(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態は、通常駆動パルスのチョッパ休止期間において通常駆動パルスを出力したモータドライバの端子とは異なる端子から調整パルスを出力し、調整パルスの出力パターンを変化させ、駆動力を細かく制御するものである。以下、本発明に係る第1の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明の第1の実施の形態の電子時計の回路構成を示すブロック線図、
図2〜
図7は本発明の第1の実施の形態の電子時計の回路が発生する各種パルスの波形図であり、(a)はコイルの一方の端子O1に発生する電圧波形で、7つのサブパルスからなる1群のチョッパ駆動パルスを示し、(b)はコイルの他方の端子O2に発生する電圧波形で、サブパルスの休止区間a1に発生する7〜0のサブパルスからなる1群の調整パルスを示している。(c)はコイルに発生する電流波形である。なお、端子O1とO2の発生波形は1ステップごとに位相が逆になる交番パルスとなる。本発明の
図8〜
図9は本発明の第1の実施の形態の電子時計のモータドライバの状態を表す等価回路図、
図10は本発明の第1の実施の形態の電子時計および従来の電子時計のステップモータの1ランク毎の消費電流の変化を比較した図となる。
【0017】
図1において、1は電源、2は水晶振動子(不図示)の発振により基準クロックを生成する発振回路211と、発振回路211からの基準信号を分周する分周回路212で構成される基準信号生成回路である。3は基準信号生成回路2に基づいて、
図2〜
図6(a)に示す如き、3.5ms幅で0.5msごとにチョッパデューティ比が28/32のパルスを生成する通常駆動パルス生成回路である。なお、デューティ比28/32のチョッパ出力後、次のチョッパが出力されるまでの区間(例えば、
図2の「a1」)を「休止区間」と呼ぶ。第1実施例では、後述のいずれのランクでも、通常駆動パルスのチョッパデューティ比は28/32で固定である。
【0018】
なお、
図2〜
図6(a)に示される波形は、後述のモータドライバ8のO1端子から出力された信号を示すものであり、実際に通常駆動パルス生成回路3から出力される元信号は、高電位と低電位が反転した信号である。
【0019】
4は基準信号生成回路2に基づいて、
図2〜
図5(b)に示す如き、チョッパデューティ比が4/32の調整パルスを生成する調整パルス生成回路である。調整パルスは、前記通常駆動パルスの出力休止期間(例えば、「a1」)中に出力されるサブパルス(例えば、「a2」)で構成され、期間A〜Gの全てにおいてサブパルスが出力される
図2(b)、期間B〜Gでサブパルスが出力される
図3(b)、期間C〜Gでサブパルスが出力される
図4(b)、期間D〜Gでサブパルスが出力される
図5(b)、サブパルスが出力される期間のない
図6(b)というように異なる波形パターンが生成される。調整パルス生成回路4は後述するパルス駆動ランク選択回路11に基づき、異なる調整パルスの波形パターンから選択し出力する。
【0020】
なお、
図2〜
図6(b)に示される波形は、後述のモータドライバ8のO2端子から出力された信号を示すものであり、実際に調整パルス生成回路4から出力される元信号は、高電位と低電位が反転した信号である。
【0021】
5は基準信号生成回路2に基づいて補正駆動パルスを生成する補正駆動パルス生成回路であり、6は基準信号生成回路2に基づいて回転検出パルスを生成する回転検出パルス生成回路である。
【0022】
7はセレクタであり通常駆動パルス生成回路3、調整パルス生成回路4、補正駆動パルス生成回路5、回転検出パルス生成回路6から出力されるパルスを後述する回転検出回路10の判定結果に基づいて選択し出力する。8はモータドライバであり、セレクタ7から出力される信号を後述する2極ステップモータ9のコイル(不図示)に供給するとともに、後述するステップモータ9のロータ(不図示)の回転状態を、後述する回転検出回路10に伝える。このため、モータドライバ8には、ステップモータ9のコイルへの供給用に、O1,O2の2個の出力端子を有する。
【0023】
9はコイル(不図示)およびロータ(不図示)から構成されるステップモータであり、輪列(不図示)を介して指針(不図示)を駆動する。
【0024】
10はステップモータ9のロータの回転、非回転を判定し、セレクタ7および後述するパルス駆動ランク選択回路11およびカウンタ回路12を制御する回転検出回路である。
【0025】
