(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の1つの可能な実現の重要な構成要素のブロック・ダイアグラムを示す。図の構成要素のそれぞれについて以下において詳しく説明する。
測定システム
測定システム101は、光コヒーレンス・トモグラフィー(OCT:Optical Coherence Tomography)、偏光分析法またはマイクロ視野計測を含むがそれらに限られな、眼球107のいくつかの構造的または機能的特性を測定する任意のシステムとすることができる。
眼底撮像システム
眼底撮像システム102は、追跡システムにより動きを検知するために使用できる眼球107の画像を生成する任意のシステムとすることができる。たとえば、眼底画像は反射撮像または血管造影により生成され、同時に単一または複数の点を収集することができる。眼底画像は、続けざまに収集され、追跡において使用する一連の画像を与えることが理想的である。特定の眼底画像が追跡目的のために適するか否か決定する方法について以下において詳しく説明する。本出願において記述される方法は、ラインまたはスポット走査検眼鏡の場合に可能であるように、眼底撮像システムにより生成される部分画像と全面画像の両方に適用することができる。
【0012】
眼底撮像システムと測定システムとは同期されるので、任意の測定データにより対応する眼底画像を確認することができる。測定データは、眼底画像あたり1つに制約されず、事実それは、1つの眼底画像に対応する複数の測定結果とすることができる(たとえば、多重OCT Bスキャン)。
【0013】
本出願において記述される発明された方法を使用する特定の測定−眼底撮像システム組み合わせは、OCTスキャナーと、参照により本出願に含まれている米国特許第7,805,009号明細書において記述され、
図2に示されているライン走査検眼鏡(LSO:line−scan ophthalmoscope)を組み合わせる。上述したように、この撮像装置は、共焦点走査レーザ検眼鏡(cSLO:confocal scanning laser ophthalmoscope)、眼底カメラ、LSO、またはOCTシステムを含むがそれらに限られない、眼球の画像を撮影できる任意の撮像システムとすることができる。
【0014】
LSO光源201からの光は、円柱レンズ202およびビームスプリッター203により走査ミラー204に送られる。円柱レンズ202および走査レンズ205は、網膜画像面206において照明ラインを生成し、次に接眼レンズ207およびヒト眼球光学機構200は、この照明ラインを網膜210上に再結像する。走査ミラー204の回転につれてこの照明ラインは、網膜の上で掃引される。網膜から反射された光は、LSO照明光の経路をほぼ逆にたどる。反射された光はLSO走査ミラー204により走査されるので、網膜の照らされた部分が撮像レンズ208によりLSOライン・カメラ209上に連続的に結像される。LSOライン・カメラは、反射されたLSO光を、単一のライン部分画像を表すデータストリームに変換する。この画像は、処理されて眼球追跡情報と網膜のリアルタイム表示の両方を形成する。
【0015】
OCTシステム220は、光源、光検知器、およびOCT光束221からの後方散乱光の深さプロファイルを決定するために必要な処理装置を含んでいる。このOCTシステムは、時間領域方法または周波数領域方法を使用することができる(スペクトル領域、掃引光源等、たとえば、参照により本出願に含まれている米国特許第5,321,501号明細書および米国特許出願公開第2007/0291277号明細書参照)。OCTスキャナー222は、走査制御装置254の制御の下にOCT光束の角を表面に沿って横方向に2次元(xおよびy)に掃引する。走査レンズ223は、OCT光束の焦点を網膜像面206上に合わせる。ビームスプリッター224は、OCTとLSOの光束経路を結合して、両方の経路がより容易にヒトの眼球200の瞳孔を通過できるように方向付ける。(光束経路の結合は、直接撮像応用では不要である。この場合、被写体自身が網膜画像面206の場所に存在する。)OCTおよびLSOが異なる波長の光を使用する場合、ビームスプリッター224は、2色性ミラーとして実現することができる。OCT光束は、接眼レンズ207およびヒトの眼球200の光学機構を経て網膜上に再び焦点を結ぶ。網膜から散乱された一部の光は、OCT光束と逆の経路をたどってOCTシステム220に戻る。それは、散乱光の量をOCT光束沿いの深さの関数として決定する。軸すなわち深さ方向(z方向)のデータの各ラインは、Aスキャンと呼ばれる。断面断層撮影、すなわちBスキャンは、一連のAスキャンを横方向に結合することにより得ることができる。当業者により知られているBスキャンを生成する種々の方法は、水平すなわちx方向沿い、垂直すなわちy方向沿い、xおよびyの斜め方向沿い、または円形または螺旋形パターンを含むがそれらに限られない。本出願において記述する例の大多数は、x−z次元のBスキャンを指すが、本発明はどの断面画像にも等しく適用される。
【0016】
当業者にとって明白なことであるが、この発明は、動きの影響の低減された測定データを与えるために他の測定システムおよび撮像システムにも適用することができる。また、この方法は、本出願において詳述する2次元眼底画像データのみならず追跡目的に適する他の種類のデータにも適用することができる。たとえば、この情報は、軸方向の動きを追跡するz次元沿いのID信号または3次元すべてにおいて眼球を追跡するために使用できる3D距離データでもよい。
眼底品質監視システム
網膜追跡システム104は、患者107の眼球の網膜の動きを決定するために眼底撮像システム102からの画像を使用する。これを行うために、網膜追跡装置は、基準画像すなわち基準フレームを必要とする。眼底撮像システムからのその後の「ライブ」画像を基準画像と比較して動きがあったか否か決定する。したがって、追跡装置が適切に機能を果たす能力は、眼底画像の品質に依存する。本出願において記述する監視システムは、眼底画像103の品質を自動的に決定する処理装置を使用する。画像の品質の決定は、動きの決定に際する追跡装置の最適性能を保証し、かつ、ユーザの入力に基づいてまたはユーザの介入なしに自動的に追跡開始または終了を行う選択肢を与える。この能力は、以下の理由から重要である:
