(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワークを加工するための工具経路に沿った前記必須送り軸の動作と、前記工具経路ごとに送りモータの反転位置を分散させる前記余剰送り軸の動作とを、前記工具経路の前記ワークに対する相対位置が変化しないように重畳させる請求項3に記載の加工方法。
ワークの加工になくてはならない必須送り軸と、必須ではない少なくとも1つの余剰送り軸を有し、工具とワークとを相対移動させてワークを加工する工作機械の制御装置であって、
前記必須送り軸による加工プログラムを実行する間、前記余剰送り軸の動作を含む反転位置分散プログラムを実行し、ワークの加工面における送りモータの反転位置を分散させる重畳部を具備することを特徴とした工作機械の制御装置。
前記重畳部により前記加工プログラムの動作と反転位置分散プログラムの動作とが重畳されたとき、前記加工面における送りモータの反転位置を工具経路ごとに演算する反転位置シミュレーション部と、演算された送りモータの反転位置を表示する表示部とをさらに具備する請求項6に記載の工作機械の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2を参照すると、本発明を適用する工作機械の一例が示されている。
図2において、本発明の好ましい実施の形態による工作機械100は、立形マシニングセンタを構成しており、工場の床面に固定された基台としてのベッド102、ベッド102の前方部分(
図2では左側部分)の上面で前後方向またはY軸方向(
図2では左右方向)に移動可能に設けられたY軸スライダ106、Y軸スライダ106の上面に取り付けられた回転テーブル120、ベッド102の後方部分(
図2では右側部分)で同ベッド102の上面に固定されたコラム104、該コラム104の前面で左右方向またはX軸方向(
図2では紙面に垂直な方向)に移動可能に設けられたX軸スライダ108、X軸スライダ108の前面で上下方向またはZ軸方向に移動可能に取り付けられ、主軸112を回転可能に支持する主軸頭110を具備している。
【0016】
Y軸スライダ106は、ベッド102の上面において水平なY軸方向(
図2の左右方向)に延設された一対のY軸案内レール(図示せず)に沿って往復動可能に設けられており、ベッド102には、Y軸スライダ106をY軸案内レールに沿って往復駆動するY軸送り装置として、Y軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、該ボールねじの一端に連結されたY軸サーボモータ116が設けられており、Y軸スライダ106には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。Y軸スライダ106には、また、Y軸方向のY軸スライダ106のY軸方向の座標位置を測定するY軸スケール(図示せず)が取り付けられている。
【0017】
主軸頭110は、Z軸に平行な鉛直方向に延びる中心軸線L周りに回転可能に主軸112を支持している。主軸112は、Y軸スライダ106に対面する先端部に回転工具Tを装着するための工具装着穴(図示せず)が形成されている。主軸頭110は主軸112を回転駆動するサーボモータ(図示せず)を有している。該サーボモータは、主軸頭110のハウジングの外側に取り付けるようにできるが、主軸頭110のハウジング内面にステーターコイル(図示せず)を設け、そして主軸112にローターコイル(図示せず)を配設して所謂ビルトインモータとしてもよい。
【0018】
X軸スライダ108は、コラム104の上方部分の前面においてX軸方向に延設された一対のX軸案内レール(図示せず)に沿って往復動可能に設けられている。コラム104には、X軸スライダ108をX軸案内レールに沿って往復駆動するX軸送り装置として、X軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、該ボールねじの一端に連結されたX軸サーボモータ114が設けられており、X軸スライダ108には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。コラム104には、また、X軸スライダ108のX軸方向の座標位置を測定するX軸スケール(図示せず)が取り付けられている。
