(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の前記金型における前記一方には前記パッチ部材を収容する凹部が形成され、前記凹部は成形後の前記複合構造体を抜き取る方向に開口するように設けられたことを特徴とする、請求項1に記載の複合構造体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下の分析は、本発明によって与えられたものである。
上述のような従来のこの種の製造方法においては、繊維強化プラスティック部材の成形工程と、かかる部材と金属板との接合工程とが、別個に行われていた。このため、従来のこの種の製造方法においては、製造コスト等(製造コストおよび繊維強化プラスティック部材と金属板の接合強度)の点で、まだまだ改善の余地があった。本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、第1の視点において、繊維強化プラスティック板と金属板との複合構造体を製造する方法は、以下の工程を有することを特徴としている:(1)所定形状の前記複合構造体を得るための一対の金型を用意する。(2)板厚方向に貫通する貫通孔からなる開口部を有する前記金属板を用意する。(3)前記開口部よりも大きなサイズでプラスティック(例えば繊維強化プラスティック)によって形成されたパッチ部材を、一対の前記金型における一方にセットする。(4)前記繊維強化プラスティック板を構成するためのプリプレグと前記パッチ部材との間に前記金属板が位置するように、前記プリプレグと前記金属板とを一対の前記金型の間に配置する。(5)一対の前記金型を閉じ合わせて前記プリプレグと前記金属板と前記パッチ部材とを接合することで、前記所定形状に成形された前記複合構造体を得る。このとき、一対の前記金型における他方に設けられた押圧部材によって、前記開口部の内側に対応する位置に対して選択的に接合用押圧力を印加して、前記開口部を介して前記プリプレグと前記パッチ部材とを結合させる。
【0006】
第2の視点において、繊維強化プラスティック板と金属板との複合構造体を製造する方法は、以下の工程を有する:
(a)板厚方向に貫通する貫通孔を有する金属板と、繊維強化プラスティック板を構成するためのプリプレグと、所定形状の複合構造体を得るための一対の金型を有し前記貫通孔の一側開口部に面する位置に前記一側開口部よりも径大な凹部を形成可能な金型と、前記貫通孔に対向する位置にセットされる少なくとも一つのパッチ部材と、を用意する;
(b)前記プリプレグと前記金属板とを前記一対の金型の間に配置する;
(c)前記一対の金型を閉じ合わせ、この閉じ合わせ時、
(ca)前記プリプレグと前記金属板が接面しながら前記プリプレグおよび前記金属板が前記所定形状に成形され、
(cb)前記貫通孔内に、前記プリプレグおよび前記パッチ部材の少なくとも一方が押し出されて、前記プリプレグと一体化された軸部が形成され、及び、
(cc)前記凹部内に、少なくとも前記パッチ部材から構成され、前記軸部と一体化され、前記金属板に係止される頭部が形成される。
【0007】
第3の視点において、
積層体型の繊維強化プラスティック板と金属板との複合構造体は、下記の要素を有する:
板厚方向に貫通して一面および他面上で開口する貫通孔を有する金属板;
前記金属板の前記一面
上に厚み方向に積層されかつ接合された繊維強化プラスティック製板;、
前記金属板部の前記貫通孔内に形成され、前記繊維強化プラスティック製板と一体化されたプラスティック製軸部;
前記金属板の前記他面側で前記貫通孔の開口部よりも径大に形成されて前記金属板に係止され、前記軸部と一体化されたプラスティック製頭部(係止部)。
【発明の効果】
【0008】
第1の視点においては、前記繊維強化プラスティック板の前記所定形状に対応する成形と、かかる成形による成形物と前記金属板との接合による前記所定形状の前記複合構造体の形成とが、一対の前記金型を閉じ合わせることで一度に行われる。ここで、前記繊維強化プラスティック板と前記金属板との接合は、前記金属板に設けられた前記開口部を介して前記繊維強化プラスティック板(前記プリプレグ)と前記パッチ部材とが結合することによって行われる。したがって、前記複合構造体の製造コストが良好に低減され得る。また、前記パッチ部材は、前記開口部よりもサイズが大きい。このため、前記複合構造体における良好な接合強度が得られる。
【0009】