1)手動ステップなしに追跡を自動的に開始する能力は、作業の流れを単純化し、かつ、手動により起動する必要のある追跡を行うシステムより優れている。
【0017】
2)その後のフレームを自動追尾する追跡アルゴリズムの能力は、基準フレームから抽出され得る特徴に大幅に依存する。したがって、作業の流れを効率化するために基準フレームが追跡のために十分な品質をもっていることを保証することが望ましい。
【0018】
3)初期設定し、かつ、追跡するためにプロセッサ資源が必要である。したがって、十分な品質を有する追跡するべき眼底画像ストリームが生ずるまで、追跡アルゴリズムの負荷を処理装置に加えないことが望ましい。
【0019】
4)このアルゴリズムは、基準フレームとして使用するより良い眼底画像が得られたかどうか知るために、追跡による監視が有効になった後に断続的に到着フレームの品質を点検するために使用することもできる。
【0020】
眼底画像の品質は、画像の焦点、照明の一様性、コントラスト等のような要素の組み合わせに基づいて決定することができる。1つのかかる実現は、次のような2つの異なる要素の組み合わせとすることができる:
Q = μ
1q
int + μ
2q
focus
ただし、Qは総合品質メトリック(metric)、q
intは画像中のピクセルの総合輝度すなわち強度に基づくメトリック、q
focusは画像の焦点が合っているか否かに基づくメトリック、μ
1およびμ
2は品質メトリックの個々の要素に重みづけする増倍率である。異なる重みを2つの構成要素に与えて追跡性能のための良好な特徴抽出に対するそれらの重要度を表す。最終メトリックは0〜10の範囲に定義し、0を「最低」の品質画像、10を「最高」の品質画像とする。
【0021】
q
intの1つの可能な実現は、現在の画像の平均輝度および良好な追跡性能を与えることが分かっている代表的な画像の組の平均輝度に基づく。この場合、q
intは次のように定義することができる:
【0022】
【数1】
ただし、I
meanは処理される現在の画像の平均輝度、I
meanStandardは代表的な組から計算される輝度である。ScalingFactor(スケーリング・ファクター)は拡大縮小のために使用する増倍率である。I
meanがI
meanStandardより大きい場合、q
intは、ScalingFactorに頭打ちされる。これは、この品質係数が総合輝度のベースラインを記述しようとしていることを意味する。この輝度がこのベースラインを超える場合、それはもはや成績に影響を及ぼさない。
【0023】
q
focusの1つの可能な実現は、現在の画像中の画像強度の導関数および良好な追跡性能を与えることが分かっている画像の代表的な組からの同一測定結果の期待値に基づく。この場合、q
focusは次のように定義することができる:
【0024】
【数2】
ただし、dI
currは画像全体にわたりxおよびy方向の導関数を合計することにより計算された画像中の高周波成分の測定量。dI
standardは画像の代表的な組から計算される同一測定量である。総合品質メトリックの計算で使用される増倍率μ
1およびμ
2を用いて画像品質の各成分に与えられている重みを変更することができる。
【0025】
図3は、サンプル眼底画像を、上述した自動アルゴリズムにより決定される品質の昇順に示す。品質メトリックの数値は、画像(a)〜(f)について0〜9.61である。
上述した品質メトリックは可能な実現の一例に過ぎず、当業者は他のバージョンの測度を実現することができる。主たる着想は、基準画像としてまたは「ライブ」画像として追跡のために使用される眼底画像の適切性を表現することである。
【0026】
この品質メトリックを使用して眼底画像の流れを評価することにより測定取得の前に追跡を開始する時期を決定することができる。たとえば、品質メトリックの閾値を設定しておき、一定の期間にわたり大幅な中断なく到来画像の品質が当該閾値を上回ったときに初めて追跡を開始する手順が可能である。
【0027】
測定取得に先立ち、測定メトリックを使用して眼底撮像システムからの到来フレームを絶えず監視することにより基準フレームとして使用される十分な品質の画像を選択することもできる。より良い画像が利用可能になるか否かその後のフレームを監視し、その時点において必要に応じて基準画像を置き換えることもできる。患者がその凝視を新しい場所に移動し、その新しい場所における凝視を維持する場合、基準フレームを新しい場所に再設定し、それ以降この場所で追跡を継続することが望ましい。これは、現在の基準フレームとライブ画像間の距離(すなわち、目印場所間のずれ)の測定量を点検することにより自動的に行うことができる。「距離」が長いこと、かつ、一貫して長いことが見出された場合、基準フレームを新しい凝視場所において取得される画像に再設定することができる。患者が一時的にその凝視場所を変更した場合には、同じ原理を用いて基準フレームを元に戻す。
【0028】
この品質メトリックは、グラフィック・ユーザ・インターフェース106(GUI:graphical user interface)を使用してユーザに表示することもできるが、それは、必要に応じて眼底画像の品質を改善するために患者の位置を修正するための視覚的フィードバックをユーザに与える。これは、実際の指標の数値的表示、品質バー、または画像フレームの品質に応じて色が切り換わる単色基準指示子を含む種々の方法で行うことができる。中膜白濁または病理のために良好な眼底画像を得ることができない患者の場合、この品質表示メカニズムは、ユーザに眼底画像の追跡不適切性に関するフィードバックを与えるので操作者は、必要な場合、追跡を打ち切って時間を節約し、作業の流れを改善することができる。
網膜追跡装置
