(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
破砕術によらないで結石症を治療するための組成物であって、精製されたまたは精製されていないポロキサミン1107、ポロキサミン1307、ポロキサマー338およびポロキサマー407より成る群から選択される逆熱応答性ポリマーを5%〜30%含有する第1組成物を含み、前記逆熱応答性ポリマーが1.2〜1.0の多分散指数を有し、該第1組成物が、結石と接触しないように結石から上流へ所定の距離を離して哺乳類の管腔内に注入されてポリマープラグを形成し、該ポリマープラグがぜん動運動によって管腔内を進行し、それによって結石が管腔から押し出され、その際に破砕術が施されないことを特徴とする組成物。
コントラスト増強剤を含有する第2組成物をさらに含み、該第2組成物が、前記結石と接触しないように結石から上流へ所定の距離を離して前記管腔内に注入されることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の組成物。
前記コントラスト増強剤が、放射線不透過性物質、常磁性体、重原子、遷移金属、ランタニド、アクチニド、色素および放射性核種含有物質より成る群から選択されることを特徴とする請求項9記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る1つの態様は、結石症の治療への取り組みを提供する。重要なことに、本発明は、管を塞ぎ、また、そうでない場合には、身体の解剖学上の管腔内に存在するであろう結石(例えば、尿路結石、胆石および膵石などの生物学的な結石)を除去する際に、周囲の体内組織に対する損傷の危険性が軽減されることである。特に際立つのは、本発明が結石症の治療を大いに改善し、それと同時に組織の損傷の危険性を低減し、処置時間を短縮することである。
【0013】
1つの実施形態では、本発明は、組織に対して非粘着性のポリマープラグを利用して、ある程度または完全に管腔を塞ぎ、そのプラグを利用し、ポリマープラグに作用する自然な働きであるぜん動運動によって、管腔内のポリマープラグの通過を介して管腔から結石および/または結石の破片を除去する方法を提供する。1つの実施形態では、本方法は従来の破砕術の代替方法として用いられる。別の実施形態では、本方法は破砕術の後に用いられ、このような処置によって生じる小さい破片を除去する。ある実施形態では、ポリマープラグは、温度、pH変化および/またはイオン相互作用などの1つまたはそれ以上の物理的現象によって、原位置に生じる。これらの実施形態の一部では、ダブルルーメンカテーテルを用いて、石に近接して2溶液を注入し、その溶液の混合によってポリマープラグを生じる。ある実施形態では、本発明の方法に用いられるポリマーは、逆熱応答性ポリマーである。他の実施形態では、イオン交換を利用したゲル生成によってポリマープラグを形成してもよい。ある実施形態では、ポリマープラグは管腔を通過した後、例えば膀胱内で、急速に溶解する。
【0014】
定義
便宜のため、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で用いられている特定の用語を以下にまとめる。
【0015】
「可逆的ゲル化(reversibly gelling)」および「逆熱応答性」の用語は、ゲル化が、温度の低下ではなく、温度の上昇によって生じるようなポリマーの特性のことをいう。
【0016】
「転移温度」の用語は、逆熱応答性ポリマーのゲル化が生じる温度または温度範囲のことをいう。
【0017】
「コントラストの増強(contrast-enhancing)」という用語は、例えば、X線撮影または蛍光透視等、そのような物質をモニタおよび検出する方法によって、哺乳類被験者への注入の間にモニタすることが可能な物質のことをいう。コントラスト増強剤の例として、放射線不透過物質が挙げられる。放射線不透過物質を含むコントラスト増強剤は、水溶性または水不溶性のいずれであってもよい。水溶性の放射線不透過物質の例として、メトリザミド、イオパミドール、イオタラム酸ナトリウム、ヨーダミドナトリウムおよびメグルミンが挙げられる。水不溶性の放射線不透過物質の例として、例えば、金、チタン、銀、ステンレス鋼、それらの酸化物、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等のような金属および酸化金属が挙げられる。
【0018】
本明細書では、「ポリマー」の用語は、2以上のオリゴマー単位の化学的結合によって形成される分子を意味する。化学的単位は通常、共有結合によって互いに連結する。ポリマー中の2以上の結合単位は、同一でもよく、その場合、ポリマーはホモポリマーと称される。また、それらは異なっていてもよく、よってポリマーは異なる単位の組合せになるであろう;そのようなポリマーは共重合体(コポリマー)と称される。
【0019】
本明細書では、「架橋」は、個々のポリマー鎖が共有結合(「化学的架橋」)またはイオン結合(「イオン的架橋」)によって互いに連結する際に、三次元ネットワークを形成することをいう。あるポリマーでは、この種の処理がゲルの生成に効果を有する。
【0020】
本明細書で用いられる「生体適合性」の用語は、生体組織において、毒性反応、有害反応、または免疫学的反応をもたらさないことによって、生物学的に適合した特性を有することを称する。本明細書で用いられる「組織に対して非粘着性の」という用語は、生物組織に付着しない物質(例えばポリマープラグ)のことを意味する。
【0021】
「ポロキサマー」の用語は、その末端水酸基の両方がポリオキシエチレン化されたPPGのコアから成り、すなわち、互換可能な一般式(PEG)
X−(PPG)
y−(PEG)
xおよび(PEO)
x−(PPO)
y−(PEO)
xに準拠する、対称ブロック共重合体を意味する。各ポロキサマーの名称は、XおよびYによって示される個々のモノマー単位の平均数に関連する任意のコード番号で終わる。
【0022】
「ポロキサミン」の用語は、一般式[(PEG)
x−(PPG)
y]
2−NCH
2CH
2N−[(PPG)
y−(PEG)
x]
2に準拠する、エチレンジアミンのポリアルコキシル化対称ブロック共重合体を意味する。各ポロキサミンの名称の後には、XおよびYによって示される個々のモノマー単位の平均数に関連する任意のコード番号が続く。
【0023】
本明細書で用いられる「逆熱応答性ポリマー」の用語は、周囲温度で水に溶解するが、生理的温度において少なくとも一部が水から相分離するポリマーのことをいう。逆熱応答性ポリマーとして、ポロキサマー407、ポロキサマー188、プルロニック(Pluronic)(登録商標)F127、「プルロニック」F68、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム);および特定のポリ(オルガノホスファゼン)が挙げられる。Bull. Korean Chem. Soc. 2002, 23, 549-554を参照。
【0024】
