(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザ光を半導体基板に照射して前記半導体基板の内部を改質することにより、不純物を捕獲するためのゲッタリング領域を前記半導体基板の内部に形成するレーザ加工方法であって、
出力値が調整された前記レーザ光を前記半導体基板の所定部分に照射した後に、前記所定部分における前記ゲッタリング領域の形成状態を示す画像情報を取得し、前記画像情報に基づいて、前記ゲッタリング領域の形成量を所定以上とするための前記レーザ光の第1出力値を決定する準備工程と、
準備工程で決定された前記第1出力値に調整された前記レーザ光を前記半導体基板に照射して前記ゲッタリング領域を前記半導体基板の内部に形成する実施工程と、
を備え、
前記ゲッタリング領域の形成量は、前記レーザ光のショット数に対する前記ゲッタリング領域の形成数の割合であることを特徴とするレーザ加工方法。
レーザ光を半導体基板に照射して前記半導体基板の内部を改質することにより、不純物を捕獲するためのゲッタリング領域を前記半導体基板の内部に形成するレーザ加工装置であって、
前記レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光の出力値を調整する調整手段と、
前記半導体基板の前記レーザ光が照射された所定部分を撮像することにより、前記所定部分における前記ゲッタリング領域の形成状態を示す画像情報を取得する取得手段と、
前記画像情報に基づいて、前記ゲッタリング領域の形成量を所定以上とするための前記レーザ光の第1出力値を決定する決定手段と、
を備え、
前記ゲッタリング領域の形成量は、前記レーザ光のショット数に対する前記ゲッタリング領域の形成数の割合である、ことを特徴とするレーザ加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において、同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法においては、半導体基板にレーザ光を照射して半導体基板の内部を改質することにより、切断予定ラインに沿って、半導体基板の厚さ方向に亀裂を発生させるための切断起点領域(すなわち、切断起点領域として機能する改質領域)を半導体基板の内部に形成する場合がある。そこで、半導体基板に限定せずに、板状の加工対象物に対する切断起点領域の形成について、
図1〜6を参照して説明する。
【0023】
図1に示されるように、レーザ加工装置100は、レーザ光Lをパルス発振するレーザ光源101と、レーザ光Lの光軸(光路)の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、レーザ光Lを集光するための集光用レンズ105と、を備えている。また、レーザ加工装置100は、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1を支持するための支持台107と、支持台107を移動させるためのステージ111と、レーザ光Lの出力やパルス幅等を調整するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、ステージ111の駆動を制御するステージ制御部115と、を備えている。
【0024】
このレーザ加工装置100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lは、ダイクロイックミラー103によってその光軸の向きを90°変えられ、支持台107の上に載置された加工対象物1の内部に集光用レンズ105によって集光される。これと共に、ステージ111が移動させられ、加工対象物1がレーザ光Lに対して切断予定ライン5に沿って相対移動させられる。これにより、切断予定ライン5に沿った改質領域が加工対象物1に形成されることとなる。
【0025】
加工対象物1としては、種々の材料(例えば、ガラス、半導体材料、圧電材料等)からなる板状の部材(例えば、基板、ウェハ等)が用いられる。
図2に示されるように、加工対象物1には、加工対象物1を切断するための切断予定ライン5が設定されている。切断予定ライン5は、直線状に延びた仮想線である。加工対象物1の内部に改質領域を形成する場合、
図3に示されるように、加工対象物1の内部に集光点Pを合わせた状態において、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、
図2の矢印A方向に)相対的に移動させる。これにより、
図4〜6に示されるように、切断起点領域8として機能する改質領域7を切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部に形成する。
【0026】
なお、集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。また、切断予定ライン5は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、仮想線に限らず加工対象物1の表面3に実際に引かれた線であってもよい。また、改質領域7は、連続的に形成される場合もあるし、断続的に形成される場合もある。また、改質領域7は列状でも点状でもよく、要は、改質領域7は少なくとも加工対象物1の内部に形成されていればよい。また、改質領域7を起点に亀裂が形成される場合があり、亀裂及び改質領域7は、加工対象物1の外表面(表面、裏面、若しくは外周面)に露出していてもよい。