第1〜第3の視点によれば、金属板の一面に接合された繊維強化プラスティック板(プリプレグ)と、金属板の貫通孔内に形成された軸部と、金属板の他面側に係止される頭部と、が一体化されることによって、繊維強化プラスティック板が金属板に強固に機械的結合されるため、複合構造体の耐衝撃性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
形態2:一対の前記金型における前記一方には前記パッチ部材を収容する凹部が形成され、前記凹部は成形後の前記複合構造体を抜き取る方向に開口するように設けられる。
形態3:一対の前記金型の相対移動方向に沿った内面に設けられた段差によって前記凹部が形成される。
形態4:前記繊維強化プラスティック板は前記金属板の片面に接合される。
形態5:前記繊維強化プラスティック板は連続強化繊維を含有する。
形態6:前記プリプレグとして、前記貫通孔と対向する部分に肉厚部を備えるプリプレグを用意する。前記肉厚部が前記貫通孔内に押し出されて、前記一対の金型にセットされた前記パッチ部材と結合する。
形態7:前記一対の金型に代えて前記プリプレグに、前記パッチ部材をセットする。
形態8:前記貫通孔内に、前記プリプレグと一体化された軸部が形成され、前記凹部内に、前記軸部と一体化され、前記開口部よりも径大な頭部ないし係止部が形成される。
【0013】
上記形態2においては、前記凹部に前記パッチ部材が収容される。このため、前記パッチ部材のセットが良好に行われ得る。また、前記凹部は成形後の前記複合構造体を抜き取る方向に開口している。このため、成形後の前記複合構造体の抜き取り作業が、良好に行われ得る。
【0014】
上記形態3によれば、前記パッチ部材が前記金型の前記相対移動方向に沿った前記内面にセットされる場合の、前記パッチ部材のセット及び成形後の前記複合構造体の抜き取り作業が、良好に行われ得る。
【0015】
上記形態4によれば、前記繊維強化プラスティック板が前記金属板の片面に接合されることで前記複合構造体が形成される場合における、製造コスト及び接合強度が、従来の製造方法の場合よりも良好に改善され得る。
【0016】
上記形態5によれば、連続強化繊維を含有する前記繊維強化プラスティック板と前記金属板との接合が、低コスト且つ良好な接合強度で行われ得る。
【0017】
上記形態6によれば、プリプレグの肉厚部が第2のパッチ部材として機能する。
【0018】
上記形態7によれば、前記パッチ部材が前記プリプレグ上にセットされるため、金型形状を単純に形成することができる。
【0019】
上記形態8によれば、プリプレグ、軸部および頭部の一体化によって、プリプレグと金属板の機械的結合が強固になる。
【0021】
形態10:上記(a)工程において、前記パッチ部材を前記凹部内にセットし、上記(c)工程において、前記一対の金型の閉じ合わせにより乃至それに連動して、前記貫通孔内に前記プリプレグが押し出されて前記凹部内の前記パッチ部材と結合し、前記軸部および前記頭部が形成される。
形態11:上記(a)工程において、前記パッチ部材を、前記プリプレグ上にセットし、上記(c)工程において、前記一対の金型の閉じ合わせにより乃至それに連動して、前記貫通孔内さらに前記凹部内に前記パッチ部材が押し出されて、前記軸部および前記頭部が形成される。
形態12:上記(a)工程において、前記パッチ部材として、第1のパッチ部材を前記プリプレグ上にセットし、第2のパッチ部材を前記凹部内にセットし、上記(c)工程において、前記一対の金型の閉じ合わせにより乃至それに連動して、前記貫通孔内に、前記第1のパッチ部材が押し出されて前記第2のパッチ部材と結合し、前記軸部および前記頭部が形成される。
【0022】
形態9〜12を参照すると、複合構造体の所望形状、プリプレグないしパッチ部材の流動性、又は、金型の製作コストなどを考慮して、パッチ部材は、金型又はプリプレグ、或いは金型およびプリプレグの両方にセットされる。パッチ部材を金型にセットする場合には、金型の間、特に、金属板と一方の金型の間にパッチ部材を収容する凹部を設ければよい。パッチ部材をプリプレグにセットする場合には、プリプレグ上にパッチ部材を張り付けたり、又は、プリプレグの積層枚数を局所的に増やして、プリプレグを局所的に肉厚にしたりすればよい。このように形成された肉厚部も、パッチ部材として機能する。パッチ部材を、さらに、金属板にセットしてもよい。
【0023】
パッチ部材ないしプリプレグの肉厚部の選択的押圧は、一対の金型の型締めによっても可能であるが、金型にプランジャ機構を付設したり、プリプレグに接する方の金型に段付形状ないし凸部を付加したりしてもよい。