網膜追跡装置104は、動きを決定するために基準画像とその後の画像を比較する。どのような画像も基準として使用できるが、本発明の好ましい実施形態は、上述した品質監視システム103により決定された追跡のための十分な品質を有する基準画像を入力として取り入れる。前述したように、追跡装置により使用される画像は、反射撮像または血管造影法などの種々様々なモダリティから入手でき、または、網膜の動きの追跡における使用に適するその他の種類のデータとすることもできる。これから述べるように、基準画像は、患者について時間的に前の時点において収集されたデータから到来し得る。測定システムがデータを収集している間、網膜追跡装置は、基準画像を「ライブ」画像(それは、同時に取得中であり、測定値と同期されている)と比較する。測定データ収集に先立ち(初期設定モード)、追跡装置は、追跡のために最も正確な基準画像を得るために基準画像をライブ・ストリームからのその後の画像と比較することができる。たとえば、患者の凝視が変化した場合のようにその後の画像フレームが基準フレームに対しかなりずれていると決定された場合、その後の比較のための基準フレームとしてその新しいフレームを選択することができる。これは、追跡システムが最小の処理要求条件および最高の成功確率をもって最も効率的に稼働することを可能にする。
【0029】
追跡装置は、ライブ画像および基準画像に基づいて基準フレームとライブ画像の間にどれほどの動きがあったか決定する。これは、画像全体からの情報を使用することにより、または画像の一部を使用することにより行うことができる。画像の当該部分は、たとえば血管合流部および分岐点、視神経円板などの画像中の顕著な特徴に基づいて選択することができる。画像の当該部分は、画像中の所定の領域とすることもできる。1つの可能な実現は、画像中の血管を検知し、血管の合流部および分岐点を発見し、それらをフレーム間の動きを決定するための安定した特徴として使用することである。
【0030】
図4は、この実施例による網膜追跡システムのブロック・ダイアグラムを示す。この追跡プロセスは、初期設定401と追跡402の2つの段階に分かれる:自動アルゴリズムの場合、初期設定段階における重要なステップは、基準画像中の可能な特徴の組から安定している特徴が選択されることを確保することである。追加的かつ任意選択的な本発明の一態様は、重要な特徴の抽出に先立って血管の強調(enhancement)を行うことである。これは、数個のライブ・フレームを平均してより優れた品質の複合基準フレームを生成することを含むいくつかの方法で行うことができる(たとえば、参照により本出願に含まれている米国特許出願公開第2005/0270486号明細書参照)。この出願において記述される本発明では、上記特徴の品質は、2つの方法により確保される。第1に、品質監視システムにより決定された最低品質を有する画像のみ基準フレームとして選択する。第2に、適応的「学習」を使用して基準フレームの後に収集されたN個のフレームの追跡に基づいて追跡のための最良の特徴を決定する。この学習プロセスについては、2つのフレーム間の動きを決定する方法の記述に続いて説明する。
【0031】
基準フレーム中に1組の特徴が存在する場合、ライブ・フレーム中のそれらに対応する場所は、正規化相互関係(それは強度変動に反応しない)または和平方誤差のようなメトリックを使用して最もよく合致する場所を見出すことにより決定することができる。すべての潜在的合致を求めた後、合致の品質(正規化相互関係メトリックに関する閾値など)に基づいてこれらの合致からさらに選りすぐることができる。合致中の異常値もこの分野でよく知られている着実な評価技法に基づいて発見することができる。「良好な」合致の中から、基準フレームとライブ・フレーム間の全体的な変化を決定することができる。この変化は、平行移動のみのように簡単なもの、平行移動と回転、または倍率誤差、投射誤差等と考えられる高次の変化があり得る。ここで計算される変化は、ライブ・フレームと基準フレーム間の動きの量を決定する。眼底画像中で測定されている領域に基づいて、ライブ眼底画像が収集されていた間に測定値が存在すると思われていた場所と実際にそれが存在した場所の間の最大誤差(すなわちミクロン単位の距離)を計算することができる。この誤差は、以下この文書では、「走査誤差」と呼ぶ。
【0032】
最良の特徴を選択する学習プロセスは、基準フレームに続くN個のフレームについて「良好な」合致に関する情報を蓄積することに依存する。N個のフレーム中の「異常値」として検知される特徴は、反射および雑音などの基準画像中のアーチファクトに属する傾向をしばしば有する。したがって、1組のその後のフレームからの追跡結果自体を使用することにより、追跡性能を改善することができる。上述した特徴の組から選りすぐることの1つの重要な利益は、ライブ・フレームと基準画像間の変化を計算する処理時間を低減することである。変化の評価は可能な限りリアルタイムに近い形態で行われることが望ましいが、それは、この出願において記述される本発明においてかならずしも必要なことではない。
【0033】
2つの画像間の相対的な動きが既知となり、かつ、走査誤差が計算された後、これらの情報を決定システム105に渡す。
ここで注意するべきことは、基準フレームが患者の前の検査から入手できるということである。この方法により、測定は、前の検査と同じ場所から行うことができる。代替的に、前の眼底画像を現在の基準フレームに登録し、これらの2つのフレーム間の変位情報および基準フレームとライブ・フレーム間の変位を使用することにより、前の走査と同じ場所における測定値を得ることもできる。この場合、当該画像に現れている特徴が手動または自動化手段を使用する追跡のために使用される撮像モダリティにおける特徴に相関され得る限り、前の眼底画像は、同一の撮像モダリティまたは別の撮像モダリティを使用して記録された可能性がある。変化のために解剖学的に相違しているかも知れない前の作業結果の眼底画像に比し、現在の作業結果の基準フレームの方が追跡が容易であることが期待されるので、第2の方法が好ましい。
Z位置の追跡
この発明の別の態様は、測定データの深さ方向の動きの影響を低減するために軸すなわちZ方向の眼球の位置を監視することである。xおよびyの追跡に関しては、本発明は、眼球の前部領域と後部領域両方に適用することができる。説明例として網膜を使用する。眼底画像は、一般的に測定システムからの被写体への深さ情報すなわち距離を与えない2D画像である。しかし、z方向(眼底撮像システムにより撮像されるx−y平面に垂直)に測定するOCTスキャナーなどの測定システムの場合、深さ方向の情報も単独にまたはx方向およびy方向の追跡と組み合わせて網膜追跡装置および決定システムにより利用することができる。
