(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内筒部を有する弁本体と、前記内筒部に摺動自在に嵌挿される棒状部を有する揚弁軸と、弁体と、を備え、前記揚弁軸の前記棒状部が前記内筒部内を摺動することで前記弁体を操作する逃がし弁であって、
前記棒状部は、軸方向に長い環状溝を備え、該環状溝と前記内筒部の内面との間にシール用のOリングを軸方向に空隙を有して装着したことを特徴とする逃がし弁。
前記逃がし弁は、前記揚弁軸と手動操作レバーとを有する強制開弁機構を備え、該強制開弁機構は、前記手動操作レバーを介して前記揚弁軸の前記棒状部を摺動押し下げ操作をすることで、前記弁体を強制開弁することを特徴とする請求項1に記載の逃がし弁。
前記手動操作レバーは、U字状把持部、該U字状把持部の両端から下向きに折り曲がる立下部、該立下部から前後方向に折り曲がる下辺部、該下辺部から左右方向外向きに折り曲がる横倒しL形状の横辺部、及び、該横辺部からさらに左右方向外向きに伸びるピン軸部からなり、通常時は、前記下辺部が前記揚弁軸の鍔状部に圧接され、前記ピン軸部が前記弁本体の天井部から上向きに突設された左右一対の支持柱に設けられた軸受穴に回動自在に嵌挿されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の逃がし弁。
前記揚弁軸は、前記棒状部の上端部から横向きに折り曲がる横辺部と、前記棒状部の上端近くに設けられた鍔状部と、を有し、前記棒状部の下端面が前記負圧弁体の上端面に間隙を有して対向していると共に、前記内筒部の上部に形成されているばね受け穴の底部と前記鍔状部との間に縮装された圧縮コイルばねにより常時上向きに付勢され、前記鍔状部に圧接される前記手動操作レバーにより抜け止め係止されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の逃がし弁。
【背景技術】
【0002】
従来、逃がし弁として、弁室、一次側接続口、及び二次側接続口が設けられた弁本体と、一次側接続口から前記弁室に導入される一次側の圧力に応じて開閉作動する開閉作動部材と、緊急時や保守点検時等において、開閉作動部材を強制的に開弁させるべく前記弁本体の上部に摺動自在に嵌挿された揚弁軸及び該揚弁軸を押し下げるための手動操作レバーを有する強制開弁機構と、を備え、貯湯タンク等の一次側構成部品の変形・破壊を防止するため、一次側の圧力が設定圧以上になったときに前記開閉作動部材が開作動して一次側の圧力を二次側に逃がし、一次側の圧力が設定負圧以下になったときに前記開閉作動部材が開作動して前記第2接続口から大気を吸入して一次側に吸気させるようにしたものが知られている。
【0003】
なお、前記一次側接続口は貯湯タンクの上部に導管で接続され、二次側接続口には、その先端が外部の排水口等に引き廻された(大気に開放された)ホースが接続され、貯湯タンク内の圧力が設定圧以上になったときには、貯湯タンク内の蒸気や温水がホースを介して排水口等に排出され、貯湯タンク内の圧力が設定圧負圧以下(負圧が大)になったときには、前記ホースを介して大気が吸入されるようになっている。
【0004】
前記開閉作動部材としては、従来、例えば下記特許文献に所載のように、突出軸部とこの突出軸部の下部に設けられた弁体部とを有し、弁体部の上面側がシール面とされた負圧弁体と、前記シール面に接離する弁口付き弁座が一体に取り付けられた弁座一体型ダイアフラムと、負圧弁体を上方(閉弁方向)に付勢する第1閉弁ばねと、ダイアフラムを下方(閉弁方向)に付勢する第2閉弁ばねと、を備えたものが知られている。
【0005】
この逃がし弁では、貯湯タンク内の圧力が許容範囲内にある通常時は、ダイアフラムは弁本体に設けられたストッパ部に当接してその下降が阻止されるとともに、負圧弁体のシール面はダイアフラムに取り付けられた弁座に押し当てられて弁口は閉じられている。
【0006】