11はパルス駆動ランク選択回路であり、回転検出回路10でロータが非回転と検出された場合や後述するカウンタ回路12で所定回数ロータが回転とカウントされた場合に、所定の値を選択し調整パルスの出力パターンを変動させ、調整パルス生成回路4を制御する。
【0026】
12はカウンタ回路であり、ステップモータ9のロータ(不図示)が回転と判定した回数をカウントし、パルス駆動ランク選択回路11を制御する。カウンタ回路12は、さらに、ロータの非回転判定時にはリセットされ、連続して回転判定した回数を計数するように構成される。
【0027】
なお、パルス駆動ランク選択回路11において調整パルスのサブパルス出力期間A〜G(
図2)、期間B〜G(
図3)、期間C〜G(
図4)、期間D〜G(
図5)、期間E〜G、期間F〜G、期間G、調整パルス出力期間無し(
図6)を選択するパルス駆動ランク選択回路11の値を2進数で「000」、「001」、「010」、「011」、「100」、「101」、「110」、「111」と設定すれば、パルス駆動ランク選択回路11は、3bitの2進カウンタで構成可能である。なお、このカウンタの値が、ランクに相当する。
【0028】
そして、パルス駆動ランク選択回路11は、回転検出回路10でロータが非回転と検出された場合に、カウントアップ(インクリメント)されて調整パルスの出力が少ない波形パターンを選択し、カウンタ回路12で所定回数ロータが回転とカウントされた場合にカウントダウン(デクリメント)されて、調整パルスの出力が多い波形パターンを選択する。
【0029】
次に
図7〜
図9を用いてモータドライバ8の動作について説明する。
【0030】
図7(a)、
図7(b)の電圧波形のパルス幅、デューティ比は
図2と同様である。
図7(c)は
図7(a)、
図7(b)の電圧波形が出力された場合のコイルに発生する電流波形であり、期間Aで調整パルスを出力する場合の電流波形を破線で示し、期間Aで調整パルスを出力しない場合の電流波形を実線で示してある。
【0031】
図8は、前記モータドライバ8の構成を示す等価回路図である。21pは制御信号φp1をゲート入力し、ソースが電源1のプラス側に接続され、ドレイン側がO1端子に接続されたPMOSトランジスタであり、21nは制御信号φn1をゲート入力し、ソースが電源1のマイナス側に接続され、ドレイン側がO1端子に接続されたNMOSトランジスタであり、各ソースドレイン間には、MOSトランジスタの構造上生じる寄生ダイオード23pと23nが接続される。また、22pは制御信号φp2をゲート入力し、ソースが電源1のプラス側に接続され、ドレイン側がO2端子に接続されたPMOSトランジスタであり、22nは制御信号φn2をゲート入力し、ソースが電源1のマイナス側に接続され、ドレイン側がO2端子に接続されたNMOSトランジスタであり、各ソースドレイン間には、MOSトランジスタの構造上生じる寄生ダイオード24pと24nが接続される。O1端子とO2端子の間には、前記ステップモータ9を構成するコイル25とそのコイル25の直流抵抗成分26が直列に接続される。尚、MOSトランジスタ21p、21n、22p、22nの各ゲートに入力される制御信号φp1、φn1、φp2、φn2は、前記通常駆動パルスおよび調整パルスを構成する信号である。
【0032】
具体的には、φp1、φn1には、通常駆動パルス生成回路3から出力される元信号がセレクタ7を介して出力され、φp2、φn2には、調整パルス生成回路4から出力される元信号がセレクタ7を介して出力される。モータドライバ8は実質インバータとして構成され、両元信号は
図2〜6に記載の図の反転信号として出力されるため、O1,O2には、
図2〜6に記載の信号波形が出力される。
【0033】
図7において、通常(時刻t0より前)、O1端子及びO2端子が共にGND(+)で同電位になっているため、前記モータドライバ8は
図9(a)に示すような等価回路状態となっている。即ち、前記PMOSトランジスタ21pと22pが共にオンしているため、それぞれ低抵抗210p、220pで示される。また、前記NMOSトランジスタ21nと22nは共にオフしているため、それぞれ前記寄生ダイオード23nと24nで示される。この場合、O1端子及びO2端子が共にGND(+)で同電位になる為、コイル25に流れる電流はゼロである。
【0034】
時刻t0になると、前記通常駆動パルス生成回路3からの通常駆動パルスが、セレクタ7によりモータドライバ8から選択し出力され、O1端子がLowレベル、O2端子がHighレベルとなるため、コイル25に電流が流れて前記ステップモータ9が回転を始める。この時、前記モータドライバ8は