【0034】
これは特に重要である。なぜならば、OCTシステムの場合、眼球がx方向およびy方向すなわち横次元に正しく位置付けられたとしても、眼球が軸すなわちz方向に沿って正しく位置付けられていないことがあり得るからである。良好なデータを得るために、一般的に基準アームすなわちサンプル・アーム中の平行移動可能ミラーにより、撮像されるサンプル内の深さ位置をOCTシステムの捕捉範囲内に設定しなければならない。OCTシステムの深さすなわち軸方向の距離は、そのOCTシステムにより記録される光周波数の抽出間隔すなわち解像度により限定される。サンプルに対するシステムの深さ位置が正しく設定されない場合または患者が動いた場合、x−y位置において走査像が正しく得られたとしも頂部または底部のデータが切り離されるか、またはz方向沿いのデータが部分的となる問題が生ずる可能性がある。Aスキャン間の自己相関の実行およびそれによるデータのシフトに基づいて画像の後処理中に軸方向の動きを補正する試みがなされている。これらの種類の方法が効果を発揮し得る動きの範囲には限界があり、データが収集されるまで、データを診断目的に使用する際の問題を恐らく生じさせる動きが発生したか否か決定されない。
【0035】
図5は、先行技術の限界を克服することができるOCTシステムのz追跡の可能な実現を示す。OCTスキャナー501を使用するこの実施形態では、実際の操作取得を始める前に、数回のクイックOCT Bスキャン505を使用して撮像される領域の形状の近似モデルを生成する。1つの可能な実現は、走査される対象の領域について一定の間隔をおいて行われる3回の水平走査を得ることである。これらの3回のBスキャンからの深さ情報を使用して、撮像される領域全体の近似モデルを生成することができる。このモデルは、その後のデータについて一連の受け入れ可能なz値を与える。
図6は、正面OCT画像601を上述の数回のクイックBスキャンから再構築されたZ軸沿いの対応するモデル603とともに示す。このモデルを期待されるz位置の基準および走査される網膜上の特定の場所の厚さ602として使用する。任意の回数のBスキャンを収集し、それらが、眼球が軸方向次元に沿って比較的安定しているときに記録された場合に限り、モデルを生成するために使用することができる。また、患者の前の検査において収集されたBスキャンからモデルを生成することもできる。モデルを生成できる方法の1例を以下に示す:
1)各Bスキャンについて、閾値化方式を使用して、強度が特定の閾値より大きい画像中の領域として組織が識別される画像中の組織の領域を見出す。この閾値は適応可能であり、画像自身中の信号および雑音の特性に基づいて計算することができる。
【0036】
2)組織領域を決定した後、特定のBスキャンについて組織の絶対的な最上部および最下部のz軸値を特定することができる。
3)先ほど述べた3回のBスキャンからの最上部および最下部のポイントを使用して、2次多項式を最上段および最下段のポイントの組に別々に当てはめることに基づいてモデルを生成することができる(またはスプラインなどのその他の当てはめ方法)。データ・セット中の各Bスキャンの近似z位置も決定できる。これは、当てはめられたモデルの質量中心とすることができる。
【0037】
スキャン収集中、追跡装置は、OCT画像中の組織の最上部、最下部および中心を見出すことができ、かつ、決定システムは、計算された期待z位置を、このモデルを使用する基準として使用することにより、当該画像がz軸に沿って適切に配置されているか調べることができる。これは、事前に設定された限界により現在のフレーム中のOCT画像の最上部、最下部および質量中心を点検すること、および当該組織が画像中に適切に配置されているか否か決定することを含み得る。または、これは、モデル中の決定された他の目印または層を収集されるOCTデータと突き合わせることにより達成され得る。OCTデータが受け入れ可能な値の範囲内にないと決定された場合、データを再収集するか、または深さ位置調整(すなわち、基準ミラー位置)を変更して深さ位置を受け入れ可能範囲内として後処理方法の正常完了を確保することができる。
【0038】
別の可能性は、z位置モデル・プログラムを測定システム中に予め組み込むことにより、変化する解剖学的構造に合わせて測定システムが自分自身を自動的に調整するようにすることである。たとえば、OCTスキャナーの場合、基準ミラー位置を変更して事前計算モデルに基づいて画像を適切に位置づけすること、およびデータ取得中に必要に応じて追跡データを使用して基準ミラーを移動することができる。
ミラー・アーチファクト検知
OCT画像に伴う共通の課題は、組織がz次元に沿って準最適位置にあるときに鏡像が出現し、OCT画像を複雑化する「反射問題」である。画像の最上部、最下部および中心を見出す先ほど述べた方法を使用することにより、鏡像も決定システムにより受け入れることができる。なぜならば、鏡像は、実際の画像と同じ位置に出現し得るからである。ここで、反射された信号を検知し、その存在を決定システムに通知して、決定システムが測定システムに必要なデータの再取得を指示できるようにする方法について述べる。反射検知を行う1つの可能な実施形態を以下に示す:
干渉計のアームにおける色分散差によって反射された画像が良好な画像に比べてぼやけることがあることは、OCTの分野で知られている(たとえば、参照によりこの出願に含まれている米国特許第7,330,270号明細書参照)。これは、反射された画像における隣接ピクセル間の勾配すなわち強度差が良好な画像の場合より弱いという観察に通ずる。画像勾配の計算は、画像処理においてよく知られている。勾配は、横および縦の次元のポイントについて独立に計算することができ、また、組み合わせられて画像の鮮明さに対応するメトリックを与えることができる。ぼやけは、横方向次元に比べて軸方向次元において多いので、2つの次元沿いの勾配に相異なる重みを与えることもできる。勾配の結合測定量を画像中の実際の強度に関して正規化することにより、画像間で変化する信号特性を考慮することができる。この正規化測定量を計算した後、それを一連の画像から計算された閾値と比較することにより、考察対象の画像が反射されたものであるか否か決定することができる。正規化された測定量は反射された画像の場合により低く、かつ、正規の画像の場合により高いことが期待される。なぜならば、それは画像のぼやけを測定しているからである。閾値未満の測定量を有するOCT画像は鏡像であり、閾値より大きい測定量のOCT画像は正常な画像と考えられる。この情報を別の入力として決定システムに与え、反射された画像のOCTデータを拒絶し、正常な画像を受け入れることができる。
