特許第6076555号(P6076555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6076555
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】バブル製造用容器
(51)【国際特許分類】
   B01F 3/04 20060101AFI20170130BHJP
   B01F 11/00 20060101ALI20170130BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20170130BHJP
   B65D 39/04 20060101ALN20170130BHJP
【FI】
   B01F3/04 Z
   B01F11/00 B
   A61B17/00 700
   !B65D39/04
【請求項の数】13
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2016-544494(P2016-544494)
(86)(22)【出願日】2016年4月7日
(86)【国際出願番号】JP2016061354
【審査請求日】2016年7月1日
(31)【優先権主張番号】特願2015-79625(P2015-79625)
(32)【優先日】2015年4月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515093504
【氏名又は名称】SonoCore株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】立花 克郎
【審査官】 松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−154282(JP,A)
【文献】 特表平11−507873(JP,A)
【文献】 特表平09−501410(JP,A)
【文献】 特開2004−255222(JP,A)
【文献】 特表2010−508517(JP,A)
【文献】 特開平02−107325(JP,A)
【文献】 特開昭60−064623(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0169043(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 3/04,11/00
A61B 8/06
13/00−18/18
A61K 47/00,49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バブルを製造するために用いられるバブル製造用容器であって、
開口部を備えた容器本体と、
該容器本体の前記開口部上に設けられたセプタムと、
開口を有し、前記セプタム上に設けられ、前記容器本体を前記セプタムとともに密閉する締付部と、を有し、
前記容器本体には、錘部が設けられ、
前記バブルは、水性液体とガスとを含む前記容器本体の密閉状態下、前記バブル製造容器の振動による製造物であり、
前記セプタムは、注射針を刺通して、前記容器本体の内部の前記バブルを取り出すことができるように構成されていることを特徴とするバブル製造用容器。
【請求項2】
前記容器本体は、前記開口部を備えた上部本体部と、該上部本体部よりも小さな内径を有し、前記錘部が取り付けられる下部本体部とで構成されている請求項1に記載のバブル製造用容器。
【請求項3】
前記上部本体部は、その内径が、前記下部本体部の前記内径になるように縮径した縮径部を備えている請求項2に記載のバブル製造用容器。
【請求項4】
前記下部本体部は、その外周面の全体にわたって形成されたネジ溝を備え、
前記錘部は、前記ネジ溝と螺合して、前記下部本体部を移動可能に構成されている請求項2または3に記載のバブル製造用容器。
【請求項5】
前記錘部は、前記容器本体の前記開口部付近に設けられ、前記締付部の前記開口に対応するように、前記注射針が挿通する貫通孔を備えている請求項1に記載のバブル製造用容器。
【請求項6】
前記錘部は、前記開口部を覆うように前記容器本体に取り付けられ、
前記セプタムは、前記錘部上に設けられ、前記貫通孔に対応する位置に前記注射針を刺通するためのマークを有する請求項5に記載のバブル製造用容器。
【請求項7】
前記セプタムの前記マークの位置は、前記締付部を回転することにより、前記錘部の前記貫通孔の位置からシフトするように構成されている請求項6に記載のバブル製造用容器。
【請求項8】
前記容器本体は、長尺状をなし、該容器本体の両端部を覆う2つの錘部を有し、
前記開口部は、前記容器本体の前記両端部間に形成された突出部に設けられている請求項1に記載のバブル製造用容器。
【請求項9】
前記容器本体は、前記両端部を外部に開放するように円筒状に形成されている請求項8に記載のバブル製造用容器。
【請求項10】
前記錘部は、前記容器本体を構成する材料よりも密度の高い材料で構成されている請求項1ないし9のいずれかに記載のバブル製造用容器。
【請求項11】
前記容器本体の前記内部の密閉性を維持するミニナートバルブと、前記容器本体の前記内部と前記ミニナートバルブとを連通させるチューブとをさらに有する請求項1ないし10のいずれかに記載のバブル製造用容器。
【請求項12】
前記ミニナートバルブは、前記注射針を挿通でき、前記チューブと連通する管路と、該管路の開閉を制御する開閉機構とを有し、
前記チューブは、前記セプタムまたは前記容器本体と連結する請求項11に記載のバブル製造用容器。
【請求項13】
前記容器本体は、その内面の少なくとも一部が、凹面、凸面または凹凸面で形成されている請求項1ないし12のいずれかに記載のバブル製造用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブルまたはナノバブルの製造方法に用いられるバブル製造用容器に関する。特に、超音波診断および超音波治療に用いるマイクロバブルまたはナノバブルの製造方法に用いられるバブル製造用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療、食品、魚介類の養殖、排水処理等の様々な分野において、マイクロサイズ(数百マイクロメートル程度)、または、ナノサイズ(数百ナノメートル以下)のバブルの利用が検討されている。特に、医療分野では、マイクロバブルを超音波造影剤として用いて、胸部や腹部を超音波診断する方法が知られている。
【0003】
この超音波診断方法は、超音波造影剤を静脈等から体内へ注入し、診断部位に超音波照射を行って、超音波造影剤からの反射波(反射エコー)を画像化して診断する方法である。そして、超音波造影剤としては、タンパク質や脂質等から構成された外殻と、外殻内に封入されたガスとからなる微小な気泡(マイクロバブル)が広く用いられている。
【0004】
また、近年では、このマイクロバブルを用いた超音波治療方法が検討されている(例えば、特許文献1)。より具体的には、遺伝子や薬剤(薬物)を封入したマイクロバブルを体内へ注入し、これを血管を通して患部に運ぶ。そして、マイクロバブルが患部付近に到達した際に、超音波をマイクロバブルに照射して、マイクロバブルを破裂させる。そうすることにより、マイクロバブルに封入された薬物を患部に集中的に投与することができる。
【0005】
このようなマイクロバブルの製造方法として、過飽和バブル発生法、気液2相流旋回法が知られている。過飽和バブル発生法は、マイクロバブルの構成材料と生理食塩水とを含む混合液中に気体を高圧下で溶解させた後、減圧することにより混合液中にマイクロバブルを生成させる方法である。また、気液2相流旋回法は、上記混合液を高速で攪拌することにより、混合液の渦流を発生させて、渦流の中に十分に気体を巻き込んだ後、この渦流を止めることにより混合液中にマイクロバブルを生成させる方法である。
【0006】
上記のマイクロバブルの製造方法では、マイクロバブルを生成するために、最低でも1〜10Lの混合液を用意する必要があった。また、少量の混合液(例えば、数mlの混合液)で安定的にマイクロバブルを生成することが困難であった。また、生成するマイクロバブルのサイズにバラつきがあるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−209896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、均一なサイズのバブル(マイクロバブルまたはナノバブル)を安定的に製造することができるバブル製造用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は以下の(1)〜(14)の本発明により達成される。
(1) バブルを製造するために用いられるバブル製造用容器であって、
開口部を備えた容器本体と、
該容器本体の前記開口部上に設けられたゴム栓とを有し、
前記ゴム栓は、注射針を刺通して、前記容器本体の内部の前記バブルを取り出すことができるように構成されていることを特徴とするバブル製造用容器。
【0010】
(2) 開口を有し、前記ゴム栓上に設けられ、前記容器本体を前記ゴム栓とともに密閉する締付部をさらに有し、
前記容器本体には、錘部が設けられている上記(1)に記載のバブル製造用容器。
【0011】
(3) 前記容器本体は、前記開口部を備えた上部本体部と、該上部本体部よりも小さな内径を有し、前記錘部が取り付けられる下部本体部とで構成されている上記(2)に記載のバブル製造用容器。
【0012】
(4) 前記上部本体部は、その内径が、前記下部本体部の前記内径になるように縮径した縮径部を備えている上記(3)に記載のバブル製造用容器。
【0013】
(5) 前記下部本体部は、その外周面の全体にわたって形成されたネジ溝を備え、
前記錘部は、前記ネジ溝と螺合して、前記下部本体部を移動可能に構成されている上記(3)または(4)に記載のバブル製造用容器。
【0014】
(6) 前記錘部は、前記容器本体の前記開口部付近に設けられ、前記締付部の前記開口に対応するように、前記注射針が挿通する貫通孔を備えている上記(2)に記載のバブル製造用容器。
【0015】
(7) 前記錘部は、前記開口部を覆うように前記容器本体に取り付けられ、
前記ゴム栓は、前記錘部上に設けられ、前記貫通孔に対応する位置に前記注射針を刺通するためのマークを有する上記(6)に記載のバブル製造用容器。
【0016】
(8) 前記ゴム栓の前記マークの位置は、前記締付部を回転することにより、前記錘部の前記貫通孔の位置からシフトするように構成されている上記(7)に記載のバブル製造用容器。
【0017】
(9) 前記容器本体は、長尺状をなし、該容器本体の両端部を覆う2つの錘部を有し、
前記開口部は、前記容器本体の前記両端部間に形成された突出部に設けられている上記(1)に記載のバブル製造用容器。
【0018】
(10) 前記容器本体は、前記両端部を外部に開放するように円筒状に形成されている上記(9)に記載のバブル製造用容器。
【0019】
(11) 前記錘部は、前記容器本体を構成する材料よりも密度の高い材料で構成されている上記(2)ないし(10)のいずれかに記載のバブル製造用容器。
【0020】
(12) 前記容器本体の前記内部の密閉性を維持するミニナートバルブと、前記容器本体の前記内部と前記ミニナートバルブとを連通させるチューブとをさらに有する上記(1)ないし(11)のいずれかに記載のバブル製造用容器。
【0021】
(13) 前記ミニナートバルブは、前記注射針を挿通でき、前記チューブと連通する管路と、該管路の開閉を制御する開閉機構とを有し、
前記チューブは、前記ゴム栓または前記容器本体と連結する上記(12)に記載のバブル製造用容器。
【0022】
(14) 前記容器本体は、その内面の少なくとも一部が、凹面、凸面または凹凸面で形成されている上記(1)ないし(13)のいずれかに記載のバブル製造用容器。
【発明の効果】
【0023】
本発明のバブル製造用容器を用いることにより、水性液体中に均一なサイズのバブルを多量に安定的に生成することができる。その結果、均一なサイズのバブルを多量に含有する容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明のバブルの製造方法により製造されるバブルの一例を説明するための図である。
図2図2は、本発明のバブルの製造方法により製造されるバブルの一例について、その一部を切断した状態を示す斜視図である。図1(a)は、外殻内にガスが封入されたバブルの一部を切断した状態を示しており、図1(b)および図1(c)は、外殻内にガスおよび薬物が封入されたバブルの一部を切断した状態を示す。
図3図3は、本発明のバブルの製造方法の第1実施形態を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、本発明のバブルの製造方法の第1実施形態を説明するための断面図である。
図5図5は、図4(c)に示す容器を振動させる工程において、水性液体と容器の内面(上面)とが激しく衝突した状態を説明するための部分拡大図である。
図6図6は、本発明のバブルの製造方法の第2実施形態を説明するためのフローチャートである。
図7図7は、本発明のバブルの製造方法の第2実施形態を説明するための断面図である。
図8図8は、本発明のバブルの製造方法の第5実施形態を説明するためのフローチャートである。
図9図9は、本発明のバブルの製造方法の第6実施形態に用いられる製造容器の蓋付近を示す部分断面図である。
図10図10は、本発明のバブルの製造方法の第7実施形態に用いられる容器を模式的に示す断面図である。
図11図11は、本発明のバブルの製造方法の第8実施形態を説明するための斜視図である。
図12図12は、図11(a)に示すミニナートバルブのゴム栓付近の構成(ハンドルは省略)を説明するための図である。図12(a)は、ミニナートバルブのゴム栓付近の上面図であり、図12(b)は、図12(a)のX−X線断面図である。
図13図13は、図11(c)に示すバブル含有容器の断面図である。
図14図14は、本発明のバブルの製造方法の第9実施形態に用いられる製造容器を説明するための斜視図である。
図15図15は、本発明のバブルの製造方法の第10実施形態に用いられる製造容器を説明するための断面図である。
図16図16は、本発明のバブルの製造方法の第11実施形態に用いられる製造容器を説明するための断面図である。図16(a)は、分解した状態の製造容器を示しており、図16(b)は、組立てた状態の製造容器を示している。
図17図17は、本発明のバブルの製造方法の第12実施形態に用いられる製造容器を説明するための断面図である。
図18図18は、本発明のバブルの製造方法の第13実施形態に用いられる製造容器を説明するための断面図である。図18(a)は、分解した状態の製造容器を示しており、図18(b)は、組立てた状態の製造容器を示している。
図19図19は、図18(b)に示す製造容器の蓋に形成される開口部の位置を説明するための図である。図19(a)は、注射器の注射針をゴム栓に刺通する前の状態を説明するための図であり、図19(b)は、注射針をゴム栓から抜いた後に締付部を底板部に締め付けた状態を説明するための図である。
図20図20(a)は、5000rpmおよび6500rpmの回転数でバブルを製造した時のバブルのバブル径分布を示すグラフである。図20(b)は、図20(a)に示すグラフにおいて、横軸が0〜700nmの範囲である部分拡大図である。
図21図21(a)は、密閉バイアル瓶の回転数とバブルの平均径との関係を示すグラフである。図21(b)は、密閉バイアル瓶の回転数とバブルの含有量との関係を示すグラフである。
図22図22(a)は、密閉バイアル瓶内に封入されるガスの容量とバブルの平均径との関係を示すグラフである。図22(b)は、密閉バイアル瓶内に封入されるガスの容量とバブルの含有量との関係を示すグラフである。
図23図23は、37℃において48時間培養させた脳血管周皮細胞培地の蛍光顕微鏡画像である。図23(a)は、照射強度:0.6W/cmで超音波照射したサンプルの画像であり、図23(b)は、照射強度:0.8W/cmで超音波照射したサンプルの画像である。
図24図24は、37℃において48時間培養させた脳血管周皮細胞培地の蛍光顕微鏡画像である。図24(a)は、照射強度:0.9W/cmで超音波照射したサンプルの画像であり、図24(b)は、照射強度:1.0W/cmで超音波照射したサンプルの画像である。
図25図25は、実施例4〜11で得られたバブルのバブル径分布を示すグラフである。
図26図26は、実施例12〜17で得られたバブルのバブル径分布を示すグラフである。
図27図27は、実施例18および19で得られたバブルの顕微鏡像およびバブル径分布グラフである。
図28図28は、実施例20で得られたバブルの顕微鏡像およびバブル径分布グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のバブル、バブルの製造方法およびバブル製造用容器を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。
【0026】
1.バブル
まず、本発明のバブルの製造方法およびバブル製造用容器の説明に先立って、本発明のバブルの製造方法により製造されるバブル(本発明のバブル)について説明する。
【0027】
図1は、本発明のバブルの製造方法により製造されるバブルの一例を説明するための図である。図2は、本発明のバブルの製造方法により製造されるバブルの一例について、その一部を切断した状態を示す斜視図である。なお、図2(a)は、外殻内にガスが封入されたバブルの一部を切断した状態を示しており、図2(b)および図2(c)は、外殻内にガスおよび薬物が封入されたバブルの一部を切断した状態を示す。
【0028】
<第1構成例>
まず、図1に示すバブル1について説明する。
