【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、レーザー光線を用いて工作物を加工するための装置であって、前記工作物を第1の加工位置へ送るための送り機構と、前記第1の加工位置に送られた前記工作物を加工するための少なくとも1つの加工ヘッドを有する加工機構とを含んでいる前記装置においては、前記送り機構が把持機構を備えた把持ロボットであること、前記加工ヘッドが少なくとも3つの自由度のまわりに可動であること、前記送り機構の把持領域に、保持部を備えた供給機構が配置され、前記保持部の構成およびサイズは、該保持部で保持される少なくとも1つの工作物が前記送り機構の所定の空間的配向と位置とにより供給されて前記保持部から取り出されるように、選定されていること、前記送り機構によって送られた1つの工作物を受容するための少なくとも1つの締め付け固定機構が配置され、各締め付け固定機構によってそれぞれ1つの加工位置が定義されていること、前記加工ヘッドが前記1つの工作物を加工するための各加工位置へ送り可能であることによって解決される。
【0008】
本明細書では、工作物とは、一般的にいって、加工材、たとえば薄板、管または異形材のような原材料、半製品、完成製品である。
【0009】
簡単な実施態様では、供給機構は複数の保持部を配置することによって形成されている。これらの保持部は、1つの工作物をただ1つの空間的配向で保持部に挿入可能であるように成形され、配置されている。これら保持部の位置は既知であるので、保持部に挿入されている工作物の空間的配向および供給位置も一義的に特定されている。
【0010】
供給機構は、複数の工作物を同時に保持できるような数量の保持部を有していてよい。また、異なる種類の工作物を保持できるように保持部を構成することも可能である。たとえば、第1の工作物としての半製品を加工することによって1つまたは複数の第2の工作物を発生させ、次にこの第2の工作物を同様に本発明による装置によって加工するような場合には、後者の実施態様が有利である。
【0011】
他の実施態様では、複数の加工ステップによって互いから生じてこないような工作物を保持できるように保持部が構成されていてもよい。
【0012】
加工ヘッドは、好ましくは、加工機構のレーザー源と結合し、ビームガイド機構およびビーム整形機構を有している。加工ヘッドはモータおよび制御機構を介して移動制御可能である。本発明による装置の他の実施態様では、6つまでの自由度のまわりに可動であり、すなわちデカルト座標系のX軸、Y軸、Z軸に沿って可動であり、且つ前記軸のまわりに回転可能であってよい。すなわち加工ヘッドは回転可能且つ揺動可能であってよい。
【0013】
送り機構は、特に把持手段は、好ましくは6つの自由度で可動制御可能である。
【0014】
締め付け固定機構は、工作物の保持に適したものであればどのような機構であってもよい。たとえば締め付け固定機構はチャック、円錐状受容部、または摩擦でおよび/または形状工作的に工作物を保持するその他の機構であってよい。本発明による装置の他の実施態様では、複数の締め付け固定機構が配置されていてよい。有利な実施態様では、2つの締め付け固定機構が設けられている。1つまたは複数の締め付け固定機構が回転可能であってよく、すなわち締め付け固定される工作物を締め付け固定機構の少なくとも1つの軸線のまわりに回転可能にしてよい。
【0015】
本明細書での加工位置とは、工作物の加工を加工ヘッドによって行うことができるような領域である。たとえば、締め付け固定機構で保持されている工作物を工作物の加工線に沿って行うことができる。
【0016】
第1の加工位置は、好ましくは、把持手段の所定の空間的配向および位置によって与えられている。たとえば、加工ヘッドによって加工線に沿って加工される(たとえば切断、穴開け、穿孔、ならい削りされる)工作物が把持手段によって保持されていてよい。これらの加工線は把持手段からたとえば20cmないし100cmの間隔をもっていてよいが、把持手段に対する工作物の空間的配向および位置が既知であるので、どの加工線の空間的配向および位置も正確に既知である。
【0017】
それ故本発明による装置の利点は、たとえば送りを行なっている間または加工位置での工作物の空間的配向を検知、コントロール、場合によっては修正する測定機構を省略できる点にある。
【0018】
