(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上下方向に貫通するホルダ苗床保持部を水平方向に複数配置した植物ホルダから、上下方向に貫通するパレット苗床保持部を有した栽培用パレットに、苗床を移植するための植物移植装置であって、
前記植物ホルダを保持するためのホルダ保持機構と、
前記ホルダ保持機構によるホルダ保持位置の下方で、前記栽培用パレットを保持するためのパレット保持機構と、
前記ホルダ苗床保持部に保持された苗床を下方に向けて引き下げ、前記パレット苗床保持部内に挿入するための引き下げ機構と、
を備えていることを特徴とする植物移植装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の自動定植装置では、自動定植装置に苗床をセットする前工程として、苗床に播かれた植物の種を発芽させるために水が張られた育苗容器から苗床を取り出す工程を必要とするが、苗床はスポンジ状の素材等から形成され柔らかいことから、育苗容器から苗床を取り出す工程は自動化することが難しく、人間の手によって行う必要があるため、作業負担が大きく、また、人間に付着した汗や雑菌によって苗床が汚染され易いという問題があった。
【0005】
また、挿入開閉挟み具によって苗床の1ブロックを上方から掴んで苗床をハンドリングすることから、挿入開閉挟み具によって苗床を掴む際に、苗床から横に張り出した植物の芽を挿入開閉挟み具によって傷つけてしまう恐れがあるという問題もある。
【0006】
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡素な構造かつ低コストで、迅速かつ安定した移植を実現し、植物の損傷を防止するとともに、自動化が容易な植物移植装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上下方向に貫通するホルダ苗床保持部を水平方向に複数配置した植物ホルダから、上下方向に貫通するパレット苗床保持部を有した栽培用パレットに、苗床を移植するための植物移植装置であって、前記植物ホルダを保持するためのホルダ保持機構と、前記ホルダ保持機構によるホルダ保持位置の下方で、前記栽培用パレットを保持するためのパレット保持機構と、前記ホルダ苗床保持部に保持された苗床を下方に向けて引き下げ、前記パレット苗床保持部内に挿入するための引き下げ機構とを備えていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本請求項1に記載の構成によれば、植物ホルダに保持された苗床を栽培用パレット内に移植するという構成を採用することにより、植物移植装置に対する苗床のセット時には、複数の苗床を保持した状態の植物ホルダを植物移植装置にセットすればよいため、柔らかい苗床を直接ハンドリングする必要がなく、苗床のハンドリング性を向上することができる。
これにより、植物移植装置に対して苗床をセットする前に行われる、育苗容器から苗床を取り出す工程についても、複数の苗床を保持した状態の植物ホルダを育苗容器から取り出せばよいため、自動化が容易になり、また、自動化が容易になることによって、人間に付着した汗や雑菌によって苗床が汚染されることを防止できる。
また、柔らかい苗床を上方から掴むことなく苗床を移送することにより、苗床から上方に伸び出た植物が傷つくことを防止できる。
また、苗床を引き下げることでパレット苗床保持部内に挿入するように構成することにより、植物の芽が苗床の上方から出て横に広がっている場合であっても、植物の芽がパレット苗床保持部と苗床との間に挟まれることを回避することができ、また、引き下げ機構の引き下げ部材を苗床の下側に接触させることで、苗床の上方から出た植物の芽を傷つけることや植物の芽が汚染されることを確実に回避することができる。
【0009】
本請求項2に係る発明によれば、引き下げ機構が上下方向に移動可能な少なくとも1つの引き下げ部材を有し、引き下げ部材が苗床を把持する把持部を有することにより、移植対象となる苗床と当該苗床に隣接する苗床とが部分的に繋がっている場合や、引き下げ部材が苗床に正しく接触していない場合等であっても、苗床の引き下げ時に把持部によって苗床を把持して、確実な苗床の移植を実現することができる。また、把持部によって苗床の一部分を把持するように構成した場合には、苗床全体を変形させることなく、苗床の一部分を圧縮変形させるだけで済むため、安定した移植作業を実現することができるとともに、苗床に染み込ませた水等の液体が苗床外に漏れ出すことを抑制することができる。