【0027】
ちなみに、ここでのレーザ光Lは、加工対象物1を透過すると共に加工対象物1の内部の集光点近傍にて特に吸収され、これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一般的に、表面3から溶融され除去されて穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)場合、加工領域は表面3側から徐々に裏面側に進行する。
【0028】
ところで、改質領域は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態となった領域をいう。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。さらに、改質領域としては、加工対象物の材料において改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域や、格子欠陥が形成された領域がある(これらをまとめて高密転移領域ともいう)。
【0029】
また、溶融処理領域や屈折率変化領域、改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、格子欠陥が形成された領域は、さらに、それら領域の内部や改質領域と非改質領域との界面に亀裂(割れ、マイクロクラック等)を内包している場合がある。内包される亀裂は改質領域の全面に渡る場合や一部分のみや複数部分に形成される場合がある。加工対象物1としては、例えば、シリコン、ガラス、LiTaO
2又はサファイア(Al
2O
2)からなる基板やウェハ、又はそのような基板やウェハを含むものが挙げられる。
【0030】
また、改質領域7は、切断予定ライン5に沿って改質スポット(加工痕)が複数形成されたものである。改質スポットとは、パルスレーザ光の1パルスのショット(つまり1パルスのレーザ照射:レーザショット)で形成される改質部分であり、改質スポットが集まることにより改質領域7となる。改質スポットとしては、クラックスポット、溶融処理スポット若しくは屈折率変化スポット、又はこれらの少なくとも2つが混在するもの等が挙げられる。この改質スポットについては、要求される切断精度、要求される切断面の平坦性、加工対象物の厚さ、種類、結晶方位等を考慮して、その大きさや発生する亀裂の長さを適宜制御することが好ましい。
【0031】
ここで、本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法においては、半導体基板にレーザ光を照射して半導体基板の内部を改質することにより、不純物を捕獲するためのゲッタリング領域(すなわち、ゲッタリング領域として機能する改質領域)を半導体基板の内部に形成する。そこで、半導体基板に対するゲッタリング領域の形成について、
図7〜10を参照して説明する。
【0032】
図7に示されるように、シリコンウエハ等の半導体基板2を準備する。半導体基板2は、複数の機能素子25を形成するための表面2aと、表面2aと反対側の裏面2bとを有している。なお、機能素子25とは、例えば、フォトダイオード等の受光素子やレーザダイオード等の発光素子、半導体メモリといった記憶素子、或いは回路として形成された回路素子等を意味する。
【0033】
続いて、半導体基板2の表面2aをレーザ光入射面として半導体基板2の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを照射することにより、ゲッタリング領域18として機能する改質領域17を半導体基板2の内部に形成する。より詳細には、半導体基板2の厚さ方向において、それぞれの機能素子25の形成領域25a(半導体基板2の表面2aにおいてそれぞれの機能素子25が形成される領域)に対向するように、半導体基板2の内部にゲッタリング領域18を形成する。なお、ゲッタリング領域18の形成に際しては、半導体基板2の裏面2bをレーザ光入射面としてもよい。また、ゲッタリング領域18は、少なくともそれぞれの形成領域25aに対向していれば、連続的に形成されてもよいし、断続的に形成されてもよい。
【0034】
続いて、半導体基板2の表面2aに複数の機能素子25を形成し、その後に、機能素子25ごとに半導体基板2を切断して、複数の半導体デバイスを得る。なお、ゲッタリング領域18の形成は、機能素子25の形成の後に行ってもよいし、機能素子25の形成の前及び後の両方に行ってもよい。
【0035】
以上のように形成されたゲッタリング領域18は、半導体基板2の内部において、重金属等の不純物を集めて捕獲するゲッタリング効果を発揮する。これにより、重金属等の不純物によって機能素子25に悪影響が及ぶことを抑制することができる。ここで、ゲッタリング領域18として機能する改質領域17は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域であり、例えば溶融処理領域である。
【0036】
なお、半導体基板2を所定の厚さに薄化する必要がある場合には、機能素子25の形成の後、半導体基板2の切断の前に、半導体基板2が所定の厚さとなるように半導体基板2の裏面2bを研磨する。このとき、
図8の(a)に示されるように、研磨終了予定面16に対して半導体基板2の表面2a側にゲッタリング領域18を形成すれば、
図8の(b)に示されるように、半導体デバイス20にゲッタリング領域18が残存する。一方、
図9の(a)に示されるように、研磨終了予定面16に対して半導体基板2の裏面2b側にゲッタリング領域18を形成すれば、