図1に示すバブル1(気泡)は、水性液体10中にガス3が微分散することにより形成される。このバブル1は、後述する本発明のバブルの製造方法の第1および第2実施形態により製造することができる。このようなバブル1は、医療、食品、魚介類の養殖、排水処理等の様々な分野に用いることができる。本実施形態では、バブル1を超音波診断における超音波造影剤として用いる場合について説明する。
【0029】
かかる構成のバブル1は、水性液体10として、水性媒体を用いて形成される。水性媒体としては、例えば、蒸留水、純水、超純水、イオン交換水、RO水等の水、Saline、PBS(phosphate buffered saline)等の生理食塩水(0.9%程度の食塩水)、グルコース、スクロース等の各種糖類と蒸留水とを混合した糖水溶液等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
ガス3は、バブル1を製造する際の温度(20℃程度)において、気体状の物質である。また、ガス3は、バブル1を体内に注入した状態において、すなわち、体内の温度(37℃程度)においても、気体状の物質である。
【0031】
ガス3としては、特に限定されないが、例えば、空気、窒素、亜酸化窒素、酸素、二酸化炭素、水素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、クリプトンのような不活性ガス、六フッ化硫黄、十フッ化二硫黄、トリフルオロメチル硫黄ペンタフルオリドのようなフッ化硫黄、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、エチレン、プロピレン、プロパジエン、ブテン、アセチレン、プロピン、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタンのような低分子量炭化水素類またはこれらのハロゲン化物、ジメチルエーテルのようなエーテル類、ケトン類、エステル類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの物質の中でも、特に、六フッ化硫黄、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタンが好ましい。これらのガスが封入されたバブル1は、体内において安定性が高く、血管を通して患部(治療対象部位)または診断対象部位までより確実に運搬される。
【0032】
このような成分で構成されたバブル1の径は、本発明のバブルの製造方法の各工程の条件を変更することにより変化する。すなわち、製造されるバブル1は、ミクロンサイズ(数百マイクロメートル程度)、または、ナノサイズ(数百ナノメートル程度)を有することとなる。
【0033】
具体的に、バブル1の平均径は、特に限定されないが、10nm〜1000μm程度であるのが好ましく、10nm〜100μm程度であるのがより好ましく、50〜2000nm程度であるのがさらに好ましい。バブル1の平均径が上記範囲内であれば、バブル1を静脈注射により体内に注入した際に、バブル1の径が十分に小さいため、血流によりバブル1が血管内を滑らかに移動することができる。また、このような径のバブルは、血管内での安定性が高く、血管内を移動している間に消滅することなく、目的の部位まで確実に運ばれる。特に、ナノバブルは、血管内での安定性が高いため、ほぼ消滅することなく、目的の部位まで確実に搬送される。
【0034】
一般的に、気体を内包するバブルは、液体と気体との界面において効率良く超音波を反射する性質を有している。そのため、上記範囲の平均径を有するバブル1は、液体(水性液体10、または、超音波造影剤として体内に注入された際には、血液)とガス3との界面の面積が十分に大きく、超音波造影剤として有効に用いられる。
【0035】
また、上述したような構成のバブル1は、食品、魚介類の養殖、排水処理等の医療分野以外の分野にも用いることができる。特に、上記範囲の平均径を有するバブル1は、その安定性を十分に高くすることができ、取扱いが容易なため、様々な分野に適用することができる。
【0036】
<第2構成例>
次に、図2(a)に示すバブル1について説明する。
なお、前記第1構成例のバブルとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図2(a)に示すバブル1(気泡)は、後述する本発明のバブルの製造方法の第3および第5〜第13実施形態により製造することができる。図2(a)のバブル1は、バブル1の殻を構成する外殻2(球状の膜)と、外殻2内に封入されたガス3とを有している。このようなバブル1は、医療、食品、魚介類の養殖、排水処理等の様々な分野に用いることができる。本実施形態では、バブル1を超音波診断における超音波造影剤として用いる場合について説明する。以下、バブル1を構成する各成分を説明する。
【0037】
外殻2は、その内側に封入されるガス3をバブル1内に保持する機能を有している。
このような外殻2は、主として1つの分子中に疎水性と親水性との両方の性質(置換基)を有する両親媒性材料(外殻材料)から構成されている。両親媒性材料としては、特に限定されないが、例えば、アルブミンのようなタンパク質、ポリカチオン性脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチダルエタノールアミンのようなリン脂質、パルミチン酸、ステアリン酸のような高級脂肪酸、ガラクトースのような糖類、コレステロール、シトステロールのようなステロール類、界面活性剤、天然または合成高分子、蛍光色素、抗体、標識金属等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
なお、図2には示されていないが、外殻2を構成する両親媒性材料は、水性媒体中において、疎水基が内側に、親水基が外側になるようにして球状に配置される。この性質により、外殻2は、両親媒性材料の分子の単層で構成されるミセルや、両親媒性材料の分子の二重層で構成されるリポソーム(球状の分子膜)となる。
【0039】
このような成分で構成されたバブル1の径は、図1に示すバブル1と同様である。
【0040】
一般的に、外殻内に気体を内包するバブルは、外殻と気体との界面において効率良く超音波を反射する性質を有している。そのため、上述した範囲の平均径を有するバブル1は、外殻2とガス3との界面の面積が十分に大きく、超音波造影剤として有効に用いられる。
【0041】
<第3構成例>
次に、図2(b)および図2(c)に示すバブル1について説明する。
なお、前記第1および第2構成例のバブルとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図2(b)および図2(c)に示すバブル1は、後述する本発明のバブルの製造方法の第4〜第13実施形態により製造することができる。このようなバブル1は、バブル1の殻を構成する外殻2と、外殻2内に封入されるガス3および薬物4を有している。このバブル1は、超音波治療および超音波診断に用いられる。なお、図2(b)では、薬物4が気体状態あるいは固体状態で外殻2内に封入されているバブル1を示しており、図2(c)では、薬物4が液体状態で外殻2内に封入されているバブル1を示している。
【0042】
外殻2は、その内側に封入されるガス3や薬物4をバブル1内に保持する機能を有し、バブル1が患部に運ばれるまで薬物4を保護する機能を有している。
【0043】
また、図2(b)および図2(c)に示すバブル1において、薬物4は、前立腺癌、子宮筋腫、心筋梗塞、脳梗塞等の様々な疾病の治療に有効な成分である。薬物4は、バブル1に包含された状態で患部に運搬され、超音波照射により患部付近で外殻2を破裂させることにより、患部に投与される。なお、図示しないが、薬物4は、外殻2自体に含有されてもよいし、外殻2の外表面に吸着されていてもよい。
【0044】
薬物4としては、疾病の治療に有効であれば特に限定されないが、遺伝子、薬剤等を含む。具体的には、ペプチド、抗体、オリゴ糖、多糖、遺伝子、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、リボザイム、トリプルヘリックス分子、ウイルスベクター、プラスミド、低分子有機化合物、抗癌剤、金属等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
薬物4とガス3との体積比率は、1:99〜90:10程度であるのが好ましく、10:90〜70:30程度であるのがより好ましく、40:60〜60:40程度であるのがさらに好ましい。薬物4とガス3との体積比率が上記範囲内であれば、バブル1の安定性が向上し、患部付近までより確実にバブル1を運搬することができる。また、患部付近で外殻2を破裂させた際に、患部に対して、十分な量の薬物を投与することができる。そのため、患部をより効率良く治療することができる。
【0046】
このような成分で構成されたバブル1の径は、図2(a)に示すバブル1と同様に、本発明のバブルの製造方法の各工程の条件を変更することにより変化する。
【0047】
ここで、癌細胞が存在する患部では、その周囲の血管から癌細胞へと、正常血管よりも細径の新生血管が伸びている。平均径が200〜300nm程度のバブル1であれば、バブル1が、新生血管内にも円滑に搬送され、癌細胞にまで到達することができる。すなわち、かかるバブル1は、癌治療に好適に用いられることができる。また、一部のバブル1を、血管壁を通過させて、癌細胞に取り込ませることもできる。
また、バブル1の平均径が600〜900nm程度のバブル1は、脳の血管内を円滑搬送されるとともに、その位置を超音波画像において確実に特定することができる。そのため、脳治療(例えば、脳血管内治療等)に好適に用いることができる。
【0048】
なお、図1および図2(a)〜(c)に示すバブル1の平均径は、例えば、レーザー回折・散乱法、ナノ粒子トラッキング解析法、電気抵抗法、AFM(Atomic Force Microscope)、レーザー顕微鏡による観測等により測定することができる。また、AFMを測定する装置としては、例えば、Malvern社製の共振式粒子計測システム(商品名:アルキメデス)を用いることができる。
【0049】
上述したようなバブル1は、以下に記載する本発明のバブルの製造方法により製造することができる。以下、本発明のバブルの製造方法について、詳細に説明する。
【0050】
2.バブルの製造方法
<第1実施形態>
次に、本発明のバブルの製造方法の第1実施形態について説明する。前述した図1に示すバブル1は、本実施形態のバブルの製造方法により、製造することができる。
【0051】
図3は、本発明のバブルの製造方法の第1実施形態を説明するためのフローチャートであり、図4(a)〜(d)は、本発明のバブルの製造方法の第1実施形態を説明するための製造容器の断面図であり、図5は、図4(c)に示す容器を振動させる工程において、水性液体と容器の内面(上面)とが激しく衝突した状態を説明するための部分拡大図である。
【0052】
なお、以下の説明では、図4(a)〜(d)および図5中の上側を「上」と言い、図4(a)〜(d)および図5中の下側を「下」と言う。
【0053】
本実施形態のバブルの製造方法は、図3に示すように、工程(S1)〜(S5)の5つの工程を有する。工程(S1)は、水性液体、および水性液体が注入されるバブル製造用容器(以下、単に「製造容器」という)を準備する工程である。工程(S2)は、この水性液体を製造容器の所定の高さまで注入する工程である。工程(S3)は、製造容器内にガスを充填させた状態で製造容器を密閉する工程である。工程(S4)は、水性液体が容器の内面に繰り返し衝突するように、所定の回転数で製造容器を振動させる工程である。工程(S5)は、製造容器を静置する工程である。以下、これらの工程について順次説明する。
【0054】
[S1] 準備工程
まず、水性液体10を準備する。
本実施形態のバブルの製造方法では、水性液体10として、前述した水性媒体が使用される。
【0055】
本発明者は、水性液体10中の水の濃度が高くなるほど、生成されるバブル1の径が小さくなるとともに、その生成量が多くなることを見出した。したがって、水性液体10として、水(蒸留水)を用いた場合に、より小さい径のバブル1をより多量に生成することができる。
また、水性液体10として、糖水溶液を用いた場合には、糖水溶液中の糖濃度が低くなるほど、すなわち、水の濃度が高くなるほど、生成されるバブル1の径が小さくなるとともに、その生成量が増加する。したがって、水性媒体の種類および工程(S4)の条件を適宜設定することにより、所望の径のバブル1を容易に得ることができる。
【0056】
なお、上述した糖水溶液中の糖濃度は、特に限定されないが、0.01〜60wt%程度であるのが好ましく、0.1〜50wt%程度であるのがより好ましく、5〜30wt%程度であるのがさらに好ましい。上記範囲の糖濃度の糖水溶液を用いることにより、後述する工程(S4)において、水性液体10中に生成されるバブル1の安定性が高くなる。そのため、バブル1が不本意に破裂するのをより確実に防止して、バブル1の経時安定性が向上する。
【0057】
次に、製造容器20(バブル製造用容器の第1実施形態)を準備する。
製造容器20は、開口部を備え、水性液体10を収容する容器本体21と、容器本体21を密閉するための蓋22とを有している。
【0058】
容器本体21は、特に限定されないが、図4(a)に示すような外形が有底円筒状をなしていることが好ましい。本実施形態では、容器本体21として、容量が0.5〜20ml程度のバイアル瓶を用いる。本発明のバブルの製造方法では、容器本体21として、このような容量の小さなバイアル瓶を用いた場合であっても、容器本体21を蓋22で密閉した際に、容器本体21内の密閉空間で適切な圧力が水性液体10に付与されるので、均一なサイズのバブル1を安定的に得ることができる。特に、容量が0.5〜1.5ml程度のバイアル瓶であれば、1つの製造容器20内に、1回の超音波診断に必要となる0.3〜0.6ml程度のバブル含有液を製造することができる。この場合、超音波診断の際に、1つの製造容器20内のバブル含有液を使い切ることができるため、製造されるバブル含有液の無駄をなくすことができる。
【0059】
このように容量の小さいバイアル瓶(容量:0.5〜20ml程度)の寸法は、長手方向の長さXが、35〜60mm程度であり、外径Rが、10〜40mm程度である。
【0060】
蓋22は、図4(b)〜(d)に示すように、容器本体21の瓶口に密着する円盤状のゴム栓(セプタム)221と、ゴム栓221を容器本体21の瓶口に固定する締付部222を備えている。
【0061】
ゴム栓221は、特に限定されないが、例えば、シリコン製のゴム栓を用いることができる。
【0062】
締付部222は、ゴム栓221の縁部を覆うように構成されており、その平面視略中央に開口を有している。また、締付部222の瓶口側の内周面および容器本体21の瓶口側の外周面には、互いに螺合可能に形成されるネジ溝が、それぞれ形成されており(図示せず)、これらを螺合させることにより、ゴム栓221が容器本体21の瓶口と密着した状態で固定される。また、締付部222を容器本体21の瓶口にかしめることで、ゴム栓221が容器本体21の瓶口と密着した状態で、容器本体21と締付部222とを固定することもできる。
【0063】
[S2]水性液体を製造容器に注入する工程
調製された水性液体10を容器本体21(製造容器20)の所定の高さまで注入する。本実施形態では、図4(a)に示すように、Y[mm]まで注入する。したがって、図4(a)に示すように、水性液体10が注入された状態の容器本体21は、その上部に空隙部11を有する。
【0064】
本実施形態では、水性液体10が注入された容器本体21(製造容器20)を水平に静置した状態において、容器本体21の高さ(長手方向の長さ)をX[mm]とし、容器本体21における水性液体10の液面の高さをY[mm]としたとき、0.2≦Y/X≦0.7の関係を満足するのが好ましい。上記関係を満足することにより、十分な大きさの空隙部11が存在するので、工程(S4)において、水性液体10を製造容器20の上下面および側面(特に、上下面)により勢いよく衝突させることができる。この衝突により、水性液体10中に衝撃波が生じ、水性液体10中にバブル1を容易に形成することができる。
【0065】
なお、前記関係は、0.3≦Y/X≦0.5の関係を満足するのがより好ましく、0.35≦Y/X≦0.4の関係を満足するのがさらに好ましい。これにより、工程(S4)において、水性液体10中にバブルをより容易に形成することができる。
【0066】
[S3]製造容器を密閉する工程
次に、容器本体21にガス3を充填させた状態で密閉する(図4(b)参照)。具体的には、水性液体10が注入された容器本体21の空隙部11を、ガス3でパージした後、蓋22を容器本体21の開口部(瓶口)に締付ける。これにより、製造容器20内に水性液体10とガス3とが密閉される。
【0067】
容器本体21の空隙部11をガス3でパージする方法としては、例えば、水性液体10が注入された容器本体21をチャンバー内に移動させる。次に、チャンバー内の空気をガス3で置換する。その後、蓋22を容器本体21の開口部に締付けることにより、製造容器20内に水性液体10とガス3とを密閉することができる。
ガス3としては、前述した各種ガスが使用される。
【0068】
[S4]製造容器を振動させる工程
次に、水性液体10が、製造容器20の上下面および側面(特に、上下面)に繰り返し衝突するように、製造容器20を振動させる。本実施形態では、図4(c)に示すように、製造容器20が、略その長手方向(図4(c)では、鉛直方向)に往復運動するように、製造容器20を振動させる。
【0069】
