特許第6076350号(P6076350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076350
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】燃料電池組立体
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0271 20160101AFI20170130BHJP
   H01M 8/0202 20160101ALI20170130BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20170130BHJP
【FI】
   H01M8/02 S
   H01M8/02 B
   H01M8/02 E
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-531311(P2014-531311)
(86)(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公表番号】特表2014-526788(P2014-526788A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】GB2012052324
(87)【国際公開番号】WO2013041867
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2015年8月19日
(31)【優先権主張番号】1116275.7
(32)【優先日】2011年9月21日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】504175659
【氏名又は名称】インテリジェント エナジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INTELLIGENT ENERGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コール,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】キルク,クリストファー ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】コンロン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】フード,ピーター デイビッド
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−183070(JP,A)
【文献】 特開平04−017266(JP,A)
【文献】 特開2003−203644(JP,A)
【文献】 特開2007−018958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極組立体と、カソード分離プレートと、ガスケットと、金属シムとを含む燃料電池組立体であって、
前記カソード分離プレートは、一連に延びる起伏を有し、対向関係にある第1及び第2端部の間に空気流路が設けられており、
前記ガスケットは、前記分離プレートと前記膜電極組立体の間に設けられて、前記膜電極組立体の周端部に流体シールを形成し、
前記金属シムは、前記ガスケットと前記分離プレートとの間に配置されて前記膜電極組立体の周端部を覆っており、また、前記分離プレートと一体化したものであって、第1及び第2細長片を有しており、
前記第1及び第2細長片は、前記分離プレートの起伏を横断するように長軸方向に延びており、また、前記分離プレートの第1及び第2端部のそれぞれに沿って延びている、
燃料電池組立体。
【請求項2】
請求項1に記載された燃料電池組立体であって、前記金属シムは、ステンレス鋼で形成されている、燃料電池組立体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された燃料電池組立体であって、前記金属シムは、50〜150μmの範囲の厚みを有している、燃料電池組立体。
【請求項4】
請求項3に記載された燃料電池組立体であって、前記金属シムは、100μm程度の名目上の厚みを有している、燃料電池組立体。
【請求項5】
膜電極組立体と、カソード分離プレートと、ガスケットと、金属シムとを含む燃料電池組立体であって、