【0024】
パッチ部材は、金属板に形成された貫通孔の一方の開口部、他方の開口部、又は、両方の開口部に面してセットすることができる。
【0025】
金属板に形成された貫通孔の一側開口部(開口縁)に座ぐりを形成し、この座ぐりにパッチ部材を係止しておいてもよく、及び/又は、この座ぐりをプラスティック製頭部の嵌合部として利用してもよい。
【0026】
金型が形成する凹部は、一方の金型、特に、金属板側の金型によって、又は、一対の金型によって形成することができ、さらに、金属板を利用して形成してもよい。例えば、一方の金型に形成された段付形状と、金属板の他面とによって、凹部を形成することができる。
【0027】
プリプレグ(繊維強化プラスティック製板部)の一面と、金属板の一面との化学的接合は、プリプレグに含有される樹脂を利用した、及び/又は、別に塗布される接着剤を用いた、加圧ないし加熱処理によって実現することができる。
【0028】
プラスティック製の軸部および頭部は、プリプレグと同様に、繊維を含有していてもよい。
【0029】
なお、各形態は、各視点に相互適用することが可能である。
【0030】
以下、本発明を具体化した一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、変形例は、当該実施形態の説明中に挿入されると首尾一貫した一実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
【0031】
<複合構造体の構成>
図1における(a)は、本実施形態の製造方法によって製造される複合構造体10の平面図であり、(b)はA−A断面図である。本実施形態においては、
積層型の複合構造体10は、自動車のセンターピラー部材であって、金属板である高張力鋼板からなる本体部11と、連続炭素繊維(長繊維)を含有する炭素繊維強化プラスティック(CFRP)板からなる補強部材12と、を
厚み方向に接合することによって形成されている。ここで、かかる複合構造体10においては、部品の軽量化を図るため、高強度が要求される長手方向中央部にのみ(
図1(a)参照)、且つ、本体部11の片面側(断面視にてハット形状における内側)にのみ(
図1(b)参照)、補強部材12が設けられている。
【0032】
本体部11の長手方向中央部であって、補強部材12が接合される領域には、円形の貫通孔からなる開口部13が複数形成されている。開口部13は、本体部11の板厚方向に貫通するように設けられている。また、開口部13を隔てて補強部材12と対向するように、パッチ部材14が設けられている。パッチ部材14は、補強部材12と同一のマトリックス樹脂からなる短繊維CFRP材料によって形成された略円板状の部材であって、開口部13の内径よりも大きな外径で形成されている。補強部材12とパッチ部材14とは、開口部13の内側にて互いのマトリックス樹脂が融着することで、互いに強固に結合されている
(パッチ部材14は、開口部13と同心であり、また開口部13の全周にわたって開口部13の径方向外方へ延在ないし突出する構造を形成する)。
【0033】
ここで、
図1(b)における本体部11の底部を「底面部15」と称し、この底面部15と隣接する斜面状の部分を「側面部16」と称する。
図2及び
図3に示されているように、補強部材12とパッチ部材14との結合部分(すなわち
図1(b)に示されている開口部13)は、底面部15及び側面部16にて、それぞれ、千鳥配置となるように、複合構造体10の長手方向に沿って配列形成されている。また、
図3に示されているように、側面部16には、複数の段付形状17が形成されている。そして、側面部16における、補強部材12とパッチ部材14との結合部分は、段付形状17に沿って配列するように設けられている。
【0034】
<金型の構造>
次に、上述の構成を有する複合構造体10の製造方法に用いられる金型の構造について、
図4を参照しつつ説明する。なお、
図4に示されているプリプレグ18は、補強部材12を構成するためのCFRP板である。
【0035】
固定型である雌型20には、ヒータ21及びクーラ22が埋設されている。ヒータ21及びクーラ22は、成形キャビティを構成するための断面視にてハット形状の空間である雌型形成部23の内面に沿って配置されていて、工程の状況に応じて雌型20を適宜加熱したり冷却したりすることができるように設けられている。雌型形成部23は、複合構造体10の底面部15に対応する雌型底面24と、側面部16に対応する雌型側面25と、によって囲まれた、図中上方に開口する空間である。