本工程では、工程(S3)で密閉した製造容器20(図4(c)の下図)を上方向に振動させる(図4(c)の真中の図)。これにより、水性液体10は、製造容器20の中間付近に移動する。更に製造容器20を上方向に振動させると、水性液体10が製造容器20の上部に移動して、蓋22の下面(ゴム栓221)に衝突する(図4(c)の上図)。この際に、図5に示すように、衝撃波が発生する。この衝撃波の圧力により、ガス3が水性液体10中に微分散し、バブル1が形成する。このバブル1内には、振動により水性液体10に微分散または溶解したガス3が含まれる。
【0070】
一方、製造容器20(図4(c)の上図)を下方向に振動させる(図4(c)の真中の図)。これにより、水性液体10は、製造容器20の中間付近に移動する。更に製造容器20を下方向に振動させると、水性液体10が製造容器20の下部に移動して、製造容器20の下面に衝突する(図4(c)の下図)。この時も、図5に示すように、衝撃波が発生する。
【0071】
また、製造容器20を鉛直方向に振動させる際に、水性液体10は、製造容器20の内側の側面とも衝突する。この時も、図5に示すように、衝撃波が発生する。
【0072】
以上の操作を繰り返し行うことによって、水性液体10中に均一なサイズのバブル1を多量に安定的に生成させることができる。
【0073】
本発明のバブルの製造方法では、十分に微細で、均一なサイズのバブル1を得るために、製造容器20を5000rpm以上で振動させる。これにより、水性液体10と製造容器20とが衝突する際に発生する衝撃波の大きさ(圧力)が十分に大きくなり、水性液体10中に生じるバブル1が微細化され、そのサイズを均一にすることができる。また、製造容器20の回転数を上記範囲内で低めに設定した場合には、発生する衝撃波の大きさが小さくなるので、比較的径の大きなバブル1を生成することができる。また、回転数を高めに設定した場合には、発生する衝撃波の大きさが大きくなるので、比較的径の小さいバブル1を生成することができる。なお、本明細書において、製造容器20の「回転数」とは、単位時間当たりに、製造容器20がその全振動経路を移動する回数を意味する。例えば、製造容器20が5000rpmで振動するとは、製造容器20が、1分間に全振動経路を5000回移動(振動)することを意味する。
【0074】
また、製造容器20の回転数は、5500rpm以上であることがより好ましく、6000〜20000rpmであることがさらに好ましい。製造容器20の回転数を上記範囲内とすることにより、振動により生成したバブル1同士が、衝突により崩壊したり、合体して粗大化するのをより確実に防止することができる。これにより、バブル1の径を微細化しつつ、より均一なサイズのバブル1を多量に水性液体10中に生成させることができる。
【0075】
上記のような回転数で製造容器20を振動させることができる装置としては、例えば、ビーズ方式の高速細胞破砕システム(ホモジナイザー)を用いることができる。具体例としては、バーティンテクノロジーズ(bertin Technologies)社製のプレセリーズ(Precellys)等を用いることができる。
【0076】
また、水性液体10と製造容器20とが衝突する際に発生する衝撃波の圧力は、40kPa〜1GPaとなることが好ましい。水性液体10と製造容器20との衝突時に発生する衝撃波の圧力が上記範囲内となることにより、水性液体10中に生じるバブル1をより微細化し、そのサイズをより均一にすることができる。特に、水性液体10と製造容器20との衝突時に発生する衝撃波の圧力が大きくなるほど、より微細なバブル1を生成することができる。
【0077】
製造容器20を振動させる際に、製造容器20の長手方向の振動幅は、0.7X〜1.5X[mm]程度であるのが好ましく、0.8X〜1X[mm]程度であるのがより好ましい。これにより、製造容器20の振動時に、水性液体10と製造容器20の下面および蓋22とを確実に衝突させることができ、水性液体10と製造容器20の下面および蓋22との衝突回数を十分に多くすることができる。また、このように十分な振動幅で製造容器20を振動させることにより、水性液体10が製造容器20内を移動する速度が大きくなる。そのため、水性液体10と製造容器20の下面および蓋22との衝突時に発生する衝撃波の大きさが十分に大きくなる。結果として、水性液体10中に微細なバブル1を多量に生成させることができる。
【0078】
また、製造容器20を鉛直方向に往復運動させる際に、製造容器20は、その短手方向(水平方向)にも振動させるのが好ましい。これにより、製造容器20の内側の側面にも水性液体10が衝突するので、水性液体10に衝撃波をより多く発生させることができる。製造容器20の短手方向への振動幅は、0.3X〜0.8X[mm]程度であるのが好ましく、0.5X〜0.7X[mm]程度であるのがより好ましい。これにより、上述した効果はより顕著となる。
なお、製造容器20を振動させる方向は、その短手方向のみであってもよい。この場合、製造容器20の短手方向(水平方向)への振動幅は、上述した短手方向への振動幅と同じであることが好ましい。かかる振動幅であれば、製造容器20の内側の側面に水性液体10が確実に衝突するので、水性液体10に衝撃波をより多く発生させることができる。その結果、水性液体10中に微細なバブル1を多量に生成させることができる。
【0079】
また、本工程では、水性液体10を製造容器20の上下面および側面に衝突させる際における製造容器20と製造容器20内の水性液体10との瞬間相対速度が40km/h以上となるように製造容器20を振動させることが好ましい。また、かかる瞬間相対速度が50km/h以上となるように製造容器20を振動させることがより好ましい。上記条件を満足することにより、水性液体10と製造容器20とが衝突する際に生じる衝撃波の圧力を十分に大きくすることができる。その結果、水性液体10中に生じるバブル1をより微細化し、そのサイズをより均一にすることができる。
【0080】
なお、製造容器20を上記条件で振動させる時間は、10〜120秒程度であるのが好ましく、30〜60秒程度であるのがより好ましい。製造容器20の振動時間を上記範囲内とすることにより、水性液体10が製造容器20と衝突する回数が十分に多くなるため、水性液体10中に、多量のバブル1を生成させることができる。なお、製造容器20の振動時間を上記範囲内で長く設定することにより、水性液体10中に生成されるバブル1の量をより多くすることができる。
【0081】
なお、水性液体10中に生成されるバブル1の平均径は、製造容器20の回転数を前述した範囲内で変更することにより調整することができる。本実施形態では、水性液体10として、上述したような水性媒体を用いることにより、おおよそ数十〜数百ナノメーターサイズのナノバブルを安定的に生成させることができる。
【0082】
なお、本実施形態では、製造容器20が、ほぼその長手方向に往復運動するように、製造容器20を振動させているが、製造容器20を振動させる方法は、これに限定されない。例えば、製造容器20が、主として、その短手方向および/または長手方向に回転運動するように、製造容器20を振動させてもよい。この場合であっても、製造容器20内の水性液体10は、製造容器20の上下面および側面に繰り返し衝突することにより、衝撃波が発生する。このような振動方法を用いても、水性液体10中に、均一なサイズのバブル1を多量に安定的に生成することができる。
【0083】
[S5]製造容器を静置する工程
上記条件で製造容器20を振動させた後、製造容器20を静置する(図4(d)参照)。これにより、製造容器20内に均一なサイズのバブル1(図1参照)を多量に安定的に製造することができる。また、同時に、均一なサイズのバブル1を多量に含有する製造容器20が得られる。
【0084】
なお、上述した工程(S2)と、工程(S3)と、工程(S4)とは、水性液体10の温度を一定に維持するようにして行われるのが好ましい。これにより、バブルの製造過程で水性液体10の特性(粘性等)が安定するため、水性液体10中に均一な径のバブル1を安定的に生成させることができる。水性液体10の温度を一定に維持するための方法としては、例えば、上述した各工程(S2)〜(S4)をグローブボックスや恒温槽内で行う方法が挙げられる。特に、本実施形態では、工程(S4)において、製造容器20を高速で振動させるため、水性液体10と製造容器20の内面との衝突により製造容器20が発熱し易い。しかし、恒温槽内で製造容器20を振動させることにより、水性液体10の温度が上昇するのを確実に防止することができる。その結果、水性液体10中に均一な径のバブル1をより安定的に生成させることができる。
【0085】
以上の工程(S1)〜(S5)を経て、平均径が10nm〜1000μm程度のバブル1が製造される。なお、水性液体10として、上述したような水性媒体を用いる本実施形態では、平均径が小さいバブル1を生成し易い。特に、本実施形態では、平均径が10nm〜1000nmのバブル1を安定的に多量に生成することができる。
【0086】
なお、従来のバブルの製造方法では、大掛かりな還流装置や、バブルの製造装置を構成する様々なシステム(チューブ、ノズル、コンプレッサ等)が必要であった。そのため、食品分野や医療分野等に用いられるバブルを製造する際に、清潔で、かつ無菌環境を維持するのが困難であった。これに対して、本発明では、バブル1の製造に気密性の高い製造容器20を用いるため、水性液体10およびガス3を製造容器20内に含有した状態で、例えば、γ線滅菌等による滅菌処理を製造容器20に施せばよい。これにより、製造容器20内が滅菌されるため、バブル1を滅菌環境下で製造することができる。したがって、このように製造されたバブル1は、食品分野や医療分野等に好適に用いることができる。
【0087】
なお、上記のようにして得られたバブル1は、水性液体10中に安定的に存在することができる。そのため、得られたバブル含有液を含む製造容器20(以下、単に「バブル含有容器」という)は、室温にて長期保存することができる。具体的には、6〜24か月間もの期間にわたって保存することができる。また、これだけ長期間保存した後でも、水性液体10中でのバブル1の安定性が高いため、再度バブル含有容器を振動させたりする必要なく、使用することが可能である。また、製造容器として、容量が小さい製造容器20を用いることができるので、バブル含有容器の単価を抑えることができる。そのため、上記のようにして得られたバブル含有容器は、医療機関等にとっては、取扱い易いというメリットがある。
【0088】
[S6]遠心分離処理工程
本実施形態のバブルの製造方法は、工程(S5)後に、バブル含有容器に対して、遠心分離処理を行ってもよい。この処理により、製造容器20内に生成されたバブル1を、所望の径別に分離することができる。
具体的には、バブル含有容器に対して遠心分離処理を行うことにより、径の大きいバブル1が製造容器20の上層へ移動する傾向があり、径の小さいバブル1が製造容器20の下層へ移動する傾向がある。したがって、製造容器20の上層の液体(上澄み液)を吸引手段(注射器、ピペット等)により除去すれば、製造容器20内に残存するバブル含有液中のバブル1の平均径は、工程(S5)後に得られたバブル含有液中のバブル1の平均径よりも小さくなる。また、吸引手段により吸引したバブル含有液(上澄み液)中のバブル1の平均径は、工程(S5)後に得られたバブル含有液中のバブル1の平均径よりも大きくなる。このように、遠心分離処理を用いることにより、より単分散なバブル径分布を有するバブル1を得ることができる。
また、水性液体10と比重の異なる物質をバブル含有液に加えて、遠心分離処理することにより、径の大きいバブル1がより上層へと移動し易くなり、径の小さいバブル1がより下層へと移動し易くなる、その結果、より単分散なバブル径分布を有するバブル1を得ることができる。
【0089】
工程(S1)〜(S5)を経て、例えば、平均径が600nmのバブル1を含有するバブル含有液を経た場合、遠心分離の条件を適宜設定することにより、平均径が200〜300nmのバブル1を含有するバブル含有液を得ることができる。このバブル含有液を超音波造影剤として用いた場合には、比較的径が大きいバブル1が存在しないため、解像度が高く、より高精細な画像を得ることができる。
【0090】
遠心分離処理の条件は、分離するバブル1の平均径によって適宜設定され、例えば、バブル含有液に1×g〜22000×g程度の遠心加速度が30秒〜24時間程度かかるようにする。遠心加速度を小さく設定(1×g〜100×g程度)する場合には、長時間(12時間〜24時間程度)にわたって処理することにより、より単分散なバブル径分布を有するバブル1を得ることができる。また、遠心加速度を大きく設定(100×g〜22000×g)する場合には、比較的短時間(30秒〜12時間程度)の処理により、より単分散なバブル径分布を有するバブル1を得ることができる。遠心分離処理を上記条件で行うことにより、所望の平均径を有するバブル1を効率良く分離することができる。
上記のような遠心加速度でバブル含有容器に遠心分離処理を行うことができる遠心分離機としては、特に限定されないが、例えば、商品名「TOMY MX−301」(トミー精工社製)等の微量高速冷却遠心機を用いることができる。なお、上記微量高速冷却遠心機を用いる場合には、その回転数が50〜2000rpm程度に設定することにより、上記範囲の遠心加速度(遠心力)がバブル含有液に負荷される。
また、遠心分離処理は、1回でもよいし、複数回にわたって行ってもよい。
【0091】
3.使用方法
上記のようにして得られたバブル含有容器は、患者の超音波診断に用いられる。
【0092】
具体的には、まず、注射器の注射針を蓋22のゴム栓221に刺通する。次に、バブル含有容器内からバブル含有液を吸引する。そして、ゴム栓221から注射針を抜去し、バブル含有液を吸引した注射器の注射針を患者の血管(例えば静脈)に穿刺して、バブル含有液を血管内に注入する。これにより、バブル1は、血流により患部に運ばれる。なお、バブル含有容器(製造容器20)から蓋22を外し、注射器を用いて、バブル含有容器内からバブル含有液を吸引してもよい。
【0093】
超音波診断の際には、バブル1が診断対象部位に到達するタイミングで、バブル1が破裂しない程度の周波数および強度を有する診断用超音波をバブル1に照射(放射)する。その後、診断対象部位から反射される信号(反射エコー)を受信して、データ処理することにより、診断対象部位を画像化する。これにより、超音波診断を行うことができる。
なお、超音波の照射およびバブル1からの反射波を受信するデバイスとしては、公知の超音波探触子を用いることができる。
【0094】
上記のようにして得られたバブル含有容器は、超音波診断の用途以外にも、様々な分野に適用することができる。例えば、上記のようにして得られたバブル含有容器内のバブル1は、水や食材に対する殺菌効果を有するとともに、食材の鮮度を維持する効果を有する。さらに、バブル1と、水と、油分(疎水性成分)とを含む液体中では、水に対して多量の油分を混合することができる。この効果を利用して、食材中の水分と油分との分離を抑制して調理することも可能である。したがって、得られたバブル含有液を食品分野に用いることも可能である。
【0095】
また、上記の説明では、工程(S1)〜(S5)を行うことにより、製造容器20内に均一なサイズのバブル1(図1参照)を多量に安定的に製造することができる。ただし、本実施形態のバブルの製造方法は、これに限定されない。例えば、工程(S5)の後に、工程(S4)および工程(S5)を少なくとも1回以上繰り返し行うようにしてもよい。工程(S4)および工程(S5)を繰り返し行うことにより、均一な径のバブル1をより安定的に生成させることができる。
【0096】
<第2実施形態>
次に、本発明のバブルの製造方法およびバブル製造容器の第2実施形態について説明する。
図6は、本発明のバブルの製造方法の第2実施形態を説明するためのフローチャートである。図7(a)〜(d)は、本発明のバブルの製造方法の第2実施形態を説明するための断面図である。
なお、以下の説明では、図7(a)〜(d)中の上側を「上」と言い、図7(a)〜(d)中の下側を「下」と言う。
【0097】
以下、第2実施形態のバブルの製造方法について、前記第1実施形態のバブルの製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0098】
本実施形態のバブルの製造方法は、図6に示すように、前述した第1実施形態の工程(S3)において、製造容器内を加圧した状態で製造容器を密閉するようにした以外は、前述した第1実施形態のバブルの製造方法と同様である。
【0099】
[S3] 製造容器を密閉する工程
容器本体21にガス3を充填させて、製造容器20内を加圧した状態で密閉する(図7(b)参照)。具体的には、水性液体10が注入された容器本体21の空隙部11を、ガス3でパージした後、蓋22を容器本体21の開口部(瓶口)に締付ける。これにより、製造容器20内に水性液体10とガス3とが密閉される。
【0100】
次に、ガス3が充填された注射器を準備する。そして、注射器の注射針をゴム栓221に刺通する。その後、注射器から製造容器20内にさらにガス3を加えることにより、製造容器20内が加圧される。その後、ゴム栓221から注射針を抜去する。これにより、製造容器20内がガス3により加圧された状態で密閉された製造容器20を得ることができる。
【0101】
本実施形態のバブルの製造方法では、製造容器20内の圧力(空隙部11に充填されたガス3の圧力)を1.0atmより大きくする。特に、製造容器20内の圧力は、1.5〜10atmであるのが好ましく、2〜5atmであるのがより好ましい。これにより、ガス3の一部が水性液体10に微分散または溶解する。
【0102】