図9(b)に示すような等価回路状態となっている。即ち、前記PMOSトランジスタ22pと、前記NMOSトランジスタ21nが共にオンしているため、それぞれ低抵抗220p、210nで示される。また、前記PMOSトランジスタ21pと前記NMOSトランジスタ22nは共にオフしているため、それぞれ前記寄生ダイオード23pと24nで示される。モータドライバ8に流れる電流31は、前記電源1から、低抵抗220p→O2端子→直列抵抗成分26→コイル25→O1端子→低抵抗210nの方向で流れ、消費する方向である。
【0035】
時刻t1になると、前記通常駆動パルスが停止する。O1端子及びO2端子が共にGND(+)で同電位になり、コイル25への通電が遮断される。しかし、
図7(c)破線に示すようにコイルに流れる電流はすぐにはゼロにはならない。
【0036】
このとき、前記モータドライバ8は
図9(c)に示すような等価回路状態となっている。即ち、前記PMOSトランジスタ21pと22pが共にオンしているため、それぞれ低抵抗210p、220pで示される。また、前記NMOSトランジスタ21nと22nは共にオフしているため、それぞれ前記寄生ダイオード23nと24nで示される。モータドライバ8に流れる電流32は、コイル25から、O1端子→低抵抗210p→低抵抗220p→O2端子→直列抵抗成分26の方向で流れている。
【0037】
そして、直後に調整パルスが出力される場合(
図7(b)に示す破線)、前記ステップモータ9を回転させるための時刻t0からt1の駆動パルスとは逆となる、O1端子がHighレベル、O2端子がLowレベルとする。そして、前記モータドライバ8は
図9(d)に示すような等価回路状態となる。即ち、前記PMOSトランジスタ21pと、前記NMOSトランジスタ22nが共にオンしているため、それぞれ低抵抗210p、220nで示される。また、前記PMOSトランジスタ22pと前記NMOSトランジスタ21nは共にオフしているため、それぞれ前記寄生ダイオード24pと23nで示される。
【0038】
この時、起電力を発生しているコイル25と電源1が、低抵抗210pと低抵抗220nと直列抵抗成分26を介して並列接続される構成となる。即ち、前記モータドライバ8には、前記コイル25からO1端子→低抵抗210p→電源1→低抵抗220n→O2端子→直列抵抗成分26の方向で流れる電流33と、前記電源1から低抵抗210p→O1端子→コイル25→直列抵抗成分26→O2端子→低抵抗220nの方向で流れる電流34が合成された電流が流れるが、時刻t0からt1の通常駆動パルスの時間幅が時刻t1からt2の調整パルスの時間幅に対して十分大きいため、電流33は支配的となっている。前記電流33は電源1を充電、電力を回収する方向となるが、ステップモータ9を回転させる方向である電流33を減らすことにもなるため調整パルスを出力することで駆動力としては落ちる。
【0039】
時刻t2になると、前記調整パルスが停止し、前記通常駆動パルス生成回路3からの通常駆動パルスが、セレクタ7によりモータドライバ8から選択し出力され、O1端子がLowレベル、O2端子がHighレベルとなるため、前記ステップモータ9を回転させる方向にコイル25に電流が流れる。即ち、前記モータドライバ8は瞬間的にO1端子及びO2端子が共にGND(+)で同電位になる為、
図9(c)のような等価回路状態を介し、
図9(b)に示すような等価回路状態に再び戻り、期間Aでの動作は終了する。以上の動作を期間B〜Gに関しても繰り返し行う。
【0040】
尚、時刻t1からt2の調整パルスの時間幅は、時刻t0からt1の通常駆動パルスの時間幅よりも少なくとも小さくなければならない。調整パルスの時間幅が通常駆動パルスの時間幅よりも大きいと、前記ステップモータ9の回転に影響を与えてしまう恐れがあるからである。
【0041】
また時刻t1からt2において調整パルスを出力しない場合(
図7(b)に示す実線)、O1端子及びO2端子が共にGND(+)で同電位になり、コイル25への通電が遮断されている。但し、
図7(c)実線に示すようにコイルに流れる電流はすぐにはゼロにはならない。このとき、前記モータドライバ8は
図9(c)に示すような等価回路状態となり、電流32によりステップモータ9は回転を維持する。調整パルスを出力したときに比べ、回転方向の電流を減らす電流成分がないため、駆動力としては高くなる。即ち、調整パルス出力の有無でステップモータ9の駆動力制御が可能となる。
【0042】
続いて
図1の構成の動作について説明する。まずA〜Gの全ての期間で調整パルスが出力する