本明細書で用いられる「アルギン酸」は、様々な種類のワカメ(褐藻類(Phaeophyceae))から得られる天然素材である親水性のコロイド状多糖類である。それは、白〜黄色がかった茶色のフィラメント状、粗い粒状、細かい粒状または粉末状の形態で生じる。それは、主にβ−1,4−結合D−マンヌロン酸およびα−1,4−結合L−グルクロン酸残基からなる、線形の共重合体である。これらのモノマーは、下記に示すように、2つの酸モノマーの交互配列に近い、領域ごとに分かれているホモポリマーブロック内に配置されることが多い:
【0026】
構造単位の式量は176.13(理論的には、200が実平均)である。高分子の式量は、約10,000〜約600,000の範囲である(典型的な平均)。
【0027】
「アルギン酸ナトリウム」および「アルギン酸カリウム」はアルギン酸の塩である。例として、「アルギン酸カリウム」を以下に示す:
【0029】
「ジェランガム」は、シュードモナス・エロディア(Pseudomonas elodea)による炭化水素の純粋培養発酵によって産生され、イソプロピルアルコールで回収することにより精製し、乾燥し、製粉した、高分子量の多糖類ガムである。高分子量の多糖類は、主に、1つのラムノース、1つのグルクロン酸、および2つのグルコース単位を繰り返す四糖類から成り、O−グリコシドを結合したエステルとして、アシル(グリセリルおよびアセチル)基で置換される。グルクロン酸は中和されて、カリウム、ナトリウム、カルシウム、およびマグネシウムの混合塩になる。それは、通常、発酵方法によってもたらされる少量の窒素含有化合物を含んでいる。式量は、約500,000である。ジェランナトリウムおよびジェランカリウムは、ジェランガムの塩である。
【0030】
カルボキシメチルセルロース(CMC)は、天然セルロースに由来するポリマーである。セルロースとは違い、CMCは非常に水溶性である。CMCの構造は、セルロースのβ−(1,4)−グルコピラノースポリマーを基礎としている。調製方法が異なれば、置換度も異なるかもしれないが、一般に、下記に示すように、モノマー単位あたりの誘導体は、0.6〜0.95の範囲である:
【0032】
CMC分子は、置換率の高い領域と低い領域を有する不均一に誘導体化された状態で、天然のセルロースよりも幾分短い、または平均的な鎖長を有する。この置換は、 ほとんどが2−O−および6−O−結合であり、続いて、重要度によって、2,6−ジ−O−、次に、3−O−、3,6−ジ−O−、2,3−ジ−O−、最後に2,3,6−トリ−O−結合の順となる。 置換過程は、ランダム過程よりもわずかに(残基内に)共同的であり、予想した非置換および三置換の領域よりもわずかに大きかった。CMC分子は、低濃度で最も伸展(棒状)し、濃度が高くなると、分子が重なり合い、とぐろを巻き、高濃度では、絡まり合い、熱可逆性ゲルとなった。イオン強度の増加およびpHの低下の両方が、ポリマーの粘性を低下させ、それによってポリマーはさらにとぐろを巻いた状態になる。平均的な鎖長および置換度が非常に重要である;疎水性が増した低置換CMCは揺変性であるが、より伸展した高置換CMCは擬塑性である。低pHでは、CMCは、カルボン酸と遊離のヒドロキシル基とのラクトン化反応を経て架橋を形成するであろう。
【0033】
「ポリビニルアルコール」(PVA)は、アセテートなどのポリビニルエステルを加水分解して合成される水溶性のポリマーであり、繊維の調製に利用される。PVAは、アセチル基の一部または全部をヒドロキシル基で置換して得られるビニルアセテートなどのビニルエステルをすべてまたは一部加水分解することによって生成する熱可塑性物質である。例えば:
【0035】
ある実施形態では、ポリビニルアルコール(PVA)は、ビニルアセテート(VAM)の重合化の後にポリビニルアセテート(PVAc)ポリマーを加水分解して生成される合成樹脂である。重合度によって、分子量および溶液の粘度が決まる。加水分解度(けん化)は、ポリビニルアセテートのポリビニルアルコールへの転化の程度を表す。例えば、n(加水分解度)は、約68.2〜約99.8モル%の範囲であってよく、MW(重量平均分子量)は、約10,000〜約190,000の範囲であって構わない。
【0036】
ヒアルロン酸(HA)は、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンの二量体単位の繰り返しからなるポリマーである。その分子量は非常に大きく(〜数百万まで)、細胞外基質に見られる複合プロテオグリカン凝集体のコアを形成する。HAは、β−1−3およびβ−1−4グリコシド結合によって交互に連結するグルクロン酸(GlcUA)およびN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)からなる、線形の非分岐鎖ポリアニオン系二糖単位から構成される(下記参照)。それは、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸およびヘパラン硫酸を含むグリコサミノグリカンの一種である。この種に属する他の物質とは異なり、タンパク質への共有結合は見られない。
【0038】
中性の水溶液に取り込まれた場合には、水分子と、近くのカルボキシル基およびN−アセチル基との間に水素結合が形成される。これは、ポリマーの立体配座に剛性を与え、その柔軟性を抑制する。水素結合の形成は、ポリマーに独特の水結合能および水保持能をもたらす。したがって、水結合能がその分子の分子量と直接的に関係するということになる。HA1グラムあたり6リットルまでの水と結合するであろう。
【0039】
HA溶液は、特徴として、粘弾性で偽塑性である。この流動学は、非常に粘性のゲルを形成するポリマーの溶液をかなり希釈してもなお、見受けられる。生体材料としての利用において重要なHA溶液の粘弾的特性は、濃度およびHA鎖の分子量によって調節される。異なる供給源から生じるHAの分子量は多分散系であり、10
4〜10
7の範囲で多様性に富む。細胞膜を介して産生されるHAを排出することによって、自発的にポリマーが伸長し、ゆえに非常に大きい分子量を有する分子となる。
【0040】
「多分散指数(polydispersity index)」の語は、特定のポリマーについての「数平均分子量」に対する「重量平均分子量」の比のことをいう;それは、ポリマー試料中の個々の分子量の分布を反映する。
【0041】
「重量平均分子量」の語は、ポリマーの分子量の特定の単位のことをいう。重量平均分子量は、以下のように算出される:多数のポリマー分子の分子量を特定する;それら分子量の二乗を加算する;その後、分子の全質量でそれを割る。
【0042】
「数平均分子量」の語は、ポリマーの分子量の特定の単位のことをいう。数平均分子量は、個々のポリマー分子の分子量の一般的な平均である。それは、n個のポリマー分子の分子量を特定し、その質量を合計し、さらにそれをnで割ることによって特定される。
【0043】
「結石」の用語は、凝固、凝縮、凝集、硬結等によって融合して形成された固形物の塊または小瘤を意味する。一般的な同義語は、例えば、凝固物、石、凝塊、トーン(tone)、または瘤である。生体内では、結石は身体の中空臓器または管に見られる鉱物塩の硬い塊であることが多い。1つの実施形態では、結石は、生物の臓器(例えば腎臓)内に見られる石様の物体のことをいう。
