特許第6076327号(P6076327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076327
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】食器洗浄機
(51)【国際特許分類】
   A47L 15/46 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   A47L15/46 E
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-264975(P2014-264975)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-123508(P2016-123508A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2015年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森口 誠治
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 優文
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−124201(JP,A)
【文献】 特開平06−178751(JP,A)
【文献】 特開平05−137692(JP,A)
【文献】 特開2002−224009(JP,A)
【文献】 特開2002−200025(JP,A)
【文献】 特開平07−136097(JP,A)
【文献】 特開平08−117174(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0212693(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 15/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器が収容される洗浄槽と、
前面に開口を有し、該開口を介して前記洗浄槽が出し入れされる筐体と、
前記洗浄槽が前記筐体内の所定の洗浄位置に収納された洗浄槽セット状態を検出する位置検出部と、
前記洗浄槽が前記筐体内の前記洗浄位置に収納されているときに隠蔽される位置に配置された操作部と、
所定の第1運転モードにおいて、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていることを条件として、前記洗浄槽内を洗浄する洗浄運転を実行する運転制御部と、
前記洗浄槽が前記筐体から引き出され、前記位置検出部の異常によって前記洗浄槽セット状態が誤検出されている状態で、前記操作部に対して所定の第1モード切替操作がなされたときに、前記第1運転モードからメンテナンスモードに切り替えるモード切替部と、
前記メンテナンスモードにおいて、少なくとも故障情報を含むメンテナンス用データを出力するメンテナンス出力部と
を備え
前記運転制御部は、前記第1運転モードにおいて、前記操作部に対して前記洗浄運転の開始を指示する操作がなされた後に、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていない状態から、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出された状態に切り替わったことを条件として、前記洗浄運転を開始し、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていない状態とならずに、前記洗浄槽セット状態が検出された状態が維持された場合には、前記洗浄運転を開始しないことを特徴とする食器洗浄機。
【請求項2】
請求項に記載の食器洗浄機において、
使用者が前記洗浄槽を前記筐体から引き出すとき及び前記洗浄槽を前記筐体内に収納するときに、使用者により把持される把持部と、
前記把持部が把持されていることを検出する把持状態検出部とを備え、
前記運転制御部は、前記第1運転モードにおいて、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていない状態から、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出された状態に切り替わり、且つ、前記把持部が把持されていることが前記把持状態検出部により検出されない状態であることを条件として、前記洗浄運転を開始することを特徴とする食器洗浄機。
【請求項3】
請求項に記載の食器洗浄機において、
