(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076476
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】電力網の電気伝導体を介してデータを伝送するための方法と装置
(51)【国際特許分類】
H04B 3/54 20060101AFI20170130BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
H04B3/54
H02J13/00 B
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-520922(P2015-520922)
(86)(22)【出願日】2013年7月5日
(65)【公表番号】特表2015-530773(P2015-530773A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】EP2013064212
(87)【国際公開番号】WO2014009260
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2015年2月9日
(31)【優先権主張番号】102012211916.7
(32)【優先日】2012年7月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】イェアク ヒュトナー
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン クアツ
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハート メッツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ツィロフ
【審査官】
後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−135379(JP,A)
【文献】
特開2012−110097(JP,A)
【文献】
特開2011−172259(JP,A)
【文献】
特表2005−516523(JP,A)
【文献】
特開2008−283419(JP,A)
【文献】
特開2012−114985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/54−3/58
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの第1のノード(302)と、一つの第2のノード(303)と、少なくとも一つの別の第2のノードとがそれぞれ一つのインピーダンストランスペアレントなカップリング装置(305)を用いたカップリングによってカップリングされている、電力網の電気伝導体(307)を介してデータを伝送するための方法において、
前記第1のノード(302)によって、前記電気伝導体(307)を介してキャリア信号を送信するステップ(101)と、
前記第2のノード(303)にエネルギを供給するために、前記第2のノード(303)において、前記送信されたキャリア信号を整流するステップ(102)と、
前記第1のノード(302)に応答データを伝送するために、前記第2のノード(303)によって、負荷変調を用いて、前記送信されたキャリア信号を変調するステップ(103)と、
別の応答データを前記第1のノード(302)に伝送するために、別の第2のノードによって、別の負荷変調を用いて、前記送信されたキャリア信号を変調するステップ(103)と、
を備えており、
前記電気伝導体(307)を高圧線又は超高圧線として構成する、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記応答データを受信するために、前記第1のノード(302)によって、前記負荷変調を用いて変調された前記キャリア信号を復調するステップ(104)を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のノード(302)と前記第2のノード(303)との間の距離を前記応答データの受信に依存して求める、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記別の応答データを受信するために、前記第1のノード(302)によって、前記別の負荷変調を用いて変調されたキャリア信号を復調するステップ(104)を備えている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のノード(303)と前記別の第2のノードとの間の距離を、前記応答データ及び前記別の応答データの受信に依存して求める、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記負荷変調及び前記別の負荷変調を、種々の負荷インピーダンス間で切り替えを行うことによって実施する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のノード(302)によって、制御データを伝送するための変調を用いて、前記キャリア信号を変調するステップを備えている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記制御データを受信するために、前記第2のノード(303)によって、前記制御データを伝送するための変調を用いて変調された前記キャリア信号を復調するステップを備えている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記各インピーダンストランスペアレントなカップリング装置(305)による前記電気伝導体(307)とのカップリングをポテンシャルフリーで行う、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
