特許第6076585号(P6076585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6076585ゴムクローラ、ゴムクローラ組立体、及び、ゴムクローラ製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076585
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ゴムクローラ、ゴムクローラ組立体、及び、ゴムクローラ製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20170130BHJP
   B62D 55/12 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   B62D55/253 B
   B62D55/12 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-62675(P2011-62675)
(22)【出願日】2011年3月22日
(62)【分割の表示】特願2009-292401(P2009-292401)の分割
【原出願日】2009年12月24日
(65)【公開番号】特開2011-131884(P2011-131884A)
(43)【公開日】2011年7月7日
【審査請求日】2012年12月21日
【審判番号】不服2015-22854(P2015-22854/J1)
【審判請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 穣
【合議体】
【審判長】 氏原 康宏
【審判官】 尾崎 和寛
【審判官】 小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−78796(JP,A)
【文献】 特開2001−47437(JP,A)
【文献】 特開平5−8767(JP,A)
【文献】 実開平2−141586(JP,U)
【文献】 実開昭55−13138(JP,U)
【文献】 特開平6−234378(JP,A)
【文献】 特開平7−117153(JP,A)
【文献】 特開2009−67241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/253
B62D 55/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムクローラ周方向に所定間隔で複数設けられ、長手方向がゴムクローラ幅方向に沿っている芯金を備え、
前記芯金は、ゴムクローラ内周面側に突出しスプロケットと係合する一対の突起部と、
前記突起部間に形成され、前記突起部を下方にして前記芯金をゴムクローラ加硫成形用の金型の所定位置に配置した状態で、前記金型に当接して芯金短手方向の移動が規制され、前記金型に当接した部分がゴムで覆われずに露出した被規制部と、
前記突起部の先端部に形成され、前記突起部を下方にして前記芯金をゴムクローラ加硫成形用の金型の所定位置に配置した状態で、前記金型に当接して前記芯金が支えられるとともに芯金長手方向の移動が規制される被支持部と、
を有し、
前記被支持部がゴムで覆われずに露出するように前記被支持部を除いた前記先端部がゴムで覆われている、ゴムクローラ。
【請求項2】
請求項1に記載のゴムクローラと、
前記ゴムクローラの内周側に形成された係合部に係合するスプロケットと、
を備えた、ゴムクローラ組立体。
【請求項3】
請求項1に記載の芯金を用い、
前記被規制部で芯金短手方向の移動を規制し、かつ、前記被支持部を支えつつ芯金長手方向の移動を規制して、前記金型で加硫成形することで、請求項1に記載のゴムクローラを製造する、ゴムクローラ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムクローラ内周面側に突出する一対の突起部を有する芯金を備えたゴムクローラ、ゴムクローラ組立体、及び、ゴムクローラ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
路面の保護、騒音の抑制、更には環境保護などの観点から、近年、建設機械、農業機械などの車輌の走行部にゴムクローラが用いられ、このゴムクローラにスプロケットで駆動力を伝達するようになっている。