前記モード切替部は、前記操作部に対して所定の第2モード切替操作がなされたときに、第2運転モードに切り替え、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて、前記操作部に対して前記洗浄運転の開始を指示する操作がなされた後に、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていない状態から、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態に切り替わったこと、又は、前記操作部に対して前記洗浄運転の開始を指示する操作がなされた後に、前記把持部が把持されていることが前記把持状態検出部により検出された状態から、前記把持部が把持されていることが前記把持状態検出部により検出されない状態に切り替わったことを条件として、前記洗浄運転を開始することを特徴とする食器洗浄機。
【請求項4】
食器が収容される洗浄槽と、
前面に開口を有し、該開口を介して前記洗浄槽が出し入れされる筐体と、
前記洗浄槽が前記筐体内の所定の洗浄位置に収納された洗浄槽セット状態を検出する位置検出部と、
前記洗浄槽が前記筐体内の前記洗浄位置に収納されているときに隠蔽される位置に配置された操作部と、
使用者が前記洗浄槽を前記筐体から引き出すとき及び前記洗浄槽を前記筐体内に収納するときに、使用者により把持される把持部と、
前記把持部が把持されていることを検出する把持状態検出部と、
所定の第1運転モードにおいて、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていることを条件として、前記洗浄槽内を洗浄する洗浄運転を実行する運転制御部と、
前記洗浄槽が前記筐体から引き出され、前記位置検出部の異常によって前記洗浄槽セット状態が誤検出されている状態で、前記操作部に対して所定の第1モード切替操作がなされたときに、前記第1運転モードからメンテナンスモードに切り替えるモード切替部と、
前記メンテナンスモードにおいて、少なくとも故障情報を含むメンテナンス用データを出力するメンテナンス出力部と
を備え
前記モード切替部は、前記操作部に対して所定の第2モード切替操作がなされたときに、第2運転モードに切り替え、
前記運転制御部は、前記第1運転モードにおいて、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていない状態から、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出された状態に切り替わり、且つ、前記把持部が把持されていることが前記把持状態検出部により検出されない状態であることを条件として、前記洗浄運転を開始し、前記第2運転モードにおいて、前記操作部に対して前記洗浄運転の開始を指示する操作がなされた後に、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていない状態から、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態に切り替わったこと、又は、前記操作部に対して前記洗浄運転の開始を指示する操作がなされた後に、前記把持部が把持されていることが前記把持状態検出部により検出された状態から、前記把持部が把持されていることが前記把持状態検出部により検出されない状態に切り替わったことを条件として、前記洗浄運転を開始することを特徴とする食器洗浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面引き出し式の食器洗浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、システムキッチン等に設置される食器洗浄機として、洗浄機本体の前面側(使用者が対面する側)に設けられた開口を介して、食器が収容される洗浄槽を水平方向にスライドさせて出し入れする構成とした、前面引き出し式の食器洗浄機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された食器洗浄機においては、システムキッチンとの一体感を向上させると共に、食器洗浄運転中のスイッチの誤操作を防止するために、使用者により操作されるスイッチ(電源スイッチ、設定スイッチ、スタートスイッチ)が、洗浄槽が収容された状態で隠蔽されるドアの上面に設けられている。また、洗浄槽が収納された状態であることを検出する収納検知部(位置検出部)が備えられている。
【0004】
そして、位置検出部がOFF(洗浄槽が本体から引き出された状態)であるときに、使用者により電源スイッチが操作され、設定スイッチによって運転コースが選択されて、スタートスイッチが操作された後、位置検出部がON(洗浄槽が本体内に収納された状態)になったときに、食器洗浄運転を開始する構成になっている。
【0005】
