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特許6076377コーティングされた基板を処理するプロセスボックス、アッセンブリ及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076377
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】コーティングされた基板を処理するプロセスボックス、アッセンブリ及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20170130BHJP
   H01L 31/0749 20120101ALI20170130BHJP
【FI】
   H01L21/26 Q
   H01L31/06 460
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-556993(P2014-556993)
(86)(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公表番号】特表2015-513790(P2015-513790A)
(43)【公表日】2015年5月14日
(86)【国際出願番号】EP2013052520
(87)【国際公開番号】WO2013120779
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2014年8月18日
(31)【優先権主張番号】12155848.0
(32)【優先日】2012年2月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マーティン フュアファンガー
(72)【発明者】
【氏名】ダン クォン ファン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヨースト
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−239635(JP,A)
【文献】 特表2013−520790(JP,A)
【文献】 特表2011−520273(JP,A)
【文献】 特開2007−081372(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/104231(WO,A1)
【文献】 国際公開第91/004572(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
H01L 31/0749
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面でコーティングされた基板(3a,3b)を処理する搬送可能なプロセスボックス(1)であって、該プロセスボックス(1)は、
底(5)であって、第1の基板(3a)が当該第1の基板(3a)のコーティングされていない基板面で全面的に支持された状態で載置可能であり、前記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)が、前記底(5)の下面(9)において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている底(5)と、
前記底(5)を蓋(8)に結合する枠(6)と、
中間要素(7)であって、第2の基板(3b)が当該第2の基板(3b)のコーティングされていない基板面で全面的に支持された状態で載置可能であるように形成されている中間要素(7)と、
蓋(8)であって、前記枠(6)上に載置され、前記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)が、前記蓋(8)の上面(27)において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている蓋(8)と、
を備え、前記底(5)と前記蓋(8)と前記枠(6)とは、前記基板(3a,3b)を処理するプロセス室(17)を形成することを特徴とする、片面でコーティングされた基板を処理する搬送可能なプロセスボックス。
【請求項2】
前記中間要素(7)は、前記枠(6)により形成される段(12)上に未固定に載置されており、前記プロセス室(17)を、前記第1の基板(3a)を処理する第1のプロセス部分室(17a)と、前記第2の基板(3b)を処理する第2のプロセス部分室(17b)とに分割する、請求項1記載のプロセスボックス。
【請求項3】
前記中間要素(7)は、前記底(5)上に支持される第1のスペーサ(22)及び/又は前記第1の基板(3a)上に支持される第2のスペーサ(24)上に未固定に載置されており、前記第1のスペーサ(22)又は前記第2のスペーサ(24)と相俟って、前記プロセス室(17)を、前記第1の基板(3a)を処理する第1のプロセス部分室(17a)と、前記第2の基板(3b)を処理する第2のプロセス部分室(17b)とに分割するように形成されている、請求項1記載のプロセスボックス。
【請求項4】
前記第2のスペーサ(24)は、前記第1の基板(3a)のコーティングフリーの縁部ゾーン(14)に支持されている、請求項3記載のプロセスボックス。
【請求項5】
前記枠(6)は、前記底(5)上に未固定に載置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のプロセスボックス。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の搬送可能なプロセスボックス内において片面でコーティングされた基板(3a,3b)を処理する方法であって、
a)前記プロセスボックス(1)を、
底(5)であって、第1の基板(3a)を当該第1の基板(3a)のコーティングされていない基板面で全面的に支持することができ、前記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)が、前記底(5)の下面(9)において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている底(5)を用意し、
前記底(5)を蓋(8)に結合するために、前記底(5)上に枠(6)を未固定に載置し、
場合によっては前記第1の基板(3a)を前記底(5)上に載置し、
中間要素(7)であって、第2の基板(3b)を当該第2の基板(3b)のコーティングされていない基板面で全面的に支持することが可能な中間要素(7)を配置し、
場合によっては前記第2の基板(3b)を前記中間要素(7)上に載置し、
蓋(8)であって、前記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)が、前記蓋(8)の上面(27)において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている蓋(8)を、前記プロセスボックス(1)を形成するために前記枠(6)上に載置する、
ことにより組み立てて、装填を行い、
b)前記プロセスボックス(1)を、放射加熱器(30)を有する熱処理チャンバ(29)内に搬送し、
c)前記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)を熱処理するために、前記底(5)の下面(9)において放射を供給し、かつ/又は前記蓋(8)の上面(27)において放射を供給する、
ことを特徴とする、搬送可能なプロセスボックス内において片面でコーティングされた基板を処理する方法。
【請求項7】
前記中間要素(7)を、第1の態様にあっては、前記枠(6)により形成される段(12)上に未固定に載置するか、又は第2の態様にあっては、前記底(5)上に支持される第1のスペーサ(22)及び/又は前記第1の基板(3a)上に支持される第2のスペーサ(24)上に未固定に載置する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
プロセスボックス(1)内において片面でコーティングされた基板(3a,3b)を処理するアッセンブリ(28)であって、該アッセンブリ(28)は、
搬送可能なプロセスキャリア(2)を備え、該搬送可能なプロセスキャリア(2)は、
底(5)であって、第1の基板(3a)が当該第1の基板(3a)のコーティングされていない基板面で全面的に支持された状態で載置可能であり、前記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)が、前記底(5)の下面(9)において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている底(5)と、