前記カソード分離プレートは、一連に延びた起伏を有し、対向関係にある第1及び第2端部の間に空気流路が設けられており、
前記ガスケットは、前記分離プレートと前記膜電極組立体の間に設けられ、前記膜電極組立体の周端部において流体シール機能をもたらし、
前記金属シムは、前記ガスケットと前記分離プレートとの間に配置されて前記膜電極組立体の周端部を覆い、1以上の係合手段を有しており、
前記係合手段は、前記分離プレートの対応する端部と係合し、前記金属シムに対する前記分離プレートの側方位置を保持する、
燃料電池組立体。
【請求項6】
請求項5に記載された燃料電池組立体であって、前記金属シムは、独立したフレームであって、前記膜電極組立体の拡散層を包囲する、燃料電池組立体。
【請求項7】
燃料電池組立体の形成方法であって、
膜電極組立体を設ける工程と、
一連に延びる起伏を有するカソード分離プレートを設けて、前記分離プレートの対向関係にある第1及び第2端部の間に空気流路を設ける工程と、
前記膜電極組立体の拡散層を包囲するために用いられるガスケットを、前記分離プレートと前記膜電極組立体の間に介在させる工程と、
前記ガスケットと前記分離プレートの間に介在して前記膜電極組立体を覆う金属シムを設ける工程と、
前記膜電極組立体の厚み、前記分離プレート、前記ガスケット、及び、前記金属シムを介して機械的圧縮を加え、前記膜電極組立体の周端部に流体シールを形成する工程とを含んでおり、
前記金属シムは、前記分離プレートと一体化したものであって、第1及び第2細長片を有しており、
前記第1及び第2細長片は、前記分離プレートの起伏を横断するように長軸方向に延びており、また、前記分離プレートの対向関係にある第1及び第2端部のそれぞれに沿って延びている、
燃料電池組立体の形成方法。
【請求項8】
燃料電池組立体の形成方法であって、
膜電極組立体を設ける工程と、
一連に延びる起伏を有するカソード分離プレートを設けて、前記分離プレートの対向関係にある第1及び第2端部の間に空気流路を設ける工程と、
前記膜電極組立体の拡散層を包囲するために用いられるガスケットを、前記分離プレートと前記膜電極組立体の間に介在させる工程と、
前記ガスケットと前記分離プレートの間に介在して前記膜電極組立体を覆う金属シムを設ける工程と、
前記膜電極組立体の厚み、前記分離プレート、前記ガスケット、及び、前記金属シムを介して機械的圧縮を加え、前記膜電極組立体の周端部に流体シールを形成する工程とを含んでおり、
前記金属シムは、1以上の係合手段を有しており、
前記係合手段は、前記分離プレートの対応する端部と係合し、前記金属シムに対する前記分離プレートの側方位置を保持する、
燃料電池組立体の形成方法。
【請求項9】
対向関係にある第1及び第2面と、対向関係にある第1及び第2端部と、一連に延びる起伏と、金属シムとを含む燃料電池カソード分離プレートであって、
前記第1及び第2端部の間には、空気流路が設けられており、
前記金属シムは、前記分離プレートと一体化したものであって、第1及び第2細長片を有しており、
前記第1及び第2細長片は、前記一連の起伏を横断するように長軸方向に延びており、また、第1及び第2端部に沿って延びており
前記第1及び第2細長片は、前記分離プレートの前記第2面にわたる前記一連の起伏の隆起部を架橋する、
燃料電池カソード分離プレート。
【請求項10】
燃料電池分離プレートの形成方法であって、
対向関係にある第1及び第2端部と、対向関係にある第3及び第4端部を有する金属プレートを設ける工程と、
前記金属プレートを切って、前記第1及び第2端部に沿って長軸方向に延びる第1及び第2細長片を形成する工程と、
前記金属プレートに一連の起伏を設けて、起伏領域を形成し、前記第1及び第2端部の間に空気流路を設ける工程と、
前記第1及び第2端部のそれぞれに沿って前記第1及び第2細長片を折り畳んで、第2面上における前記起伏領域の端部を覆う工程とを含む、
燃料電池分離プレートの形成方法。
【請求項11】
請求項10に記載された燃料電池分離プレートの形成方法であって、
前記第1及び第2細長片は、前記第1及び第2端部のそれぞれに沿って前記金属プレートに取り付けられた状態を保持し、また、前記第3端部を向く、燃料電池分離プレートの形成方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載された燃料電池分離プレートの形成方法であって、
前記金属プレートを切断する工程は、前記金属プレートの第1及び第2端部と平行な第1及び第2切断線に沿って、前記金属プレートの第4端部から前記第3端部に向けて前記金属プレートを切断する工程を含む、