【0019】
主軸頭110は、X軸スライダ108の前面においてZ軸方向(
図2では上下方向)に延設された一対のZ軸案内レールに沿って往復動可能に設けられている。X軸スライダ108には、主軸頭110をZ軸案内レールに沿って往復駆動するZ軸送り装置として、Z軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、該ボールねじの一端に連結されたZ軸サーボモータ118が設けられており、主軸頭110には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。X軸スライダ108には、また、主軸頭110のZ軸方向の座標位置を測定するZ軸スケール(図示せず)取り付けられている。回転工具TはZ軸送り装置によって、その中心軸線に沿って送られる。
【0020】
回転テーブル120は、Z軸に平行な軸線周りに回転可能に設けられ、ワークMを取り付けるためのワーク取付面を有しており、前記軸線周りの回転送り軸であるC軸送り装置を形成する。Y軸スライダ106は、前記回転テーブル120を回転駆動するC軸サーボモータ122と、回転テーブル120の回転位置を測定するロータリーエンコーダのような回転センサ(図示せず)とを備えている。
【0021】
X軸サーボモータ114、Y軸サーボモータ116、Z軸サーボモータ118、C軸サーボモータ122およびX軸スケール、Y軸スケール、Z軸スケールおよび回転センサは、工作機械100を制御するNC装置10に接続されている。NC装置10によって、X軸サーボモータ114、Y軸サーボモータ116、Z軸サーボモータ118およびC軸サーボモータ122へ供給される電力(電流値)が制御される。
【0022】
反転痕は、既述したように、加工面に生じる食い込みや突起などの不良部分であり、円周、円弧、円筒面、球面、ポリゴン形状等を切削加工する場合において、接線の傾きの符号が変わるとき、或いは、X軸、Y軸、Z軸の各直動送り軸の送り方向が反転するときに生じる。例えば、
図3に示すOリングを成形するための金型を加工する場合、従来技術では
図5においてハッチングで示すように、反転痕は、ワークMの円形溝Gの表面上でX軸およびY軸の2つの直動送り軸の送り方向が反転する領域、つまりXY平面内で円形溝Gの中心Oに関する各象限間の境界QBに沿って集中的に発生する。本発明では、反転痕が発生するような加工において、反転痕の発生を抑制するのでなく、反転痕を加工面の全体に分散させるようになっている。反転痕の大きさを小さくする従来からの制御(例えば前述の特許文献1の発明)を併用するのが好しい。
【0023】
本発明の加工方法を実施するためのNC装置の一例を示すブロック図である
図1を参照すると、NC装置10は、読取解釈部12、補間部14およびサーボ制御部16を具備している。読取解釈部12は、後述する工具経路生成装置20からの加工プログラムを読取り解釈して移動指令を補間部14へ出力する。この移動指令は、X軸、Y軸、Z軸およびC軸方向の送り量と送り速度とを含んでいる。
【0024】
補間部14は、受け取ったX軸、Y軸、Z軸およびC軸移動指令を補間演算し、補間関数および送り速度に合った位置指令をサーボ制御部16に出力する。サーボ制御部16は、受け取ったX軸、Y軸、Z軸およびC軸の各位置指令から工作機械100のX軸、Y軸、Z軸およびC軸の各送り軸を駆動するための電流値を出力し、これがX軸、Y軸、Z軸およびC軸のサーボモータ114、116、118、122に供給される。
【0025】
工具経路生成装置20は、合成プログラム演算部22、反転位置シミュレーション部24、表示部26および干渉判定部28を具備している。合成プログラム演算部22には、ワークMを加工する加工プログラム30と、ワークMをC軸方向に回転送りする反転位置分散プログラム32とが入力される。