このようなゴムクローラとしては、ゴムクローラ内周面に、一定のピッチで駆動突部(以下、クローラ突起部と記載)を形成したものが広く知られている(例えば特許文献1参照)。このクローラ突起部は、ゴムクローラ内周面上に山状に盛り上げた突起状の物体であり、このクローラ突起部に、駆動軸に取付けたスプロケットの歯部を係合させることによってゴムクローラに駆動力を伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−78796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このクローラ突起部としては、ゴムクローラに埋設する芯金に突起部が形成され、この突起部の表面にゴム層が形成されたものであることが多い。そして、この芯金を加硫用金型に配置し、生ゴムを押圧等して加硫成形することでゴムクローラを製造している。
ところで、芯金を加硫用金型に配置する際、芯金の突起部を下方に向けて配置している。例えば特許文献1では、芯金中央部の芯金短手方向一方側を2ヶ所、他方側も2ヶ所、計4ヶ所で支えて、加硫用金型内で支えている。ここで、加硫用金型内で芯金をより安定して保持することができると更に好ましい。
本発明は、上記事実を考慮して、芯金にゴムを加硫しつつ接着させる際、芯金長手方向及び芯金短手方向への移動を規制して芯金の位置精度を良好にしたゴムクローラ、ゴムクローラ組立体、及び、ゴムクローラ製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、ゴムクローラ周方向に所定間隔で複数設けられ、長手方向がゴムクローラ幅方向に沿っている芯金を備え、前記芯金は、ゴムクローラ内周面側に突出しスプロケットと係合する一対の突起部と、前記突起部間に形成され、前記突起部を下方にして前記芯金をゴムクローラ加硫成形用の金型の所定位置に配置した状態で、前記金型に当接して芯金短手方向の移動が規制され、前記金型に当接した部分がゴムで覆われずに露出した被規制部と、前記突起部の先端部に形成され、前記突起部を下方にして前記芯金をゴムクローラ加硫成形用の金型の所定位置に配置した状態で、前記金型に当接して前記芯金が支えられるとともに芯金長手方向の移動が規制される被支持部と、を有し、前記被支持部がゴムで覆われずに露出するように前記被支持部を除いた前記先端部がゴムで覆われている。
請求項1に記載の発明では、突起部間に上記の規制部を形成するとともに、突起部の先端部に上記の被支持部を形成した芯金を用いる。
そして、ゴムクローラを加硫成形する際、芯金の突起部を下方に向けて、金型を閉じて芯金を金型の所定位置、すなわち加硫成形時の設定位置に配置する。
金型を閉じた後、所定温度、所定時間で加硫成形することでゴムクローラが製造される。
このように、請求項1に記載の発明では、芯金長手方向及び芯金短手方向の両方向への移動を規制してゴムクローラを加硫成形するので、芯金の位置精度を良好にしたゴムクローラが実現される。
なお、規制部は、突起部間の芯金部分の側壁に点接触や面接触して規制するものであってもよいし、突起部間の芯金部分に、規制部が入り込む凹みが形成されたものであってもよい。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のゴムクローラと、前記ゴムクローラの内周側に形成された係合部に係合するスプロケットと、を備えている。
これにより、芯金の位置精度を良好にしたゴムクローラを有するゴムクローラ組立体とすることができる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の芯金を用い、前記被規制部で芯金短手方向の移動を規制し、かつ、前記被支持部を支えつつ芯金長手方向の移動を規制して、前記金型で加硫成形することで、請求項1に記載のゴムクローラを製造する。
請求項3に記載の発明では、突起部間を構成する芯金部分に上記の規制部を形成するとともに、突起部の先端部に上記の被支持部を形成した芯金を用いる。
そして、ゴムクローラを加硫成形する際、芯金の突起部を下方に向けて、金型を閉じて芯金を金型の所定位置に配置する。その際、ゴムクローラ内周側のゴムを形成する生ゴム部分を金型内に載置し、この生ゴム部分の上に、突起部を下方に向けた芯金を載せ、更にクローラ外周側を形成する生ゴム部分を載せ、金型を閉じることで、芯金のクローラ外周側の生ゴム部分を介して芯金が押圧されて、被規制部が規制部に規制されるとともに被支持部が金型の芯金支持部に当接してこの設定位置に配置される形態であってもよい。
金型を閉じた後、所定温度、所定時間で加硫成形することでゴムクローラが製造される。
【0008】
従って、芯金長手方向及び芯金短手方向の両方向への移動を規制して、芯金の位置精度を良好にしたゴムクローラを製造することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、芯金にゴムを加硫しつつ接着させる際、芯金長手方向及び芯金短手方向への移動を規制して芯金の位置精度を良好にしたゴムクローラ、ゴムクローラ組立体、及び、ゴムクローラ製造方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るゴムクローラ組立体の部分斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るゴムクローラで、一対の突起部間から見たゴムクローラ周方向の部分断面図である。