燃料電池分離プレートの形成方法。
【請求項13】
請求項12に記載された燃料電池分離プレートの形成方法であって、前記第1及び第2切断線は、部分的に前記金属プレートの前記第3端部に向かって延びている、燃料電池分離プレートの形成方法。
【請求項14】
請求項10に記載された燃料電池分離プレートの形成方法であって、
前記第1及び第2細長片を折り畳む工程は、前記第1及び第2切断線と前記第3端部の間に延びる前記第1及び第2折線を形成する工程を含んでおり、
前記第1及び第2折線は、前記第1及び第2端部と平行となる、
燃料電池分離プレートの形成方法。
【請求項15】
請求項10に記載された燃料電池分離プレートの形成方法であって、
前記第1及び第2細長片は、前記第1及び第2細長片の折り畳み工程の後、前記金属プレートの前記第2面の対向関係にある部分との間で結合を形成することによって、前記第4端部の方を向いて前記金属プレートに取り付けられる、
燃料電池分離プレートの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池組立体に関するものであって、特に、このような組立体のシールの向上に関する。
【背景技術】
【0002】
オープンカソード型の燃料電池スタックにおいて、空気流は、各燃料電池のカソード側を横切断するように導かれ、酸化剤が、典型的には拡散層を介して、燃料電池の膜電極組立体(MEA)のカソード側に供給される。スタック全体にわたって一様な流れを得るために、一般的な構成においては、スタックの対向面間で電池スタックを横切断するように平行に空気を流すことがある。そのため、空気は燃料電池を横切って流れ、一端から反対側の他端に向かう。
【0003】
スタックの各電池を横切断する十分な空気流を得る典型的な手段は、スタックの全重量を低く抑える一方、波形のカソード分離プレートを使用することである。このような分離プレートは、燃料電池用電解質のカソード側と電気的結合を形成するとともに、下方にある拡散層を横切断する空気流の流路を構成する。
【0004】
従来の波形カソード分離プレートを使用することによる問題点は、各セルの開放端において、下方にある電解質層及び介在するガスケット部材との間欠的な接続になってしまうことである。このため、その下方にある層を分離することになり、例えばスタックの熱循環の間に、最終的には漏れを引き起こす可能性がある。電池の下方にある層と接触する部分の間は、例えば、起伏の間隔を小さくすることによって小さくすることができるが、電池を横切って設けられる空気流路の容量を減少させる。漏れの可能性を低下させる手段は、燃料電池の活性化領域を包囲するガスケット領域の幅を増加することである。しかしながら、この手段によると、電池の活性化領域の比率が低下し、それ故、電池の効率が低下する。これは、端部のガスケット領域が電池面積全体に対して高い比率を占める小型燃料電池スタックの場合に、特に問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上述した問題の1つ以上を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、膜電極組立体と、カソード分離プレートと、ガスケットと、金属シム(金属差込板)とを含む燃料電池組立体が提供される。
【0007】
前記カソード分離プレートは、一連に延びる起伏を有し、対向関係にある第1及び第2端部の間に空気流路が設けられている。
【0008】
前記ガスケットは、前記分離プレートと前記膜電極組立体の間に設けられて、前記膜電極組立体の周端部に流体シールを形成する。
【0009】
前記金属シムは、前記ガスケットと前記分離プレートとの間に配置されて前記膜電極組立体の周端部を覆っており、また、前記分離プレートと一体化したものであって、第1及び第2細長片を有している。
【0010】
前記第1及び第2細長片は、前記分離プレートの起伏を横断するように長軸方向に延びており、また、前記分離プレートの第1及び第2端部のそれぞれに沿って延びている。
【0011】
