特許第6076352号(P6076352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6076352取付孔を有するフレームレスソーラモジュール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076352
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】取付孔を有するフレームレスソーラモジュール
(51)【国際特許分類】
   H02S 30/00 20140101AFI20170130BHJP
   E04D 13/18 20140101ALI20170130BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20170130BHJP
【FI】
   H02S30/00
   E04D13/18ETD
   H01L31/04 500
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-532423(P2014-532423)
(86)(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公表番号】特表2014-534796(P2014-534796A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】EP2012069295
(87)【国際公開番号】WO2013045683
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2014年5月26日
(31)【優先権主張番号】11183427.1
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハップ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ボリス フィリップ
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−283229(JP,A)
【文献】 特開平09−250220(JP,A)
【文献】 特開2003−133573(JP,A)
【文献】 特開平11−200575(JP,A)
【文献】 特開2001−203380(JP,A)
【文献】 実開平05−079960(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−50/15、99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板(7)と、前記支持基板(7)に接続されているカバー層(8)と、を有するフレームレスソーラモジュール(2)において、
前記支持基板(7)と前記カバー層(8)との間には層構造体(9)が設けられており、
前記層構造体(9)により、光起電性エネルギ形成のための直列接続される複数のソーラセル(6)が形成され、
前記支持基板(7)および前記カバー層(8)には、前記ソーラモジュール(2)をモジュール支持部(3)に取り付けるため、または、少なくとも1つの別のソーラモジュール(2)を接続するために複数の取付孔(12)が設けられており、
前記取付孔(12)はそれぞれ、光起電性アクティブ領域(13)内のコーティングのないゾーン(14)に形成されており、
前記複数のソーラセル(6)は、第1のソーラセル(6)および前記コーティングのないゾーン(14)に隣接した第2のソーラセル(6’)を含み、
前記第2のソーラセル(6’)の長さは、前記第1のソーラセル(6)の長さより短く、
前記第2のソーラセル(6’)の幅は、前記第1のソーラセル(6)の幅より長く、
前記第1のソーラセル(6)および前記第2のソーラセル(6’)は、同一のソーラセル面積を有する、
フレームレスソーラモジュール(2)。
【請求項2】
各取付孔(12)において、前記取付孔(12)を包囲しかつ前記層構造体(9)に対してシーリングするシーラント(16)が、前記支持基板(7)および前記カバー層(8)の断面に配置されている、
請求項1に記載のフレームレスソーラモジュール(2)。
【請求項3】
前記フレームレスソーラモジュール(2)は、薄膜ソーラモジュールである、
請求項1または2に記載のフレームレスソーラモジュール(2)。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の少なくとも1つのフレームレスソーラモジュール(2)を有する取付装置(1)において、
前記ソーラモジュールは、前記取付孔(12)を貫通する固定部材(17)によって前記モジュール支持部(3)に取り付けられている、
取付装置(1)。
【請求項5】