枠(6)であって、前記底(5)を蓋(8)に結合し、該蓋(8)が前記枠(6)上に未固定に載置可能であるように形成されている枠(6)と、
中間要素(7)であって、第2の基板(3b)が当該第2の基板(3b)のコーティングされていない基板面で全面的に支持された状態で載置可能であるように形成されており、前記枠(6)の段(12)上に未固定に載置される中間要素(7)と、
蓋(8)であって、プロセスチャンバ(29)内に定置に配置され、前記プロセスボックス(1)を形成するために前記プロセスキャリア(2)の前記枠(6)上に未固定に載置され、前記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)が、前記蓋(8)の上面(27)において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている蓋(8)と、
を有し、さらに前記アッセンブリ(28)は、
前記蓋(8)及び/又は前記プロセスキャリア(2)を動かす運動機構(21)であって、前記蓋(8)が前記枠(6)上に載置可能であるように形成されている運動機構(21)を備える、
ことを特徴とする、プロセスボックス内において片面でコーティングされた基板を処理するアッセンブリ。
【請求項9】
請求項8記載のアッセンブリ(28)内において片面でコーティングされた基板(3a,3b)を処理する方法であって、
a)搬送可能なプロセスキャリア(2)を、
第1の態様にあっては、底(5)であって、第1の基板(3a)を当該第1の基板(3a)のコーティングされていない基板面で全面的に支持することができ、前記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)が、前記底(5)の下面(9)において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている底(5)を用意し、前記底(5)を蓋(8)に結合するために、前記底(5)上に枠(6)を未固定に載置するか、又は第2の態様にあっては、底(5)であって、第1の基板(3a)を当該第1の基板(3a)のコーティングされていない基板面で全面的に支持することができ、前記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)が、前記底(5)の下面(9)において供給される放射により熱処理可能であるように形成されており、前記底(5)を蓋(8)に結合するために用いられる枠(6)に固結されている底(5)を用意し、
場合によっては前記第1の基板(3a)を前記底(5)上に載置し、
中間要素(7)であって、第2の基板(3b)を当該第2の基板(3b)のコーティングされていない基板面で全面的に支持することが可能な中間要素(7)を、第1の態様にあっては、前記枠(6)により形成される段(12)上にか、又は第2の態様にあっては、前記底(5)上に支持される第1のスペーサ(22)及び/又は前記第1の基板(3a)上に支持される第2のスペーサ(24)上に未固定に載置し、
場合によっては前記第2の基板(3b)を前記中間要素(7)上に載置する、
ことにより組み立てて、装填を行い、
b)前記プロセスキャリア(2)を、放射加熱器(30)を有する熱処理チャンバ(29)内に搬送し、
c)蓋(8)であって、前記熱処理チャンバ(29)内に定置に配置され、前記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)が、前記蓋(8)の上面(27)において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている蓋(8)を、前記プロセスボックス(1)を形成するために前記枠(6)上に未固定に載置し、
d)前記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)を熱処理するために、前記底(5)の下面(9)において放射を供給し、かつ/又は前記蓋(8)の上面(27)において放射を供給する、
ことを特徴とする、アッセンブリ内において片面でコーティングされた基板を処理する方法。
【請求項10】
プロセスボックス(1)内において片面でコーティングされた基板(3a,3b)を処理するアッセンブリ(28)であって、該アッセンブリ(28)は、
搬送可能なプロセスキャリア(2)を備え、該搬送可能なプロセスキャリア(2)は、
底(5)であって、第1の基板(3a)が当該第1の基板(3a)のコーティングされていない基板面で全面的に支持された状態で載置可能であり、前記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)が、前記底(5)の下面(9)において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている底(5)と、
中間要素(7)であって、第2の基板(3b)が当該第2の基板(3b)のコーティングされていない基板面で全面的に支持された状態で載置可能であるように形成されており、前記底(5)上に支持される第1のスペーサ(22)及び/又は前記第1の基板(3a)上に支持される第2のスペーサ(24)上に未固定に載置される中間要素(7)と、
蓋(8)であって、プロセスチャンバ(29)内に定置に配置され、前記プロセスボックス(1)を形成するために前記底(5)と前記蓋(8)とを結合する枠(6)が固定されており、前記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)が、前記蓋(8)の上面(27)において供給される放射エネルギにより熱処理可能であるように形成されている蓋(8)と、
を有し、さらに前記アッセンブリ(28)は、
前記枠(6)を有する前記蓋(8)及び/又は前記プロセスキャリア(2)を動かす運動機構(21)であって、前記枠(6)が前記底(5)上に未固定に載置可能であるように形成されている運動機構(21)を備える、
ことを特徴とする、プロセスボックス内において片面でコーティングされた基板を処理するアッセンブリ。
【請求項11】
請求項10記載のアッセンブリ(28)内において片面でコーティングされた基板(3a,3b)を処理する方法であって、
a)搬送可能なプロセスキャリア(2)を、
底(5)であって、第1の基板(3a)を当該第1の基板(3a)のコーティングされていない基板面で全面的に支持することができ、前記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)が、前記底(5)の下面(9)において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている底(5)を用意し、
場合によっては前記第1の基板(3a)を前記底(5)上に載置し、
中間要素(7)であって、第2の基板(3b)を当該第2の基板(3b)のコーティングされていない基板面で全面的に支持することが可能な中間要素(7)を、前記底(5)上に支持される第1のスペーサ(22)及び/又は前記第1の基板(3a)上に支持される第2のスペーサ(24)上に載置し、
場合によっては前記第2の基板(3b)を前記中間要素(7)上に載置する、
ことにより組み立てて、装填を行い、
b)装填した前記プロセスキャリア(2)を、放射加熱器(30)を有する熱処理チャンバ(29)内に搬送し、
c)蓋(8)であって、前記熱処理チャンバ(29)内に定置に配置され、記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)が、前記蓋(8)の上面(27)において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている蓋(8)に固結されている枠(6)を、前記プロセスボックス(1)を形成するために前記底(5)上に未固定に載置し、
d)前記基板(3a,3b)のコーティング(4a,4b)を熱処理するために、前記底(5)の下面(9)において放射を供給し、かつ/又は前記蓋(8)の上面(27)において放射を供給する、
ことを特徴とする、アッセンブリ内において片面でコーティングされた基板を処理する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片面でコーティングされた基板を処理するプロセスボックス、アッセンブリ及び方法に係り、特に、薄膜ソーラーセル用の吸収体(アブソーバ)を製造する前駆体層がコーティングされた基板の熱処理に関する。
【0002】
