0316】
血液脳関門を横断して抗体またはその活性断片を輸送する受容体およびチャネルに基づく方法として、グルココルチコイド遮断薬を用いて血液脳関門の透過性を増加させること(例えば、米国特許出願公開第2002/0065259号、同第2003/0162695号、および同第2005/0124533号参照);カリウムチャネルを活性化すること(例えば、米国特許出願公開第2005/0089473号参照)、ABC薬物トランスポーターを阻害すること(例えば、米国特許出願公開第2003/0073713号参照);抗体をトランスフェリンでコーティングしかつ1つまたは複数のトランスフェリン受容体の活性を調節すること(例えば、米国特許出願公開第2003/0129186号参照)、ならびに抗体を陽イオン化すること(例えば、米国特許第5,004,697号)が含まれるが、これらに限定されない。
【0317】
検出/診断
さらなる態様において、本発明は、アミロイド関連の疾患または状態の検出および診断のための方法およびキットを提供する。これらの方法には、生物学的試料中かまたはインサイチュー状態で物質を検出または定量化するのに一般に用いられる、公知の免疫学的方法が含まれる。
【0318】
患者におけるアミロイド関連の疾患または状態の診断を、アミロイドタンパク質のエピトープに対するモノクローナル抗体またはその活性断片の免疫特異的結合を試料中またはインサイチューで検出することによって達成してもよい。それには、アミロイドタンパク質を含むことが疑われる試料または特定の身体部分もしくは身体部位を、アミロイドタンパク質のエピトープに結合する抗体と接触させる工程、抗体をアミロイドタンパク質と結合させ、免疫学的複合体を形成させる工程、免疫学的複合体の形成を検出する工程、および免疫学的複合体の有無を、試料または特定の身体部分もしくは部位におけるアミロイドタンパク質の有無と相関付ける工程が含まれる。
【0319】
アミロイド関連の疾患または状態の診断で使用し得る生物学的試料は、例えば、血清、血漿、唾液、胃の分泌物、粘液、脳脊髄液、リンパ液などの体液、または神経、脳、心臓、もしくは血管の組織などの、生物から得られる組織もしくは細胞試料である。試料中のアミロイドタンパク質の有無を決定するためには、当業者に公知の任意のイムノアッセイ法(Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1988 555-612)を参照)、例えば、検出用の二次試薬を用いる間接的検出法を利用するアッセイ法、ELISAおよび免疫沈降および凝集アッセイ法を用いることができる。これらのアッセイ法の詳細な記述は、例えば、MaertensおよびStuyverに対するWO96/13590、Zreinら(1998)およびWO96/29605に与えられている。
【0320】
インサイチュー診断のために、本発明による抗体とアミロイドタンパク質上のエピトープ領域との間の特異的結合が起こるように、当技術分野で公知の方法、例えば、静脈内、鼻腔内、腹腔内、大脳内、動脈内注射によって、抗体またはその任意の活性のある機能性部分を、診断しようとする生物に対して投与することができる。抗体/抗原複合体は、抗体またはその機能性断片に結合させた標識によって検出することができる。
【0321】
診断用途に用いられるイムノアッセイは、典型的には、標識された抗原、抗体または検出用の二次試薬に依拠する。これらのタンパク質または試薬は、酵素、放射性同位体、ならびにコロイド金およびラテックスビーズなどの着色粒子を含む蛍光性、発光性および発色性物質を含む、当業者に一般に知られた化合物で標識することができる。これらのうち、放射性同位体標識は、ほぼ全ての種類のアッセイ法に用いることができ、バリエーションも非常に多い。酵素結合による標識は、放射能を避けなければならない場合または迅速な結果が求められる場合に特に有用である。蛍光色素は、用いるために高価な装置を必要とするが、極めて感度の高い検出方法を提供する。これらのアッセイ法において有用な抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびアフィニティー精製されたポリクローナル抗体が含まれる。
【0322】
あるいは、プロテインAもしくはGまたは第2の抗体などの、免疫グロブリンに対する親和性のある標識物質との反応によって、抗体を間接的に標識してもよい。抗体を第2の物質と結合させ、抗体と結合した第2の物質に対する親和性のある標識した第3の物質を用いて検出してもよい。例えば、抗体をビオチンと結合させ、標識したアビジンまたはストレプトアビジンを用いて抗体-ビオチン結合物を検出してもよい。同様に、抗体をハプテンと結合させ、標識した抗ハプテン抗体を用いて抗体-ハプテン結合物を検出してもよい。
【0323】
当業者は、本発明に従って用い得る上記および他の適した標識を把握していると考えられる。抗体またはその断片に対するこれらの標識の結合は、当業者に公知の標準的な手法を用いて行うことができる。典型的な手法は、Kennedy, J. H., et al., 1976(Clin. Chim. Acta 70:1-31)およびSchurs, A. H. W. M., et al. 1977(Clin. Chim Acta 81:1-40)に記載されている。後者に言及されているカップリング法には、グルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸法、ジマレイミド法、および他のものがあり、これらは全て参照により本明細書に組み入れられる。
【0324】
現行のイムノアッセイ法は、方法において分析物の存在を検出するために、二重抗体法を利用している。抗体は、検出可能な標識で標識された第2の抗体との反応によって間接的に標識される。第2の抗体は、好ましくは、モノクローナル抗体の由来となった動物の抗体と結合するものである。言い換えると、モノクローナル抗体がマウス抗体である場合には、標識された第2の抗体は抗マウス抗体である。以下に述べるアッセイにモノクローナル抗体を用いる場合には、この標識は好ましくは抗体でコーティングされたビーズ、特に磁性ビーズである。本明細書に記載のイムノアッセイにポリクローナル抗体を用いる場合、標識は好ましくは、放射性、蛍光性または電気化学発光性の物質などの検出可能な分子である。
【0325】