前記取付孔(12)において、弾力性のある可塑材料からなる1つずつの層(21)が、前記固定部材(17)と前記ソーラモジュール(2)との間、および/または、前記ソーラモジュール(2)と前記モジュール支持部(3)との間に配置されている、
請求項4に記載の取付装置(1)。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の複数のフレームレスソーラモジュール(2)を有する取付装置(1)において、
隣接するソーラモジュール(2)は接続部材(23)によって互いに接続されており、
前記接続部材(23)は、前記取付孔(12)を貫通する固定部材(17)によって前記ソーラモジュール(2)に取り付けられている、
取付装置(1)。
【請求項7】
隣接するソーラモジュール(2)間の継ぎ目(25)をシーリングすみ肉(22)によってシーリングする、
請求項6に記載の取付装置(1)。
【請求項8】
前記取付孔(12)を貫通する前記固定部材(17)は、ボルトである、
請求項4から7までのいずれか1項に記載の取付装置(1)。
【請求項9】
支持基板(7)と、前記支持基板(7)に接続されているカバー層(8)と、を有するフレームレスソーラモジュール(2)を製造する方法において、
前記支持基板(7)と前記カバー層(8)との間には層構造体(9)が設けられており、
前記層構造体(9)により、光起電性のエネルギ形成のための直列接続される複数のソーラセル(6)が形成され、
前記支持基板(7)および前記カバー層(8)には、前記ソーラモジュール(2)をモジュール支持部(3)に取り付けるため、または、少なくとも1つの別のソーラモジュール(2)を接続するために複数の取付孔(12)を設け、
前記取付孔(12)を含むかまたは前記取付孔(12)を形成するために設けられる複数のコーティングがないゾーン(14)において前記層構造体(9)を除去し、
前記複数のソーラセル(6)は、第1のソーラセル(6)および前記コーティングのないゾーン(14)に隣接した第2のソーラセル(6’)を含み、
前記第2のソーラセル(6’)の長さは、前記第1のソーラセル(6)の長さより短く、
前記第2のソーラセル(6’)の幅は、前記第1のソーラセル(6)の幅より長く、
前記第1のソーラセル(6)および前記第2のソーラセル(6’)は、同一のソーラセル面積を有する、
方法。
【請求項10】
前記支持基板(7)に前記層構造体(9)を載置する前に、前記支持基板(7)および前記カバー層(8)に前記取付孔(12)を形成する、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各取付孔(12)に前記取付孔(12)を包囲しかつ前記層構造体(9)に対してシーリングするシーラント(16)を前記支持基板(7)および前記カバー層(8)の断面に配置する、
請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記取付孔(12)に1つずつのシーラント(16’)を入れる、
請求項9から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記フレームレスソーラモジュール(2)は、薄膜ソーラモジュールである、
請求項9から12までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
太陽光を電気エネルギに直接変換する光起電性層システムは以前から公知である。一般にこれは「ソーラセル」と称され、「薄膜ソーラセル」という用語は、わずか数マイクロメートルの厚さしか有しない層システムに関連しており、これらの層システムには、機械的に十分な安定度を得るために支持基板が必要である。公知の支持基板には、無機ガラス、プラスチック(ポリマ)または金属、殊に金属合金が含まれており、それぞれの層厚および特定の材料特性に依存して変形しないプレートまたは曲がりやすいシートとして構成することができる。
【0002】
技術的な取り扱い易さおよび効率の点からは、アモルフォス、マイクロモルフまたは多結晶シリコン、テルル化カドミウム(CdTe)、ヒ化ガリウム(GaAs)または黄銅鉱化合物、殊に化学式Cu(In,Ga)(S,Se)2によって略称される銅−インジウム/ガリウム−ジスルフィド/ジセレニドからなる半導体層を有する薄膜ソーラセルが有利であることが判明している。殊に銅−インジウム−ジセレニド(CuInSe2ないしはCIS)は、太陽光のスペクトルに適合したバンドギャップに起因した殊に高い吸収係数によって抜きん出ている。
【0003】
個々のソーラセルによっては一般的に1ボルト未満の電圧レベルしか得ることができない。技術的に利用可能な出力電圧を得るため、ソーラモジュールにおいて多数のソーラセルを互いに直接接続する。ここでは薄膜ソーラモジュールにより、すでに層作製中に、一体化された形態で複数のソーラセルを接続できるという特別な利点が得られる。特許文献においては薄膜ソーラモジュールはすでに何度も記載されている。ここでは、例として刊行物DE 43243813 C1およびEP 2200097 A1だけを挙げる。