それに対し、貯湯タンク内の圧力が設定圧以上になって開弁する際には、まず、ダイアフラムと負圧弁体とが一体(閉弁状態のまま)で上昇し、負圧弁体(の軸部)の上端が揚水軸の下端に接当することで、負圧弁体のリフトが停止し、ダイアフラムがさらに上昇することで開弁する。
また、貯湯タンク内の圧力が設定圧以下(負圧)になったときには、負圧弁体のみが引き下げられて開弁するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来の逃がし弁では、負圧弁体と弁座一体型ダイアフラムとで、一次側の圧力が設定圧以上になったときに開弁して一次側の圧力を二次側に逃がす機能と、一次側の圧力が設定負圧以下になったときに開弁して大気を一次側に吸入させる機能とを併せ持つ一つの開閉作動部材を構成しているので、次のような解決すべき課題がある。
【0009】
すなわち、例えば、強制開弁時に使用する揚弁軸や手動操作レバー等にかかる荷重を小さくしたい場合(要求強度を低くしてコスト削減を図る)や、手動操作レバーにかける力が小さくても確実に開弁させることができるようにしたい場合等には、負圧弁を押し上げる方向に作用する力を小さくすればよく、それには弁口の口径(受圧面積)を小さくすればよい。
【0010】
しかしながら、弁口の口径(受圧面積)を小さくすると、ダイアフラムを閉弁方向に付勢する第2閉弁ばねのセット荷重を大きくしなければならず(設定圧で開弁するようにするため)、セット荷重を大きくするには弁本体等に高い強度(各部を厚く、太くすること等)が要求されことになり、コストアップを招いてしまう。
【0011】
このように、従来の逃がし弁では、負圧弁体と弁座一体型ダイアフラムとで一つの開閉作動部材を構成しているので、設計自由度が低く、相反する要望には十分には応えられない嫌いがある。
【0012】
また、従来の逃がし弁では、一次側から来る蒸気や湯水の勢いをそのままダイアフラムで受けるようになっているため、一次側の圧力が急激に変化すると、一次側の圧力が設定圧を超えていない場合でも、ダイアフラムに不所望な挙動が発生して、弁体部分で洩れが生じるという問題があった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、逃がし弁の強制開弁時に、該逃がし弁に使用する揚弁軸にかかる荷重(摩擦力)を小さくして、該揚弁軸や操作レバーの操作を容易にする逃がし弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る逃がし弁は、基本的には、内筒部を有する弁本体と、前記内筒部に摺動自在に嵌挿される棒状部を有する揚弁軸と、弁体と、を備え、前記揚弁軸の前記棒状部が前記内筒部内を摺動することで前記弁体を操作する逃がし弁であって、前記棒状部は、軸方向に長い環状溝を備え、該環状溝と前記内筒部の内面との間に
シール用のOリングを
軸方向に空隙を有して装着したことを特徴としている。
【0015】
好ましい態様では、前記逃がし弁は、前記揚弁軸と手動操作レバーとを有する強制開弁機構を備え、該強制開弁機構は、前記手動操作レバーを介して前記揚弁軸の前記棒状部を摺動押し下げ操作をすることで、前記弁体を強制開弁することを特徴としている。
【0016】
他の好ましい態様では、前記弁体は、負圧弁体であることを特徴としている。
【0017】
他の好ましい態様では、前記手動操作レバーは、U字状把持部、該U字状把持部の両端から下向きに折り曲がる立下部、該立下部から前後方向に折り曲がる下辺部、該下辺部から左右方向外向きに折り曲がる横倒しL形状の横辺部、及び、該横辺部からさらに左右方向外向きに伸びるピン軸部からなり、通常時は、前記下辺部が前記揚弁軸の鍔状部に圧接され、前記ピン軸部が前記弁本体の天井部から上向きに突設された左右一対の支持柱に設けられた軸受穴に回動自在に嵌挿されていることを特徴としている。
【0018】