【0039】
反射された画像を識別する代替的方法は、データの曲率を、データを評価する方法として使用し、かつ、データを再取得するべきか、かつ/または基準ミラーを調整するべきか決定することである。これの1つの例は、深度値の増加に伴って凹んで見えるデータのみ受け入れ、かつ、深度値の増加に伴って凸状に見えるデータを拒絶することである。
決定システム
決定システム105は、各眼底画像に関する測定データを受け入れるかまたは拒絶するか決定する責任を有する。それを受け入れる場合、測定データは保持され、測定システムはデータが良好であった旨通知される。しかし、データが受け入れられない場合、決定システムは、測定システムにある特定のオフセットをもってデータを取り直すよう指示する。決定システムは、他の処理装置上で走行することも、上述した一つ又は複数の他のシステムを実行する同一の処理装置と資源を共用することもできる。請求項において用語、処理装置が使用される場合、それは、本発明の種々のステップを実行する単一または複数の処理装置を包含することを意図する。
【0040】
データを受け入れるかまたは拒絶するか否かに関する決定を下すために、決定システムは、多数の入力を使用することができる。これらの入力は、以下を含むがそれらには限られない:
1)現在のフレームに関する走査誤差
2)その後のフレームに関する走査誤差
3)測定データの検出されたz位置(該当する場合)
4)測定データの期待空間x、y位置
5)測定データの期待空間z位置(該当する場合)
6)測定取得開始以降の経過時間
7)測定取得終了までの残り時間
8)測定データの望ましい「精度」
現在のライブ・フレームから検知された動きの量のほかに、決定システムは、その後のライブ・フレームにおいて検知された動きからの情報も利用することができる。この情報を利用して決定をより着実にすることができる。眼底画像の取得に関する有限時間ウィンドウがある。この有限時間ウィンドウの終わり近くに発生した動きは、追跡装置により見逃される場合がある。しかし、実際の動きがあった場合、その動きは次のフレームから検知されるであろう。したがって、複数のフレームからの動き情報を有することは、測定データを受け入れるか/拒絶するかの決定をより強固にする。複数のフレームからの動き情報を使用して網膜の将来の位置を予測することもできる。この情報は、測定を取り直すよう要求された場合に、測定システムにフィードバックすることができる。
【0041】
測定データの空間位置(x,y)は、x−y平面において得られた測定値の組に対する測定データの相対的な位置である。たとえば、OCTキューブ・スキャンは、網膜の矩形領域において収集され、かつ、特定のオフセットによりお互いにずらされた一連のBスキャンから構成することができる。したがって各Bスキャンは、当該キューブ中の期待位置およびそれが撮像する網膜中における期待領域をもっている。OCTスキャンの場合、z方向の期待位置は、前述したモデル構造に基づいて存在するか、または以前に得られたスキャンからの情報に基づいて存在する。
【0042】
別の重要なパラメータは、測定データの特定の取得のために与えられる合計時間である。追跡システムは、特定の測定取得の開始以降の経過時間も測定することができる。上記の2つのパラメータから、測定取得の終了までに残っている時間を計算することができる。特定のスキャンのために与えられる時間は、収集することが望ましい測定データの量および使用される特定のスキャンの形式に基づくことができる。それは、ユーザによりシステムに対する入力として与えることもできる。
【0043】
「精度」は、決定システムが逆戻りとデータ再走査を決定する前に許容する「受け入れ可能な動き」または走査誤差の量として定義される。これは、定数または取得中に変化し得る変数値とすることができる。このパラメータがゆるやかであるほど、走査は早い。それがより大きい誤差を受け入れるからである。このパラメータを選択する決定は、患者がどれほど上手に凝視できるか、基礎となる測定において必要な精度の程度、およびユーザがデータを得るまでに待つことを嫌わない時間の長さに依存するであろう。このただ1つのパラメータは、上記考察事項すべての間のトレードオフを表現する。設定可能な「精度」のこの概念は、本発明の重要な態様である。ここで注目するべきことは、別々の精度パラメータがx、y、z次元に適用できること、またはただ1つの精度パラメータが複数の次元をともに、すなわち、xとyを評価するために使用できることである。本発明の1つの好ましい実施形態では、1つの精度パラメータをz次元について使用し、1つのパラメータをxとy次元について共同に使用する。
【0044】
ユーザは、走査の開始時に精度パラメータを指定することできる。この場合、それは、その走査を通じて定数である。その他の枠組みの場合、ユーザは、測定の特定の場所により高い重要性を与えることを欲し、したがってそのような領域の測定場所により小さい誤差を許容することがあろう。たとえば、
図7は、眼球の黄斑領域のOCTキューブ・データの2D投影701を示している。それは、精度パラメータが、画像の種々の領域間で空間的にどのように変更し得るかの一実施形態も示す。眼球の中央部の中心窩702は、眼球の視覚に影響を及ぼす最も重要な領域である。ここに示した図では、画像の中央部分は、中心窩を含み、かつ、最も高い精度を与えられている。周辺部に向かってデータの重要度は徐々に低くなるので、精度もこれらの領域では低減することができ、これらの領域のデータをより早く取得できることになる。精度パラメータは、取得時刻間にも依存して変えることができる。すなわち、スキャンの開始時において高い精度とし、スキャンが終わるまで残り時間が少ないときに低くする。精度パラメータを変える追加的実施形態も当業者により想像され得る。
【0045】
