特許第6076483号(P6076483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6076483レーザー光線を用いて非回転対称な工作物を加工する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076483
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】レーザー光線を用いて非回転対称な工作物を加工する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/10 20060101AFI20170130BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20170130BHJP
   B23K 37/04 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   B23K26/10
   B23K26/08 H
   B23K37/04 J
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-533480(P2015-533480)
(86)(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公表番号】特表2015-530257(P2015-530257A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】EP2013002883
(87)【国際公開番号】WO2014048567
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年9月23日
(31)【優先権主張番号】102012109245.1
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502122347
【氏名又は名称】イェーノプティク アウトマティジールングステヒニーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】フォークト シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】デーリング トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ガイペル ピエレ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒェル・トリラー ローベルト
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−082984(JP,A)
【文献】 特開平11−077321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
B23K 37/00−37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光線を用いて工作物(5,6)を加工するための装置であって、前記工作物(5,6)を第1の加工位置(8.1)へ送るための送り機構(3)と、前記第1の加工位置(8.1)に送られた前記工作物(5,6)を加工するための少なくとも1つの加工ヘッド(2.1)を有する加工機構(2)とを含んでいる前記装置において、
前記送り機構(3)が把持機構(3.2)を備えた把持ロボットであること、
前記加工ヘッド(2.1)が少なくとも3つの自由度のまわりに可動であること、
前記送り機構(3)の把持領域に、保持部(4.1)を備えた供給機構(4)が配置され、前記保持部(4.1)の構成およびサイズは、該保持部(4.1)で保持される少なくとも1つの工作物(5,6)が前記送り機構(3)の所定の空間的配向と位置とにより供給されて前記保持部(4.1)から取り出されるように、選定されていること、
前記送り機構(3)によって送られた1つの工作物(5,6)を受容するための少なくとも1つの締め付け固定機構(9,10)が配置され、各締め付け固定機構(9,10)によってそれぞれ1つの加工位置が定義されていること、
前記加工ヘッド(2.1)が前記1つの工作物(5,6)を加工するための各加工位置へ送り可能であること、
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1の加工位置が、前記把持手段(3.2)の所定の空間的配向と位置とによって与えられていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置を、レーザー光線を用いて非回転対称な工作物(5,6)を加工するために使用する方法。
【請求項4】
レーザー光線を用いて3次元の非回転対称な工作物(5,6)を加工するための方法において、