太陽光を電気エネルギに直接変換する光起電性の層系は、十分に知られている。この層系は、大抵の場合、「ソーラーセル」と称呼され、「薄膜ソーラーセル」なる概念は、厚さが数マイクロメートルにすぎず、十分な機械的強度のために基板を必要とする薄い層系に関する。公知の基板は、無機ガラス、プラスチック(ポリマー)又は金属、特に金属合金を包含し、それぞれの層厚さ及び固有の材料特性に基づいて、硬性の板又は軟性の箔として形成可能である。
【0003】
技術的な取扱性及び効率に関して、アモルファスシリコン、マイクロモルフシリコン又は多結晶シリコン、テルル化カドミウム(CdTe)、ヒ化ガリウム(GaAs)、カルコパイライト化合物、特に銅−インジウム/ガリウム−二硫黄/ジセレニド(略して式Cu(In,Ga)(S,Se))、又はケステライト化合物、特に銅−亜鉛/スズ−二硫黄/ジセレニド(略して式Cu(Zn,Sn)(S,Se))からなる半導体層を有する薄膜ソーラーセルが、有利であることが判っている。
【0004】
個々のソーラーセルによっては、1ボルトに満たない電圧レベルが達成可能であるにすぎないので、一般には、多数のソーラーセルを直列に互いに接続してソーラーモジュールを形成している。こうして、所定の用途のために使用可能な出力電圧を得ることができる。この場合、薄膜ソーラーモジュールは、ソーラーセルが層形成中に既に集積された形で接続可能であるという特別な利点を提供する。特許文献には、直列接続される薄膜ソーラーモジュールが既に多数記載されている。これに関して、独国特許第4324318号明細書及び欧州特許出願公開第2200097号明細書が例として挙げられる。
【0005】
吸収体固有の特性は、薄膜ソーラーモジュールにおける光効率に対して重要な影響を有している。最近まで、吸収体の構造及び組成は、集中的な研究活動の対象であり、半導体層を形成する様々な可能性のうち、近年、主として2つの方法が定着している。これは、高温の基板上に個別要素を同時蒸着する方法と、低温の基板上に例えばマグネトロン陰極スパッタリングにより個別層(前駆体層)としての要素を連続的に被着し、引き続いての高速の熱処理(Rapid Thermal Processing:RTP)を行う方法とである。この熱処理では、前駆体層の、半導体層への本来の結晶形成及び相転移が実施される。この工程は、例えば「J.Palm et al., “CIS module pilot processing applying concurrent rapid selenization and sulfurization of large area thin film precursors”, Thin Solid Films 431−432, S. 414−522 (2003)」に詳細に記載されている。
【0006】
産業上の大量生産において、前駆体層のRTP熱処理は、いわゆるインラインプラントにおいて実施される。インラインプラントにおいて、コーティングされた基板は、入口ロックチャンバを介して入れられ、加熱チャンバ内で、厳密に定められた温度プロフィールにしたがって加熱される。加熱は、典型的には電気により運転される放射加熱器によって実施される。次に、処理された基板は、冷却チャンバ及び/又は冷却区間内で冷却され、その後、出口ロックチャンバによりインラインプラントから排出される。このような方法は、例えば欧州特許第0662247号明細書において公知である。
【0007】
一般に、RTP熱処理は、薄膜ソーラーセル製造における、プロセス雰囲気の正確なコントロールを必要とするコストのかかるプロセスである。この目的のために、基板の周囲のプロセス室をプロセスボックスにより画成することが公知である。このことは、揮発性の高いカルコゲン成分、例えばセレン又は硫黄の分圧を、熱処理中、少なくとも略一定に維持することを可能にする。さらに、腐食性のガスに対する熱処理チャンバの暴露が低減される。このようなプロセスボックスは、例えば独国特許出願公開第102008022784号明細書において公知である。
【0008】
さらに、欧州特許出願公開第2360720号明細書は、片面でコーティングされた2つの基板を処理する搬送可能なプロセスボックスを示しており、このプロセスボックス内では、両基板が、両基板のコーティングされていない面で互いに重ねられているか、又はスペーサにより互いに分離されている。処理すべきコーティングは、互いに背離している(「バック・ツー・バック」)。下側の基板は、スペーサによりプロセスボックスの底から離間しており、スペーサは、下側の基板の下向きのコーティングに対してプロセスガスが自由にアクセス可能であるように形成されている。下側の基板の全面的な載置は、不可能である。下側の基板には、上側の基板の重量に起因する力がかかる。基板のコーティングは、非対称的なプロセス室内で処理される。
【0009】
欧州特許出願公開第2360721号明細書は、これとは別の、コーティングされた両基板の配置を示している。この場合、処理すべきコーティングは、互いに対面している(「フェース・ツー・フェース」)。両コーティングのために、基板自体によって、1つの共通のプロセス室が形成される。基板の全面的な載置は、不可能である。加えて、両コーティングは、個別のプロセス室を有しない。
【0010】
本発明の課題は、従来技術において公知の、コーティングされた基板を熱処理するプロセスボックスを有利な形に改良することである。特に、投資コスト及び運転コストを大幅に増大させることなく、プラント処理量を増大させる安価かつ省エネルギのプロセスボックスが提供されることが望ましい。加えて、コーティングされた基板は、特に高い品質で産業上の大量生産において製造可能であることが望ましい。
【0011】
上述の課題及び別の課題は、本発明の提案にしたがって、並列の請求項に規定される、片面でコーティングされた基板を処理する搬送可能なプロセスボックス、アッセンブリ及び方法により解決される。本発明の好ましい態様は、従属請求項の特徴から看取可能である。
【0012】
本発明における意味で、「基板」なる表現は、面状の物体であって、互いに反対方向を向いた2つの表面を有し、両表面の一方に、典型的には複数の層を含む層構造(「コーティング」)が被着されている物体に関する。基板の他方の表面は、一般にコーティングされていない。基板は、好ましくは、薄膜ソーラーモジュールを製造するための、吸収体のプリカーサ層あるいは前駆体層(例えばカルコパイライト化合物又はケステライト化合物)によりコーティングされ、RTP熱処理にかけなければならない基板である。
【0013】
「未固定に」なる表現は、ある物体が別のある物体上に載せられているか、あるいは置かれているものの、両物体間に固結あるいは固定が存在しない状態に関する。これにより両物体は、結合手段あるいは固定手段を解除せずとも、破壊することなく互いに分離可能である。
【0014】
本発明に係るプロセスボックスは、基板を装填するために組み立て可能に形成されているとともに、特に処理された基板を(破壊することなく)取り出すために、再び分解可能に形成されている。
【0015】
プロセスボックスは、底、例えば底板を備える。底は、第1の基板が好ましくはコーティングされていない基板面で全面的に支持された状態で載置可能であるように形成されている。さらに底は、両基板のコーティング、実質的にあるいは主として第1の基板のコーティングが、底の下面において供給される放射の放射エネルギにより熱処理可能であるように形成されている。
【0016】
「全面的に支持された状態」なる表現は、ここでも、そして以下でも、基板がその下面(コーティングされていない面)で底又は後述する中間要素上に載置され、下側の基板面が完全に、すなわちすべての面区分において支持されている状態に関する。これにより、熱処理時の基板の、場合によっては起こり得る撓曲は、回避可能である。
【0017】
さらにプロセスボックスは、底を蓋に結合する枠と、蓋とを備える。蓋は、基板のコーティング、実質的にあるいは主として第2の基板のコーティングが、蓋の上面において供給される放射の放射エネルギにより熱処理可能であるように形成されている。蓋は、好ましくは未固定に枠上に載置されている。同様に枠は、好ましくは未固定に底上に載置されている。しかし、枠は、底に固結されていてもよい。枠上に蓋を載置することにより、簡単にガスに対して密又は(別段のシールなしに)略密なプロセス室が実現可能である。
【0018】
さらにプロセスボックスは、底と蓋との間に配置される中間要素を備える。中間要素は、第2の基板が全面的に支持された状態で載置可能であるように形成されている。中間要素は、特に板状の要素、すなわち中間板の形態で形成されていてもよい。
【0019】