本発明による装置により、ただ1つの加工ヘッドに対し少なくとも2つの異なる加工位置が提供されているので有利である。これにより、加工ヘッドが1つの加工位置へ送られ、他方他の加工位置には送り機構によって工作物が送られることが可能になる。
【0019】
本発明による装置の好ましい実施態様では、加工した工作物を搬出させる搬送機構が設けられていてよい。工作物は装置外の次の加工に供給することができる。しかし、工作物を本発明による装置によるさらなる加工に再び提供してもよい。
【0020】
本発明による他の実施態様では、複数の送り機構、加工機構、または締め付け固定機構、およびこれらの組み合わせが設けられていてよい。これらは互いにパラレルに作動されていてよい。また、これらの機構は、たとえば1つの送り機構によって複数の締め付け固定機構にまたは複数の締め付け固定機構に交互に工作物を送り可能であるように、或いは、1つの加工ヘッドを複数の加工位置に交互に送り可能であるように、統合制御されていてもよい。これによって本発明による装置の適用融通性が向上する。
【0021】
好ましくは、少なくとも送り機構と加工機構とを制御する制御機構が設けられている。本発明による方法の実施の比較的長い時間にわたってもすべての運動とすべての方法ステップとの一定の高い精度を保証するため、送り機構と加工機構との作動状態を互いに調整するのが好ましい。
【0022】
本発明による装置は、レーザー光線を用いて非回転対称な工作物を加工するために使用することができる。
【0023】
前記課題は、レーザー光線を用いて非回転対称な工作物を加工するための方法によって解決される。この方法は、
a)所定の空間的配向と供給位置とを備えた第1の工作物として半製品を供給するステップと、
b)前記第1の工作物を送り機構の把持手段を用いて把持するステップと、
c)前記第1の工作物を前記把持手段を用いて第1の加工位置へ送り、その際に前記第1の工作物を空間内で自由に保持するステップと、
d)加工機構の加工ヘッドを前記第1の加工位置へ送って前記第1の工作物を加工し、その際に前記ステップc)と前記ステップd)とを複数回実施しうるステップと、
e)加工した前記第1の工作物を解放するステップと、
f)少なくとも1つの第2の工作物を所定の空間的配向と供給位置とで供給するステップと、
g)前記第2の工作物を把持して該第2の工作物を前記把持手段を用いて他の加工位置へ送り、前記第2の工作物を締め付け固定機構を用いて前記他の加工位置で保持するステップと、
h)前記加工ヘッドを前記他の加工位置へ送って、前記第2の工作物を加工するステップと、
i)加工した前記第2の工作物を解放するステップと、
を含んでいる。
【0024】
ステップa)ないしi)は必ずしも上記の順番で実施する必要はない。個々のステップまたはいくつかのステップは、本発明による方法の正確な技術的工程に反しない限りは、1回または複数回反復してもよい。本発明による方法のステップを同時に実施してもよく、これによって方法の実施のために使用する装置のサイクルタイムの減少および/または稼働率の改善を達成できる。
【0025】
好ましくは、工作物と加工ヘッドとは0.1mm以下の公差で加工位置へ送られる。
【0026】
本発明による方法は、好ましくは、ステップa)ないしc)と同時にステップh)とi)も実施されるように構成されている。これによって、他の加工位置にある第2の工作物を加工し、解放し、他方把持ロボットにより第1の工作物を第1の加工位置へ送ることが達成されるので有利である。このような方法制御により、加工機構の非生産停止時間が短縮される。
【0027】
供給機構内に複数の第1の工作物が準備されている場合、或いは、ステップc)ないしe)のうちの1つのステップを行なっている間にすでにステップa)が行なわれる場合には、ステップb)とステップc)はステップh)およびステップi)と同時に実施してよい。
【0028】
さらに、少なくとも2つの他の加工位置が設けられ、把持機構の運動過程と加工機構の運動過程とが重らなければ、ステップg)とステップh)とを同時に実施することが可能である。この場合、第2の工作物を他の1つの加工位置へ送り、他方他の第2の工作物を他の更なる加工位置で加工ヘッドによって加工することが可能である。
【0029】
さらに、締め付け固定機構を予め備えつけるため、ステップa)ないしステップi)を反復して方法を実施する前に、ステップg)を一度実施するのが好ましい。