図3図1の矢視3−3の断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るゴムクローラで、芯金の被規制部を示すゴムクローラの部分斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係るゴムクローラを構成する芯金の斜視図である。
図6図1の矢視6−6の断面図である。
図7】本発明の一実施形態で用いる加硫用金型の規制部の斜視図である。
図8】本発明の一実施形態で、加硫用金型に載置された生ゴム上に芯金を載置することを示す斜視図である。
図9】本発明の一実施形態で、加硫用金型で芯金を下方側から支えて加硫成形することを説明する斜視図である。
図10】本発明の一実施形態の変形例で、加硫用金型で芯金を下方側から支えて加硫成形することを説明する斜視図である。
図11】本発明の一実施形態の変形例で、加硫用金型で芯金を下方側から支えて加硫成形することを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。
(全体構成)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るゴムクローラ組立体200には、スプロケット100と、スプロケット100によって回転駆動力が伝達されるゴムクローラ10と、が設けられている。なお、説明の便宜上、ゴムクローラ10の回転方向をゴムクローラ10の周方向CD、これと直角な方向をゴムクローラ10の幅方向RDと称して説明に用いる。
【0012】
このゴムクローラ10はいわゆる内周駆動型のゴムクローラであり、外周面側に路面に作用するラグ12を有する。そして、図1図3に示すように、クローラ内周面側には、スプロケット100の正転、反転時にゴムクローラそれ自身に駆動力を伝達するための係合部17が形成してある。この係合部17は、ゴムクローラ10の周方向CDに所定のピッチをもって埋設した金属製の複数の芯金15に形成された一対の突起部16と、この芯金15の間毎に配置した凹み部13とを含んで構成されている。
【0013】
芯金15は、芯金15の長手方向がゴムクローラ10の幅方向RDに沿うように、周方向CDに所定間隔で複数埋設されている。芯金15の詳細構造については後に詳述するが、図示のように中央部分の内周面側に、芯金長手方向同一位置(ゴムクローラ幅方向同一位置)に上記の一対の突起部16が形成されている。突起部16には、拳状の角部18が突起部16の先端部として形成されている。
このように、一対で二股状に形成した突起部16がゴムクローラ10の内周面から内側(ゴムクローラ内周側)に向けて突出しており、これがゴムクローラ10と同様にゴム材で覆われて一対のクローラ突起部19となっている。
【0014】
そして、芯金15の外側に配置してある層はスチールコード(図示せず)を含み、それぞれの芯金15を取り囲むように周方向CDへエンドレス(無端ベルト状)に延在する補強層である。
スチールコードはゴムクローラ10内に埋設される抗張部材で、ゴムクローラ10の周方向CDへの伸びを規制しつつ、スプロケット100から受ける駆動力に基づいてゴムクローラ10がスムーズに回転するように補助する。
【0015】
スプロケット100は、円形外周を有する円形基部102と、円形基部102の周縁部に配置された複数の歯部101と、を有する。複数の歯部101は、円形基部102の厚み方向両側へ突出しており、円形基部102の回転に伴って凹み部13とクローラ突起部19のクローラ周方向CD側の側壁17Sとに当接する構成になっている。
【0016】
このように、ゴムクローラ10では、図2に示されているように、芯金15が周方向CDに等ピッチに配設されて、その間毎に凹み部13がスプロケット100の歯部101を受け入れるように、これも周方向CDに等ピッチで配置されている。この凹み部13は、ゴムクローラ10の標準的なクローラ内周面を窪ませたように形成されている。
【0017】
この構造ではスプロケット100からゴムクローラ10へ伝達される駆動力は、スプロケット100の歯部101が凹み部13に進入して、凹み部13の壁面に係合(当接)したときに伝達される。すなわち、ゴムクローラ10の内周面に一定ピッチで配置してあるそれぞれの凹み部13に、回転するスプロケット100の歯部101が順に進入する動作を繰り返すことで凹み部13の壁面を順に押圧してゴムクローラ10を回転させる。