底、蓋及び枠により、両基板を処理する(縮小された)プロセス室が形成される。開放型のプロセス室、略閉鎖型のプロセス室若しくはガスに対して略密なプロセス室又はガスに対して密なプロセス室が、本発明における意味でのプロセス室と解される。開放型のプロセス室は、プロセス室とプロセスボックス外部の周囲との間の自由なガス交換を許容する。開放型のプロセス室とは異なり、ガスに対して密なプロセス室の場合、プロセス室と外部の周囲との間のこのようなガス交換は、完全に阻止されている。略閉鎖型のプロセス室又はガスに対して略密なプロセス室の場合、プロセスボックスは、プロセス室と外部の周囲との間において所定の最大の圧力差に達するまでは、ガスに対して密である。この最大の圧力差を超過すると、プロセス室と外部の周囲との間で圧力平衡が起こる。最大の圧力差は、プロセスボックス固有の設計次第である。
【0020】
プロセスボックスは、所定のプロセスステップ中、プロセス室を適当に所定のガス雰囲気とするために、ガスポートを備えていてもよい。ガス雰囲気は、例えば反応性のガス、例えばHS、HSe、S蒸気、Se蒸気又はH、及び不活性ガス、例えばN、He又はArを含有していてもよい。プロセスボックスが、ガスに対して密又は略密なプロセス室であっても、プロセスガス又は不活性ガスを外部の超過圧力でプロセス室内に導入可能なガスポートを有していてもよいことは、自明である。
【0021】
本発明に係るプロセスボックスにおいて、底、中間要素、蓋及び枠は、原則、意図した使用のために好適なあらゆる材料から製造可能である。好ましくは、底、中間要素、蓋、及び枠は、金属、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、炭素繊維強化炭素材料又は黒鉛を含んでいるか、又はこれらの材料からなっている。この場合、底は、底の下面において供給される熱エネルギによる熱処理を可能にするように形成されていることが望ましい。同じことは蓋にも当てはまり、蓋は、蓋の上面において供給される熱エネルギによる熱処理を可能にするように形成されている。底及び蓋は、この目的のために、基板を処理するために熱エネルギを供給する電磁放射に関して透過性、半透過性又は不透過性であってよい。底及び蓋は、特に、基板を処理するために熱エネルギを供給する放射源の電磁放射を少なくとも部分的に、特に完全に吸収するのに好適であって、これによりそれ自体が加熱され得る材料(例えば黒鉛)を含んでいても、このような材料からなっていてもよい。この場合、加熱された底あるいは蓋は、二次の熱源として、とりわけそれぞれ隣接する基板を加熱するために用いられることができる。このことは、特に熱分布の均質化に至り得る。
【0022】
本発明に係るプロセスボックスは、好ましくは、片面でコーティングされた2つの基板の同時の処理(熱処理)を可能にする。両基板の全面的な支持により、通常はガラス軟化点を上回る温度で実施される熱処理時に重力の作用に基づいて基板が撓曲する恐れは、回避可能である。これに対して、従来慣用のプロセスボックス(例えば欧州特許出願公開第2360720号明細書及び欧州特許出願公開第2360721号明細書)では、基板の撓曲を回避あるいは軽減するために、付加的な支持要素を設ける必要がある。これには、その都度の構成次第で、少なくとも両基板の一方において、処理すべきコーティングと支持要素との接触が不可避であることが伴う。本発明に係るプロセスボックスでは、基板は、それぞれの基板のコーティングの接触を必要とすることなく、処理可能である。これにより、コーティング及び/又は基板の損傷は、回避可能である。加えて、両基板が、それぞれのコーティングを上向きに、底あるいは中間要素上に載置可能であり、これにより回転させる必要がないため、基板の自動化された取り扱いが容易となる。従来慣用のプロセスボックスでは、「フェース・ツー・フェース」構成又は「バック・ツー・バック」構成の場合、両基板の一方を回転させなければならず、このことは、製造コストの上昇及びロスの増加の恐れを伴う。
【0023】
別の重要な利点は、プロセスボックスがプロセスチャンバ(例えば熱処理チャンバ)の外側で簡単かつ安価に自動化されて組み立てられて、装填が行われ得るという事実から得られる。同じことは、プロセスボックスの分解や、処理された基板の取り出しについても当てはまる。その点で、大量生産時の、基板を連続的に処理するサイクル時間は、明らかに短縮可能である。
【0024】
ガスに対して密又は略密なプロセス室の場合、プロセスボックス内に装填された基板は、プロセスチャンバの外側にあっても、環境影響から良好に保護されている。インラインプラントにおいて、装填がなされたプロセスボックスは、片面でコーティングされた基板をプロセス室から取り出す必要なしに、様々なプロセスチャンバ間を搬送可能である。
【0025】
プロセスボックスは、自由選択的に1つ又は2つの基板を装填可能である。処理量を上げるためには、2つの基板を装填すると、有利である。プロセスボックスの装填は、特に簡単に底及び中間要素上への基板の載置により実施可能であり、その結果、産業上の大量生産において、簡単かつ安価な自動化が可能である。
【0026】
本発明に係るプロセスボックスの好ましい態様において、中間要素は、枠により形成される段上に未固定に載置されている。このことは、プロセスボックスの特に簡単かつ迅速な組立と、片面でコーティングされた基板のプロセスボックスへの装填とを、産業上の大量生産において可能にする。加えて、プロセスボックスのプロセス室は、特に簡単に中間要素のみによって(専ら中間要素によって)2つのプロセス部分室、すなわち第1の基板を処理する第1のプロセス部分室と、第2の基板を処理する第2のプロセス部分室とに分割される。両プロセス部分室は、流動技術的に互いに接続可能である。しかし、択一的には、両プロセス部分室をガスに対して密又は略密に互いに分離することも可能である。この手段により、基板毎に固有のプロセス部分室を個別に調整可能である。これにより、基板の両コーティングは、例えばそれぞれ異なる処理を実施可能である。好ましくは、プロセス部分室は、プロセス部分室の同じ高さあるいは(鉛直)寸法により規定されて、対称的に形成されており、その結果、基板は、一様に処理可能である。このことは、高い品質及び性質に対する要求を促進する。
【0027】
これに対して択一的な態様において、プロセスボックスは、底上に支持される第1のスペーサ及び/又は第1の基板上に支持される第2のスペーサ上に未固定に載置されており、中間要素は、第1のスペーサ又は第2のスペーサと相俟って、プロセス室を、第1の基板を処理する第1のプロセス部分室と、第2の基板を処理する第2のプロセス部分室とに分割するように形成されている。スペーサは、それぞれ枠とは別物である。スペーサによって、プロセスボックスの特に簡単かつ迅速な組立と、片面でコーティングされた基板の装填とが、産業上の大量生産において可能である。好ましくは、第2のスペーサは、第1の基板のコーティングフリーの又は少なくとも機能面として考えられていない縁部ゾーンにおいて支持されている。薄膜ソーラーモジュールの場合、このような縁部ゾーンは、一般に設けられているので、好ましくは光学活性面の損失は、回避可能である。
【0028】
本発明は、上述のような本発明に係る搬送可能なプロセスボックス内において片面でコーティングされた基板を処理する方法にも関し、以下のステップを備える。
【0029】
第1のステップにおいて、プロセスボックスを組み立てて、単数又は複数の基板の装填を行う。この目的のために、底であって、第1の基板を全面的に支持することができ、基板のコーティング、実質的に又は主として底上に設けられた第1の基板のコーティングが、底の下面において供給される放射エネルギにより熱処理可能であるように形成されている底を用意する。底を蓋に結合するために、底上に枠を未固定に載置する。場合によっては第1の基板を(コーティングされていない面を下向きに)底上に載置する。加えて、中間要素であって、第2の基板を全面的に支持することが可能な中間要素を配置する。場合によっては第2の基板を(コーティングされていない面を下向きに)中間要素上に載置する。次に、蓋であって、基板のコーティング、実質的に又は主として第2の基板のコーティングが、蓋の上面において供給される放射エネルギにより熱処理可能であるように形成されている蓋を、プロセスボックスを形成するために枠上に未固定に載置する。底、蓋及び枠は、両基板を処理するプロセス室を形成する。プロセスボックスには、1つ又は2つの基板が装填可能である。
【0030】
第2のステップにおいて、プロセスボックスを、放射加熱器を有する熱処理チャンバ内に搬送する。
【0031】
第3のステップにおいて、基板のコーティング、実質的に又は主として第1の基板のコーティングを熱処理するために、底の下面において熱エネルギあるいは放射エネルギを供給し、かつ/又は基板のコーティング、実質的に又は主として第2の基板のコーティングを熱処理するために、蓋要素の上面において熱エネルギあるいは放射エネルギを供給する。