妨害信号を抑制するために、前記キャリア信号を前記各インピーダンストランスペアレントなカップリング装置(305)によってフィルタリングする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記応答データはセンサ情報を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
電力網の電気伝導体(307)を介してデータを伝送するための装置(301)において、
前記装置は、第1のノード(302)と、第2のノード(303)と、少なくとも一つの別の第2のノードとを含んでおり、
前記第1のノード(302)及び前記第2のノード(303)及び前記別の第2のノードは、それぞれ一つのインピーダンストランスペアレントなカップリング装置(305)を用いたカップリングによって、前記電気伝導体(307)にカップリングされており、
前記第1のノード(302)は、前記電気伝導体(307)を介してキャリア信号を送信する送信手段を有しており、
前記第2のノード(303)は、該第2のノード(303)にエネルギを供給するために、前記送信されたキャリア信号を整流する整流手段を有しており、
前記第2のノード(303)は、応答データを伝送するために、前記送信されたキャリア信号を、負荷変調を用いて変調する変調手段を有しており、
前記別の第2のノードは、該別の第2のノードにエネルギを供給するために、前記送信されたキャリア信号を整流する整流手段を有しており、
前記別の第2のノードは、別の応答データを伝送するために、前記送信されたキャリア信号を、別の負荷変調を用いて変調する変調手段を有しており、
前記電気伝導体(307)が高圧線又は超高圧線として構成されている、
ことを特徴とする装置(301)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力網の電気伝導体を介してデータを伝送するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力線通信(PLC:Powerline Communication)においては、電気伝導体を介してデータの伝送が行われる。この電力線通信においては、電気伝導体、例えば建物内及びアクセスエリアにおける電線がデータ伝送に利用されるのと同時、エネルギ伝送にも利用される。
【0003】
PLCが使用されるシナリオの一つとして、各世帯を2桁の範囲のメガビットのデータ転送レートでインターネット及びホームネットワークに接続することが挙げられるが、しかしながらまた、PLCは種々の分野、例えばインテリジェンス電力網(スマートグリッド)における測定、制御及び調整、又は配電所におけるセンサにも使用される。
【0004】
測定、制御及び調整の用途に関しては、一般的には、データレートが低くても問題は生じない。しかしながら分野によっては、その種の用途の信頼性及びロバスト性に対して課される特別な要求が重要になる可能性がある。システム電圧の印加が停止したときであってもセンサ機能を変わらずに保証しなければならない場合、信頼性及びロバスト性は、例えば、エネルギ供給にとって決定的に重要な判定基準である。更には多くの分野において、例えばコストを削減するために、メンテナンスコストを低く抑えることが重要になっている。
【0005】
また電力線通信においては、低いデータレート及び平均的なデータレートでのデータ伝送を実現する電力線、特に低圧線及び中圧線用の送電線において通信を行うための一連の競合的な規格が策定されている。例として、拡散周波数シフトキーイング(S−FSK:Spread Frequency Shift Keying)、差分符号シフトキーイング(DCSK:Differential Code Shift Keying)、G3、PRIME及びG.hnemが挙げられる。それらの規格では、例えばFSK、拡散スペクトル又は直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)のような、長波長領域での種々の複雑な変調方式が用いられる。欧州においては、それらの規格の多くが、148.5kHz以下のいわゆるCENELEC帯域を使用して128kbit/sまでのデータレートを達成しているが、しかしながら殆どの場合、使用されるデータレートは10kbit未満の範囲である。対応するシステムは物理レベルでは対称的である。つまり、それらのシステムは通常の場合、通信エンドポイント毎に、一つの送信器及び一つの受信器を一つのユニットに有しており、従ってトランシーバを有している。トランシーバは、自身が接続されているチャネルを介して相互に通信を行う。従来技術に対応するその種のシステムの所要電力は一般的に数10ミリワットである。低圧線においては、少なくともシステム電圧が印加されている間は、システム電圧を直接的に供給することができる。これに対して信号が線路のシールドにおいて伝送されることが多い中圧線では、例えばバッテリのような外部電源から給電を行うことが必要であるが、しかしながらそのような外部電源の寿命は限定的であり、従って、そのような外部電源の使用はメンテナンスコストの増加を意味することになる。
