【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1
リファイナーを用いて、1.40dtex(平均繊維径11.0μm)、繊維長4mmの溶剤紡糸セルロース繊維を処理し、幹部分の最大繊維径が8.8μmになるまで叩解を進めたフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を70質量%、平均繊維径2.4μm、繊維長3mmの配向結晶化ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維を25質量%、高圧ホモジナイザーを用いてリンターを処理したフィブリル化天然セルロース5質量%を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な原料スラリー(0.3質量%濃度)を調製した。この原料スラリーから、傾斜型短網抄紙機を用いて、湿潤シートを得て、ヤンキードライヤー温度130℃で乾燥した後、金属ロールと弾性ロールによるカレンダー処理を施して、坪量6.3g/m
2、厚さ9.2μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0036】
実施例2
リファイナーを用いて、1.25dtex(平均繊維径9.5μm)、繊維長4mmの溶剤紡糸セルロース繊維を処理し、幹部分の最大繊維径が7.8μmになるまで叩解を進めたフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を使用した以外は、実施例1と同様な方法で、坪量6.1g/m
2、厚さ8.2μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0037】
実施例3
リファイナーを用いて、1.25dtex(平均繊維径9.5μm)、繊維長4mmの溶剤紡糸セルロース繊維を処理し、幹部分の最大繊維径が6.8μmになるまで叩解を進めたフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を使用した以外は、実施例1と同様な方法で、坪量5.0g/m
2、厚さ7.2μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0038】
実施例4
フィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を50質量%、平均繊維径2.4μm、繊維長3mmの配向結晶化ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維を40質量%、リンターを高圧ホモジナイザーで処理したフィブリル化天然セルロース10質量%とした以外は、実施例2と同様な方法で、坪量6.2g/m
2、厚さ8.4μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0039】
実施例5
フィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を90質量%、平均繊維径2.4μm、繊維長3mmの配向結晶化ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維を5質量%、リンターを高圧ホモジナイザーで処理したフィブリル化天然セルロース5質量%とした以外は、実施例2と同様な方法で、坪量6.3g/m
2、厚さ8.1μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0040】
実施例6
(参考例)
実施例3と同様な方法で、坪量4.8g/m
2、厚さ6.8μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0041】
実施例7
実施例2と同様な方法で、坪量7.8g/m
2、厚さ10.0μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0042】
実施例8
実施例2と同様な方法で、坪量8.2g/m
2、厚さ10.5μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0043】
実施例9
フィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を70質量%、平均繊維径1.5μm、繊維長1.5mmのポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維を25質量%、リンターを高圧ホモジナイザーで処理したフィブリル化天然セルロース5質量%とした以外は、実施例2と同様な方法で、坪量6.7g/m
2、厚さ8.9μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0044】
比較例1
リファイナーを用いて、1.70dtex(平均繊維径11.5μm)、繊維長4mmの溶剤紡糸セルロース繊維を処理し、幹部分の最大繊維径が9.5μmになるまで叩解を進めたフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を使用した以外は、実施例1と同様な方法で、坪量6.1g/m
2、厚さ10.1μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0045】
比較例2
リファイナーを用いて、1.70dtex(平均繊維径11.5μm)、繊維長4mmの溶剤紡糸セルロース繊維を処理し、幹部分の最大繊維径が9.1μmになるまで叩解を進めたフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を使用した以外は、実施例4と同様な方法で、坪量6.2g/m
2、厚さ9.5μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0046】
比較例3