図2のパルスで駆動し、回転検出回路6でロータが非回転と判定された場合、補正駆動パルスを出力し、ステップモータ9を確実に回転させると同時にパルス駆動ランク選択回路11の値が「000」から「001」にインクリメントされ、その値に基づきB〜Gの期間で調整パルスが出力する
図3のパルスを選択し、次ステップは、
図2のパルスより駆動力の高い
図3のパルスでステップモータ9を駆動する。
【0043】
また、
図3のパルスで駆動しても回転検出回路6でロータが非回転と判定された場合、補正駆動パルスを出力し、ステップモータ9を確実に回転させると同時にパルス駆動ランク選択回路11の値が「001」から「010」にインクリメントされ、その値に基づきC〜Gの期間で調整パルスが出力する
図4のパルスを選択し、この次のステップは
図3の通常駆動パルスより駆動力の高い
図4のパルスでステップモータ9を駆動する。
【0044】
さらに、
図4のパルスで駆動しても回転検出回路6でロータが非回転と判定された場合も同様に、補正駆動パルスを出力し、ステップモータ9を確実に回転させると同時にパルス駆動ランク選択回路11の値が「010」から「011」にインクリメントされ、その値に基づきD〜Gの期間で調整パルスが出力する
図5のパルスを選択し、その次のステップは
図4のパルスより駆動力の高い
図5のパルスでステップモータ9を駆動する。最終的に「111」までインクリメントされると、A〜G全ての期間において調整パルスが出力されない
図6のパルスを選択し、ステップモータ9を駆動する。このように期間Aから期間Gまで順に調整パルスの出力を停止していくことで駆動力が高くなる。
【0045】
そして、仮に
図5のパルスで駆動し、ロータが回転したと判定した回転検出回路10の検出信号を、
図1に示すカウンタ回路12が所定回数(例えば、256回)連続で回転をカウントした際、パルス駆動ランク選択回路11の値は「011」から「010」にデクリメントされ、
図5より駆動力の低い
図4のパルスを選択しステップモータ9を駆動する。
図4のパルスで駆動した場合も同様に、回転検出回路10のロータの回転判定信号をカウンタ回路12が所定回数連続で回転をカウントした際、パルス駆動ランク選択回路11の値は「010」から「001」にデクリメントされ、
図3のパルスでステップモータ9を駆動する。さらに、
図2のパルスで駆動した際も、回転検出回路10のロータの回転判定信号をカウンタ回路12が所定回数連続で回転をカウントしパルス駆動ランク選択回路11の値がデクリメントされると、次のステップには
図1のパルスでステップモータ9を駆動する。即ち、「111」から「000」までカウンタ回路12が所定回数連続で回転をカウントしたときに、順に1ランクずつデクリメントされる。
【0046】
続いて、第1の実施の形態のランク「000」、「001」、「010」、「011」、「100」、「101」、「110」、「111」のステップモータ9のランクごとの消費電流変化量と従来の通常駆動パルスのチョッパ毎に全てのデューティ比を21/32から28/32(第1の実施の形態のランク「111」に相当する)まで1/32ずつ変化させステップモータ9のランクごとの消費電流変化量とを比較した、出願人の実験測定結果を
図10に示す。
【0047】
図10の塗りつぶしされた丸いプロットが第1の実施形態の測定結果を示し、図面に対して左側のプロットからランク「000」、「001」、「010」、「011」、「100」、「101」、「110」、「111」となっている。そして塗りつぶしされていない四角いプロットが従来の構成の測定結果を示し、図面に対して左側のプロットからデューティ比21/32、22/32、23/32、24/32、25/32、26/32、27/32、28/32となっている。従来の構成では1ランクアップ当たりの消費電流変化量が30〜50nAであるのに対し、第1の実施の形態では20〜30nAに抑えられており、駆動力を細かく制御できていることがわかる。
【0048】
即ち、従来では、通常駆動パルスのチョッパ毎に全てのデューティ比を1/32ずつ変化させており、例えば、第1の実施の形態では通常駆動パルス数が7つであるため、1ランクアップ当たりの実行デューティの変化量としては1/32×7(パルス数)=7/32となるが、本発明では調整パルスの出力を期間Aから期間Gまで順に1パルスずつ出力を停止していく方式で、例えば第1の実施形態では調整パルスのデューティを4/32と設定しており、1ランクアップ当たりの実行デューティの変化量としては4/32となるため、従来に比べて細かい駆動力制御ができる。
【0049】
