特許第6076475号(P6076475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6076475重合性混合組成物、該混合組成物の用途、及び歯科補綴物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076475
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】重合性混合組成物、該混合組成物の用途、及び歯科補綴物
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/093 20060101AFI20170130BHJP
   A61C 8/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   A61K6/093
   A61C8/00
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-518899(P2015-518899)
(86)(22)【出願日】2013年7月8日
(65)【公表番号】特表2015-522571(P2015-522571A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】EP2013002010
(87)【国際公開番号】WO2014005727
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2015年3月19日
(31)【優先権主張番号】102012013514.9
(32)【優先日】2012年7月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506329719
【氏名又は名称】メルツ・デンタル・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MERZ DENTAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プフレッサー,ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ザイフェルト,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ツィーメール,ラルフ
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−227509(JP,A)
【文献】 特開昭49−009082(JP,A)
【文献】 特表2003−507499(JP,A)
【文献】 特開平10−226613(JP,A)
【文献】 特開2009−179598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/000−6/10
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
破壊靱性と破断エネルギーの増大した歯科用インプラント又は補綴物を作製するための、少なくとも1つのモノマー部分としてメタクリル酸メチル(MMA)を有する液体若しくは半固体成分Aと、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ベースの、フィラー及び/又は添加剤を有する固体成分Bとを含有する重合性混合組成物であって、前記液体若しくは半固体成分Aが付加的に、前記モノマー部分を改質しかつ前記モノマー部分と混和性である、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)、ポリメチルフェニルシロキサン(PMPS)、及び/又はそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのオリゴマー若しくはポリマーポリオルガノシロキサンを有し、重合した混合組成物が破壊靱性(Kmax)≧1.9kJm1/2と破断エネルギー≧900J/mとを有する、該重合性混合組成物。
【請求項2】
前記固体成分B及び前記液体若しくは半固体成分Aが、開始剤成分を含有することを特徴とする、請求項1に記載の重合性混合組成物。
【請求項3】
前記液体または半固体成分A中の、オリゴマー若しくはポリマー化合物の部分が、0.1〜50重量%の範囲内になることを特徴とする、請求項1又は2に記載の重合性混合組成物。
【請求項4】
前記ポリオルガノシロキサンが、前記液体若しくは半固体成分Aのモノマー部分と均一混和性である、及び/又は好ましくは直鎖構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の重合性混合組成物。