【0026】
加工プログラム30および反転位置分散プログラム32は、例えばCAM(Computer Aided Manufacturing)装置のような加工プログラム生成装置(図示せず)からLANのようなコンピュータネットワークを介して合成プログラム演算部22に入力することができる。工具経路生成装置20に、キーボードやタッチパネルのような入力装置(図示せず)を設けて、オペレーターが該入力装置から合成プログラム演算部22に加工プログラム30および反転位置分散プログラム32を入力したり、或いは、合成プログラム演算部22に入力された加工プログラム30および反転位置分散プログラム32を編集できるようにしてもよい。
【0027】
加工プログラム30は、それ自体独立してワークMを加工可能なプログラムであり、ワークMの加工に必要最低限の送り軸を制御するプログラムである。この加工プログラムによって制御される送り軸が必須送り軸となる。これに対して、反転位置分散プログラムは、それ自体ではワークMを加工することはできず、上記必須送り軸とは異なる送り軸である余剰送り軸を制御するためのプログラムである。
【0028】
合成プログラム演算部22は、加工プログラム30および反転位置分散プログラム32に基づいて合成プログラムを生成する。該合成プログラムは、NC装置10の読取解釈部12へ出力される。合成プログラムは、また、反転位置シミュレーション部24へ送出され、該反転位置シミュレーション部24において、ワークMに創成される加工面が演算によってシミュレーションされる。シミュレーション結果に基づいて、反転痕の発生位置が表示部26にグラフィックおよび/または数値で表示することができる。反転痕の大きさもシミュレーションし、表示してもよい。
【0029】
また、干渉判定部28は、合成プログラム演算部22によって生成された合成プログラムに基づき、工具Tの切刃がない部分またはシャンクやカッターボディとワークMとが干渉するか否か、或いは、工具Tと工作機械100の静止した構成要素とが干渉するか否かを判定する。その結果、干渉しないと判定されると、当該合成プログラムの実行が可能な状態となる。反対に合成プログラムを実行することによって干渉すると判定されると、当該合成プログラムは実行不能となると同時に表示部26に干渉の警告が表示される。
【0030】
ワークMに円形溝Gを形成するための加工プログラム30および回転テーブル120をC軸方向に回転送りするための反転位置分散プログラム32が、工具経路生成装置20の合成プログラム演算部22に入力される。本実施形態において、加工プログラム30は、2つの直動送り軸のみを同時に制御して曲線を描くように回転工具TをワークMに対して相対移動させて加工する工程を含む加工プログラムである。
【0031】
図3の例では、加工プログラム30は、回転工具としてのボールエンドミルTを必須の送り軸としてのX軸およびY軸の2つの直動送り軸を制御して、該ボールエンドミルTを1つの円形工具経路TPに沿ってワークMに対して相対移動させ、次いで、ボールエンドミルTにX軸およびZ軸方向にピックフィードを与え、X軸およびY軸の2つの直動送り軸を制御して隣接する次の円形工具経路TPに沿ってボールエンドミルTをワークMに対して相対移動させ、これを繰り返してワークMの上面に断面が半円形の1つの円形溝Gを形成するための加工プログラムである。つまり、1つの円形工具経路TPに沿ってボールエンドミルTをワークMに対して相対移動させている間は、Z軸送り装置は固定されており、X軸およびY軸の2つの直動送り軸のみが制御される。円形工具経路TPは、Oを中心とした多数の同心円であり、ボールエンドミルTは円形工具経路TPに沿って何周回もして円形溝Gを仕上げ加工する。
【0032】