上記発明の利点は、前記金属シムが、分離プレートとガスケットの下方シーリング領域との間に、より均一なシーリング圧を供給することである。これは、前記金属シムが、ガスケットやMEA材料よりも高い剛性材料で構成されていて、それにより、起伏を有する分離プレートによって供給される間欠圧力プロファイルが、より均一に印加されることに起因するものである。前記金属シムは、前記分離プレートのMEAと対向する面に沿って、起伏頂部を橋渡しし、起伏頂部に印加される圧力の一部を、起伏頂部間の領域に伝える。これは、分離プレートの起伏に沿う空気流に対する障害を生じることなく、下方の膜電極組立体の周りにおける漏洩可能性を低減させる。上述した形態、即ち、分離プレートと一体化された金属シムの一つの利点は、前記分離プレート及び前記金属シムが共通部品として作製でき、それによって、燃料電池組み立てプロセスにおいて用いられる部品点数が減少し、金属シム及び分離プレートを、単一シート原料から一体化部品として形成する際、材料の消費を低減し得ることである。
【0012】
金属シムは、分離プレートと同じ材料で構成することができる。金属シムとして好ましい材料の一つは、ステンレス鋼、即ち、クロム合金鋼であり、これは、燃料電池内のような湿った酸化性環境で使用するのに適している。金属シムは、好ましくは、50μm〜150μmの範囲の厚みを持つものとする。ある好ましい実施例では、金属シムは、約100μmの呼び厚さである。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、膜電極組立体と、カソード分離プレートと、ガスケットと、金属シムとを含む燃料電池組立体が提供される。前記カソード分離プレートは、一連に延びた起伏を有し、対向関係にある第1端部及び第2端部の間に空気流路をもたらす。前記ガスケットは、前記分離プレートと前記膜電極組立体の間に設けられ、前記膜電極組立体の周端部において流体シール機能をもたらす。前記金属シムは、前記ガスケットと前記分離プレートとの間に配置されて前記膜電極組立体の周端部を覆い、1以上の係合手段を有している。前記係合手段は、前記分離プレートの対応する端部と係合し、前記金属シムに対する前記分離プレートの側方位置を保持する。
【0014】
金属シムが、1以上の係合手段を含むことの利点は、組立中に複数の部品が互いに動いてしまうことの可能性を低減し得ることである。
【0015】
前記金属シムは、分離プレートとは別の部品として供給してもよく、その場合には、金属シムは、膜電極組立体の拡散層の部分取り巻くように配置されたフレームの形態をとることができる。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、燃料電池組立体の形成方法が提供される。この形成方法は、
膜電極組立体を設ける工程と、
一連に延びる起伏を有するカソード分離プレートを設けて、前記分離プレートの対向関係にある第1及び第2端部の間に空気流路を設ける工程と、
前記膜電極組立体の拡散層を包囲するために用いられるガスケットを、前記分離プレートと前記膜電極組立体の間に介在させる工程と、
前記ガスケットと前記分離プレートの間に介在して前記膜電極組立体を覆う金属シムを設ける工程と、
前記膜電極組立体の厚み、前記分離プレート、前記ガスケット、及び、前記金属シムを介して機械的圧縮を加え、前記膜電極組立体の周端部に流体シールを形成する工程とを含んでおり、
前記金属シムは、前記分離プレートと一体化したものであって、第1及び第2細長片を有しており、
前記第1及び第2細長片は、前記分離プレートの起伏を横断するように長軸方向に延びており、また、前記分離プレートの対向関係にある第1及び第2端部のそれぞれに沿って延びている。
【0017】
本発明の第4の態様によれば、燃料電池組立体の形成方法が提供される。この形成方法は、
膜電極組立体を設ける工程と、
一連に延びる起伏を有するカソード分離プレートを設けて、前記分離プレートの対向関係にある第1及び第2端部の間に空気流路を設ける工程と、
前記膜電極組立体の拡散層を包囲するために用いられるガスケットを、前記分離プレートと前記膜電極組立体の間に介在させる工程と、
前記ガスケットと前記分離プレートの間に介在して前記膜電極組立体を覆う金属シムを設ける工程と、
前記膜電極組立体の厚み、前記分離プレート、前記ガスケット、及び、前記金属シムを介して機械的圧縮を加え、前記膜電極組立体の周端部に流体シールを形成する工程とを含んでおり、
前記金属シムは、1以上の係合手段を有しており、
前記係合手段は、前記分離プレートの対応する端部と係合し、前記金属シムに対する前記分離プレートの側方位置を保持する。
【0018】
本発明の第5の態様によれば、燃料電池分離プレートが提供される。この燃料電池分離プレートは、対向関係にある第1及び第2面と、対向関係にある第1及び第2端部と、一連に延びる起伏と、第1及び第2細長片とを含む。前記第1及び第2端部の間には、空気流路が設けられており、前記第1及び第2細長片は、前記一連の起伏を横断するように長軸方向に延びており、また、第1及び第2端部に沿って延びている。