【請求項5】
直鎖ポリオルガノシロキサン基の平均数(n)が、2〜500の範囲内になることを特徴とする、請求項4に記載の重合性混合組成物。
【請求項6】
前記ポリオルガノシロキサン鎖の構造が化学的に修飾されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の重合性混合組成物。
【請求項7】
前記ポリオルガノシロキサン鎖の構造が、置換基により、化学的に修飾されることを特徴とする、請求項6に記載の重合性混合組成物
【請求項8】
求項1から7のいずれか1項に記載の重合性混合組成物の、プラスチックモールド製造のための使用。
【請求項9】
前記重合性混合組成物が、このタイプのモールドなどのための修復材料として使用されることを特徴とする、請求項に記載の使用。
【請求項10】
請求項1〜の少なくとも1項に記載の重合性混合組成物を用いて作製された歯科補綴物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのモノマー部分を有する液体若しくは半固体成分Aと、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ベースの、フィラー及び/又は添加剤を有する固体成分Bとを含有する重合性混合組成物、該混合組成物の用途、及び該混合組成物から製造される歯科用インプラント又は補綴物に関する。
【背景技術】
【0002】
モールド部品用の通常のプラスチック、特に、歯科領域におけるポリメタクリル酸メチルベースを用いた市販の補綴物ベースプラスチックは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の物理的性質に起因して、非常に低い破断エネルギーと平均的な破壊靱性とをもつに過ぎない。
【0003】
PMMA及びその市販されているコポリマーは、非常に高い硬度と脆弱性又は脆さとを有しており、ストレスがかけられた場合、このことはまず、亀裂伝播によって材料破壊をもたらす比較的強い力に打ち勝たねばならないことを意味する。これは、どのくらいのエネルギーが破壊伝播に消費されねばならないかを特定する平均的な破壊靱性値につながる。しかしながら、もしこのエネルギーが初期の段階で超えられると、亀裂は即座に材料全体に進行してそれを粉砕する。例えば、歯科補綴物はその後もはや使用可能ではなくなり、可能な限り修復されねばならないであろう、
【0004】
このPMMAの破壊挙動に基づき、破断エネルギーには非常に低い値が与えられる。これは、予め損傷された標準供試体を粉砕するために、単位面積当たりどのくらいのエネルギーが必要であるかを特定する。粉砕による破壊において消費されるエネルギーは急激に0に低下することから、この仕事量(破断エネルギー、W)は非常に小さい−図4.1.のグラフ図参照。
【0005】
しかしながら破壊靱性材料では、亀裂伝播は、破壊靭性(Kmax)として定義されるエネルギー最大値で始まるが、この亀裂は次に、改質によって材料の靱性が著しく増加していることから、供試体の中を徐々に移動するに過ぎず、それ故亀裂先端において作用する力を散逸することが可能である。結果として、破壊靱性材料は、亀裂が供試体/モールド部品の反対側に達して、恐らくはさらにそれを粉砕するより前に、著しく大きい力/面積に耐え得る;図4.2及び4.3のグラフ図(グラフのスケールに注意)を参照。
【0006】
例えば歯科補綴物などの個々のモールド部品を製造するため、対応する材料を用いた様々なプロセスが市販されている。自己重合型PMMAベースのプラスチックを用いた注入成形プロセスは、増え続ける市場占有率を獲得している。これは一般に、2成分系であって、一方は液体成分であり、主として単官能性の重合性モノマー、特にメタクリル酸メチル、架橋剤、特に二官能性のアルキルジメタクリレート、例えばエチレングリコールジメタクリレート又は1,4−ブタンジオールジメタクリレート、任意選択で、結果として得られるポリマーのモル質量を調整するための添加剤、例えばチオール、及び対応する低濃度の開始剤系、例えば過酸化物/アミン系、若しくはバルビツール酸誘導体をベースとする系、貯蔵安定剤、例えばヒドロキノンモノメチルエーテル、及び/又は、着色若しくは微生物に有効な化合物からなる、該液体成分である。
【0007】
他方は、固体好ましくは粉末成分が使用でき、これは主としてポリメタクリル酸メチルと、そのコポリマーとを、任意の組成及び任意の混合比で、特にビーズ形態で含んでなる。任意選択で、フィラー、例えばケイ酸塩又はアパタイト、染料、例えばアゾ縮合生成物、及び色素、主として鉄及び酸化チタン、及び、モディファイア、例えばX線不透明度調節用、又は微生物学的に有効な物質、及び付加的な開始剤成分が、該固体(第2の)成分に追加される。