分析物の存在の迅速判定用に適合化されているために迅速フォーマットシステムと呼ばれることが多い、代替的な二重抗体システムを、本発明の範囲において用いることもできる。本システムは、抗体と分析物との間の高い親和性を必要とする。本発明の1つの態様によれば、アミロイドタンパク質の存在は、それぞれがアミロイドタンパク質に対して特異的である一対の抗体を用いて決定される。前記抗体対の一方は本明細書で「検出用抗体」と呼ばれ、前記抗体対のもう一方は本明細書で「捕捉用抗体」と呼ばれる。本発明のモノクローナル抗体は、捕捉用抗体または検出用抗体のいずれとしても用いることができる。また、本発明のモノクローナル抗体を、単一のアッセイで捕捉用抗体および検出用抗体の両方として用いることもできる。このため、本発明の1つの態様は、生体液の試料中のアミロイドタンパク質を検出するために二重抗体サンドイッチ法を用いる。この方法では、分析物(アミロイドタンパク質)を検出用抗体と捕捉用抗体との間にサンドイッチ状に挟み、捕捉用抗体は固体支持体に不可逆的に固定化しておく。検出用抗体は、抗体-分析物サンドイッチの存在を同定するため、およびしたがって分析物の存在を同定するために、検出可能な標識を含む。
【0326】
例示的な固相物質には、ラジオイムノアッセイ法および酵素イムノアッセイ法の分野で周知であるマイクロタイタープレート、ポリスチレン製試験管、磁性ビーズ、プラスチックビーズ、またはガラス製ビーズおよびスライドが非限定的に含まれる。抗体を固相に対してカップリングさせるための方法も当業者に周知である。さらに最近では、ナイロン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、グラスファイバーおよび他の多孔性重合体などの様々な多孔性材料が固体支持体として用いられている。
【0327】
本発明はまた、上記に定義した組成物を含む、生物試料中のアミロイドタンパク質を検出するための診断キットにも関する。さらに、本発明は、上記に定義した組成物に加えて、上記に定義した検出試薬も含む、後者の診断キットにも関する。「診断キット」という用語は一般に、当技術分野で公知の任意の診断キットのことを指す。より具体的には、後者の用語は、Zreinら(1998)に記載された診断キットのことを指す。
【0328】
本発明による抗体を含む、アミロイドに関連した疾患および状態の検出および診断のための新規な免疫プローブおよび検査キットを提供することは、本発明のさらにもう1つの目的である。免疫プローブに関しては、抗体を、適したレポーター分子、例えば酵素または放射性核種に対して直接的または間接的に結合させる。検査キットは、本発明による1つまたは複数の抗体と、抗体をアミロイドタンパク質と結合させて免疫学的複合体を形成させ、かつ免疫学的複合体の有無がアミロイドタンパク質の有無と相関するように免疫学的複合体の形成を検出する目的に用いるための説明書とを収容する容器を含む。
【実施例】
【0329】
実施例
材料
マウスモノクローナル抗体ACI-O1-Ab7C2(本出願の全体を通じて、「mC2」と名付けられかつヒト化C2抗体についてはhC2と名付けられている)の開発および調製は、その開示が参照により本明細書に組み入れられる、2005年12月12日に出願された同時係属中の出願であるEP05 02 7092.5に記載されている。
【0330】
マウスモノクローナル抗体ACI-O1-Ab7C2(本出願の全体を通じて、「mC2」と名付けられかつヒト化C2抗体についてはhC2と名付けられている)を産生する、ハイブリドーマ細胞FP-12H3-C2は、2005年12月1日に、同時係属中の出願であるEP05027092.5において、Braunschweig, Mascheroder Weg 1B, 38124 BraunschweigのDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に、ブダペスト条約の条項および所与のアクセッション番号:DSM ACC2750の下で寄託された。
【0331】
ハイブリドーマ細胞を、10% 胎仔ウシ血清および抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で培養した。産生された抗体のアイソタイプを調べ、予期した通り、マウスIgG2b/カッパであることが分かった。
【0332】
アッセイ
アミロイドβに対する結合についてのELISAにより、C2抗体の効力の信頼できる測定がもたらされた。陽性対照抗体、マウスFP-12H3-C2抗体(Genovacロット番号:AK379/01)、および標準的なChemiconの抗体1560(ロット番号:0508008791)。
【0333】
ヒト定常領域の選択
免疫系動員は臨床抗体候補に望ましくないので、重鎖用に選択されたヒト定常領域は、ヒンジ領域中の位置228のセリンをプロリンに変化させるよう修飾された、ヒトIgG4(HuIgG4 Ser-Pro)であった。この突然変異は、鎖間ジスルフィド結合を安定化し、かつネイティブなヒトIgG4調製物で起こり得る半分子の形成を防止する。産生細胞株から発現された抗体はまた、末端リジンが取り除かれていると考えられる。ヒト定常領域HuIgG4 Ser-Proおよびヒトカッパの配列をそれぞれ、配列番号:17および14に示す。
【0334】
実施例1 抗体可変領域のクローニングおよびシークエンシング
トータルRNAを、3×10
6個のハイブリドーマ細胞(T175フラスコ1つ)からQiagen RNeasyミニキット(カタログ番号:74104)を用いて調製した。RNAを50μL 水に溶出し、1.2%アガロースゲルで調べた。細胞由来の馴化培地を保持し、試料を抗体活性アッセイ法で検査するために用いた。
【0335】
V
HおよびV
K cDNAを、マウスIgGおよびκの定常鎖プライマーで逆転写酵素を用いて調製した。第一鎖cDNAを、多くの組のシグナル配列プライマーを用いるPCRで増幅させた。増幅されたDNAをゲル精製し、ベクターpGem(登録商標)T Easy(Promega)にクローニングした。得られたV
HおよびV
Kクローンを期待される大きさの挿入についてPCRでスクリーニングし、選択されたクローンのDNA配列を自動化DNAシークエンシングで決定した。配列中の相補性決定領域(CDR)の場所を、その他の抗体配列(Kabat EA et al., 1991)を参照して決定した。抗体可変領域についてのKabatの付番規則を、本出願の全体を通じて用いており;それゆえに、残基番号は厳密な直鎖状の番号とは異なる場合がある。