他の好ましい態様では、前記揚弁軸は、前記棒状部の上端部から横向きに折り曲がる横辺部と、前記棒状部の上端近くに設けられた鍔状部と、を有し、前記棒状部の下端面が前記負圧弁体の上端面に間隙を有して対向していると共に、前記内筒部の上部に形成されているばね受け穴の底部と前記鍔状部との間に縮装された圧縮コイルばねにより常時上向きに付勢され、前記鍔状部に圧接される前記手動操作レバーにより抜け止め係止されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る逃がし弁は、揚弁軸の棒状部が弁本体の上ケースの内筒部内を摺動することで弁体(負圧弁体)を操作する逃がし弁において、棒状部に軸方向に長い環状溝を備え、該環状溝と内筒部の内面との間に
シール用のOリング
を軸方向に空隙を有して装着したことにより、前記内筒部の内面と前記Oリングとの接触面積に対して前記環状溝と前記Oリングとの接触面積が小さくなっていること、即ち摩擦が小さいこと、及び、環状溝とOリングとの間に
シール用のOリングを
軸方向に空隙を有して装着したことにより、棒状部を軸方向に摺動した場合、前記環状溝と前記Oリングとの間で滑りが生じることになり、逃がし弁の強制開弁時に、該逃がし弁に使用する揚弁軸にかかる荷重(摩擦力)を小さくして、手動操作レバーを容易に操作することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る逃がし弁の一実施例を示す縦断面図、
図2は、部分切欠(平面視で中心角90度部分が切欠部)斜視図、
図3は、平面図である。
【0023】
図示の逃がし弁1は、弁本体10と、一次側の圧力に応じて開閉作動する開閉作動部材としての負圧弁体25及びダイアフラム弁体30と、両面シール部材50と、揚弁軸40及び手動操作レバー65等からなる強制開弁機構60とを備えている。
【0024】
弁本体10は、合成樹脂製の下ケース10Aと上ケース10Bとで分割構成されている。下ケース10Aは上段側ほど大径の概略段付きの円筒状とされ、上ケース10Bは下段側ほど大径の概略段付きの円筒状とされ、上ケース10の下端面部に4箇所設けられたねじ止め部10c(
図3)が下ケース10Aの上端面部に4箇所設けられたねじ止め部10d(
図4)に例えばタッピンねじ39で締付固定されている。
【0025】
下ケース10Aには、
図4を参照すればよくわかるように、その上段部に両面シール部材50が嵌め込まれる装着穴13が設けられ、その中段部、下段部には、装着穴13の底部13bに開口する挿通穴11が設けられている。この挿通穴11の下部(下ケース10Aの下段部)が、一次側(貯湯タンクの上部)に導管で接続される一次側接続口7となっており、挿通穴11の上部が、負圧弁体25の下部円筒部25aが緩く嵌挿される弁体作動室19となっている。この弁体作動室19の下端部(挿通穴11の中間部)には、負圧弁体25を上向きに付勢する第1閉弁ばね28の下端を受ける細長板状のばね受け17が架設されている。
【0026】
下ケース10Aの中段部(弁体作動室19の外周側)には、内周側が開口する平面視扇形状の4個の縦溝通路15が90度間隔をあけて設けられている。
【0027】
また、下ケース10Aの最上段部は、断面横倒しL形で鍔状のダイアフラム受け部10aとなっており、このダイアフラム受け部10aの内周端部には円環状突部10bが突設されている。
【0028】
下ケース10Aの装着穴13に嵌め込まれる両面シール部材50は、
図5に示される如くに、上下対称とされ、段付き円環状の合成樹脂製枠状部51と、この枠状部51の内周側に溶融ゴム材料を流し込むことにより一体成形された厚肉円板状のゴム製シール部52とで構成されている。
【0029】
ゴム製シール部52の中央には、中央連通口55が形成されている。ゴム製シール部52の下面は、負圧弁体25の弁座27が接離する下側シール面5A、その上面は、ダイアフラム弁体30の弁座37が接離する上側シール面5Bとなっている。