【0044】
「管腔」の用語は、例えば動脈、静脈、腎臓、胆嚢、尿管、膀胱、膵臓、唾液腺、小腸または大腸の内側(すなわち、生体系における開口部、空間または空洞)のような、管状構造または中空臓器によって囲まれた空間を意味する。管腔は、管腔内を通る物質の流れる方向に基づいた「入口」と「出口」を有する。本明細書において、管腔内の所定の物体よりも「上流」とは、その物と管腔の入口との間を意味する;管腔内の所定の物体よりも「下流」とは、その物と管腔の出口との間を意味する。
【0045】
本明細書における「ぜん動運動」とは、筋肉の一連の組織的な律動収縮のことをいう。それは、例えば、消化管を介して食物を移動させ、腎臓から尿管を介して膀胱へと尿を移動させ、胆のうから十二指腸へと胆汁を移動させる、自然に沸き起こる生命活動である。ぜん動運動は、管腔内の物質を管腔の出口の方へと移動させる。
【0046】
本明細書において「破砕術」とは、石を砕く、または崩壊させる、いずれかの処置、手術または技術のことをいう。
【0047】
本明細書において「結石症」とは、ヒトの代謝経路(passage)または管腔内に形成される結石または「石」によって特徴付けられる一般的な人間の病気のことを称する。
【0048】
結石
結石は、腎臓、膵臓、尿管および胆嚢など、身体の特定部分で発現する。生体結石が、特にそれらが鉱物塩から成る場合に、石と称されることは珍しくない。例えば、胆管系で形成された結石は胆石と呼ばれる。膀胱で生じるものは、多くの場合、膀胱結石として知られている。腎臓に生じる結石は、しばしば腎結石と呼ばれる。結石は、また、尿管にも生じることがある;そこでは、それらは通常、腎臓に由来する結石の不完全な通過の結果である。唾液管または唾液腺に結石が観察される可能性もある。
【0049】
生物学的に観察される結石には4つの主なタイプがある。結石の大部分、約75%は、カルシウムを含有し、シュウ酸カルシウムで構成され、時にはリン酸カルシウムも混ざっている。別の15%は、リン酸マグネシウムアンモニウムで構成される;これらの結石は、しばしば「トリプル結石(triple stone)」またはスツルバイト結石と称される。残りの石の大半は、尿酸またはシスチン(Cys-Cys)から成る。上述のように、結石が大きすぎて自然に通過することができない場合は、医療の介入が必要とされることが多い。
【0050】
本発明のポリマー
ある実施形態では、ポリマープラグは、温度、pH変化および/またはイオン相互作用などの1つまたはそれ以上の物理的現象によって原位置(in situ)で生成される。他の実施形態では、本発明の方法に用いられるポリマーは、架橋可能なポリマーである。ある実施形態では、原位置で生成されるポリマープラグは、組織に対して非粘着性の物質である。
【0051】
1つの実施形態では、2種類の溶液、ポリマー溶液および架橋剤の溶液を、生体の管腔内に別々に(例えば、ダブルルーメンタイプのカテーテルなどを介して)注入し、そこでそれらがゲル化してポリマープラグを形成する。ポリマー溶液としては、陰イオン性ポリマー、陽イオン性ポリマーまたは非イオン性の架橋可能なポリマーが挙げられるであろう。こういったポリマーには、次のものを1つまたはそれ以上含んでもよい:アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ジェランナトリウム、ジェランカリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸およびポリビニルアルコール。ポリマープラグを形成するためのポリマーの架橋結合は、陰イオン性の架橋結合するイオン、陽イオン性の架橋結合するイオン、または非イオン性の架橋剤によって達成して差し支えない。架橋剤には、限定はしないが、次のものが1つまたはそれ以上含まれる:リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、シュウ酸塩、カルシウム、マグネシウム、ガリウム、およびストロンチウム。ポリマーと架橋剤の典型的な組合せとしては、例えば、アルギン酸のカルシウム、バリウムまたはマグネシウム塩;ジェランのカルシウム、マグネシウムまたはバリウム塩;またはヒアルロン酸のカルシウム塩など、陰イオン性ポリマーの単量体と陽イオンの組合せが挙げられる。非イオン性ポリマーと化学架橋剤との典型的な組合せの例は、ポリビニルアルコールのホウ酸塩(ややアルカリ性のpH)である。
【0052】
さらには、ある実施形態では、本発明にかかるポリマープラグは、1つまたはそれ以上の逆熱応答性ポリマーの水溶液から形成してもよい。これらのポリマーは、体温よりも低い温度では液状であり、体温とおよそ同じ温度ではゲル状である。ポリマー溶液は、体外で、すなわち、体温よりも低い温度で調製される。ポリマー溶液をさらに冷却し、体内に注入の際にゲルが液状の形態で存在する時間を延長してもよい。温度は、ポリマー溶液がゲル化する温度よりも約10℃低いことが好ましい。
【0053】
体温またはおよそ体温でゲル化する、本発明にかかる方法に用いられる逆熱応答性ポリマーは、一般に、液体の形態で患者の体内に注入することができる。注入物質は体温に達すると、液体からゲルに変化する。本発明にかかる方法に関連して用いられる逆熱反応性ポリマーには、逆熱ゲル化特性を有するブロック共重合体が含まれる。ブロック共重合体には、さらに、生体分解性で、生体適合性の、ポリエチレン・オキシドとポリプロピレン・オキシドの共重合体などのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体を含めることができる。さらには、逆熱応答性ポリマーには、治療薬を含めることも可能である。
【0054】
逆熱応答性ポリマーの分子量は、1,000〜50,000が好ましく、5,000〜35,000がさらに好ましい。ポリマーは、水溶液の形態が好ましい。例えば、典型的な水溶液は、約5%〜約30%のポリマーを含有し、約10%〜約25%が好ましい。適切な熱応答性ポリマー(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)の分子量は、例えば、5,000〜25,000、さらに具体的には、7,000〜20,000であろう。
【0055】
哺乳類に投与される逆熱応答性ポリマー製剤のpHは、通常、約6.0〜約7.8であり、これは、哺乳類の体内への注入に適したpH値である。塩酸または水酸化ナトリウムなどの適切な酸または塩基によってpH値を調整してもよい。
【0056】