【0336】
mC2 V
KについてのDNA配列および推定されるアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号:29および27に示す。4つのクローンがこの同一の生産的配列を生じた。ハイブリドーマ融合パートナーから生じる非生産的で異常なV
K配列も、多くのクローンで見出された。
【0337】
mC2 V
Hについて、2つの異なる生産的配列を単離した。mC2 V
H AF配列(配列番号:30参照)は、合計29クローンで見出され、個々のクローンで14個の1塩基対変化があった。mC2 V
H B配列は、合計8クローンで見出された。これらのうちの5つが主要配列を示し、その他の3クローンはこれに対する変異であった。これらの類似のV
H B配列はPCR増幅の人工産物として生じたという可能性がある。非生産的で異常なV
HもC2ハイブリドーマから得られており、欠陥のあるV-D-J接続に起因する。
【0338】
どちらが正しい活性mC2 V
Hであるかを決定するために、2つのキメラ抗体を2つの異なるV
H配列、AFおよびB、を用いて調製し、mC2 V
Kと組み合わせ、正しい抗体活性について検査した。
【0339】
実施例2 キメラ抗体遺伝子の構築
その最も一般的形態のヒトキメラ抗体は、マウス(またはその他の非ヒト)可変領域に連結されたヒト定常領域からなる。キメラ抗体は、第一に正しい可変領域が同定されているかどうかという確認のために、第二にヒト化された抗体または人工的に作製された抗体と同じエフェクター機能を持ちかつ同じ二次検出試薬を利用する、抗原結合アッセイ法における対照抗体としての使用のために、非常に有用なツールを提供し、また抗体の特定の標的に関するヒト定常領域の薬物動態およびその他の特性を検討するのに用いてもよい。
【0340】
発現ベクターpSVgpt中でHuIgG4(Ser-Pro)定常領域に連結されたmC2 V
H AFまたはmC2 V
H B可変領域からなる、2つのキメラ重鎖発現ベクターを構築した。これは、pSV
2gpt(Mulligan and Berg, 1980)に基づいており、かつ細菌細胞での選択用のアンピシリン耐性遺伝子、哺乳動物細胞での選択用のgpt遺伝子、マウス重鎖免疫グロブリンエンハンサー領域、定常領域遺伝子をコードするゲノム配列、およびSV40ポリA配列を含む。発現用の重鎖可変領域をHindIII〜BamHI断片として挿入する。
【0341】
発現ベクターpSVhyg(Hieter PA et al, 1980)中でヒトCカッパ定常領域に連結されたC2 VKからなるキメラ軽鎖ベクターを構築した。pSVhygには、細菌細胞での選択用のアンピシリン耐性遺伝子、哺乳動物細胞での選択用のhyg遺伝子、マウス重鎖免疫グロブリンエンハンサー領域、カッパ定常領域遺伝子をコードしかつカッパエンハンサーを含むゲノム配列、およびSV40ポリA配列を含む。発現用の軽鎖可変領域をHindIII〜BamHI断片として挿入する。
【0342】
マウスC2 VHおよびVK配列用の発現カセットを、ベクターVH-PCR1およびVK-PCR1を鋳型として用いて(Riechmann et al., 1988)、リーダーシグナルペプチド、リーダーイントロン、およびマウス免疫グロブリンプロモーターを含む5'隣接配列、ならびにスプライス部位およびイントロン配列を含む3'隣接配列の付加によって構築した。キメラ発現ベクター中のVHおよびVKについて、DNA配列が正しいことを確認した。発現カセット中のVHおよびVK 遺伝子のDNAおよびアミノ酸配列を、
図1および2に示す。
【0343】
実施例3 キメラ抗体の発現
3.1 安定細胞株における発現
抗体発現用の宿主細胞株は、European Collection of Animal Cell Cultures, Porton UK(ECACC番号85110503)から入手した、免疫グロブリンを産生しないマウスミエローマであるNS0であった。重鎖および軽鎖の発現ベクターを、エレクトロポレーションでNS0細胞にコトランスフェクトした。gpt遺伝子を発現するコロニーを、10%胎仔ウシ血清(FBS)、0.8 μg/ml ミコフェノール酸、および250 μg/ml キサンチンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で選択した。トランスフェクトされた細胞クローンを、ヒト抗体の産生についてヒトIgG用のELISAでスクリーニングした。抗体を分泌する細胞株を増殖させ、最も多く産生するものを選択しかつ液体窒素中に沈めて凍結した。各々の抗体についての最高の産生細胞株を、上記と同じだが、FBSを5%しか含まない培地中で増殖させた。キメラ抗体をProsep(登録商標)-A(Bioprocessing Ltd)を用いて精製した。濃度をヒトIgGκ抗体用のELISAで決定した。抗体をSDS-PAGEでも解析した。
【0344】
3.2 キメラ抗体の一過性発現
異なるキメラ抗体の検査を捗らせるために、一過性発現を用いて、検査用の組換え抗体を含む少量の細胞上清を速やかに産生した。mC2 V
HおよびV
K発現カセットを、一過性発現用のpcDNA3.1(Invitrogen)に基づくベクターに移した。重鎖ベクターには、ヒトIgG定常領域が含まれた。軽鎖ベクターには、ヒトカッパ定常領域が含まれた。mC2 V
H AFおよびmC2 V
H Bの両方を、mC2 V
Kと共に、Lipofectamine 2000試薬(Invitrogenカタログ番号:11668)を用いて製造業者によって供給されたプロトコルに従って、ヒト胎児腎臓(HEK 298)細胞にトランスフェクトした。馴化培地を細胞からトランスフェクション3日後に採取した。産生された抗体の量をヒトIgGκ抗体用のELISAで決定した。
【0345】
実施例4 キメラC2抗体の活性
4.1 一過性トランスフェクションによって産生されたキメラC2抗体の活性
2つの異なるキメラ抗体についての一過性トランスフェクション由来の馴化培地の試料を、アミロイドβに対する結合についてELISAで検査した。結果は、C2 VH AFが正しい配列であるということを明確に示している。C2 V
H AF/C2 V
Kキメラ抗体は本アッセイでよく結合するが、C2 V
H B/C2 V