【0030】
枠状部51の内周側上下には、平面視円弧状の凸部51dがそれぞれ90度間隔で4個ずつ突設されている。
また、枠状部51には、縦方向に貫通するように、断面扇形状の4個の縦貫連通路56が90度間隔をあけて設けられている。縦貫連通路56の上下端部の内周側には、それに連なるように、隣り合う凸部51dによりその側面が画成された断面扇形状の横通路56aが形成されている。
【0031】
なお、両面シール部材50は下ケース10Aへの組み付け時の便宜等を図るべく上下対称に作製されている。
かかる構成の両面シール部材50は、前記した下ケース10Aの装着穴13に嵌め込まれて超音波溶着により固着されている。
【0032】
前記上ケース10Bの上段部(外筒部16)内周には、後述する揚弁軸40(の棒状部40A)が摺動自在に嵌挿される内筒部18が設けられ、その一側における上段部中央から下段部にかけてホースが接続される二次側接続口8が設けられている。また、その下段部内周は、ダイアフラム作動室14となっている。
【0033】
上ケース10Bの外筒部16と内筒部18との間の部分は、ダイアフラム弁体30を下方(閉弁方向)に付勢する第2閉弁ばね38の収容室となっている。
【0034】
前記負圧弁体25は、下部円筒部25aとこの下部円筒部25aの天井部25c中央から上方に突出する断面T形の突出軸部25bを有し、天井部25cの上面外周端部には、前記両面シール部材50の下側シール面5Aに接離する円環状の第1弁口26付き第1弁座27が設けられている。
【0035】
前記ダイアフラム弁体30は、ゴム製のダイアフラム32と、段付き円筒状の弁体構成部材35と、前記第2閉弁ばね38の下端を受ける中央穴付き有底短円筒状のばね受け33と、を有している。なお、ばね受け33は、ダイアフラム32の上昇限界位置を定めるストッパの役目も果たしている(
図12参照)。ダイアフラム32の外周部は、上ケース10bの下端部に設けられた鍔状部10gと下ケース10Bのダイアフラム受け部10aとで挟圧保持されている。
【0036】
弁体構成部材35は、その内周側に、前記両面シール部材50の上側シール面5Bに接離する第2弁口36付き第2弁座37が設けられている。
【0037】
ダイアフラム32の内周部は、弁体構成部材35とばね受け33とで挟圧保持されている。詳しくは、弁体構成部材35の内周側に形成された薄肉突出部分をかしめることにより、ダイアフラム32と弁体構成部材35とばね受け33の三者が一体化されている。
【0038】
なお、本実施例においては、上ケース10Bの天井部10fとばね受け33との間に縮装された第2閉弁ばね38のセット荷重を調節する機構(ねじ部等)は設けず、セット荷重は各部の寸法管理等を厳密に行うことで許容範囲に収めるようにしている。許容範囲に収まらない場合は、例えば、
図6に示される如くに、上ケース10Bの天井部10fと第2閉弁ばね38の上端との間にワッシャ67を挟み込むこと等で対応する。
【0039】
以上のような構成を有する本実施例の逃がし弁1では、両面シール部材50の下側に下部室21が画成され、ダイアフラム弁体30より上側に上部室22が画成され、両面シール部材50とダイアフラム弁体30との間に感圧室23が画成される。
【0040】
次に、負圧弁体25を強制的に開弁させるための揚弁軸40及び手動操作レバー65を有する強制開弁機構60を説明する。
揚弁軸40は、合成樹脂製とされ、上ケース10Bの内筒部18(の案内孔42部分)に摺動自在に嵌挿される棒状部40Aとこの棒状部40Aの上端部から横向きに折曲がる横辺部40Bと、棒状部40Aの上端近くに設けられた鍔状部44とを有し、棒状部40Aの下部は内筒部18の下端からさらに下方に突出して、その下端面が前記負圧弁体25の突出軸部25b上端面に多少の間隙を隔てて対向せしめられている。
【0041】