本請求項3に記載の構成によれば、植物ホルダと栽培用パレットとを水平方向に相対的に移動させるための移動機構を備えていることにより、移動機構によってホルダ苗床保持部とパレット苗床保持部との水平方向の位置関係を調節することが可能であるため、植物ホルダおよび栽培用パレットのサイズやホルダ苗床保持部およびパレット苗床保持部の形成位置等の、植物ホルダおよび栽培用パレットの設計自由度を向上できる
。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態である植物移植装置100について、図面に基づいて説明する。
【0012】
植物移植装置100は、
図1や
図2に示すように、植物ホルダ110と、栽培用パレット120と、育苗容器(図示しない)と、ホルダ保持移動機構130と、パレット保持機構140と、引き下げ機構150と、植物ホルダ110を移動させるハンドリング機構(図示しない)と、ホルダ保持移動機構130やパレット保持機構140や引き下げ機構150等の各部を支持するフレーム160とを備え、植物ホルダ110によって保持された苗床Bを植物ホルダ110よりもサイズの大きい栽培用パレット120に移植するものである。
【0013】
本実施形態における苗床Bは、ウレタン等から形成され、
図4に示すように、種苗収容部B2を有した複数の苗床B1を縦横に連結して成るマット状の苗床Bであり、各苗床B1は、苗床Bの厚み方向に沿って延びる連結部B3によって、各苗床B1の各辺中央部で隣接する苗床B1に部分的に連結されている。なお、苗床B1の具体的態様は、上記に限定されず、如何なるものであってもよい。
【0014】
植物ホルダ110は、金属等の強度のある材料から形成され、
図5や
図7に示すように、複数の上下貫通孔112aを有した有孔板部112と、有孔板部112の下面に取り付けられた上下方向に延びる複数の保持ピン113とを有し、
図6に示すように、複数の保持ピン113を苗床Bの切れ目に挿入することにより、苗床Bを保持するものである。複数の保持ピン113は、上下方向に見た場合に格子状に配置されており、これら複数の保持ピン113および複数の上下貫通孔112aによって画定された空間が、上下方向に貫通し苗床Bを個別に保持可能な複数のホルダ苗床保持部111として機能する。
【0015】
ホルダ苗床保持部111は、
図7に示すように、上下方向に見た場合に、縦方向に第1ピッチP1および横方向に第3ピッチP3で、矩形格子状に配置されている。なお、本発明で言うところのピッチは、孔もしくは部材の中心間のピッチのことを意味している。
【0016】
なお、植物ホルダ110の具体的態様は、上下方向に貫通するホルダ苗床保持部111を水平方向に複数配置したものであれば如何なるものでもよい。
【0017】
栽培用パレット120は、合成樹脂等(主に発泡スチロール)から形成され、
図8や
図9に示すように、上下方向に貫通し苗床Bを保持する複数の丸孔状のパレット苗床保持部121を有している。パレット苗床保持部121は、下方から上方に向けて拡径する上方テーパ部121aを栽培用パレット120の上面側に有している。
【0018】
複数のパレット苗床保持部121は、
図9に示すように、上下方向に見た場合に、六角格子状に配置されている。複数のパレット苗床保持部121のうち縦方向に隣接するパレット苗床保持部121間のピッチを第2ピッチP2とした場合、ホルダ苗床保持部111の第1ピッチP1およびパレット苗床保持部121の第2ピッチP2は、nP1=mP2(nは1以上の整数、mは1以上の整数)の式を満足するように設定されている。これにより、縦方向において、1回の引き下げ動作で複数の苗床Bを纏めて移植することが可能であるため、迅速な移植を実現することができる。また、第2ピッチP2は、第1ピッチP1よりも大きい。
【0019】
また、
図9に示すように、複数のパレット苗床保持部121のうち横方向に隣接するパレット苗床保持部121間のピッチを第4ピッチP4とした場合、ホルダ苗床保持部111の第3ピッチP3およびパレット苗床保持部121の第4ピッチP4は、oP3=pP4(oは1以上の整数、pは1以上の整数)の式を満足するように設定されている。これにより、横方向において、1回の引き下げ動作で複数の苗床Bを纏めて移植することが可能であるため、迅速な移植を実現することができる。また、第4ピッチP4は、第3ピッチP3よりも大きい。
【0020】
育苗容器(図示しない)は、内部に水が張られ、複数の苗床Bを保持した状態の植物ホルダ110を収容し、苗床Bに播かれた植物の種を発芽させるための容器である。この育苗容器(図示しない)には、水密性が要求され、また、自動化用の取っ手等を設けてもよい。
【0021】
ホルダ保持移動機構130は、植物ホルダ110を保持するとともに、植物ホルダ110を縦横方向に移動させるものである。ホルダ保持移動機構130は、