【0036】
雌型底面24は、成形後の複合構造体10を抜き取る方向(
図4における上方:以下「抜き取り方向」と称する。)と略直交するように設けられている。この雌型底面24には、パッチ部材14を収容する(セットする)ための凹部である、底面側凹部26が設けられている。この底面側凹部26は、上述の抜き取り方向に向かって開口するように形成されている。
【0037】
雌型側面25は、抜き取り方向に沿って設けられている。雌型側面25の、本体部11における段付形状17に対応する位置には、複数の段付形状対応部27が設けられている。段付形状対応部27は、上述の段付形状17に対応する形状に形成された段差部である。また、雌型側面25における、パッチ部材14を収容する(セットする)ための位置には、かかるパッチ部材14を収容する凹部である側面側凹部28が設けられている。側面側凹部28は、段付形状対応部27から雌型底面24側(図中下側)に向かって形成されたU字状の溝であって、
図4に示されているように、断面視にて抜き取り方向に向かって開口するような段差形状に形成されている。
【0038】
移動型である雄型30は、雌型20の上方にて、図中上下方向に移動可能に設けられている(この雄型30の移動方向は本発明の「相対移動方向」に対応する:この相対移動方向は上述の「抜き取り方向」と平行である)。この雄型30にも、雌型20と同様に、ヒータ31及びクーラ32が埋設されている。
【0039】
雄型30は、雌型形成部23に対応する形状の突出部である雄型形成部33を有している。雄型形成部33における、閉型時にて底面側凹部26に対応する位置には、底側凸部34が設けられている。底側凸部34は、略円柱状の部材であって、開口部13の開口径よりも小径に形成されている。また、雄型形成部33における、閉型時にて雌型側面25に対応する面である雄型側面35には、複数の段付形状対応部36が設けられている。段付形状対応部36は、上述の段付形状17に対応する形状に形成された段差部であって、閉型時にて雌型20の段付形状対応部27に対応する位置に設けられている。すなわち、閉型時にて、雌型20の段付形状対応部27と雄型30の段付形状対応部36との間に形成された隙間に段付形状17が収容されるように、段付形状対応部36が形成されている。
【0040】
また、雄型30は、プランジャ37と、カム38と、シリンダ39と、を備えている。
プランジャ37は、底側凸部34と同様に、開口部13の開口径よりも小径に形成された円柱状の部材であって、閉型時に開口部13に対応する位置に設けられている。そして、プランジャ37は、その先端部が、カム38及びこのカム38を駆動するシリンダ39の動作に応じて進退することで出没するようになっている。
【0041】
上述のように、雌型20及び雄型30は、両者の間にプリプレグ18と本体部11(予め上述のような断面視にてハット形状に形成されているとともに開口部13及び段付形状17が設けられている)とパッチ部材14とをセットした後に閉型することで、プリプレグ18を上述の補強部材12に成形しつつ、上述のような所定形状の複合構造体10を形成するように構成されている。
【0042】
<製造方法1> 以下、
図4に示されている雌型20及び雄型30を用いて、
図1〜
図3に示されている複合構造体10を製造する方法について説明する。なお、雌型20に設けられているヒータ21及びクーラ22、並びに雄型30に設けられているヒータ31及びクーラ32は、パッチ部材14及びプリプレグ18におけるマトリックス樹脂が熱可塑性であるのか熱硬化性であるのかに応じて適宜動作が制御されるが、本発明の要部ではなくまた周知技術の範囲のものでもあるので、説明の簡略化のため、これらの動作説明については省略する。
【0043】
まず、
図4に示されているような雌型20及び雄型30を用意する。また、上述のように開口部13が形成された本体部11を用意する。さらに、雌型20における底面側凹部26及び側面側凹部28に、パッチ部材14をセットする。そして、プリプレグ18とパッチ部材14との間に本体部11が位置するように、プリプレグ18と本体部11とを、雌型20と雄型30との間に配置する。
【0044】
次に、
図5に示されているように、雌型20と雄型30とを閉じ合わせる。これにより、プリプレグ18が上述のようなハット形状に成形されることで、補強部材12が形成される。なお、この時点においては、プランジャ37は未だ突出していないので、