a)所定の空間的配向と供給位置とを備えた第1の工作物(5)として半製品を供給するステップと、
b)前記第1の工作物(5)を送り機構(3)の把持手段(3.2)を用いて把持するステップと、
c)前記第1の工作物(5)を前記把持手段(3.2)を用いて第1の加工位置(8.1)へ送り、その際に前記第1の工作物(5)を空間内で自由に保持するステップと、
d)加工機構(2)の加工ヘッド(2.1)を前記第1の加工位置(8.1)へ送って前記第1の工作物(5)を加工し、その際に前記ステップc)と前記ステップd)とを複数回実施しうるステップと、
e)加工した前記第1の工作物(5)を解放するステップと、
f)少なくとも1つの第2の工作物(6)を所定の空間的配向と供給位置とで供給するステップと、
g)前記第2の工作物(6)を把持して該第2の工作物(6)を前記把持手段(3.2)を用いて他の加工位置(8.2,8.3)へ送り、前記第2の工作物(6)を締め付け固定機構(9,10)を用いて前記他の加工位置(8.2,8.3)で保持するステップと、
h)前記加工ヘッド(2.1)を前記他の加工位置(8.2,8.3)へ送って、前記第2の工作物(6)を加工するステップと、
i)加工した前記第2の工作物(6)を解放するステップと、
を含んでいる方法。
【請求項5】
前記ステップa)ないしc)と同時に前記ステップh)と前記ステップi)とを実施することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光線を用いて非回転対称な工作物を加工できて、非回転対称な工作物の加工の際の特別な技術的要請を考慮した方法に関するものである。さらに、本発明はレーザー光線を用いて非回転対称な工作物を加工する装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
技術水準から、レーザー光線を用いて工作物を加工するための解決手段は知られているが、ここではそのうち特許文献1が取り上げているものだけを例示する。特許文献1には、レーザー光線を用いて管を加工する際に使用できる管用送り機構が記載されている。複数の搬送機構を用いて回転対称な管が保持され、その長手軸線に沿って搬送される。管の長手軸線まわりでの該管の付加的な回転により、レーザー加工ヘッドを用いて管を種々の断面処理で加工することが可能になる。
【0003】
方法制御およびレーザー加工装置の構成に対する特別な要請は、非回転対称な工作物を加工する場合に生じる。所定の加工線に沿った断面を処理できるようにするためには、工作物の位置以外に工作物の正確な空間的配向も既知でなければならない。たとえば回転対称な工作物を加工するには、工作物の長手中心軸線が特定のX−Y面内にあるという認識があれば十分であるが、非回転対称な工作物の場合には、さらにX−Y面内での工作物の配向(たとえば工作物の前端または後端の配向)と、Z方向における工作物の配向とが既知でなければならない。
【0004】
さらに、非回転対称な工作物に、たとえば湾曲した管にマークを付けて、管に取り付けられる物体の取り付け位置を強調することが知られている(たとえば特許文献2)。この場合、管がまだ曲げ機内にあって、それ故湾曲した管の位置および空間的配向が正確に既知である限りは、曲げ機で管を曲げている間、または、曲げた後にマークを付けることができる。曲げた後にマークを付けることは、管が既知の距離にわたって搬送され、従って非回転対称な管(工作物)の位置および空間的配向が正確に既知である場合にだけ可能である。工作物を曲げ機から取り出した後、工作物の空間的配向は、よって加工線の位置および方向は、面倒な測定技術(たとえば3Dスキャン)を用いる場合にのみ可能である。その後工作物をさらに加工するには、工作物の空間的配向をコスト、時間、演算を集中的に用いて検出する必要があり、これによって個々の工作物を加工するためのサイクルタイムが長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6335508B1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第3619643A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、わずかな測定技術コスト以外に短いサイクルタイムをも達成可能な、非回転対称な工作物を加工するための装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、レーザー光線を用いて工作物を加工するための装置であって、前記工作物を第1の加工位置へ送るための送り機構と、前記第1の加工位置に送られた前記工作物を加工するための少なくとも1つの加工ヘッドを有する加工機構とを含んでいる前記装置においては、前記送り機構が把持機構を備えた把持ロボットであること、前記加工ヘッドが少なくとも3つの自由度のまわりに可動であること、前記送り機構の把持領域に、保持部を備えた供給機構が配置され、前記保持部の構成およびサイズは、該保持部で保持される少なくとも1つの工作物が前記送り機構の所定の空間的配向と位置とにより供給されて前記保持部から取り出されるように、選定されていること、前記送り機構によって送られた1つの工作物を受容するための少なくとも1つの締め付け固定機構が配置され、各締め付け固定機構によってそれぞれ1つの加工位置が定義されていること、前記加工ヘッドが前記1つの工作物を加工するための各加工位置へ送り可能であることによって解決される。