【0008】
2つの上記成分は、一般に、注入可能な混合物が生成されるよう、互いに一定の割合で混合される。PMMA及びその殆どの非架橋コポリマーが、そのモノマー又はMMA中で溶解するか又は少なくとも浸漬され得るという事実から、混合物の粘稠性は時間がたつにつれて連続的に増大し、適宜に調製された歯科用モールドへ直ちに注入される。その後混合物はますますペースト状となり、開始剤成分が迅速に重合を開始する。
【0009】
これに関連して、特許文献1及び2は、破壊靱性自己重合性の「高耐衝撃性材料」(「PalaXpress Ultra」、Heraeus Kulzer)を開示している。これらの公報では、DIN EN ISO(規格)によって要求される、破壊靱性及び破断エネルギーに関する値を達成するための、自己重合性の2成分歯科補綴物ベース材料における、弾性改質されたビーズ重合体の使用が記載されている。ビーズ重合体の弾性改質は、ここでは、任意のタイプのコア/シェル粒子により、例えば、古典的なコア/シース粒子(弾性コアをもつ)、マルチコア粒子、及び固体マトリックス中の多数のコア/シース粒子によるか、又はビーズ重合体内の弾性固体相の相互侵入ネットワーク形態によって生じる。
【0010】
しかしながら、ここで、ポリマー成分のみが改質されることは不都合である。モノマー成分との混合及び重合の後、円形の、破壊靱性改質されたポリマービーズからなる材料構造が生成され(paras.6.1及び6.2参照)、これらはpolmerisedモノマーマトリックスによって連結されている。しかしながらモノマーマトリックスは改質されていないため、後者はなお高度の脆性及び脆さと、それ故低い破壊靱性とをもつ。加えて、このタイプのポリマーブレンドでは、改質された粒子が均一に分散される保証はない。不都合な場合、かかる内在的な不均一性は、望ましくない所定の破壊点に行き着く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1702633号明細書
【特許文献2】独国特許第102005012825号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それ故本発明の目的は、通常のPMMA材料に比較して、著しく増大された破断エネルギーと破壊靱性とをもち、好ましくは製品規格DIN EN ISO 20795−1:2008に従った基準及び定義に対応し、かつ内在的な材料及び組成物特性によって上記の欠点を回避する、注入可能な自己重合性混合組成物を特定することである。さらに、かかる組成物及び対応するモールドの1つについて、適当な用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、独立及び追加の独立クレーム1、10、及び13の特徴によって達成される。
【0014】
本発明の1つの基本的な態様は、少なくとも1つのモノマー部分を有する液体又は半固体成分Aと、フィラー及び/又は添加剤を有する、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ベースの、好ましくは粉末状の固体成分Bとを含有する重合性混合組成物であって、該液体若しくは半固体成分Aが付加的に、モノマー部分を改質しかつモノマー部分と混和性である少なくとも1つのオリゴマー若しくはポリマー化合物を有している、該重合性混合組成物の調製である。言い換えれば、重合復に得られるモールドの粉砕特性に関してここで改質されるのは固体ポリマー成分ではなく、むしろ有利なことに成分A中の液体モノマー部分である。モノマー混合物へ添加されるのは、例えば、直鎖ポリ(オルガノ)シロキサンであり、これは液体成分Aと混合され、後の段階でも何ら相分離を引き起こさず、かつ系内へ重合化され得る。このことは、一方では、物理的経路により、即ちいわゆるアウターモディファイアをデポジットすることにより(例えば図1.1参照)、又は化学的に、いわゆるインナーモディファイアとして、共有結合の形成及びコポリマーの発生により(図1.2及び1.3参照)達成され得る。
【0015】
粉末状固体成分Bは、ここで液体若しくは半固体、即ちモノマーを含有する粘性の又はペースト状の成分Aにより、少なくとも加湿され得、好ましくは後者中に分散され得、特に好ましくは浸漬され得、また理想的な場合には、特に好ましくは液体若しくは半固体のペースト状成分A中に完全に溶解され得る。
【0016】
好ましくは、固体成分B及び/又は液体若しくは半固体成分Aは、混合時に自力で重合をトリガーする開始剤成分を含有する。
【0017】
好ましくは、液体若しくは半固体成分A中の、オリゴマー若しくはポリマー化合物の部分は、0.1〜50重量%、又は0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜25重量%、及び特に好ましくは1〜20重量%の範囲内になる。