【0004】
いわゆる基板構成形態では、ソーラセルを製造するための種々異なる層は、支持基板上に直接被着され、この支持基板は、前面側の透明なカバー層と接着(積層されて)耐候安定性を有する結合体になる。
【0005】
実践的にはソーラモジュールは、建物の屋根に取り付けられる(据え置き型)かまたは屋根の表面の一部を構成する(屋根材一体型)。さらにソーラモジュールをファサード部材または壁部材として使用すること、殊に自由設置型または支持なし型(支持体のない)ガラス構成形態も一般的である。
【0006】
据え置き型取り付けではソーラモジュールは屋根に対して平行に、この屋根に固定されたモジュール支持部に取り付けられ、これらのソーラモジュールは、例えばモジュールクランプによって上記のモジュール支持部に固定される。これらのソーラモジュールは、このために、一般的にはアルミニウム製のモジュールフレームを有しており、このモジュールフレームに上記のソーラモジュールを固定することができる。上記のモジュール支持部は一般的に複数のアルミニウムレールからなる取付フレームを有しており、これらのアルミニウムレールは、例えば留め金具によって瓦屋根に、またねじによって波形板屋根または台形金属板屋根に固定される。屋根据え置き型で取り付ける際には、屋根の外装は完全にそのままになるため、ソーラモジュールは、屋根材一体型取付とは異なり、屋根の機能を果たす必要はない。屋根材一体型で取り付ける際にもモジュール支持部が使用され、このモジュール支持部は、屋根の下部構造に固定される。不透過性を保証するため、ソーラモジュール間の継ぎ目はシーリングしなければならない。自由設置型では架台を設け、これにソーラモジュールを固定する。支持なし型の構成形態では複数のソーラモジュールが互いにモジュールフレームに接続される。
【0007】
最近ではフレームレスソーラモジュールが使用されることが多くなっており、このフレームレスソーラモジュールにより、モジュール重量を少なくし、または製造コストを下げることが可能である。取り付けのためにソーラモジュールの背面にスチールまたはアルミニウム製の補強筋交いを取り付ける。この補強筋交いは一般的に上記の支持基板に接着される。上記の補強筋交いを介して上記のフレームレスソーラモジュールをモジュール支持部に固定することができる。この取り付け方式には比較的コストがかかり、接着によって疲労し易い。さらにこの取り付け方式により、支持なし型の構成形態に対して美的に訴える解決手段は可能にはならないのである。
【0008】
これに対して本発明の課題は、フレームレスソーラモジュールの従来の取り付けを有利に発展させて、取り付けを簡単にしかつ取り付けコストを低減することにある。殊にフレームレスソーラモジュールを、支持なし型の構成形態においても使用できるようにする。上記の課題および別の課題は、本発明の提案により、特許請求の範囲に記載した特徴的構成を有するソーラモジュール、取付装置ならびにフレームレスソーラモジュールを製造する方法によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の特徴的構成によって得られる。
【0009】
本発明では、支持基板と、この支持基板に接続されているカバー層とを有するフレームレスソーラモジュールが示される。この支持基盤とカバー層との間には層構造体が設けられており、この層構造体により、光起電性エネルギ形成のための直列接続される複数のソーラセルが構成される。上記の支持基板およびカバー層は、例えば有機ガラス、ポリマまたは金属合金製であり、また層厚および材料特性に依存して有利には変形しないプレートとして形成される。
【0010】
上記のソーラモジュールは有利には、一体化された形態において直列接続された薄膜ソーラセルを有する薄膜ソーラモジュールである。上記の層構造体には、背面電極層と、前面電極層と、半導体層とが含まれている。この半導体層は有利には黄銅鉱化合物から構成され、ここでこれは、例えば銅−インジウム−ジセレニド(CuInSe2ないしはCIS)または類似の化合物のような銅−インジウム/ガリウム−ジスルフィド/ジセレニド(Cu(InGa)(SSE)2)のグループからなるI−III−VI半導体とすることが可能である。
【0011】
ここで重要であるのは、上記の支持基板および/またはカバー層にはそれぞれ、モジュール支持部にソーラモジュールを取り付けるため、または少なくとも1つの別のソーラモジュールと接続するために複数の取付孔が設けられていることである。これにより、本発明による上記のソーラモジュールは殊に有利にも、技術的に煩雑でなく、多様に変更可能であり、かつ、コスト的に有利なソーラモジュールのモジュール留め具への取り付けが可能になり、また支持なし型の構成形態においてソーラモジュールの美的に訴える接続が可能である。殊に上記のソーラモジュールは、別の支持部材がなくても小さな継ぎ目の伸びで並べて取り付けることができる。
