(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パッシベーション層を有するシリコン層又は基材上に、前記パッシベーション層の貫通孔を通って前記シリコン層又は基材の電極領域に電気的に接触している電極を形成することを含む、半導体デバイスの製造方法であって、
前記貫通孔を通して前記電極領域にアルミニウムペーストを塗布し、そして前記アルミニウムペーストを焼成することによって、前記電極を形成し、
前記アルミニウムペーストを塗布する際に、前記貫通孔の最小径が50μm以下であり、
前記アルミニウムペーストを塗布する際に、前記電極領域の表面ドーパント濃度が7×1018atoms/cm3以上、又は前記電極領域のシート抵抗値が70Ω以下であり、かつ
下記の工程によって、前記パッシベーション層に前記貫通孔を形成し、かつ前記電極領域のドープを行うことを更に含む、半導体デバイスの製造方法:
下記の(i)及び(ii)を有する積層体を提供すること:(i)前記シリコン層又は基材上に配置されている第1及び/又は第2のパッシベーション層、並びに(ii)第1のパッシベーション層の上側であって第2のパッシベーション層の下側において前記電極領域上の領域に配置されているドーパント注入層であって、ドープシリコン粒子からなるドーパント注入層、
前記積層体の前記ドーパント注入層、又は前記第2のパッシベーション層のうちの前記ドーパント注入層上の領域に光照射を行うことによって、前記電極領域をドープすると共に、前記ドーパント注入層、及び前記パッシベーション層を、少なくとも部分的に除去して、前記貫通孔を形成すること。
前記パッシベーション層が、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、及びそれらの組合せからなる群より選択される材料で形成されている、請求項1又は2に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
ある種の半導体デバイス、例えば太陽電池、特にバックコンタクト太陽電池及びPERL太陽電池(Passivated Emitter, Rear Locally diffused cell)の製造においては、リン又はホウ素のようなドーパントをシリコン層又は基材の選択された領域に注入して、選択された領域にのみをドープすることが行われている。
【0003】
具体的には、バックコンタクト太陽電池(40)は、
図4に示すように、n型(又はp型若しくは真性)シリコン基材(45)を有し、このシリコン基材(45)の受光面側にパッシベーション層(46)が配置されており、かつシリコン基材(45)の裏面側に裏面側電極(42、44)及びパッシベーション層(48)が配置されている。
【0004】
このバックコンタクト太陽電池のシリコン基材(45)は、裏面側の電極(42、44)に接触するn型又はp型に高ドープされている電極領域(バックコンタクト層)(45a、45b)、及び受光面側のn型に高ドープされてなる表面電界層(45c)を有する。
【0005】
また、PERL太陽電池(50)は、
図5に示すように、n型(又はp型若しくは真性)シリコン基材(55)を有し、このシリコン基材(55)の受光面側に受光面側電極(52)及びパッシベーション層(56)が配置されており、かつシリコン基材(55)の裏面側に裏面側電極(54)及びパッシベーション層(58)が配置されている。
【0006】
このPERL太陽電池のシリコン基材(55)は、裏面側の電極(54)に接触するp型に高ドープされている電極領域(55a)、及び受光面側のn型に高ドープされてなる表面電界層(55c)を有する。
【0007】
バックコンタクト太陽電池の製造においては、シリコン基材の裏面側の電極領域をp型及びn型のドーパントでドープし、そしてドープされた電極領域に接触するようにして電極を形成することが行われている。また、PERL太陽電池の製造においては、基材の裏面側の電極領域をp型又はn型のドーパントでドープし、そしてドープされた電極領域に接触するようにして金属電極を形成することが行われている。
【0008】
具体的には、上記の太陽電池のような半導体装置の製造において、シリコン層又は基材の電極領域をドーパントでドープし、そしてこのドープされた電極領域上に電極を形成することは、従来、
図6に示すようにして行われてきた。すなわち、シリコン層又は基材(65)上に拡散マスク層(72)を形成し(
図6(a)及び(b))、拡散マスク層(72)の選択された領域に孔(72a)をあけてシリコン層又は基材(65)を露出させ(
図6(c))、その孔(72a)を通じて、オキシ塩化リン(POCl
3)のようなドーピングガス、塗布型ドーピング剤等により形成されたドーパント注入層(74)によってシリコン層又は基材の電極領域(65a)にドーパントをドープし(
図6(d))、拡散マスク層(72)及びドーパント注入層(74)を除去し(
図6(e))、シリコン層又は基材(65)上にパッシベーション層(68)を形成し(
図6(f))、シリコン層又は基材の電極領域(65a)上のパッシベーション層(68)の選択された領域に孔(68a)をあけてシリコン層又は基材(65)を露出させ、その孔(68a)を通じて電極(62)を形成することによって、シリコン層又は基材の電極領域(65a)と電気的に接触する電極(62)を形成している。
【0009】
これに関して、拡散マスク層及びパッシベーション層に孔をあけるためには、フォトリソグラフィー、レーザー光等が用いられてきた(特許文献1及び2)。
【0010】
また、シリコン層又は基材のドープのためには、ドーピングガス、塗布型ドーピング剤を用いる方法だけでなく、ドープシリコン粒子を含有する分散体をシリコン層又は基材に塗布して分散体層を形成し、この分散体層を乾燥及び焼成して、シリコン層又は基材をドープし、そしてその後で、シリコン粒子に由来する層を除去する方法も提案されている(特許文献3)。
【0011】
さらに、拡散マスク層を用いずに、パッシベーション層の孔あけ、及びシリコン層又は基材のドープを同時に行うために、シリコン層又は基材のパッシベーション層上に、ドープシリコン粒子からなるドーパント注入層を形成し、そしてこのドーパント注入層に対して光照射を行うことによって、シリコン層又は基材をドープすると共に、ドーパント注入層及びパッシベーション層を除去することも提案されている(特許文献4)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のように、バックコンタクト太陽電池及びPERL太陽電池のようなある種の半導体デバイスの製造においては、パッシベーション層を有するシリコン層又は基材の電極領域をドープし、そしてパッシベーション層の貫通孔を通って電極領域と電気的に接触する電極を形成することが行われている。
