(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076323
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】グラウト注入装置
(51)【国際特許分類】
E02D 37/00 20060101AFI20170130BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20170130BHJP
E21D 11/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
E02D37/00
E02D3/12 101
E21D11/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-247244(P2014-247244)
(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公開番号】特開2016-108819(P2016-108819A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391042601
【氏名又は名称】ジェイアール東海建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000149206
【氏名又は名称】株式会社大阪防水建設社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田川 謙一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 輝一
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 康之
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 恭太
【審査官】
西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭52−140762(JP,A)
【文献】
特開2002−256543(JP,A)
【文献】
特開2005−090151(JP,A)
【文献】
特開2014−005629(JP,A)
【文献】
特開2004−270155(JP,A)
【文献】
特開2012−188831(JP,A)
【文献】
特開2002−363967(JP,A)
【文献】
実開昭58−042300(JP,U)
【文献】
特開2005−290756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/00
E02D 37/00
E02D 3/12
E04B 1/41
E04C 5/02
E21D 11/00
E21D 11/38
E21D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造物の壁体を貫通する貫通孔に固定される取付治具と、
前記取付治具に取り付け可能なプラグと、
一端及び他端がそれぞれ前記プラグの一方面側及び他方面側に位置するように前記プラグに取り付けられ、前記一端にグラウト注入ホースが取り付けられるとともに前記他端側にグラウトを吐出する吐出口を有する注入管と、
一端及び他端がそれぞれ前記プラグの一方面側及び他方面側に位置するように前記プラグに前記注入管と並列に取り付けられ、前記他端が地下構造物と地盤との間の空洞を地盤手前まで延びるエア抜きパイプと、を備え、
前記取付治具は、貫通孔に嵌め込まれる円筒状部を備え、前記円筒状部の内周面には雌ねじが形成されており、
前記プラグは、前記円筒状部の内周面の雌ねじと螺合する雄ねじが外周面に形成されているグラウト注入装置。
【請求項2】
前記エア抜きパイプは、長さ調節のために切断可能である請求項1に記載のグラウト注入装置。
【請求項3】
前記エア抜きパイプは、前記プラグに対してスライド可能に取り付けられる請求項1又は2に記載のグラウト注入装置。
【請求項4】
前記注入管の前記吐出口には、前記注入管内でのグラウトの逆流を阻止する逆止弁が設けられている請求項1〜3のいずれかに記載のグラウト注入装置。
【請求項5】