【0012】
ここでは上記の取付孔はそれぞれ、ソーラモジュールの光起電性アクティブ領域内のコーティングのないゾーンに形成される。この手段により、ソーラモジュールの信頼性が高くかつ確実な取り付けのために上記の取付孔を所期のように位置決めすることができ、この位置決めは、フレーム付きのソーラモジュールの従来の固定手法とは異なり、モジュールフレームに制限されない。さらにここでは、取付孔を構成するために、比較的幅が広くかつコーティングのない、ソーラモジュールの縁部領域を設ける必要がないため、ソーラモジュールを作製するために利用可能な支持基板の面積を効率的に利用することができる。
【0013】
本発明によるソーラモジュールでは、光起電性アクティブ領域にはコーティングのない複数のゾーンが設けられており、これらのゾーンに複数の取付孔が配置されている。一般的にはこの光起電性アクティブ領域は矩形に形成される。これらのコーティングのないゾーンは、上記の光起電性アクティブ領域の複数の凹部ないしは切り欠き部として形成される。そのかぎりでは上記のコーティングのないゾーンにより、ソーラモジュールの光起電性アクティブ領域は小さくなる。
【0014】
上記のソーラモジュールは、複数の第1のソーラセルと、(これらの第1のソーラセルとは異なる)複数の第2のソーラセルを有しており、第2のソーラセルはそれぞれ、第1のソーラセルの形状とは異なる形状を有する。第1のソーラセルは、上記のコーティングのないゾーンによって損なわれることはなく、これらの第1のソーラセルはそれぞれ、コーティングのないゾーンが存在しない、層構造体の1つの区画によって作製される。一般的に上記のソーラモジュールは、互いに同じ(例えばモジュール面において互いに同じ形状を有する、殊に矩形を有する)複数の第1のソーラセルを有する。
【0015】
さらに上記のソーラモジュールは、上記のコーティングのないゾーンに起因して、形状が第1のソーラセルの形状とは異なる複数の第2のソーラセルを有する。これらの第2のソーラセルはそれぞれ、少なくとも1つのコーティングのないゾーンが存在する、上記の層構造体の1つの区画から作製される。したがって各第2のソーラセルは、第1のソーラセルとは異なる形状を有するのである。第2のソーラセル同士は、互いに同じ形状を有し得る。
【0016】
上記のコーティングのないゾーンとは例えばそれぞれ、層が除去されているゾーン、すなわち、ソーラセルを形成する上記の層構造体が除去されているゾーンのことである。しかしながら上記のコーティングのないゾーンに、層構造体が被着されないようにすることも考えられ、これは、例えば上記の層構造体を被着する際にマスキングによって行うことも可能である。
【0017】
ここで殊に有利であるのは、ソーラモジュールの光起電性アクティブ領域内にコーティングのないゾーンが設けられていても、ソーラモジュールの互いに直列接続されるソーラセルが、互いに等しいないしは同じソーラセル面積を有する場合である。この場合に各ソーラセルは、このソーラモジュールのそれぞれ別のソーラセルのソーラセル面積に等しいソーラセルセル面積を有する。第1のソーラセルは、一般的には互いに同じ形状であることにより、いずれにせよ同じソーラセル面積を有する。複数の第2のソーラセルは、互いに同じ形状を有し得るため、それらのソーラセル面積も互いに同じになり得る。いずれにせよ第2のソーラセルはそれぞれ、第1のソーラセルの形状と異なる形状を有しており、この構成形態において上記のソーラモジュールのすべてのソーラセル(第1および第2のソーラセル)は、互いに同じソーラセル面積を有する。したがって各第2のソーラセルは、第1のソーラセルのソーラセル面積に等しいソーラセル面積を有するのである。例えば、矩形の第2のソーラセルはこのためにそれぞれ、矩形の第1のソーラセルよりも大きな幅(短い方のサイズ)を有し、第2のソーラセルの長さ(長い方向のサイズ)は、上記のコーティングのないゾーンに起因して、第1のソーラセルの長さよりも短いのである。この手段によって達成することができるのは、上記の複数のソーラセルは、それらの特性曲線の少なくとも近似的に同じ動作点で動作させることができるため、コーティングのないゾーンに該当するソーラセルの効率が、他のソーラセルに対して低下してしまうことはないのである。
【0018】
有利には各取付孔において、この取付孔を包囲しかつ上記の層構造体に対してシーリングするシーラントを支持基板とカバー層との間に配置する。これにより、上記の光起電性アクティブ領域に湿気および汚れが侵入することを阻止することできる。
【0019】
本発明によるフレームレスソーラモジュールの別の有利な実施形態において、上記の支持基板、または変形しないカバープレートの形態で形成されたカバー層は、張り出し式の縁部区画を有しており、この縁部区画に上記の取付孔が形成される。したがって上記の支持基板は、上記のカバー層に対して張り出している張り出し式の縁部区画を有するのである。択一的には上記のカバー層が、上記の支持基板に対して張り出している張り出し式の縁部区画を有する。