揚弁軸40は、上ケース10Bの内筒部18上部に形成されているばね受け穴43の底部(案内孔42との段差部分)と前記鍔状部44との間に縮装された圧縮コイルばね48により常時上向きに付勢されるとともに、その鍔状部44に圧接せしめられた手動操作レバー65により抜け止め係止されている。
【0042】
揚弁軸40における棒状部40Aの下部(案内孔42に嵌挿されている部分)には、軸方向(上下方向)の幅が長い環状溝49が形成されており、この環状溝49にOリング47が装着されている。環状溝49の幅を長くしているのは、Oリング47を伴うことなく揚弁軸40を押し下げることができるようにするためである。
【0043】
手動操作レバー65は、揚弁軸40をてこの原理を利用して押し下げるようになっており、
図7(A)に示される如くに、1本の金属線材を折曲加工することにより側面視概略鍵形状に作製されている。
【0044】
詳しくは、手動操作レバー65は、前後方向に伸びるU字状把持部65a、このU字状把持部65aの両端から円弧を描くように下向きに90度強折り曲がる立下部65b、この立下部65bから円弧を描くように前後方向に折り曲がる下辺部65c、この下辺部65cから左右方向外向きに折り曲がる横倒しL形状の横辺部65d、及び横辺部65dからさらに左右方向外向きに伸びるピン軸部65eからなっており、通常時は、上記下辺部65cが揚弁軸40の鍔状部44に圧接せしめられている。
【0045】
この手動操作レバー65のピン軸部65eは、上ケース10Bの天井部10fから上向きに突設された左右一対の支持柱62に設けられた軸受穴63に回動自在に嵌挿されている。なお、ピン軸部65eを軸受穴63へ挿入するには、
図7(B)に示される如くに、U字状把持部65aの反把持部側を指で掴んでその幅を狭めるようにすればよい。
このように、手動操作レバーが板金製のものに比べて、その組み付けを極めて簡単容易に行うことができる。
【0046】
なお、把持部65aは、
図9に示される手動操作レバー65’のように、プルタブ形(65a’)等、他の形状としてもよいことは勿論である。
【0047】
このような構成とされた強制開弁機構60では、負圧弁体25を強制的に開弁させる際には、
図8に示される如くに、手動操作レバー65の把手部65a持って、反時計回りに約90度回すようにされる。これにより、把手部65aが力点、ピン軸部65eが支点となり、作用点が下辺部65cから立下部65bに移行し、これによって揚弁軸40が押し下げられ、揚弁軸40の下端が負圧弁体25の突出軸部25b上端に接当して、負圧弁体25を押し下げる。これにより、負圧弁体25の弁座27が両面シール部材50の下側シール面5Aから離れ、負圧弁体25が強制的に開弁される。
【0048】
上記構成に加えて、本実施例の逃がし弁1では、一次側の圧力が設定負圧以下(負圧が大)になっても第2接続口8から大気を吸入できない事態(例えば、第2接続口8に接続されたホースがねじれたり、異物が詰まったりした場合等)に備えて、次のような手段が講じられている。
【0049】
すなわち、前記揚弁軸40内に大気を弁本体10に吸入するための吸気通路45が設けられるとともに、この吸気通路45に、通常時(正常時)は吸気通路45を閉じ、一次側の圧力が設定負圧以下になった異常時には吸気通路45を自動的に開く吸気弁70が設けられている。
【0050】
前記吸気通路45は、揚弁軸40の棒状部40Aに設けられた縦通路部45aと、この縦通路部45aの上端から横向きに折り曲がる横通路部45bとからなり、横通路部45bの外端側に吸気弁70が設けられている。
【0051】
吸気弁70は、ゴム製のボール弁体75を有し、揚弁軸40の横辺部40Bに一体化されている。すなわち、横辺部40Bの外端部には、横通路部45bと同径の吸気弁口72が形成された接続具71が超音波溶着により固着されている。横辺部45Bにおける横通路部45bの外端部45cと吸気弁口72の内端部との間は、ボール弁体75を吸気弁口72の開閉方向に移動可能に案内する、横通路部45b及び吸気弁口72より大径の弁体収容室73が設けられている。また、横通路部45bの外端部45cの外周側には、