【0014】
ここで、この電極の形成のためには、パッシベーション層の貫通孔を通してシリコン層又は基材の電極領域に、アルミニウムペーストのような金属ペーストを塗布し、そして焼成して、電極を形成することが行われている。
【0015】
しかしながら、パッシベーション層の貫通孔の最小径が小さい場合、金属ペーストを焼成して電極を形成する際に、電極とシリコン層又は基材の電極領域との間の電気的な接触が悪化することがあった。
【0016】
この電気的な接触の悪化の問題は、パッシベーション層の貫通孔の最小径を大きくし、貫通孔内への金属ペーストの流入性を改良することによって解消できる。しかしながら、パッシベーション層の貫通孔の寸法が大きい場合、半導体デバイスにおいてパッシベーション層が担っている機能、すなわち例えば半導体デバイスが太陽電池の場合には電子と正孔との再結合を抑制するという機能を達成できない箇所の割合が大きくなり、したがって得られる太陽電池等の半導体デバイスの機能が悪化するという問題があった。
【0017】
また、この電気的な接触の悪化の問題は、専用の金属ペーストの使用によっても対応することができるが、このような専用の金属ペーストを使用しない場合にも、この問題を解消又は抑制すること、及びこのような専用の金属ペーストを使用する場合には、この問題を更に抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本件発明者は、鋭意検討の結果、下記の本発明に想到した。
【0019】
〈1〉パッシベーション層を有するシリコン層又は基材上に、上記パッシベーション層の貫通孔を通って上記シリコン層又は基材の電極領域に電気的に接触している電極を形成することを含む、半導体デバイスの製造方法であって、
上記貫通孔を通して上記電極領域にアルミニウムペーストを塗布し、そして上記アルミニウムペーストを焼成することによって、上記電極を形成し、
上記貫通孔の最小径が50μm以下であり、かつ
上記電極領域の表面ドーパント濃度が7×10
18atoms/cm
3以上、又は上記電極領域のシート抵抗値が70Ω以下である、
半導体デバイスの製造方法。
〈2〉上記パッシベーション層が、1〜300nmの層厚を有する、上記〈1〉項に記載の方法。
〈3〉上記パッシベーション層が、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、及びそれらの組合せからなる群より選択される材料で形成されている、上記〈1〉又は〈2〉項に記載の方法。
〈4〉上記半導体デバイスが太陽電池である、上記〈1〉〜〈3〉項のいずれか一項に記載の方法。
〈5〉下記の工程によって、上記パッシベーション層に上記貫通孔を形成し、かつ上記電極領域のドープを行うことを更に含む、上記〈1〉〜〈4〉項のいずれか一項に記載の方法:
下記の(i)及び(ii)を有する積層体を提供すること:(i)上記シリコン層又は基材上に配置されている第1及び/又は第2のパッシベーション層、並びに(ii)第1のパッシベーション層の上側であって第2のパッシベーション層の下側において上記電極領域上の領域に配置されているドーパント注入層であって、ドープシリコン粒子からなるドーパント注入層、
上記積層体の上記ドーパント注入層、又は上記第2のパッシベーション層のうちの上記ドーパント注入層上の領域に光照射を行うことによって、上記電極領域をドープすると共に、上記ドーパント注入層、及び上記パッシベーション層を、少なくとも部分的に除去して、上記貫通孔を形成すること。
〈6〉下記の工程によって、上記パッシベーション層に上記貫通孔を形成し、かつ上記電極領域のドープを行う、上記〈5〉項に記載の方法:
上記シリコン層又は基材上に、上記第1のパッシベーション層を形成すること、
上記第1のパッシベーション層のうちの、上記電極領域上の領域に、ドープシリコン粒子を含有するドープシリコン粒子分散体を塗布すること、
塗布した上記ドープシリコン粒子分散体を乾燥して、上記ドーパント注入層とすること、並びに
上記ドーパント注入層に光照射を行うことによって、上記電極領域をドープすると共に、上記ドーパント注入層、及び上記第1のパッシベーション層を、少なくとも部分的に除去して、上記貫通孔を形成すること。
〈7〉下記の工程によって、上記パッシベーション層に上記貫通孔を形成し、かつ上記電極領域のドープを行う、上記〈5〉項に記載の方法:
上記電極領域に、ドープシリコン粒子を含有するドープシリコン粒子分散体を塗布すること、
塗布した上記ドープシリコン粒子分散体を乾燥して、上記ドーパント注入層とすること、
上記シリコン層又は基材及び上記ドーパント注入層上に、上記第2のパッシベーション層を形成すること、並びに
上記第2のパッシベーション層のうちの上記電極領域上の領域に光照射を行うことによって、上記電極領域をドープすると共に、上記ドーパント注入層、及び上記第2のパッシベーション層を、少なくとも部分的に除去して、上記貫通孔を形成すること。
〈8〉下記の工程によって、上記パッシベーション層に上記貫通孔を形成し、かつ上記電極領域のドープを行う、上記〈5〉項に記載の方法:
上記シリコン層又は基材上に、上記第1のパッシベーション層を形成すること、
上記第1のパッシベーション層のうちの、上記電極領域上の領域に、ドープシリコン粒子を含有するドープシリコン粒子分散体を塗布すること、
塗布した上記ドープシリコン粒子分散体を乾燥して、上記ドーパント注入層とすること、
上記第1のパッシベーション層及び上記ドーパント注入層上に、第2のパッシベーション層を形成すること、並びに
上記第2のパッシベーション層のうちの上記電極領域上の領域に光照射を行うことによって、上記電極領域をドープすると共に、上記ドーパント注入層、並びに上記第1及び第2のパッシベーション層を、少なくとも部分的に除去して、上記貫通孔を形成すること。
〈9〉上記アルミニウムペーストを塗布する前に、上記シリコン層又は基材上に残留している上記ドープシリコン粒子を除去する工程を更に含む、上記〈5〉〜〈8〉項のいずれか一項に記載の方法。
〈10〉上記ドープシリコン粒子の平均一次粒子径が100nm以下である、上記〈5〉〜〈9〉項のいずれか一項に記載の方法。
〈11〉上記ドープシリコン粒子のドーパント濃度が1×10
20atoms/cm
3以上である、上記〈5〉〜〈10〉項のいずれか一項に記載の方法。
〈12〉パッシベーション層を有するシリコン層又は基材、及び
上記パッシベーション層の貫通孔を通って上記シリコン層又は基材の電極領域に電気的に接触している電極、
を有する半導体デバイスであって、
上記貫通孔の最小径が50μm以下であり、かつ
上記電極領域の表面ドーパント濃度が7×10