前記エア抜きパイプの一端からグラウトが漏れ出る際に前記エア抜きパイプの一端に取り付けられるキャップをさらに備える請求項1〜4のいずれかに記載のグラウト注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウト注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下の有効活用として、トンネルなどの地下構造物が地盤中に構築される。このようなトンネルは、一般に地盤と一体化して機能するように設計されている。したがって、施工上の都合や施工後における地盤土の動きなどによってトンネルと地盤との間に空洞ができた場合、あるいは、地盤中に自然に空洞ができた場合には、この空洞を埋めなければ不都合が生じる。この空洞は、セメントやモルタルなどの流動性を有するグラウトを注入することにより埋められるが、グラウトの注入作業は、トンネルの壁体に設けられているグラウトホールを利用して行われる。具体的には、グラウトホールに注入管を備えた注入装置を取り付けるとともに、別途用意したエア抜き管を取り付け、グラウト注入時における残留エアをエア抜き管で排出しながら、注入管からグラウトを空洞に注入することで、グラウトが充填される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来のグラウト注入作業では、注入管の取り付けとともにエア抜きパイプを取り付ける必要があり、確実なエア抜きパイプの接続が要求されるうえ、その取り付けに多大な労力及び時間が費やされる。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたものであり、エア抜きパイプの取り付けに要する労力や時間の無駄をなくし、グラウト注入時に確実にエア抜きを行うことができるグラウト注入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、地下構造物の壁体を貫通する貫通孔に固定される取付治具
と、
前記取付治具に取り付け可能なプラグと、一端及び他端がそれぞれ前記プラグの一方面側及び他方面側に位置するように前記プラグに取り付けられ、前記一端にグラウト注入ホースが取り付けられるとともに前記他端側にグラウトを吐出する吐出口を有する注入管と、一端及び他端がそれぞれ前記プラグの一方面側及び他方面側に位置するように前記プラグに前記注入管と並列に取り付けられ、前記他端が地下構造物と地盤との間の空洞を地盤手前まで延びるエア抜きパイプと、を備え
、前記取付治具は、貫通孔に嵌め込まれる円筒状部を備え、前記円筒状部の内周面には雌ねじが形成されており、前記プラグは、前記円筒状部の内周面の雌ねじと螺合する雄ねじが外周面に形成されているグラウト注入装置によって達成される。
【0006】
上記構成のグラウト注入装置において、前記エア抜きパイプは、長さ調節のために切断可能であることが好ましい。
【0007】
また、前記エア抜きパイプは、前記プラグに対してスライド可能に取り付けられることが好ましい。
【0008】
また、前記注入管の前記
吐出口には、前記注入管内でのグラウトの逆流を阻止する逆止弁が設けられていることが好ましい。
【0009】
また、前記エア抜きパイプの一端からグラウトが漏れ出る際に前記エア抜きパイプの一端に取り付けられるキャップをさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のグラウト注入装置によれば、エア抜きパイプの取り付けに要する労力や時間の無駄をなくすことができるとともに、グラウト注入時に確実にエア抜きを行うことができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るグラウト注入装置の正面図である。
【
図4】グラウト注入装置を用いたグラウト注入作業の手順を示す説明図である。
【
図5】グラウト注入装置を用いたグラウト注入作業の手順を示す説明図である。
【
図6】グラウト注入装置を用いたグラウト注入作業の手順を示す説明図である。
【
図7】グラウト注入装置を用いたグラウト注入作業の手順を示す説明図である。
【
図8】グラウト注入装置を用いたグラウト注入作業の手順を示す説明図である。
【
図9】グラウト注入装置を用いたグラウト注入作業の手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るグラウト注入装置1の概略構成を示す正面図である。本実施形態のグラウト注入装置1は、
図4に示すように、地盤17中に構築されるトンネルなどの地下構造物10と地盤17との間に形成される空洞Sにセメントやモルタルなどのグラウトを注入してこの空洞Sを埋めるためのものであり、地下構造物10に設けられた貫通孔(グラウトホール)11に固定される取付治具12に取り付け可能なプラグ2と、プラグ2に固定される注入管3及びエア抜きパイプ4とを備えている。
【0013】
貫通孔11は、地下構造物10(トンネル)の施工時の裏込め材の注入などのために、地下構造物10(トンネル)の壁体に所定間隔をあけて形成されているものである。貫通孔11には、例えば、