また、位置検出部がONであるときに、電源スイッチやスタートスイッチが操作されたときには、位置検出部の誤検出が生じていると判断して、これらの操作を受け付けずにブザーによる異常報知を行う構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−124201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者らは、特許文献1に記載された食器洗浄機の構成を採用したときに、食器洗浄機のメンテナンスを行う上で不都合な場合があることを知見した。すなわち、食器洗浄機において、メンテナンス作業者等が故障の修理を行うために、操作部の操作によって、食器洗浄機の状態を確認するためのメンテナンスモードに切り替えられるようにすることが考えられるが、この場合に、上述したように、位置検出部の故障によって操作部の操作が受け付けられなくなると、メンテナンスモードへの切替えもできなくなり、迅速な故障対応が困難になる。
【0008】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、位置検出部の故障が生じた場合であっても、迅速な故障対応が可能な食器洗浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の食器洗浄機の第1の態様は、
食器が収容される洗浄槽と、
前面に開口を有し、該開口を介して前記洗浄槽が出し入れされる筐体と、
前記洗浄槽が前記筐体内の所定の洗浄位置に収納された洗浄槽セット状態を検出する位置検出部と、
前記洗浄槽が前記筐体内の前記洗浄位置に収納されているときに隠蔽される位置に配置された操作部と、
所定の第1運転モードにおいて、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていることを条件として、前記洗浄槽内を洗浄する洗浄運転を実行する運転制御部と、
前記洗浄槽が前記筐体から引き出され、前記位置検出部の異常によって前記洗浄槽セット状態が誤検出されている状態で、前記操作部に対して所定の第1モード切替操作がなされたときに、前記第1運転モードからメンテナンスモードに切り替えるモード切替部と、
前記メンテナンスモードにおいて、少なくとも故障情報を含むメンテナンス用データを出力するメンテナンス出力部と
を備え
前記運転制御部は、前記第1運転モードにおいて、前記操作部に対して前記洗浄運転の開始を指示する操作がなされた後に、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていない状態から、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出された状態に切り替わったことを条件として、前記洗浄運転を開始し、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていない状態とならずに、前記洗浄槽セット状態が検出された状態が維持された場合には、前記洗浄運転を開始しないことを特徴とする。
【0010】
かかる本発明によれば、前記洗浄槽が前記筐体から引き出されているにも拘わらず、前記位置検出部の故障により前記洗浄槽セット状態であると誤検出されているときに、メンテナンス作業者等は、前記操作部に対して前記第1モード切替操作を行うことによって、前記第1運転モードから前記メンテナンスモードに切り替えることができる。そして、前記メンテナンスモードにおいて、メンテナンス作業者等は、前記メンテナンス出力部から出力される前記メンテナンス用のデータを確認することで、食器洗浄機の故障情報を認識することができる。そのため、前記位置検出部の故障が生じた場合であっても、メンテナンス作業者等は故障情報に基づいて、迅速な故障対応を行うことができる。
【0011】
なお、前記洗浄運転には、前記洗浄槽に収容された食器を洗浄する食器洗浄運転と、前記洗浄槽自体を洗浄する槽内洗浄運転とが含まれる。
【0013】
さらに本発明によれば、前記位置検出部より前記洗浄槽セット状態が検出されていない状態から、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出された状態に切り替わり、前記位置検出部が正常に動作している場合に、前洗浄運転が開始される。そのため、実際には前記洗浄槽が前記筐体から引き出されているが、前記位置検知部の故障により前記洗浄槽セット状態が誤検出された状態で、前記洗浄運転が開始されることを防止することができる。
【0014】
また、使用者が前記洗浄槽を前記筐体から引き出すとき及び前記洗浄槽を前記筐体内に収納するときに、使用者により把持される把持部と、
前記把持部が把持されていることを検出する把持状態検出部と
を備え、