18atoms/cm
3以上、又は上記電極領域のシート抵抗値が70Ω以下である、
半導体デバイス。
〈13〉太陽電池である、上記〈12〉項に記載の半導体デバイス。
【発明の効果】
【0020】
半導体デバイスを製造する本発明の方法によれば、シリコン層又は基材上のパッシベーション層の貫通孔を貫通する電極を、アルミニウムペーストを用いて形成する際に、電極とシリコン層又は基材との電気的な接触が悪化するという問題を防ぎつつ、パッシベーション層の貫通孔の最小径を小さくし、それによってパッシベーション層が担っている機能の損失を防ぐこと、すなわち例えば太陽電池の場合には電子と正孔との再結合を抑制するという機能の損失を防ぐことが可能になる。
【0021】
また、本発明の半導体デバイスによれば、シリコン層又は基材上のパッシベーション層の貫通孔を貫通する電極と、シリコン層又は基材との電気的な接触を改良しつつ、パッシベーション層の貫通孔の最小径を小さくし、それによってパッシベーション層が担っている機能の損失を防ぐことが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
《半導体デバイスの製造方法》
半導体デバイスを製造する本発明の方法は、パッシベーション層を有するシリコン層又は基材上に、パッシベーション層の貫通孔を通ってシリコン層又は基材の電極領域に電気的に接触している電極を形成することを含む。ここでは、貫通孔を通して電極領域にアルミニウムペーストを塗布し、そしてアルミニウムペーストを焼成することによって、電極を形成する。なお、本発明に関して「電極領域」は、シリコン層又は基材のうちの、電極に接触する領域を意味している。
【0024】
この本発明の方法では、貫通孔の最小径が、50μm以下、45μm以下、又は40μm以下であってよい。また、この最小径は、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であってよい。
【0025】
なお、本発明に関して、パッシベーション層の貫通孔の「最小径」は、貫通孔の最長径に直交する方向の最長径を意味している。したがって、貫通孔が真円形である場合には、この「最小径」は真円の直径を意味し、貫通孔が楕円形である場合には、この「最小径」は楕円の短径を意味し、また貫通孔が線状である場合には、この「最小径」は線の線幅を意味している。
【0026】
上記のように、パッシベーション層の貫通孔の最小径が小さい場合、金属ペースト、特にアルミニウムペーストを焼成して電極を形成する際に、電極とシリコン層又は基材の電極領域との電気的な接触が悪化することがあった。
【0027】
これに関して、本件発明者等は、アルミニウムペーストを用いたときのこの電気的な接触の悪化が、貫通孔内へのアルミニウムペーストの流入性の悪化と併せて、カーケンドール効果によっても生じていること、すなわち電極を構成するアルミニウムがシリコン層又は基材中に拡散し、それによって電極とシリコン層又は基材との界面付近において、電極中にボイドが形成されるという効果によっても生じていることを見出した。
【0028】
この新たな知見に基づいて、本件発明者等は、シリコン層又は基材の電極領域の表面ドーパント濃度を高めてカーケンドール効果を抑制し、それによってアルミニウム電極中のボイドの形成、及びそれによる電気的な接触の悪化を抑制できることを見出した。
【0029】
したがって、本発明の方法では、シリコン層又は基材の電極領域の表面ドーパント濃度は、7×10
18atoms/cm
3以上、8×10
18atoms/cm
3以上、9×10
18atoms/cm
3以上、1×10
19atoms/cm
3以上であってよい。また、この表面ドーパント濃度は、1×10
21atoms/cm
3以下、5×10
20atoms/cm
3以下、1×10
20atoms/cm
3以下、又は5×10
19atoms/cm
3以下であってよい。
【0030】
なお、電極領域の表面ドーパント濃度は、動的二次イオン質量分析(Dynamic SIMS)によって測定することができる。具体的には、表面ドーパント濃度は、Dynamic SIMS装置として、CAMECA社のIMS−7fを用い、測定条件を、一次イオン種O
2+、一次加速電圧3.0kV、検出領域30μmΦとして測定することができる。また、本発明に関して「表面ドーパント濃度」は、表面、すなわちDynamic SIMS測定結果における深さ0nmの部分のドーパント濃度を意味している。
【0031】
電極領域の表面ドーパント濃度が高いことは、電極領域のシート抵抗値が小さいことに対応している。したがって、電極領域のシート抵抗値は、70Ω以下、60Ω以下、50Ω以下、又は45Ω以下であってよい。また、このシート抵抗値は、10Ω以上、20Ω以上、30Ω以上、又は35Ω以上であってよい。
【0032】
本発明の方法でのように電極とシリコン層又は基材の電極領域との電気的な接触を維持しつつ、パッシベーション層の貫通孔の最小径を小さくすることは、パッシベーション層が担ってきた機能、すなわち例えば太陽電池の場合には電子と正孔との再結合を抑制するという機能を良好に達成させるために好ましい。したがって、本発明の方法は、半導体デバイスとしての太陽電池、例えばバックコンタクト太陽電池及びPERL太陽電池の製造のために特に好ましく用いることができる。
【0033】
〈シリコン層又は基材〉
本発明で使用できるシリコン層又は基材としては、任意のシリコン層又は基材を用いることができる。したがって、シリコン層又は基材としては、シリコンウェハー、アモルファスシリコン層、及び結晶質シリコン層を挙げることができる。また、シリコン層又は基材は、その全体又は一部が、予めドープされていてもよい。
【0034】
〈パッシベーション層〉
本発明の方法において用いることができるパッシベーション層は、パッシベーション層として機能させることができる任意の厚さを有することができ、例えば1nm以上、5nm以上、10nm以上、30nm以上、50nm以上の厚さを有することができる。また、パッシベーション層は、300nm以下、200nm以下、100nm以下、50nm以下、30nm以下、20nm以下、又は10nm以下の厚さを有することができる。この厚さが薄すぎる場合、パッシベーション層としての性質に劣る可能性がある。また、この厚さが厚すぎる場合、ドープシリコン粒子からなるドーパント注入層及び光照射を用いて貫通孔の形成及び電極領域のドープを行う下記で説明する工程において、貫通孔の形成及び電極領域のドープを十分に行えないことがある。
【0035】
パッシベーション層は、パッシベーション層として機能させることができる任意の材料で形成されていてよく、例えば窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、及びそれらの組合せからなる群より選択される材料で形成されていてよい。