図2に示すような取付治具12が固定されている。この取付治具12は、貫通孔11に嵌め込まれる円筒状部12Aと、貫通孔11の周縁に突き当たるフランジ部12Bとを備えている。フランジ部12Bには、取付治具12を地下構造物10(トンネル)の壁体に固定するための固定孔12Cが複数設けられており、固定孔12Cにアンカーボルト13を挿入して壁体にねじ込むことにより取付治具12が壁体に固定されている。また、円筒状部12Aの内周面には、雌ねじ14が形成されている。
【0014】
プラグ2は、
図1に示すように、所定の厚みを有する平面視円形状の円板からなり、外周面に取付治具12の内周面の雌ねじ14と螺合する雄ねじ20が形成されている。プラグ2を取付治具12にねじ止めすることにより、プラグ2が貫通孔11に取り付けられる。なお、プラグ2は、必ずしも予め地下構造物10(トンネル)の壁体に形成された貫通孔11だけに取り付けられるものではなく、新たに地下構造物10(トンネル)の壁体に貫通孔11を形成し、この貫通孔11に取付治具12を固定することによっても、取り付けることができる。
【0015】
プラグ2には、板面を貫通する平面視円形状の取付孔21,22が2つ並んで形成されており、一方の取付孔21には注入管3が、他方の取付孔22にはエア抜きパイプ4が、並列して取り付けられる。
【0016】
注入管3は、
図1に示すように、所定の肉厚を有し、一端が開口し、他端が閉塞した円筒状のものであり、例えば金属やプラスチックなどにより形成される。注入管3は、一端及び他端がそれぞれプラグ2の一方面側(つまりは地下構造物10(トンネル)側)及び他方面側(つまりは地盤側)に位置するように取付孔21に取り付けられる。注入管3の取付孔21への取り付け方法としては、注入管3の外径を取付孔21の径と略同じにし、注入管3を取付孔21に嵌め込むことで固定できるが、注入管3の他端側の外径を一端側の外径よりも大きく形成する、もしくは、他端側の外周面にカバーを巻き付けて一端側よりも外径を大きく形成すれば、注入管3の他端側がプラグ2の取付孔21から抜け出るのを確実に防止することができる。本実施形態では、注入管3の他端側の外周面に、逆止弁5としてのゴムチューブが巻き付けられており、注入管3の他端側の外径が取付孔21の径よりも大きく、注入管3の他端側がストッパーとなって取付孔21から抜け出るのが確実に防止されている。
【0017】
注入管3の一端側の開口30には、ポンプPから延長されるグラウト注入ホース15がコネクタ16を介して取り付けられ、ポンプPにより圧送されるグラウトがグラウト注入ホース15を通って供給される(
図5〜
図8を参照)。注入管3の他端側の外周面には、複数の吐出口31が形成されており、一端側の開口30から供給されるグラウトが、注入管3の内部空間を通って、
他端側の吐出口31から排出される。注入管3の吐出口31には、グラウトの逆流を阻止するための逆止弁5が取り付けられている。本実施形態では、逆止弁5はゴムチューブにより構成されており、注入管3の他端側に吐出口31を覆うように円筒形のゴムチューブが巻き付けられている。ゴムチューブには、吐出口31と対向する位置にスリット(図示せず)が形成されており、注入管3内を通る圧送されたグラウトは、吐出口31からスリットを通って排出される。ゴムチューブは、注入管3の他端側にバンド6により固定されている。
【0018】
エア抜きパイプ4は、上記空洞Sへのグラウト注入時に、空洞Sに存在する残留エアを排出するものであり、
図1に示すように、両端が開口した円筒状のものである。エア抜きパイプ4は、一端及び他端がそれぞれプラグ2の一方面側(つまりは地下構造物10(トンネル)側)及び他方面側(つまりは地盤側)に位置するように取付孔22に取り付けられる。エア抜きパイプ4の取付孔22への取り付け方法としては、エア抜きパイプ4の外径を取付孔22の径と略同じにし、エア抜きパイプ4を取付孔22に嵌め込むことで固定できるが、エア抜きパイプ4の他端側の外径を一端側の外径よりも大きく形成する、もしくは、他端側の外周面にカバーを巻き付けて一端側よりも外径を大きく形成すれば、エア抜きパイプ4の他端側がプラグ2の取付孔22から抜け出るのを確実に防止することができる。エア抜きパイプ4は、その長さ(全長)を調節することができるように適当な位置で切断可能な素材で形成され、例えばプラスチックやゴムなどにより形成することができる。エア抜きパイプ4の他端は地下構造物10(トンネル)と地盤との間の空洞Sを地盤手前まで延びている。ここで、エア抜きパイプ4の他端が地盤手前まで延びるとは、エア抜きパイプ4の他端と地盤との間隔ができるだけ小さい位置まで延びていることを意味している。上記間隔としては、必ずしも限定されるものではないが、0mmよりも大きく5mmよりも小さい間隔を例示することができる。
【0019】