Kは結合を全く示さない。Chemicon 1560マウス対照抗体は良好な結合を示したが、供給された精製マウスC2抗体による結合はわずかであった。ヒト定常領域を持つキメラ抗体と比較して、異なる二次抗体を、マウス定常領域を持つマウス抗体に利用したので、結果は直接的には比較可能ではないということに留意すべきである。C2ハイブリドーマ由来の馴化培地は本アッセイで良好な結果をもたらすことが後に分かった。
【0346】
4.2 精製キメラC2抗体の活性
2つの異なるC2キメラ抗体を、記載したような安定なNS0細胞株から精製し、アミロイドβELISAを用いて検査した。得られた結果は、一過性発現された抗体で得られた結果と一致している。C2 ChVH AF/ChVK抗体はELISAでよく結合し、C2 ChVH B/ChVK抗体は全く結合しない。
【0347】
実施例5 ヒト化C2抗体遺伝子の設計
mC2 V
HおよびV
Kアミノ酸配列を、NCBIおよびKabatデータベース中の齧歯類抗体V
HおよびV
K配列と比較した。
【0348】
5.1 軽鎖可変領域
mC2 V
Kに対して最も近似して一致するマウス生殖系列遺伝子は、bbl、Locus MMU231201である(Schable et al, 1999)。わずか2つのアミノ酸がこの生殖系列配列とは異なっており、両方ともCDRL1内に位置する。類似しているが、同一ではない配列を持つ成熟マウス抗体が見出される。幾つかは、同一のCDRL2および同一のCDRL3を有するが、mC2のCDRL1は独特であるように思われる。mC2 V
KをKabatサブグループMuV
KIIに割り当てることができる。mC2 V
Kの位置87は、サブグループ中でより一般的であるYではなくFであり、このことは、このフレームワーク残基が抗体活性に重要であり得るということを示している。ヒト生殖系列V
K配列との比較により、サブグループV
KII由来の遺伝子がmC2 V
Kに対して最高に一致するものであるということが示されている(Cox et al, 1994)。配列DPK15をヒトJ領域HuJ
K1と共に選択し、ヒト化V
K用のアクセプターフレームワーク配列を提供した。
【0349】
4つのヒト化V
K配列を設計した。C2HuVK1は、DPK 15およびヒトJ
K1由来のフレームワークを持つmC2 V
K CDRからなる。バージョン2、3、および4では、マウス残基が、フレームワーク中の位置45もしくは87または両方で置換されている。残基45は、CDRの立体構造の支持に関与する可能性がある。残基87は、V
HおよびV
Kドメインの境界面に位置する。したがって、これらの残基は、抗体結合の維持に決定的に重要な意味を持つ可能性がある。軽鎖フレームワーク領域でなされた変化および位置を表6に示す。ヒト化配列のmC2 V
K配列、ならびにDPK15およびヒトJ
K1との比較。
【0350】
5.2 重鎖可変領域
mC2 V
H AFに対して最も近似して一致するマウス生殖系列遺伝子は、VH7183、Locus AF120466である(Langdon et al, 2000)。比較を
図3に示す。9つのアミノ酸がこの生殖系列配列とは異なり、大部分がCDR2の中に位置している。同一または類似の(1残基異なる)CDR1を持つかまたは類似のCDR2(1残基異なる)を持つ成熟マウス抗体が見出されるが、3つ全てのCDRがmC2 V
H AFと同一である抗体はない。mC2抗体のCDR3は異常に短く、わずか3残基からなる。しかしながら、この長さのCDR3を持つその他の抗体がデータベース中で見出される。mC2 V
H AFをKabatサブグループMuV
HIIIDに割り当てることができる。mC2 V
Hの残基47は、より一般的なWではなくLであり、残基94は通常のRではなくSであり、このことはこれらのフレームワーク残基が抗体活性に有用であり得るということを示している。ヒト生殖系列V
H配列との比較により、サブグループV
HIII由来の遺伝子がmC2 V
Hに対して最高に一致するものであるということが示されている。配列DP54をヒトJ領域HuJ
H6と共に選択し、ヒト化V
H用のアクセプターフレームワーク配列を提供した。
【0351】
4つのヒト化V
H配列を設計した。C2HuVH1は、DP 54およびHuJ
H6由来のフレームワークを持つmC2 V
H AF CDRからなる。バージョン2、3、および4では、マウス残基が、フレームワーク中の位置47もしくは94または両方で置換されている。フレームワーク2における残基47は、CDRおよびV
Kドメインの両方と接触する。残基94は、CDRの立体構造を支持するのに関与する可能性がある。したがって、これらの残基は、抗体結合の維持に決定的に重要な意味を持つ可能性がある。
【0352】
重鎖フレームワーク領域でなされた変化および位置を表7に示す。
【0353】
実施例6 ヒト化抗体遺伝子の構築
修飾された可変領域を、重複するPCR組換えという方法で構築した。キメラ抗体、C2 ChV
H AF and C2 ChV
K用の発現カセットを、フレームワーク領域の必要とされる配列への突然変異導入のための鋳型として用いた。改変されるべき領域を包含する突然変異導入プライマー対の組を合成した。産生されたヒト化V
HおよびV
K発現カセットをpUC19にクローニングし、DNA配列全体が各々のV
HおよびV
Kについて正しいことを確認した。修飾された重鎖および軽鎖のV領域遺伝子を、pUC19からHindIII〜BamHI発現カセットとして切り出した。これらを、キメラ抗体ベクターについてと同様に、ヒトIgG4 Ser-Proまたはκの定常領域をそれぞれ含む発現ベクターpSVgptおよびpSVhygに移した。DNA配列が、発現ベクター中のヒト化V
HおよびV
Kについて正しいことを確認した。
【0354】
実施例7 ヒト化抗体の発現
7.1 安定細胞株における発現
ヒト化重鎖および軽鎖の発現ベクターを、キメラ抗体の発現についてと同様に、NS0細胞にエレクトロポレーションでコトランスフェクトした。抗体産生細胞株を選択および増殖させ、キメラ抗体についてと全く同様に、ヒト化抗体を精製した。精製された抗体をSDS-PAGEで解析した。
【0355】
7.2 ヒト化抗体の一過性発現
異なるヒト化V
HおよびV
K構築物の検査を捗らせるために、C2ヒト化V
HおよびV
K発現カセットもまた、第7.2節で記載した一過性発現用のベクターに移した。4つのヒト化C2 V