【0036】
〈アルミニウムペースト〉
本発明の方法において用いることができるアルミニウムペーストは、アルミニウムの微粒子及び/又は化合物と、樹脂及び溶媒等のペースト化成分とを含有するペーストであって、焼成することによってアルミニウム電極にすることができる任意のアルミニウムペーストである。
【0037】
このようなアルミニウムペーストの焼成温度は、50℃以上、60℃以上、80℃以上、100℃以上、150℃以上、200℃以上、250℃以上、又は300℃以上であってよい。また、この温度は、500℃以下、450℃以下、又は400℃以下であってよい。
【0038】
〈パッシベーション層の貫通孔の形成、及びシリコン層又は基材の電極領域のドープ〉
パッシベーション層の貫通孔の形成は、フォトリソグラフィー、レーザー光等を用いる任意の方法で行うことができる。また、シリコン層又は基材の電極領域のドープは、ドーピングガス、塗布型ドーピング剤、ドープシリコン粒子等を用いる任意の方法で行うことができる。
【0039】
しかしながら、好ましくは半導体デバイスを製造する本発明の方法では、例えば特許文献4で示すようにして、ドープシリコン粒子及び光照射を用いて、パッシベーション層の貫通孔の形成、及びシリコン層又は基材の電極領域のドープを同時に行うことができる。
【0040】
具体的には例えば、下記の工程によって、パッシベーション層に貫通孔を形成し、かつ電極領域のドープを行うことができる。
【0041】
すなわち、始めに、下記の(i)及び(ii)を有する積層体を提供する:(i)シリコン層又は基材上に配置されている第1及び/又は第2のパッシベーション層、並びに(ii)第1のパッシベーション層の上側であって第2のパッシベーション層の下側において電極領域上の領域に配置されているドーパント注入層であって、ドープシリコン粒子からなる、ドーパント注入層。
【0042】
その後、積層体のドーパント注入層、又は第2のパッシベーション層のうちのドーパント注入層上の領域に光照射を行うことによって、シリコン層又は基材の電極領域をドープすると共に、ドーパント注入層、及びパッシベーション層を、少なくとも部分的に除去して、パッシベーション層に貫通孔を形成する。
【0043】
(第1の態様)
ドープシリコン粒子及び光照射を用いる貫通孔の形成及び電極領域のドープは、下記の工程を含む第1の態様で行うことができる:
シリコン層又は基材上に、第1のパッシベーション層を形成すること、
第1のパッシベーション層のうちの、電極領域上の領域に、ドープシリコン粒子を含有するドープシリコン粒子分散体を塗布すること、
塗布したドープシリコン粒子分散体を乾燥して、ドーパント注入層とすること、並びに
ドーパント注入層に光照射を行うことによって、電極領域をドープすると共に、ドーパント注入層、及び第1のパッシベーション層を、少なくとも部分的に除去して、貫通孔を形成すること。
【0044】
すなわち例えば、
図1で示すように、シリコン層又は基材(15)上にパッシベーション層(18)を形成し(
図1(a)及び(b))、第1のパッシベーション層(18)のうちの電極領域上の領域に、ドープシリコン粒子を含有するドープシリコン粒子分散体を塗布し、この分散体を乾燥して、ドーパント注入層(2)とし(
図1(c))、ドーパント注入層(2)に光照射(5)を行うことによって、電極領域(15a)をドープすると共に、ドーパント注入層(2)、及び第1のパッシベーション層(18)のうちのドーパント注入層(2)上の領域を、少なくとも部分的に除去する(
図1(d))。
【0045】
その後、上記のように、貫通孔を通して電極領域(15a)にアルミニウムペーストを塗布し、そしてアルミニウムペーストを焼成することによって、パッシベーション層(18)の貫通孔を通ってシリコン層又は基材の電極領域(15a)に電気的に接触している電極(12)を形成することができる(
図1(e))。
【0046】
なお、ドープシリコン粒子分散体の塗布は、フォトリソグラフィーを用いずに、インクジェット印刷やスクリーン印刷のような印刷法を用いて行うことが、処理は製造工程を短くするために特に有益なことがある。
【0047】
(第2の態様)
ドープシリコン粒子及び光照射を用いる貫通孔の形成及び電極領域のドープは、下記の工程を含む第2の態様で行うことができる:
電極領域に、ドープシリコン粒子を含有するドープシリコン粒子分散体を塗布すること、
塗布したドープシリコン粒子分散体を乾燥して、ドーパント注入層とすること、
シリコン層又は基材及びドーパント注入層上に、第2のパッシベーション層を形成すること、並びに
第2のパッシベーション層のうちの電極領域上の領域に光照射を行うことによって、電極領域をドープすると共に、ドーパント注入層、及び第2のパッシベーション層を、少なくとも部分的に除去して、貫通孔を形成すること。
【0048】
すなわち例えば、
図2で示すように、シリコン層又は基材(25)の電極領域に、ドープシリコン粒子を含有するドープシリコン粒子分散体を塗布し、この分散体を乾燥して、ドーパント注入層(2)とし(
図2(a)及び(b))、シリコン層又は基材(25)及びドーパント注入層(2)上に、第2のパッシベーション層(28)を形成し(
図2(c))、第2のパッシベーション層(28)のうちのドーパント注入層(2)上の領域に光照射(5)を行うことによって、シリコン層又は基材の電極領域(25a)をドープすると共に、ドーパント注入層(2)、及び第2のパッシベーション層(28)のうちのドーパント注入層(2)上の領域を、少なくとも部分的に除去する(
図2(d))。
【0049】
その後、上記のように、貫通孔を通して電極領域(25a)にアルミニウムペーストを塗布し、そしてアルミニウムペーストを焼成することによって、パッシベーション層(28)の貫通孔を通ってシリコン層又は基材の電極領域に電気的に接触している電極(22)を形成することができる(
図2(e))。
【0050】
(第3の態様)
ドープシリコン粒子及び光照射を用いる貫通孔の形成及び電極領域のドープは、下記の工程を含む第3の態様で行うことができる:
シリコン層又は基材上に、第1のパッシベーション層を形成すること、
第1のパッシベーション層のうちの、電極領域上の領域に、ドープシリコン粒子を含有するドープシリコン粒子分散体を塗布すること、
塗布したドープシリコン粒子分散体を乾燥して、ドーパント注入層とすること、
第1のパッシベーション層及びドーパント注入層上に、第2のパッシベーション層を形成すること、並びに