これに対して、反転位置分散プログラム32は、ワークMの加工中に生じる反転痕を加工面の全体に分散し、特定の部位に集中しないようにするために、前記1つの曲線である円形工具経路TPに沿ってボールエンドミルTをワークMに対して相対移動させるX軸およびY軸に垂直なZ軸に平行な軸線周りの回転送り軸であるC軸方向に回転テーブル120を回転させる(ワークMをC軸方向に回転送りする)ためのプログラムである。本例では、C軸が少なくとも1つの余剰送り軸を提供する。C軸方向は、時計回りだけもしくは反時計回りだけ、または時計回りと反時計回りとが混在するようにできる。後述するように、反転位置分散プログラム32は、Z軸およびW軸を制御するプログラムや、搖動部材をB軸方向に往復回転動作またはスイング動作させるプログラムを含むことができる。
【0033】
合成プログラム演算部22は、加工プログラム30を解析して円形溝GをワークMの上面に形成するための円形工具経路TPを規定するコードを抽出する。更に、合成プログラム演算部22は、反転位置分散プログラム32を解析してC軸送りのコードを抽出する。合成プログラム演算部22は、更に、抽出したC軸送りのコードから、加工プログラム30における円形溝Gのための円形工具経路TPの原点の変化、例えば、
図3の例では、円形工具経路TPを表す位置ベクトルV
P(TP)にC軸の中心軸線方向から見た円形溝Gの中心Oの位置ベクトルV
P(CO)を加え、新たな工具経路(合成工具経路)を演算して合成プログラムを生成する。位置ベクトルV
P(CO)の大きさは、C軸の中心と円形溝Gの中心Oとのずれ量に相当する。生成された合成プログラムには、C軸の中心と円形溝Gの中心OとがずれてワークMが回転テーブル120に取り付けられていても、工具とワークとの相対位置が加工すべき円形工具経路TPから逸脱しないように、C軸の回転送りに合わせてずれ量を補正するX軸およびY軸の同時制御の移動指令が加工すべき円形工具経路TPのX軸およびY軸の同時制御の移動指令に付加されている。尚、C軸の中心と円形溝Gの中心Oとが一致するようにワークMが回転テーブル120に取り付けられていれば、加工プログラム30と反転位置分散プログラム32とを単純に合成すればよい。合成プログラム演算部22は、合成プログラムをNC装置10の読取解釈部12および反転位置シミュレーション部24へ出力する。合成プログラム演算部22は請求項8に記載の重畳部に相当する。
【0034】
NC装置10は、既述したように、合成プログラム演算部22からの合成プログラムに基づいて、X軸、Y軸、Z軸およびC軸の各サーボモータ114、116、118および122を制御する。反転位置シミュレーション部24は、合成プログラム演算部22からの合成プログラムに基づいてワークMに形成される加工面および該加工面に発生する反転痕の位置をグラフィックおよび/または数値で表示する。X軸サーボモータ114またはY軸サーボモータ116が反転するときの工具経路上のX、Y、C軸位置を演算して表示するのである。
【0035】
従来技術では、例えば、
図3に示したOリングを成形するための金型としてワークMの上面に円形溝Gを回転工具Tとしてのボールエンドミルによって形成する場合、反転痕は、
図5においてハッチングで示すように、XY平面内で円形溝Gの中心Oに関する各象限間の4箇所の境界QBに沿って集中的に発生する。これに対して、本実施形態によれば、
図4に示すように、反転痕QPは円形溝Gの表面に沿って略一様に分散する。一様に分散させるために、表示部26に表示される反転痕の分散具合を見て、反転位置分散プログラム32のC軸の回転方向や回転速度を調整する必要がある。表示部26があることにより、この調整作業がし易くなる。例えば、外径φ1.5mmのボールエンドミルを用い、内径φ49.6mm、溝幅5.7mmの円形溝Gを加工する加工プログラム30におけるピックフィード部分を除いた円形工具経路TPが、Oを中心とした300本の同心円であり、工具Tが300回円形工具経路TPに沿って周回する間に、1周回当り4個の反転痕が隣接する円形工具経路TPごとに少しずつずれて発生し、円形溝G全体で略一様に分散して見えるように、シミュレーションと表示を繰り返し、試行錯誤的に上記の調整作業を行えばよい。従来は、反転痕を分散させていなかったため、円形溝Gに90°おきに4箇所の半径方向のすじが発生していて、このすじを除去する磨き作業が大変であったが、本発明の加工方法を用いることにより磨き作業が不要になる。