適切な逆熱応答性ポリマーとして、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン(PEO−PPO)ブロック共重合体が挙げられる。2つの例として、「プルロニック」F127およびF108が挙げられ、それらは、それぞれ12,600および14,600の分子量を有するPEO−PPOブロック共重合体である。これらの各化合物は、BASF社(アメリカ合衆国ニュージャージー州マウントオリーブ)から市販されている。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中12〜25%の濃度の「プルロニック」F108は、適切な熱応答性ポリマー物質の1例である。PBS中12〜25%の濃度の「プルロニック」酸F127は、適切な物質のもう1つの例である。低濃度の色素(クリスタルバイオレットなど)、ホルモン、治療薬、充填剤および抗生物質を逆熱応答性ポリマーに添加することもできる。一般に、体温ではゲルとして、かつ、体温より低い温度では液体として存在する、他の生体適合性で生分解性のPEO−PPOブロック共重合体もまた、本発明に従って利用可能である。
【0057】
とりわけ、「プルロニック」ポリマーは、比類のない界面活性能力を有し、毒性が極めて低く、免疫反応を有している。これらの製品は、急性の(acute)経口および経皮毒性が低く、また過敏または感作を生じさせる可能性が低く、さらに一般的な慢性および亜慢性毒性が低い。実際、「プルロニック」ポリマーは、医療用途におけるおよび食品添加物としての直接の使用に関してFDAに認可されている数少ない界面活性剤に含まれる(BASF(1990) Pluronic(登録商標)& Tetronic(登録商標)Surfactants, BASF Co., Mount Olive N.J.)。最近、いくつかの「プルロニック」ポリマーが、薬剤の治療効果およびアデノウイルス介在の遺伝子導入効率を高めることが見出されている(March K L, Madison J E, Trapnell B C. "Pharmacokinetics of adenoviral vector-mediated gene delivery to vascular smooth muscle cells: modulation by poloxamer 407 and implication for cardiovascular gene therapy" Hum. Gene Therapy 1995, 6, 41-53)。
【0058】
ポロキサマーの平均分子量は、約1,000から16,000を超える範囲である。ポロキサマーは連続した一連の反応の産物であるため、個々のポロキサマー分子の分子量は、平均分子量の辺りで統計的分布を形成する。さらには、市販されているポロキサマーは、実質量のポリ(オキシエチレン)ホモポリマーおよびポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)ジブロックポリマーを含有する。それら副産物の相対量は、ポロキサマーの成分ブロックの分子量が大きくなると増加する。これら副産物は、製品によって、ポリマーの全質量の約15〜約50%を構成するであろう。
【0059】
逆熱応答性ポリマーは、水溶性ポリマーの分画方法を用いて精製することができ、その方法は、水に既知量のポリマーを溶解させ、そのポリマー溶液に可溶性の抽出塩(extraction salt)を添加し、その溶液を、2つの明確な相が現れるのに適した時間、一定の最適温度で維持し、さらにその相を物理的に分離する工程を含む。さらには、好ましい分子量のポリマー画分を含む相を元の容量まで水で希釈し、元の濃度に達するまで抽出塩を添加し、さらにポリマーが開始材料よりも狭い分子量分布を有しかつ最適の物理的特性が回収できるまで、必要に応じて分離プロセスを繰返してもよい。
【0060】
ある実施の形態では、精製ポロキサマーまたはポロキサミンは、約1.5〜約1.0の多分散指数を有する。ある実施形態では、精製ポロキサマーまたはポロキサミンは、約1.2〜約1.0の多分散指数を有する。ある実施形態では、精製ポロキサマーまたはポロキサミンは、約1.1〜約1.0の多分散指数を有する。
【0061】
前記の方法は、水中のポリマーと適当な塩から構成される水性の2相系を形成することから構成される。そのような系では、単一相のポリマー−水系に可溶性塩を添加して相分離を引き起こし、高塩低ポリマーの底部相(bottom phase)と、低塩高ポリマーの上部相(upper phase)を生じさせることができる。低分子量ポリマーは選択的に高塩低ポリマー相に分配される。この方法を用いて分画できるポリマーとして、ポリエーテル、例えばポリ(エチレングリコール)およびポリ(エチレンオキシド)などのグリコール、例えばポロキサマー、ポロキサミンおよびポリオキシプロピレン/ポリオキシブチレン共重合体などのポリオキシアルキレンブロック共重合体、ならびにポリビニルアルコールなどの他のポリオールが挙げられる。それらポリマーの平均分子量は、約800〜100,000を超える範囲に及ぶであろう。米国特許第6,761,824号明細書(引用することにより本明細書中に援用する)を参照。前述した精製方法は、本質的には、ポロキサマー分子、ポリ(オキシエチレン)ホモポリマーおよびポリ(オキシエチレン)ホモポリマーおよびポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)ジブロック副生成物の間の、サイズおよび極性、ひいては溶解性の違いを利用している。通常低分子量画分および副生成物を含むポロキサマーの極性画分を除去して、ポロキサマーの高分子量画分の回収を可能にする。この方法によって回収されたより大きな分子量のポロキサマーは、より高い平均分子量、より低い多分散性、および水溶液中でのより高い粘度を含む、開始材料または市販されているポロキサマーとは実質的に異なる物理的特性を有している。
【0062】
他の精製方法を用いて所望の結果を達成してもよい。例えば、国際公開第92/16484号パンフレットは、ゲル透過クロマトグラフィーを使用した、潜在的に有害な副作用を生じさせることなく有益な生物学的効果を示すポロキサマー188の画分の単離について開示している。それによって得られた共重合体は、1.07以下の多分散性指数を有し、かつ、実質的に飽和されていた。潜在的に有害な副作用は、そのポリマーの低分子量で不飽和の部分と関係があり、医療的に有益な効果は均一なより高い分子量の物質に存在していたことを示した。他の同様に改善された共重合体が、共重合体の合成の間にポリオキシプロピレン中央ブロックを精製するか、または共重合体生成物自体を精製することによって得られた(例えば、米国特許第5,523,492号明細書および米国特許第5,696,298号明細書を参照;引用することにより、その両方を本明細書中に援用する)。
【0063】
さらに、米国特許第5,567,859号明細書(引用することにより本明細書中に援用する)に開示されているように、超臨界流体抽出技術が、ポリオキシアルキレンブロック共重合体を分画するのに用いられている。1.17未満の多分散性を有するほとんど均一なポリオキシアルキレンブロック共重合体から成る精製画分が得られた。この方法に基づき、1.517×10
7Pa(2200ポンド/平方インチ(psi))の圧力および40℃の温度を維持した二酸化炭素流中で、より低分子量の画分を除去した。
【0064】