第2のパッシベーション層のうちの電極領域上の領域に光照射を行うことによって、電極領域をドープすると共に、ドーパント注入層、並びに第1及び第2のパッシベーション層を、少なくとも部分的に除去して、貫通孔を形成すること。
【0051】
すなわち例えば、
図3で示すように、シリコン層又は基材(35)上に、第1のパッシベーション層(38a)を形成し(
図3(a)及び(b))、第1のパッシベーション層(38a)のうちの、電極領域上の領域に、ドープシリコン粒子を含有するドープシリコン粒子分散体を塗布し、この分散体を乾燥して、ドーパント注入層(2)とし(
図3(c))、この第1のパッシベーション層(38a)及びドーパント注入層(2)上に、第2のパッシベーション層(38b)を形成し(
図3(d))、第2のパッシベーション層(38b)のうちの、ドーパント注入層(2)上の領域に、光(5)の照射を行うことによって、シリコン層又は基材の電極領域(35a)をドープすると共に、ドーパント注入層(2)、並びに第1及び第2のパッシベーション層(38a、38b)のうちのドーパント注入層(2)上の領域を、少なくとも部分的に除去する(
図3(e))。
【0052】
その後、上記のように、貫通孔を通して電極領域(35a)にアルミニウムペーストを塗布し、そしてアルミニウムペーストを焼成することによって、パッシベーション層(38a、38b)の貫通孔を通ってシリコン層又は基材の電極領域に電気的に接触している電極(32)を形成することができる(
図3(f))。
【0053】
(ドープシリコン粒子分散体の塗布)
ドープシリコン粒子を含有するドープシリコン粒子分散体の塗布は、分散体を所望の厚さ及び均一性で塗布できる方法であれば特に限定されず、例えばインクジェット印刷法、スピンコーティング法、又はスクリーン印刷法等によって行うことができ、特にインクジェット印刷やスクリーン印刷のような印刷法を用いて行うことが、特定の領域に分散体を塗布し、かつ製造工程を短くするために特に有益なことがある。
【0054】
また、この塗布は、分散体層を乾燥したときに得られるドーパント注入層の厚さが、100nm以上、200nm以上、300nm以上、400nm以上、又は500nm以上であって、2000nm以下、1500nm以下、1200nm以下、1000nm以下、又は、800nm以下であるように行うことができる。本発明において上記ドーパント注入層の厚さは、得られる半導体デバイスを構成するシリコン層又は基材の電極領域のドープの程度、レーザー光によって除去できるドープ注入層の厚さ、シリコン基材又は層上に残存することが許容されるドープ注入層の厚さ等を考慮して決定することができる。ただし、ドーパント注入層の厚さは、本発明の効果を得られる限り、特には制限されない。
【0055】
(ドープシリコン粒子分散体の分散媒)
ドープシリコン粒子分散体の分散媒は、本発明の目的及び効果を損なわない限り制限されるものではなく、したがって例えば分散体で用いるドープシリコン粒子と反応しない有機溶媒を用いることができる。具体的にはこの分散媒は、非水系溶媒、例えばアルコール、アルカン、アルケン、アルキン、ケトン、エーテル、エステル、芳香族化合物、又は含窒素環化合物、特にイソプロピルアルコール(IPA)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等であってよい。また、アルコールとしては、エチレングリコールのようなグリコール(2価アルコール)を用いることもできる。なお、分散媒は、分散体で用いるドープシリコン粒子の酸化を抑制するために、脱水溶媒であることが好ましい。
【0056】
(ドープシリコン粒子分散体のドープシリコン粒子)
ドープシリコン粒子分散体のドープシリコン粒子は、p型又はn型ドーパントによってドープされているシリコン粒子であれば、本発明の目的及び効果を損なわない限り制限されるものではない。具体的には、このシリコン粒子としては、レーザー光熱分解法、特にCO
2レーザー光を用いたレーザー光熱分解法によって得られたシリコン粒子を挙げることができる。
【0057】
分散体のドープシリコン粒子は、粒子の結晶化度が比較的低いこと、且つ/又は粒子の粒径が比較的小さいことが、光照射によって粒子からドーパントを注入するために好ましいことがある。
【0058】
例えば、ドープシリコン粒子の平均一次粒子径は、1nm以上、又は3nm以上であって、100nm以下、50nm以下、30nm以下、20nm以下、又は10nm以下であってよい。
【0059】
ここで、本発明においては、ドープシリコン粒子の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)、透過型電子顕微鏡(TEM)等による観察によって、撮影した画像を元に直接に投影面積円相当径を計測し、集合数100以上からなる粒子群を解析することで、数平均一次粒子径として求めることができる。
【0060】
分散体の粒子をドープしているドーパントは、p型又はn型ドーパントのいずれであってもよく、例えばホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、チタン(Ti)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、又はそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0061】
また、分散体の粒子がドープされている程度は、ドーパント注入層、及びシリコン層又は基材における所望のドーパント濃度等に依存して決定することができる。具体的には例えば、ドープシリコン粒子は、ドーパントを、1×10
20atoms/cm
3以上、5×10
20atoms/cm
3以上、又は1×10
21atoms/cm
3以上の濃度で含むことができる。また、このドーパント濃度は例えば、1×10
22atoms/cm
3以下、又は1×10
21atoms/cm
3以下であってよい。
【0062】
ここで、ドーパントがホウ素の場合、ドープシリコン粒子のドーパント濃度は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS:Inductively Coupled Plasma−Mass Spectrometry)によって測定することができる。具体的には例えば、ドープシリコン粒子分散体を石英ビーカに入れ、ホットプレート上で加熱し、溶媒を揮発させ、得られたシリコン粒子を秤量し、その後、フッ化水素酸及び硝酸で溶解して溶解液とし、この溶解液の一部について揮発防止剤を添加し、濃縮して測定溶液とし、この測定溶液についてICP−MSを行うことができる。ICP−MS装置としては例えば、Agilent Technologies社の7500型を用いることができる。
【0063】