図5における(b)に示されているように、側面部16においては、プリプレグ18(補強部材12)とパッチ部材14との結合は行われていない。一方、
図5における(c)に示されているように、底面部15においては、閉型時に、底側凸部34によって、プリプレグ18側から開口部13の内側に対して選択的に接合用押圧力が印加される。すなわち、プリプレグ18と本体部11とパッチ部材14との積層体における、開口部13の内側に対応する位置(領域)に対して、選択的に接合用押圧力が印加される。これにより、開口部13を介して、プリプレグ18(補強部材12)とパッチ部材14とが結合される。
【0045】
続いて、
図6に示されているように、閉型状態にて、プランジャ37を突出させる。これにより、
図6における(b)に示されているように、側面部16においても、プランジャ37によって、上述の積層体における、開口部13の内側に対応する領域に対して、選択的に接合用押圧力が印加される。すると、開口部13を介して、プリプレグ18(補強部材12)とパッチ部材14とが結合される。これにより、補強部材12と本体部11とパッチ部材14とを接合してなる複合構造体10が形成される。
【0046】
その後、
図7に示されているように、閉型状態にて、プランジャ37が退避する。最後に、
図8に示されているように、雌型20と雄型30とが開型され、成形された複合構造体10が抜き取られる。
【0047】
ここで、
図8における(a)及び(c)に示されているように、底面側凹部26は、抜き取り方向に開口する凹部によって形成されている。また、
図8における(a)及び(b)に示されているように、側面側凹部28は、抜き取り方向に沿った雌型20の内面である雌型側面25に設けられた段差によって形成されている。すなわち、底面側凹部26及び側面側凹部28は、ともに、抜き取り方向に開口する。したがって、パッチ部材14のセットと、成形後の複合構造体10の抜き取りとが、容易に行われる。
【0048】
このように、本実施形態の製造方法によれば、プリプレグ18から補強部材12への成形と、かかる補強部材12と本体部11との接合が、雌型20と雄型30とによる1サイクルの閉型−開型によって、一度に且つ簡易に行われる。また、成形後の複合構造体10においては、開口部13を介して、補強部材12とパッチ部材14とが結合されている。特に、パッチ部材14は、開口部13よりも大きなサイズ(外径)で形成されている。このため、パッチ部材14の外縁部
(開口部13と同心であり、また開口部13の全周にわたって開口部13の径方向外方へ延在ないし突出する)による庇状の構造により、接合後の本体部11と補強部材12との剥離を抑制するための係止部が形成される。よって、接着剤を用いなくても、本体部11と補強部材12との接合が強固に行われる。したがって、本実施形態によれば、本体部11と補強部材12との接合が、低コスト且つ良好な接合強度で行われる。
【0049】
<変形例>
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成及び機能を有する部分に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部分の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が適宜援用され得るものとする。もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたものに限定されるものではない。また、上述の実施形態の一部、及び、複数の変形例の全部又は一部が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0050】
本発明は、上述した具体的な構成に限定されない。例えば、パッチ部材14は、補強部材12と同一の連続繊維CFRPであってもよい。あるいは、パッチ部材14は、補強部材12におけるマトリックス樹脂と同一あるいは類似の合成樹脂のみからなるもの(すなわち補強繊維を含まないもの)であってもよい。また、パッチ部材14の平面形状も、略円形に限定されず、略正多角形状であってもよいし、楕円形であってもよい。あるいは、隣り合う複数のパッチ部材14が棒状の部材で接続されることで互いに一体化されていてもよい。
【0051】