z次元が測定可能なOCTの場合、精度パラメータは、撮像される組織の局部厚さの関数とすることができる。これも一時的に変更することができる。
決定システムは、測定値の取り直しが必要であるか否か、すべての入力からのデータを組み合わせて決定する。本発明の1つの実現においては、ユーザが精度パラメータの一定の閾値を設定する。これにより決定システムは、指定された精度より少ない誤差ですべてのデータが取得されるまで測定データを取得するよう測定システムに指示する。別の例では、取得する最長時間をユーザが設定し、測定がこの事前設定最長時間を超えたとき、決定システムは、不良位置において取得された測定値を再取得することなく残りの測定を完了する。単一の画像フレームに関する単一の測定値または複数の測定値について動きが決定されるのであるから、眼球の短い衝動性の動きの場合に特定の画像フレームのみのために動きが受け入れられないと測定システムが決定した場合、特定の画像フレームに関するその測定を再取得することができ、かつ、対応する測定を再取得した後に、測定システムは、次の未測定場所に進み、追跡システムからの最新のオフセットによりデータ取得を継続する。代替的に、決定システムが一連の画像フレームについて受け入れられない変位を検知した場合、複数の測定を取り直す。
【0046】
別の実施形態では、決定システムは、スキャンから検知された組織の最上部および最下部が当該組織がスキャンの中に完全に捕捉されたことを保証する軸方向すなわちz方向の限界内にあるか否かに基づいて、OCTスキャンを保持するかまたは取り直すか決定し得る。決定システムは、OCTデータ中に反射があるか否かの情報を使用して再スキャンに関する決定を下すこともできる。
【0047】
本発明の1つの重要な態様は、測定システムが追跡システムまたは決定システムにより制約されないということである。特定の測定またはデータ・ポイントが良好でないと決定システムが指示した場合のみ、測定システムは逆戻りして与えられたオフセットによりスキャンを取り直すよう指示される。そうでない場合、測定システムは、所定のポイントにおいてデータの収集を継続する。これは、先行技術の網膜追跡システムとの重要な相違である。この場合、測定システムは、網膜が適度に安定しているときには現在位置においてデータを取得するまで先に進まない、または、「稼働中の」追跡装置は測定システムにより比較的に安定していると決定された網膜をスキャンの全期間を通じて保持するかのいずれかである。この差異は、眼球が動いたときと眼球が動いたことを追跡システムが認識したときの間に時間差があることを許容しつつ、使用される可能性のあるデータの収集の継続を可能とし、動きの少ない測定データを収集する効率的な方法を与える。
ユーザ・インターフェース(UI:User Interface)システム
ユーザ・インターフェース・システム106は、グラフィック・ユーザ・インターフェースを有するコンピュータ表示装置、キーボード、マウス、ジョイスティック等を含むがこれらに限られない装置から構成され得る。グラフィック・ユーザ・インターフェース(GUIまたはUI:graphical user interface)は、種々の要素を表示して追跡に関するフィードバックをユーザに与えるほか、必要な種々の措置を行うようユーザに指示する。OCT撮像データを効率的に表示する1つのユーザ・インターフェース・システムが参照により本出願に含まれている米国特許出願公開第2008/0100612号明細書により記述されている。この発明は、ユーザが現在の値に基づきリアルタイムで網膜追跡を制御することを可能とし、それにより最も効率的な方法によりデータを取得することを可能とする新しいUI要素を紹介する。OCT測定システムを使用する本発明の一実施形態について以下に説明する。しかし、この構想は、任意の測定システムおよび撮像システムに一般化することができる。この発明に関するUIの主な要素について以下において説明する。すべての要素の包含を要するわけではない。
【0048】
1)整列中および取得中の眼底撮像システムからの画像のライブ表示
2)眼底画像品質の表示:ライブ・ストリームからの眼底画像の品質をユーザに表示することができる。数値的表示またはグラフィック表示(棒グラフ、折れ線グラフ等)が可能である。この表示は、ユーザがより良い眼底画像を得るために整列中に患者の整列を調整することを可能にする。この表示が特に有益であるケースは、眼底画像の品質が低いために追跡ステップが進行することができない場合、およびフィードバック機構がユーザに良い品質の眼底画像を取得するために患者の整列の改善を指示するか、または撮像される被験者の解剖学的状態のために品質を改善できないときに追跡の打ち切りを指示する場合である。現在のライブ眼底画像の品質に加えて、以前のスキャンからの基準画像の品質も表示することができる(追跡装置が以前のスキャンの同じ場所に戻って使用される場合)。これは、静的な表示であるが、しかし一定の品質を有する以前のスキャンからの眼底画像を使用する追跡の成功する可能性に関するフィードバックを操作者に与える。
【0049】
3)測定データのライブ表示(この例の場合、OCT Bスキャン):これは、OCT Bスキャンが取得されたときのそのライブ表示である。これは、ユーザに現在取得中のデータを観察する能力を与える。
【0050】
4)x−y方向の追跡が成功したことを示す表示子(ボタン、ボックス、境界線等)
5)z方向の追跡が成功したかを示す表示子(ボタン、ボックス、境界線等)
6)測定データ取得の進行に関する表示子(数字、棒、境界線等)。たとえば、これは、スキャン進行のパーセンテージ形態の数値表示またはステータス・バーとすることができる。
【0051】
7)取得中にユーザが患者の整列を変更することを可能にするユーザによる一連の制御手段。これは、適切な瞳孔位置を通過するためのOCT光束の位置付け、眼底画像の焦点の変更、装置の顎当ての調整、z方向のOCT画像の位置付け等を含むことができる。
【0052】
8)ライブ眼底画像について測定データが取得されている場所に重なる表示要素。たとえば、キューブ・スキャンの場合、ボックスがライブ眼底画像上で移動して現在データが取得されている場所を指示することができる。
【0053】