【0006】
更に、前述の規格に対応するシステムは、例えば相応のチップセットに実装する必要がある、技術的な複雑性の高い装置を必要とする。その種のチップセットは複雑な構成並びに固有の給電部を必要とするので、その種の解決手段は少なくとも単純なセンサ用途にとっては注目には値しない。
Richard Mcwilliamは「Electronic Identification Systems for Asset Management」において、電力線を介した直接的な負荷変調の実現に関する概要を開示している。
US 2008/303344 A1には電力線通信システムが開示されている。この電力線通信システムにおいては、複数の装置が複数の電力線に接続される。マスタ装置はそれらの電力線の内の一つに接続される。
【0007】
本発明の課題は、電力網の電気伝導体を介してデータを伝送するための、改良された方法及び改良された装置を提供することである。
【0008】
従って、電力網の電気伝導体を介してデータを伝送するための方法が提案される。電気伝導体には少なくとも一つの第1のノード及び少なくとも一つの第2のノードが、それぞれ一つのインピーダンストランスペアレントなカップリング装置を用いたカップリングによってカップリングされる。本方法は、第1のノードによって電気伝導体を介してキャリア信号を送信するステップと、第2のノードにエネルギを給するために、第2のノードにおいて、送信されたキャリア信号を整流するステップと、第1のノードに応答データを伝送するために、第2のノードによって、負荷変調を用いて、送信されたキャリア信号を変調するステップとを備えている。
【0009】
電流網を、電気伝導体と、第1のノード及び第2のノードの接続線における直列コンポーネントと、中央に設けられた構成素子としてネットワークアクセスインピーダンスをモデリングする並列コンポーネントとから成る、簡略化されたモデルによって表すことができる。
【0010】
カップリングはそれぞれ一つのカプラ又はカップリング装置によって行われる。動作周波数においては、例えば3kHzから148.5kHzまでのいわゆるCENELEC帯域においては、その種のカプラはインピーダンストランスペアレントでなければならない。つまり、一方の側、例えば第2のノードの側における1:Mの比でのインピーダンスの変化は、他方の側、例えば第1のノードの側におけるN:1の比でのインピーダンスの変化と同じである必要がある。これは例えば、直列共振回路を使用することによって実現することができる。
【0011】
その種のカプラを使用することによって、システム電圧から減結合されることによって、第1のノード及び第2のノードが保護される。更に、カプラはデータを伝送するための負荷変調を実現する。一般的な低圧網及び中圧網でのインピーダンス比に基づきインピーダンス変換が必要になるが、その種のカプラによってインピーダンス変換を実施することができる。
【0012】
第1のノードは特に読み取り装置として構成されている。第2のノードは例えばトランスポンダとして構成されている。その種のトランスポンダは、応答信号を読み取り装置に伝送するために、キャリア信号を例えば振幅変調又は位相変調によって変調するユニットを有している。トランスポンダは、応答データの他に、一義的な識別子(ID)をコーディングし、変調されたキャリア信号にのせることができる。更にトランスポンダは、エネルギを得るために、第1のノードから送信されたキャリア信号を整流する回路を含んでいるので、トランスポンダは外部からのエネルギ供給を必要としない。更に、トランスポンダは一義的なID、また必要に応じて別のデータを記憶するためのメモリと、変調シーケンスを生成するための演算装置を有することができる。トランスポンダの使用形態に応じて、その種の第2のノード又はトランスポンダは別のコンポーネント、例えば測定値を検出するためのセンサを含むこともできる。
【0013】
負荷変調とは、読み取り装置から送信されたキャリア信号の振幅又は位相に合わせた、トランスポンダにおける負荷変化の反応と解される。トランスポンダによって負荷変化が開始される。読み取り装置は、負荷変化にコーディングされた応答データを識別して読み出すことができる。
【0014】
本方法は、電気伝導体を介して、例えばトランスポンダのような余り複雑ではないノードへの、またそのようなノードからのデータの伝送を実現する。特に、その種のノード又はトランスポンダは固有のエネルギ源を必要とせず、従って、例えばシステム電圧が供給されない場合であっても非常に信頼性が高く、またロバストである。更に、その種のノード又はトランスポンダは、構造技術的にも余り複雑でないことから、実際のところはメンテナンスフリーで動作することができる。
【0015】
更なる利点は、その種のノード又はトランスポンダのために、従来の無線識別システム、例えば廉価で大量に提供することができるRFIDチップを使用することができる点にある。本方法は特に、メンテナンスが少なくて済み、且つコストの掛からないセンサ用途に適している。
【0016】