【0020】
殊に有利には、上記の縁部区画は、前面側ないしは光入射側のカバー層によって構成され、これにより、上記のソーラセルの加工を変更しないままにし、いわゆるバックエンドにおいてのみ、上記の取付孔が設けられているカバー層を有するソーラセルによって上記の支持基板を積層する。さらに上記のソーラセルの光起電性アクティブ面は影響を受けない。
【0021】
さらに本発明は、上で説明した少なくとも1つのフレームレスソーラモジュールを有する取付装置を対象としており、この取付装置において、上記のソーラモジュールは、上記の取付孔を貫通する固定部材、例えばボルトによって上記のモジュール支持部に取り付けられる。有利には上記の取付孔における機械的な負荷を低減するため、例えばゴムのように弾力性のある可塑材料からなる1つずつの層が、上記の固定部材と、上記のソーラモジュールとの間、および/または、上記のソーラモジュールと上記のモジュール支持部との間に配置される。
【0022】
さらに本発明は、上で説明したフレームレスソーラモジュールを有する取付装置を対象としており、ここでは隣接するソーラモジュールは、上記の取付孔を貫通する、例えばボルトのような固定部材によってソーラモジュールに取り付けられる接続部材によって互いに接続される。有利には隣接するソーラモジュール間の継ぎ目はパッキング部材によってシーリングされる。
【0023】
さらに本発明は、支持基板と、この支持基板に接続されたカバー層を有する、例えば薄膜ソーラモジュールのようなフレームレスソーラモジュールを作製する方法を対象としており、上記の支持基板と、カバー層との間には層構造体が設けられており、この層構造体により、光起電性のエネルギを形成するため、直列接続される複数のソーラセルが構成される。本発明による方法では、上記の支持基板および/またはカバー層には、モジュール支持部にソーラモジュールを取り付けるため、または少なくとも1つの別のソーラモジュールを接続するため、複数の取付孔が設けられる。方法の技術的観点において有利であり得るのは、上記の支持基板上に上記の層構造体を被着する前に、上記の支持基板および/または上記の層構造体に上記の取付孔を形成する場合である。本発明では上記の層構造体は、上記の取付孔を含むコーティングのないゾーンまたはこれらの取付孔を形成するために設けられたコーティングのないゾーンにおいて除去され、これによって同様に方法の技術的利点を得ることができる。有利には各取付孔において上記の取付孔を包囲して上記の層構造体に向かって密閉するシーラントを支持基板とカバー層との間に配置する。さらに上記の取付孔に1つずつのシーラントをいれると、有利になり得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ソーラモジュールを据え置き型ないしは屋根材一体型で取り付ける本発明による取付装置の概略平面図である。
図2図1のソーラモジュールの取付孔を説明する詳細図である。
図3図1のソーラモジュールの取り付けを説明する、取付孔領域における概略断面図である。
図4図1のソーラモジュールにおいて、同じソーラセル面積を有する複数のソーラセルを説明する概略平面図である。
図5】支持なし型構成形態で構成された本発明による取付装置の平面図である。
図6図5のソーラモジュールの取り付けを説明する、取付孔領域における概略断面図である。
図7】本発明による別の取付装置を示す概略平面図および断面図である。
【0025】
添付の図を参照し、複数の実施例に基づき、本発明を詳しく説明する。
【0026】
図面の詳細な説明
まず図1,2A〜2Cおよび3A〜3Bを考察する。図1には全体として参照符号1で示された取付装置1の構造が示されており、ここでは、例えば薄膜ソーラモジュールである複数のソーラモジュール2がモジュール支持部3に取り付けられている。図1では4つのソーラモジュールが示されているが、当然のことながら、この取付装置1は、より多くの個数またはより少ない個数のソーラモジュール2を含むこともできる。ソーラモジュール2は慣用のようにそれぞれ矩形の面積体として構成されている。
【0027】
モジュール支持部3は、ソーラモジュール2の屋根据え付け型または屋根材一体型取り付けに使用され、例えばアルミニウムから製造される複数の平行な支持レール4を有する。支持レール4は、例えば、ねじまたはスチール留め具によって(据え付け型の場合)図示しない、建物の屋根にまたは(屋根材一体型の場合)屋根構成体に固定される。各支持レール4は、複数のモジュール留め具5を有しており、これらのモジュール留め具5は、支持レール4に対して垂直に、レールの延在方向に沿って分散して配置されており、かつ、ソーラモジュール2の取り付けに使用される。
【0028】