【0008】
本明細書では、工作物とは、一般的にいって、加工材、たとえば薄板、管または異形材のような原材料、半製品、完成製品である。
【0009】
簡単な実施態様では、供給機構は複数の保持部を配置することによって形成されている。これらの保持部は、1つの工作物をただ1つの空間的配向で保持部に挿入可能であるように成形され、配置されている。これら保持部の位置は既知であるので、保持部に挿入されている工作物の空間的配向および供給位置も一義的に特定されている。
【0010】
供給機構は、複数の工作物を同時に保持できるような数量の保持部を有していてよい。また、異なる種類の工作物を保持できるように保持部を構成することも可能である。たとえば、第1の工作物としての半製品を加工することによって1つまたは複数の第2の工作物を発生させ、次にこの第2の工作物を同様に本発明による装置によって加工するような場合には、後者の実施態様が有利である。
【0011】
他の実施態様では、複数の加工ステップによって互いから生じてこないような工作物を保持できるように保持部が構成されていてもよい。
【0012】
加工ヘッドは、好ましくは、加工機構のレーザー源と結合し、ビームガイド機構およびビーム整形機構を有している。加工ヘッドはモータおよび制御機構を介して移動制御可能である。本発明による装置の他の実施態様では、6つまでの自由度のまわりに可動であり、すなわちデカルト座標系のX軸、Y軸、Z軸に沿って可動であり、且つ前記軸のまわりに回転可能であってよい。すなわち加工ヘッドは回転可能且つ揺動可能であってよい。
【0013】
送り機構は、特に把持手段は、好ましくは6つの自由度で可動制御可能である。
【0014】
締め付け固定機構は、工作物の保持に適したものであればどのような機構であってもよい。たとえば締め付け固定機構はチャック、円錐状受容部、または摩擦でおよび/または形状工作的に工作物を保持するその他の機構であってよい。本発明による装置の他の実施態様では、複数の締め付け固定機構が配置されていてよい。有利な実施態様では、2つの締め付け固定機構が設けられている。1つまたは複数の締め付け固定機構が回転可能であってよく、すなわち締め付け固定される工作物を締め付け固定機構の少なくとも1つの軸線のまわりに回転可能にしてよい。
【0015】
本明細書での加工位置とは、工作物の加工を加工ヘッドによって行うことができるような領域である。たとえば、締め付け固定機構で保持されている工作物を工作物の加工線に沿って行うことができる。
【0016】
第1の加工位置は、好ましくは、把持手段の所定の空間的配向および位置によって与えられている。たとえば、加工ヘッドによって加工線に沿って加工される(たとえば切断、穴開け、穿孔、ならい削りされる)工作物が把持手段によって保持されていてよい。これらの加工線は把持手段からたとえば20cmないし100cmの間隔をもっていてよいが、把持手段に対する工作物の空間的配向および位置が既知であるので、どの加工線の空間的配向および位置も正確に既知である。
【0017】
それ故本発明による装置の利点は、たとえば送りを行なっている間または加工位置での工作物の空間的配向を検知、コントロール、場合によっては修正する測定機構を省略できる点にある。
【0018】
本発明による装置により、ただ1つの加工ヘッドに対し少なくとも2つの異なる加工位置が提供されているので有利である。これにより、加工ヘッドが1つの加工位置へ送られ、他方他の加工位置には送り機構によって工作物が送られることが可能になる。
【0019】
本発明による装置の好ましい実施態様では、加工した工作物を搬出させる搬送機構が設けられていてよい。工作物は装置外の次の加工に供給することができる。しかし、工作物を本発明による装置によるさらなる加工に再び提供してもよい。
【0020】
本発明による他の実施態様では、複数の送り機構、加工機構、または締め付け固定機構、およびこれらの組み合わせが設けられていてよい。これらは互いにパラレルに作動されていてよい。また、これらの機構は、たとえば1つの送り機構によって複数の締め付け固定機構にまたは複数の締め付け固定機構に交互に工作物を送り可能であるように、或いは、1つの加工ヘッドを複数の加工位置に交互に送り可能であるように、統合制御されていてもよい。これによって本発明による装置の適用融通性が向上する。
【0021】