前記運転制御部は、前記第1運転モードにおいて、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていない状態から、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出された状態に切り替わり、且つ、前記把持部が把持されていることが前記把持状態検出部により検出されない状態であることを条件として、前記洗浄運転を開始することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていない状態から、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出された状態に切り替わり、且つ、前記把持部が把持されていることが前記把持状態検出部により検出されない状態であるときに限定して、前記洗浄運転が開始される。この場合、位置検出部の検出状態が切り替わることで位置検出部が正常に動作していると判断できるときに限定して、前記把持部を把持して前記洗浄槽を前記筐体内の前記洗浄位置まで押し込んだ使用者が、前記把持部から手を離して洗浄槽の収納を終了した時に、前記制御部により前記洗浄運転を開始させることができる。
【0016】
また、前記モード切替部は、前記操作部に対して所定の第2モード切替操作がなされたときに、第2運転モードに切り替え、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて、前記操作部に対して前記洗浄運転の開始を指示する操作がなされた後に、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていない状態から、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態に切り替わったこと、又は、前記操作部に対して前記洗浄運転の開始を指示する操作がなされた後に、前記把持部が把持されていることが前記把持状態検出部により検出された状態から、前記把持部が把持されていることが前記把持状態検出部により検出されない状態に切り替わったことを条件として、前記洗浄運転を開始することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、前記位置検出部又は前記把持状態検出部のいずれか一方が故障して、前記洗浄セット状態又は前記把持部が把持されていることを検出することができなくなった場合に、メンテナンス作業者等は、前記第2運転モードに切り替えることによって、前記洗浄運転を開始させて前記食器洗浄機の動作確認を行うことができる。
次に、本発明の食器洗浄機の第2の態様は、
食器が収容される洗浄槽と、
前面に開口を有し、該開口を介して前記洗浄槽が出し入れされる筐体と、
前記洗浄槽が前記筐体内の所定の洗浄位置に収納された洗浄槽セット状態を検出する位置検出部と、
前記洗浄槽が前記筐体内の前記洗浄位置に収納されているときに隠蔽される位置に配置された操作部と、
使用者が前記洗浄槽を前記筐体から引き出すとき及び前記洗浄槽を前記筐体内に収納するときに、使用者により把持される把持部と、
前記把持部が把持されていることを検出する把持状態検出部と、
所定の第1運転モードにおいて、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていることを条件として、前記洗浄槽内を洗浄する洗浄運転を実行する運転制御部と、
前記洗浄槽が前記筐体から引き出され、前記位置検出部の異常によって前記洗浄槽セット状態が誤検出されている状態で、前記操作部に対して所定の第1モード切替操作がなされたときに、前記第1運転モードからメンテナンスモードに切り替えるモード切替部と、
前記メンテナンスモードにおいて、少なくとも故障情報を含むメンテナンス用データを出力するメンテナンス出力部と
を備え、
前記モード切替部は、前記操作部に対して所定の第2モード切替操作がなされたときに、第2運転モードに切り替え、
前記運転制御部は、前記第1運転モードにおいて、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていない状態から、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出された状態に切り替わり、且つ、前記把持部が把持されていることが前記把持状態検出部により検出されない状態であることを条件として、前記洗浄運転を開始し、前記第2運転モードにおいて、前記操作部に対して前記洗浄運転の開始を指示する操作がなされた後に、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態が検出されていない状態から、前記位置検出部により前記洗浄槽セット状態に切り替わったこと、又は、前記操作部に対して前記洗浄運転の開始を指示する操作がなされた後に、前記把持部が把持されていることが前記把持状態検出部により検出された状態から、前記把持部が把持されていることが前記把持状態検出部により検出されない状態に切り替わったことを条件として、前記洗浄運転を開始することを特徴とする。