図2A〜2Cからわかるように、ソーラモジュール2にはそれぞれ、一体化された形態において互いに直列接続されかつ矩形のソーラセル面を有する複数のソーラセル6が含まれている。各ソーラモジュール2は一般的に複数の(例えば100個の)ソーラセル6を有する。
【0029】
図3A〜3Bに示されているようにソーラモジュール2はここでは、例えば、いわゆる基板構成形態に基づいており、また電気絶縁性の背面側支持基板7と、前面ないしは光入射側のカバープレート8とを有し、上記の背面側支持基板は、その上に載置されたソーラセル6を構成するための層構造体9を有しており、上記のカバープレートは支持基板7に接続されている。構造化された層構造体9を有する変形しない支持基板7は、例えばポリビニルブチラール(PVB)またはエチレンビニルアセテート(EVA)を含む接着層10によって変形しないカバープレート8と接着される(「積層される」)。
【0030】
詳しく図示していない層構造体9には、支持基板7の前面側に配置された、例えばモリブデンである光不透過性金属からなる背面電極層と、この背面電極層上にデポジットされた光起電性アクティブ吸収層と、バッファ層と、このバッファ層上にデポジットされた前面電極層とが含まれており、上記の光起電性アクティブ吸収層には、例えば、殊にナトリウム(Na)がドーピングされたCu(In,Ga)(S,Se)2のような銅−インジウム−ジセレニド(CuInSe2)のグループの化合物であるp導電性黄銅鉱半導体が含まれており、上記の前面電極層は、上記の半導体が感応するスペクトル領域のビームに対して透明であり、かつ、例えばドーピングされた金属酸化物、例えばn導電性の、アルミニウムがドーピングされた亜鉛酸化物をベースとしている。層構造体9は、それ自体公知の方法によって複数のソーラセル6に分割され、この分割は、レーザ書き込みなどの適当な構造化テクノロジを使用して切り込むことによって行われる。直列接続されるソーラセル6を有するこのようなソーラモジュール2の基本構造は当業者にそれ自体公知であるため、ここではこれについて詳しく立ち入らない。
【0031】
変形しない支持基板7はここでは、例えば、光透過度が比較的低いガラスから構成され、十分な強度ならびに実行されるプロセスステップに対して不活性な特性を有する別の同様の絶縁材料も使用することができる。変形しないカバープレート8には、例えば、わずかに鉄を含有する硬化エクストラホワイトガラスが含まれる。
【0032】
ソーラモジュール2のコーナ領域11にはそれぞれ打ち抜きによって形成される取付孔12が設けられており、これらの取付孔12は、ソーラセル6の光起電性アクティブ領域13内に形成されている。取付孔12の周りには、1つずつのコーティングのないゾーン14(層構造体9の凹部ないしは切り欠き部)が形成されており、したがってこれらのゾーンには層構造体9が設けられていない。図2Aおよび2Bに示したように、コーティングのないゾーン14は、例えば、矩形または丸形の形状を有し得る。図2Cに示したように有利には、例えばブチルゴムからなるシーラント16を、取付孔12の周りの支持基板7とカバープレート8との間に配置し、これによって取付孔12を取り囲む端封を行うことができる。
【0033】
ソーラモジュール2の有利な作製方法において、すでにあらかじめ空けられた取付孔12’を有する支持基板7に層構造体9を被着し、引き続いてすでにあらかじめ空けられた取付孔12’’を有するカバープレート8によって支持基板7を積層する。この際には支持基板7の取付孔12’は、カバープレート8の取付孔12’に揃えられる。上記の積層の前にはコーティングのないゾーン14における層構造体9は、例えば、摩擦車によって機械的研磨的に除去される。この層の除去は有利には、ソーラモジュール2の縁部ゾーン15のエッジにおける層の除去と一緒に行われる。さらにシーラント16が取付孔12の周りに配置される。このシーラントは有利には、上記の積層の際に溶融して凝固後に取付孔12の端封を形成する材料から構成される。
【0034】
択一的な作製方法において取付孔12は、例えばレーザ穿孔により、上記の積層されたソーラモジュール2に後で形成される。有利には上記のコーティングのないゾーン14は、上記の積層の前に層が除去され、取付孔12が形成されるべき領域にシーラント16が配置される。
【0035】
上記のコーティングのないゾーン14が、後で層を除去するのではなく、支持基板7に層構造体9を被着する間にマスキングによって形成されるようにすることも考えられる。
【0036】