K構築物を、キメラC2 V
H構築物と共に、HEK293細胞にコトランスフェクトした。同様に、4つのヒト化C2 V
H構築物を、キメラC2 V
K構築物と共に、HEK293細胞にコトランスフェクトした。トランスフェクション3日後に馴化培地を細胞から採取した。産生された抗体の量を、ヒトIgGκ抗体用のELISAで決定した。
【0356】
実施例8 ヒト化C2抗体の活性
8.1 一過性トランスフェクションによって産生されたヒト化C2抗体の活性
一過性トランスフェクション由来の馴化培地の試料を、アミロイドβELISAで検査した。得られた結果は、ヒト化VH構築物C2 HuVH AFのバージョン2および4が、キメラC2カッパ鎖と組み合わせた場合に機能的であり、かつ本アッセイでキメラC2抗体と同程度であるということを明確に示している。対照的に、キメラC2カッパ鎖と組み合わせたC2 HuVH AFのバージョン1および3を含む抗体は、本アッセイで結合を全く示さない。これは、位置94でのマウス残基の置換が抗体活性に必須であるということを示している。4つのヒト化C2カッパ鎖と組み合わせたキメラC2重鎖を含む抗体は全て、キメラ抗体と同程度の、良好な結合をELISAで示した。
【0357】
8.2 精製ヒト化C2抗体の活性
2つのヒト化重鎖および4つのヒト化軽鎖の全ての組み合わせを含む8つの異なるヒト化C2抗体を、記載したような安定なNS0細胞株から精製し、アミロイドβELISAを用いて検査した(
図4)。
【0358】
得られた結果は、C2 HuVH4抗体がC2 HuVH2抗体よりも良好に本アッセイで機能するということを明確に示している。C2 HuVH2抗体のうち、C2 HuVH2/HuVK3が最高の結合活性を示すが、これはキメラ対照抗体C2 ChVHAF/ChVK と比較しておよそ2倍減である。C2 HuVH2/HuVK2活性は、対照と比較して4〜5倍減である。C2HuVH4を含む4つの異なるヒト化軽鎖を持つ抗体の活性はよく似ている。最高の活性は、C2HuVH4/HuVK1について観察され、4つの抗体は全て、本アッセイで対照キメラ抗体と近似している。
【0359】
実施例9 CDRL2の修飾
9.1 修飾されたCDR2を持つ軽鎖の設計
上で触れたように、多くの抗体は、C2抗体と同じCDRL2配列(「KVSNRFS」)を共有する。抗体活性に悪影響を及ぼすことなくCDRL2を少し修飾することができるか否かを検査することにした。2つの保存的置換、すなわち、位置50におけるKとRの置換および位置53におけるNとSの置換を選択した。それゆえに、2つの代わりとなるCDRL2配列は、「RVSNRFS」および「KVSSRFS」である。これらを、その他の変化を伴うことなく、それぞれmC2 VK-R and mC2 VK-Sとして、マウスV
K配列に組み入れた。
【0360】
9.2 修飾されたCDRL2抗体の一過性発現
第11.2.1節で記載した修飾されたCDRL2を持つ2つのC2軽鎖構築物を、一過性発現用の軽鎖ベクターにクローニングした。各々を、キメラC2 V
Hベクターと共に、HEK293細胞にコトランスフェクトした。トランスフェクション3日後に馴化培地を細胞から採取した。産生された抗体の量を、ヒトIgGκ抗体用のELISAで決定した。
【0361】
9.3 修飾されたCDRL2を持つC2抗体の活性
mC2 V
Hと組み合わせた修飾されたCDRL2を持つmC2 V
Kの一過性トランスフェクション由来の馴化培地の試料を、アミロイドβELISAで検査した(
図5)。VK-R抗体およびVK-S抗体の両方がキメラC2抗体と同程度であり、CDRL2に対する選ばれた個々の修飾が、本アッセイで抗体の活性に際立った影響を及ぼさないということを示している。
【0362】
実施例10 親和性決定
マウス(ACI-O1-Ab-7-C2)抗体、キメラ(AF)抗体、およびヒト化抗体(H4K1;H4K4)の結合特異性および親和性を評価するために、アミロイドβ1-42の単量体および繊維をCM5チップ上に固定化した抗原として用いて、BIACORE(登録商標)解析を行った。BIACORE(登録商標)技術は、層上に固定化した抗原への抗体の結合による、表面層での屈折率の変化を利用する。結合は、表面から屈折するレーザー光の表面プラズモン共鳴(SPR)によって検出される。結合速度および解離速度に関するシグナル動力学の解析により、非特異的相互作用と特異的相互作用の区別が可能となる。使用した抗体の濃度は、0.05 μM〜1.0 μMの範囲であった。
【0363】
(表1)アミロイドβ1-42の単量体および繊維に対するマウス(ACI-O1-Ab-7-C2)抗体、キメラ(AF)抗体、およびヒト化抗体(H4K1;H4K4)の結合特異性および親和性
【0364】
実施例11 免疫組織化学的結合アッセイ
11.1 ヒト脳切片
健康な患者、非認知症の前AD患者、およびAD患者由来の脳を、BonnのUniversitatsklinikから倫理的承認後に入手した。脳をホルムアルデヒド中で固定し、海馬領域を脱水し、パラフィン中に包埋し、5 μm切片をミクロトームで切った。パラフィン切片を使用するまでRTで保存した。新鮮材料用に、5 μm凍結切片をクライオスタットで切り、切片を使用するまで-80℃で保存した。
【0365】
11.2 免疫組織化学
パラフィン切片を脱パラフィン処理し、スライドをキシレン、次いで100% エタノール、90% エタノール、および70% エタノールに浸すことによって再水和した。バックグラウンドを、10% H
20
2、10% メタノールを含む水の中での30分間のインキュベーションによって減少させた。スライドを100% ギ酸中で3分間インキュベートすることによって、抗原回復を得た。Tris緩衝化食塩水(TBS、pH 7.5)中での3回の洗浄の後、10% BSA、0.25% Triton X-100を含むTBS中でのスライドの2時間のインキュベーションによって、非特異的標識をブロッキングした。洗浄した後(TBS中で3回)、非標識抗ヒトIgG(Biomeda)を添加し、スライドを湿潤チャンバーの中で終夜RTでインキュベートすることによって、内在性抗体のブロッキングを行った。さらに3回の洗浄後、一次ヒト抗アミロイド抗体をスライドに添加し、さらに24時間RTでインキュベートした。洗浄後、アルカリホスフォターゼ標識された二次抗ヒトIgG(Sigma)をスライドに添加し、2時間RTでインキュベートした。洗浄後、スライドをLiquid permanent Red(Dakocytomation)で染色し、水で洗浄し、退色しないマウント剤(corbitbalsam)を用いて標本にする前に風乾した。