【0018】
好ましくは、少なくとも1つのオリゴマー若しくはポリマー化合物は、ポリオルガノシロキサンである。
【0019】
好ましくは、ポリマー化合物又は少なくとも1つのポリオルガノシロキサンは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)、ポリメチルフェニルシロキサン(PMPS)、及び/又は後者の混合物からなる群より選択される。
【0020】
ポリオルガノシロキサンは、好ましくは液体若しくは半固体成分Aのモノマー部分と均一混和性である、及び/又は好ましくは直鎖構造を有する。
【0021】
ここで、直鎖ポリオルガノシロキサン基の平均数(n)は、好ましくは2〜500、又は2〜200、好ましくは5〜200、又は5〜150の範囲内、特に好ましくは7〜75、又は7〜40の範囲内になる。
【0022】
ポリオルガノシロキサン鎖構造もまた、好ましくは改質され、特に後者は置換基によって化学的に修飾される。この修飾は、好ましくはPMMA系に耐える、即ち後者と混和性である及び/又は後者によって変更できるポリマー、例えば(ポリ)カプロラクトン(図2.3参照)、特に好ましくは、例えばビニル(図2.6参照)、アリル及び(メタ)アクリル基(図2.2、2.8、及び2.9参照)などの不飽和基、及び非常に特別好ましくは図2.1、図2.4、及び図2.5による(メタ)アクリル基による(片側)鎖停止を含む。
【0023】
1つの好ましい実施形態においては、重合した混合組成物又はプラスチックモールドは、破壊靱性(Kmax)≧1.9kJm1/2と、破断エネルギー≧900J/mとを有するか、又は該プラスチックモールドは、未修飾の重合した混合組成物に比較して、増大された破壊靱性(Kmax)及び増大された破断エネルギー(W)の双方を有する。
【0024】
プラスチックモールド製造用の上記の重合性混合組成物の本発明による1つの用途においては、重合した混合組成物又はプラスチックモールドは、DIN EN ISO 20795−1:2008による、破壊靱性(Kmax)≧1.9kJ/m1/2と、破断エネルギー≧900J/mとを有する。
【0025】
この方法で製造されたプラスチックモールドは、好ましくは歯科補綴物本体として使用され、また1つの実施形態においては、高耐衝撃性プラスチックのためのISOによる最低必要条件を満たす。
【0026】
好ましくは、重合性混合組成物は、ここで、このタイプのモールドなどのための修復材料として使用される。特に、これはまた熱重合体用の修復材料としての用途も包含する。
【0027】
さらに、本発明によれば、上記に定義された重合性混合組成物の1つから製造される、歯科補綴物が提供される。
【0028】
以下の実施例及び図面は、本発明及びその利点を例示することを意図したものである。これらは、以下の通りである:
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1.1はアウターモディファイア(例えばW35)を用いた本発明によるPMMAネットワーク構造を示す図である。図1.2はインナーモディファイア(例えば液体MA−15M)を用いた本発明によるPMMAネットワーク構造を示す図である。図1.3は架橋モディファイア(例えば液体MA−40D)を用いた本発明によるPMMAネットワーク構造を示す図である。
図2】本発明によるポリ(オルガノ)シロキサンの例を示す図である。図2.1はモノMA官能基のPDMS(例えば液体MA−15M)を示す図である。図2.2はジMA官能基のPDMS(例えば液体MA−40D)を示す図である。図2.3はポリカプロラクトン修飾PDMS(例えばW35)を示す図である。図2.4はモノAC官能基のPDPSを示す図である。図2.5はモノMA官能基のPMPSを示す図である。図2.6はジビニル官能基のPDMSを示す図である。図2.7は櫛形マルチMA官能基のPDMSを示す図である。図2.8は末端マルチアクリル化PDMSを示す図である。図2.9は中央メタクリル化PDMSを示す図である。
図3図3.1は2つのEDX測定点を用いた歯科用プラスチックのポリマー構造のSEM画像を示す図である(図3.3及び3.4参照)。図3.2は本発明によるモールド部品のSEMにおけるシリコン選択的元素マッピング(EDX)を示す図である。図3.3はビーズを取り巻くマトリックスのEDXスペクトルを示す図である。図3.4はビーズ重合体のEDXスペクトルを示す図である。
図4図4は先行技術由来(標準混合物)のポリマーモールド部品の示力図を示す図である。図4.2は本発明による(実施例4、以下参照)ポリマーモールド部品の示力図を示す図である。図4.3は本発明による(実施例2、以下参照)ポリマーモールド部品の示力図を示す図である。