図3A〜3Bにはねじ接続を用いてモジュール留め具5にソーラモジュール2を取り付ける様子が示されている。モジュール留め具5にはこのために留め具孔18が設けられており、この留め具孔は、取付孔12に揃えられて配置される。取り付けのため、取付孔12および留め具孔18を貫通するボルトが所定の位置に配置され、このボルトとカウンタナット19とがねじ留めされる。ボルト17はボルト頭部20がソーラモジュール2の前面に当接しており、ソーラモジュール2はその背面がモジュール留め具5に載置されている。例えばゴムのような弾力性のある材料からなり、かつ、ボルト頭部20とソーラモジュール2との間、ならびにソーラモジュール2とモジュール留め具5との間にある中間層21により、局所的に機械的な応力が大きくなり過ぎることを緩和することができる。図3Bに示したようにボルト17を挿入する前に、取付孔12を付加的にシーリングするためにシーラント16’を取付孔12に入れることができる。このようなケースでは場合によっては支持基板7とカバープレート8との間のシーラント16によって上記の端封を省略することができる。
【0037】
図1に示したように、取付装置1において複数のソーラモジュール2は直交する2つの空間方向に沿って並んで配置され、隣接するソーラモジュール2間には1つずつ継ぎ目25が残っている。これらの継ぎ目25には、例えばゴム製のシーリングすみ肉22が1つずつ入れられ、このシーリングすみ肉により、例えば、屋根材一体型設置の際に取付装置1の不透過性を保証することができる。シーリングすみ肉22は、例えば、ファサード構成部材とすることも可能である。
【0038】
ここで図4Aを考察する。上記の説明によってわかるように、ソーラモジュール2ではソーラセル6の光起電性アクティブ領域13に取付孔12が形成される。この結果、ソーラセル6は、(x方向に沿った)幅が同じ場合にソーラセル面積が互いに異なる。したがってコーティングのないゾーン14により、例えば4つのソーラセル6’からなるそれぞれの(この明細書の冒頭で「第2のソーラセル」と称した)ソーラセル面積は、コーティングのないゾーン14に隣接するそれぞれの(この明細書の冒頭で「第1のソーラセル」と称した)ソーラセル6に比べて小さくなっている。複数の(第1の)ソーラセル6は、互いに同じ形状およびソーラセル面積を有する。同様に複数の(第2の)ソーラセル6’も互いに同じ形状およびソーラセル面積を有する。しかしながら(第2の)ソーラセル6’の形状およびソーラセル面積と、(第1の)ソーラセル6の形状およびソーラセル面積とは異なる。
【0039】
このことにより、不利なことにも、光に曝された際に(第2の)ソーラセル6’が、隣接する(第1の)ソーラセル6よりも低い電圧しか供給せず、特性曲線の異なる動作点において動作することになるため、ソーラセル6’の効率が低下してしまう可能性がある。これは回避するために有利であるのは、ソーラモジュール2においてすべてのソーラセル6,6’が互いに同じソーラセル面積を有するようにする場合である。図4Bに示したように、これは、コーティングのないゾーン14に関連する(第2の)ソーラセル6’が(第1の)ソーラセル6よりも(y方向に)短い長さを有するが、(x方向に)長い幅を有することによって達成することができる。したがってすべてのソーラセル6は、特性曲線の同じ動作点において、殊に最適な動作点において動作できるのである。
【0040】
図5,6Aおよび6Bには、1つの概略平面図および複数の断面図により、取付孔12の領域における本発明の別の取付装置1の構造が示されている。この取付装置は、支持なし型構成として形成されている。不要な繰り返しを避けるため、上記の取付装置との相違だけを説明する。その他の点について上で述べた説明を参照されたい。
【0041】
支持なし型の構成形態においてソーラモジュール2は、小さい継ぎ目25を伴って横に並んで配置されている。隣接するソーラモジュール2はそれぞれその上側面および下側面が、変形しない接続継ぎ目板23によって互いに固定して接続されており、接続継ぎ目板23はそれぞれ、隣接するソーラモジュール2の継ぎ目25を架橋している。ソーラモジュール2への接続継ぎ目板23の固定はねじ留めによって行われ、接続継ぎ目板23にはこのために継ぎ目板孔26が設けられており、これらの継ぎ目板孔は、取付孔12に揃えられて配置されている。各取付孔12および隣接する2つの継ぎ目板孔26には、ボルト17が貫通しており、このボルトはカウンタナット19とねじ留めされる(図6A〜6B参照)。図6Aに示したように、例えばゴムのような弾力性のある材料からなる中間層21がそれぞれ、ボルト頭部20とソーラモジュール2との間、ならびに、ソーラモジュール2とモジュール留め具5との間に設けられている。図6Bに示したように、2つの中間層21は、取付孔12内で互いに接続することが可能であり、かつ、取付孔12を内張する関連する構造としてパッキング部材27の形態で形成することができる。パッキング部材27により、有利にも取付孔12の端封を実現することできるため、場合によっては、取付孔12の領域における、支持基板7とパッキングプレート8との間のシーラント16による端封を省略することができる。接続継ぎ目板23により、簡単かつコスト的に有利に、美的に訴えるソーラモジュール2からなる支持なし型構造を形成することができる。複数の継ぎ目25にはそれぞれシーリングすみ肉22が配置され、これによって取付装置1の不透過性が保証される。
【0042】