好ましくは、少なくとも送り機構と加工機構とを制御する制御機構が設けられている。本発明による方法の実施の比較的長い時間にわたってもすべての運動とすべての方法ステップとの一定の高い精度を保証するため、送り機構と加工機構との作動状態を互いに調整するのが好ましい。
【0022】
本発明による装置は、レーザー光線を用いて非回転対称な工作物を加工するために使用することができる。
【0023】
前記課題は、レーザー光線を用いて非回転対称な工作物を加工するための方法によって解決される。この方法は、
a)所定の空間的配向と供給位置とを備えた第1の工作物として半製品を供給するステップと、
b)前記第1の工作物を送り機構の把持手段を用いて把持するステップと、
c)前記第1の工作物を前記把持手段を用いて第1の加工位置へ送り、その際に前記第1の工作物を空間内で自由に保持するステップと、
d)加工機構の加工ヘッドを前記第1の加工位置へ送って前記第1の工作物を加工し、その際に前記ステップc)と前記ステップd)とを複数回実施しうるステップと、
e)加工した前記第1の工作物を解放するステップと、
f)少なくとも1つの第2の工作物を所定の空間的配向と供給位置とで供給するステップと、
g)前記第2の工作物を把持して該第2の工作物を前記把持手段を用いて他の加工位置へ送り、前記第2の工作物を締め付け固定機構を用いて前記他の加工位置で保持するステップと、
h)前記加工ヘッドを前記他の加工位置へ送って、前記第2の工作物を加工するステップと、
i)加工した前記第2の工作物を解放するステップと、
を含んでいる。
【0024】
ステップa)ないしi)は必ずしも上記の順番で実施する必要はない。個々のステップまたはいくつかのステップは、本発明による方法の正確な技術的工程に反しない限りは、1回または複数回反復してもよい。本発明による方法のステップを同時に実施してもよく、これによって方法の実施のために使用する装置のサイクルタイムの減少および/または稼働率の改善を達成できる。
【0025】
好ましくは、工作物と加工ヘッドとは0.1mm以下の公差で加工位置へ送られる。
【0026】
本発明による方法は、好ましくは、ステップa)ないしc)と同時にステップh)とi)も実施されるように構成されている。これによって、他の加工位置にある第2の工作物を加工し、解放し、他方把持ロボットにより第1の工作物を第1の加工位置へ送ることが達成されるので有利である。このような方法制御により、加工機構の非生産停止時間が短縮される。
【0027】
供給機構内に複数の第1の工作物が準備されている場合、或いは、ステップc)ないしe)のうちの1つのステップを行なっている間にすでにステップa)が行なわれる場合には、ステップb)とステップc)はステップh)およびステップi)と同時に実施してよい。
【0028】
さらに、少なくとも2つの他の加工位置が設けられ、把持機構の運動過程と加工機構の運動過程とが重らなければ、ステップg)とステップh)とを同時に実施することが可能である。この場合、第2の工作物を他の1つの加工位置へ送り、他方他の第2の工作物を他の更なる加工位置で加工ヘッドによって加工することが可能である。
【0029】
さらに、締め付け固定機構を予め備えつけるため、ステップa)ないしステップi)を反復して方法を実施する前に、ステップg)を一度実施するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
次に、本発明をいくつかの実施形態と図とを用いて詳細に説明する。
図1】本発明による装置の1実施形態を備えた加工空間を第1の作動位置で示した平面図である。
図2】第1の工作物をも併せて示した供給機構の図である。
図3】本発明による装置の前記実施形態を備えた加工空間を第2の作動位置で示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には本発明による装置の1実施形態が示され、その主要な構成要素は、加工ヘッド2.1を備えた加工機構2と、把持手段3.2を備えた送り機構3と、供給機構4と、第1の締め付け固定機構9と、第2の締め付け固定機構10である。
【0032】
装置のこれら主要な構成要素は加工空間1内に配置されており、その壁1.1は、レーザー光線が外部へ出ないように構成されている。送り機構3は、把持アーム3.1と把持手段3.2とを備えた把持ロボットとして構成されている。把持アーム3.1は複数の枢着部(示唆的に示した)を有し、3つのすべての空間軸線に沿って可動である。送り機構3の把持範囲は該送り機構の実際に可能な運動と到達距離とによって与えられており、この把持範囲内で第1の工作物5および第2の工作物6を把持手段3.2によって把持し、保持し、移動させることができる。図1では、把持アーム3.1と把持手段3.2とは加工空間1の内部に方向づけられている。第1の工作物5は把持手段3.2によって保持されている。この第1の工作物5は加工空間1内で送り機構3によって次のように保持されており、すなわち該第1の工作物が把持手段3.2のみと接触し、且つ該第1の工作物5が第1の加工位置8.1(破線で示した)へ送られて、第1の工作物5の第1の加工線14.1(図2を参照)が第1の加工位置8.1へもたらされるように、保持されている。第1の加工線14.1は、レーザー光線(図示せず)を用いて加工ヘッド2.1によって第1の工作物5が切断されるような仮想線である。第1の工作物5は湾曲した管であるので、当然のことながら、実際の切り込みは第1の工作物5の周部に沿って形成されねばならず、第1の加工線14.1はこの切り込みの投影部と見なすことができる。