さらには、米国特許第5,800,711号明細書(ここに引用することにより本明細書に援用する)には、塩抽出および液相分離技術を用いた低分子量種のバッチ式の除去による、ポリオキシアルキレンブロック共重合体の分画の方法が開示されている。ポロキサマー407およびポロキサマー188は、この方法で分画された。それぞれの場合で、開始材料と比較してより高い平均分子量およびより低い多分散指数を有する共重合体画分が得られた。しかしながら、多分散指数の変化は小幅であり、ゲル透過クロマトグラフィーによる分析は、いくつかの低分子量物質が残存することを示唆した。分画されたポリマーの水溶液の粘度は、特定の医療およびドラッグデリバリーの適用にとって重要な特性である10℃〜37℃の温度において、市販のポリマーの粘度よりも顕著に高かった。それにもかかわらず、それらポリマーの低分子量混入物のいくつかは、体内で用いた場合に有害な副作用を生じさせると考えられており、それらを分画処理で除去することが特に重要である。結果的に、この方法で分画されたポリオキシアルキレンブロック共重合体は全ての医療用途に適さなかった。
【0065】
好ましい実施形態では、用いられるポリマーは、例えば、一般構造式A−B、(A―B)
n、A−B−A(例えば「プルロニック」)、または(A−B−A)
nで表される(ここで、AはPEO部分であり、BはPPO部分であり、nは1より大きい)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン(PEO−PPO)ブロックポリマーなどのブロックポリマーである。別の好ましい実施形態では、用いられるポリマーは、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン(PEO−PPO)の分岐ポリマー様の四官能性ポロキサミン(例えば「テトロニック」)である。
【0066】
本発明の方法
本発明は、結石症の治療方法を提供する。1つの実施態様では、管腔の入り口と管腔内の結石との間にポリマーを注入し、管腔を塞ぐポリマープラグを形成する;その後のぜん動運動によって、ポリマープラグが管腔内を進行し、結石を管腔外へと押し出す。
【0067】
本発明の1つの態様は、結石症の治療方法に関するものであり、哺乳類の管腔内の結石から上流の第1の位置に第1組成物を注入し、その際前記該第1組成物は前記結石と接触せず;
必要に応じて、前記管腔内の前記結石から上流の第2の位置に第2組成物を注入し、その際に前記第2組成物は前記結石と接触せず;その結果、ポリマープラグを形成する;さらに、前記ポリマープラグがぜん動運動によって前記管腔内を進行し、それによって前記結石を前記管腔の外へと押し進める、各工程を含む。
【0068】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、第2組成物は、前記管腔内に注入される。
【0069】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置は、前記結石よりも約1cm〜約5cm上流である。
【0070】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置は、前記結石よりも約2cm〜約4cm上流である。
【0071】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置は、前記結石よりも約3cm上流である。
【0072】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置と前記第2の位置の間隔は、約3mm未満である。
【0073】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置と前記第2の位置の間隔は、約1mm未満である。
【0074】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置と前記第2の位置の間隔は、約0.5mm未満である。
【0075】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置と前記第2の位置の間隔は、約0.1mm未満である。
【0076】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物は、経皮的アクセスデバイス(percutaneous access device)を介して前記管腔内に注入される。
【0077】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物は、カテーテルまたはシリンジを介して前記管腔内に注入される。
【0078】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記カテーテルは、ダブルルーメンカテーテルまたはトリプルルーメンカテーテルである。
【0079】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記管腔は、腎臓、胆嚢、尿管、膀胱、膵臓、唾液腺、小腸または大腸であるか、またはその一部分である。
【0080】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記管腔は尿管または腎臓であるか、またはその一部分である。
【0081】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記結石は、腎結石、膵石、唾石または胆石である。
【0082】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記結石は腎結石である。
【0083】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記哺乳類はヒトである。
【0084】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第2組成物は、コントラスト増強剤(contrast-enhancing agent)を含む。
【0085】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記コントラスト増強剤は、放射線不透過性物質、常磁性体、重原子、遷移金属、ランタニド、アクチニド、色素および放射性核種含有物質より成る群から選択される。
【0086】
本発明の別の態様は、結石症の治療方法に関するものであり、逆熱応答性ポリマーを含む第1組成物を結石から上流へ第1の距離を離して哺乳類の管腔内に注入し、その際に該第1組成物は前記結石と接触せず;その結果、ポリマープラグを形成する;必要に応じて、第2組成物を前記結石から上流へ第2の距離を離して前記管腔内に注入し、その際に該第2組成物は前記結石と接触しない;さらに、前記ポリマープラグがぜん動運動によって前記管腔内を進行し、それによって前記結石を前記管腔から押し出す、各工程を含む。