図7A〜7Bには、取付孔12の領域における平面図および断面図により、本発明による別の取付装置1の構造が示されており、この取付装置は、据え置きおよび屋根材一体型取り付けにも、支持なし型構成形態にも同様に好適である。不要な繰り返しを避けるため、図1,2A〜2B,3A〜3Bおよび4A〜4Bによって説明した取付装置1との相違だけを説明する。その他の点については上で述べた説明を参照されたい。
【0043】
これらの図によれば、ソーラモジュール2は、カバープレート8を有しており、このカバープレート8は、支持基板から張り出して周囲を取り囲む縁部区画24を有しており、したがって支持基板7よりも大きい。取付孔12は、カバープレート8の張り出している縁部区画24だけに分散して形成されている。このようにすることの利点は、ソーラセル6の加工を従来の方法で行うことできることであり、この際にはあらかじめ空けた取付孔12を有するカバープレート8を設けて支持基板7と積層するだけでよい。同様に、積層したソーラモジュール2の張り出した縁部区画24に後で取付孔12を追加することも可能である。ソーラセル6の領域における層の除去は不要であるため、光起電性アクティブ面が失われることはなく、製造プロセスも簡単になる。図7Bに示したように、モジュール留め具5とのねじ留めまたは択一的な接続継ぎ目板23とのねじ留めは、すでに上で説明した仕方で行うことができる。択一的には支持基板7の張り出している縁部区画に取付孔12を形成することも考えられる。
【0044】
上の説明からわかるように、本発明によってフレームレスソーラモジュール、殊に薄膜ソーラモジュールが得られ、このソーラモジュールにより、簡単かつ信頼性が高く、さらにコスト的に有利なモジュール支持部への取り付けが可能になり、または支持ないし型構成形態における別のソーラモジュールとの接続が可能になる。殊に据え置き型または屋根材一体型取り付けに対し、または支持なし型構成用に同じソーラモジュールを選択的に使用することができる。さらに簡単かつコスト的に有利にソーラモジュールの交換が可能になる。盗難に対する防御は、例えば、根角ボルトを使用することよって、または例えば溶接によってボルトとカウンタナットとの解除不能な接続を作製することよって容易に達成することができる。上記の取付孔をソーラモジュールの光起電性アクティブ領域に設ける場合、ソーラセル面積が使用されるため、モジュール出力は必然的に、従来の背面取付技術による相応のソーラモジュールの場合よりもやや小さくなる。モジュールサイズに応じて、約66×154cmの面積を有するソーラモジュールにおいて、それぞれ約4×4cmの面積を有する4つのコーティングのないゾーンによる出力損失は、約1〜2%になる。取付孔がカバープレート(ないしは支持基板)の張り出した縁部区画に形成されるソーラモジュールでは出力損失は発生しない。しかしながらこの場合には相応に大きなカバープレート(ないしは支持基板)を設けなければならない。
【0045】
本発明は、支持基板とこれに接続されたカバー層とを有するフレームレスソーラモジュールに、殊に薄膜ソーラモジュールに関しており、上記の支持基板とカバー層との間には層構造体が設けられており、この層構造体により、光起電性のエネルギを形成するための直列接続された複数のソーラセルが形成される。上記の支持基板および/またはカバー層には、ソーラモジュールをモジュール支持部に取り付けるためまたは少なくとも1つの別のソーラモジュールを接続するための複数の取付孔が設けられている。
【0046】
本発明はさらに、支持基板とこれに接続されたカバー層とを有するフレームレスソーラモジュール、殊に薄膜ソーラモジュールを製造する方法に関しており、上記の支持基板とカバー層との間には層構造体が設けられており、この層構造体により、光起電性のエネルギを形成するための直列接続される複数のソーラセルが形成される。ここでは支持基板および/またはカバー層に、ソーラモジュールをモジュール支持部に取り付けるため、または少なくとも1つの別のソーラモジュールを接続するための複数の取付孔が設けられている。
【符号の説明】
【0047】
1 取付装置、 2 ソーラモジュール、 3 モジュール支持部、 4 支持レール、 5 モジュール留め具、 6,6’ ソーラセル、 7 支持基板、 8 カバープレート、 9 層構造体、 10 接着層、 11 コーナ領域、 12,12’,12’’ 取付孔、 13 アクティブ領域、 14 コーティングのないゾーン、 15 縁部ゾーン、 16,16’ シーラント、 17 ボルト、 18 留め具孔、 19 カウンタナット、 20 ボルト頭部、 21 中間層、 22 シーリングすみ肉、 23 接続継ぎ目板、 24 縁部区画、 25 継ぎ目、 26 継ぎ目板孔、 27 パッキング部材
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A-4B】
図5
図6A
図6B
図7A
図7B