図5図5.1はメタクリル酸メチル(Sigma−Aldrich)のIRスペクトルを示す図である。図5.2はポリジメチルシロキサン(Sigma−Aldrich)のIRスペクトルを示す図である。
図6図6.1は自己重合したPMMAプラスチックの構造を示す図である(拡大100×)。図6.2は自己重合したPMMAプラスチックの構造を示す図である(拡大600×)。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0030】
一般的なポリマー成分の組成物:
97gのMW134(ポリメタクリル酸メチルコポリマー、Evonik社製)及び3gの1−ベンジル−5−フェニル−バルビツール酸。
【0031】
先行技術由来のモノマー混合物(標準混合物)の組成物:
95.6gのメタクリル酸メチル、4gの1,4−ブタンジオールジメタクリレート、0.2gのジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、及び0.2gのナフテン酸銅濃縮物を合わせ、塩化物が溶解した後に、澄みきった均一溶液を形成する。
【0032】
(モノマー)成分Aの本発明による組成物の実施例1:
93.6gのメタクリル酸メチル、4gの1,4−ブタンジオールジメタクリレート、2gの液体MA−15M、0.2gのジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、及び0.2gのナフテン酸銅濃縮物を合わせ、塩化物が溶解した後に、澄みきった均一溶液を形成する。液体MA−15Mは、平均鎖長n=15と片側末端メタクリル基とを有する、直鎖ポリジメチルシロキサンの透明な薄い液体である(図2.1参照)。
【0033】
(モノマー)成分Aの本発明による組成物の実施例2:
80.6gのメタクリル酸メチル、4gの1,4−ブタンジオールジメタクリレート、15gの液体MA−15M、0.2gのジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、及び0.2gのナフテン酸銅濃縮物を合わせ、塩化物が溶解した後に、澄みきった均一溶液を形成する。
【0034】
(モノマー)成分Aの本発明による組成物の実施例3:
90.6gのメタクリル酸メチル、4gの1,4−ブタンジオールジメタクリレート、5gのW35、0.2gのジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、及び0.2gのナフテン酸銅濃縮物を合わせ、塩化物及びW35が溶解した後に、澄みきった均一溶液を形成する。W35は、平均鎖長n=40と、ポリカプロラクトンで修飾されている鎖末端(平均鎖長y=15/側)とを有する、直鎖ポリジメチルシロキサンである。それはワックス状構造を有するが、MMA及び後者のコモノマー中に良好に溶解する(図2.3参照)。
【0035】
(モノマー)成分Aの本発明による組成物の実施例4:
85.4gのメタクリル酸メチル、4gのブタンジオールジメタクリレート、10gの液体MA−40D、0.2gのジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、及び0.2gのナフテン酸銅濃縮物を合わせ、塩化物が溶解した後に、澄みきった均一溶液を形成する。液体MA−40Dは、平均鎖長n=40と、両側に、それぞれがメタクリル基をもつ末端基修飾とを有する、直鎖ポリジメチルシロキサンの透明な薄い液体である(図2.2参照)
【0036】
(モノマー)成分Aの本発明による組成物の実施例5:
91.6gのメタクリル酸メチル、4gの1,4−ブタンジオールジメタクリレート、4gのMD−M−2520Mu、0.2gのジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、0.2gのナフテン酸銅濃縮物を合わせ、塩化物が溶解した後に、澄みきった均一溶液を形成する。MD−M−2520Muは、平均鎖長n=35と、両側に多重にアクリル化された鎖末端とを有する、直鎖PDMSの透明な液体である(図2.8参照)。
【0037】
実施例6:実施例1〜4由来の組成物及び標準混合物の重合及び試験:
20gのポリマー成分Bを、14mlのモノマー成分Aと混合し、長方形のモールドに注入し、歯科用プレッシャーポット中で、2バール及び50℃において、15分間重合させる。標準混合物のシートは、ほぼ澄みきっているのに対し、改質されたシートは、透明であるが均一な乳白性があり、後者は、材料が市販の歯科用の色に調整され得る程度の強さである。
【0038】
破断エネルギー(W)及び破壊靱性(K)、並びに曲げ強さ(FS)及び曲げ弾性率(FM)に関連した物理的値は、DIN EN ISO 20795−1:2008に従って試験される(表1参照)。