また、ドーパントがリンの場合、ドープシリコン粒子のドーパント濃度は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES:Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy)によって測定することができる。具体的には例えば、シリコン粒子分散体を石英ビーカに入れ、ホットプレート上で加熱し、溶媒を揮発させ、得られたシリコン粒子を秤量し、その後、フッ化水素酸及び硝酸で溶解して溶解液とし、この溶解液の一部を希釈して測定溶液とし、この測定溶液についてICP−AESを行うことができる。ICP−AES装置としては例えば、日立ハイテク社のPS7800を用いることができる。なお、ドーパントがリンであり、かつ比較的低濃度(例えば10
20atoms/cm
3未満)の場合、P−Mo錯体抽出−フレームレス原子吸光光度法によってドーパントの濃度を測定することが、精度に関して好ましいことがある。
【0064】
(ドープシリコン粒子分散体の乾燥)
ドープシリコン粒子分散体の乾燥は、分散体から分散媒を実質的に除去することができる方法であれば特に限定されず、例えば分散体を有するシリコン層又は基材を、ホットプレート上に配置して行うこと、加熱雰囲気に配置して行うこと等ができる。
【0065】
乾燥温度は例えば、シリコン層又は基材、分散体の粒子を劣化等させないように選択することができ、例えば50℃以上、70℃以上、90℃以上であって、100℃以下、200℃以下、300℃以下、400℃以下、500℃以下、600℃以下、700℃以下、又は800℃以下であるように選択できる。
【0066】
(光照射)
ドーパント注入層等に対する光照射は、ドーパント注入層に含まれるp型又はn型ドーパントをシリコン層又は基材の電極領域に拡散させると共に、ドーパント注入層、並びに第1及び/又は第2のパッシベーション層のうちのドーパント注入層上の領域を、少なくとも部分的に除去することができる任意の光照射であってよい。なお、本発明に関して、「少なくとも部分的に除去」は、ドーパント注入層、並びに第1及び/又は第2のパッシベーション層の少なくとも一部が除去されることを意味しており、この除去によって、そのままシリコン層又は基材の電極領域上に電極を形成できる程度までこれらの層が除去される場合だけでなく、エッチング、洗浄のような更なる処理によって残存するドーパント注入層等の層をさらに除去する必要がある場合を含む。
【0067】
なお、このような光照射を用いる場合、ドーパント注入層及びパッシベーション層、並びにそれらの下側にあるシリコン層又は基材の表面部分は、シリコン層又は基材の本体部分への伝熱によって素早く冷却される。したがって、このような光照射を用いる場合には、シリコン層又は基材の本体部分を高い熱に露出させることなしに、シリコン層又は基材の電極領域をドープすることができる。
【0068】
(照射される光)
ドーパント注入層等に対して照射される光としては、上記のようにしてシリコン層又は基材の電極領域のドープ等を達成できれば任意の光を用いることができる。例えば、照射される光としては、単一波長からなるレーザー光、特に波長600nm以下、500nm以下又は400nm以下であって、300nm以上の波長を有するレーザー光を用いることができる。また、電極領域のドープ等は、特定の帯域の波長範囲(例えば200〜1100nm)の光を一度に照射するフラッシュランプ、例えばキセノンフラッシュランプを用いて行うこともできる。また、上記のようにして電極領域のドープ等を達成できれば、パルス状の光、連続発振される光などの光を任意に用いることができる。なお、ドープシリコン粒子に吸収される波長の光を用いて照射を行うことが有効である。
【0069】
例えば、光照射をパルス状の光を用いて行う場合、パルス状の光の照射回数は例えば、1回以上、2回以上、5回以上、又は10回以上であって、300回以下、200回以下、又は150回以下にすることができる。また、パルス状の光の照射エネルギーは例えば、100mJ/(cm
2・shot)以上、200mJ/(cm
2・shot)以上、300mJ/(cm
2・shot)以上、400mJ/(cm
2・shot)以上、500mJ/(cm
2・shot)以上、600mJ/(cm
2・shot)以上、700mJ/(cm
2・shot)以上にすることができる。また、この照射エネルギーは、5000mJ/(cm
2・shot)以下、4000mJ/(cm
2・shot)以下、3000mJ/(cm
2・shot)以下、2000mJ/(cm
2・shot)以下、1500mJ/(cm
2・shot)以下、又は1000mJ/(cm
2・shot)以下にすることができる。さらに、パルス状の光の照射時間は、例えば200ナノ秒/shot以下、100ナノ秒/shot以下、50ナノ秒/shot以下にすることができる。
【0070】
ここで、光の照射エネルギーが小さすぎる場合には、所望のドーパント注入、並びにドーパント注入層及びパッシベーション層の除去を達成できないことがある。また、光の照射エネルギーが大きすぎる場合には、シリコン層又は基材の破損をもたらすことがある。なお、照射エネルギー、照射回数等の最適な条件は、使用する光照射の波長、粒子の特性等に依存しており、当業者であれば、本願明細書を参照して実験を行うことによって最適な値を求めることができる。
【0071】
(照射雰囲気)
分散体粒子を焼結するための光照射は、非酸化性雰囲気、例えば水素、希ガス、窒素、及びそれらの組合せからなる雰囲気において行うことが、半導体デバイスの特性に与える影響を小さくするために好ましい。ここで、希ガスとしては、特にアルゴン、ヘリウム、及びネオンを挙げることができる。なお、雰囲気が水素を含有することは、分散体粒子の還元作用があり、酸化された表面部分を還元して、連続層を形成するために好ましいことがある。また、非酸化性雰囲気とするために、雰囲気の酸素含有率は、1体積%以下、0.5体積%以下、0.1体積%以下、又は0.01体積%以下とすることができる。
【0072】
《半導体デバイス》
本発明の半導体デバイスは、パッシベーション層を有するシリコン層又は基材、及びパッシベーション層の貫通孔を通ってシリコン層又は基材の電極領域に電気的に接触している電極を有する。この本発明の半導体デバイスでは、貫通孔の最小径が50μm以下である。また、この本発明の半導体デバイスでは、電極領域の表面ドーパント濃度が1×10
19atoms/cm
3以上、又は電極領域のシート抵抗値が70Ω以下である。
【0073】
このような半導体デバイスは例えば、太陽電池又は薄層トランジスタ、特に太陽電池、より特にバックコンタクト太陽電池及びPERL太陽電池である。
【0074】