【0366】
凍結切片をメタノール中で30分間-80℃で固定し、冷メタノールにH
2O
2を10%の最終濃度まで添加し、30分間RTでインキュベートすることによってバックグラウンドを減少させた。Tris緩衝化食塩水(TBS、pH 7.5)中での3回の洗浄の後、上記のような10% BSA、0.25% Triton X 100を含むTBS中でスライドを2時間インキュベーションすることによって非特異的標識をブロッキングし、上記と同じ染色手順を実行した。
【0367】
切片をLeica DMLB顕微鏡で調べ、Leica DC500カメラおよびLeica FireCam 1.2.0ソフトウェアを用いて写真を撮影した。
【0368】
ヒト抗体AおよびCの両方が、AD疾患患者由来の脳の斑を標識した(
図6)。拡散した斑および中空の芯を持つ斑の両方が標識された。さらに、非認知症の前AD患者における拡散した斑もまた、AおよびC抗体で検出することができた。脳アミロイド血管症(CAA)におけるアミロイドが両方の抗体で標識され、細胞内アミロイドに対応する可能性があるニューロンの多少の染色も検出された。健康な患者由来の対照脳では標識が見られなかった。斑は、ギ酸で前処置したパラフィン切片で検出することができたが、ギ酸前処置なしのパラフィン切片およびメタノール中で固定した凍結切片では斑は標識されなかった。ヒト抗体Bはパラフィン切片上の斑を検出せず、マウス抗体はヒト脳のパラフィン切片も凍結切片も染色しなかった。
【0369】
略語:
A = 結合するキメラ抗体AF(IgG4)(mC2Ch VHAF)
B = 結合しないキメラ抗体B(IgG4)(mC2VHB)
C = 結合するヒト化抗体H4K1(IgG4)(HuVH4/HuVK1)
マウス = ACI-01-Ab-C2マウス抗体(IgG2b)
【0370】
実施例12 アミロイド繊維に対するmC2の機能性
12.1 mC2抗体の結合後のAa1-42繊維の立体構造の改変および脱凝集の開始
前形成されたβ-アミロイド(Aβ
1-42)繊維を抗体が脱凝集させる機序について評価するために、脱凝集を測定するチオフラビン-T(Th-T)蛍光アッセイと、二次立体構造を分析するU-
13Cチロシン10およびバリン12で標識したAβ1-42ペプチドの固体核磁気共鳴(NMR)との直接比較を行った(
図7A)。mC2抗体は、前形成されたAβ1-42繊維の35.4%を可溶化し、同時にβ-シートからランダムコイル状への二次立体構造の変換を誘導した。ランダムコイル立体構造に対するβ-シート立体構造の集団の減少は35%という程度であり、このため蛍光Th-Tアッセイを用いて測定したものとよく一致する(
図7B)。これらのデータは、mC2抗体の結合によって二次構造の転移が惹起され、それがβ-シートの平行的分子間配置の不安定化を引き起こして、伸長した繊維のより小型の断片への分解に影響を及ぼす可能性を示している。
【0371】
12.2 mC2抗体の立体構造依存的な結合親和性
抗体抗原結合エネルギーのある割合を抗原の立体構造のエネルギー依存的な改変のために利用し得ることが科学文献で周知であることから(Blond and Goldberg, 1987)、Aβ
1-42タンパク質全体、および抗体エピトープを含むより小型の9アミノ酸長のペプチドに対するC2抗体の結合親和性に関する比較実験を行った(
図8)。この比較のために、ヒト化抗体C2の親和性を、C2のエピトープの完全アミノ酸配列をカバーするビオチン化ペプチド(Mimotopes社により製造、ANAWA Trading SA社より購入)およびビオチン化完全Aβ1-42ペプチド(Bachem)を用いるELISAによって分析した。分析は製造元(Mimotopes)の指示に従って行った。
図8および表2で示すように、この抗体は、全Aβ1-42タンパク質に対するよりも、その特定のエピトープ(Aβ
1-42配列のアミノ酸13-21)を含むペプチドに対して36.0%高い親和性で結合した。このため、結合親和性エネルギーの違いが、抗体相互作用のためにより許容される位置で抗原を提示するような、アミロイドタンパク質の二次立体構造のエネルギー消費性転移に用いられたことが示唆された。これは、抗体の親和性が、単離されたサブユニットに対するよりも自然な状態(全アミロイドタンパク質)に対して低い理由を説明する。
【0372】
(表2)
【0373】
実施例13 アミロイドβ1-42ペプチドの凝集に対する抗アミロイドhC2の効果
ヒト化抗ヒトアミロイドβモノクローナル抗体hC2がアミロイドβ(Aβ)に対する抗凝集および脱凝集効果を仲介する能力を評価するために、チオフラビンT分光蛍光アッセイを遂行した。
【0374】
13.1 凝集の阻害アッセイ
Aβ1-42凍結乾燥粉末をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)で再構成し、1 mMにした。ペプチド溶液を15分間室温で超音波処理し、終夜撹拌し、アリコートを作製してシリコン処理していない微小遠心分離チューブに入れた。その後、HFIPをアルゴンの流れの下で蒸発させた。結果として生じるペプチド膜を10分間真空乾燥させ、使用するまで-80℃で保存した。
【0375】
Aβ1-42凝集の抗体介在性の阻害についてアッセイするために、hC2抗体をPBS中で前希釈し、以下の成分を含むアッセイ溶液を、シリコン処理していないインキュベーションチューブ中で作製した:3.3または0.33 μM 前希釈抗体、10 μM チオフラビンT、33 μM Aβ1-42、および8.2% DMSO。それゆえに、抗体 対 Aβ1-42の最終的なモル比は、1:10および1:100であった。適当な対照溶液も調製した。その後、溶液を24時間37℃でインキュベートし、分光蛍光(相対蛍光単位;RFU)を、黒い384ウェルプレート(Perkin-Elmer)中でPerkin-Elmer FluoroCount分光蛍光計で6回繰り返して読み取った。その後、分光蛍光を測定し、脱凝集パーセントを以下で記載するように計算した。
【0376】
13.2 脱凝集アッセイ