【0033】
加工ヘッド2.1は第1の加工位置8.1へ送られており、第1の加工位置8.1での第1の工作物5の加工が可能である。レーザー光線は、加工空間1の外側に配置されているレーザー源11によって提供されている。光誘導ケーブルの形態のビーム供給部12を介してレーザー光線はレーザー源11から加工ヘッド2.1へ案内されて、そこで第1の工作物5に対し配向させることができる。
【0034】
第1の加工位置8.1のほぼ水平方向高さの位置に第1の締め付け固定機構9と第2の締め付け固定機構10とが対向するように壁1.1に配置されている。これら締め付け固定機構9,10のそれぞれは締め付け固定手段(示唆的にのみ示した)を有し、この締め付け固定手段を用いてそれぞれ第2の工作物6を保持することができる。第1の締め付け固定機構9によって第2の加工位置8.2が定義され、第2の締め付け固定機構10によって第3の加工位置8.3が定義されている。
【0035】
第1および第2の締め付け固定機構9,10と第1の加工位置8.1との下方には、搬送ベルトが搬送機構7として設けられ、その搬送方向(矢印で示した)は第1の締め付け固定機構9から第2の締め付け固定機構10の方向に向いている。搬送ベルトは搬送方向において非対称V字形に沈み込んでいる。これによって、沈み込みの最深点に、搬送方向に延びる搬送溝7.1が形成されている。図1では、非対称構成を、搬送溝7.1の非対称位置によって示した。搬送ベルト上に落下する物体は重力のために搬送溝7.1内へ移動し、そこから壁1.1の破断部にて加工空間1から排出させることができる。搬送ベルトは加工空間1内部で周回している。
【0036】
本発明による装置の他の実施形態では、搬送機構7は対称に構成されていてもよい。搬送機構7は壁1.1の破断部を貫通していてもよい。
【0037】
送り機構3の把持領域内には供給機構4が配置されている。供給機構は、その拡がりの一部分にわたって壁1.1の破断部(示唆的に示した)を貫通して加工空間1内へ達している。供給機構4上には複数の保持部4.1(いくつかのみを示した)が設けられ、その配置構成とサイズとは次のように選定されており、すなわちこれら保持部4.1で第1の工作物5と第2の工作物6とを正確に既知の供給位置で且つ空間的な配向で保持できるように選定されている(図2に対する説明を参照)。
【0038】
供給機構4の1実施形態が図2に示されている。保持部4.1は半円形の受容領域(図示せず)を備えた細条部として実施されている。受容領域のサイズと、保持部4.1のそれぞれの位置と方向とに関する該保持部の配置とにより、第1の工作物5を正確に1つの供給位置でのみ且つ正確に1つの空間的配向をもって保持部4.1に挿入することが可能になる。把持手段3.2(図1および図3を参照)によって第1の工作物5をたとえば中央の保持部4.1の間の領域で把持可能である。
【0039】
第1の工作物5は湾曲した管の形態の半製品である。第1の工作物は回転対称に構成されておらず、すなわちその中心軸線5.1のまわりに回転対称に回転させることができない。第1の工作物5は、中心軸線5.1も存在している面内でのみ2次元に湾曲されている。この面に対し垂直に、第1の工作物5はそれぞれその半分の横断面でもってのみ突出している。
【0040】
供給機構4の他の構成では、保持部4.1は次のように構成してもよく、すなわち3次元で成形された、たとえば折り曲げられた、プレスされた、射出成形された、または鋳造された第1の工作物5を、正確に1つの供給位置で且つ既知の空間的配向をもって受容し保持することができるように、構成してもよい。
【0041】
明瞭にするために、複数の加工線14.1ないし14.4が図示されており、これらの加工線に沿って後で第1の工作物5をレーザー光線を用いて裁断する。第1の工作物5の両端にはそれぞれ縁片5.2が発生する。第1の工作物5の残っている長さは、他の第2の加工線14.2と14.3とによって3つの部分に分割され、これらの部分は、これら部分を切断した後に第2の工作物6として装置から排出されてさらに加工することができる。
【0042】
図3図1に示したすべての構成要素に対応している。装置の作動状態を示したもので、すなわち供給機構4に供給された第1の工作物5を送り機構3によって把持する作動状態を示している。第1の締め付け固定機構9によって保持されていた第2の工作物6を加工機構2によって加工した後の状態である。加工した第2の工作物6は第1の締め付け固定機構9によって解放されて、搬送機構7上にある。加工ヘッド2.1は第3の加工位置8.3に送られている。