本発明の半導体デバイスの製造方法は特に限定されないが、例えば半導体デバイスを製造する本発明の方法によって得ることができる。また、本発明の半導体デバイスの各構成要素の詳細については、半導体デバイスを製造する本発明の方法に関する記載を参照できる。
【実施例】
【0075】
〈実施例1〉
(ホウ素(B)ドープシリコン粒子の作成)
シリコン粒子は、モノシラン(SiH
4)ガスを原料として、二酸化炭素(CO
2)レーザー光を用いたレーザー光熱分解(LP:Laser Pyrolysis)法により作製した。このとき、SiH
4ガスと共にジボラン(B
2H
6)ガスを導入して、ホウ素ドープシリコン粒子を得た。
【0076】
得られたホウ素ドープシリコン粒子のドーパント濃度は、ICP−MS装置(Agilent Technologies社、7500型)で測定すると、1×10
21atoms/cm
3であった。また、得られたホウ素ドープシリコン粒子は、平均一次粒子径が約20nmであった。なお、シリコン粒子の平均一次粒子径は、TEM観察にて10万倍の倍率で画像解析を行い、500個以上の集合を元に算出した。
【0077】
(分散体の調製)
上記のようにして得たホウ素ドープシリコン粒子を、プロピレングリコール(PG)中に分散させて、固形分濃度5質量%のシリコン粒子分散体を得た。
【0078】
(基材の準備)
受光面側にn型拡散層及びパッシベーション層を有し、かつ裏面側にパッシベーション層を有する厚さ200μmのシリコン基材を提供した。ここで、パッシベーション層は、シリコン基材上に、酸化アルミニウム層(10nm)及び窒化ケイ素層(100nm)をこの順でプラズマ・エンハンスド・ケミカル・ベーパー・デポジション法(PE−CVD法)によって形成したものである。このパッシベーション層によれば、酸化アルミニウム層がシリコン基材に接していることによって、シリコン基材に電荷を与え、それによってキャリアのライフタイムを長くすることができる。
【0079】
(シリコン粒子分散体の印刷)
上記のシリコン基材の裏面側の特定部分に対して、シリコン粒子分散体をスクリーン印刷で成膜した。
【0080】
(乾燥)
シリコン粒子分散体が塗布された基板を、200℃のオーブンで乾燥させることによって、シリコン粒子分散体中の分散媒であるプロピレングリコールを除去し、それによってシリコン粒子を含むドーパント注入層(膜厚800nm)を、シリコン基材の裏面側の特定部分に形成した。
【0081】
(光照射)
次に、このドーパント注入層に対して、レーザー光照射装置(Rofin社製、商品名PowerLineE20)を用いてグリーンレーザー光(波長532nm)を照射して、シリコン基材中へのドーパントの注入、及び線状の貫通孔するためのパッシベーション層のアブレーションを行った。したがって、このレーザー光照射の線幅が、パッシベーション層の貫通孔の最小径に対応している。なお、レーザー光照射条件は、照射エネルギー3500mJ/(cm
2・shot)、ショット数20回であり、レーザー光照射は、大気中で行った。
【0082】
なお、レーザー光照射は、線(ライン)幅40μm及び線ピッチ1mmで、線状の領域について行って、線状の貫通孔をパッシベーション層に形成した。パッシベーション層被覆率、すなわちパッシベーション層全体の面積に対する貫通孔以外の部分の面積の割合は、96.3%であった。
【0083】
(評価−シート抵抗値)
上記と同じ条件でドーパント注入層を形成し、そしてレーザー光照射をしたシリコン基板のシート抵抗値を、4端子計(三菱化学アナリテック製、ロレスタAX MCP−T370)で測定した。それによれば、シート抵抗値は40Ω/sqであった。
【0084】
(評価−Dinamic SIMS分析)
シリコン基板のレーザー光照射をした領域の表面ドーパント濃度を、Dynamic SIMS装置(CAMECA社のIMS−7f)で測定した。測定条件は一次イオン種Cs+、一次加速電圧:15.0kV、検出領域30μmΦであった。それによれば、表面ドーパント濃度が1×10
19atoms/cm
3、ドーパント拡散深さが5μmであった。
【0085】
(電極の形成)
裏面側のパッシベーション層上に、スクリーン印刷によってPERL専用ではない一般的なアルミニウム(Al)ペースト(膜厚20μm)を塗布して、パッシベーション層の貫通孔を通して、アルミニウムペーストがシリコン基材の電極領域に達するようにした。また、受光面側には銀(Ag)ペーストを塗布した。
【0086】
その後、ビーム搬送式焼成炉にて、350℃で30秒間にわたって、そして820℃で3.8秒間にわたってアルミニウム及び銀ペーストを焼成することによって、電極を形成して、PERL太陽電池セルを得た。この太陽電池セルの裏面側アルミニウム電極は、レーザー光照射の線幅及びピッチに対応する線幅及びピッチを有していた。
【0087】
(評価−IV特性)
作製された太陽電池の電流−電圧(I−V)特性評価を、ソーラーシミュレータ(山下電装製)を用いて行った。それによれば、変換効率が19.1%、開放電圧が655mV、短絡電流が37.3mA、及び曲線因子(Fill Factor)が77.9%であった。なお、変換効率は、開放電圧、短絡電流、及び曲線因子の積で求めている。
【0088】
実施例1の概略及び評価結果を下記の表1に示している。また、実施例1の評価結果を
図7〜10に示している。
【0089】
〈実施例2〉
レーザー光照射後に、シリコン基材を1質量%−水酸化カリウム(KOH)溶液に30秒間にわたって浸漬させてシリコン基材表面に残存しているシリコン粒子を除去したことを除いて実施例1と同様にして、ドーパントの注入、パッシベーション層のアブレーション、及び太陽電池セルの作成を行った。
【0090】
実施例1と同様にして、シリコン基板のレーザー光照射をした領域のシート抵抗値及び表面ドーパント濃度を測定した。また、実施例1と同様にして、作製された太陽電池の電流−電圧特性評価を行った。
【0091】
実施例2の概略及び評価結果を、下記の表1に示している。また、実施例2の評価結果を
図7〜10に示している。
【0092】
〈比較例1〉
ドーパント注入層に対するレーザー光照射条件を、照射エネルギー2500mJ/(cm
2・shot)、及びショット数20回にしたことを除いて実施例1と同様にして、ドーパントの注入、パッシベーション層のアブレーション、及び太陽電池セルの作成を行った。
【0093】
実施例1と同様にして、シリコン基板のレーザー光照射をした領域のシート抵抗値及び表面ドーパント濃度を測定した。また、実施例1と同様にして、作製された太陽電池の電流−電圧特性評価を行った。
【0094】
比較例1の概略及び評価結果を、下記の表1に示している。また、比較例1の評価結果を
図7〜10に示している。