以上のように、本発明では通常駆動パルスを変化することなしに調整パルスの出力パターンを制御するだけで逓倍回路等を用いなくとも細かな駆動力制御が可能となると同時に、駆動力変動時の消費電流の増加量も小さく抑えることができ、個々の消費電流のバラツキも低減できる。
【0050】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、第1の実施の形態に対して1ランクアップ当たりの駆動力の変化量をより小さくする制御方法の例である。以下、本発明に係る第2の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0051】
第2の実施の形態の電子時計の回路構成を示すブロック線図は
図1と同じであるため、これを援用して説明することとする。
図11は本発明の第2の実施の形態の電子時計の回路が発生する通常駆動パルスの波形図であり、(a)はコイルの一方の端子O1に発生する電圧波形、(b)はコイルの他方の端子O2に発生する電圧波形である。なお、端子O1とO2の発生波形は1ステップごとに位相が逆になる交番パルスとなる。
図2、
図3も本発明の第2の実施の形態の電子時計の回路が発生する通常駆動パルスの波形図だが、第1の実施の形態と同様であり援用する。なお第1の実施形態で説明したものと同じ構成要素には同じ番号をつけて説明を省略する。
【0052】
図1についての説明は、第1の実施形態において説明したものと同様であるから、重複する部分についてはそちらを参照されたい。本実施形態において調整パルス生成回路4は基準信号生成回路2に基づいて、
図2(b)、
図3(b)、
図11(b)に示す如き、チョッパデューティ比が4/32と2/32の調整パルスを生成する。調整パルスは前記通常駆動パルス出力休止期間中に出力する。期間Aにおいて調整パルスのデューティ比が4/32である
図2(b)、期間Aにおいて調整パルスが出力しない
図3(b)、期間Aにおいて調整パルスのデューティ比が2/32である
図11(b)で構成され、期間B〜Gに関しては調整パルスのデューティ比は4/32で構成される。調整パルス生成回路4はパルス駆動ランク選択回路11に基づき、異なる調整パルスの波形パターンから選択し出力する。モータドライバ8の動作に関して調整パルス出力方式は同様であるため、説明を省略する。なお、デューティ比が短くなることで調整パルスの時間幅が小さくなるため、ステップモータ9を回転させる方向である
図9(d)の電流33の減少分は小さくなり駆動力としては上がる。
【0053】
次に、パルス駆動ランク選択回路11において調整パルス出力期間Aのデューティ比4/32(
図2)、2/32(
図11)、0/32(
図3、調整パルス出力無し)を選択するパルス駆動ランク選択回路11の値を2進数で「00」、「01」、「10」と設定すれば、パルス駆動ランク選択回路11は、2bitの2進カウンタで構成可能である。なお、このカウンタの値が、第1の実施の形態と同様ランクに相当する。 そして、パルス駆動ランク選択回路11は、回転検出回路10でロータが非回転と検出された場合に、カウントアップ(インクリメント)されて調整パルスのデューティ比が小さい波形パターンを選択し、カウンタ回路12で所定回数ロータが回転とカウントされた場合にカウントダウン(デクリメント)されて、調整パルスのデューティ比が大きい波形パターンを選択する。
【0054】
続いて
図1の構成の動作について説明する。まず期間Aでデューティ比4/32の調整パルスが出力する
図2のパルスで駆動し、回転検出回路6でロータが非回転と判定された場合、補正駆動パルスを出力し、ステップモータ9を確実に回転させると同時にパルス駆動ランク選択回路11の値が「00」から「01」にインクリメントされ、その値に基づき期間Aでデューティ比2/32の調整パルスが出力する
図11のパルスを選択し、次ステップは、
図2のパルスより駆動力の高い
図11のパルスでステップモータ9を駆動する。
【0055】
また、
図11のパルスで駆動しても回転検出回路6でロータが非回転と判定された場合、補正駆動パルスを出力し、ステップモータ9を確実に回転させると同時にパルス駆動ランク選択回路11の値が「01」から「10」にインクリメントされ、その値に基づき期間Aで調整パルスが出力しない
図3のパルスを選択し、この次のステップは
図11の通常駆動パルスより駆動力の高い
図3のパルスでステップモータ9を駆動する。このように順に調整パルスのデューティ比を小さくしていくことで駆動力が高くなる。
【0056】
そして、仮に
図3のパルスで駆動し、ロータが回転したと判定した回転検出回路10の検出信号を、