水性液体10にガス3が微分散または溶解することにより、工程(S4)において、水性液体10と製造容器20とが衝突して衝撃波が発生する際に、バブル1が発生し易くなる。これにより、工程(S4)において、水性液体10中により多くのバブル1を生成させることができる。
【0103】
また、製造容器20中の圧力を1.0atmよりも大きい任意の値に設定することにより、水性液体10中に生成するバブル1の径および含有量をより容易に調整することができる。
【0104】
このようにして水性液体10とガス3とが密閉された製造容器20を用いて、前述した第1実施形態と同様に、工程(S4)および工程(S5)または工程(S4)〜(S6)を行うことにより、製造容器20内に均一なサイズのバブル1を多量に安定的に製造することができる。また、同時に、均一なサイズのバブル1を多量に含有する製造容器20が得られる。
【0105】
本実施形態のバブルの製造方法では、空隙部11がガス3で加圧された製造容器20を用いるため、製造容器20の振動前の段階で、水性液体10中にガス3が十分に微分散または溶解している。そのため、工程(S4)において製造容器20を振動させる際に、水性液体10中にバブル1が発生し易く、前述した第1実施形態のバブルの製造方法よりも、より容易に、均一なサイズのバブル1を多量に製造することができる。
【0106】
また、本実施形態で得られたバブル含有容器(製造容器20)内は加圧されている。このバブル含有容器内を急激に減圧すると、バブル含有液中のバブル1の粒径が変化したり、含有量が減少したりする等の悪影響が生じる可能性がある。そのため、バブル含有容器内からバブル含有液を吸引する際に、あらかじめ、バブル含有容器内の圧力を大気圧まで減圧しておくことが好ましい。
【0107】
例えば、バブル含有容器からバブル含有液を吸引するための注射器(バブル吸引用注射器)とは異なる別の注射器(減圧用注射器)を用意し、その注射針をゴム栓221に刺通する。その際に、減圧用注射器の注射針がバブル含有液に接触しないようにする。次に、減圧用注射器のプランジャーを操作して、バブル含有容器内のガス3を吸引することにより、バブル含有容器内の圧力を大気圧まで減圧する。次に、バブル吸引用注射器の注射針をゴム栓221に刺通し、その後、バブル含有液を吸引する。その際に、減圧用注射器のプランジャーを、その外筒から引き抜いた状態にしておくのが好ましい。この場合、減圧用注射器の注射針が、バブル含有容器の内部および外部に開放され、かかる注射針からバブル含有容器内に自由に空気が出入りする。かかる構成では、バブル含有液を吸引する際に、バブル含有容器内が陰圧となることが防止され、すなわち、バブル含有容器内が大気圧の状態で維持され、生成されたバブル1に上述したような悪影響が生じない。
【0108】
なお、バブル含有容器内の圧力を大気圧まで減圧した状態で、蓋22を外し、バブル含有容器内からバブル含有液を吸引してもよい。この場合、バブル含有容器内の圧力を大気圧まで減圧しているため、蓋22を外した瞬間に、バブル含有液が製造容器20の外部に吹き出すのを確実に防止することができる。
【0109】
かかる第2実施形態のバブルの製造方法およびバブル製造用容器によっても、前記第1実施形態のバブルの製造方法と同様の作用・効果を生じる。
【0110】
<第3実施形態>
次に、本発明のバブルの製造方法の第3実施形態について説明する。前述した図2(a)に示すバブル1は、本実施形態のバブルの製造方法により、製造することができる。
【0111】
以下、第3実施形態のバブルの製造方法について、前記第1および第2実施形態のバブルの製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0112】
本実施形態では、水性液体10が、バブル1の外殻2を構成する材料(外殻材料)および水性媒体を含んでいる。すなわち、本実施形態のバブルの製造方法は、前述した第2実施形態の工程(S1)において準備する水性液体10が、水性媒体に加え、外殻材料を含んでいる以外は、前述した第2実施形態のバブルの製造方法と同様である。
【0113】
[S1] 準備工程
本実施形態では、バブル1の外殻2を構成する外殻材料および水性媒体を水性液体調製容器(以下、単に「調製容器」という)に入れて、外殻材料を水性媒体に溶解させて、水性液体10を調製する。すなわち、調製容器内に外殻材料および水性媒体を所定量加えた後、攪拌して、外殻材料を水性媒体に溶解させる。外殻材料、水性媒体を調製容器に入れる順番は、特に限定されない。外殻材料を水性媒体に溶解させる方法としては、例えば、攪拌子による攪拌、超音波処理等を用いることができる。
外殻材料としては、前述した両親媒性材料が使用される。また、水性媒体としては、前述した第1実施形態と同様の水性媒体を用いることができる。
【0114】
水性液体10中における外殻材料の含有量は、工程(S4)において、水性液体10中にバブル1が形成されるのであれば特に限定されない。外殻材料の好ましい含有量は、外殻材料および水性媒体の各種類の組み合わせによって変わるが、外殻材料は、臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度で水性液体10に含まれているのが好ましい。具体的には、水性液体10に含まれる外殻材料の含有量は、0.01〜50wt%であるのが好ましく、0.1〜20wt%であるのがより好ましい。
【0115】
これにより、水性液体10中の外殻材料の濃度が、より確実に臨界ミセル濃度以上となるので、水性液体10中に外殻2(リポソーム、ミセル)を確実に形成することができる。そのため、後述する工程(S4)において、リポソームやミセル内にガス3が簡単に取り込まれ、所望の径のバブル1を水性液体10中に容易に生成させることができる。本実施形態で生成されるバブル1は、外殻2の存在により、バブル1内のガス3が水性液体10(水性媒体)に溶け出すのを長期にわたって防止することができる。そのため、バブル1の安定性が高くなり、バブル1が不本意に破裂するのをより確実に防止することができる。さらに、生成されるバブル1の大きさのバラつきを小さくすることができる。すなわち、均一なサイズのバブル1を生成することができる。
【0116】
調製される水性液体10に含まれる水性媒体の含有量は、50〜99.99wt%であるのが好ましく、80〜99.0wt%であるのがより好ましい。これにより、外殻材料を水性媒体に十分に溶解させることができ、より均一な水性液体10を得ることができる。
【0117】
次に、前述した第1および第2実施形態と同様の製造容器20を準備する。
なお、上述した調製容器と製造容器20とは、異なる容器でも同じ容器でもかまわない。
【0118】
調製容器と製造容器20とが異なる容器である場合には、例えば、調製容器としては、比較的容量の大きい容器を用い、一方、製造容器20(容器本体21)としては、比較的容量の小さい容器を用いることができる。この場合、調製容器内に均一な組成の水性液体10を多量に調製して、この水性液体10を複数の製造容器20に小分けすることにより、各製造容器20内で生成されるバブルのサイズ(径)、量を均一にすることができる。
【0119】
また、調製容器と製造容器20とが同一の容器である場合には、工程(S2)を省略することができる。したがって、プロセスを簡略化できる点で利点がある。
なお、本実施形態では、調製容器として、製造容器20と異なる容器を用いる。
【0120】
次に、前述した第1実施形態と同様に、工程(S2)〜(S5)または工程(S2)〜(S6)を行うことにより、製造容器20内に均一なサイズのバブル1を多量に安定的に製造することができる。また、同時に、均一なサイズのバブル1を多量に含有する製造容器20が得られる。
【0121】
本実施形態では、工程(S4)において水性液体10と製造容器20とが衝突した際に発生する衝撃波の圧力により、ガス3が水性液体10中に微分散または溶解し、水性液体10中の外殻材料をバブル1にする。このバブル1(外殻2)内には、上記工程(S3)において水性液体10中に微分散または溶解したガス3、および本工程の振動により水性液体10に微分散または溶解したガス3が含まれる。
【0122】
なお、工程(S3)において、第1実施形態と同様に、製造容器20内を加圧しなくてもよいし(すなわち、製造容器20内の圧力が大気圧)、第2実施形態と同様に製造容器20内を加圧してもよい。
かかる第3実施形態のバブルの製造方法およびバブル製造用容器によっても、前記第1および第2実施形態のバブルの製造方法と同様の作用・効果を生じる。
【0123】
<第4実施形態>
次に、本発明のバブルの製造方法の第4実施形態について説明する。前述した図2(b)および図2(c)に示すバブル1は、本実施形態のバブルの製造方法により、製造することができる。
【0124】
以下、第4実施形態のバブルの製造方法について、前記第1〜第3実施形態のバブルの製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0125】
本実施形態では、水性液体10が、水性媒体、外殻材料および薬物4を含んでいる。すなわち、本実施形態のバブルの製造方法は、前述した第3実施形態の工程(S1)において調整する水性液体10が、外殻材料、水性媒体に加え、薬物4を含んでいる以外は、前述した第3実施形態のバブルの製造方法と同様である。
【0126】
[S1] 準備工程
本実施形態では、外殻材料、薬物4および水性媒体を調製容器に入れて、外殻材料と薬物4とを水性媒体に溶解させて、水性液体10を調製する。すなわち、調製容器内に外殻材料、薬物4および水性媒体を所定量加えた後、攪拌して、外殻材料および薬物4を水性媒体に溶解させる。外殻材料、薬物4、水性媒体を調製容器に入れる順番は、特に限定されない。外殻材料および薬物4を水性媒体に溶解させる方法としては、例えば、攪拌子による攪拌、超音波処理等を用いることができる。
【0127】
薬物4としては、前述した遺伝子、薬剤等が使用される。調製される水性液体10に含まれる薬物4の含有量は、0.1〜50wt%であるのが好ましく、20〜50wt%であるのがより好ましい。これにより、製造されるバブル1に十分な量の薬物4を含ませることができる。その結果、患部に対する治療効果がより優れたバブル1を製造することができる。なお、薬物4が、外殻材料の代わりに、外殻2を構成する場合には、水性液体10中に外殻材料を含まないでもよい。
【0128】
このようにして調整された水性液体10を用いて、前述した第3実施形態と同様に、工程(S2)〜(S5)または工程(S2)〜(S6)を行うことにより、製造容器20内に均一なサイズのバブル1(図2(b)および図2(c)参照)を多量に安定的に製造することができる。また、同時に、均一なサイズのバブル1を多量に含有する製造容器20が得られる。
【0129】
本実施形態では、バブル1(外殻2)内には、工程(S3)において水性液体10中に微分散または溶解したガス3、および工程(S4)の振動により水性液体10に微分散または溶解したガス3、薬物4が含まれる。その結果、生成されるバブル1は、薬物4がガス3とともに外殻2内に封入され、または、外殻2自体に含有または吸着している。
【0130】
3.使用方法
上記のようにして得られたバブル含有容器は、患者の超音波治療、または超音波診断に用いられる。
【0131】
具体的には、まず、注射器の注射針を蓋22のゴム栓221に刺通する。次に、注射器を用いてバブル含有容器内からバブル含有液を吸引する。バブル含有液を吸引した注射器の注射針を患者の血管(例えば静脈)に穿刺して、バブル含有液を血管内に注入する。これによりバブル1は、血流により患部に運ばれる。
【0132】
超音波治療の際には、バブル1が患部付近に到達した際に、外殻2が破裂する程度の周波数および強度を有する治療用超音波を照射して、外殻2を破裂させる。これより、バブル1内の薬物4を患部に集中的に供給(付与)して、患部を治療することができる。
【0133】
また、この場合、超音波治療と超音波診断とを組み合わせて行うのも有効である。具体的には、血管内のバブル1に対して、診断用超音波を照射して、その反射波をモニタリングする。これにより、バブル1の血管内(体内)での位置や挙動を正確に把握することができる。バブル1が目的の患部付近に到達したときに、治療用超音波を照射してバブル1(外殻2)を破裂させる。これにより、患部に対して、より正確に薬物を供給して、治療することができる。
【0134】
なお、ガス3として、前述した水性媒体に溶解性の高い成分(例えば、二酸化炭素等)を用いる場合には、バブル1を製造してから所定の時間経過すると、外殻2内のガス3が、水性媒体中に溶け出す。その後、外殻2内のガス3が完全に水性媒体中に溶け出すと、外殻2内に薬物4のみが封入された状態となる。すなわち、このような場合には、バブル1は、外殻2内に薬物4のみが封入されるリポソームまたはミセルとなる。このようにして得られたリポソームまたはミセルを薬剤として用いることもできる。
【0135】
なお、治療用超音波の強度(出力)は、0.1〜30W/cm程度であるのが好ましく、0.5〜10W/cm程度であるのがより好ましい。治療用超音波の強度を上記範囲内とすることにより、より確実にバブル1を破裂させることができるとともに、患部周辺の正常細胞へ与えるダメージを無くすか低減することができる。また、治療用超音波の強度が上記範囲内である場合、その照射時間は、10〜120秒程度であるのが好ましく、30〜60秒程度であるのがより好ましい。
【0136】
また、超音波治療の際に照射する超音波の周波数は、100kHz〜10MHz程度であるのが好ましく、700kHz〜1MHz程度であるのがより好ましい。照射する超音波の周波数を上記範囲内とすることにより、より低い超音波出力でバブルを破裂させることができる。
【0137】
かかる第4実施形態のバブルの製造方法によっても、前記第1〜第3実施形態のバブルの製造方法と同様の作用・効果を生じる。
【0138】
<第5実施形態>
次に、本発明のバブルの製造方法の第5実施形態について説明する。
【0139】
図8は、本発明のバブルの製造方法の第5実施形態を説明するためのフローチャートである。
【0140】
以下、第5実施形態のバブルの製造方法について、前記第1〜第4実施形態のバブルの製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0141】
本実施形態のバブルの製造方法は、図8に示すように、前述した第2実施形態の工程(S1)〜(S5)(または、工程(S1)〜(S6))の後に、工程(S7)、工程(S8)を有している。工程(S7)は、製造容器内の圧力を変化させる工程である。工程(S8)は、製造容器を振動させる回転数を設定する工程である。
【0142】
本実施形態のバブルの製造方法は、工程(S8)において、回転数を変化させない場合には(図8中、工程(S8)で「NO」を選択)、さらに、工程(S4’)および工程(S5’)を有している。一方、工程(S8)において、回転数を変化させる場合には(図8中、工程(S8)で「YES」を選択)、さらに、工程(S9)および工程(S10)を有している。さらに、本実施形態のバブルの製造方法は、製造容器内の圧力を変化させる工程(S11)を有している。以下、工程(S7)以降の各工程について順次説明する。
【0143】
なお、本実施形態では、水性液体10が、第1および第2実施形態のように、水性媒体のみであってもよいし、第3実施形態のように、水性媒体と外郭材料のみであってもよいし、または、第4実施形態のように水性媒体、外殻材料および薬物4を含んでいてもよい。
【0144】
[S7]製造容器内の圧力を変化させる工程
前述した第1実施形態の工程(S5)後のバブル含有容器(製造容器20)内の圧力を変化させる。
【0145】
(1)製造容器内の圧力を工程(S3)における圧力より高くする場合
製造容器20内を、前述した工程(S3)と同様にして加圧する。なお、注入するガス3は、工程(S3)で用いたガス3と同じでも、異なっていてもよいが、最終的に生成されるバブル1の安定性の観点から、同一のガス3を用いるのが好ましい。
【0146】
このような製造容器20では、製造容器20内が工程(S3)における製造容器20内の圧力よりもさらに加圧さているため、水性液体10中に微分散または溶解するガス3の量が、工程(S3)での水性液体10に微分散または溶解したガス3の量よりも多くなる。そのため、後述する工程(S4’)または工程(S9)において製造容器20を再振動させる際に、生成されるバブル1中に水性液体10中のガス3が取り込まれ易くなり、その結果、バブル1の生成量が多くなる。また、工程(S4)で生成されるバブル1に加えられる圧力よりも大きい圧力が水性液体10に加えられる。これにより、生成過程のバブル1がより大きな圧力で圧縮されるため、バブル1の径が小さくなりやすい。そのため、工程(S4)において生成されるバブル1よりも、より小さい径のバブル1を生成させることができる。
【0147】
この場合、製造容器20内の圧力は、工程(S3)における圧力よりも、0.5atm以上高くするのが好ましく、1〜10atm高くするのがより好ましい。これにより、前述した工程(S4)において生成されるバブル1の径よりも小さい径のバブル1をより確実に生成させることができる。
【0148】
(2)製造容器内の圧力を1.0atmよりも大きくしつつ、工程(S3)における圧力より低くする場合
まず、空の注射器を準備する。次に、注射器の注射針でゴム栓221を刺通する。その後、注射器に製造容器20内のガス3を吸引する。これにより、製造容器20内が減圧され、製造容器20内の圧力が減圧される。その後、ゴム栓221から注射針を抜去する。
【0149】
このような製造容器20では、後述する工程(S4’)または工程(S9)において製造容器20を再振動させた際に、水性液体10に加えられる圧力は、工程(S4)で生成される水性液体10に加えられる圧力よりも小さい。これにより、生成過程のバブル1を圧縮する程度が小さくなり、バブル1の径が大きくなりやすい。そのため、工程(S4)において生成されるバブル1よりも、より大きい径のバブル1を生成させることができる。