【0019】
本発明の第5の態様に係る分離プレートは、カソード空気流路と金属シム部品に関して、燃料電池内で一部品となる改良された支持を提供し、それによって組立工数を低減するという利点を持つ。
【0020】
本発明の第6の態様によれば、燃料電池分離プレートの形成方法が提供される。この燃料電池分離プレートの形成方法は、
対向関係にある第1及び第2端部と、対向関係にある第3及び第4端部を有する金属プレートを設ける工程と、
前記金属プレートを切って、前記第1及び第2端部に沿って長軸方向に延びる第1及び第2細長片を形成する工程と、
前記金属プレートに一連の起伏を設けて、起伏領域を形成し、前記第1及び第2端部の間に空気流路を設ける工程と、
前記第1及び第2端部のそれぞれに沿って前記第1及び第2細長片を折り畳んで、第2面上における前記起伏領域の端部を覆う工程とを含む。
【0021】
上述した燃料電池分離プレートの形成方法の利点は、分離金属シムによらざるを得なかった荷重拡散機構が、波形プレートの一部分として提供され、分離プレートの製造プロセスの間中、形成されることである。
【0022】
第1及び第2細長片は、好ましくは、金属プレートの第3端部に向かい、当該金属プレートに取り付けられた状態を保持する。前記金属プレートを切断する工程は、前記金属プレートの第1及び第2端部と実質的に平行な第1及び第2切断線に沿って、前記金属プレートの第4端部から前記第3端部に向けて前記金属プレートを切断する工程を含む。前記第1及び第2切断線は、好ましくは、金属プレートの第3端部までは延びていない。
【0023】
前記第1及び第2細長片を折り畳む工程は、前記第1及び第2切断線と前記第3端部の間に延びる前記第1及び第2折線を形成する工程を含んでおり、前記第1及び第2折線は、前記第1及び第2端部と実質的に平行となる。
【0024】
前記第1及び第2細長片は、前記第1及び第2細長片の折り畳み工程の後、前記金属プレートの前記第2面の対向関係にある部分との間で、例えば、スポット溶接、又は、接合によって、前記第4端部の方を向いて前記金属プレートに取り付けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の実施形態について、実施例、及び、添付の図面を参照して説明する。
図1】典型的な燃料電池組立体100の分解斜視図である。
図2】波形カソード分離プレートの端部の詳細斜視図である。
図3】組み立てられた図1に示す燃料電池の端部の詳細断面斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る典型的な燃料電池組立体の分解斜視図である。
図5】組み立てられた図4の燃料電池の端部の詳細断面斜視図である。
図6】組み立てられた図4の燃料電池の一部詳細斜視図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る典型的な燃料電池組立体の分解斜視図である。
図8図7に示す燃料電池組立体の波形分離プレートの斜視図である。
図9】起伏工程の後、折り畳み及び結合工程の前の段階にある図8の波形分離プレートの斜視図である。
図10】本発明に係る典型的な方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、典型的な燃料電池組立体100の分解斜視図である。燃料電池組立体100は、順に、アノードプレート101と、アノード側拡散層102と、アノードガスケット103と、膜電極組立体(MEA)104と、カソードガスケット105と、カソード側拡散層106と、波形カソード分離プレート108と、電池のアノード側に燃料を供給する一対のマニホールド・ガスケット109a,109bとを含んでいる。
【0027】
図2は、図1の燃料電池組立体100に用いられる典型的な波形カソード分離プレート108の一般的な形態を示しており、プレート108は、対向関係にある第1及び第2面204,205を有している。プレート108は、一連に延びる起伏201を有しており、対向関係にある第1端部及び第2端部の間に空気流路202が設けられている。図2には、第1端部207が示されている。プレート108の起伏201は、第1面204に隆起部213を含んでおり、第2面205に隆起部214を含んでいる。プレート108の第2端部も同様の形態となっている。MEA104のカソード側に酸化剤を供給するために、第1面204における隆起部213と第2面205の間に画定された空気流路202は、プレートとその下にある電池組立体の拡散層106の間において、空気がそのプレートに沿って流れる流路を構成している。第2面における隆起部214と第1面204の間に画定された他方の空気流路206は、空気がプレート108と隣接する電池の間において、プレート108に沿って流れて、冷却作用をもたらすように構成されている。