【0087】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、第2組成物は、前記管腔内に注入される。
【0088】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置は、前記結石よりも約1cm〜約5cm上流である。
【0089】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置は、前記結石よりも約2cm〜約4cm上流である。
【0090】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置は、前記結石よりも約3cm上流である。
【0091】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置と前記第2の位置の間隔は、約3mm未満である。
【0092】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置と前記第2の位置の間隔は、約1mm未満である。
【0093】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置と前記第2の位置の間隔は、約0.5mm未満である。
【0094】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置と前記第2の位置の間隔は、約0.1mm未満である。
【0095】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物は、経皮的アクセスデバイスを介して前記管腔内に注入される。
【0096】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物は、カテーテルまたはシリンジを介して前記管腔内に注入される。
【0097】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記カテーテルは、ダブルルーメンカテーテルまたはトリプルルーメンカテーテルである。
【0098】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記管腔は、腎臓、胆嚢、尿管、膀胱、膵臓、唾液腺、小腸または大腸であるか、またはその一部分である。
【0099】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記管腔は尿管または腎臓であるか、またはその一部分である。
【0100】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記結石は、腎結石、膵石、唾石または胆石である。
【0101】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記結石は腎結石である。
【0102】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記哺乳類はヒトである。
【0103】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第2組成物は、コントラスト増強剤を含む。
【0104】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記コントラスト増強剤は、放射線不透過性物質、常磁性体、重原子、遷移金属、ランタニド、アクチニド、色素および放射性核種含有物質より成る群から選択される。
【0105】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記逆熱応答性ポリマーは、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト重合体、または分岐鎖共重合体である。
【0106】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記逆熱応答性ポリマーは、ブロック共重合体、または分岐鎖共重合体である。
【0107】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記逆熱応答性ポリマーは、必要に応じて精製されたポロキサマーまたはポロキサミンである。
【0108】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記逆熱応答性ポリマーは、ポロキサミン1107、ポロキサミン1307、ポロキサマー338およびポロキサマー407より成る群から選択され、必要に応じて精製されたものである。
【0109】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記逆熱応答性ポリマーは、必要に応じて精製されたポロキサマー407である。
【0110】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物は、約10℃〜40℃の転移温度を有する。
【0111】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物は、約15℃〜30℃の転移温度を有する。
【0112】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物は、約25℃の転移温度を有する。
【0113】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物は、約5%〜約30%の前記逆熱応答性ポリマーを含む。
【0114】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物は、約10%〜約25%の前記逆熱応答性ポリマーを含む。
【0115】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記逆熱応答性ポリマーは、約1.5〜1.0の多分散指数(polydispersity index)を有する。
【0116】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記逆熱応答性ポリマーは、約1.2〜1.0の多分散指数を有する。
【0117】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記逆熱応答性ポリマーは、約1.1〜1.0の多分散指数を有する。
【0118】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記逆熱応答性ポリマーは、必要に応じて精製されたポロキサマーまたはポロキサミンであり;かつ、前記第1組成物は約10℃〜40℃の転移温度を有する。
【0119】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記逆熱応答性ポリマーは、必要に応じて精製されたポロキサマーまたはポロキサミンであり;かつ、前記第1組成物は約15℃〜30℃の転移温度を有する。