図10(C)に示される如くに、横通路部45bの外端部45cがボール弁体75により閉じられている状態でも大気を弁本体10内に吸入することができるように、内周側が開口する平面視扇形状の4本の拡張通路76が90度間隔をあけて設けられている。
【0052】
ここで、本実施例の逃がし弁1は、
図11に示される如くに、二次側接続口8や吸気弁70が下側になる姿勢で給湯装置に組み込まれる。したがって、通常時(正常時)は、
図10(A)に示される如くに、ボール弁体75が自重により吸気弁口72を閉じた状態となる。それに対し、一次側の圧力が設定負圧以下になった異常時には、
図10(B)に示される如くに、ボール弁体75が負圧により横通路部45bの外端部45cまで吸い上げられて、吸気弁口72を開く。これにより、外部の大気は吸気弁口71→弁体収容室73→拡張通路76→吸気通路45を経て弁本体10内(の上部室22)に吸入される(この異常時には、後述するように、負圧弁体25が開弁せしめられている)。
【0053】
このような構成とされた本実施例の逃がし弁1では、一次側の圧力が設定圧以上になったときには、
図12に示される如くに、ダイアフラム弁体30が第2閉弁ばね38の付勢力に抗して押し上げられて第2弁座37が上側シール面5Bから離れ、ダイアフラム弁体30が開き、一次側からの蒸気や湯水は、一次側接続口7→下部室21→縦溝通路15→両面シール部材50の下側横通路56a→縦貫連通路56→上側横通路56a及び感圧室23→第2弁座37と上側シール面5Bとの間に形成された間隙→第2弁口36→上部室22→二次側接続口8→ホースを経て外部に放出される。
【0054】
一方、一次側の圧力が設定負圧以下(負圧が大)になったときには、
図13に示される如くに、ダイアフラム弁体30は閉じたままで、負圧弁体25が引き下げられて、負圧弁体25の第1弁座27が下側シール面5Aから離れ、負圧弁体25が開き、外部から大気が、順次、二次側接続口8→上部室22→第2弁口36→中央連通口55→第1弁座27と下側シール面との間に形成された間隙→下部室21→一次側接続口7を経て貯湯タンクに吸入される。なお、この場合、一次側の負圧の大きさによっては、吸気弁70が開く場合があり、この場合は、吸気通路45を通じての大気吸入が行われる。
【0055】
一方、緊急時や保守点検時等に、負圧弁体25を強制的に開弁させるには、
図14に示される如くに、手動操作レバー65の把手部65a持って、反時計回りに約90度回す。これにより、揚弁軸40が押し下げられ、揚弁軸40の下端が負圧弁体25の突出軸部25b上端に接当して、負圧弁体25が押し下げられる。
【0056】
これにより、負圧弁体25の弁座27が下側シール面5Aから離れ、負圧弁体25が強制的に開弁される。一次側からの蒸気や湯水は、一次側接続口7→下部室21→縦溝通路15→第1弁座27と下側シール面との間に形成された間隙→中央連通口55→第2弁口36→上部室22→二次側接続口8→ホースを経て外部に放出される。なお、一次側が負圧である場合は、外部から大気が、二次側接続口8→上部室22→第2弁口36→中央連通口55→第1弁座27と下側シール面との間に形成された間隙→下部室21→一次側接続口7を経て貯湯タンクに吸入される。
【0057】
上記に加え、例えば、第2接続口8に接続されたホースがねじれたり、異物が詰まったりして、一次側の圧力が設定負圧以下(負圧が大)になっても第2接続口8から大気を吸入できない異常事態に陥ったときには、負圧弁体25が開いているので、
図15(