【0043】
レーザー源11と、送り機構3と、加工機構2と、締め付け固定機構9,10とに接続されている制御機構13により、これら構成要素はすべて制御可能であり、これら構成要素の現在の作動状態を互いに調整可能である。
【0044】
本発明による方法の可能な1実施形態を、図1および図2を用いて説明する。第1のステップで、第1および第2の工作物5,6を供給機構4の対応する保持部4.1に挿入し、その結果これら工作物はそれぞれ一義的な供給位置と空間的な配向とを有する。送り機構3によって把持アーム3.1と把持手段3.2とを用いて第2の工作物6を把持して第2の締め付け固定機構9へ送り、該第2の締め付け固定機構9によって保持する。次に、再び第2の工作物6を把持して第2の締め付け固定機構10へ送り、該第2の締め付け固定機構によって保持する。この時間中、加工ヘッド2.1は、把持アーム3.1および把持手段3.2と衝突しない位置にある。この時点で送り機構3によって第1の工作物5を供給機構4によって把持する。第1の工作物5は供給位置および空間的配向の点で既知であり、しかも把持手段3.2によるこの第1の工作物5の把持も、該第1の工作物5の既知の領域で且つ予め決定された既知の方向から行われるので、把持機構と工作物との間の既知の相対位置も提供されている。第1の工作物5を加工位置8.1へ送り、空間内で自由に保持する。その際、把持手段3.2と第1の工作物5との間の相対位置は変化させない。これによって、第1の工作物5と、該第1の工作物5の加工線14と、第1の加工位置8.1との間の相対位置も既知である。把持手段3.2により、第1の加工線14.1が第1の加工位置8.1に位置するように第1の工作物5を保持させる。加工ヘッド2.1を第1の加工位置8.1へ送った後、加工ヘッドは第1の加工線14.1をレーザー光線で切断し、1つの縁片5.2を第1の工作物5から切り離す。その際加工ヘッド2.1は、第1の加工線14.1の長さの半分に相当する距離よりもいくぶん長い距離で1方向において切断を行なう。次に第1の加工線14.1を、他の方向において、第1の加工線14.1の長さのほぼ半分に相当する距離にわたって切断し、その際前記2つの距離の交差は、第1の工作物5からの前記1つの縁片5.2の完全な切り離しが行なわれるように、オーバーラップしている。縁片5.2は搬送機構7上へ落下し、重力によって搬送溝7.1の中へ移動し、加工空間1から排出される。次に、把持手段3.2の位置を変化させて、第2の加工線14.2が第1の加工位置8.1へ送られるようにする。切断の工程を反復し、第2の工作物6を第1の工作物5の一部分として切断する。この部分も同様に加工空間1から排出させ、加工空間1の外側でさらに加工する。さらに加工した第2の工作物6は図示していない機構を介して再び供給機構4に挿入する。
【0045】
第1の工作物5の切断は、すべての加工線14.1ないし14.4が完全に切断されるまで反復する。その際、加工線14.3と14.4の送りのために把持手段3.2を180゜回転させ、その結果加工ヘッド2.1は第1の加工位置8.1に留まることができる。すべての切断が行なわれたならば、把持手段3.2はまだ保持されている第1の工作物5の一部分を解放し、これを搬送機構7上へ落下させる。
【0046】
その後、送り機構によって供給機構4上の第1の工作物5を把持し、第1の加工位置8.1へ送る。その間、加工ヘッド2.1を第2の加工位置8.2へ送り、そこにある第2の工作物6を加工する。この加工が終了した後、加工した第2の工作物6を第1の締め付け固定機構9から解放し、搬送機構7上へ落下させる。
【0047】
加工ヘッド2.1を再び第1の加工位置8.1へ送り、そこにある第1の工作物5を加工する。送り機構3によって新たに第1の工作物5を供給機構4から把持して取り出している間、加工ヘッド2.1を第3の加工位置8.3へ送り、そこにある第2の工作物6を加工する。次に、前述したようにして第1の工作物5の加工を再び行う。この加工後には、第2の工作物6はもはや第2および第3の加工位置8.2,8.3にはない。この時点で送り機構3によって再びそれぞれ1つの第2の工作物6を第2および第3の加工位置8.2,8.3へ送る。この時間の間、加工ヘッド2.1は静止している。
【符号の説明】
【0048】
1 加工空間
1.1 (加工空間の)壁
2 加工機構
2.1 加工ヘッド
3 送り機構
3.1 把持アーム
3.2 把持手段
4 供給機構
4.1 保持部
5 第1の工作物
5.1 中心軸線
5.2 縁片
6 第2の工作物
7 搬送機構
7.1 搬送溝
8.1 第1の加工位置
8.2 第2の加工位置
8.3 第3の加工位置
9 第1の締め付け固定機構
10 第2の締め付け固定機構
11 レーザー源
12 ビーム供給部
13 制御機構
14 加工線
図1
図2
図3