【0120】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記逆熱応答性ポリマーは、必要に応じて精製されたポロキサマーまたはポロキサミンであり;かつ、前記第1組成物は約25℃の転移温度を有する。
【0121】
本発明の別の態様は、結石症の治療方法に関するものであり、第1組成物を結石から上流へ第1の距離を離して哺乳類の管腔内に注入し、その際に該第1組成物は前記結石と接触せず;
第2組成物を前記結石から上流へ第2の距離を離して前記管腔内に注入し、その際に該第2組成物は前記結石と接触せず;そこで第1組成物と第2組成物が混合され、その結果、ポリマープラグを形成し;
必要に応じて、第3組成物を前記結石から上流へ第3の距離を離して前記管腔内に注入し、その際に該第3組成物は前記結石と接触せず;
さらに、ぜん動運動によって前記ポリマープラグが前記管腔内を進行し、それによって前記結石を前記管腔から押し出す、各工程を含む。
【0122】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、第3組成物は、前記管腔内に注入される。
【0123】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、第2組成物は、前記管腔内に注入される。
【0124】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置は、前記結石よりも約1cm〜約5cm上流である。
【0125】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置は、前記結石よりも約2cm〜約4cm上流である。
【0126】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置は、前記結石よりも約3cm上流である。
【0127】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置と前記第2の位置の間隔は、約3mm未満である。
【0128】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置と前記第2の位置の間隔は、約1mm未満である。
【0129】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置と前記第2の位置の間隔は、約0.5mm未満である。
【0130】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1の位置と前記第2の位置の間隔は、約0.1mm未満である。
【0131】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1および第2組成物は、経皮的アクセスデバイスを介して前記管腔内に注入される。
【0132】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1および第2組成物は、カテーテルまたはシリンジを介して前記管腔内に注入される。
【0133】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記カテーテルは、ダブルルーメンカテーテルまたはトリプルルーメンカテーテルである。
【0134】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記管腔は、腎臓、胆嚢、尿管、膀胱、膵臓、唾液腺、小腸または大腸であるか、またはその一部分である。
【0135】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記管腔は、尿管または腎臓であるか、またはその一部分である。
【0136】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記結石は、腎結石、膵石、唾石または胆石である。
【0137】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記結石は腎結石である。
【0138】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記哺乳類はヒトである。
【0139】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第2組成物は、コントラスト増強剤(contrast-enhancing agent)を含む。
【0140】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記コントラスト増強剤は、放射線不透過性物質、常磁性体、重原子、遷移金属、ランタニド、アクチニド、色素および放射性核種含有物質より成る群から選択される。
【0141】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物は、陰イオン性、陽イオン性、または非イオン性の架橋可能なポリマーである。
【0142】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物は、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ジェランナトリウム、ジェランカリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸およびポリビニルアルコールから選択されるポリマーを含む。
【0143】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第2組成物は、リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、シュウ酸塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、またはそれらの組合せを含む。
【0144】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物は、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ジェランナトリウムおよびジェランカリウムからなる群より選択されるポリマーを含み;前記第2組成物は、カルシウム、マグネシウム、またはバリウムを含む。
【0145】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物は、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カリウムからなる群より選択されるポリマーを含み;前記第2組成物は、カルシウムを含む。
【0146】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物は、ジェランナトリウムおよびジェランカリウムからなる群より選択されるポリマーを含み;前記第2組成物はマグネシウムを含む。