図10(B))に示される如くに、ボール弁体75が負圧により横通路部45bの外端部45cまで吸い上げられて、吸気弁口72を開く。これにより、外部の大気は吸気弁口71→弁体収容室73→バイパス通路76→吸気通路45を経て弁本体10内(の上部室22)に吸入され、以降は、第2接続口8から大気を吸入する場合と同じように、上部室22→第2弁口36→中央連通口55→第1弁座27と下側シール面との間に形成された間隙→下部室21→一次側接続口7を経て貯湯タンクに吸入される。
【0058】
このような構成とされた本実施例の逃がし弁1においては、ダイアフラム弁体30と負圧弁体25とがそれぞれ独立して開閉作動するようにされ、両面シール部材50とダイアフラム弁体30とで、一次側の圧力が設定圧以上になったときに開弁して一次側の圧力を二次側に逃がす機能を実現し、両面シール部材50と負圧弁体25とで、一次側の圧力が設定負圧以下になったときに開弁して大気を一次側に吸入させる機能を実現するようにされているので、ダイアフラム弁体30と負圧弁体25を始めとして各部の設計自由度が格段に向上し、例えば、負圧弁体25側の第1弁口26の口径とダイアフラム弁体30側の第2弁口36の口径とを異なる寸法に設定すること等が可能となり、従来は制約が多くて応えることができなかった相反する要望にもそれぞれ応えることができ、その結果、従来のものより性能や品質の高い逃がし弁を低コストで提供することが可能となる。
【0059】
また、従来は一次側から来る蒸気や湯水の勢いをそのままダイアフラムで受けるようになっていたが、本実施例の逃がし弁1では、一次側接続口7とダイアフラム弁体30の間に両面シール部材50が配設されており、一次側接続口7からダイアフラム弁体30に至る流路が複雑に形成されている(下部室21→縦溝通路15→両面シール部材50の下側横通路56a→縦貫連通路56→感圧室23で形成されている)ので、一次側の圧力が急激に変化しても、その圧力変化の衝撃は流路壁で吸収され、ダイアフラム弁体30には伝わり難く、そのため、ダイアフラム弁の不所望な挙動は抑えられ、洩れは生じ難くされる。
【0060】
また、本実施例の手動操作レバー65は、1本の金属線材を折曲加工することにより作製されるので、従来の板金製のものに比べて極めてシンプルであり、また、弁本体10への組み付けは、U字状把持部65aの反把持部側を指で掴んでその幅を狭めてピン軸部65eを軸受穴63へ挿入するだけでよいので、従来の板金製のものに比べて、部品コスト、組立てコストを大幅に削減できる。
【0061】
また、一次側の圧力が設定負圧以下(負圧が大)になっても第2接続口8から大気を吸入できない事態に備えて、本実施例では、揚弁軸40内に大気を弁本体10に吸入するための吸気通路45が設けられるとともに、通常時(正常時)は吸気通路45を閉じ、一次側の圧力が設定負圧以下になった異常時には吸気通路45を自動的に開く吸気弁70が揚弁軸40(横辺部40B)に一体に設けられているので、従来のように、別途に吸気弁(それ自体の構造はよく知られている)を作製して、それを弁本体に取り付ける場合に比べて、部品点数や工数を大幅に削減できる。
【0062】
さらに、本実施例では、第1閉弁ばね28が負圧弁体25の下部円筒部25a内側に収容されており、かつ蒸気や湯水は
図12及び13に矢印で示したように下部円筒部25aの外側を通過するので、第1閉弁ばね28は蒸気や湯水の影響をあまり受けず、この結果、第1閉弁ばね28の腐食や劣化が低減されると共に、振動が抑えられ、騒音低減や耐久性向上を図ることができる。
【0063】
なお、下部円筒部25aの外径を第1閉弁ばね28の内径よりも小さくすると共に天井部25cの外側にフランジ部を形成し、このフランジ部とばね受け17との間に挟み込まれるようにして第1閉弁ばね28を下部円筒部25cの外側に設けても良いことは当然である。すなわち、第1閉弁ばね28は、下部円筒部25aの外周部をガイドとして伸縮される。
【0064】
また、ボール弁体75はゴム製であるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されることはなく、樹脂や金属製であっても良いことは当然である。