かかる第2の態様によれば、前記位置検出部又は前記把持状態検出部のいずれか一方が故障して、前記洗浄セット状態又は前記把持部が把持されていることを検出することができなくなった場合に、メンテナンス作業者等は、前記第2運転モードに切り替えることによって、前記洗浄運転を開始させて前記食器洗浄機の動作確認を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の食器洗浄機の構成を断面により示した説明図。
図2図1に示した食器洗浄機の使用態様の説明図。
図3図1に示した食器洗浄機の制御ブロック図。
図4図1に示した操作パネルの構成図。
図5】モード切替処理と洗浄運転の開始判断のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の食器洗浄機の実施形態について、図1図5を参照して説明する。
【0020】
図1を参照して、本実施形態の食器洗浄機1は、システムキッチン等の天板(カウンタートップ)CTの下部に備え付けられた前面引き出し式の食器洗浄機であり、筐体40の開口Mを介して洗浄槽20が水平方向にスライドして出し入れされる。
【0021】
筐体40内には、洗浄槽20に水を供給するための給水管41、給水管41を開閉して洗浄槽20への水の供給と停止を切り替える給水電磁弁44、洗浄槽20内の水を排水するための排水管42、洗浄槽20が筐体40の最奥部付近の洗浄位置に収納された洗浄槽セット状態を検出する位置センサ45(本発明の位置検出部に相当する)、及び洗浄槽20からの漏水等を検出する電極センサ46が備えられている。
【0022】
洗浄槽20には、W等の食器を収容した食器かご21がセットされ、食器に向けて水を噴射する洗浄ノズル22、洗浄槽20に貯められた水を加熱するヒータ23、洗浄槽20の温度を検出する温度センサ24、ポンプ26、及び乾燥ファン28が備えられている。
【0023】
ポンプ26は、正転作動時は洗浄槽20内の水を洗浄ノズル22から噴射して循環させ、逆転作動時には洗浄槽20内の水を残菜フィルタ25及び排水管42を介して排出する。乾燥ファン28は、ヒータ23を作動させた状態で回転作動することにより、温風を洗浄槽20内に送出して食器を乾燥させる。乾燥ファン28により洗浄槽20内に送出された温風は、洗浄槽20の前面上方の通気口eから排気される。
【0024】
洗浄槽20の貯水部と連通管27により接続された水位検出槽30には、洗浄槽20に所定水位の水が貯められていることを検出するフロート式の水位センサ31が設けられている。
【0025】
洗浄槽20の前端の上面には、使用者により操作される操作部50が配置されている。操作部50の詳細については後述する。さらに、洗浄槽20には、食器洗浄機1の全体的な作動を制御するコントローラ10が備えられ、洗浄槽20の前面には、洗浄槽20を出し入れする際に使用者により把持される取手部60(本発明の把持部に相当する)が設けられている。
【0026】
取手部60には、筐体40の爪部63と係合して、洗浄槽20を筐体40の洗浄位置に固定するロックレバー61と、ロックレバー61と、ロックレバー61がロック位置(筐体40の爪部63と係合する位置)にあることを検出するロックセンサ62(本発明の把持状態検出部に相当する)が備えられている。
【0027】
使用者が取手部60を握ると、ロックレバー61が上方向に回転して爪部との係合が外れ、洗浄槽20の出し入れが可能なアンロック状態となる。ロックレバー61はロック方向に付勢されており、使用者が取手部60から手を放すと、ロックレバー61がロック位置に復帰する。
【0028】
このように構成されていることにより、使用者が取手部60を握って(アンロック状態、把持状態)洗浄槽20を筐体40内の洗浄位置まで押し込み、取手部60から手を放すことにより、洗浄槽20が洗浄位置に固定された状態となる(洗浄槽セット状態、ロック状態)。このロック状態で、洗浄運転が実行される。
【0029】
この場合、使用者が取手部60を握っているときはロックセンサ62がOFF状態(本発明の把持部が把持されていることが検出された状態に相当する)になり、使用者が取手部60から手を離すとロックセンサ62がON状態(本発明の把持部が把持されていることが検出されない状態に相当する)になる。
【0030】
なお、使用者が、取手部60を握らずに、洗浄槽20と一体になっている扉前面を手で押し込むことによって、洗浄槽20を筐体40内の洗浄位置に収納することもでき、この場合にも、位置センサ45とロックセンサ62が共にON状態(洗浄槽セット状態、ロック状態)になる。
【0031】