【0036】
次に、
図6を参照して、本発明の工作機械の制御装置の第2の実施形態を説明する。
第2の実施形態において、
図1のNC装置10と工具経路生成装置20は、2系統制御タイプのNC装置40によって置換されている。NC装置40は、第1と第2の読取解釈部42、44、重畳部46、補間部48、反転位置シミュレーション部50、サーボ制御部52、表示部54および干渉判定部56を具備している。
【0037】
第1の読取解釈部42は、加工プログラム30を読取り解釈して第1移動指令を重畳部46へ出力する。この移動指令は、X軸、Y軸、Z軸の直交3軸方向の送り量と送り速度とを含んでいる。第2の読取解釈部44は反転位置分散プログラム32を読取り解釈して第2移動指令を重畳部46へ出力する。この第2移動指令はC軸の回転送りの方向と速度とを含んでいる。
【0038】
重畳部46は、第1と第2の読取解釈部42、44から出力される移動指令を重ね合わせる。つまり、第1の実施形態と同様に、例えば、
図3の例において、円形工具経路TPを表す位置ベクトルV
P(TP)にC軸の中心軸線方向から見た円形溝Gの中心Oの位置ベクトルV
P(CO)を加えた重畳移動指令と、C軸の回転移動指令とを補間部48に出力する。補間部48は、受け取った重畳移動指令およびC軸の回転移動指令の各々を補間演算し位置指令をサーボ制御部52に出力する。サーボ制御部52は、受け取ったX軸、Y軸、Z軸およびC軸の各位置指令から工作機械100のX軸、Y軸、Z軸およびC軸の各送り軸を駆動するための電流値を出力し、これがX軸、Y軸、Z軸およびC軸のサーボモータ114、116、118および122に出力される。重畳部46からの重畳移動指令は、実際の加工に先立って反転位置シミュレーション部50でシミュレーション演算され、反転痕の発生する位置が表示部54に表示される作用は、第1の実施形態と同様である。また、干渉判定部56も第1の実施形態の干渉判定部28と同様に作用する。
【0039】
重畳部、反転位置シミュレーション部、表示部は、第1の実施形態のように工具経路生成装置20、つまりCAM装置側に設けられる場合と、第2の実施形態のようにNC装置側に設けられる場合とがある。
【0040】
既述の実施形態では、Oリングを成形するための金型の加工に本発明を適用しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明は、
図7、8示すような3次元曲面を形成するためにも適用することができる。
図7、8において、ワークMは滑らかな波形をした上面または加工面Sを有している。特に、上面または加工面Sは、
図8に示すように、X軸、Z軸を含む平面(X−Z平面)に平行な平面で切断した断面において、中心Oと交差するようにY軸方向に延びる凹所RYと、凹所RYの両側部にY軸方向に延びる2つの畝部R1、R2を有している。
【0041】
こうしたワークMを必須の送り軸としてのX軸、Y軸、Z軸の直動送り軸を制御して
図7に示すような同心円状の複数の工具経路TPに沿って工具TをワークMに対して相対移動させて加工する場合、X軸、Y軸送りモータの各々の回転方向の反転時に形成される反転痕TSx、TSy(
図9、10)に加えて、Z軸送りモータの回転方向が反転するときに、
図11、12に示すような反転痕TSzが形成される。
【0042】
図9、10に示す反転痕TSx、TSyは、既述したように、C軸を制御することによってC軸回転送りの方向に分散させることが可能である。然しながら、Z軸送りモータの反転時に形成される反転痕TSzは、C軸の制御では分散させることができない。そこで、反転痕TSzを分散させるために、
図13に示す実施形態では、Z軸送り装置に加えて、クイル109を主軸頭110に対して鉛直方向に相対的に上下動させる余剰送り軸としてのW軸送り装置を有している。
【0043】