【0018】
凹み部13を貫通孔とした場合には泥土や砂利などの排出性を高めた構造とすることができる。また、凹み部13の壁面形状を変更することで、歯部101との接触面積を適宜に調整できる。この接触面積を増加させるように凹み部13の壁面を設計すれば、歯部101との面圧を低減させることができる。
【0019】
ここで説明した図2の構造は、前述したように一定のピッチをもって埋設されている芯金15の間毎に、凹み部13が配置されている。換言すると、この構造は周方向CDで凹み部13の前後に芯金15が位置しているので、凹み部13はその前後を位置決めされている。そして、凹み部13の背部が硬質の芯金15で支持されているような強固な構造となる。したがって、スプロケット100の歯部101を、凹み部13の変形下で、間接的に芯金15に係合させて駆動力を確実に伝達できる。
【0020】
また、このように標準的なクローラ内周面より外周面側へ窪ませた凹み部13を設けると、スプロケット100の歯部101が係合する係合位置(駆動伝達点)が下がることによりスチールコード(図示せず)からこの係合位置までの距離が短くなるので、駆動力の伝達効率の良いゴムクローラとすることができる。
【0021】
また、転輪(図示せず)は、荷重を支持しつつゴムクローラ10をガイドして安定駆動するために配備される荷重支持輪で、駆動輪となるスプロケット100と従動輪となるアイドラ(図示せず)との間に必要に応じて配される。
【0022】
また、ゴムクローラ10と、ゴムクローラ10の内周側に形成された係合部17に係合するスプロケット100とを備えたゴムクローラ組立体200では、スプロケット100の歯部101が円形基部102の厚み方向両側に突出しており、この歯部101がゴムクローラ10の凹み部に係合する。従って、歯部101と凹み部13の壁面との接触面積を増加させることができるので、この接触時の面圧を下げることができ、ゴムクローラ10のゴムが損傷し難い。また、円形基部102の厚みを薄くすることが可能なので、スプロケット100の軽量化を図ることができる。
【0023】
上述した実施形態のゴムクローラ10は、前述した構成に加えて、具備しておくのが好ましい他の構造も備えて形成してある。以下、この点について説明する。
再度、図2図6を参照すると、周方向CDで芯金15の前後に、ゴム材を盛り上げてなる隆起表面20を形成してある。左右のクローラ突起部19間での内周面が低くなると、スプロケット100との接触面積が減少して面圧が上昇してしまう。そこで、芯金15の中央部前後に他の標準的なクローラ内周面よりもゴムを肉盛りして隆起させた隆起表面20を設けておいてもよい。
【0024】
このように左右一対の角部18の間に隆起表面20を設けることで、スプロケット100の歯部101同士の間の凹んだ部位とゴムクローラ10の内周面との接触面積を増加させることができる。これにより、歯部101によって作用される面圧を低下させることができる。なお、歯部101同士の間の凹んだ部位とゴムクローラ10の内周面とを接触させない構造にしてもよい。
【0025】
そして、このように芯金15の前後に隆起表面20を設けることにより、芯金15の中央部分とアイドラ(図示せず)等との接触も確実に予防できるようにできる。長時間のゴムクローラの使用で芯金15の中央部のゴム被膜が薄くなると、意図しないアイドラとの接触で騒音が発生するという場合がある。芯金15の前後に、ゴム厚みの厚い、隆起部の表面である隆起表面20を形成することにより、騒音発生も合わせて予防できる。
【0026】
(芯金)
図4は芯金に形成された被規制部を示す斜視図である。図5は芯金15の斜視図である。図6図1の矢視6−6の断面図である。図7は金型に形成された規制部を示す斜視図である。図8は加硫用金型に載置された生ゴム上に芯金15を載置することを示す斜視図である。図9は、芯金15の突起部16を下方から支えることを説明する斜視図である。これらの図を参照して芯金15の構造を更に詳細に説明する。
【0027】
芯金15の基部はその平面形状が大略で長方形であって、その長手方向を幅方向RD(図1参照)に延在させてゴムクローラ10内に埋設されている。そして、芯金15の中央部分には前述した一対の突起部16が互いに離隔した状態で形成されている。
この突起部16の角部18は、幅方向RD(芯金長手方向)の寸法よりも周方向CD(芯金短手方向)の寸法の方が大きい、周方向に長尺の形状をなし、一対の角部18間でスプロケット100や前述した転輪を円滑にガイドできるように構成してある。
【0028】