【0032】
本発明に係る方法により、プロセスボックスは、簡単にプロセスチャンバの外側で自動化されて組み立てられて、装填が行われることができる。片面でコーティングされた1つ又は2つの基板は、特に簡単かつ安価に高い製造品質で処理(熱処理)可能である。
【0033】
本発明に係る方法の好ましい態様では、中間要素を、枠により形成される段上に未固定に載置する。このことは、プロセスボックスの特に簡単な組立及び装填を可能にする。択一的には、中間要素を、底上に支持される第1のスペーサ及び/又は第1の基板上に支持される第2のスペーサ上に未固定に載置する。このことは、同様にプロセスボックスの特に簡単な組立及び装填を可能にする。
【0034】
さらに本発明は、片面でコーティングされた基板を処理するプロセスボックスを形成する搬送可能なプロセスキャリアを示している。ここでも、さらには以下でも、「プロセスキャリア」なる概念は、プロセスボックスを形成する前組立可能な開放型の構成群を示している。プロセスキャリアは、底であって、第1の基板が全面的に支持された状態で載置可能であり、基板のコーティング、実質的に又は主として第1の基板のコーティングが、底の下面において供給される放射エネルギにより熱処理可能であるように形成されている底を備える。さらにプロセスキャリアは、枠であって、底を蓋に結合し、蓋が未固定に載置可能であるように形成されている枠を備える。枠は、底上に未固定に載置されていてもよい。択一的には、枠は、底に固結されている。さらにプロセスキャリアは、中間要素であって、第2の基板が全面的に支持された状態で載置可能であるように形成されており、枠により形成される段上に未固定に載置される中間要素を備える。
【0035】
プロセスキャリアは、プロセスチャンバの外側で組み立てられて、基板の装填が行われることができ、しかも、処理された基板を取り出すために(破壊することなく)分解されることができる。コーティングされた基板を処理するプロセスチャンバ内に定置に配置される蓋により、プロセスキャリアは、補完され、プロセスボックスを形成可能である。これにより、蓋は再利用可能であり、プロセスボックス毎に別個の蓋を設ける必要がなくなるため、大量生産におけるコストは、削減可能である。
【0036】
さらに本発明は、前述のように形成されたプロセスキャリアを有するプロセスボックス内において片面でコーティングされた基板を処理するアッセンブリに関する。さらにアッセンブリは、蓋であって、プロセスチャンバ内に定置に配置され、プロセスボックスを形成するためにプロセスキャリアの枠上に未固定に載置され、基板のコーティング、実質的に又は主として第2の基板のコーティングが、蓋の上面において供給される放射エネルギにより熱処理可能であるように形成されている蓋と、蓋及びプロセスキャリアを相対的に動かす運動機構とを備える。運動機構は、蓋を枠上に載置するために、蓋がプロセスキャリアに対して相対的に可動かつ/又はプロセスキャリアが蓋に対して相対的に可動であるように形成されている。底、枠及び蓋は、両基板を処理するプロセス室を形成する。
【0037】
さらに本発明は、前述のように形成されたアッセンブリ内において片面でコーティングされた基板を処理する方法に関する。
【0038】
第1のステップにおいて、上述のように形成されたプロセスキャリアを組み立てて、単数又は複数の基板の装填を行う。この目的のために、第1の態様にあっては、底であって、第1の基板を全面的に支持することができ、基板のコーティング、実質的に又は主として底上に設けられた第1の基板のコーティングが、底の下面において供給される放射エネルギにより熱処理可能であるように形成されている底を用意する。底を蓋に結合するために、底上に枠を未固定に載置する。第2の態様にあっては、枠に固結されている底を用意する。場合によっては第1の基板を(コーティングされていない面を下向きに)底上に載置する。加えて、中間要素であって、第2の基板を全面的に支持することが可能な中間要素を、第1の態様にあっては、枠により形成される段上にか、又は第2の態様にあっては、底上に支持される第1のスペーサ及び/又は第1の基板上に支持される第2のスペーサ上に未固定に載置する。場合によっては第2の基板を(コーティングされていない面を下向きに)中間要素上に載置する。
【0039】
第2のステップにおいて、装填したプロセスキャリアを、放射加熱器を有する熱処理チャンバ内に搬送する。
【0040】
第3のステップにおいて、蓋であって、熱処理チャンバ内に定置に配置され、基板のコーティング、実質的に又は主として第2の基板のコーティングが、蓋の上面において供給される放射エネルギにより熱処理可能であるように形成されている蓋を、プロセスボックスを形成するために枠上に未固定に載置する。底、枠及び蓋は、両基板を処理するプロセス室を形成する。
【0041】
第4のステップにおいて、基板のコーティング、実質的に又は主として第1の基板のコーティングを熱処理するために、底の下面において熱エネルギあるいは放射エネルギを供給し、かつ/又は基板のコーティング、実質的に又は主として第2の基板のコーティングを熱処理するために、蓋の上面において熱エネルギあるいは放射エネルギを供給する。
【0042】
本発明に係る方法により、開放型のプロセスキャリアは、簡単にプロセスチャンバの外側で自動化されて組み立てられて、装填が行われることができる。片面でコーティングされた1つ又は2つの基板は、特に簡単かつ安価に高い製造品質で処理(熱処理)可能である。
【0043】
さらに本発明は、片面でコーティングされた基板を処理するプロセスボックスを形成する開放型の搬送可能なプロセスキャリアを示している。プロセスキャリアは、底であって、第1の基板が全面的に支持された状態で載置可能であり、基板のコーティングが、底の下面において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている底と、中間要素であって、第2の基板が全面的に支持された状態で載置可能であるように形成されており、底上に支持される第1のスペーサ及び/又は第1の基板上に支持される第2のスペーサ上に未固定に載置されている中間要素とを備える。
【0044】
このようなプロセスキャリアは、基板を装填するためにプロセスチャンバの外側で組み立てられ、処理された基板を取り出すために(破壊することなく)分解されることができる。プロセスチャンバ内に定置に配置され、枠が固結されている蓋により、プロセスキャリアは、補完され、プロセスボックスを形成可能である。これにより、大量生産におけるコストは削減可能である。
【0045】
さらに本発明は、直前で述べたように形成されたプロセスキャリアを有するプロセスボックス内において片面でコーティングされた基板を処理するアッセンブリに関する。さらにアッセンブリは、蓋であって、プロセスチャンバ内に定置に配置され、プロセスボックスを形成するために底上に載置される枠が固定されており、基板のコーティング、実質的に又は主として第2の基板のコーティングが、蓋の上面において供給される放射エネルギにより熱処理可能であるように形成されている蓋を備える。さらにアッセンブリは、枠を有する蓋及び/又はプロセスキャリアを動かす運動機構であって、枠が底上に載置可能であるように形成されている運動機構を備える。底、蓋及び枠は、両基板を処理するプロセス室を形成する。
【0046】
さらに本発明は、直前で述べたように形成されたアッセンブリ内において片面でコーティングされた基板を処理する方法に関する。
【0047】
第1のステップにおいて、相応のプロセスキャリアを組み立てて、単数又は複数の基板の装填を行う。この目的のために、底であって、第1の基板を全面的に支持することができ、基板のコーティング、実質的に又は主として底上に設けられた第1の基板のコーティングが、底の下面において供給される放射エネルギにより熱処理可能であるように形成されている底を用意する。場合によっては第1の基板を(コーティングされていない面を下向きに)底上に載置する。加えて、中間要素であって、第2の基板を全面的に支持することが可能な中間要素を、底上に支持される第1のスペーサ及び/又は第1の基板上に支持される第2のスペーサ上に未固定に載置する。場合によっては第2の基板を(コーティングされていない面を下向きに)中間要素上に載置する。
【0048】
第2のステップにおいて、装填したプロセスキャリアを、放射加熱器を有する熱処理チャンバ内に搬送する。
【0049】
第3のステップにおいて、熱処理チャンバ内に定置に配置され、蓋であって、基板のコーティング、実質的に又は主として第2の基板のコーティングが、蓋の上面において供給される放射エネルギにより熱処理可能であるように形成されている蓋に固結されている枠を、プロセスボックスを形成するために底上に未固定に載置する。底、枠及び蓋は、両基板を処理する(縮小された)プロセス室を形成する。