図13において、工作機械100′は、余剰送り軸を提供するW軸送り装置として、ボールねじ(図示せず)と、該ボールねじの一端に連結されたW軸サーボモータ111が設けられており、クイル109には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。主軸頭110には、また、クイル109のW軸方向の座標位置を測定するW軸スケール(図示せず)が取り付けられている。ワークMから見た工具(ボールエンドミル)Tの相対的な位置をx、y、z、各軸の指令値をmx、my、mz、mwとすると、W軸を加えることによって、x=mx、y=my、z=mz+mwとなる。W軸を加えることによって、ワークMに対するZ軸方向の相対位置は指令値mz、mwの組合せによって決定され、1つのZ軸方向の相対位置を与える組合せは無限に存在する。例えば、mz=10、mw=−5という指令値の組合せと、mz=−7、mw=12という指令値の組合せは、ワークMに対するZ軸方向の相対位置という観点からは等価である。
【0044】
図13の工作機械100′によって
図7〜
図12のワークMを加工する場合、回転工具としてのボールエンドミルTをX軸、Y軸およびZ軸の3つの直動送り軸を制御して、該ボールエンドミルTを1つの工具経路TPに沿ってワークMに対して相対移動させ、次いで、ボールエンドミルTにX軸およびZ軸方向にピックフィードPFを与え、X軸、Y軸およびZ軸の3つの直動送り軸を制御して隣接する次の工具経路TPに沿ってボールエンドミルTをワークMに対して相対移動させ、これを繰り返してワークMに滑らかな波形をした上面または加工面Sを形成するための加工プログラムである。個々の工具経路TPは、Z軸に垂直な平面(X−Y平面)に投影すると円形となっている。つまり、X軸およびY軸は、円周に沿ってボールエンドミルTを送るように制御され、その間、Z軸は、ボールエンドミルTの先端が波形の上面Sに追従するように制御される。
【0045】
これに対して、反転位置分散プログラム32は、ワークMの加工中に生じる反転痕を加工面の全体に分散し、特定の部位に集中しないようにするために、C軸方向に回転テーブル120を回転させる(ワークMをC軸方向に回転送りする)と共に、Z軸およびW軸を制御して、Z軸送り装置の反転時に形成される反転痕TSzを加工面Sの全体に分散させるためのプログラムである。つまり、1つのZ軸方向の相対位置に対して指令値mz、mwの組合せは無限に存在するので、本来のZ軸への指令値をZ軸とW軸とに適当に分配することによって、Z軸サーボモータ118の反転位置をワークMの加工面Sの全体に分散させることが可能となる。
【0046】
次に、
図14を参照すると、本発明の更に他の実施形態による工作機械100″は、余剰送り軸としてのC軸を形成する回転テーブル120が同軸に設けられた第1と第2の回転テーブル121、123を具備している。この実施形態では、第1と第2の回転テーブル121、123は互いに反対方向に、
図14の例では第1の回転テーブル121が時計回りの方向C1へ、第2の回転テーブル123が半時計回りの方向C2に回転するようになっている。第1の回転テーブル121への指令値をc1、第2の回転テーブル123への指令値をc2とすると、c1+c2がC軸への指令値となり、ワークMの回転量となる。このように、回転テーブル120を同軸に設けられ互いに反対方向に回転する第1と第2の回転テーブル121、123によって形成することによって、モータの回転方向を反転させることなく、C軸を制御可能となり、反転痕を発生させることなく加工が可能となる。
【0047】
既述した実施形態では、Z軸に平行な軸線周りの回転送り軸であるC軸を回転させて円形溝Gや波形の加工面に生じる反転痕を分散させるようにしたが、本発明はこれに限定されず、例えば
図15に示す工作機械100
3のように、Y軸に平行な軸線周りの回転送り軸であるB軸を回転させるようにしてもよい。
図15は、回転工具Tとしてボールエンドミルを用い、Y軸に平行な中心軸線Rを有した半円筒状の外周面SをワークMに加工する例を示している。工作機械100