上記一対の角部18の間隔は、スプロケット100がスムーズに回転できる間隔を確保するように設定されている。ただし、芯金15は、後述の凹部22を除いてゴムクローラと同じゴム素材で覆われるので、突起部16は外観においてはゴム状のクローラ突起部19となる。よって、2つのクローラ突起部19の間をスプロケット100がガイドされながら回転する形態となる。したがって、上記一対の角部18の間隔は被覆するゴムの厚みを見込んだ分だけ大きく設定してある。
【0029】
(被規制部)
ゴムクローラ加硫成形用の金型30には規制部34(何れも図7参照)が形成されており、図5に示すように、芯金15の一対の突起部16の間には、芯金自体の芯金短手方向(すなわちゴムクローラ10の周方向CD)の移動が規制部34によって規制される被規制部26が形成されている。本実施形態では、この被規制部26は、一対の突起部16間を構成する芯金中央部15Mの側壁26Pの一部、及び、側壁26Qの一部で形成されている。
【0030】
図7に示すように、金型30に形成された規制部34は、一方の突起部16に近い位置で芯金15の短手方向移動を規制する一方側規制部34Aと、他方の突起部16に近い位置で芯金15の短手方向移動を規制する他方側規制部34Bと、で構成される。
【0031】
一方側規制部34Aは、加硫成形時に芯金中央部15Mの一方側の側壁26Pに当接する第1ピン36Pと、加硫成形時に芯金中央部15Mの他方側の側壁26Qに当接する第2ピン36Qと、第1ピン36P及び第2ピン36Qの基端側に連続し加硫成形時に芯金中央部15Mの突起部延出し側の面15S(図4図5参照)に当接する基部38と、で構成される。他方側規制部34Bも同様の構成である。なお、面15Sに基部38が必ずしも当接しなくてもよく、非当接とすることも可能である。
【0032】
本実施形態では、芯金中央部15Mが第1ピン36Pと第2ピン36Qとの間に入れられたときに、第1ピン36Pが側壁26Pに当接するとともに第2ピン36Qが側壁26Qに当接して、芯金15の短手方向(すなわちゴムクローラ10の周方向CD)の移動が両側から規制される。従って、側壁26P、26Qの間隔は、第1ピン36Pと第2ピン36Qとの間隔に合わせて設定されている。
【0033】
(角部の凹部)
図5図6に示すように、一対の角部18の芯金長手方向内側18Gは平滑面とされている。ここで、平滑面とは、平坦面のみならず、凹凸がない湾曲面も含む意味であり、段差が形成されていない面である。
一対の角部18の芯金長手方向外側18Eには、それぞれ、ゴムクローラ加硫成形用の金型の芯金支持部32(図9参照)が下方側から当接する凹部22が被支持部として形成されている(図5図6図9参照)。
【0034】
この凹部22は、芯金短手方向中央部22Cで高さが最も高く、芯金短手方向中央部22Cから芯金短手方向両側へかけて凹部22の底面22Bが突起部基端側に向けて傾斜している。すなわち、凹部22は、角部18の芯金長手方向外側18Eの芯金短手方向両側部18Sがそれぞれ一部が欠けたように凹んだ形状とされている。従って、図9に示すように、加硫成形するために突起部16の角部18を下方に向けて芯金15をゴムクローラ加硫成形用の金型30の所定位置、すなわち加硫成形時の設定位置に配置したときには、凹部22の底面22Bは、芯金短手方向中央部22Cで最底(最深)となり、芯金短手方向中央部22Cから芯金短手方向両側へ底面22Bが徐々に上昇するように傾斜している。
【0035】
(ゴムクローラの製造方法)
本実施形態では、鋳造等で芯金15を製造する際に、芯金中央部15Mに上記の被規制部(側壁26P、26Q)及び上記凹部22を予め形成しておく。
ゴムクローラ10を加硫成形するには、被規制部26に当接する上記の規制部34と、凹部22に当接して芯金15を支える芯金支持部32と、を有する金型30(図7図9参照)を用いる。
【0036】
規制部34は、詳細には、図7に示すように、金型30を構成する下金型31から上方へ延び出す上記の基部38と、基部38の芯金短手方向の両端側から上方へ延び出す上記の第1ピン36P及び第2ピン36Qとで構成されている。基部38のうち第1ピン36Pと第2ピン36Qとの間の上面部分38Sは、芯金中央部15Mの突起部延出し側の面15Sが略面接触で当接(非当接とすることも可能)できるように平坦面とされている。
【0037】
芯金支持部32は、図9に示すように、保持される芯金15の凹部22を下方から支えることができるように、金型内壁からY字状に凸状に張り出している。そして、突起部16を下方に向けて金型30に芯金15を配置する(セットする)と、凹部22に芯金支持部32が下方側から当接して芯金15が支えられ、金型内で必然的に、芯金15の上下方向の位置決め、及び、角部18の芯金短手方向の位置決めが行われる。また、芯金支持部32が張り出す金型内壁によって、芯金15の芯金長手方向の変位も拘束されるので、芯金長手方向の位置決めも行われる。