各送信器が能動的にエネルギを伝送チャネルに供給する古典的な通信区間は、本発明により提案される方法において、負荷変調を使用することによって回避される。このことは、トランスポンダ側における負荷変化を劣化させることなく読み取り装置に伝送する伝送媒体とのカップリングの特別な設計によって実現される。これによって、複雑性が非常に低く、且つ固有のエネルギ供給部を必要とせず、従って事実上メンテナンスフリーで動作させることができる、エンドポイントとの通信が実現される。
【0017】
本発明により提案される方法の別の利点は、トランスポンダをポテンシャルフリーで例えば誘導型カプラを介してカップリングさせることができる点にある。トランスポンダへの付加的なエネルギ供給は必要ない。
【0018】
本発明により提案される方法の付加的な利点は、一般的な無線識別システムのモジュールを利用できる点にある。従って、特に、センサ側では非常に廉価な構成素子を使用することができる。
【0019】
複数の実施の形態において、本方法は更に、応答データを受信するために、負荷変調を用いて変調されたキャリア信号を第1のノードによって復調するステップを備えている。
【0020】
第1のノードを、例えばトランスポンダの形態のセンサ又はスイッチから伝送される応答データの読み取り装置とみなすこともできる。読み取り装置はキャリア信号を例えば長波長領域の正弦波信号として形成し、トランスポンダにおける負荷変化によって行われた振幅変調又は位相変調を復調する。
【0021】
これによって、例えばセンサ又はスイッチとして構成されているノード又はトランスポンダから電気伝導体を介して、第1のノードに応答データを伝送することができる。
【0022】
本方法の別の実施の形態においては、第1のノードと第2のノードとの間の距離が応答データの受信に依存して求められる。好適には、この距離は、伝播時間測定によって、即ち、信号伝播時間を測定することによって求められる。
【0023】
その際に、例えば、キャリア信号の送信が行われてから、第2のノードによって変調されたキャリア信号が第1のノードに到来するまでに要した、キャリア信号の伝播時間が測定される。電気伝導体の物理的な特性を考慮して、そのようにして、電力網における簡単且つ廉価な距離測定を遠隔地から実現することができる。
【0024】
別の実施の形態において、本方法は更に、別の応答データを第1のノードに伝送するために、別の第2のノードによって、別の負荷変調を用いて、送信されたキャリア信号を変調するステップを備えている。
【0025】
これによって、例えば電力網におけるセンサ又はスイッチとして、任意の数のノード又はトランスポンドを使用することができる。各センサ又は各スイッチは、それらのセンサ又はスイッチを特徴付ける各負荷変調によって一義的に識別することができる。
【0026】
別の実施の形態において、本方法は更に、別の応答データを受信するために、第1のノードによって、別の負荷変調を用いて変調されたキャリア信号を復調するステップを備えている。
【0027】
そのようにして、種々のノード又はトランスポンダ、例えば電力網におけるセンサ又はスイッチの応答データを第1のノードによって受信して使用することができる。
【0028】
本方法の別の実施の形態においては、第2のノードと別の第2のノードとの間の距離が、応答データ及び別の応答データの受信に依存して求められる。好適には、この距離は、伝播時間測定によって、即ち、信号伝播時間を測定することによって求められる。
【0029】
これによって、電気伝導体にカップリングされている複数のノード又はトランスポンダを使用して、電力網における簡単且つ廉価な距離測定を遠隔地から実現することができる。
【0030】
本方法の別の実施の形態においては、負荷変調及び別の負荷変調が、種々の負荷インピーダンス間で切り替えを行うことによって実施される。
【0031】
第2のノード又はトランスポンダは、種々の負荷インピーダンス間で切り替えを行い、それによって、第1のノードの入力端における相応のインピーダンス変化が惹起される。
【0032】
別の実施の形態において、本方法は更に、第1のノードによって制御データを伝送するための変調を用いて、キャリア信号を変調するステップを備えている。
【0033】
これによって、第1のノード又は読み取り装置は、必要に応じて、制御データをスイッチ又はトランスポンダに伝送することができる。制御データは例えば、スイッチに対する切り替え命令を含むことができるので、例えば、電気伝導体に接続されている機器のオン・オフ又は時間制御を遠隔地から実現することができる。
【0034】
別の実施の形態において、本方法は更に、制御データを受信するために、第2のノードによって、制御データを伝送するための変調を用いて変調されたキャリア信号を復調するステップを備えている。
【0035】
第2のノード又はトランスポンダは、このために、第1のノードの制御データを復調及び/又はデコーディングするための回路を有することができる。これによって、電力網におけるトランスポンダ又はスイッチは、第1のノード又は読み取り装置の制御データを受信し、必要に応じて使用することができる。
【0036】
本方法の別の実施の形態においては、各インピーダンストランスペアレントなカップリング装置による電気伝導体とのカップリングがポテンシャルフリーで行われる。
【0037】