【0150】
この場合、製造容器20内の圧力は、1.0atmより大きく、工程(S3)における圧力よりも低い圧力までの範囲内で適宜調整される。
【0151】
[S8]製造容器を振動させる回転数の設定工程
上記のようにして製造容器20内の圧力を変化させた後、容器を再振動させる際の回転数を設定する。
【0152】
容器を再振動させる際の回転数は、前述した工程(S4)と同様に、5000rpm以上に設定される。
【0153】
工程(S8)において、容器を再振動させる際の回転数を工程(S4)における回転数から変えない場合、すなわち、図8中の工程(S8)で「NO」を選択した場合、以下の工程(S4’)を行う。
【0154】
一方、工程(S8)において、容器を再振動させる際の回転数を工程(S4)における回転数から変える場合、すなわち、図8中の工程(S8)で「YES」を選択した場合、以下の工程(S9)を行う。
【0155】
[S4’]製造容器を再振動させる工程
上記のようにして、圧力を変化させた製造容器20を、前述した工程(S4)と同じ回転数で再振動させる。これにより、工程(S4)において生成されるバブル1とは異なる径のバブル1が水性液体10中に生成される。
【0156】
本工程では、工程(S4)と同じ回転数で製造容器20を再振動させるため、本実施形態で新たに生成するバブル1の径は、工程(S7)において変化させた圧力に応じて変化する。すなわち、圧力を変化させることによって、バブル1の径を調整することができるため、所望の異なる径(平均径)を有するバブル1を再現性良く製造することができる。また、製造容器20を振動させる装置の設定を変更する必要がないため、より簡易的に異なる径を有するバブル1を製造することができる。
【0157】
[S5’]製造容器を静置する工程
上記条件で製造容器20を振動させた後、工程(S5)と同様にして製造容器20を静置する。これにより、製造容器20内に異なるサイズのバブル1を安定的に多量に製造することができる。また、同時に、このようなバブル1を多量に含有する製造容器20(バブル含有容器)が得られる。
静置後、工程(S11)が行われる。
【0158】
[S9]製造容器を再振動させる工程
圧力を変化させた製造容器20を、前述した工程(S4)とは異なる回転数で再振動させる。これにより、工程(S4)において生成されるバブル1とは異なる径のバブル1が水性液体10中に生成される。
【0159】
(1)製造容器を工程(S4)よりも高い回転数で再振動させる場合
製造容器20を振動させる回転数を、工程(S4)での回転数よりも高くする以外は、前述した工程(S4)と同様にして、製造容器20を再振動させる。
【0160】
この場合、製造容器20の回転数は、工程(S4)での回転数よりも高くする限り特に限定されないが、6000〜20000rpmであるのが好ましく、7000〜20000rpmであるのがより好ましい。これにより、工程(S4)での回転数よりも大きい回転数で製造容器20を振動させるため、工程(S4)で生成されたバブル1よりも小さい径のバブル1を生成させることができる。また、製造容器20の回転数を上記範囲内とすることにより、工程(S4)および本工程で生成したバブル1同士が、衝突により崩壊したり、合体して粗大化するのをより確実に防止することができる。これにより、工程(S4)において生成されたバブル1と、工程(S4)において生成されたバブル1よりも小さい径のバブル1とを製造することができる。
【0161】
(2)製造容器を工程(S4)よりも低い回転数で再振動させる場合
製造容器20を振動させる回転数を、工程(S4)での回転数よりも低くする以外は、前述した工程(S4)と同様にして、製造容器20を再振動させる。
【0162】
この場合、製造容器20の回転数は、工程(S4)での回転数よりも低くする限り特に限定されないが、5000〜9000rpmであるのが好ましく、5500〜7500rpmであるのがより好ましい。これにより、工程(S4)での回転数よりも低い回転数で製造容器20を振動させるため、工程(S4)で生成されたバブル1よりも大きい径のバブル1を生成させることができる。また、製造容器20の回転数を上記範囲内とすることにより、工程(S4)および本工程で生成したバブル1同士が、衝突により崩壊したり、合体して粗大化するのをより確実に防止することができる。これにより、工程(S4)において生成されたバブル1と、工程(S4)において生成されたバブル1よりも大きい径のバブル1とを製造することができる。
【0163】
本工程では、工程(S4)と異なる回転数で製造容器20を再振動させるため、本実施形態で新たに生成するバブル1の径は、製造容器20内の圧力の変化および再振動時の回転数によって変化する。このように、製造容器20内の圧力および再振動時の回転数のいずれも変化させることにより、前述した第1実施形態で得られる径とは大きく異なる径のバブル1を製造することができる。したがって、平均径が大きく異なるバブル1を製造する際には、本工程は有利である。
【0164】
[S10]製造容器を静置する工程
工程(S9)で製造容器20を振動させた後、工程(S5)と同様にして製造容器20を静置する。これにより、製造容器20内に異なるサイズのバブル1を安定的に製造することができる。また、同時に、このようなバブル1を多量に含有する製造容器20(バブル含有容器)が得られる。
静置後、工程(S11)が行われる。
【0165】
[S11]製造容器内の圧力を再度変化させる工程
製造容器20内の圧力を変化させない場合、すなわち、図8中の工程(S11)で「NO」を選択した場合、本実施形態のバブルの製造方法は終了する。これにより、平均径が10nm〜1000μmの範囲で、それぞれ異なる平均径を有する第1のバブル1と、第2のバブル1とが製造される。
【0166】
一方、製造容器20内の圧力を変化させる場合、すなわち、図8中の工程(S11)で「YES」を選択した場合、工程(S8)が行われる。その後、上述した工程(S4’)、(S5’)および(S11)、または工程(S9)、(S10)および(S11)が繰り返し行われる。これにより、平均径が10nm〜1000μmの範囲で、互いに異なる複数の平均径を有するバブル1を製造することができる。
【0167】
なお、工程(S11)において、繰り返し圧力を変化させる場合には、圧力を変化させる回数に応じた数の互いに異なる複数の平均径を有するバブル1を製造することができる。
【0168】
以上のようにして得られたバブル含有容器は、水性液体10中に異なる径を有するバブル1を含む。サイズの違いによりバブル1の血管内の通過のし易さ、また、運搬される部位も変わってくる(例えば、バブル1のサイズが小さいほど、毛細血管の先端まで運搬できる。)ため、上記のようにして得られたバブル含有液は、超音波治療の目的に合わせて多面的に用いることが可能である。
【0169】
かかる第5実施形態のバブルの製造方法によっても、前記第1〜第4実施形態のバブルの製造方法と同様の作用・効果を生じる。
【0170】
<第6実施形態>
次に、本発明のバブルの製造方法の第6実施形態について説明する。
【0171】
図9は、本発明のバブルの製造方法の第6実施形態に用いられる製造容器の蓋付近を示す部分断面図である。
なお、以下の説明では、図9中の上側を「上」と言い、図9中の下側を「下」と言う。
【0172】
以下、第6実施形態のバブルの製造方法について、前記第1〜第5実施形態のバブルの製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0173】
本実施形態のバブルの製造方法は、製造容器20(バブル製造用容器の第2実施形態)の蓋22の構成が異なる以外は、前述した第1〜第5実施形態のバブルの製造方法と同様である。
【0174】
図9に示す蓋22は、前述したゴム栓221、締付部222に加え、ゴム栓221の下面に接着剤等により接着する底板部223を備えている。換言すれば、底板部223は、容器本体21の開口部に、ゴム栓221と接着した状態で設けられている。本実施形態の製造容器20は、底板部223を備えることにより、前述した第1実施形態の製造容器20の蓋22よりも、蓋22の質量が大きくなる。すなわち、底板部22は、製造容器20の質量を増加させる錘部となる。
【0175】
底板部223は、ゴム栓221よりも小径の円盤状をなす部材である。また、底板部223は、締付部222の開口に対応するように、平面視において、その略中心に注射器の注射針が挿通する貫通孔224が形成されている。なお、貫通孔224のサイズは特に限定されない。ただし、貫通孔224が、締付部222から露出するゴム栓221と同じサイズである場合には、工程(S3)において注射針をゴム栓221の締付部222から露出する領域のどこにでも刺通することができる。また、図9に示すように、貫通孔224が、注射針が挿通可能なサイズであってもよい。この場合、ゴム栓221の上面には、貫通孔224に対応する位置にマークを付して(図示せず)、このマークを目印として注射針をゴム栓221に刺通すればよい。
【0176】
また、底板部223には、複数の貫通孔224が設けられていてもよい。例えば、ガス3が充填された注射器の注射針および前述した減圧用注射器の注射針を挿通するための貫通孔、およびバブル吸引用注射器の注射針を挿通するための貫通孔の2つの貫通孔224を底板部223に設けてもよい。かかる構成では、減圧用注射器を用いることにより、バブル含有容器内の圧力を大気圧にした状態でバブル吸引用注射器によりバブル1を吸引することができる。そのため、吸引されたバブル含有液中のバブル1の粒径が変化したり、含有量が減少したりする等の悪影響の発生をより確実に防止することができる。また、底板部223に各注射器の注射針を挿通するための3つの貫通孔224を設けてもよい。また、ゴム栓221の上面には、各貫通孔224に対応する位置に、各注射器の注射針を刺通する目印としてマークを付してもよい。
【0177】
このような底板部223の構成材料としては、例えば、各種セラミック材料、各種金属材料が挙げられるが、ガラス以上の密度(2000kg/m以上)を有する材料が好ましい。このような材料としては、鋳鉄(密度:7000〜7700kg/m程度)、クロムニッケル鋼18/8(密度:7900kg/m程度)、V2A鋼(密度:7900kg/m程度)等のステンレス鋼、アルミニウム(密度:2700kg/m程度)、ジェラルミン(密度:2700kg/m程度)、鉛(密度:11340kg/m程度)、鉄(密度:7870kg/m程度)、銅(密度:8900kg/m程度)、真鍮(密度:8250〜8500kg/m程度)、ニッケル(密度:8350kg/m程度)、鋳鉄(密度:7000〜7700kg/m程度)、亜鉛(密度:7130kg/m程度)、すず(密度:7280kg/m程度)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの材料の中でも、比重が高く、水性液体10の構成成分に対する高い耐腐食性を有するという観点から、鉄や、ステンレス鋼等の鉄合金を用いるのが特に好ましい。
【0178】
このような材料で構成される底板部223は、合成ゴムや樹脂等の比重(密度)の小さい材料を用いて形成される部材よりも、その質量が大きくなる。底板部223の質量を大きくすることにより、工程(S4)において、水性液体10が製造容器20の上面(底板部223)に衝突した際に発生する衝撃波の大きさをより大きくすることができる。その結果、水性液体10中に微細なバブル1をより容易に、かつ安定的に生成することができる。
【0179】
かかる蓋22を用いる場合には、工程(S3)において、ガス3が充填された注射器の注射針が底板部223の貫通孔224を挿通するようにゴム栓221を刺通する。その後、上述した第2実施形態と同様に、注射器から製造容器20内にさらにガス3を加えることにより、製造容器20内を加圧する。その後、蓋22(ゴム栓221)から注射針を抜くことにより、製造容器20内がガス3により加圧された状態で密閉された製造容器20を得ることができる。
【0180】
かかる構成の製造容器20(本実施形態のバブル製造用容器)を用いて、前述した第1〜第5実施形態のバブルの製造方法と同様の工程を経て、バブル含有容器を得ることができる。
【0181】
かかる第6実施形態のバブルの製造方法によっても、前記第1〜第5実施形態のバブルの製造方法と同様の作用・効果を生じる。
【0182】
<第7実施形態>
次に、本発明のバブルの製造方法の第7実施形態について説明する。
【0183】
図10(a)〜(f)は、本発明のバブルの製造方法の第7実施形態に用いられる容器を模式的に示す断面図である。
【0184】
なお、以下の説明では、図10(a)〜(f)中の上側を「上」と言い、図10(a)〜(f)中の下側を「下」と言う。
【0185】
以下、第7実施形態のバブルの製造方法について、前記第1〜第6実施形態のバブルの製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0186】
本実施形態のバブルの製造方法は、容器(製造容器)の形状が異なる以外は、前述した第1〜第6実施形態のバブルの製造方法と同様である。
【0187】
本実施形態では、製造容器20(バブル製造用容器の第3実施形態)は、図10(a)〜(d)に示す様々な形状の容器本体21と、各容器本体21の上面の形状に合わせた蓋(図示せず)とを有している。図10(a)〜(d)に示すように、容器本体21の内面は、凹面、凸面および凹凸面のうちの少なくとも1つを含んでいる。
【0188】
図10(a)に示す容器本体21は、上面および下面が、内側に向かって突出した凸面である容器である。図10(b)に示す製造容器20は、上面および下面が、凹凸面である容器である。図10(c)に示す製造容器20は、上面および下面が、外側に向かって突出した凹面である容器である。図10(d)に示す製造容器は、側面が、製造容器20の内側に向かって湾曲する凸面である容器である。
【0189】
このような面(凹面、凸面、または凹凸面)は、平坦面に比べて表面積が大きい。そのため、前述した工程(S4)において、水性液体10が、製造容器の内面と衝突できる面積が大きくなり、より多くの衝撃波を発生させることができる。また、このような面では、その形状によって、発生する衝撃波の圧力の程度が異なる。これにより、水性液体10中に異なる径のバブル1を多量に生成させることができる。
【0190】
また、容器本体21の高さを、図10(e)に示すように、前述した第1〜第6実施形態の容器本体21よりも高くすることができる。このような容器本体21を用いた場合には、工程(S4、S4’およびS9)において製造容器を振動させる際に、水性液体10の移動距離が長くなる。そのため、衝突時に発生する衝撃波の大きさを大きくすることができる。これにより、水性液体10中に製造されるバブル1のサイズをより小さくすることができる。
【0191】
一方、容器本体21の高さを、図10(f)に示すように、前述した第1〜第6実施形態の容器本体21よりも低くすることができる。このような容器本体21を用いた場合には、工程(S4、S4’およびS9)において製造容器を振動させる際に、水性液体10の移動距離が短くなる。そのため、水性液体10が製造容器の内面と衝突する回数を多くすることができるので、水性液体10に衝撃波による圧力をより多く付与することができる。これにより、水性液体10中により多くのバブル1を製造することができる。
【0192】
かかる第7実施形態のバブルの製造方法によっても、前記第1〜第6実施形態のバブルの製造方法と同様の作用・効果を生じる。
【0193】
<第8実施形態>
次に、本発明のバブルの製造方法の第8実施形態について説明する。
【0194】
図11(a)〜(c)は、本発明のバブルの製造方法の第8実施形態を説明するための斜視図である。図12は、図11(a)に示すミニナートバルブのゴム栓付近の構成(ハンドルは省略)を説明するための図であり、図12(a)は、ミニナートバルブのゴム栓付近の上面図であり、図12(b)は、図12(a)のX−X線断面図である。図13は、図11(c)に示すバブル含有容器の断面図である。
【0195】
なお、以下の説明では、図11(a)〜(c)、図12(b)、図13中の上側および図12(a)中の紙面手前側を「上」と言い、図11(a)〜(c)、図12(b)、図13中の下側および図12(a)中の紙面奥側を「下」と言う。また、図11(a)〜(c)中の左側を「左」と言い、図11(a)〜(c)中の右側を「右」と言う。
【0196】
以下、第8実施形態のバブルの製造方法について、前記第1〜第7実施形態のバブルの製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0197】
本実施形態のバブルの製造方法は、製造容器の構成が異なる以外は、前述した第1〜第5実施形態のバブルの製造方法と同様である。
【0198】
[S1] 準備工程
図11(a)に示すような製造容器20(バブル製造用容器の第4実施形態)を準備する。
【0199】
本実施形態では、製造容器20は、前述した第1実施形態の製造容器20と同様に、容器本体21と、蓋22とを有している。この蓋22は、図11(a)に示すように、その上側にミニナートバルブ30と、ゴム栓221とミニナートバルブ30とを連結するチューブ33とを備えている。
【0200】
ミニナートバルブ30は、貫通孔311を有するバルブ本体31と、貫通孔311に埋設され、厚さ方向(上下方向)に貫通する管路321が形成されたゴム栓32と、管路321の開閉を制御するハンドル(開閉機構)34とを有している。
【0201】