図1に示すカウンタ回路12が所定回数(例えば、256回)連続で回転をカウントした際、パルス駆動ランク選択回路11の値は「10」から「01」にデクリメントされ、第1の実施の形態と同様、上記と同じ手順で「00」まで順に1ランクずつデクリメントされる。
【0057】
以上のように第2の実施の形態では調整パルスのデューティ比を変化させることで細かな駆動力制御を可能とした。即ち、第2の実施の形態では調整パルスのデューティ比を2/32ずつ変化させているため、1ランクアップ当たりの実行デューティの変化量は2/32となる。第1の実施の形態では1ランクアップ当たりの実行デューティの変化量は4/32であるため、第1の実施の形態に比べて半分程度実行デューティの変化量を抑えることを可能とした。今回第2の実施の形態では期間Aのみ調整パルスのデューティ比を変化させたが、期間B〜Gにおいても第1の実施の形態と組み合わせて順に同じ手順で1パルスずつ調整パルスのデューティ比を変化させていくことで、さらに高分解能なランク設定も可能となる。
【0058】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、1ランクアップ当たりの駆動力の変化量を小さくすると同時に第1、第2の実施の形態に比べてより高分解能なランク設定を可能とした制御方法の例である。以下、本発明に係る第3の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0059】
図12は本発明の第3の実施の形態の電子時計の回路構成を示すブロック線図、
図13、
図14は本発明の第3の実施の形態の電子時計の回路が発生する通常駆動パルスの波形図であり、(a)はコイルの一方の端子O1に発生する電圧波形、(b)はコイルの他方の端子O2に発生する電圧波形、(c)はコイルに発生する電流波形である。なお、端子O1とO2の発生波形は1ステップごとに位相が逆になる交番パルスとなる。
図2、
図3、
図11も本発明の第3の実施の形態の電子時計の回路が発生する通常駆動パルスの波形図だが、第1および第2の実施の形態と同様であり援用する。
図15は本発明の第3の実施の形態の電子時計および従来の電子時計のステップモータの1ランク毎の消費電流の変化を比較した図となる。なお第1および第2の実施形態で説明したものと同じ構成要素には同じ番号をつけて説明を省略する。
【0060】
図12において、基本的な構成は
図1と同様であるため、重複する部分については第1の実施の形態を参照されたい。
【0061】
本実施形態において通常駆動パルス生成回路3は基準信号生成回路2に基づいて
図2(a)、
図3(a)、
図11(a)、図
13(a)、図
14(a)に示す如き、チョッパデューティ比が28/32の通常駆動パルスを生成する固定部311と
図3(a)、
図12(a)、
図13(a)に示す如き、それぞれ期間Aにおいて
、休止区間のチョッパデューティ比が0/32、2/32、4/32の通常駆動パルスを生成する変動部312を有する。
変動部312に続いて
固定部311の通常駆動パルス
が出力されるよう構成される。通常駆動パルス生成回路3の変動部312はパルス駆動ランク選択回路11に基づき、異なるチョッパデューティ比を選択し出力する。
【0062】
本実施形態において調整パルス生成回路4は第2の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0063】
次に、パルス駆動ランク選択回路11において期間Aの調整パルスのデューティ比が4/32(
図2)、2/32(
図11)、調整パルスおよび通常駆動パルスの変動部312のデューティ比が0/32(
図3)、通常駆動パルスの変動部312
における休止区間のデューティ比が2/32(図
13)、4/32(図
14)を選択するパルス駆動ランク選択回路11の値を2進数で「000」、「001」、「010」、「011」、「100」と設定すれば、パルス駆動ランク選択回路11は、3bitの2進カウンタで構成可能である。なお、このカウンタの値が、第1および第2の実施の形態と同様ランクに相当する。そして、パルス駆動ランク選択回路11は、回転検出回路10でロータが非回転と検出された場合に、カウントアップ(インクリメント)されて調整パルスのデューティ比が小さいあるいは通常駆動パルスのデューティ比が大きい波形パターンを選択し、カウンタ回路12で所定回数ロータが回転とカウントされた場合にカウントダウン(デクリメント)されて、調整パルスのデューティ比が大きいあるいは通常駆動パルスのデューティ比が小さい波形パターン選択する。