これは例えば誘導型カプラを使用することによって行われる。その種のカプラは、第1のノード又は読み取り装置乃至第2のノード又はトランスポンダを、電力網における交流電圧から絶縁するために使用される。
【0038】
本方法の別の実施の形態においては、妨害信号を抑制するために、キャリア信号が各インピーダンストランスペアレントなカップリング装置によってフィルタリングされる。
【0039】
従って、キャリア信号のフィルタリングは、伝送に関連する周波数帯域において、妨害的な信号成分に関して行われる。伝送媒体には多くの妨害信号が存在している可能性があり、それらの妨害信号の抑制は本方法を適切に機能させるために必要であるので、そのようなフィルタリングは潜在的に必要とされる。
【0040】
本方法の別の実施の形態においては、電気伝導体が高圧線又は超高圧線として構成される。
【0041】
これによって、電気伝導体を介するデータの伝送を、高圧線又は超高圧線を介しても実現することができる。
【0042】
別の実施の形態においては、応答データがセンサ情報を含んでいる。
【0043】
センサ情報は例えば環境条件、例えば温度、湿度又は気圧を表すことができる。更には、センサ情報は伝導体パラメータ、例えば電流強度、インピーダンス又は距離に関する記述を表すことができる。キャリア信号を変調させることによって、センサデータをキャリア信号にのせることができる。これによって例えば、廉価でメンテナンスが少なくて済む、センサの多岐にわたる種々の使用を遠隔地から実現することができる。
【0044】
更に、電力網の電気伝導体を介してデータを伝送するための装置が提案される。この装置は、第1のノードと、少なくとも一つの第2のノードとを含んでおり、第1のノード及び第2のノードは、それぞれ一つのインピーダンストランスペアレントなカップリング装置を用いたカップリングによって、電気伝導体にカップリングされており、第1のノードは電気伝導体を介してキャリア信号を送信する送信手段を有しており、第2のノードは、第2のノードにエネルギを供給するために、送信されたキャリア信号を整流する整流手段を含んでおり、更に第2のノードは、応答データを伝送するために、送信されたキャリア信号を、負荷変調を用いて変調する変調手段を有している。
【0045】
各手段、つまり送信手段、整流手段及び変調手段をハードウェア技術的及び/又はソフトウェア技術的に実現することができる。ハードウェア技術により実現する場合には、各手段を装置として、又は装置の一部として、例えばコンピュータとして又はマイクロプロセッサとして構成することができる。ソフトウェア技術により実現する場合には、各手段をコンピュータプログラム製品として、関数として、ルーチンとして、プログラムコードの一部として、又は実行可能なオブジェクトとして構成することができる。
【0046】
本発明を実施するための別の考えられる実施の形態は、複数の実施例に関して上記において説明した、又は下記において説明する方法ステップ、本方法又は本装置の特徴又は実施の形態の明示していない組み合わせも含む。その場合、当業者は、本発明の各基本形態を改善又は補完するものとして、個々の態様を追加又は変更することになる。
【0047】
本方法の上述の特性、特徴及び利点、並びにそれらがどのように達成されるかは、図面と関連させて詳細に説明する複数の実施例の以下の説明との関係において更に明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】電力網の電気伝導体を介してデータを伝送するための方法の一つの実施例の概略的なフローチャートを示す。
【
図2】電力網の電気伝導体を介してデータを伝送するための装置の概略的なブロック図を示す。
【
図3】電力網の電気伝導体を介してデータを伝送するための装置の実施例の概略的なブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図中、別記の必要がない限り、同一の構成要素又は機能が等しい構成要素には同一の参照番号を付している。
【0050】
図1には、電力網の電気伝導体307を介してデータを伝送するための方法の実施例の概略的なフローチャートが示されている。
図2には、本方法を実施するための相応の装置301及び電力網が示されている。
【0051】
第1のステップにおいては、第1のノード302による、電気伝導体307を介するキャリア信号の送信101が行われる。
【0052】
第2のステップにおいては、第2のノード303にエネルギを供給するために、第2のノード303において、送信されたキャリア信号の整流102が行われる。
【0053】
第3のステップにおいては、第1のノード302に応答データを伝送するために、第2のノード303による、負荷変調を用いた、送信されたキャリア信号の変調103が行われる。
【0054】
第4のステップにおいては、応答データを受信するために、第1のノード302による、負荷変調を用いて変調されたキャリア信号の復調104が行われる。
【0055】
第1のノード302は読み取り装置とも称される。択一的又は付加的に、第2のノード303の応答データを電力網における別の読み取り装置302によっても復調することができる。
【0056】
第2のノード303の応答データは例えば、読み取り装置302と第2のノード303との間の距離を求めるために使用される。
【0057】