3の回転テーブル120は、Y軸スライダ106にB軸を中心として揺動可能に取り付けられた搖動部材130の上面に取り付けられており、回転テーブル120の上面にワークMがその中心軸線RがY軸と平行になるように取り付けられる。
【0048】
図15の工作機械100
3では、ワークMの外周面を加工する場合には、加工プログラム30は、X軸、Y軸、Z軸を回転工具TとしてのボールエンドミルをY軸方向のピックフィードPFを与えつつY軸に平行なワークMの中心軸線Rを中心とする複数の円弧に沿ってワークMに対して相対送りさせる加工プログラムである。つまり、前記複数の円弧の1つに沿って加工する間は、Y軸送り装置は固定されており、X軸とZ軸の2つの直動送り軸のみが制御される。その間、C軸は固定されている。反転位置分散プログラム32は、搖動部材130をY軸に平行な軸線周りの回転送り軸であるB軸方向に往復回転動作またはスイング動作させるプログラムとなる。
【0049】
従来技術では、
図15のような加工を行う場合、反転痕は、ワークMの外表面において最も高い位置に中心軸線Rに平行な直線に沿って集中的に発生する。これに対して、本実施形態によれば、反転痕はワークMの外周面Sに沿って略一様に分散する。
【0050】
他の変形例として、回転テーブル120上に円錐形のワークを取り付け、ボールエンドミルにらせん形の工具経路を付与してワークの円錐外周面を加工する場合にも、反転痕の位置を工具経路に沿って分散させることができる。この場合の隣接する工具経路は、らせんのリードだけ離れた1周分の工具経路のことを指す。また、ワークの加工面が平面で、工具経路が円形やうず巻き形等の象限の切替わりを伴う形状の場合にも、同様に反転痕の発生位置を工具経路に沿って分散させることができる。
【0051】
更に、
図15に示した実施形態による工作機械100
3は、
図16のような、直方体状のブロックの上面に凹所Rが形成された、例えばレンズ金型のようなワークMを形成するために有効である。
図17に示すように、Y軸およびZ軸を制御して、凹状の底面(加工面S)に沿う矢印PD方向に延びる複数の曲線状の工具経路TPに沿って工具(ボールエンドミル)Tを送ることによってワークMを加工する場合、加工面Sには、各工具経路TPにおいて最も低い位置に反転痕TSが形成され、この反転痕TSはX軸方向に1列に配置される。既述した実施形態のようにC軸を回転しても、この反転痕TSの位置は
図18に示すように変化することがない。
【0052】
そこで、
図15の工作機械100
3では、
図19に示すように、揺動部材130をB軸方向に所定の角度θ
B、例えば10°傾斜させた状態でC軸を回転させるようにしている。これによって、
図20に示すように、領域Dの範囲内で反転痕TSをC軸方向に分散させることが可能となる。このように、
図15の工作機械100
3において、B軸方向に揺動部材130を傾斜させてC軸を回転することによって、ワークMに凹所Rを加工する場合には、加工プログラム30は、X軸、Y軸、Z軸を回転工具TとしてのボールエンドミルをX軸方向のピックフィードPFを与えつつY軸方向の複数の円弧曲線に沿ってワークMに対して相対送りさせる加工プログラムである。反転位置分散プログラム32は、B軸を所定の角度θ
B傾け、C軸を所定回数回転させるプログラムである。この加工プログラム30と反転位置分散プログラム32とを重畳させたときの工具経路は、X軸、Y軸、Z軸、C軸の4軸同時制御となり、C軸が回転しながら、矢印PD方向の曲線と、矢印PDと直交する方向のピックフィードとが生成される。このレンズ金型のような加工面を加工するときは、必須送り軸をX軸、Y軸、Z軸の直交3軸とし、余剰送り軸をA軸またはB軸とC軸の2つの回転送り軸とすれば、反転痕を分散させることができ、通常の5軸マシニングセンターで加工することができる。
【0053】
本実施形態では、回転工具としてボールエンドミルを用いる切削加工について述べたが、軸付き砥石を用いる研削加工や、非回転工具であるヘール工具を用いた3次元平削り加工にも本発明は適用できる。