また、グラウト注入装置1は、後述するように、エア抜きパイプ4の一端からグラウトが漏れ出る際に、エア抜きパイプ4の一端に取り付けられるキャップ7(
図8及び
図9に示す)をさらに備えている。このキャップ7は、エア抜きパイプ4の一端の開口を塞ぐことができるものであれば、いかなる形状のものであってもよい。
【0020】
また、グラウト注入装置1は、後述するように、グラウト注入作業が終了した後、取付治具12に取り付けられ、貫通孔11を閉塞する蓋体8(
図3に示す)をさらに備えている。蓋体8は、一端が閉塞し、他端が開口する円筒状のものであり、外周面に取付治具12の内周面の雌ねじ14と螺合する雄ねじ80を有するとともに、内部には注入管3やエア抜きパイプ4の一端を収容可能な空間を有している。
【0021】
次に、
図4〜
図9を参照して、上記構成のグラウト注入装置1を用いて、地下構造物10(トンネル)と地盤17との間に形成される空洞Sにグラウトを注入するグラウト注入作業について説明する。まず、エア抜きパイプ4を貫通孔11から空洞Sに、先端(他端)が地盤17に突き当たるまで挿入するなどして、空洞Sまでの長さを測定する。そして、エア抜きパイプ4の他端が地盤17手前まで延びる、つまりはエア抜きパイプ4の他端と地盤17との間隔が数mm程度となるよう、エア抜きパイプ4を切断してエア抜きパイプ4の長さを調節する。そして、プラグ2の取付孔21にエア抜きパイプ4を嵌め込み、プラグ2を貫通孔11の取付治具12に取り付け、エア抜きパイプ4の他端と地盤17との間の隙間より、エア抜きパイプ4からエアが抜け出ることを確認する(
図4)。
【0022】
次に、注入管3の一端側の開口30にグラウト注入ホース15をコネクタ16を用いて接続し(
図5)、ポンプPを用いて前記開口30よりグラウトを注入管3内に圧入することで、吐出口31よりグラウトが貫通孔11から空洞Sに注入される(
図6)。このとき、エア抜きパイプ4からエアが抜け出ることを確認する。グラウトを注入管3に供給し、貫通孔11から空洞Sに注入し続けると、エア抜きパイプ4の他端からグラウトがエア抜きパイプ4に浸入し、エア抜きパイプ4の一端からグラウトが漏れ出すようになる(
図7)。エア抜きパイプ4の一端からグラウトが漏れ出すと、ポンプの作動を停めて空洞Sへのグラウトの注入を一旦停止し、エア抜きパイプ4の一端の開口を塞ぐことが可能なキャップ7を、エア抜きパイプ4の一端に取り付ける(
図8)。この状態で、再度、ポンプを作動させて空洞Sへのグラウトの注入を行い、圧力計(図示せず)により空洞Sへのグラウトの注入圧が上がるのを確認できれば、空洞Sにグラウトが充填されたのが確認できるので、ポンプの作動を停めて空洞Sへのグラウトの注入を停止する。これにより、グラウト注入作業が終了し、注入管3からグラウト注入ホース15を取り外した後、蓋体8を取付治具12にねじ止めにより取り付けることで、貫通孔11を閉塞する(
図9)。
【0023】
上記構成のグラウト注入装置1によると、プラグ2に注入管3及びエア抜きパイプ4が並列に取り付けられているので、プラグ2を貫通孔11の取付治具12に取り付ければ、注入管3及びエア抜きパイプ4を設置できる。よって、エア抜きパイプ4の取り付けに要する労力や時間の無駄をなくすことができる。その上、空洞Sの長さに応じてエア抜きパイプ4の長さを調節し、エア抜きパイプ4の先端(他端)が地下構造物10(トンネル)と地盤との間の空洞Sを地盤手前まで延びるので、グラウト注入時に確実にエア抜きを行うことができる。
【0024】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、エア抜きパイプ4がプラグ2の取付孔22に嵌め込みにより固定されているが、エア抜きパイプ4をプラグ2の取付孔22にスライド可能に取り付け、エア抜きパイプ4をスライドさせることで、エア抜きパイプ4の他端を地盤との間隔が数mm程度となる手前位置に調節するようにしてもよい。
【0025】
また、上記実施形態では、プラグ2の外周面をねじ加工することにより貫通孔11の取付治具12にプラグを取付可能としているが、プラグ2の取付治具12への取付方法は特に限定されるものではなく、種々の方法により取り付けることができる。また、注入管3やエア抜きパイプ4、プラグ2の径は、貫通孔11の大きさに応じて適宜変更できる。
【0026】
また、上記実施形態では、逆止弁5としてゴムチューブを用いているが、吐出口31にグラウトが逆流するのを阻止できるのであれば、種々の態様のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 グラウト注入装置
2 プラグ
3 注入管
4 エア抜きパイプ
5 逆止弁
7 キャップ
10 地下構造物
31 吐出口
41 接続管
42 本管