【0095】
〈比較例2〉
レーザー光照射を線幅70μm及び線ピッチ1mmの線状の領域について行って、線状の貫通孔をパッシベーション層に形成し、パッシベーション層被覆率を93.5%としたことを除いて比較例1と同様にして、ドーパントの注入、パッシベーション層のアブレーション、及び太陽電池セルの作成を行った。
【0096】
実施例1と同様にして、シリコン基板のレーザー光照射をした領域のシート抵抗値及び表面ドーパント濃度を測定した。また、実施例1と同様にして、作製された太陽電池の電流−電圧特性評価を行った。
【0097】
比較例2の概略及び評価結果を、下記の表1に示している。また、比較例2の評価結果を
図7〜10に示している。
【0098】
〈比較例3〉
シリコン粒子を含むドーパント注入層を形成せず、したがってシリコン基材の電極領域をドープしなかったことを除いて実施例1と同様にして、パッシベーション層のアブレーション、及び太陽電池セルの作成を行った。
【0099】
実施例1と同様にして、シリコン基板のレーザー光照射をした領域のシート抵抗値を測定した。また、実施例1と同様にして、作製された太陽電池の電流−電圧特性評価を行った。
【0100】
比較例3の概略及び評価結果を、下記の表1に示している。
【0101】
〈実施例3〉
レーザー光照射幅を50μmにしたことを除いて、実施例1と同様にして、ドーパントの注入、パッシベーション層のアブレーション、及び太陽電池セルの作製を行った。
【0102】
実施例1と同様にして、シリコン基板のレーザー光照射をした領域のシート抵抗値及び表面ドーパント濃度を測定した。また、実施例1と同様にして、作製された太陽電池の電流−電圧特性評価を行った。
【0103】
実施例3の概要及び評価結果を下記表1に示している。また、実施例3の評価結果を
図7〜10に示している。
【0104】
〈比較例4〉
レーザー光照射幅を60μmにしたことを除いて、実施例1と同様にして、ドーパントの注入、パッシベーション層のアブレーション、及び太陽電池セルの作製を行った。
【0105】
実施例1と同様にして、シリコン基板のレーザー光照射をした領域のシート抵抗値及び表面ドーパント濃度を測定した。また、実施例1と同様にして、作製された太陽電池の電流−電圧特性評価を行った。
【0106】
比較例4の概要及び評価結果を下記表1に示している。また、比較例4の評価結果を
図7〜10に示している。
【0107】
〈比較例5〉
レーザー光照射幅を60μmにしたことを除いて、実施例1と同様にして、ドーパントの注入、パッシベーション層のアブレーション、及び太陽電池セルの作製を行った。
【0108】
実施例1と同様にして、シリコン基板のレーザー光照射をした領域のシート抵抗値及び表面ドーパント濃度を測定した。また、実施例1と同様にして、作製された太陽電池の電流−電圧特性評価を行った。
【0109】
比較例5の概要及び評価結果を下記表1に示している。また、比較例5の評価結果を
図7〜10に示している。
【0110】
【表1】
【0111】
(実施例1及び3について)
実施例1及び3の太陽電池では、表1及び
図7〜10で示されているように、比較例1〜5と同程度の又はそれよりも良好な開放電圧が得られた。これは、大きいパッシベーション層被覆率によって正孔と電子との再結合を効果的に抑制できたことによると考えられる。また、実施例1及び3の太陽電池では、比較例1〜5と同程度の又はそれよりも良好な短絡電流及び曲線因子が得られた。これは、裏面側電極の線幅が40μmと細いにも関わらず、電極とシリコン基板との間の良好な電気的な接触が達成されていることによると考えられる。
【0112】
実施例1及び3の太陽電池では、良好な開放電圧と、良好な短絡電流及び曲線因子との組合せによって、良好な変換効率が達成できた。
【0113】
(実施例2について)
水酸化カリウム溶液でシリコン基材表面に残存しているシリコン粒子を除去したことを除いて実施例1と同様な実施例2では、表1で示されているように、実施例1と同様に良好な開放電圧、短絡電流及び曲線因子の組合せ、並びにそれによる良好な変換効率が達成できた。
【0114】
(比較例1について)
レーザー光照射条件の変更によって実施例1よりもシリコン基材の表面ドーパント濃度が低下している比較例1では、表1で示されているように、いずれも貫通孔の線幅が40μmである実施例1と比較して、同程度の良好な開放電圧が得られたものの、短絡電流及び曲線因子が低下した。
【0115】
これは、シリコン基材の電極領域における表面ドーパント濃度が比較的低いことによって、電極とシリコン基板との間の良好な電気的な接触が達成できなかったことによると考えられる。なお、上記のように、この電気的な接触の悪化は、カーケンドール効果、すなわち電極を構成しているアルミニウムがシリコン基材中に拡散し、それによって電極とシリコン層又は基材との界面付近において、電極中にボイドが形成されるという効果によると考えられる。
【0116】
比較例1の太陽電池の変換効率は、良好な開放電圧と、劣った短絡電流及び曲線因子との組合せによって、実施例1〜3と比較して劣っていた。
【0117】
(比較例2について)
裏面側電極の線幅が増大しており、それによってパッシベーション層被覆率が低下していることを除いて比較例1と同様である比較例2の太陽電池では、表1で示されているように、比較例1と比較して開放電圧が低下した。これは、パッシベーション層被覆率が低下したことによって、正孔と電子との再結合を効果的に抑制できなかったことによると考えられる。他方で、この比較例2の太陽電池では、比較例1と比較して良好な短絡電流及び曲線因子が得られた。これは、裏面側電極の線幅が増大したことによって、カーケンドール効果による電気的な接触の悪化を補って、電極とシリコン基板との間の良好な電気的な接触が達成されていることによると考えられる。
【0118】
比較例2の太陽電池の変換効率は、劣った開放電圧と、良好な短絡電流及び曲線因子との組合せによって、実施例1〜3と比較して劣っていた。
【0119】
(比較例3について)
シリコン粒子を含むドーパント注入層を形成せず、したがってシリコン基材の電極領域をドープしなかったことを除いて実施例1と同様である比較例3の太陽電池では、表1で示されているように、実施例1〜3と比較して、開放電圧、短絡電流及び曲線因子のすべてが低下していた。
【0120】
開放電圧の低下は、シリコン基材の電極領域がドープされていなかったことによって、電極領域付近における正孔と電子との再結合を効果的に抑制できなかったことによると考えられる。また、短絡電流及び曲線因子の低下は、シリコン基材の電極領域がドープされていなかったことによって、電極とシリコン基板との間の良好な電気的な接触が達成できなかったことによると考えられる。