上述の実施形態に示した具体例においては、開口部13の内側に対応する領域に対する「選択的」な接合用押圧力の印加により、本体部11とプリプレグ18との間で開口部13の有無にかかわらず「一様」に接合用押圧力が印加される場合とは異なり、開口部13を介してのプリプレグ18(補強部材12)とパッチ部材14との結合が強固となる。もっとも、底側凸部34やプランジャ37の全体が開口部13の開口径よりも小径に形成されていなくてもよい。すなわち、底側凸部34やプランジャ37のうちの、少なくとも先端部が、開口部13の開口径よりも小径に形成されていればよい。
【0052】
パッチ部材14を側面側凹部28に確実にセットするために、側面側凹部28に面するように穴を形成して、かかる穴にて空気の負圧を発生させることでパッチ部材14を吸引するようにしてもよい。また、側面側凹部28における下端部に、パッチ部材14を係止して脱落(落下)を防止するための爪部が、成形後の複合構造体10の抜き取りに支障を来たさないような態様で設けられてもよい。また、プランジャ37は、油圧式のものであってもよい。また、パッチ部材14のセットよりも先に、雌型20と雄型30との間への本体部11とプリプレグ18との配置が行われてもよい。
【0053】
本発明の適用対象も、自動車のセンターピラー部材に限定されない。もっとも、本発明は、高強度化とともに軽量化をも要求される、自動車の車体部品(特に高張力鋼板(いわゆるダイクエンチ工法によるものも含む)と繊維強化プラスティックとの接合体からなる部品)に対して、非常に好適に適用されるものである。なお、複合構造体10の形状や構造についても、特段の限定はない。複合構造体10の形状によっては、プランジャ37に代えて、底側凸部34と同様の凸部が用いられ得る。(複合構造体10の形状によっては)プランジャ等の押圧部材は、雌型20側に設けられていてもよいし、雌型20及び雄型30の双方に設けられていてもよい。
【0054】
本発明に用いられる繊維強化プラスティック板は、連続繊維(長繊維)FRP板に限定されない。すなわち、本発明は、短繊維FRP板に対しても好適に適用され得る。もっとも、本発明は、連続繊維からなる繊維強化プラスティック板と金属板との接合に際して、特に好適である。また、補強部材12とパッチ部材14とは、同一の材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。さらに、本発明は、本体部11と補強部材12との間に接着剤層を設ける構造に対しても、好適に適用され得る。本発明に用いられる金属板も、鋼板に限定されない。
【0055】
<製造方法2>
図9を参照しながら、実施形態の一つとして製造方法2を説明する。本製造方法2の説明において、前記製法方法1との共通点に関しては、適宜、前記製法方法1の説明を参照することができるものとする。本製造方法2は、下記の工程を有している。
【0056】
[(a)工程、
図9の(i)工程参照、金型71,72については
図9の(ii)工程参照]
板厚方向に貫通する貫通孔42を有する金属板41が用意される。所望の接合強度や耐衝撃性に応じて、複数の貫通孔42が金属板41に分散して形成される。
【0057】
繊維強化プラスティック板を構成するためのプリプレグ51が用意される。プリプレグ51の一面上には、貫通孔42と対向する部分にパッチ部材61が貼り付けられて、肉厚部54が形成されている。換言すると、プリプレグ51の積層枚数を局所的に増加させることによって、肉厚部54が形成されている。かくして、プリプレグ51において、貫通孔42からはみ出させる部分が厚く形成される。
【0058】
所定形状の前記複合構造体を得るための一対の金型71,72が用意される。一対の金型71,72は、貫通孔42の一側開口部42aに面する位置に、凹部73を形成可能である。一側開口部42aは、金属板41を保持する雌型71側の開口部である。凹部73は、少なくとも一側開口部42aとの境界面上で、一側開口部42aの開口径よりも径大である。
【0059】
金型71,72の側部に配置される凹部73は、雌型71および雄型72の段付形状71a,72a、さらに、両段付形状71a,72a間で保持される金属板41によって形成されている。金型71,72の底部に配置される凹部73は、雌型71上に形成されている。
【0060】
[(b)工程、
図9の(ii)工程参照]
パッチ部材61(肉厚部54)と貫通孔42が対向するよう、プリプレグ51と金属板41とが、一対の金型71,72の間に配置される。雌型71に金属板41が保持され、雄型72にプリプレグ51が保持されている。
【0061】
[(c)工程、
図9の(ii)工程から(iii)工程参照]