【0039】
【表1】
【0040】
モノマー混合物への修飾ポリオルガノシロキサンの添加が、全破断エネルギー及び破壊靱性に関する規格によって要求される物理的値に関し著しい増大を生じること、並びに本発明による実施例2由来の混合物Aが、W≧900及びK≧1.9によって強調される、材料特性の限界値を有利に満たし、かつ実施例1による混合物1がFM及びFSをほぼ維持していることにより、これらの基準を多かれ少なかれ達成していることが示される。
【0041】
モノマー成分Aの主要部分は、>80%のメタクリル酸メチルであり、それ故ポリマー成分Bとの、又はポリマー成分Bの、また例えば加工の間に取り込まれる義歯、又は修復材料として使用される場合には既に重合されている材料との接点に対する、適合性/溶解性を保証する。使用を通じ、特に生産工程を通じて、液体若しくは半固体成分を混合することは、固体を溶解することよりも著しく容易であり、このことは通常の材料の使用との比較において、著しい改良点となる。
【0042】
液体材料を用いてモノマー成分を改質することにより、添加剤の均一な分布が保証される(図3.2参照)一方、成分B中の通常の固体分布では、このことが完璧に又は全体的に均一に起こることはない。
【0043】
モノマー成分A中のシロキサンの均一分布の故に、これらはまた、その後被加工物内で特に有利に均一分布し、一貫した物理的性質(固体では、異なる粒度及び/又は密度のせいで粉末状材料の集塊又は沈殿形成が起こり得るため保証されないもの)を提供する。
【0044】
ポリ(オルガノ)シロキサンを添加することにより、その後の被加工物は、全体としてさらに撥水性になるべくさらに調整され、それ故、吸水性及び水溶性を低減する。低い吸水性は、有利なことに被加工物上に堆積し得る細菌又はプラークを減らすことにつながり、被加工物を加工して、その後に歯科補綴物を形成する場合には特に有利である。さらに、組成物中にポリシロキサンを使用することにより、材料表面はより良好に研磨され得る。このことは有利なことに、より良好な表面品質と、デポジットに対するより良好な抵抗性とをもたらす。
【0045】
好ましくは存在する不飽和基、特に(メタ)アクリル基に基づき、ポリシロキサンはポリマーネットワーク内へ化学的に組込まれ、それ故このことは、その後の外部への拡散を有利に防止する。
【0046】
モノマー成分の限定された改質による、モールド部品について要求される物理的性質の著しい改善と、単純化された組成物の扱いやすさとの故に、新規なクラスのベース材料が、補綴物の製造用にさらに提供される。
【0047】
さらに、モノマー成分にポリシロキサンを添加することにより、重合可能な基のパーセント比が低減され、それ故重合によって引き起こされる被加工物の全体的な体積収縮が有利に低減される。
【0048】
ポリ(オルガノ)シロキサンがフェニル基によって修飾されると、その屈折率はPMMAのそれにさらに適合されるため、通常のポリ(オルガノ)シロキサンに比較して透明性が著しく増大し、それ故標準的な修飾に比較してさらなる利点が提供される(図2.4及び2.5参照)。
【0049】
シロキサン鎖に沿って他の不飽和基を付加的にもつポリ(オルガノ)シロキサンが使用され(図2.6参照)、それ故櫛状構造を有する場合、系との適合性が著しく改善され、かつ物理的値を最適化するためにより高い濃度が使用され得る。
【0050】
図5.1及び図5.2によるIRスペクトルは、通常の材料のスペクトルに比較して著しい差異、例えば、1070:Si−O−Siの非対称伸縮振動、800及び840:モノ及びジメチルシロキサン基(Infrared spectra and structure of thin polydimethylsiloxane films(ポリジメチルシロキサン薄膜の赤外スペクトルと構造)、E.R.Romaneko and B.V.Tkachuk参照)を示し、それ故モノマー成分へのポリ(オルガノ)シロキサンの添加は、IR分光法により化学的同定のために使用され得る。
【0051】
重合した材料では、ポリ(オルガノ)シロキサンがSEM−EDX画像により同定され得るが(図3.1〜図3.4参照)、これはモノマー成分中にモディファイアを用いるためであり、後者はビーズを取り巻く中間領域中に容易に検出され得る。
【0052】
本文書において特定された全ての特徴は、本発明の本質的要素としてクレームされる。
図1.1】
図1.2】
図1.3】
図2.1】
図2.2】
図2.3】
図2.4】
図2.5】
図2.6】
図2.7】
図2.8】
図2.9】
図3.1】
図3.2】
図3.3】
図3.4】
図4.1】
図4.2】
図4.3】
図5.1】
図5.2】
図6.1】
図6.2】