9)データが取得されているときにOCTキューブ・データを使用し、かつ、そのデータを眼底画像上に重ねることによる正面画像の表示。これは、スキャン進行の視覚表示子の役割も果たし得る。すでに取得されたキューブの部分は塗りつぶされ、未取得の部分は空白となるからである。
【0054】
10)画像がz方向の視野の最上部または最下部に達したことまたは画像が見えないことによるz追跡不良の場合に、ユーザに正負いずれかのz方向に移動して画像を範囲内に戻すように指示する表示子。
【0055】
11)ユーザがx−y次元およびz次元沿いの追跡装置の期待精度パラメータを入力する選択肢。これは、キーボードを使用する数値入力、ノブ、スライダ・バー、または一つ又は複数のボタンを含むがそれらに限られない多くの方法により達成し得る。
【0056】
12)ユーザがスキャン中に必要に応じて精度パラメータを変更する入力選択肢
13)すべての追跡を停止するユーザ制御入力。これは、ボタンまたはスイッチとし、必要に応じてスキャン中に起動することができる。システムは、この場合には、追跡せずにやはりスキャンを完了する。
【0057】
14)必要に応じて、z次元のみの追跡を中止するユーザ制御入力。この場合、システムは、x−y追跡のみでスキャンを完了する。
15)必要に応じて、x−y次元のみの追跡を中止するユーザ制御入力。この場合、システムは、z追跡のみでスキャンを完了する。
【0058】
16)走査の収集の最長時間を指定するユーザ制御入力。スキャンが指定再長時間を超えた場合、システムは自動的に追跡を打ち切り、スキャンを完了する。
上記選択のいくつかを含むサンプル・ユーザ・インターフェースの構成要素を
図8および
図9に示す。患者の眼球の瞳孔に関する整列を表示装置の左上ウィンドウ801に示す一方、眼底画像のライブ・ストリームを左下ウィンドウ802に示す。ウィンドウ801の隣の制御手段は、患者に対する装置の位置付けに対する調整を可能にし、かつ、眼底画像の改善の可能性をもたらし得る。調節可能着色フレーム809およびライブ品質表示バー810を使用して眼底撮像装置からの各画像の品質を指定する。このフレームは、このフレームの品質が追跡に使用するために十分に高い場合には緑色に着色され、品質がある所定の閾値を下回った場合には赤色に変化し得る。ボタン803は、ユーザによる追跡の開始または終了を可能とする一方、ボタン804は、
図9に示すポップアップ・ウィンドウを起動する。このウィンドウは、ユーザによる秒単位の最長走査時間および追跡の総合精度値(目盛1〜10)の入力を可能にする。Bスキャン805および806は、眼底画像802の中心に示されている十字線を構成する水平線および垂直線に対応する一方、Bスキャン807および808は、眼底画像上に示されている最上部および最下部の水平線に対応する。
結果
図10および
図11は、OCTおよびLSOシステムを使用する本発明の一部の態様の比較的長所を示す。
図10は、LSO 1002から生成された眼底画像上に重ねられたOCT正面画像1001(参照により本出願に含まれている米国特許第7,301,644号明細書において記述されている技術に従ってx−yにおける各ピクセルに関するz次元沿いの強度値の部分積分によるOCT体積から生成された)を示す。この図のOCTデータは、追跡なしに収集された。走査中の患者の動きの影響がOCT正面画像1003における血管の中断としてはっきり見える。
図11は、xおよびy次元における追跡を行いつつ同一患者について収集された眼底画像1102の上に重ねられたOCT正面画像1101を示す。スキャン中の患者の動きの影響は低減されており、血管は連続しているように見える。
【0059】
図12は、走査のzすなわち軸次元沿いのz追跡によるOCT画像の改善を示す。12(a)と印されている左側は、追跡なしのOCTシステムにより収集されたBスキャンを示す。患者がz方向に動いたために、鏡像すなわち、倒立像1201がシステムにより収集された。12(b)と印されている右側は、この発明において記述されているz追跡を行うシステムにより収集された同じ眼球のBスキャン1202を示す。同様な患者の動きが両方の走査において存在したが、z追跡を行うシステムは、鏡像を検知し、良好な画像のみ受け入れることができ、その結果として眼球の実際の生理学的状態を表す優れた画像品質をもたらした。
【0060】
本発明の教示を包含する種々の実施形態について本出願において詳細に図示・記述したが、当業者は容易に複数の変更されたその他の実施形態を容易に案出することができ、それらは依然として本教示中に含まれる。
【0061】
以下の参考文献は、参照により本出願に含まれる:
米国特許文献
米国特許第4,856,891号明細書 プリブセン(Pflibsen)他「眼底追跡装置/安定装置(Eye fundus tracker/stabilizer)」
米国特許第5,321,501号明細書 スワンソン(Swanson)他「サンプルの長手方向距離を制御する手段を有する撮像のための方法および装置(Method and apparatus for optical imaging with means for controlling the longitudinal range of the sample)」
米国特許第5,920,373号明細書 ビル(Bille)「角膜の光学的特性を測定する方法および装置(Method and apparatus for determining optical characteristics of a cornea)」
米国特許第5,975,697号明細書 ポドリーヌ(Podoleanu)他「調整可能深さ分解能を有する光学マッピング装置(Optical mapping apparatus with adjustable depth resolution)」
米国特許第6,325,512号明細書 ウェイ(Wei)「網膜追跡補助光学コヒーレンス・トモグラフィー(Retinal tracking assisted optical coherence tomography)」
米国特許第6,655,805号明細書 フジエダ(Fujieda)他「眼科装置(Ophthalmic apparatus)」
米国特許第6,726,325号明細書 サイ(Xie)他「追跡補助光学コヒーレンス・トモグラフィー(Tracking assisted optical coherence tomography)」