バルブ本体31は、略直方体状をなしており、その長手方向の中央付近に、厚さ方向(上下方向)に貫通する貫通孔311が形成されている(図12(a)、(b)参照)。また、図12(b)に示すように、バルブ本体31には、その長手方向に貫通する貫通孔312が形成されている。
【0202】
ゴム栓32は、略円筒状をなしており、例えば、シリコンゴム等で構成されている。このゴム栓32は、バルブ本体31の貫通孔311に挿入され、バルブ本体31に固定(埋設)されている。ゴム栓32の略中心には、注射器40の注射針41が挿入可能に形成された管路321が形成されている。また、ゴム栓32には、管路321と直交し、ゴム栓32の幅方向(左右方向)に貫通する貫通孔322が形成されている(図12(b)参照)。ゴム栓32の貫通孔322とバルブ本体31の貫通孔312とは互いに連通しており、貫通孔322および貫通孔312に、後述するハンドル34のシャフト342が摺動可能に挿入される。
【0203】
ハンドル34は、バルブ本体31の長手方向(左右方向)の両端側に設けられた一対のノブ341と、各ノブ341と接続し、ゴム栓32の貫通孔322およびバルブ本体31の貫通孔312に摺動可能に挿入されるシャフト342とを有している。このシャフト342には、その一部に、厚さ方向(図11(a)中、上下方向)に貫通する貫通孔343が形成されている。
【0204】
チューブ33は、特に限定されないが、例えば、シリコン製のチューブで構成されている。チューブ33の上端部は、ゴム栓32の管路321と連通しており、チューブ33の下端部は、ゴム栓221を介して、容器本体21の内部空間(空隙部11)と連通している。言い換えれば、管路321と容器本体21の内部空間とは、チューブ33を介して連通している。
【0205】
本実施形態の製造容器20では、図11(a)に示すように、左側のノブ341を右側に押して、左側のノブ341とバルブ本体31の左側の端部とを接触した状態とすることにより、平面視(上面視)においてシャフト342の貫通孔343と管路321とが重なる(連通する)。これにより、管路321が開けられ、管路321、チューブ33および容器本体21の内部空間が連通した状態となる(図11(a)、図12(b)参照)。一方、図11(b)に示すように、右側のノブ341を左側に押して、右側のノブ341とバルブ本体31の右側の端部とを接触した状態とすることにより、平面視(上面視)においてシャフト342の貫通孔343の位置と管路321の位置とがずれる。これにより、管路321が閉じられ、製造容器20内は密閉される。
【0206】
また、本実施形態では、蓋22は、図9に示す蓋22と同様に、ゴム栓221と、締付部222と、底板部223とを備えている(図13参照)。図13に示すように、チューブ33の下端部(ゴム栓221と接続される側の端部)が、底板部223の貫通孔224に対応する位置に配置されている。そのため、チューブ33は、容器本体21の内部と連通する。
【0207】
[S3]製造容器を密閉する工程
水性液体10が注入された容器本体21の空隙部11を、ガス3でパージした後、蓋22を容器本体21の開口部(瓶口)に挿着する。これにより、製造容器20内に水性液体10とガス3とが密閉される。
【0208】
次に、ガス3が充填された注射器40を準備する。図11(a)に示すように、ハンドル34の左側のノブ341を右側に押圧操作して管路321を開き、管路321とチューブ33とを連通させる。そして、注射器40の注射針41を管路321に挿入し、その後、ミニナートバルブ30およびチューブ33を介して、注射器40から製造容器20内にさらにガス3を加える。これにより、製造容器20内が加圧される。
【0209】
その後、注射針41を管路321から抜くと同時に、ハンドル34の右側のノブ341を左側に押圧操作して管路321を閉めて、管路321とチューブ33とを非連通状態とする。
【0210】
次に、チューブ33の一部に熱処理を行い、チューブ33内の空間が閉塞されたシーリング部331を形成する(図11(b)参照)。
【0211】
その後、チューブ33を、シーリング部331のミニナートバルブ30側(図中、上側)で切断し、製造容器20内がガス3により加圧された状態で密閉された製造容器20を得ることができる(図11(c)参照)。
【0212】
その後の工程は、前述した第1〜第5実施形態と同様に行うことにより、製造容器20内に均一なサイズのバブル1を多量に安定的に製造することができる。また、同時に、均一なサイズのバブル1を多量に含有する製造容器(密閉容器)20(バブル含有容器)が得られる。
【0213】
本実施形態では、工程(S3)において、注射針41を蓋22のゴム栓221に直接刺通することなく、製造容器20内を加圧することができる。すなわち、本実施形態では、蓋22およびチューブ33(ゴム栓221からシーリング部331までの区間)に貫通孔がないため、製造容器20内の密閉性を向上させることができる。製造容器20内の密閉性が向上することにより、最終的に得られるバブル含有容器では、バブル1が水性液体10中により安定的に存在することができる。すなわち、バブル含有容器の長期保存性がより向上する。
【0214】
かかる第8実施形態のバブルの製造方法によっても、前記第1〜第7実施形態のバブルの製造方法と同様の作用・効果を生じる。
【0215】
<第9実施形態>
次に、本発明のバブルの製造方法の第9実施形態について説明する。
【0216】
図14は、本発明のバブルの製造方法の第9実施形態に用いられる製造容器を説明するための斜視図である。
【0217】
なお、以下の説明では、図14中の上側を「上」と言い、図14中の下側を「下」と言う。また、図14中の左側を「左」と言い、図14中の右側を「右」と言う。
【0218】
以下、第9実施形態のバブルの製造方法について、前記第1〜第8実施形態のバブルの製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0219】
本実施形態のバブルの製造方法は、ミニナートバルブ30が、容器本体21の側面に設けられている点で、前述した第8実施形態のバブルの製造方法と異なる。
【0220】
本実施形態で用いられる製造容器20(バブル製造用容器の第5実施形態)は、図14に示すように、前述した第8実施形態のバブルの製造方法で用いた容器本体21と、蓋22と、ミニナートバルブ30と、容器本体21とミニナートバルブ30とを連結するチューブ33とを有している。さらに、本実施形態の製造容器20は、ミニナートバルブ30が、水性液体10の液面よりも蓋22側(図中、上側)に設けられている。
【0221】
チューブ33は、ガラス製のチューブ(管)で構成されており、容器本体21(バイアル瓶)と一体的に形成されている。
【0222】
図14に示すように、チューブ33の左側の端部は、容器本体21の内部空間(空隙部11)と連通しており、チューブ33の右側の端部は、ゴム栓32の管路321と連通している。したがって、本実施形態においても、管路321と容器本体21の内部空間とは、チューブ33を介して連通している。
【0223】
かかる構成の製造容器20を用いて、前述した第8実施形態のバブルの製造方法と同様の工程を経て、バブル含有容器を得ることができる。
【0224】
かかる第9実施形態のバブルの製造方法によっても、前記第1〜第8実施形態のバブルの製造方法と同様の作用・効果を生じる。
【0225】
<第10実施形態>
次に、本発明のバブルの製造方法の第10実施形態について説明する。
【0226】
図15は、本発明のバブルの製造方法の第10実施形態に用いられる製造容器を説明するための断面図である。
【0227】
なお、以下の説明では、図15中の上側を「上」と言い、図15中の下側を「下」と言う。また、図15中の左側を「左」と言い、図15中の右側を「右」と言う。
【0228】
以下、第10実施形態のバブルの製造方法について、前記第1〜第9実施形態のバブルの製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0229】
本実施形態のバブル製造用容器は、その長手方向がほぼ水平方向(前述した第1〜第9実施形態では、製造容器20の長手方向が鉛直方向)となるように構成されている。また、工程(S4)において、製造容器を水平方向に振動させる。以上の点で、本実施形態のバブルの製造方法は、前述した第1〜第9実施形態のバブルの製造方法と相違する。具体的には、工程(S4)において、図15に示す製造容器20を、ほぼその水平方向に往復運動するように、製造容器20を振動させる。
【0230】
[S1] 準備工程
図15に示すような製造容器20(バブル製造用容器の第6実施形態)を準備する。
【0231】
本実施形態の製造容器20は、上部に円筒部211を有する容器本体21と、円筒部211の開口を封止するゴム栓23と、容器本体21の両端部に固定される2つの錘部5とを備えている。
【0232】
容器本体21は、水平方向(図15中、左右方向)に長尺な略円筒状をなしている。容器本体21の略中央には、容器本体21の上面から鉛直上方に突出した円筒部(突出部)211が形成されている。なお、本実施形態の容器本体21は、円筒部211の開口のみが外部に開放している。また、容器本体21の両端側には、ネジ溝212が形成されている。
【0233】
ゴム栓23は、特に限定されないが、例えば、シリコン製のゴム栓を用いることができる。
【0234】
錘部5は、円盤状をなす平板部51と、平板部51の縁部から立設する筒状部52とを有しており、その外形が断面視した際に略C字状をなす部材である。筒状部52の内周側には、容器本体21のネジ溝212に螺合可能なネジ溝521が形成されている。錘部5のネジ溝521を容器本体21のネジ溝212に螺合させることにより、平板部51が容器本体21の各端部に密着した状態で錘部5が容器本体21に取り付けられる(固定される)。
【0235】
このような錘部5は、前述した図9に示す蓋22の底板部223と同様に、セラミック材料、金属材料等の比重の大きい材料で構成されている。そのため、錘部5を容器本体21に取り付けることにより、容器本体21の両端部の質量を大きくすることができる。これにより、工程(S4)において、水性液体10が容器本体21の錘部5に固定された部分(特に、両端部)に衝突した際に発生する衝撃波の大きさをより大きくすることができる。その結果、水性液体10中に微細なバブル1をより容易に、かつ安定的に生成することができる。
【0236】
なお、錘部5の構成材料としては、比重が高く、水性液体10の構成成分に対する高い耐腐食性を有するという観点から、金属材料の中でも鉄、または、ステンレス鋼等の鉄合金を用いるのが特に好ましい。
【0237】
また、このような錘部5は、容器本体21に容易に脱着可能である。錘部5の構成材料および/またはサイズを変更することにより、錘部5の質量を適宜調整することができる。この錘部5の質量を調整することにより、工程(S4)において、水性液体10中に生成されるバブル1のサイズおよび生成量を調整することができる。すなわち、本実施形態のバブルの製造方法では、様々なサイズおよび含有量のバブル1を、同一の製造容器20を用いて製造することができる。そのため、目的とするサイズおよび含有量のバブル1に合わせて、サイズの異なる複数種の製造容器20を準備する必要がないため、バブル含有容器の生産性が向上する。
【0238】
[S3]製造容器を密閉する工程
水性液体10が注入された容器本体21内を、ガス3でパージした後、ゴム栓23を容器本体21の円筒部211の開口に挿着する。これにより、製造容器20内に水性液体10とガス3とが密閉される。
【0239】
次に、ガス3が充填された注射器40を準備する。そして、注射器40の注射針41をゴム栓23に刺通する。その後、注射器40から製造容器20内にさらにガス3を加える。これにより、製造容器20内が加圧される。その後、ゴム栓23から注射針を抜くことにより、製造容器20内がガス3により加圧された状態で密閉された製造容器20を得ることができる。
【0240】
[S4]製造容器を振動させる工程
次に、水性液体10が、製造容器20の両端部および側面(特に、両端部)に繰り返し衝突するように、製造容器20を振動させる。本実施形態では、製造容器20が、製造容器20の水平方向(長手方向)にほぼ往復運動するように、製造容器20を振動させる。
【0241】
なお、本実施形態における製造容器20の振動は、前述した第1実施形態の工程(S4)と同様の条件で行うことができる。
【0242】
その後の工程は、前述した第1〜第5実施形態と同様に行うことにより、製造容器20内に均一なサイズのバブル1を多量に安定的に製造することができる。また、同時に、均一なサイズのバブル1を多量に含有する製造容器(密閉容器)20(バブル含有容器)が得られる。
【0243】
かかる第10実施形態のバブルの製造方法によっても、前記第1〜第9実施形態のバブルの製造方法と同様の作用・効果を生じる。
【0244】
<第11実施形態>
次に、本発明のバブルの製造方法の第11実施形態について説明する。
【0245】
図16は、本発明のバブルの製造方法の第11実施形態に用いられる製造容器を説明するための断面図である。図16(a)は、分解した状態の製造容器を示しており、図16(b)は、組立てた状態の製造容器を示している。
【0246】
なお、以下の説明では、図16(a)および(b)中の上側を「上」と言い、図16(a)および(b)中の下側を「下」と言う。また、図16(a)および(b)中の左側を「左」と言い、図16(a)および(b)中の右側を「右」と言う。
【0247】
以下、第11実施形態のバブルの製造方法について、前記第1〜第10実施形態のバブルの製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0248】
本実施形態のバブルの製造方法は、図16(a)および(b)に示すように、製造容器20(バブル製造用容器の第7実施形態)の容器本体21の両端が外部に開放される以外は、前述した第10実施形態の図15に示す製造容器20を用いたバブルの製造方法と同じである。すなわち、容器本体21は、両端が外部に開口した円筒状をなす部材で構成されている。
【0249】
かかる構成の製造容器20を用いる場合には、まず、錘部5のネジ溝521を容器本体21のネジ溝212に螺合させることにより、錘部5を容器本体21に取り付ける。なお、図16(b)に示すように、錘部5が容器本体21に取り付けられた状態では、平板部51が容器本体21の各端部に密着する。
【0250】
なお、図示しないが、平板部51と容器本体21の各端部との間に、錘部5と容器本体21との密着性を高めるためのパッキンを配置してもよい。これにより、製造容器20の密閉性を向上させることができる。
【0251】
その後、上述した本実施形態のバブルの製造方法と同様の工程を経て、バブル含有容器を得ることができる。
【0252】
このようにして得られたバブル含有容器は、ゴム栓23に注射器の注射針を刺通した後、バブル含有液を吸引して使用することができる。また、かかる構成では、錘部5を容器本体21から外し、注射器を用いることなく、直接バブル含有容器からバブル含有液を取り出すことができる。
【0253】
かかる第11実施形態のバブルの製造方法によっても、前記第1〜第10実施形態のバブルの製造方法と同様の作用・効果を生じる。
<第12実施形態>
次に、本発明のバブルの製造方法の第12実施形態について説明する。
【0254】
図17は、本発明のバブルの製造方法の第12実施形態に用いられる製造容器を説明するための断面図である。
なお、以下の説明では、図17中の上側を「上」と言い、図17中の下側を「下」と言う。
【0255】
以下、第12実施形態のバブルの製造方法について、前記第1〜第11実施形態のバブルの製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0256】
本実施形態のバブルの製造方法は、製造容器の構成が異なる以外は、前述した第1〜第5実施形態のバブルの製造方法と同じである。
【0257】
[S1] 準備工程
図17に示すような製造容器20(バブル製造用容器の第8実施形態)を準備する。
【0258】
本実施形態の製造容器20は、容器本体21と、容器本体21を密閉する蓋22と、容器本体21の他端側に、容器本体21の長手方向に移動可能に設けられた錘部5と、錘部5を固定する一対のOリング6とを有している。なお、蓋22は、前述した第1実施形態の製造容器20の蓋22と同じ構成を有している
【0259】
容器本体21は、略有底円筒状をなしている。容器本体21は、蓋22が取り付けられる上部本体部215と、錘部5が取り付けられ、上部本体部215よりも小さい内径を有する下部本体部216とを有する。また、図17に示すように、上部本体部215は、その下端部に、下部本体部216と同じ内径となるように縮径している縮径部217を有する。上部本体部215の一端側(上端側)の外周面には、蓋22の締付部222(締付部222の内周面)と螺合可能なネジ溝213が形成されている。また、下部本体部216の外周面の全体にわたって、錘部5(錘部5の内周面)と螺合可能なネジ溝214が形成されている。
また、容器本体21を構成する材料は、特に限定されないが、ガラス等の各種セラミックス材料、樹脂材料等を用いることができる。
【0260】
上部本体部215の長手方向の長さは、特に限定されないが、10〜60mm程度であるのが好ましく、15〜30mm程度であるのがより好ましい。また、上部本体部215の内径は、5〜20mm程度であるのが好ましく、8〜15mm程度であるのがより好ましい。また、下部本体部216の長手方向の長さは、特に限定されないが、10〜35mm程度であるのが好ましく、13〜23mm程度であるのがより好ましい。また、下部本体部216の内径は、上部本体部215の内径よりも小さければ、特に限定されないが、2〜15mm程度であるのが好ましく、3〜8mm程度であるのがより好ましい。