次に、図2(a)に示したように、洗浄槽20が筐体40内の洗浄位置に収納されてロック状態にあるときは、位置センサ45がON(検出状態)になると共に、ロックセンサ62もONになる。それに対して、図2(b)に示したように、洗浄槽20が筐体40から引き出されているときには、位置センサ45がOFF(非検出状態)になり、ロックセンサ62は、使用者による取手部60の把持状態に応じてON(取手部60が把持されていないとき)とOFF(取手部60が把持されているとき)が切り替わる。
【0032】
また、操作部50は洗浄槽20の前部の天面に設けられているため、図2(a)に示した洗浄槽20が筐体40に収納された状態では、操作部50がシステムキッチンの天板CTによって隠蔽される。そのため、使用者は操作部50の操作及び視認をすることができない。
【0033】
そこで、食器洗浄機1においては、図2(b)に示した洗浄槽20が筐体40から引き出された状態で、使用者が、操作部50を操作して洗浄運転の開始を指示した後に、洗浄槽20を筐体40に押し込むことにより、洗浄運転が開始される仕様となっている。
【0034】
なお、本実施形態においては、洗浄槽20に収容された食器の洗浄と乾燥を行う運転(食器洗浄運転)と、洗浄槽20に収容された食器の乾燥のみを行う運転(食器乾燥運転)と、洗浄槽20及び食器かご21の洗浄を行う運転(槽内洗浄運転)とを、洗浄運転と総称する。
【0035】
また、洗浄運転の実行中に、使用者が取手部60を握ってロックセンサ62がOFFになったときに、コントローラ10は洗浄運転を一時停止する。そして、この一時停止状態において、使用者が洗浄槽20を引き出して位置センサ45がOFFになり、その後、使用者が洗浄槽20を筐体40内の洗浄位置まで押し込んで位置センサ45がONになってから、取手部60から手を離してロックセンサ62がONになったときに、コントローラ10は洗浄運転を再開する。
【0036】
次に、図3を参照して、コントローラ10は、図示しないCPU、メモリ、インターフェース回路等により構成された電子回路ユニットであり、メモリに保持された食器洗浄機1の制御用プログラムをCPUで実行することにより、一連の洗浄運転の処理を実行する運転制御部11と、運転モード(本発明の第1運転モードに相当する)とメンテナンスモード(本発明のメンテナンスモード及び第2運転モードに相当する)の切替えを行うモード切替部12と、メンテナンスモードにおいてメンテナンス用データを出力するメンテナンス出力部13として機能する。
【0037】
ここで、運転モードは、使用者等が操作部50の操作に応じて洗浄運転を実行するモードであり、メンテナンスモードは、メンテナンス作業者等が食器洗浄機の状態を確認するためのモードである。
【0038】
コントローラ10には、温度センサ24、水位センサ31、位置センサ45、及び電極センサ46の各検出信号が入力される。また、コントローラ10から駆動回路70を介して出力される制御信号により、ヒータ23、ポンプ26、給水電磁弁44、及び乾燥ファン28の作動が制御される。
【0039】
さらに、コントローラ10には、操作部50のスイッチ51,53,54の操作信号が入力される。また、コントローラ10から操作部50に出力される制御信号により、コースLED53a〜53e、予約LED54a、ブザー55、及び7セグLED56の作動が制御される。
【0040】
操作部50には、図4に示したように、洗浄運転の開始と一時停止を指示するためのスタートスイッチ51、洗浄運転のコース(運転工程)を選択するためのコース選択部52、予約運転を指示するための予約スイッチ54、及び予約運転が設定されていることを示すための予約LED54aが設けられている。
【0041】
なお、スタートスイッチ51の操作による洗浄運転の開始指示は、本発明の洗浄運転の開始を指示する操作に相当する。
【0042】
コース選択部52は、洗浄運転のコースの切り替えを指示するためのコース選択スイッチ53と、選択中のコースを示すコースLED53a〜53eとを備えている。使用者がコース選択スイッチ53を操作する度に、選択される洗浄運転のコースが、「標準コース」→「標準+乾燥2時間コース」→「標準+ソフト排気コース」→「標準+ソフト排気+乾燥2時間コース」→「念入りコース」→「念入り+乾燥2時間コース」→「念入り+ソフト排気コース」→「念入り+ソフト排気+乾燥2時間コース」→「乾燥コース」→「槽内洗浄コース」→「標準コース」→ … と順次切り替えられる。
【0043】
「槽内洗浄コース」は、洗浄槽20や食器かご21に付着した石灰質成分等を除去するために、食器用洗剤とは異なる槽内洗浄剤(例えばクエン酸を主成分とする洗剤)を用いて、洗浄槽20内を洗浄するコースである。「槽内洗浄コース」以外のコースは、洗浄槽20に収容された食器を洗浄又は乾燥するコースである。
【0044】
ここで、「標準コース」は、「洗浄工程」→「水すすぎ工程」→「加熱すすぎ工程」→「乾燥工程」を実行する基本的なコースである。「標準+乾燥2時間コース」は、「標準コース」において、乾燥工程の時間を2時間に変更したコースである。