繊維配合を、比較例2で用いたフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を30質量%、平均繊維径2.4μm、繊維長3mmの配向結晶化ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維を50質量%、リンターを高圧ホモジナイザーで処理したフィブリル化天然セルロース20質量%とした以外は、実施例1と同様な方法で、坪量5.3g/m
2、厚さ6.4μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0047】
比較例4
繊維配合を、比較例2で用いたフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を100質量%とした以外は、実施例1と同様な方法で、坪量6.3g/m
2、厚さ9.4μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0048】
比較例5
繊維配合を、実施例1で用いたフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を45質量%、平均繊維径2.4μm、繊維長3mmの配向結晶化ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維を50質量%、リンターを高圧ホモジナイザーで処理したフィブリル化天然セルロースを5質量%とした以外は、実施例1と同様な方法で、坪量6.2g/m
2、厚さ9.0μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0049】
比較例6
繊維配合を、実施例1で用いたフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を70質量%、平均繊維径2.4μm、繊維長3mmの配向結晶化ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維を30質量%とした以外は、実施例1と同様な方法で、坪量6.1g/m
2、厚さ9.0μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0050】
比較例7
繊維配合を、実施例1で用いたフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を90質量%、リンターを高圧ホモジナイザーで処理したフィブリル化天然セルロースを10質量%とした以外は、実施例1と同様な方法で、坪量6.2g/m
2、厚さ8.8μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
【0051】
<リチウムイオン二次電池>
[負極の作製]
負極活物質として、平均粒子径0.7μm、Li吸蔵電位が1.55Vであるスピネル構造のLi
4Ti
5O
12で表されるチタン酸リチウムを95質量%、導電材としてアセチレンブラック2.5質量%と、ポリフッ化ビニリデン2.5質量%を混合し、これをN−メチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製し、厚さ15μm、平均結晶粒子径30μmのアルミニウム箔の両面に塗布して圧延した後、150℃で2時間真空乾燥して、厚さ100μmのリチウムイオン二次電池用負極を作製し、これを負極とした。
【0052】
[正極の作製]
正極活物質として、リチウムコバルト酸化物(LiCoO
2)粉末を90質量%、アセチレンブラック3質量%、グラファイト3質量%及びポリフッ化ビニリデン4質量%を混合し、これをN−メチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製した。このスラリーを厚さ15μm、平均結晶粒子径30μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、圧延した後、150℃で2時間真空乾燥して、厚さ100μmのリチウムイオン二次電池用正極を作製し、これを正極とした。
【0053】
[リチウムイオン二次電池の作製]
正極及び負極の集電体に端子をそれぞれ接続し、正極、セパレータ、負極、セパレータの順番に積層した後、この積層物を正極、負極の端子がセパレータの長手方向に対して直角になるように捲回した。続いて、この捲回物を90℃で加熱プレスすることにより、70×100mm、厚さ3.0mmの寸法を持つ扁平状電極群を作成した。続いて、両面にポリエチレンフィルムが積層された厚さ40μmのアルミニウム箔から構成された厚さ0.1mmのラミネートフィルムからなるパック(袋状外装材)を用意し、この袋状外装内に得られた電極群をその正極、負極の端子が外装材の開口部から外部に延出するように収納し、80℃で24時間真空乾燥を施した。次いで、前記の電極群を収納し、袋状外装材内に、電解液として、エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンの混合溶媒(体積比率25:75)に電解質として、1.5mol/Lの四フッ化ホウ酸リチウムを溶解したものを注入した後、袋状外装材の開口部をヒートシールにより完全密封し、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0054】
実施例及び比較例のセパレータ及びリチウムイオン二次電池について、下記評価を行い、結果を表1に示した。
【0055】
[坪量]
JIS P8124に準拠して坪量を測定した。
【0056】
[厚さ]
JIS B7502に規定された方法、つまり、5N荷重時の外側マイクロメーターにより、厚さを測定した。
【0057】
[引張強度]
作製したセパレータについて、卓上型材料試験機(株式会社オリエンテック製、商品名STA−1150)を用いて、JIS P8113に準じて縦方向の引張強さを測定した。試験片のサイズは、縦方向250mm、幅50mmとし、2個のつかみ具の間隔を100mm、引張速度を300mm/minとした。
【0058】
[インピーダンス]
作製したセパレータについて、電解液(1M−LiPF
6/エチレンカーボネート(EC)+ジエチルカーボネート(DEC)+ジメチルカーボネート(DMC)(1:1:1、vol比))に浸した後、2つの略円筒形銅電極に挟み、LCRメーター(Instec社製、装置名:LCR−821)を使用して、200kHzにおける交流インピーダンスの抵抗成分を測定した。