第2のノード303を例えばトランスポンダ、スイッチ又はセンサとして構成することができる。複数の第2のノード303が、読み取り装置302から送信されたキャリア信号を変調することも可能である。従って読み取り装置302は例えば、別の第2のノード303からの別の応答データも復調することができる。各トランスポンダ303は、自身を特徴づける負荷変調を使用する。各トランスポンダ303を一義的に識別するID番号をコーディングし、変調されたキャリア信号にのせることができる。
【0058】
二つの第2のノード303それぞれから応答データが読み取り装置302に伝送される場合、読み取り装置302は二つの第2のノード303間の距離を求めることができる。
【0059】
制御データを第2のノード303に伝送するために、別のステップにおいて、読み取り装置302によってキャリア信号を変調することができる。択一的に、制御データを電力網内の複数の第2のノード303又は全ての第2のノード303に向けて送信することも可能である。一つ又は複数の第2のノード303は、更なるステップにおいて、制御データを受信するために、その制御データを伝送するために変調されたキャリア信号を復調する。
【0060】
読み取り装置302からトランスポンダ303までの通信、例えば、読み取り装置302からトランスポンダ303までの制御データの伝送は、キャリア信号の変調によって行われ、またトランスポンダ303から読み取り装置302までの戻り経路の通信、例えばトランスポンダ303から読み取り装置302までの応答データの伝送は負荷変調によって行われる。その際に、あらゆる変調方式、例えば振幅変調又は位相変調を使用することができる。
【0061】
図2には、電力網の電気伝導体307を介してデータを伝送するための装置301の概略的なブロック図が示されている。
【0062】
電力網は、第1のノード又は読み取り装置302及び第2のノード又はトランスポンダ303の接続線における直列コンポーネントR
L/T,L
L/Tを有している電気伝導体307と、中央に設けられた構成素子としてネットワークアクセスインピーダンスをモデリングする並列コンポーネントZ
gridとを含んでいる。読み取り装置302はキャリア信号を変調及び復調するためのユニット304を有している。トランスポンダ303は例えば、キャリア信号を変調するためのスイッチ306を有している。更に、装置301は二つのカップリング装置又はカプラ305を含んでおり、それらによって、例えば一方では読み取り装置302におけるインピーダンスがN:1の比で変換されて電気伝導体307のインピーダンスレベルに低下され、また例えば、他方では負荷インピーダンスが1:Mの比で変換されてトランスポンダ303のインピーダンスレベルに上昇される。
【0063】
図3には、電力網の電気伝導体307を介してデータを伝送するための装置301の一つの実施例の概略的なブロック図が示されている。
【0064】
ここでは、電気伝導体307が中圧線である。この
図3に示されている装置は、電力網の監視、特にスイッチ位置検出に使用される。中圧網におけるスイッチ位置を監視するために、トランスポンダ又はセンサ303は、読み取り装置302から見てスイッチ308の後段に設けられる。読み取り装置302及びトランスポンダ303はカップリング装置305を介して、電気伝導体307にカップリングされる。読み取り装置302は、スイッチ308が閉じられているときにトランスポンダ303にアクセス可能であるか否か、又はスイッチが開かれているときにトランスポンダ303にアクセス不可能であるか否かを識別することができる。
【0065】
本発明により提案される方法及び装置の別の考えられる用途はスマートマルチタップにある。その種のマルチタップには読み取り装置302が設けられており、またそれに接続できる全ての機器はトランスポンダ303を有している。ある機器がマルチタップに接続されると、読み取り装置302はその機器のトランスポンダ303を読み出す。機器の識別は、一義的なトランスポンダID番号を介して行われる。これによって、マルチタップは、どの負荷が接続されているかを求めることができ、また例えば一つ又は複数の機器を遮断するための制御信号を伝送することによって、例えば脅威となる過負荷に反応することができる。
【0066】
更に、本発明により提案される方法及び装置を、スマートホームの用途において、例えば特定の大きい負荷を時間制御するために使用し、それによって、それらの負荷をネットワーク負荷が高い時点には駆動されないようにすることもできる。時間制御は例えば、機器をオン・オフするために、読み取り装置302が制御データを伝送することによって行われる。
【0067】
本発明により提案される方法及び装置の別の考えられる用途はホームエレクトロニクスの制御である。家庭内のコンポーネントの制御、例えばランプ調光器、空調装置又は暖房の制御は、同一の電力供給網におけるあらゆるアクセス可能な個所において行われる。読み取り装置302はその場合、例えば空調装置に組み込まれている。マルチタップ又は光スイッチにおいて複数のスイッチ入力部を備えているトランスポンダ303を介して制御が行われる。
【0068】
本発明を有利な実施例に基づき詳細に記述及び説明したが、本発明は上記において開示した実施例に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の権利範囲から逸脱することなく、他のヴァリエーションに想到することができる。