【0045】
「標準+ソフト排気コース」は、「標準コース」において、乾燥工程で通気口eから排気される温風の温度を40℃に抑えるコースである。「標準+ソフト排気+乾燥2時間コース」は、「標準コース」において、乾燥工程の時間を2時間に変更すると共に乾燥工程で通気口eから排気される温風の温度を40℃に抑えるコースである。
【0046】
また、「念入りコース」、「念入り+乾燥2時間コース」、「念入り+ソフト排気コース」、及び「念入り+ソフト排気+乾燥2時間コース」は、「標準コース」、「標準+乾燥2時間コース」、「標準+ソフト換気コース」、及び「標準+ソフト換気+乾燥2時間コース」において、それぞれ加熱すすぎ工程におけるすすぎ水の加熱温度を80℃に設定するコースである。「乾燥コース」は、乾燥工程のみを実行するコースである。
【0047】
「槽内洗浄コース」は、洗浄工程において洗浄水を「標準コース」よりも高温に加温すること及び貯水量を増加させること以外は、「標準コース」と同様である。
【0048】
コントローラ10は、選択されているコースに応じて、コースLED53a〜53e(標準LED53a、念入りLED53b、乾燥LED53c、槽内洗浄53d、ソフト排気LED53e)の点灯と消灯を切り替える。
【0049】
例えば、「標準コース」が選択されているときには、コントローラ10は標準LED53aのみを点灯して他のLED53b〜53eを消灯する。また、「標準+乾燥2時間コース」が選択されているときは、コントローラ10は、標準LED53a及び乾燥LED54cを点灯して、他のLED53b,53d,53eを消灯する。
【0050】
コントローラ10は、食器洗浄機1の設置時等に電源接続部(図示しない)が商用電源に接続されて、電源スイッチ(図示しない)がON状態とされたときに作動を開始する。コントローラ10は、洗浄槽20が筐体40から引き出されて、位置センサ45がOFF(洗浄セット状態が検出されない状態)になったときに、洗浄運転の初期選択コースである「標準コース」を選択して標準LED53aを点灯する。
【0051】
コントローラ10は、洗浄槽20が引き出されて、LED53a〜53e,54aのいずれが点灯しているときに、使用者によりスタートスイッチ51が長押し操作されたときには、全てのLED53a〜53e,54aを消灯する。このように、全てのLED53a〜53e,54aが消灯した状態であるときに、使用者がスイッチ51,53,54のいずれか操作すると、コントローラ10は、操作に応じてLED53a〜53e,54aのいずれかを点灯する。
【0052】
また、コントローラ10は、センサ類(温度センサ24、水位センサ31、位置センサ45、電極センサ46、ロックセンサ62)の故障情報、洗浄運転の実行中に生じたエラー(漏水エラー等)の履歴、運転時間(ポンプ26の累積作動時間等)、洗浄運転の実行回数等を示すメンテナンス用データを、EEPROM(図示しない)に保持している。
【0053】
そして、メンテナンス出力部13は、メンテナンスモードにおいて、メンテナンス用データの内容を示すコードを、コース選択スイッチ53の操作に応じて、7セグLED56に順次切り替えて表示する。また、メンテナンス出力部13は、図3に示したように、コントローラ10にパソコン80等の通信端末が接続されたときには、パソコン80にメンテナンス用データを送信して、パソコン80の画面にメンテナンス用データの内容を表示させる。
【0054】
次に、図5に示したフローチャートに従って、運転制御部11、モード切替部12、及びメンテナンス出力部13により実行されるモード切替処理、メンテナンス対応処理、及び洗浄運転の開始処理について説明する。
【0055】
コントローラ10が作動を開始すると、モード切替部12は、STEP1で、初期設定として運転モードに設定する。続くSTEP2で、モード切替部12は、スタートスイッチ51とコース選択スイッチ53を同時に長押し(例えば2秒以上)操作することによるモード切替操作(本発明の第1モード切替操作に相当する)がなされたか否かを判断する。
【0056】
そして、STEP2でモード切替操作がなされたときはSTEP3に進み、モード切替操作がなされていないときにはSTEP10に分岐する。ここで、モード切替部12は、モード切替操作がなされる毎に、初期モードである運転モードとメンテナンスモードとを切替える。
【0057】
STEP10〜STEP12は、運転制御部11による処理である。STEP10でスタートスイッチ51がONしたときにSTEP11に進み、その後、STEP11で位置センサ45がOFFからONに切り替わり(洗浄槽20が、筐体40から引き出された状態から筐体40内の洗浄位置まで押し込まれた状況)、且つロックセンサ62がONしたときにSTEP12に進んで、運転制御部11は洗浄運転を開始する。