前凝集されたAβ1-42の抗体介在性の脱凝集についてアッセイするために、上記のように調製した低分子量Aβ1-42を、27% DMSOおよび1×PBS中の110 μM溶液として作製した。その後、この溶液を37℃で24時間凝集させ、その後以下を添加した:3.3または0.33 μM 前希釈抗体、および10 μM チオフラビンT 。これにより、1:10および1:100の抗体 対 Aβ1-42のモル比が結果的にもたらされた。その後、この溶液をさらに24時間37℃でインキュベートした。その後、分光蛍光を測定し、脱凝集パーセントを以下で記載するように計算した。
【0377】
13.3 計算
凝集の阻害または脱凝集を、以下の方程式に従って、それぞれ平均阻害パーセントまたは脱凝集±平均の標準偏差(SEM)として表す。
【0378】
13.4 結果
13.4.1 Aβ1-42凝集の阻害
hC2抗体を用いたAβ1-42凝集の阻害を表3および
図11に示す。1:100の抗体 対 Aβ1-42モル比では、阻害が平均して30%であったのに対し(2回の独立の実験)、1:10のモル比では、阻害は平均して80%であった(2回の独立の実験;表3参照)。
【0379】
(表3)1:100および1:10の抗体 対 Aβ1-42モル比でのAβ1-42凝集のhC2介在性の阻害
【0380】
13.4.2 前凝集されたAβ1-42の脱凝集
hC2抗体を用いた前凝集されたAβ1-42の脱凝集を表4および
図12に示す。1:100の抗体 対 Aβ1-42モル比では、脱凝集が平均して24%であったのに対し、1:10のモル比では、阻害は平均して32%であった(3回の独立の実験;表4参照)。
【0381】
(表4)1:100および1:10の抗体 対 Aβ1-42モル比での前凝集されたAβ1-42凝集のhC2介在性の脱凝集
【0382】
チオフラビンTアッセイを用いて、抗Aβヒト化抗体hC2の二重機能特性、すなわち、Aβ1-42の病原性プロトフィブリル立体構造への凝集を阻害すること、およびさらに前形成されたAβ1-42プロトフィブリルを脱凝集することを示すことができる。hC2は、1:10の抗体 対 Aβ1-42モル比で、Aβ1-42凝集を80%阻害した。hC2が、1:10のモル比でAβ1-42の前凝集されたプロトフィブリルを脱凝集する能力は、32%であることが示された。
【0383】
実施例14:異なるクラスのアミロイドタンパク質に対するmC2の立体構造特異的結合
単量体アミロイド、重合体可溶性アミロイド、およびフィブリルアミロイドという、異なる段階の重合体化されたアミロイドタンパク質に対するmC2の特異性を評価するために、これらの異なる段階の重合体β-アミロイドでコーティングしたELISAを行った(
図9)。単量体は(Klein, 2002)によって公表された修正法によって調製し、可溶性重合体アミロイドβは(Barghorn et al., 2005)によって調製する一方で、繊維は、1 μg/μlの最終濃度のアミロイド(Bachem, Switzerland)のTris/HCl pH 7.4中で37℃で5日間のインキュベーション、それに続く遠心分離工程(10,000 rpm、5分間)によって前形成した。その後、アミロイド重合体をELISAプレート上に55 μg/mlの最終濃度でコーティングし、アルカリホスフォターゼで標識された抗マウスIgGモノクローナル抗体(Jackson)を用いることによる結合親和性ELISAを行った。表5に示したように、mC2抗体は、繊維に対してよりも高い親和性で可溶性重合体アミロイドβに結合し、単量体に対しては最も低い親和性で結合した。これらのデータは、抗体の結合がアミロイドエピトープによって、および異なるアミロイド凝集体の立体構造によって影響を受けるということを示している。
【0384】
(表5)アミロイド単量体、オリゴマー、および繊維に対するmC2の立体構造特異的結合
【0385】
実施例15:AC免疫のモノクローナル抗体hC2のエピトープマッピング
ヒト化モノクローナル抗体hC2のエピトープマッピングを、3種の異なるペプチドライブラリーを用いるELISAによって行った。1つのライブラリーは、Aβ1-42の完全アミノ酸(aa)配列をカバーする合計33種のビオチン化ペプチドを含んだ(Mimotopes社により製造、ANAWA Trading SA社から購入)。第2のライブラリーは、第1のペプチドライブラリーからのペプチド12(Aβのaa12-20)を用い、配列中の各aaがアラニンによって置換されたビオチン化ペプチドを含み(以下の表8を参照)、第3のライブラリーは、ビオチン化ペプチド13、14または15(Aβのaa 13-21、14-22、または15-23)を含み、それぞれの場合に最後のアミノ酸はアラニンに、またはすでにそれがアラニンであるaa 21についてはグリシンに置換されている(以下の表9を参照)。ビオチン化完全Aβ1-42ペプチドを陽性対照として用いた(Bachem)。エピトープマッピングは製造元(Mimotopes)の指示に従って行った。手短に述べると、ストレプトアビジンでコーティングしたプレート(NUNC)を、PBS中の0.1%BSAにより4℃で一晩かけてブロッキングした。PBS-0.05% Tween 20で洗浄した後に、PBS中の0.1% BSA、0.1%アジ化ナトリウム中に最終濃度10μMに希釈したライブラリーからの種々のペプチドにより、プレートを室温で1時間かけてコーティングした。洗浄後に、プレートを、PBS中の2% BSA、0.1%アジ化ナトリウム中に200ng/mlに希釈したhC2抗体または非Aβ結合キメラIgG4抗体と共に、室温で1時間インキュベートした。プレートを再び洗浄し、アルカリホスファターゼが結合したヤギ抗ヒトIgGと共に室温で1時間インキュベートした。最終洗浄の後に、プレートをホスファターゼ基質(pNPP)と共にインキュベートし、ELISAプレートリーダーを用いて405nmで読み取りを行った。
【0386】
ヒト化モノクローナル抗体hC2は、第1のペプチドライブラリーのペプチド12、13、14、15および16と特異的に結合することが示された。これらのペプチドは、Aβ1-42のaa 12-20、13-21、14-22、15-23、および16-24をそれぞれ含み、このことはエピトープがAβの領域12-24に存在することを示唆する。アラニン置換を有する第2のライブラリーは、Aβ12-20(VHHQKLVFF)に対する結合のために決定的なaaを決定するために用いた。アミノ酸16、17、19または20をアラニンで置換するとhC2抗体の結合は完全に失われ、このことはこれらのaaがAβに対する抗体の結合に極めて決定的であることを示している。aa 15および18を置換した場合には、hC2抗体の結合は一部が失われた。