【0050】
第4のステップにおいて、基板のコーティング、実質的に又は主として第1の基板のコーティングを熱処理するために、底の下面において熱エネルギを供給し、かつ/又は基板のコーティング、実質的に又は主として第2の基板のコーティングを熱処理するために、蓋の上面において熱エネルギを供給する。
【0051】
本発明に係る方法により、開放型のプロセスキャリアは、簡単にプロセスチャンバの外側で自動化されて組み立てられて、装填が行われることができる。片面でコーティングされた2つの基板は、特に簡単かつ安価に高い製造品質で処理(熱処理)可能である。定置の蓋及び定置の枠を設けることで、製造コストは削減可能である。蓋と枠とが互いに固結されているので、プロセスキャリアは、簡単に補完され、プロセスボックスを形成可能である。
【0052】
本発明の様々な構成が単独で又は任意の組み合わせで実現可能であることは、自明である。特に、前述した特徴及び後述する特徴は、提示した組み合わせのみならず、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせでも、又は単独でも使用可能である。
【0053】
以下に、本発明について実施の形態を参照しながら詳細に説明する。添付の図面を参照されたい。なお、図面は、正確な縮尺で示したものではない概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】片面でコーティングされた基板を処理する本発明に係るプロセスボックスの一実施の形態の断面図である。
図2】プロセスキャリアと定置の蓋とを備える図1に示したプロセスボックスの変化態様を示す図である。
図3図1に示したプロセスボックスの別の変化態様を示す図である。
【0055】
図面は、典型的な作業位置にあっては水平に配向されるプロセスボックス1を示している。プロセスボックス1がこれとは別の配向を有していてもよいことは、自明である。以下の説明中の位置や方向についての記述は、図面上のプロセスボックス1に関し、本発明を説明する上での便宜上のものであって、これにより本発明を限定するものではない。
【0056】
まず図1を参照すると、プロセスボックス1の一実施の形態の鉛直断面図が看取可能である。プロセスボックス1は、例えば薄膜ソーラーモジュールを製造するための、片面でコーティングされた基板3a,3bの処理に用いられる。2つの基板3a,3bを図示したが、唯一の基板を処理するためにプロセスボックス1が同様に使用可能であることは、自明である。
【0057】
したがってプロセスボックス1は、平らな底5を有している。底5は、本実施の形態では例えば板あるいは直方体状の物体として、下側の底面9と上側の底面10とを有して形成されている。底5の縁部領域11には、閉じた枠6が、上側の底面10上に未固定に載置されている。しかし、枠6は、底5に固結されていてもよい。
【0058】
図1の鉛直断面図に良好に看取可能であるように、枠6は、2つの水平の段12,13を有している。段12,13は、それぞれ、載置面として用いられる。つまり、下側の段12上には、平らな中間要素7が未固定に載置されている。中間要素7は、本実施の形態では例えば板あるいは直方体状の物体として、下側の中間面15と上側の中間面16とを有して形成されている。上側の段13上には、平らな蓋8が未固定に載置されている。蓋8は、本実施の形態では例えば板あるいは直方体状の物体として、下側の蓋面26と上側の蓋面27とを有して形成されている。
【0059】
プロセスボックス1では、底5、中間要素7及び蓋8が、積層構造状に上下に重ね合わせに配置されている。その際、底5と蓋8とは、枠5と相俟って、ガスに対して密又は略密なプロセス室17を画成している。プロセス室17は、中間要素7のみにより下側のプロセス部分室17aと上側のプロセス部分室17bとに分割される。両プロセス部分室17a,17bは、対称的に形成されており、互いに隣接する板間の内法の幅により規定される略同じ高さを有している。本実施の形態では、両プロセス部分室17a,17bは、ガスに対して密又は略密に互いに仕切られている。両プロセス部分室17a,17bを流動技術的に互いに接続し、その結果、相互のガス交換が実施可能であるようにすることも、同様に可能である。
【0060】
図1は、片面でコーティングされる2つの基板3a,3bが装填されるプロセスボックス1を示している。各基板3a,3bは、本実施の形態では例えば直方体状の物体として下側の基板面19a,19bと上側の基板面20a,20bとを有して形成されている。上側の基板面20a,20b上には、それぞれ1つの層構造4a,4bが被着されている。薄膜ソーラーモジュールを製造する場合、層構造4a,4bは、例えば吸収体を製造するための、RTP熱処理にかけるべき前駆体層あるいはプリカーサ層である。この場合、下側の基板3aは、下側の基板面19aで底5上に載置され、上側の底面10によって全面的に支持される。相応に上側の基板3bは、下側の基板面19bで中間要素7上に載置され、上側の中間面16によって全面的に支持される。両基板3a,3bにおいて、層構造4a,4bは、それぞれ、蓋8に面した基板面に存在している。
【0061】
これにより下側の基板3aは、下側のプロセス部分室17a内に存在し、上側の基板3bは、上側のプロセス部分室17b内に存在している。特に層構造4a,4bのRTP熱処理中の、統一的なプロセス雰囲気にとっては、主として、それぞれのプロセス部分室17a,17bの内法の幅を、両基板3a,3bのために少なくとも略同じ寸法とすることが重要であるので、両プロセス部分室17a,17bは、プロセス雰囲気に関して対称的と見なされ得る。このことは、例えば薄膜ソーラーモジュールが通常充足しなければならない特に高い性質及び品質に対する要求の遵守を助ける。
【0062】
プロセスボックス1の様々な構成部分は、同じ材料からなっていても、互いに異なる材料からなっていてもよい。典型的な材料は、金属、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、炭素繊維強化炭素材料又は黒鉛である。ここで重要であるのは、下側の基板3aの層構造4aの熱処理が、底5の下面あるいは下側の底面9において放射の形で供給される熱エネルギにより可能であるように、底5が形成されていることである。相応に蓋8は、上側の基板3bの層構造4bの熱処理が、蓋8の上面あるいは上側の蓋面27において放射の形で供給される熱エネルギにより可能であるように、形成されている。熱エネルギは、図2に略示する熱処理チャンバ29内で、蓋8の上側及び底5の下側に例えば列型に配置された放射加熱器30により供給可能である。本明細書において放射加熱器30について詳しく説明することはしない。
【0063】
例えば底5及び/又は蓋8は、この目的のために、照射される電磁放射にとって透過性又は少なくとも半透過性である材料、例えばガラスセラミックを包含している。同様に底5及び/又は蓋8は、電磁放射を少なくとも部分的に、特に完全に吸収するのに好適であって、これによりそれ自体が加熱され得る材料、例えば黒鉛を包含していてもよい。後者の場合、底5及び/又は蓋8は、受動加熱される二次の熱源として用いられる。
【0064】
両基板3a,3bは、例えば1mm〜4mm、特に2mm〜3mmの範囲の厚さを有するガラスからなっている。既に言及したように、両基板3a,3bの上側の基板面20a,20bには、それぞれ1つの層構造4a,4bが設けられている。層構造4a,4bは、例えば吸収体の薄い前駆体層(カルコパイライト化合物又はケステライト化合物)からなっており、RTP熱処理にかける必要がある。例えば層構造4a,4bは、窒化ケイ素/モリブデン/銅−インジウム−ガリウム/セレンの層序である。例えば窒化ケイ素層は、50nm〜300nmの範囲の厚さを有し、モリブデン層は、200nm〜700nmの範囲の厚さを有し、銅−インジウム−ガリウム層は、300nm〜1000nmの範囲の厚さを有し、セレン層は、500nm〜2000nmの範囲の厚さを有している。
【0065】
プロセスボックス1は、簡単に、基板3a,3bを処理するプロセスチャンバ(例えば熱処理チャンバ)の外側で自動化されて組み立てられ、片面でコーティングされた基板3a,3bの装填を行うことができる。例えば、この目的のために、まず枠6を未固定に上側の底面10上に載置し、次に下側の基板3aを下側の基板面19aでもって未固定に上側の底面10上に載置する。しかし、枠6は、上側の底面10に固結されていてもよい。このとき、下側の基板3aは、閉じた枠6内に存在する。その後、中間要素7を未固定に下側の段12上に載置する。これにより、閉鎖又は略閉鎖された下側のプロセス部分室17aが形成される。次に第2の基板3bを下側の基板面19bでもって未固定に上側の中間面16上に載置する。最終的に蓋8を未固定に上側の段13上に載置する。これにより、閉鎖又は略閉鎖された上側のプロセス部分室17bが形成される。