【0064】
続いて
図12の構成の動作について説明する。まず期間Aでデューティ比4/32の調整パルスが出力する
図2のパルスで駆動し、回転検出回路6でロータが非回転と判定された場合、補正駆動パルスを出力し、ステップモータ9を確実に回転させると同時にパルス駆動ランク選択回路11の値が「000」から「001」にインクリメントされ、その値に基づき期間Aでデューティ比2/32の調整パルスが出力する
図11のパルスを選択し、次ステップは、
図2のパルスより駆動力の高い
図11のパルスでステップモータ9を駆動する。
【0065】
また、
図11のパルスで駆動しても回転検出回路6でロータが非回転と判定された場合、補正駆動パルスを出力し、ステップモータ9を確実に回転させると同時にパルス駆動ランク選択回路11の値が「001」から「010」にインクリメントされ、その値に基づき期間Aで調整パルスが出力しない
図3のパルスを選択し、この次のステップは
図11の通常駆動パルスより駆動力の高い
図3のパルスでステップモータ9を駆動する。
【0066】
さらに、
図3のパルスで駆動しても回転検出回路6でロータが非回転と判定された場合、補正駆動パルスを出力し、ステップモータ9を確実に回転させると同時にパルス駆動ランク選択回路11の値が「010」から「011」にインクリメントされ、その値に基づき調整パルス出力から通常駆動パルスの変動部312の出力に切替え、期間Aで
休止区間のデューティ比2/32の通常駆動パルスが出力する
図13のパルスを選択し、この次のステップは
図3の通常駆動パルスより駆動力の高い
図13のパルスでステップモータ9を駆動する。最終的に「100」までインクリメントされると、期間Aにおいて通常駆動パルスの変動部312の
休止区間のデューティ比が4/32となる
図14のパルスを選択し、ステップモータ9を駆動する。このように調整パルスのデューティ比を小さくしていき、調整パルスの出力が停止した後、通常駆動パルスの出力に切替え、通常駆動パルスの変動部のデューティ比を高くしていくことで順に駆動力が高くなる。
【0067】
そして、仮に
図14のパルスで駆動し、ロータが回転したと判定した回転検出回路10の検出信号を、
図12に示すカウンタ回路12が所定回数(例えば、256回)連続で回転をカウントした際、パルス駆動ランク選択回路11の値は「100」から「011」にデクリメントされ、第1および第2の実施の形態と同様、上記と同じ手順で「000」まで順に1ランクずつデクリメントされる。
【0068】
続いて、第3の実施の形態のランク「000」、「001」、「010」、「011」、「100」のステップモータ9のランクごとの消費電流変化量と従来の通常駆動パルスのチョッパ毎に全てのデューティ比を24/32から28/32まで1/32ずつ変化させ、ステップモータ9のランクごとの消費電流変化量とを比較した、出願人の実験測定結果を
図15に示す。
【0069】
図15の塗りつぶしされた丸いプロットが第3の実施形態の測定結果を示し、図面に対して左側のプロットからランク「000」、「001」、「010」、「011」、「100」となっている。そして塗りつぶしされていない四角いプロットが従来の構成の測定結果を示し、図面に対して左側のプロットからデューティ比26/32、27/32、28/32、29/32、30/32となっている。従来の構成では1ランクアップ当たりの消費電流変化量が40〜50nAであるのに対し、第3の実施の形態では10〜15nAに抑えられており、駆動力を細かく制御できていることがわかる。
【0070】
即ち、従来では、通常駆動パルスのチョッパ毎に全てのデューティ比を1/32ずつ変化させており、例えば、第3の実施の形態では通常駆動パルス数が7つであるため、1ランクアップ当たりの実行デューティの変化量としては1/32×7(パルス数)=7/32となるが、本発明では期間Aにおいて調整パルスの出力あるいは通常駆動パルスの出力をデューティ比2/32ずつ変更していく方式であり、1ランクアップ当たりの実行デューティの変化量としては2/32となるため、従来に比べて細かい駆動力制御ができる。
【0071】