金型71,72が閉じ合わされる。詳細には、雄型72が雌型71内に押しこまれ、プリプレグ51と金属板41が接面ないし接合しながら所定形状に成形される。同時に、段付形状71a,72a間で、パッチ部材61(肉厚部54)が押圧されて、貫通孔42内に押し出され、さらに、一側開口部42aから凹部73内にはみ出す。これによって、プリプレグ51(板部、本体)と一体化された強化繊維プラスティック製の軸部52および頭部(係止部、庇部)53が形成される。頭部53は、一側開口部42aの開口径よりも径大に形成されて、金属板41の一面上に係止される。頭部53の外面は、雌型71の形状に沿って成形される。
【0062】
一対の金型71,72を型開きすると、金属板41とプリプレグ51の一面同士が化学的接合すると共に、軸部52および頭部53によって機械的接合された、複合構造体10が得られる。本製造方法2による複合構造体10は、
図1(a)および(b)、
図5(c)、
図6(b)、
図7(b)又は
図8(b)および(c)を参照すると、前記製造方法1による複合構造体10と同様のものであることがわかる。
【0063】
なお、製造方法1で上述したように、プリプレグ51又はパッチ部材61の性質に応じて、金型71,72にヒータ又はクーラを設け、プリプレグ51又はパッチ部材61を塑性変形させたり、硬化させたりするための加熱又は冷却処理が実行される。
【0064】
図9の(i)工程を参照すると、本製造方法2では、パッチ部材61(肉厚部54)を貫通孔42の他側開口部42bの側、すなわち、プリプレグ51上にセットしている。前記製造方法1では、パッチ部材14を貫通孔42の一側開口部42aの側、すなわち、金属板41ないし雌型71の側にセットしている。後述の製造方法3では、パッチ部材14を貫通孔42の両側にセットする。
【0065】
<製造方法3>
図10を参照しながら、実施形態の一つとして製造方法3を説明する。本製造方法3の説明において、前記製法方法2との共通点に関しては、適宜、前記製法方法2の説明を参照することができるものとし、以下の説明においては、主として、前記製造方法2との相違点について説明する。本製造方法3は、下記の工程を有している。
【0066】
[(a)工程、
図10の(i)工程参照、金型71,72については
図10の(ii)工程参照]
パッチ部材として、第1のパッチ部材61(肉厚部54)をプリプレグ51上にセットし、第2のパッチ部材62を凹部73内にセットする。凹部73は、雌型71および雄型72の段付形状71a,72a、さらに、両段付形状71a,72a間で保持される金属板41によって形成されている。金型71,72の底部に配置される凹部73は、雌型71上に形成されている。
【0067】
[(b)工程、
図10の(ii)工程参照]
金型71,72内には、第1のパッチ部材61と第2のパッチ部材62とが貫通孔42を挟んで対向するよう、プリプレグ51、金属板41および第2のパッチ部材62が配置される。
【0068】
[(c)工程、
図10の(ii)工程から(iii)工程参照]
金型71,72が閉じ合わされる。詳細には、雄型72が雌型71内に押しこまれ、プリプレグ51と金属板41が接面ないし接合しながら所定形状に成形される。同時に、段付形状71a,72a間で、第1のパッチ部材61(肉厚部54)が押圧されて、貫通孔42内に押し出され、第2のパッチ部材62と結合する。金型71,72を型開きすると、前記製造方法1又は2で得られたものと同様の複合構造体10が得られる。
【0069】
製造方法1〜3においては、別のパッチ部材を、金属板41、例えば、金属板41(本体部11)に形成された貫通孔42(開口部13)内に保持ないし係合させておいてもよい。製造方法1〜3においては、貫通孔42(開口部13)の縁に座ぐりを形成し、接合前は、この座ぐりに別のパッチ部材を係止させておいたり、接合後は、この座ぐりを頭部53との嵌合部として利用してもよい。
【0070】
なお、上記の特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【0071】
本願は、日本国特許出願:特願2013−050924号(2013年 3月13日出願、以下「先の出願」という)の優先権主張に基づくものであり、先の出願の開示内容の基準日は、先の出願に関する限り、先の出願の出願日(優先日)であり、後の出願たる本願で追加ないし変更した部分に一切影響されないものとする。なお、本願において追加ないし変更した部分を含めての全体の開示内容の基準日は、本願の国際出願日である。