図1や
図2に示すように、植物ホルダ110に保持された苗床Bを載せるホルダ用テーブル131と、ホルダ用テーブル131を横方向に移動させる横方向直動アクチュエータ132と、ホルダ用テーブル131を縦方向に移動させる縦方向直動アクチュエータ133とを有している。
【0022】
このように、植物ホルダ110と栽培用パレット120とを水平方向に相対的に移動させる移動機構を設けることにより、移動機構によってホルダ苗床保持部111とパレット苗床保持部121との水平方向の位置関係を調節することが可能であるため、植物ホルダ110および栽培用パレット120のサイズやホルダ苗床保持部111およびパレット苗床保持部121の形成位置等の、植物ホルダ110および栽培用パレット120の設計自由度を向上できる。なお、ホルダ保持移動機構130の具体的態様については、上記に限定されず、植物ホルダ110を保持し移動させるハンドアーム等、如何なるものでもよい。
【0023】
ホルダ用テーブル131は、
図10に示すように、上下方向に貫通する複数のガイド孔131bを有した有孔板部131aと、有孔板部131aの四辺から立脚する枠部131cとを有している。ガイド孔131bは、苗床Bおよび引き下げ部材152の把持部材152a、152bが通過可能な大きさで形成されている。複数のガイド孔131bは、植物ホルダ110のホルダ苗床保持部111と同数および同一の配置態様で設けられている。このように、本実施形態のホルダ用テーブル131は、植物ホルダ110を保持する機能、および、移植対象の苗床Bに隣接する苗床Bが引き下げ動作に伴って移植対象の苗床Bに連れて引き下げられることを防止する共連れ防止機能も担っている。なお、ホルダ用テーブル131を設けることなく、横方向直動アクチュエータ132や縦方向直動アクチュエータ133によって植物ホルダ110を直接的に保持するように構成してもよい。また、ガイド孔131bの形状は、矩形状等の如何なるものでもよいが、円形状にした場合には、引き下げる苗床Bの動作が安定する。
【0024】
パレット保持機構140は、
図13に示すように、ホルダ保持移動機構130によって保持された植物ホルダ110の下方において、栽培用パレット120を固定状態で保持するものであり、栽培用パレット120を載せるパレット用テーブル141を有している。パレット用テーブル141は、フレーム160に固定されている。
【0025】
パレット用テーブル141は、
図13に示すように、上下方向に貫通する複数のガイド孔141aを有している。これら複数のガイド孔141aは、複数のパレット苗床保持部121と同数配置され、上下方向に見た場合に、複数のパレット苗床保持部121と同一の配置態様で配置されている。
【0026】
引き下げ機構150は、ホルダ苗床保持部111に保持された苗床Bを下方に向けて引き下げ、パレット苗床保持部121内に挿入するものである。
【0027】
引き下げ機構150は、
図1〜
図3に示すように、支持部151と、支持部151によって支持される複数の引き下げ部材152と、支持部151を横方向に移動させる横方向直動アクチュエータ153と、横方向直動アクチュエータ153を縦方向に移動させる縦方向直動アクチュエータ154とを有している。複数の引き下げ部材152は、横方向に一列に並べた状態で支持部151によって支持され、横方向直動アクチュエータ153および縦方向直動アクチュエータ154によって縦横方向に移動可能に支持される。
【0028】
引き下げ部材152は、
図3や
図11に示すように、苗床Bを把持する把持部を構成する第1把持部材152aおよび第2把持部材152bと、支持台152dおよび回転駆動部152eを有したベース部152cと、ベース部152cを上下方向に沿って進退可能に駆動する直動アクチュエータから成る進退駆動部152fとを備え、回転駆動部152eによって所定の回転軸を中心として第1把持部材152aと第2把持部材152bとを相対的に回転させることで、第1把持部材152aに形成された第1爪部152a'と第2把持部材152bに形成された第2爪部152b'とで苗床Bを把持するとともに、進退駆動部152fによってベース部152c等を上下方向に進退駆動することで、把持した苗床Bを上下方向に移送するものである。
【0029】
なお、本実施形態では、各引き下げ部材152がそれぞれ独立して動作可能(爪部の開閉動作、上下方向への進退駆動)であるように構成しているが、全ての引き下げ部材152が同時に同じ動作をするように構成する場合には、前述した回転駆動部152eや進退駆動部152fを、複数の引き下げ部材152に共通して設けてもよい。
【0030】
また、本実施形態では、引き下げ部材152を複数設けたが、引き下げ部材152は、1つ以上設ければよい。