【0147】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物はヒアルロン酸を含み;前記第2組成物はカルシウムを含む。
【0148】
ある実施形態では、本発明は前記の方法に関するものであって、前記第1組成物はポリビニルアルコールを含み;前記第2組成物はホウ酸塩を含む。
【0149】
1つの実施形態では、ポリマー溶液は、カテーテルを介して導入することができる。カテーテルは、拡張カテーテルであってもよい。1つの実施形態では、カテーテルは3〜10F(French)のサイズであり、3〜6F(French)が、より好ましい。別の実施形態では、カテーテルは、ポリマー溶液以外の、またはポリマー溶液に加えて、1種類以上の流動体を分配するのに利用してもよい。その実施形態では、カテーテルは、ポリマー溶液を運ぶための1つのルーメン、造影剤溶液などの他の流体を運ぶため他のルーメンを有する、マルチルーメンカテーテルであってよい。別の実施形態では、ポリマー溶液を体内に注入するのに用いられるシリンジまたは他の装置は、例えば、1〜100ccのシリンジ、1〜50ccのシリンジまたは1〜5ccのシリンジであって差し支えない。シリンジに加えられる圧力は、手でまたは自動シリンジプッシャー(automated syringe pusher)によって加えることができる。
【実施例】
【0150】
本発明は、一般に記述されたものであり、以下の実施例を参照することにより、さらに容易に理解されるであろう。これら実施例は、本発明のいくつかの態様および実施形態について、単に例示する目的で記載するのであって、本発明を限定するものではない。
【0151】
実施例1:選択された「プルロニック」および「テトロニック」ポリマー溶液のゲル化温度
ポリマーをプラスチックチューブに量り取った。所望の濃度を達成するために、25重量%(w%)に関して4を、20質量%(w%)に関して5をその質量に掛け、さらに生理食塩水を加えることによって所望の最終質量を達成した。溶液を4℃の冷蔵庫に置き、通常24時間以内に準備ができた。ゲル化点はブルックフィールド(Brookfield)粘度計での測定値であり、その粘度がプレート/コーン(plate/corn)の範囲(>102Pa・s(102,000cP))を越えた点をゲル化温度とした。
【0152】
【表1】
【0153】
実施例2:ヨード造影剤を含む選択された「プルロニック」および「テトロニック」ポリマー溶液のゲル化温度
精製ポリマーを50mLの遠心チューブに量り取り、生理食塩水と100%のオムニパーク(Omnipaque)300との1:1混合物を特定の質量%に達するまで加えた。ゲル化点をブルックフィールド(Brookfield)粘度計で測定し、その粘度がプレート/コーン(plate/corn)の範囲を越えた(約102Pa・s(102,000cP)を超えた)点をゲル化温度とした。全ての溶液を37℃にまでさらに加熱し、物質がその粘度範囲を依然として上回り、かつ、ゲルの状態を保っていることを確認した。すべてのゲルが合格であった。
【0154】
【表2】
【0155】
実施例3:生理食塩水中における静止条件下での溶解時間
精製ポロキサマー407ゲルの溶解性について、0.5mlのゲルを37℃の生理食塩水で覆ったペトリ皿に注入し、試験を行った。ゲルにメチレンブルーを少量加えて可視化し、ゲルの溶解について視覚的に追跡した。溶解試験には、表面積が最小である球状;および、表面積が最大であるひも状;の2種類の形状のゲルが用いられ、その際、20ゲージのシリンジを用いて、ひも状のポリマーをペトリ皿の底に押し出した。
【0156】
ペトリ皿を静置し、ペトリ皿を毎分、視覚的に観察し、ペトリ皿を旋回させて完全に溶解したことを確認した。
【0157】
溶解度は、ポリマー濃度に依存した。ポリマー濃度が低いほど、
図5に示すように、ゲルの溶解は速くなる。さらに、溶解度は、周囲の液体と直接的に接触する表面積に依存し、球状のゲルは、ひも状のゲルよりも溶解に時間がかかった。
【0158】
これらの生体外での実験では、たぶん溶解速度を速めるであろうゲルへの脈圧がないことから、おそらくは、実際の溶解時間を多く見積もりすぎている。
【0159】
実施例4:尿中における静止条件下での溶解時間
22.5%の精製されたポロキサマー407ゲルの溶解について、2.5mlのゲルを37℃の尿約100mlで覆ったペトリ皿に注入し、試験を行った。針のないシリンジを用いて、ひも状のポリマーをペトリ皿の底に押し出した。ゲルにメチレンブルーを少量加えて可視化し、ゲルの溶解について視覚的に追った。押し出しの際に、ひも状のポリマーは二つに折れた。ペトリ皿を静置し、ペトリ皿を毎分、視覚的に観察し、ペトリ皿を旋回させて完全に溶解したことを確認した。完全溶解に要した時間(約26分)は、2つのひも状のポリマーでまったく同じであった。
【0160】
実施例5:ブタ尿管生体内実験
Medallion 5mlシリンジを用いてメチレンブルーで着色した、22.5重量%の精製ポロキサマーPF127を用いた。3匹の各ブタに、焼石膏(Plaster of Paris)でできた人造石を、切開部の2,3センチ上の右の尿管に外科的に移植した。次に、3Fのカテーテル(BioSphere Medical社製のEmbocath HIC 100、ロット# 03W-6930)で、同一の切開部から溶液を石の後方に注入した。注入の直前に、カテーテルに10ccの冷生理食塩水を流し、注入の間、カテーテルを冷えた状態に保ち、ポリマーがカテーテル内で硬化するのを回避した。各方法を、石と切開部の間の尿管に挿入したカメラでモニタした。
【0161】
ブタ#1−尿管の横断面のおよそ1/4〜1/3を塞いでいる石の後方に3mlの溶液を注入し、石の背後で尿管を完全に塞ぐ、視認良好な青色のポリマープラグを生成した。1分少し経過後、ポリマープラグまたはその後方に蓄積されている尿の一部によって、尿管壁全体の収縮運動(ぜん動運動)が生じ、それによって、プラグをカメラの方へ、および、尿管の外へと押し出し、破砕術の必要なく、プラグと共に石全体を運び出した。
【0162】
ブタ#2−第1のブタと同じであるが、石をやや大きくし、ポリマーの注入直後に破砕術(EHL)を利用して石を小さい破片にした。破砕術の完了から1分以内にぜん動運動が始まり、石の破片は尿管の外へとスライドするプラグによって押し出された。
【0163】
ブタ#3−第2のブタと同じであるが、石をさらに大きくした。破砕術の完了から1分以内にぜん動運動が始まり、石の破片は尿管の外へとスライドするプラグによって押し出された。
【0164】
参照による援用
本明細書に記載される全ての米国特許および米国特許出願公開を、引用することによって本明細書に援用する。
【0165】
等価物
当業者は、日常的な実験以上のものを用いることなく、本明細書に記載されている本発明の特定の実施形態の多くの等価物を確認できることを認識するであろう。そのような等価物は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。