米国特許第6,736,508号明細書 サイ(Xie)他「追跡補助光学手順(Tracking assisted optical procedure)」
米国特許第7,113,818号明細書 ロジャーズ(Rogers)他「運動組織の高解像度撮像装置(Apparatus for high resolution imaging of moving organs)」
米国特許第7,301,644号明細書 ナイトン(Knighton)他「解剖学的構造マッピングのための高度化光学コヒーレンス・トモグラフィー(Enhanced optical coherence tomography for anatomical mapping)」
米国特許第7,330,270号明細書 オハラ(O’Hara)他「周波数領域光学コヒーレンス・トモグラフィーにおけるアーチファクトを抑止する方法(Method to suppress artifacts in frequency−domain optical coherence tomography)」
米国特許第7,365,856号明細書 エヴェレット(Everett)他「光学コヒーレンス・トモグラフィー撮像における動き補正の方法(Method of motion correction in optical coherence tomography imaging)」
米国特許第7,404,640明細書 フェルグソン(Ferguson)他「ライン走査レーザ検眼鏡を利用する網膜血流監視(Monitoring blood flow in the retina using a line-scanning laser ophthalmoscope)」
米国特許第7,458,684号明細書 フクマ(Fukuma)他「眼底観察装置(Fundus observation device)」
米国特許第7,527,378号明細書 フクマ(Fukuma)他「眼底観察装置(Fundus observation device)」
米国特許第7,480,396号明細書 テイウェス(Teiwes)他「眼球診療のための多次元眼球追跡および位置測定システム(Multidimensional eye tracking and position measurement system for diagnosis and treatment of the eye)」
米国特許第7,643,154号明細書 ツトム(Tsutomu)他「光学像測定装置(Optical image measurement device)」
米国特許第7,756,311号明細書 ヤスノ(Yasuno)他「光学像測定装置、光学像測定プログラム、眼底観測装置、および眼底観測プログラム(Optical image measuring device, optical image measuring program, fundus observation device, and fundus observation program)」
米国特許第7,777,893号明細書 ツトム(Tsutomu)他「光学像測定装置(Optical image measurement device)」
特許第7,789,511号明細書 ヒロユキ(Hiroyuki)他「眼球運動測定装置、眼球運動測定方法および記録媒体(Eye movement measuring apparatus, eye movement measuring method and recording medium)」
米国特許第7,805,009号明細書 エヴェレット(Everett)他「撮像システムからの一連の部分的映像を利用して被写体の運動を測定する方法および装置(Method and apparatus for measuring motion of a subject using a series of partial images from an imaging System)」
米国特許出願公開第2005/0270486号明細書 テイヴェス(Teiwes)他「網膜の診断または手術用装置のための映像に基づく眼球追跡の方法および装置(Method and apparatus for image-based eye tracking for retinal diagnostic or surgery device)」
米国特許出願公開第2009/0141240号明細書 ワイツ(Weitz)他「微小視野計測および視力検査を行う方法(Method for performing micro-perimetry and visual acuity testing)」
米国特許出願公開第2010/0053553号明細書 ジンセル(Zinser)他「網膜診断の方法および装置(Method and apparatus for retinal diagnosis)」
米国特許出願公開第2007/0291277号明細書 エヴェレット(Everett)他「スペクトル領域光学コヒーレンス・トモグラフィー・システム(Spectral domain optical coherence tomography system)」
米国特許出願公開第2010/0118132号明細書 ツトム(Tsutomu)他「光学測定装置(Optical measurement device)」
他の文献
ポドリーヌ(Podoleanu)他「結合マルチプラナー光学コヒーレンス・トモグラフィーおよび共焦点走査検眼鏡検査法(Combined multiplanar optical coherence tomography and confocal scanning ophthalmoscopy)」ジャーナル・オブ・バイオメディカル・オプティクス(Journal of Biomedical Optics)9(1):p.86−93,2004年.
イプ(Ip)他「光学コヒーレンス・トモグラフィーのための眼底に基づく眼球追跡装置(Fundus based eye tracker for optical coherence tomography)」IEEE EMBS論文集(Proceedings of IEEE EMBS)2:1505〜8頁,2004年.