【0059】
[内部短絡不良率]
作製したセパレータをアルミニウム箔からなる電極間に介在して捲回することにより電極群を作製した後、電解液に含浸せずにテスターで電極間の導通を調べることによりショートの有無を確認した。短絡不良率は100個の電極群を検査して全電極群数に対するショート個数から算出した。
【0060】
[サイクル特性]
各リチウムイオン二次電池を45℃環境下において、1Cレートで充放電サイクル試験を行い、1000サイクル目の放電容量を測定し、初期サイクル時のそれに対する放電容量維持率として算出した。
【0061】
[変法濾水度]
変法濾水度とは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した値のことである。
【0062】
[長さ加重平均繊維長]
フィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維の長さ加重平均繊維長は、繊維長測定装置(品名:Fiber Lab、Metso Automation K.K製)で測定した。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示した通り、実施例1〜9のリチウムイオン二次電池用セパレータは、幹部分の最大繊維径が9μm未満になるまで叩解を進めたフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を50質量%以上含有しているため、低坪量で、しかも低厚みでありながらも、機械強度が強く、内部短絡不良が少ない。また、抵抗成分を表すインピーダンスが低く、サイクル特性に優れている。さらに、リチウムイオン二次電池用セパレータの厚みは、フィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維の幹部分の最大繊維径に近い厚さにまで容易に潰すことが可能となり、リチウムイオン二次電池の高容量化が可能となる。
【0065】
実施例6のリチウムイオン二次電池用セパレータは、坪量が5.0g/m
2未満で、厚みが7.0μm未満の低坪量、低厚みのセパレータである。実施例1〜5、7〜9と比較して、引張強度が低下し、内部短絡不良率が若干高くなった。
【0066】
実施例8のリチウムイオン二次電池用セパレータは、坪量が8.0g/m
2を超え、厚みが10.0μmを超えたセパレータである。実施例1〜7及び9と比較して、抵抗成分を表すインピーダンスが高くなる傾向が見られ、サイクル特性が少し低下した。
【0067】
実施例9のリチウムイオン二次電池用セパレータは、ポリエステル繊維の平均繊維径が1.5μmのものを使用した場合である。引張強度が高く、インピーダンスも低く抑えられ、サイクル特性に優れていた。
【0068】
一方、比較例1のリチウムイオン二次電池用セパレータは、同坪量である実施例2のセパレータと比較して、幹部分の最大繊維径が9.0μmを超えたフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を使用した場合であるが、加工速度5m/分、線圧を200kN/m、ヒートロール(金属ロール)温度100℃の条件でカレンダー処理しても、セパレータの厚さが10.0μmを下回ることができなかった。また、引張強度も低く、内部短絡不良率も悪化した。
【0069】
比較例2のリチウムイオン二次電池用セパレータは、同坪量である実施例4のセパレータと比較して、幹部分の最大繊維径が9.0μmを超えたフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維を使用した場合であるが、引張強度も低く、内部短絡不良率が悪化し、セパレータも厚くなった。
【0070】
比較例3のリチウムイオン二次電池用セパレータは、幹部分の最大繊維径が9.0μmを超えたフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維の配合量を30質量%に抑えた場合である。セパレータを薄くすることができているが、引張強度の低下が著しく、内部短絡不良率が悪化し、抵抗成分のインピーダンスが上昇したため、サイクル特性が悪化した。
【0071】
比較例4のリチウムイオン二次電池用セパレータは、幹部分の最大繊維径が9.0μmを超えたフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維のみで構成した場合であるが、引張強度が低下し、内部短絡不良率が上昇し、インピーダンスの上昇に伴い、サイクル特性が悪化した。
【0072】
比較例5のリチウムイオン二次電池用セパレータは、幹部分の最大繊維径が9.0μm未満のフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維の含有量が50質量%未満の場合であるが、引張強度が低下し、内部短絡不良率が悪化し、電解液の保液性が低下するため、インピーダンスが上昇し、サイクル特性が悪化した。
【0073】
比較例6のリチウムイオン二次電池用セパレータは、フィブリル化天然セルロースを含まず、幹部分の最大繊維径が9.0μm未満のフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維と合成繊維で構成した場合であるが、引張強度が低下し、内部短絡不良率が悪化した。
【0074】
比較例7のリチウムイオン二次電池用セパレータは、幹部分の最大繊維径が9.0μm未満のフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維とフィブリル化天然セルロースで構成した場合であるが、厚みを薄くした場合、インピーダンスの上昇に伴い、サイクル特性が悪化した。
【0075】
実施例4と比較例1〜6を比較すると、引張強度が250N/m以上である実施例4では、内部短絡を抑制することができた。
【0076】
実施例と比較例で用いたフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を比較すると、変法濾水度や加重平均繊維長がほぼ同じでも、幹部分の最大繊維径が異なるフィブリル化状態が得られ、調整できる厚みは幹部分の最大繊維径に依存することがわかる。