【0058】
このように、運転モードにおいて、運転制御部11は、STEP11で、位置センサ45がOFFからONに切り替わることで位置センサ45が正常に動作していることが確認できたときに、洗浄運転を実行することによって、位置センサ45が故障した状態で洗浄運転が開始されることを防止している。
【0059】
また、位置センサ45がONになっていることに加えて、ロックセンサ62もONになっていることを洗浄運転の開始条件とすることにより、取手部60を握って洗浄槽20を筐体40内の洗浄位置まで押し込んだ使用者が、取手部60から手を離して洗浄槽20の収納操作を終了したことを確認してから、洗浄運転を開始させることができる。
【0060】
一方、STEP2でモード切替操作がなされてSTEP3に進んだときには、モード切替部12は運転モードからメンテナンスモードに切り替える。ここで、モード切替部12は、位置センサ45がOFFしているか否かに拘わらず(位置センサ45がOFFしていることを条件とせずに)、STEP2でモード切替操作の有無を判断する。そのため、位置センサ45の異常(故障等)により、洗浄槽20を筐体40から引き出したにも拘わらず、位置センサ45がON状態に維持される場合(洗浄槽セット状態が誤検出された状態)であっても、メンテナンス作業者等は、操作部50を操作してメンテナンスモードに切り替えることができる。
【0061】
メンテナンスモードに切り替えられたことにより、メンテナンス作業者等は、7セグLED56に表示されるコード、或はパソコン80の画面に表示されるメンテナンス用データの内容を確認することによって、故障要因を特定して、故障の修理等の対応を速やかに行うことができる。
【0062】
また、メンテナンスモードにおいて、運転制御部11は、STEP5で、位置センサ45がOFFからONに切り替わったこと、又はロックセンサ62がOFFからONに切り替わったことを条件として、洗浄運転を開始している。
【0063】
そのため、位置センサ45又はロックセンサ62の故障により、運転モードでは洗浄運転を開始することができない状況になっているときに、メンテナンス作業者等は、メンテナンスモードに切り替えて、取手部60を握って洗浄槽20を筐体40内の洗浄位置まで押し込み、取手部60から手を離すことにより、洗浄運転を開始させて食器洗浄機1の作動状態を確認することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、図5のSTEP11で、位置センサ45がOFFからONに切り替わったか否かを判断して洗浄運転を開始するようにしたが、この判断を行わない場合にも本発明の効果を得ることができる。
【0065】
また、本実施形態では、ロックレバー61と筐体40の爪部63から成るロック機構と、ロックセンサ62とを備えた食器洗浄機1を示して、図5のSTEP5とSTEP11で、洗浄運転の開始条件としてロックセンサ62のONを判断したが、ロック機構及びロックセンサ62を備えない場合にも本発明の効果を得ることができる。
【0066】
また、本実施形態では、図5のSTEP2で、本発明の第1モード切替操作及び第2モード切替操作として、操作部50のスタートスイッチ51とコース選択スイッチ53の同時長押し操作を例示したが、本発明の第1モード切替操作及び第2モード切替操作として、操作部50に対する他の操作態様を採用してもよい。
【0067】
また、本実施形態では、図5のSTEP4で、メンテナンスモードにおいてスタートスイッチ51が操作されたときに、STEP5でロックセンサ62がOFFからONに切り替わったことを条件として、STEP6で洗浄運転を開始するようにしたが、操作部50のモード切替操作(本発明の第2モード切替操作に相当する)により、メンテナンスモードとは別のモード(本発明の第2運転モードに相当する)に切り替えて、STEP4〜STEP6の処理を行うようにしてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、メンテナンスモードにおいて、図5のSTEP5,STEP6の処理により、位置センサ45がOFFからONに切り替わったとき、又はロックセンサ62がOFFからONに切り替わったときに、洗浄運転を開始するようにしたが、STEP5,STEP6の処理を行わない場合にも、本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0069】
1…食器洗浄機、10…コントローラ、11…運転制御部、12…モード切替部、13…メンテナンス出力部、20…洗浄槽、40…筐体、45…位置センサ(位置検出部)、50…操作部、51…スタートスイッチ、60…取手部(把持部)、61…ロックレバー、62…ロックセンサ(把持状態検出部)、63…爪部。
図1
図2
図3
図4
図5