【0387】
aa 14をアラニンに置換した場合も結合はやはりほぼ完全に失われ、このことはaa 14も結合のために非常に重要であることを示している。
【0388】
最後に、第3のライブラリーを、aa 21、22または23がエピトープに対する結合のために決定的であるか否かを判定するために用いた。aa 23をアラニンに置換するとaa 15-23に対する抗体の結合は低下し、このことはaa 23も結合のために重要なことを示している。aa 21をグリシンに置換した場合には結合は一部が失われ、aa 22をアラニンに置換した場合にはわずかに失われた。
【0389】
実施例16:hC2抗体による神経保護
抗体hC2がAβオリゴマー誘導性の変性からニューロンを保護する能力をインビトロアッセイで評価した。胎生期16.5〜17.5日目のマウス皮質ニューロンを単離し、解離させ、インビトロでN3-F12培地中で培養した。細胞を合計9日間成長させ、3日目と、およびAβオリゴマーまたはAβオリゴマーおよび抗Aβ抗体hC2を添加する日に栄養を与えた。5日目(「4日間のAβ」)または6日目(「3日間のAβ」)に、あるウェルの細胞を、2 μM Aβオリゴマーのみか、または2 μM Aβオリゴマーおよび50 μg/mL 抗Aβ抗体hC2のいずれかで処置した。
【0390】
Aβオリゴマーは、Aβ1-42(rペプチド)をHFIPに溶かすことによって調製し、そこからAβペプチドを1Oμlアリコートに1 mg/mlで分注し、その後ドラフト内で30分間蒸発させ、ペプチド膜を使用するまで-80℃で保存した。使用時に、ペプチド膜を10 μlのDMSO、その後78.6 μlのHAMS F12に溶かし、Aβペプチド溶液を4℃で24〜48時間インキュベートした(25 μMの最終濃度のAβ)。
【0391】
対照細胞については、DMSO-F12のみをAβ-DMSOと同じ容量で5日目に添加し、細胞をさらに4日間何らの追加の処置もなく培養した。9日目に、全ての培養条件由来のニューロンを固定し、Tuj1(抗β-チューブリン抗体)で染色し、それに続いてFITCで標識された二次抗体で染色して、微小管、ひいてはニューロンの突起一般を可視化した。結果を
図13に示す。
【0392】
未処置のマウス胎児皮質ニューロンは、培養の9日後に正常な形態を示した(
図13、左端のパネル)。細胞のAβオリゴマーによる3日間の処置は、軸索変性を誘導しかつ軸索の総数の減少をもたらし(
図13、中央下のパネル)、この効果は処置の4日目でさらにより顕著であった(
図13、中央上のパネル)。対称的に、Aβオリゴマーおよび抗Aβ抗体hC2の組み合わせで処置した細胞は、対照細胞と同様に見えた(
図13、右上および右下のパネル)。これらの結果は、抗Aβ抗体hC2が、Aβオリゴマー誘導性の変性から胎児マウス皮質ニューロンを保護することができたということを示している。
【0393】
(表6)ヒト化C2軽鎖フレームワーク領域でなされた変化および位置
【0394】
(表7)ヒト化C2重鎖フレームワーク領域でなされた変化および位置
合計8つの異なる抗体を、軽鎖ヒト化C2HuV
K1、C2HuV
K2、C2HuV
K3、C2HuV
K4、ならびに重鎖C2HuVHAF4およびC2HuVHAF2を用いて構築した。
【0395】
(表8)第2のライブラリーで用いたペプチドのまとめ
結合に重要であるaaをイタリック体および下線で示し、かつ結合に決定的なaaをイタリック体および太字で示した。
【0396】
(表9)第3のライブラリーで用いたペプチドのまとめ
結合に重要であるaaをイタリック体および下線で示し、かつ結合に決定的なaaをイタリック体および太字で示した。
【0397】
参考文献リスト
【0398】
配列の簡単な説明
配列番号:1 C2 HuVH AF 4ヒト化重鎖可変領域(CDR1)のアミノ酸配列。
配列番号:2 C2 HuVH AF 4ヒト化重鎖可変領域(CDR2)のアミノ酸配列。
配列番号:3 C2 HuVH AF 4ヒト化重鎖可変領域(CDR3)のアミノ酸配列。
配列番号:4 C2 HuVK 1ヒト化軽鎖可変領域(CDR1)のアミノ酸配列。
配列番号:5 C2 HuVK 1ヒト化軽鎖可変領域(CDR2)のアミノ酸配列。
配列番号:6 C2 HuVK 1ヒト化軽鎖可変領域(CDR3)のアミノ酸配列。
配列番号:7 Aβエピトープ領域2のアミノ酸配列。
配列番号:8 Aβエピトープ領域1のアミノ酸配列。
配列番号:9 修飾されたAβエピトープ領域2のアミノ酸配列。
配列番号:10 修飾されたAβエピトープ領域1のアミノ酸配列。
配列番号:11 完全な修飾されたエピトープ領域のアミノ酸配列。
配列番号:12 C2 HuVK 1ヒト化軽鎖可変領域のアミノ酸配列。
配列番号:13 C2ヒト化軽鎖のアミノ酸配列。
配列番号:14 ヒト化C2軽鎖定常領域のアミノ酸配列。
配列番号:15 C2 HuVH AF 4ヒト化重鎖可変領域のアミノ酸配列。
配列番号:16 C2ヒト化重鎖のアミノ酸配列。
配列番号:17 修飾されたIGガンマ-4鎖C領域のアミノ酸配列。
配列番号:18 C2 HuVH AF 4ヒト化重鎖可変領域のCDR2のヌクレオチド配列。
配列番号:19 C2 HuVH AF 4ヒト化重鎖可変領域のCDR3のヌクレオチド配列。
配列番号:20 C2 HuVK 1ヒト化軽鎖可変領域のCDR1のヌクレオチド配列。
配列番号:21 C2 HuVK 1ヒト化軽鎖可変領域のヌクレオチド配列。
配列番号:22 C2ヒト化軽鎖のヌクレオチド配列。
配列番号:23 C2ヒト化軽鎖定常領域のヌクレオチド配列。
配列番号:24 C2 HuVH AF 4ヒト化重鎖可変領域のヌクレオチド配列。
配列番号:25 C2ヒト化重鎖のヌクレオチド配列。
配列番号:26 C2ヒト化重鎖定常領域のヌクレオチド配列。
配列番号:27 マウスC2軽鎖可変領域のアミノ酸配列。
配列番号:28 マウスC2重鎖可変領域のアミノ酸配列。
配列番号:29 マウスC2軽鎖可変領域のヌクレオチド配列。
配列番号:30 マウスC2軽鎖のヌクレオチド配列。
配列番号:31 マウスC2重鎖可変領域のヌクレオチド配列。
配列番号:32 マウスC2重鎖のヌクレオチド配列。