以上のように第3の実施の形態では調整パルスのデューティ比あるいは通常駆動パルスの変動部のデューティ比を変化させることで細かな駆動力制御を可能とした。今回第3の実施の形態では期間Aのみ調整パルスあるいは通常駆動パルスの変動部のデューティ比を変化させたが、期間B〜Gにおいても第1の実施の形態と組み合わせて順に同じ手順で1パルスずつ調整パルスのデューティ比あるいは通常駆動パルスのデューティ比を変化させていくことでさらに高分解能なランク設定も可能となる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述したが、実施の形態は本発明の例示にしか過ぎず、本発明は実施の形態の構成にのみ限定されるものではない。したがって本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれることはもちろんである。したがって、以下のような変更を行ってもよい。
【0073】
(1)上記説明では、パルス駆動ランク選択回路11を例えば第1に実施の形態では3bitの2進カウンタで構成し、8種類のパルスでの駆動力制御に関して論じたが、パルス駆動ランク選択回路11のbit数を増やし、例えば4bit構成での16種類の駆動力を得るような構成にし、通常駆動パルスの駆動力範囲を広げる、もしくはより細かく駆動力を制御できるような方式をとっても構わない。
【0074】
(2)通常駆動パルス、調整パルスのチョッパデューティ比の値、パルス数、チョッパ周期などの各数値は上記数値に限定されるものではなく、モータや取り付けられる表示体(指針、日板など)に合わせて最適化されるべきである。
【0075】
(3)
図1あるいは
図12に示すブロック線図は一例であり、上述した動作を行うものであれば他の構成を備えていても良い。ブロック図のシステムを構成する方法としては、ランダムロジックによる制御でもマイクロコンピュータによる制御でも良い。セレクタ7をマイクロコンピュータで構成し、その他の回路はランダムロジックで構成するような構成でも良い。このようにすれば、多機種への適用における変更も比較的容易に実施できる。
【0076】
(4)第1実施例において、調整パルスのサブパルスが出力されない順番は、A→B→C・・・と、駆動パルス出力開始を基点として、前方より出力されない形態としたが、本発明は、これに限定されない。
例えば、C,D,Eなどの中央部からサブパルスが出力されないようにしても良いし、G→F→E・・・と後方から出力されないようにしても良い。
【0077】
調整パルスのサブパルスを出力しないことで、その部分の駆動力が上がるので、モータ駆動状態との兼ね合いで決定すれば良い。
【0078】
(5)第1実施例において、調整パルスのサブパルスが減少する個数は1個ずつであったが、もちろん同時に2個以上変動させても良い。
【0079】
(6)第2実施例において、調整パルスのデューティ比は、一個のサブパルスで変更する例としたが、複数(全てを含む)のサブパルスで変更しても良いまた、第2実施例は、サブパルスの個数を減らす第1実施例との併用例としているが、サブパルスを減らさずに実施しても良い。
【0080】
(7)本実施例1〜3において、ランク制御は、ステップモータ9の回転・非回転により制御される例を示したが、これには限定されない。例えば、電源1(通常は電池)の電源状態を検出する電源状態検出回路により制御しても良い。電源状態検出回路としては、電源1の蓄電量(残容量とも言う)を検出するための、例えば、電源電圧検出回路でも良い。あるいは、電源1が充電可能な2次電池の場合は、電源1を充電するための発電源の発電状態を検出する、発電状態検出回路でも良い。これらの電源状態検出回路の検出結果によって、本実施例1〜3に示すような制御を行うことで、電源1の状態に合わせたより細やかなステップモータ9の駆動制御が可能となる。もちろん、電源状態と回転・非回転の両方を加味して制御するようにしても良い。
【0081】
(8)本実施例1〜3において駆動力制御が行われるステップモータ9が駆動する対象は特に限定されず、時・分・秒針等の時刻針であっても、クロノ針や高度・水深計の指針、パワーリザーブメータの指針等の時刻情報以外の情報を示す機能針であっても、日板、曜日板等の円板やレトログラードであってもよい。また、駆動力制御が行われる際の駆動対象の動作は、通常の動作に限定されず、他の特殊な動作、例えば、早送り駆動であってもよい。
【0082】
(9)本実施例1〜3において説明した、調整パルスを用いた細かい駆動力制御と、通常駆動パルスのチョッパのデューティ比を変更する従来の駆動力制御を併用してもよい。このとき、調整パルスを用いた細かい駆動力制御は、通常運針時に用いてよく、安定点付近における電子時計の個体差や充放電に伴う電源電圧の変化の補償に適している。一方で、通常駆動パルスのチョッパのデューティ比を変更する従来の駆動力制御は、カレンダー(すなわち、日板や曜日板)の駆動時や各種付加機能の使用時等に用いてよく、モータ負荷が一時的に大きく変化する場合に適している。