【0028】
波形カソード分離プレート108は、ガスケット105及びMEA104を間欠的に支えている。プレート108がガスケット105と接触しない領域、即ち、空気流路202がプレート108を通じて設けられている領域において、ガスケット105は、プレート108が第2面における起伏の隆起部に沿って直に接触している部分ほどには、圧縮圧力が加わっていない。このように圧力が低下すると、ガスケット103,105が部分的に隣接する層から分離する可能性がある。このため、ある環境では、漏れが生じてしまう。
【0029】
図3に、波形カソード分離プレート108による間欠的な支持の効果が示されている。図3は、2つの剛性プレート301,302の対向面間で組み立てられて、保持された単一の燃料電池組立体における有限要素解析の出力結果を概略的に示している。燃料電池組立体の端部領域310の拡大図は、ガスケット105の柔軟性に起因して、ギャップ305がMEA104のサブガスケット領域303とアノー側ガスケット103の間に形成されている状態を示している。サブガスケット領域303は、カソード分離プレート108によって押さえつけられていないカソード側拡散層106の変形を引き起こす。この場合、結果として生じるギャップ305は、燃料電池組立体の略端部306まで延びて、電池のアノード側から燃料ガス(水素)が漏れる危険性が生じる。
【0030】
図4は、本発明の実施形態に係る燃料電池組立体200を示している。組立体200の構成は、分離金属シム107を有する点を除いて、図1に示した組立体と同じである。金属シム107は、MEA104の周端部の上方において、カソード側ガスケット105とカソード分離プレート108の間に介在している。即ち、金属シム107は、図3に示したMEAサブガスケット303の外側部と一致する。
【0031】
金属シム107は、分離プレート108の一連の起伏を横切って長軸方向に延びた第1及び第2細長片401,402を備えるフレームである。第1及び第2細長片401,402は、プレート108の第1及び第2端部207,208のそれぞれに沿って延びており、燃料電池が組み立てられると、細長片401,402は、プレート108の第2面にわたる起伏の隆起部214を架橋する。
【0032】
図5は、図3と同様に、単一の燃料電池組立体における有限要素解析の出力結果を概略的に示しているが、この場合、アノードガスケット105とカソード分離プレート108の間に金属シム107が含まれている。図3の燃料電池の場合とは異なって、金属シム107を使用することによって、MEAサブガスケット303とアノードガスケット103の間にあるギャップ305が実質的に縮小し、電池からのアノードガス漏れの可能性が低下する。これは、一般的にポリエステル等のポリマー材料で形成されたカソードガスケットと比較して、金属シム材の引張剛性が増加した結果である。図示した例として、ステンレス鋼は約200GPaの引張剛性(ヤング率)を有していることがあるのに対して、ポリエステルフィルムは、約3GPaの引張剛性を有している。このように材料剛性の増加が二桁の大きさに近づくことによって、分離プレート108が直に接触しない領域において、金属シム107がガスケット材103の外側への移動に効果的に抵抗することになる。
【0033】
別の実施形態においては、図5に示したカソードガスケット105が省かれ、MEAのサブガスケット領域303によって、金属シム107とMEAの間にガスケットが設けられてもよい。代替的に、ガスケット素材は、MEAに向き合う金属シム107の一面に設けられてもよい。流体シールは、燃料電池のカソード側には要求されない。これは、波形分離プレートは、オープンカソード型の燃料電池組立体の部品として用いられるためである。厚みを介して機械的圧縮を加えることで形成される大事な流体シールは、代わりにアノード側に位置し、アノードガスが電池の外に漏れ出ることを防止する。
【0034】