【0066】
プロセスボックス1は、接続ブシュ(図示せず)を有している。接続ブシュを通して、プロセス室17全体にか、又はプロセス部分室17a,17bにそれぞれ個別に、プロセスガス又は不活性ガスが供給可能である。
【0067】
冒頭で述べたように、薄膜ソーラーモジュールの産業的な大量生産時、基板3a,3bの処理は、装填したプロセスボックス1が様々なプロセスチャンバに順番に供給されるインラインプラントで実施される。当業者にとって公知であるように、プロセスボックス1の搬送は、例えばスタブローラ(Stummelrolle)上で実施可能である。スタブローラは、プロセスボックス1の下側の底面9を支持する。搬送速度は、典型的には1m/s以下である。
【0068】
例えば、基板3a,3bを装填したプロセスボックス1を、まず入口ロックチャンバ内に入れ、入口ロックチャンバから、両基板3a,3bの層構造4a,4bのRTP熱処理のための熱処理チャンバ内に搬送する。RTP熱処理時、基板3a,3bを例えば1℃/s〜50℃/sの加熱速度で例えば350℃〜800℃の温度に放射加熱器により加熱する。このとき、例えば銅、インジウム、ガリウム及びセレンからなる前駆体層を、硫黄を含んだ雰囲気中で、Cu(In,Ga)(S,Se)半導体層に変換する。次に、装填したプロセスボックス1を、基板3a,3bを冷却する冷却チャンバ内に入れ、高温の基板3a,3bを例えば50℃/sまでの速度でプロセス技術的に必要な温度、例えば10℃〜380℃まで冷却する。冷却は、例えば冷却板により実施可能であり、循環するガス流、例えば空気流、アルゴン流又は窒素流により加速してもよい。択一的には、冷却を冷却板なしの対流冷却又は強制冷却によって実現してもよい。次に、装填したプロセスボックス1を冷却チャンバから出口ロックチャンバ内に入れ、出口ロックチャンバから基板3a,3bを別の処理部に供給可能である。このようなインラインプラントの構造が、薄膜ソーラーモジュールの製造についての特別な要求次第であって、特に別の加熱及び/又は冷却チャンバ並びに冷却区間が設けられていてもよいことは、自明である。同様に、場合によっては、入口ロックチャンバ及び/又は出口ロックチャンバを省略してもよい。
【0069】
プロセスボックス1は、インラインプラントのバッチ式の送給を可能にする。それぞれ異なるプロセスチャンバ内に装填した複数のプロセスボックス1を同時に処理することが可能である。特に、ある基板3a,3bを冷却チャンバ内で冷却している間に、別のある基板3a,3bを熱処理チャンバ内でRTP熱処理にかけることが可能である。
【0070】
図2は、図1に示したプロセスボックス1の変化態様を示している。不必要な繰り返しを避けるため、図1に示したプロセスボックス1との相違点についてのみ説明する。その他の点については、図1の説明を参照されたい。図2に示した変化態様によれば、プロセスボックス1は、底5、枠6及び中間要素7からなる開放型のプロセスキャリア2が、インラインプラントあるいはプロセスチャンバの外側で組み立てられ、基板3a,3bの装填が行われる点で相違する。プロセスボックス1は、それぞれのプロセスチャンバ内において初めて完成する。
【0071】
図2に示したように、この目的のために、蓋8が熱処理チャンバ29内に定置(位置固定的)に配置されている。蓋8の鉛直位置は、詳細は図示しない運動機構21によって調節可能である。これにより、開放型のプロセスキャリア2は、閉鎖可能である。蓋8は、上側の段13上に未固定に載置される。これによりプロセス室17は、熱処理チャンバ29内で初めて形成される。この変化態様は、常に同じ蓋8が順番に、装填した複数のプロセスキャリア2のために使用可能であり、その結果、プロセスボックス1毎に個別の蓋8を設ける必要がなくなるという利点を有している。これにより、大量生産時のコストは節減可能である。加えてこの変化態様は、1つの同じ蓋8を常に加熱してから冷却することが不要となり、これによりエネルギコストを削減することができるという利点を有している。開放型のプロセスキャリア2は、定置の蓋8及び運動機構21と相俟って、基板3a,3bを処理するアッセンブリを形成している。このアッセンブリ全体には、図2において、符号28を付してある。
【0072】
図3は、図1に示したプロセスボックス1の別の変化態様を示している。やはり図1に示したプロセスボックス1との相違点についてのみ説明する。その他の点については、図1の説明を参照されたい。
【0073】
図3に示した変化態様によれば、枠6は、中間要素7を載置する下側の段12を有しておらず、蓋8を載置する上側の段13しか有していない。下側の段12の代わりにスペーサ22,24が設けられている。スペーサ22,24は、それぞれ、閉じた枠の形態で形成されている。例えば上側の底面10上に未固定に載置されている第1のスペーサ22の上面は、中間要素7のための第1の載置面23として用いられる。他方、第1のスペーサ22より内側に位置し、第1のスペーサ22とは異なり下側の基板3aの上面上に未固定に載置されている第2のスペーサ24の上面は、中間要素7のための第2の載置面25として用いられる。薄膜ソーラーモジュールを製造するためのコーティングされた基板3a,3bは、一般に、コーティングフリーの縁部ゾーン14又は少なくとも光学活性の面として設けられていない縁部ゾーン14を有しているので、第2のスペーサ24が、下側の基板3aにおけるこのコーティングフリーの縁部ゾーン14の領域に支持されていると、有利である。その結果、第2のスペーサ24が原因となって、出力の低下が起こることはない。
【0074】
プロセスボックス1の組立及び装填は、例えば次のように実施される。まず枠6を上側の底面10上に未固定に載置する。次に、枠6内に第1の基板3aを下側の基板面19aで上側の底面10上に未固定に載置する。その後、枠状の両スペーサ22,24を所定の位置に配置する。このとき、第1のスペーサ22を上側の底面10上に、第2のスペーサ24を下側の基板3a上に、それぞれ未固定に載置する。次に、中間要素7を両載置面23,25上に未固定に載置する。これにより、下側のプロセス部分室17aは、完成する。その後、上側の中間面16上に第2の基板3bを下側の基板面19bで未固定に載置する。最終的に蓋8を未固定に上側の段13上に載置する。これにより、上側のプロセス部分室17bは、完成する。これにより、プロセスボックス1を簡単、確実かつ安価に、自動化して組み立て、装填することができる。
【0075】
同様に、図2に相応した形で、底5、枠6及び中間要素7からなるか、又は底5及び中間要素7からなる開放型のプロセスキャリア2だけを、前述したとおり、インラインプラントあるいはプロセスチャンバの外側で組み立てて、装填を行うことも可能である。この場合、プロセスチャンバ内に定置に配置された蓋8は、プロセスボックス1を完成するために、プロセスキャリア2に向かって移動させられる。択一的には、プロセスチャンバ内で、定置に配置された蓋8と、枠6とをプロセスキャリア2に向かって移動させることも可能である。好ましくは、この目的のために、蓋8は枠6に固結されている。これにより、プロセスボックス1毎に個別の蓋8及び場合によっては個別の枠6を設ける必要がなくなる。
【0076】
本発明に係るプロセスボックス1は、片面でコーティングされた基板3a,3bの処理を可能にする。プロセスボックス1又は開放型のプロセスキャリア2は、プロセスチャンバの外側で自動化されて組み立てられて、基板3a,3bの装填を行うことができる。両基板3a,3bの全面的な支持により、特に好ましくは、重力により引き起こされる基板の撓曲は、回避可能である。こうして、特に典型的にはガラス軟化点より高温で実施されるRTP熱処理時、ガラス製の基板3a,3bの撓曲は、高信頼性かつ確実に回避可能である。加えて、両基板3a,3bの層構造4a,4bに処理前、処理中又は処理後に接触する必要がないので、機械的損傷は回避可能である。特に、両基板3a,3bの姿勢は、処理のために、例えば基板3a,3bの回動により変更する必要がなくなる。その結果、自動化された処理は著しく簡単になる。プロセスボックス1のプロセス室17は、特に好ましくは、少なくとも略対称的に両プロセス部分室17a,17bに分割可能である。その結果、両基板3a,3bは、同じプロセス雰囲気で処理可能である。加えて、プロセスボックス1の上面及び下面における熱供給は、両基板3a,3b内に可及的均質な熱分布が存在するように制御可能である。このことは、プリカーサ材料がRTP熱処理時に吸収体へと変化することになる管理された反応に関して所望されている。これによりプロセスボックス1は、高い性質及び品質に対する要求を伴った薄膜ソーラーモジュール用のコーティングされた基板の製造を促進する。