【0261】
かかる寸法の容器本体21を用いることにより、容器本体21内の密閉空間で適切な圧力が水性液体10に付与されるので、均一なサイズのバブル1を安定的に得ることができる。また、この場合、超音波診断の際に、1つの製造容器20内のバブル含有液を使い切ることができるため、製造されるバブル含有液の無駄をなくすことができる。
また、上部本体部215の内径と下部本体部216の内径とが上記範囲内であると、上部本体部215の内径と下部本体部216の内径との差が大きくなり、縮径部217が大きくなる。そのため、工程(S4)において、水性液体10が上部本体部215から下部本体部216側へと移動する際に、水性液体10が、この縮径部217に衝突して、衝撃波が発生する。このように、縮径部217の存在により、一定の内径を有する容器を用いる場合に比べて、製造容器20内に発生する衝撃波の発生頻度を高くすることができる。
さらに、製造容器20の振動工程において、上部本体部215から下部本体部216へと水性液体10が移動するため、水性液体10の移動速度が速くなる。そのため、キャビテーション効果により、下部本体部216内の水性液体10にバブルがより生成し易くなる。これらの相乗効果により、より短時間で、均一な粒径のバブル1をより効率良く生成することができる。
【0262】
また、ネジ溝214が、下部本体部216の外周面の全体にわたって形成されるので、長手方向の長さが上記範囲内であれば、錘部5を容器本体21の下端から中央付近まで移動させることができる。
錘部5を容器本体21の下端付近に設けた場合には、容器本体21の下端部の重量が大きくなる。そのため、前述した第10実施形態と同様に、工程(S4)において、水性液体10が容器本体21の下端部と衝突した際に発生する衝撃波を大きくすることができる。
一方、錘部5の位置を容器本体21の中央付近に設けた場合には、縮径部217の重量が大きくなる。そのため、工程(S4)において、水性液体10が縮径部217と衝突した際に発生する衝撃波を大きくすることができる。
また、錘部5が設けられる位置が、容器本体21の下端部に近いほど、水性液体10が容器本体21の下端部と衝突した際に発生する衝撃波が大きくなる。すなわち、本実施形態では、下部本体部216に錘部5を設置する位置を調整することにより、製造容器20内に発生する衝撃波の大きさを制御することができ、所望のサイズのバブル1をより安定的に生成させることができる。
なお、容器本体21全体の長手方向の長さは、特に限定されないが、20〜85mm程度であるのが好ましく、30〜53mm程度であるのがより好ましい。
【0263】
錘部5は、リング状をなす部材である。錘部5を下部本体部216のネジ溝214に螺合させた状態において、錘部5を回転させることにより、錘部5は、下部本体部216のネジ溝214が形成された領域を長手方向(図17中、上下方向)に移動する。
【0264】
上述したように、本実施形態のバブルの製造方法では、容器本体21に錘部5を設ける位置を設定することにより、製造容器20内に発生する衝撃波の大きさを制御することができる。これにより、得られるバブル1のサイズおよび含有量を調整することができる。
錘部5の質量は、特に限定されないが、上述した寸法の容器本体21に対しては、3〜30g程度であるのが好ましく、5〜20g程度であるのがより好ましい。錘部5の質量が上記範囲内であれば、得られるバブル1のサイズおよび含有量を、より効率良く調整することができる。
【0265】
Oリング6は、錘部5を挟むように錘部5の上側と下側とに設けられ、製造容器20の振動等により錘部5が移動するのを防止するための部材である。なお、Oリング6としては、シリコン製のOリングを用いることができる。
錘部5およびOリングは、以下のようにして、容器本体21と取り付けることができる。まず、1つ目のOリング6を下部本体部216の下端側から挿通し、所定の位置で止める。次に、錘部5を下部本体部216の下端部に取り付け、取り付けたOリング6と接触するまで移動させる。その後、2つ目のOリング6を下部本体部216の下端側から挿通し、錘部5に接触するまで移動させることにより、2つのOリング6により錘部5が固定される。
【0266】
その後の工程は、前述した第1〜第5実施形態と同様に行うことにより、製造容器20内に均一なサイズのバブル1を多量に安定的に製造することができる。また、同時に、均一なサイズのバブル1を多量に含有する製造容器(密閉容器)20(バブル含有容器)が得られる。
【0267】
かかる第12実施形態のバブルの製造方法によっても、前記第1〜第11実施形態のバブルの製造方法と同様の作用・効果を生じる。
【0268】
<第13実施形態>
次に、本発明のバブルの製造方法の第13実施形態について説明する。
【0269】
図18は、本発明のバブルの製造方法の第13実施形態に用いられる製造容器を説明するための断面図である。図18(a)は、分解した状態の製造容器を示しており、図18(b)は、組立てた状態の製造容器を示している。図19は、図18(b)に示す製造容器の蓋に形成される開口部の位置を説明するための図である。図19(a)は、注射器の注射針をゴム栓に刺通する前の状態を説明するための図であり、図19(b)は、注射針をゴム栓から抜いた後に締付部を底板部に締め付けた状態を説明するための図である。
【0270】
なお、以下の説明では、図18(a)および(b)中の上側を「上」と言い、図18(a)および(b)中の下側を「下」と言う。また、図18(a)および(b)中の左側を「左」と言い、図18(a)および(b)中の右側を「右」と言う。
【0271】
以下、第13実施形態のバブルの製造方法について、前記第1〜第12実施形態のバブルの製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0272】
本実施形態のバブルの製造方法は、製造容器の蓋の構成が異なる以外は、前述した第1〜第5実施形態のバブルの製造方法と同様である。
【0273】
[S1] 準備工程
図18(b)に示すような製造容器20(バブル製造用容器の第9実施形態)を準備する。
【0274】
本実施形態の製造容器20は、前述した第1実施形態の製造容器20と同様の容器本体21と、蓋22とを有している。
【0275】
本実施形態では、蓋22は、容器本体21の瓶口に固定される底板部223と、底板部223の容器本体21とは反対側に配置されるゴム栓221と、ゴム栓221を底板部223に固定する締付部222とを備えている。
【0276】
底板部223は、円盤状をなす平板部225と、平板部225の縁部から立設する筒状部226とを有しており、その外形を断面視した際に略C字状をなす部材である。本実施形態では、平面視(上面視)における底板部223(平板部225)の形状と、ゴム栓221との形状がほぼ等しく、互いにほぼ同じ径を有している。また、筒状部226の内周面および容器本体21の瓶口側の外周面には、互いに螺合可能に形成されたネジ溝が、それぞれ形成されており、これらを螺合させることにより、底板部223(平板部225)が容器本体21の瓶口と密着した状態で固定される。
【0277】
また、底板部223には、平面視(上面視)において、その中心から所定の距離離間した位置に、注射器の注射針が挿通可能なサイズを有する貫通孔224が形成されている。すなわち、図19(a)に示すように、蓋22の平面視において、ゴム栓221の中心Cと底板部223の貫通孔224とはズレている。
【0278】
かかる底板部223は、前述した図9に示す蓋22の底板部223と同様に、セラミック材料、金属材料等の比重の大きい材料で構成されている。底板部223の質量を大きくすることにより、工程(S4)において、水性液体10が製造容器20の上面(底板部223)に衝突した際に発生する衝撃波の大きさをより大きくすることができる。その結果、水性液体10中に微細なバブル1をより容易に、かつ安定的に生成することができる。
【0279】
ゴム栓221としては、前述した第1実施形態のバブルの製造方法で用いたゴム栓221と同様のゴム栓を用いることができる。このゴム栓221の表面には、蓋22を容器本体21に取り付けた状態において、底板部223の貫通孔224に対応する位置に注射針を刺通するためのマークXが付されている(図19(a)参照)。
【0280】
締付部222は、ゴム栓221の縁部を覆うように構成されている。また、締付部222および底板部223(平板部225)の外周面には、互いに螺合可能に形成されたネジ溝が、それぞれ形成されており、これらを螺合させることにより、ゴム栓221が底板部223(平板部225)と密着した状態で固定される。
【0281】
[S3]製造容器を密閉する工程
まず、水性液体10が注入された容器本体21の空隙部11を、ガス3でパージした後、蓋22を容器本体21の開口部(瓶口)に挿着する(図19(a)に示す状態)。これにより、製造容器20内に水性液体10とガス3とが密閉される。
【0282】
図19(a)に示す状態において、ゴム栓221のマークXに、ガス3が充填された注射器の注射針を刺通して、注射針を底板部223の貫通孔224に挿通させる。その後、注射器から製造容器20内にさらにガス3を加えて、製造容器20内を加圧した後、ゴム栓221から注射針を抜く。
【0283】
次に、締付部222を回して、締付部222を底板部223に締め付ける(図19(b)に示す状態)。締付部222を底板部223に締め付けることにより、ゴム栓221が、底板部223に対して回転(例えば、180°回転)しながら、底板部223側に圧縮される。そのため、平面視における、注射針の刺通によりゴム栓221に形成された貫通孔227の位置と底板部223の貫通孔224の位置とがずれる(図19(b)参照)。これにより、底板部223の貫通孔224がゴム栓221により閉じられ、製造容器20内がガス3により加圧された状態で密閉された製造容器20を得ることができる。
【0284】
本実施形態では、製造容器20の内部と外部とを連通する部分が存在しないため、製造容器20内の密閉性を向上させることができる。製造容器20内の密閉性が向上することにより、最終的に得られるバブル含有容器では、バブル1が水性液体10中により安定的に存在することができる。すなわち、バブル含有容器の長期保存性がより向上する。
【0285】
上述したように、締付部222を底板部223に締め付けることにより、ゴム栓221は底板部223側に圧縮される。締付部222を底板部223に締め付ける前の状態におけるゴム栓221の厚さをt(mm)とし、締付部222を底板部223に締め付けた状態におけるゴム栓221の厚さをt(mm)としたとき、ゴム栓221の圧縮率((t−t)/t×100)は、5〜60%であるのが好ましく、10〜30%であるのがより好ましい。これにより、締付部222の締付けによるゴム栓221への負荷を抑えつつ、ゴム栓221と底板部223との密着性をより向上させることができる。その結果、製造容器20内の密閉性をより向上させることができる。
【0286】
本実施形態においても、製造容器20内に均一なサイズのバブル1を多量に安定的に製造することができる。また、同時に、均一なサイズのバブル1を多量に含有する製造容器20(バブル含有容器)が得られる。
なお、底板部223には、前述した第6実施形態と同様に、複数の貫通孔224が設けられてもよい。
【0287】
かかる第13実施形態のバブルの製造方法によっても、前記第1〜第12実施形態のバブルの製造方法と同様の作用・効果を生じる。
【0288】
以上、本発明のバブルの製造方法およびバブル製造用容器を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各工程は、同様の機能を発揮し得る任意の工程と置換することができる。
例えば、前記第1〜第13実施形態の任意の構成を組み合わせることもできる。
【実施例】
【0289】
ここで、製造容器20内に封入するガス3の容量および製造容器20の回転数が、水性液体10中に生成されるバブル1の径および含有量に与える影響を解明するために、以下の実験を行った。
【0290】
(実施例1)
まず、製造容器20の回転数と、水性液体10中に生成されるバブル1の径および含有量との関係を調べた。
【0291】
(バブルの製造方法)
[準備工程]
まず、アルブミンが250mg/ml含まれるアルブミン溶液(CSL Behring社製 アルブミナー25%)を120μl準備するとともに、25%リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を12ml準備した。また、15mlのバイアル瓶(高さX:50mm、外径R:25mm)を準備した。なお、このバイアル瓶は、図4に示す製造容器20と同様の形状をなしている。
【0292】
[水性液体を容器に注入する工程]
準備したバイアル瓶内に、アルブミン溶液と25%リン酸緩衝生理食塩水とを全量注入した。なお、アルブミン溶液と25%リン酸緩衝生理食塩水とを混合してなる水性液体の液面の高さYは、25mmであった。
【0293】
[容器を密閉する工程]
次に、水性液体が注入されたバイアル瓶内の空隙をパーフルオロブタンでパージした後、バイアル瓶の瓶口に図4に示す蓋22と同様の形状の蓋を挿着した。次に、パーフルオロブタンが充填された注射器を準備した。注射器の注射針で蓋のゴム栓を刺通して、注射器からバイアル瓶内にさらに2mlのパーフルオロブタンを加えた。これにより、内部の圧力が2atmの密閉バイアル瓶を得た。
【0294】
[容器を振動させる工程]
次に、上記の密閉バイアル瓶を2つ準備した。bertin Technologies社製のPrecellys(高速細胞破砕システム)を用いて、一方の密閉バイアル瓶を回転数5000rpmで30秒間振動させ、他方の密閉バイアル瓶を回転数6500rpmで30秒間振動させた。その際、密閉バイアル瓶は、上下方向に往復運動し、水性液体がバイアル瓶の上下面に繰り返し衝突することを確認した。なお、密閉バイアル瓶を振動させる際に、密閉バイアル瓶の長手方向(鉛直方向)の振動幅は、40mmであり、密閉バイアル瓶の短手方向(水平方向)の振動幅は、20mmであった。上記条件に設定することにより、いずれのバイアル瓶についても、バイアル瓶と水性液体との瞬間相対速度が40km/h以上となるようにした。
【0295】
[容器を静置させる工程]
振動後、密閉バイアル瓶を静置させ、バブル含有容器を得た。
【0296】
(バブル径分布測定)
上記のようにして得られたバブル含有容器から、バブルを含有する水性液体(バブル含有液)を注射器で取出した、次に、バブル測定装置(ナノ粒子解析システム nanosight)を用いて、水性液体に含まれるバブルのバブル径分布測定を行った。その結果を、図20に示す。
【0297】
図20(a)は、5000rpmおよび6500rpmの回転数でバブルを製造した時のバブルのバブル径分布を示すグラフである。図20(b)は、図20(a)に示すグラフにおいて、横軸が0〜700nmの範囲である部分拡大図である。
【0298】
図20(a)に示すように、密閉バイアル瓶を6500rpmで振動させることにより、密閉バイアル瓶を5000rpmで振動させた場合に比べて、水性液体中のバブルの含有量を大幅に多くすることができた。特に、径が600nm程度よりも小さいバブルの含有量は、密閉バイアル瓶を5000rpmで振動させた場合に比べて、密閉バイアル瓶を6500rpmで振動させた場合の方が、3〜5倍以上多くなった。
【0299】
密閉バイアル瓶の回転数が5000rpmの場合でも、その振動時間を長くすることにより、水性液体中のバブルの含有量をある程度多くすることはできる。ただし、回転数が6500rpmの場合のバブルの含有量に比べると少ない。
【0300】
また、図20(b)に示すように、密閉バイアル瓶を6500rpmで振動させた場合には、径が100〜150nm程度の極小のバブルを多量に生成させることができた。
【0301】
以上の結果は、以下のような作用・効果によるものと考えられる。すなわち、密閉バイアル瓶の回転数に応じて、水性液体とバイアル瓶とが衝突する際に生じる衝撃波の圧力の大きさが変化する。この衝撃波の圧力の大きさが、水性液体中に生成されるバブルの径および含有量を決定する大きな要因となっている。一般的な攪拌子を用いた攪拌や、5000rpmよりも小さい回転数での振動では、このような衝撃波が発生しない、または、発生したとしても発生量がわずかである。そのため、本願発明のように十分に小さい径を有するバブルを、十分な含有量で水性液体中に生成させることはできない。
【0302】
図21は、図20(a)に示すバブル径分布のグラフを解析した結果である。
図21(a)は、密閉バイアル瓶の回転数とバブルの平均径との関係を示すグラフである。図21(b)は、密閉バイアル瓶の回転数とバブルの含有量との関係を示すグラフである。
【0303】
図21(a)に示すように、密閉バイアル瓶を6500rpmで振動させた場合には、生成されるバブルの平均径は、密閉バイアル瓶を5000rpmで振動させた場合に比べて、80nm程度小さくなった。また、図21(b)に示すように、密閉バイアル瓶を6500rpmで振動させた場合には、生成されるバブルの含有量は、密閉バイアル瓶を5000rpmで振動させた場合に比べて、9×10個(particle)/ml程度小さくなった。この結果からも、密閉バイアル瓶を6500rpmで振動させた場合に、密閉バイアル瓶を5000rpmで振動させた場合よりも、小さい径のバブルを多量に生成することができることが分かった。
【0304】
(実施例2)
次に、製造容器20内に封入するガス3の容量と、水性液体10中に生成されるバブル1の径および含有量との関係を調べた。
【0305】
(バブルの製造方法)