また、引き下げ部材152を、横方向におけるパレット苗床保持部121の個数(9つ)と同数(9つ)を一列に配置した場合には、支持部151を横方向に移動させる横方向直動アクチュエータ153を設ける必要はない。
更には、引き下げ部材152を複数のパレット苗床保持部121と同数配置し、上下方向に見た場合に、複数のパレット苗床保持部121と同一の配置態様で配置した場合、引き下げ部材152を水平方向に移動させる必要がないため、横方向直動アクチュエータ153および縦方向直動アクチュエータ154を設ける必要がなくなる。
【0031】
ハンドリング機構(図示しない)は、植物ホルダ110をホルダ用テーブル131まで移動させホルダ用テーブル131にセットするものである。ハンドリング機構(図示しない)の具体的態様については、把持爪や支持アームを備えるもの等、如何なるものでもよい。
【0032】
次に、本実施形態における苗床Bの移植フローについて、
図13に基づいて以下に説明する。
【0033】
まず、移送対象となる苗床Bの下方に引き下げ部材152を移動させた後、引き下げ部材152を上方に向けて移動させ、引き下げ部材152の爪部152a'、152b'によって苗床Bを把持する。
【0034】
次に、苗床Bを把持した状態のまま、引き下げ部材152を下方に向けて移動させ、苗床Bをパレット苗床保持部121内に挿入する。
【0035】
次に、爪部152a'、152b'による苗床Bの把持を解除し、引き下げ部材152を下方に向けて退避させる。
【0036】
このようにして得られた本実施形態の植物移植装置100では、サイズが小さい植物ホルダ110を移動させることにより、サイズの大きい栽培用パレット120を移動させる場合と比較して、移動スペースを確保することが容易であるため、省スペース化を実現することができる。
【0037】
また、引き下げ機構150が複数の引き下げ部材152を有していることにより、1回の引き下げ動作で複数の苗床Bを纏めて移植することが可能であるため、短時間での移植を実現できる。
【0038】
また、植物ホルダ110をホルダ保持移動機構130まで移動させるハンドリング機構(図示しない)を設けることにより、ホルダ保持移動機構130への植物ホルダ110のセット時に人間の手が植物ホルダ110に直接触れることを回避し、人間に付着した汗や雑菌によって苗床Bが汚染されることを防止できる。
【0039】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、栽培用パレットが固定状態で設置され、植物ホルダおよび引き下げ機構を水平方向に移動させるものとして説明するが、具体的な実施形態はこれに限定されず、例えば、植物ホルダを固定状態で設置し、栽培用パレットおよび引き下げ機構を水平方向に移動させても構わない。
また、上述した実施形態では、引き下げ部材が苗床を把持する把持部(第1把持部材、第2把持部材)を有しているものとして説明したが、引き下げ部材に把持部を設けることなく、苗床に係合する係合部を引き下げ部材に設けてもよい。また、引き下げ部材に把持部を設ける場合、把持部の具体的態様は上記に限定されない。
【符号の説明】
【0041】
100 ・・・ 植物移植装置
110 ・・・ 植物ホルダ
111 ・・・ ホルダ苗床保持部
112 ・・・ 有孔板部
112a ・・・上下貫通孔
120 ・・・ 栽培用パレット
121 ・・・ パレット苗床保持部
121a ・・・ 上方テーパ部
130 ・・・ ホルダ保持移動機構
131 ・・・ ホルダ用テーブル
131a ・・・ 有孔板部
131b ・・・ ガイド孔
131c ・・・ 枠部
132 ・・・ 横方向直動アクチュエータ
133 ・・・ 縦方向直動アクチュエータ
140 ・・・ パレット保持機構
141 ・・・ パレット用テーブル
141a ・・・ ガイド孔
150 ・・・ 引き下げ機構
151 ・・・ 支持部
152 ・・・ 引き下げ部材
152a ・・・ 第1把持部材
152a' ・・・ 第1爪部
152b ・・・ 第2把持部材
152b' ・・・ 第2爪部
152c ・・・ ベース部
152d ・・・ 支持台
152e ・・・ 回転駆動部
152f ・・・ 進退駆動部
153 ・・・ 横方向直動アクチュエータ
154 ・・・ 縦方向直動アクチュエータ
160 ・・・ フレーム
B ・・・ 苗床
P1 ・・・ 第1ピッチ(縦方向におけるホルダ苗床保持部間のピッチ)
P2 ・・・ 第2ピッチ(縦方向におけるパレット苗床保持部間のピッチ)
P3 ・・・ 第3ピッチ(横方向におけるホルダ苗床保持部間のピッチ)
P4 ・・・ 第4ピッチ(横方向におけるパレット苗床保持部間のピッチ)