【0077】
本発明のその他の特徴は、以下の説明から看取可能である。
【0078】
片面でコーティングされた基板を処理する搬送可能なプロセスボックスは、底であって、第1の基板を好ましくは全面的に支持された状態で載置し、基板のコーティングが、底の下面において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている底と、底を蓋に結合する枠と、中間要素であって、第2の基板を好ましくは全面的に支持された状態で載置する中間要素と、蓋であって、枠上に載置され、基板のコーティングが、蓋の上面において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている蓋と、を備える。
【0079】
プロセスボックスの一態様において、プロセス室は、中間要素(のみ)により、第1の基板を処理する第1のプロセス部分室と、第2の基板を処理する第2のプロセス部分室とに分割される。プロセスボックスの別の態様において、中間要素は、枠上に載置されている。プロセスボックスの別の態様において、中間要素は、底上に支持される第1のスペーサ及び/又は第1の基板上に支持される第2のスペーサ上に載置されている。プロセスボックスの別の態様において、第2のスペーサは、第1の基板のコーティングフリーの縁部ゾーンに支持されている。プロセスボックスの別の態様において、枠は、底上に載置されている。プロセスボックスのこれらの態様は、互いに任意に組み合わせ可能である。
【0080】
片面でコーティングされた基板を処理するプロセスボックス用の搬送可能なプロセスキャリアは、底であって、第1の基板を好ましくは全面的に支持された状態で載置し、基板のコーティングが、底の下面において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている底と、底を蓋に結合する枠であって、蓋が載置可能であるように形成されている枠と、中間要素であって、第2の基板を好ましくは全面的に支持された状態で載置し、枠上に載置される中間要素と、を有する。
【0081】
プロセスボックス内において片面でコーティングされた基板を処理するアッセンブリは、前述のような搬送可能なプロセスキャリアと、プロセスチャンバ内に定置に配置される蓋であって、プロセスボックスを形成するためにプロセスキャリアの枠上に載置され、基板のコーティングが、蓋の上面において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている蓋と、蓋及び/又はプロセスキャリアを動かす運動機構であって、蓋が枠上に載置可能であるように形成されている運動機構と、を備える。
【0082】
片面でコーティングされた基板を処理するプロセスボックス用の搬送可能なプロセスキャリアは、底であって、第1の基板を好ましくは全面的に支持された状態で載置し、基板のコーティングが、底の下面において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている底と、中間要素であって、第2の基板を好ましくは全面的に支持された状態で載置し、底上に支持される第1のスペーサ及び/又は第1の基板上に支持される第2のスペーサ上に載置される中間要素と、を備える。
【0083】
プロセスボックス内において片面でコーティングされた基板を処理するアッセンブリは、直前で述べたような搬送可能なプロセスキャリアと、プロセスチャンバ内に定置に配置される蓋であって、プロセスボックスを形成するために底と蓋とを結合する枠が固定されており、基板のコーティングが、蓋の上面において供給される放射エネルギにより熱処理可能であるように形成されている蓋と、枠を有する蓋及び/又はプロセスキャリアを動かす運動機構であって、枠が底上に載置可能であるように形成されている運動機構と、を備える。
【0084】
搬送可能なプロセスボックス内において片面でコーティングされた基板を処理する方法は、以下のステップ、すなわち、a)プロセスボックスを、底であって、第1の基板を好ましくは全面的に支持することができ、基板のコーティングが、底の下面において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている底を用意し、底を蓋に結合するために、底上に枠を載置し、場合によっては第1の基板を底上に載置し、中間要素であって、第2の基板を好ましくは全面的に支持することが可能な中間要素を配置し、場合によっては第2の基板を中間要素上に載置し、蓋であって、基板のコーティングが、蓋の上面において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている蓋を、プロセスボックスを形成するために枠上に載置する、ことにより組み立てて、装填を行い、b)プロセスボックスを、放射加熱器を有する熱処理チャンバ内に搬送し、c)基板のコーティングを熱処理するために、底の下面において放射を供給し、かつ/又は蓋の上面において放射を供給するステップを備える。方法の一態様では、中間要素を枠上に載置する。方法の別の態様では、中間要素を、底上に支持される第1のスペーサ及び/又は第1の基板上に支持される第2のスペーサ上に載置する。方法のこれらの態様は、互いに任意に組み合わせ可能である。
【0085】
プロセスボックス内において片面でコーティングされた基板を処理する方法は、以下のステップ、すなわち、a)搬送可能なプロセスキャリアを、底であって、第1の基板を好ましくは全面的に支持することができ、基板のコーティングが、底の下面において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている底を用意し、底を蓋に結合するために、底上に枠を載置し、場合によっては第1の基板を底上に載置し、中間要素であって、第2の基板を好ましくは全面的に支持することが可能な中間要素を、枠上に載置し、場合によっては第2の基板を中間要素上に載置する、ことにより組み立てて、装填を行い、b)プロセスキャリアを、放射加熱器を有する熱処理チャンバ内に搬送し、c)蓋であって、熱処理チャンバ内に定置に配置され、基板のコーティングが、蓋の上面において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている蓋を、プロセスボックスを形成するために枠上に載置し、d)基板のコーティングを熱処理するために、底の下面において放射を供給し、かつ/又は蓋の上面において放射を供給するステップを備える。
【0086】
プロセスボックス内において片面でコーティングされた基板を処理する方法は、以下のステップ、すなわちa)搬送可能なプロセスキャリアを、底であって、第1の基板を好ましくは全面的に支持することができ、基板のコーティングが、底の下面において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている底を用意し、場合によっては第1の基板を底上に載置し、中間要素であって、第2の基板を好ましくは全面的に支持することが可能な中間要素を、底上に支持される第1のスペーサ及び/又は第1の基板上に支持される第2のスペーサ上に載置し、場合によっては第2の基板を中間要素上に載置する、ことにより組み立てて、装填を行い、b)装填したプロセスキャリアを、放射加熱器を有する熱処理チャンバ内に搬送し、c)熱処理チャンバ内に定置に配置され、蓋であって、基板のコーティングが、蓋の上面において供給される放射により熱処理可能であるように形成されている蓋に固結されている枠を、プロセスボックスを形成するために底上に載置し、d)基板のコーティングを熱処理するために、底の下面において放射を供給し、かつ/又は蓋の上面において放射を供給するステップを備える。
【符号の説明】
【0087】
1 プロセスボックス
2 プロセスキャリア
3a,3b 基板
4a,4b 層構造
5 底
6 枠
7 中間要素
8 蓋
9 下側の底面
10 上側の底面
11 縁部領域
12 下側の段
13 上側の段
14 縁部ゾーン
15 下側の中間面
16 上側の中間面
17 プロセス室、
17a,17b プロセス部分室
19a,19b 下側の基板面
20a,20b 上側の基板面
21 運動機構
22 第1のスペーサ
23 第1の載置面
24 第2のスペーサ
25 第2の載置面
26 下側の蓋面
27 上側の蓋面
28 アッセンブリ
29 熱処理チャンバ
30 放射加熱器
図1
図2
図3