実施例1の容器を密閉する工程において、バイアル瓶内に封入するパーフルオロブタンの容量を、0.5ml、1ml、1.5ml、2mlにそれぞれ変更した4つの密閉バイアル瓶を準備した以外は、前記実施例1と同様にしてバブル含有容器を得た。
【0306】
なお、各密閉バイアル瓶について、封入するガス(パーフルオロブタン)の容量(ml)、密閉バイアル瓶内の圧力(atm)および容器を振動させる工程における密閉バイアル瓶の回転数(rpm)を、下記表1に示す。
【0307】
【表1】
【0308】
(バブル径分布測定)
実施例1と同様にして、得られた各バブル含有容器内のバブル含有液のバブル径分布測定を行った。得られたバブル径分布のグラフを解析した結果を、図22に示す。
【0309】
図22(a)は、密閉バイアル瓶内に封入されるガスの容量とバブルの平均径との関係を示すグラフである。図22(b)は、密閉バイアル瓶内に封入されるガスの容量とバブルの含有量との関係を示すグラフである。
【0310】
図22(a)に示すように、密閉バイアル瓶を振動させる回転数が同じであっても、密閉バイアル瓶内の圧力を大きくすることによって、生成されるバブルの平均径が小さくなった。具体的には、密閉バイアル瓶内の圧力が2atmである場合には、生成されるバブルの平均径は、密閉バイアル瓶内の圧力が1.2atmである場合に比べて、100nm程度小さくなった。
【0311】
また、図22(b)に示すように、密閉バイアル瓶内の圧力を大きくすることによって、バブルの含有量が多くなった。特に、密閉バイアル瓶内の圧力が2atmである場合には、バブルの含有量は、密閉バイアル瓶内の圧力が1.2atmである場合に比べて、2倍以上多くなった。
【0312】
密閉バイアル瓶内の圧力を大きくなることによって、水性液体とバイアル瓶とが衝突する際に生じる衝撃波の圧力が、生成されるバブルの径および含有量に大きく作用すると考えられる。そのため、密閉バイアル瓶を振動させる回転数が同じであっても、密閉バイアル瓶内の圧力に応じて、生成されるバブルの平均径が変化する。また、密閉バイアル瓶内の圧力を大きくなることによって、ガスが水性液体中に多量に取り込まれる。そのため、前述したような衝撃波の作用により、水性液体中に生成されるバブルの含有量を多くすることができた。
【0313】
(実施例3)
(GFP遺伝子を含有するナノバブルの製造方法)
[準備工程]
まず、前述した第1実施形態と同様に、120μlのアルブミン溶液(CSL Behring社製 アルブミナー25%)と、12mlの25%リン酸緩衝生理食塩水を準備した。さらに、GFP遺伝子を2μg準備した。また、15mlのバイアル瓶(高さX:50mm、外径R:25mm)を準備した。なお、このバイアル瓶は、図4に示す製造容器20と同様の形状をなしている。
【0314】
[水性液体を容器に注入する工程]
準備したバイアル瓶内に、アルブミン溶液と、25%リン酸緩衝生理食塩水と、GFP遺伝子とを全量注入した。なお、アルブミン溶液、25%リン酸緩衝生理食塩水およびGFP遺伝子を混合してなる水性液体の液面の高さYは、25mmであった。
【0315】
[容器を密閉する工程]
次に、水性液体が注入されたバイアル瓶内の空隙をパーフルオロブタンでパージした後、バイアル瓶の瓶口に図4に示す蓋22と同様の形状の蓋を挿着した。次に、パーフルオロブタンが充填された注射器を準備した。注射器の注射針で蓋のゴム栓を刺通して、注射器からバイアル瓶内にさらに2mlのパーフルオロブタンを加えた。これにより、これにより、内部の圧力が2atmの密閉バイアル瓶を得た。
【0316】
[容器を振動させる工程]
次に、上記の密閉バイアル瓶を、bertin Technologies社製のPrecellysを用いて、回転数7000rpmで30秒間振動させた。その際、密閉バイアル瓶は、上下方向に往復運動し、水性液体がバイアル瓶の上下面に繰り返し衝突することを確認した。なお、密閉バイアル瓶を振動させる際に、密閉バイアル瓶の長手方向(鉛直方向)の振動幅は、40mmであり、密閉バイアル瓶の短手方向(水平方向)の振動幅は、20mmであった。上記条件に設定することにより、バイアル瓶と水性液体との瞬間相対速度が40km/h以上となるようにした。
【0317】
[容器を静置させる工程]
振動後、密閉バイアル瓶を静置させ、バブル含有容器を得た。なお、バブルを含有する水性液体(バブル含有液)を注射器で取出し、バブル測定装置(ナノ粒子解析システム nanosight)を用いて、バブルのサイズを確認した。その結果、バブルの平均径は、600nmであった。
【0318】
<細胞内への蛍光タンパク質発現遺伝子の導入の評価>
脳血管周皮細胞(ペリサイト)(タカラバイオ株式会社製 製品コード:C−12980)を培養したシャーレーに、実施例3で得られた0.2μgの水性液体を添加し、脳血管周皮細胞培地を得た。なお、ペリサイトは、遺伝子導入が非常に難しい細胞として知られている。
【0319】
このような脳血管周皮細胞培地を4サンプル準備した。これらのサンプルに対して、周波数:1.0MHzの超音波(正弦波、パルス繰り返し周波数(PRF):100Hz、デューティー比(DC):10%)を以下の出力で60秒間照射した。
【0320】
[照射出力]
0.6W/cm、0.8W/cm、0.9W/cm、1.0W/cm
その後、37℃において48時間にわたって脳血管周皮細胞培地を培養させた後の各サンプルを蛍光顕微鏡で観察した。
【0321】
図23は、37℃において48時間培養させた脳血管周皮細胞培地の蛍光顕微鏡画像であり、図23(a)は、照射強度:0.6W/cmで超音波照射したサンプルの画像であり、図23(b)は、照射強度:0.8W/cmで超音波照射したサンプルの画像である。また、図24は、37℃において48時間培養させた脳血管周皮細胞培地の蛍光顕微鏡画像であり、図24(a)は、照射強度:0.9W/cmで超音波照射したサンプルの画像であり、図24(b)は、照射強度:1.0W/cmで超音波照射したサンプルの画像である。
【0322】
図23(a)、(b)および図24(a)、(b)に示すように、いずれの照射出力で超音波照射されたサンプルにおいても、緑色に発色した領域が確認された。これは、各サンプルにおいて、脳血管周皮細胞内で緑色蛍光タンパク質(GFP)が発現していることを示している。したがって、いずれのサンプルにおいても、超音波照射によってバブルが破裂し、バブルに包含されたGFP遺伝子が脳血管周皮細胞内に導入されたことが示された。
【0323】
次に、水性液体10の種類と、水性液体10中に生成されるバブル1の径および含有量との関係を調べた。
【0324】
(実施例4)
(バブルの製造方法)
[準備工程]
まず、水性液体としての蒸留水を12ml準備した。また、15mlのバイアル瓶(高さX:50mm、外径R:25mm)を準備した。なお、このバイアル瓶は、図4に示す製造容器20と同様の形状をなしている。
【0325】
[水性液体を容器に注入する工程]
準備したバイアル瓶内に、蒸留水(水性液体)を注入した。なお、水性液体の液面の高さYは、25mmであった。
【0326】
次に、バイアル瓶内に充填するガスとして、パーフルオロプロパンを用いて[容器を密閉する工程]を行った後、前記第1実施形態と同様に、[容器を振動させる工程]および[容器を静置させる工程]を行うことにより、バブル含有容器を得た。
【0327】
(実施例5)
蒸留水を1w/v%のデキストラン水溶液に変更した以外は、前記実施例4と同様にして、バブル含有容器を得た。
【0328】
(実施例6)
蒸留水を100%リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に変更した以外は、前記実施例4と同様にして、バブル含有容器を得た。
【0329】
(実施例7)
蒸留水をソルデム3A輸液(テルモ株式会社製)に変更した以外は、前記実施例4と同様にして、バブル含有容器を得た。
【0330】
(実施例8)
蒸留水をソルデム1輸液(テルモ株式会社製)に変更した以外は、前記実施例4と同様にして、バブル含有容器を得た。
【0331】
(実施例9)
蒸留水を生理食塩水(0.9w/v%NaCl水溶液)に変更した以外は、前記実施例4と同様にして、バブル含有容器を得た。
【0332】
(実施例10)
蒸留水を0.25w/v%のアルブミン水溶液に変更した以外は、前記実施例4と同様にして、バブル含有容器を得た。
【0333】
(実施例11)
蒸留水を20w/v%のグルコース水溶液に変更した以外は、前記実施例4と同様にして、バブル含有容器を得た。
【0334】
(バブル径分布測定)
上記のようにして得られた実施例4〜実施例11のバブル含有液に対して、前記第1実施形態と同様にして、バブル径分布測定を行った。その結果を、図25に示す。
【0335】
図25は、実施例4〜11で得られたバブルのバブル径分布を示すグラフである。
図25に示すように、水性液体中の水の濃度が高いほど、生成されるバブル1の径が小さくなるとともに、その生成量が多くなる傾向があることが分かった。特に、水性液体として蒸留水を用いた実施例4では、そのバブルの平均径が100nm程度であり、また、バブル含有液中に生成されるバブルの含有量が27×10個/ml程度となった。より具体的には、実施例4では、バブル径が100nm程度のバブルが最も多く生成された。さらに、実施例4では、100nmをピーク中心として、0〜200nm程度のバブル径を有するバブルが生成された。
また、水性液体として、ソルデム3A輸液を用いた実施例7およびソルデム1輸液を用いた実施例8では、実施例4に比べて、生成されるバブルの数が少なかったが、実施例4と類似した形状のバブル径分布が得られた。
一方、水性液体として、20w/v%のグルコース水溶液を用いた実施例11では、200nm程度のバブル径を有するバブルが最も多く生成された。また、実施例11で得られたバブルは、そのバブル径分布が広く、100〜400nm程度のバブル径を有していた。さらに、水性液体として、0.25%アルブミンを用いた実施例10では、100〜500nm程度のバブル径を有するバブルが均等に生成された。
また、実施例4〜11のバブル含有液は、いずれも、500nmよりも大きいサイズのバブルがほとんど存在しなかった。そのため、このようなバブル含有液を超音波造影剤として用いることにより、解像度が高く、高精細な画像を得ることができる。
【0336】
次に、ガス3の種類と、水性液体10中に生成されるバブル1の径および含有量との関係を調べた。
【0337】
(実施例12)
前記実施例4において、蒸留水を生理食塩水(0.9w/v%NaCl水溶液)に変更して、[準備工程]および[水性液体を容器に注入する工程]を行った。次に、バイアル瓶内に充填するガスとして、空気を用いて[容器を密閉する工程]を行った後、前記第1実施形態と同様に、[容器を振動させる工程]および[容器を静置させる工程]を行うことにより、バブル含有容器を得た。
【0338】
(実施例13)
空気をエチレン(C)に変更した以外は、前記実施例12と同様にして、バブル含有容器を得た。
【0339】
(実施例14)
水素をエチレン(C)に変更した以外は、前記実施例13と同様にして、バブル含有容器を得た。
【0340】
(実施例15)
水素をエタン(C)に変更した以外は、前記実施例13と同様にして、バブル含有容器を得た。
【0341】
(実施例16)
水素をメタン(CH)に変更した以外は、前記実施例13と同様にして、バブル含有容器を得た。
【0342】
(実施例17)
水素を亜酸化窒素(NO)に変更した以外は、前記実施例13と同様にして、バブル含有容器を得た。
【0343】
(バブル径分布測定)
上記のようにして得られた実施例12〜実施例17のバブル含有液に対して、前記第1実施形態と同様にして、バブル径分布測定を行った。その結果を、図26に示す。
【0344】
図26は、実施例12〜17で得られたバブルのバブル径分布を示すグラフである。
図26に示すように、バイアル瓶内に封入するガスの種類を変更することにより、バブルの生成量が変化した。バイアル瓶内に封入されるガスがエチレンである場合(実施例12)、封入されるガスとして空気を用いる場合(実施例14)に比べて、バブル生成量が2倍程度多くなった。また、特に、ガスとして水素やエタンを用いた実施例13および15では、バブル生成量が多くなることが分かった。
次に、図17に示す製造容器20を用いて生成されるバブル1の径および含有量を調べた。
【0345】
(実施例18)
(バブルの製造方法)
[準備工程]
まず、前述した第1実施形態と同様に、120μlのアルブミン溶液(CSL Behring社製 アルブミナー25%)と、12mlの25%リン酸緩衝生理食塩水とを準備した。また、図17に示す製造容器20(上部本体部の長さ:23.82mm、上部本体部の内径:10.26mm、下部本体部の長さ20mm、下部本体部の内径:5.9mm)を準備した。
【0346】
[水性液体を容器に注入する工程]
準備した製造容器内に、アルブミン溶液と、25%リン酸緩衝生理食塩水とを全量注入した。なお、アルブミン溶液および25%リン酸緩衝生理食塩水を混合してなる水性液体の液面の高さは、製造容器20の底面から25mmであった。
【0347】
[容器を密閉する工程]
次に、水性液体が注入された製造容器20の瓶口(開口部)に図17に示す蓋22と同様の形状の蓋を挿着した。これにより内部の圧力が1atmの密閉容器(密閉された製造容器20)を得た。
【0348】
[容器を振動させる工程]
次に、上記の密閉容器を2つ準備した。一方の密閉容器(製造容器20)にのみ、13.5gの錘部5を取り付けた。これら2つの密閉容器を、bertin Technologies社製のPrecellysを用いて、回転数6500rpmで30秒間振動させた。その際、密閉容器は、上下方向に往復運動し、水性液体が密閉容器の上下面に繰り返し衝突することを確認した。なお、密閉容器を振動させる際に、密閉容器の長手方向(鉛直方向)の振動幅は、40mmであり、密閉容器の短手方向(水平方向)の振動幅は、20mmであった。上記条件に設定することにより、製造容器20と水性液体との瞬間相対速度が40km/h以上となるようにした。
【0349】
[容器を静置させる工程]
振動後、密閉容器を静置させ、バブル含有容器を得た。
【0350】
(実施例19)
前記実施例18と同様にして、図17に示す製造容器20にアルブミン溶液および25%リン酸緩衝生理食塩水からなる水性液体を注入した。
その後、前記実施例12と同様にして製造容器20内に空気を充填して[容器を密閉する工程]を行った。その後、前記実施例18と同様に、[容器を振動させる工程]および[容器を静置させる工程]を行うことにより、バブル含有容器を得た。
【0351】
(実施例20)
空気をパーフルオロプロパンに変更した以外は、前記実施例19と同様にして、バブル含有容器を得た。
【0352】
(バブル径分布測定)
上記のようにして得られた実施例18〜実施例20のバブル含有液に対して、前記第1実施形態と同様にして、バブル径分布測定を行った。また、実施例18〜20で得られたバブル含有液を、注射器を用いてプレパラートに数滴垂らし、光学顕微鏡で観察した。その結果を、図27および28に示す。
【0353】
図27(a−1)は、実施例18の錘無しの容器を用いて得られたバブルの顕微鏡像およびバブル径分布グラフである。図27(a−2)は、実施例18の錘有りの容器を用いて得られたバブルの顕微鏡像およびバブル径分布グラフである。図27(b−1)は、実施例19の錘無しの容器を用いて得られたバブルの顕微鏡像およびバブル径分布グラフである。図27(b−2)は、実施例19の錘有りの容器を用いて得られたバブルの顕微鏡像およびバブル径分布グラフである。
また、図28(a−1)は、実施例20の錘無しの容器を用いて得られたバブルの顕微鏡像およびバブル径分布グラフである。図28(a−2)は、実施例20の錘有りの容器を用いて得られたバブルの顕微鏡像およびバブル径分布グラフである。
なお、図27および28に示すバブル径分布グラフの横軸は、測定されたバブルの径を示し、横軸の左側から右側へと径が大きくなる。横軸の最も左側の棒グラフが、平均径1μm以下のバブルの量を示している。
図27および28に示すように、実施例18〜20のいずれの実施例においても、錘を取り付けた容器を用いた場合に、バブル生成量が多くなった。特に、径の小さいバブル(径:1μm以下)の生成量が顕著に多くなることが分かった。また、図27(b−2)と図28(c−2)との比較から、容器内に封入するガスとしてパーフルオロプロパンを用いることにより、ガスとして空気を用いる場合よりも、より径の小さいバブルの生成量が多くなることが分かった。したがって、図17に示すような、一部に錘が取り付けられた製造容器を用いることにより、径の小さいバブル(1μm以下のバブル)を効率良く製造することができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0354】
本発明のバブル製造用容器を用いることにより、容器を所定の回転数で振動させるだけで、水性液体中に均一なサイズのバブルを多量に安定的に生成することができる。このようにして得られたバブルは、医療、食品、魚介類の養殖、排水処理等の様々な分野に用いることができる。したがって、本発明のバブル製造用容器は、産業上の利用可能性を有する。
【要約】
本発明のバブル製造用容器20は、開口部を備えた容器本体21と、容器本体21の開口部上に設けられたゴム栓221とを有し、ゴム栓221は、注射針を刺通して、容器本体21の内部のバブル1を取り出すことができるように構成されている。また、バブル製造用容器20は、開口を有し、ゴム栓221上に設けられ、容器本体21をゴム栓221とともに密閉する締付部222をさらに有していることが好ましい。また、容器本体21には、錘部が設けられていることが好ましい。
図1
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