図6は、本発明の実施形態にしたがった組み立てられた燃料電池200の一部の斜視図である。係合手段601は、金属シム107に設けられ、波形プレート108の端部602と係合している。係合手段601は、金属シム107にプレート108の端部602を保持し、第1及び第2端部207,208と平行な方向において、プレート108の金属シム107に対する側方移動を防止する。同様の係合手段(図示省略)が金属シム107の反対側に設けられ、プレート108の反対側の端部と係合していてもよい。図示された実施形態において、係合手段601は、金属シム107の平面から外に屈曲した金属シムの一部分を含んでいる。そのためプレート108の対向関係にある第1及び第2面は、端部602に沿って、係合手段601で保持されている。係合手段601は、このような屈曲部を複数含んでいる。その屈曲部は、金属シムの内周に沿って延びており、プレート108の端部602に沿って、対向関係にある第1及び第2面と係合している。
【0035】
さらに別の実施形態において、プレート108及び金属シムは、例えばスポット溶接又は接着剤といった手段によって、互いに結合されていてもよい。部品が結合されていることの利点は、燃料電池組立体の組立てにおいて、金属シム及びプレートを一体部品として扱うことができるため、工程数を減らすことができるということにある。
【0036】
図7は、上述したものとは異なる分離プレート708を有する本発明にしたがった燃料電池組立体700を示している。この実施形態において、金属シムは、分離プレートと一体化しており、第1及び第2細長片を含んでいる。この第1及び第2細長片は、分離プレートの起伏を横断するように長軸方向に延びており、また、対向関係にあるプレートの第1及び第2端部のそれぞれに沿って延びている。燃料電池のその他の構成要素は、他の実施形態に関して上述したとおりであり、図7において、同一の参照符号が付されている。
【0037】
図7に示す実施形態において、アノード側ガスケット103だけが、組立体700に設けられている。カソード側ガスケットは、分離プレート708とMEA104のサブガスケット領域の結合によって設けられる。
【0038】
分離プレート708は、図8及び9に分離した状態で示されている。図8は、プレート708の完成した形態を示しているが、図9は、部分的に形成された状態のプレート708を示している。プレート708は、上述した実施形態の波形分離プレート108の全ての特徴を含んでおり、また、プレート708は、プレート708の対向関係にある第1及び第2端部703,704のそれぞれに沿って、長軸方向に延びる第1及び第2細長片701,702を有している。細長片701,702は、第1及び第2切断線901,902(図9)に沿って平坦な原料プレートを切断することによって形成される。切断線901,902は、プレート708の基本形を形成するようにスタンピング操作によって形成することができる。図10には、プレート708を形成する一連の操作の概略が示されている。図10は、平坦な原料プレートが供給されるところ(ステップ1001)から始まる。
【0039】
切断工程(ステップ1002)の後、例えばプレートを1組のギア付きローラを通すことによって、プレート708の中央部分の波形形状が形成される(ステップ1003)。代替的に、プレート708は、スタンピング操作によって起伏を形成することもできる。実施形態によっては、切断及びスタンピング操作が一工程でなされてもよいが、この場合、ある程度のプレス絞り作業に耐え得るプレートが形成される材料、及び、起伏の隆起部間で薄肉化する作業が必要となる。
【0040】
切断及び起伏工程の後、細長片701,702は、折り畳まれる(ステップ1004)。細長片は、プレート708の第1及び第2端部703,704に沿って起伏の隆起部を覆い、かつ、プレート708の対向関係に有る第3及び第4端部705,706の間を延びる。第1及び第2折線903,904は、図9においてプレート708に示されており、第1及び第2切断線901,902とプレート708の第3端部705の間に延びている。第1及び第2折線903,904は、プレートの第1及び第2端部703,704と平行になっている。
【0041】
最終工程は、プレート708の第4端部706に向かう点で、細長片701,702の自由端を、プレート708に結合する工程(ステップ1005)を含むものとすることができ、プレート708の隆起した部分に対する細長片701,702の側方移動を防止する結合領域711(図8)を形成する。
【0042】
その他の実施形態についても、特許請求の範囲に意図的に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10