【0038】
本実施形態では、図8に示すように、ゴムクローラ内周側を形成する生ゴム部分Nを、金型30を構成する下金型内に載置し、この生ゴム部分の上に、突起部16を下方に向けて芯金15の翼部15Yを載せる。そして、ゴムクローラ外周側を形成する生ゴム部分をその上に載置し、金型30を閉じる。この結果、ゴムクローラ外周側を形成する生ゴム部分を介して芯金15が押圧されて、側壁26Pが2本の第1ピン36P(一方側規制部34A及び他方側規制部34Bの各第1ピン36P)に当接するとともに側壁26Qが2本の第2ピン36Q(一方側規制部34A及び他方側規制部34Bの各第2ピン36Q)に当接して芯金15の芯金短手方向の移動が規制され、また、規制部34の上面部分38Sが芯金中央部15Mの面15Sに当接するとともに凹部22が芯金支持部32に当接する。
金型を閉じた後、所定温度、所定時間で加硫成形することでゴムクローラ10を製造する。
【0039】
このようにして製造すると、芯金15は、規制部34によって芯金短手方向の移動が規制され、しかも、凹部22によって芯金長手方向の移動が規制される。従って、芯金15の位置精度を良好にしたゴムクローラ10を製造することができる。
また、規制部34によってゴムが被覆されていないのは、2本の第1ピン36Pと、2本の第2ピン36Qとの計4本のピンが当接していた部位である。従って、規制部34で芯金長手方向の移動を規制しても芯金中央部15Mに付着するゴム量がほとんど減らない。
【0040】
また、芯金支持部32が当接していた凹部22が露出している。そして、この凹部22は、芯金長手方向外側18Eに形成されており、芯金長手方向内側18Gには形成されていない。
【0041】
また、加硫成形時、芯金中央部15Mが基部38の突起部延出し側の面38Sに当接して支えられる。従って、凹部22が形成された芯金支持部32のみで芯金15を支える場合に比べ、芯金支持部32に加えられる支持力が大幅に低いので、凹部22の寸法を小さくすることができる。これにより、角部18の表面に形成するゴム量を大幅に増やすことができ、しかも、角部18で露出する芯金部分の面積を大幅に小さくすることができる。
【0042】
また、凹部22は、角部18の芯金長手方向外側18Eの芯金短手方向両側部18Sが凹んだ形状とされている。これにより、凹部22に芯金支持部32を下方側から当接させて芯金15を支えることで、角部18の芯金短手方向位置が簡単に位置決めされる。
【0043】
なお、本実施形態では、図9に示すように、突起部16の角部18に形成された凹部22では、突起部16の角部18を下方に向けたときに芯金短手方向中央部22Cが最底となる形状で説明したが、本発明はこれに限られず、加硫成形時に芯金15が角部18で下方側から支持され得る形状であればよい。
【0044】
例えば、凹部22に代えて、図10に示すような凹部42を芯金長手方向外側に形成してもよい。この凹部42は、芯金45の突起部46の角部48を下方に向けたときに芯金短手方向中央部で最も高さ位置が高い凹部部分42Pとなり、芯金短手方向中央部から芯金短手方向両側へかけて凹部42の底面が突起部46の先端側に向けて傾斜している。従って、芯金長手方向外側から見て凹部42は上に凸の三角形状となっている。この場合、凹部42の底面に当接して突起部46を支える芯金支持部52を、芯金支持部32(図9参照)に代えてゴムクローラ加硫成形用の金型に形成しておく。この芯金支持部52の上端部は、芯金長手方向外側から見て上に凸の三角形状である。
【0045】
また、凹部22に代えて、図11に示すように、突起部66の角部68の芯金長手方向内側に凹部72を形成しても、加硫成形する際に芯金65の芯金短手方向移動及び芯金長手方向移動が規制されるので、芯金65の位置精度が高いゴムクローラを製造することができる。
【0046】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、上記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
10 ゴムクローラ
13 凹み部
15 芯金
16 突起部
17 係合部
18 角部(先端部)
18G 芯金長手方向内側
18E 芯金長手方向外側
22 凹部(被支持部)
26 被規制部
30 金型
34A、B 規制部
42 凹部(被支持部)
45 芯金
46 突起部
48 角部(先端部)
65 芯金
66 突起部
68 角部
72 凹部
100 スプロケット
101 歯部
102 円形基部
200 ゴムクローラ組立体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11