図9の(b)に示されるように、半導体デバイス20にゲッタリング領域18が残存しない。ここで、研磨とは、機械研磨(切削、研削、ドライポリッシュ等)、化学研磨(ケミカルエッチング等)、化学機械研磨(CMP)等の一つ或いは複数の組合せからなる薄化処理である。
【0037】
ところで、ゲッタリング領域18の形成に際しては、上述したレーザ加工装置100を用いることができる。ただし、切断起点領域8として機能する改質領域7は、半導体基板2の厚さ方向に亀裂を発生させ易いものであることを要するのに対し、ゲッタリング領域18として機能する改質領域17は、そのような亀裂を発生させ難いものであることを要する。そこで、切断起点領域8として機能する改質領域7を形成する場合と、ゲッタリング領域18として機能する改質領域17を形成する場合とでは、レーザ光Lの照射条件を異ならせる必要がある。
【0038】
例えば、切断起点領域8として機能する改質領域7を形成する場合におけるレーザ光Lの出力は10〜40μJ程度であるのに対し、ゲッタリング領域18として機能する改質領域17を形成する場合におけるレーザ光Lの出力は0.2〜3.0μJ程度である。これにより、ゲッタリング領域18として機能する改質領域17では、半導体基板2の厚さ方向における改質スポットの幅が1〜10μm(より好ましくは4〜6μm)となる。このような幅を有する改質スポットからなる改質領域17は、半導体基板2の厚さ方向に亀裂を発生させ難く、且つゲッタリング効果を十分に発揮するものとなる。以上により、ゲッタリング領域18として機能する改質領域17を形成する場合におけるレーザ光Lの出力は、切断起点領域8として機能する改質領域7を形成する場合におけるレーザ光Lの出力よりも低いことが好ましい。
【0039】
また、例えば、切断起点領域8として機能する改質領域7を形成する場合における改質スポット距離(最も近い改質スポットの間の距離)は3.75〜7.5μm程度であるのに対し、ゲッタリング領域18として機能する改質領域17を形成する場合における改質スポット距離は5〜20μm程度である。このような改質スポット距離を有する改質スポットからなる改質領域17は、最も近い改質スポットの間に渡って亀裂を伸展させ難く、且つゲッタリング効果を十分に発揮するものとなる。以上により、ゲッタリング領域18として機能する改質領域17を形成する場合における改質スポット距離は、切断起点領域8として機能する改質領域7を形成する場合における改質スポット距離よりも長いことが好ましい。
【0040】
なお、ゲッタリング領域18として機能する改質領域17を形成する場合における改質スポット距離の調整は、次のように行うことができる。例えば、
図10の(a)に示されるように、レーザ光Lの移動方向(半導体基板2に対してレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる方向)に沿って複数の改質スポット17aを一列に並ばせる場合には、亀裂を伸展させ難く且つゲッタリング効果を十分に発揮し得る改質スポット距離dとなるように、レーザ光Lのパルスピッチ(レーザ光Lの相対的な移動速度/レーザ光Lの繰り返し周波数)を設定すればよい。
【0041】
また、
図10の(b)に示されるように、レーザ光Lの移動方向に交差する方向に沿って一つのレーザ光Lを分岐して複数箇所で集光させ、各箇所で改質スポット17aを形成する場合には、上述した改質スポット距離dとなるように、一つのレーザ光Lを分岐して複数箇所で集光させればよい。また、
図10の(c)に示されるように、レーザ光Lの移動方向に沿って複数の改質スポット17aを複数列に並ばせる場合には、上述した改質スポット距離dとなるように、隣り合う列に渡る改質スポット17aの間の距離を設定すればよい。これらの場合には、レーザ光Lの移動方向においては、隣り合う改質スポット17aの間の距離を長くすることができるので、当該方向に沿って亀裂を伸展させ難くすることができる。
【0042】
引き続いて、本発明の一実施形態に係る半導体デバイスの製造方法について説明する。まず、この半導体デバイスの製造方法において用いるレーザ加工装置について説明する。
図11は、本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法に用いるレーザ加工装置を示す図である。
図11に示されるように、レーザ加工装置100Aは、上述したレーザ加工装置100と同様に、レーザ光源101、レーザ光源制御部102、ダイクロイックミラー103、集光用レンズ(加工用対物レンズ)105、支持台107、ステージ111、及びステージ制御部115を備えている。
【0043】
レーザ加工装置100Aは、レーザ光Lを減光するための減光器(調整手段)104と、後述する画像情報や出力値情報に基づいて減光器104を制御する減光器制御部(決定手段、判定手段)114とをさらに備えている。減光器104は、レーザ光Lの光軸上においてダイクロイックミラー103と集光用レンズ105との間に配置されている。減光器104は、例えば、1/2波長板や偏光板等からなるアッテネータである。減光器104は、減光器制御部114の制御の元で、例えば、レーザ光Lの光軸に対する1/2波長板の角度を変更することにより、レーザ光Lの減光の度合いを調整する(すなわち、レーザ光Lの出力値を調整する)。このように、レーザ加工装置100Aにおいては、減光器104を採用することにより、ゲッタリング領域18を形成するためのレーザ光Lの出力値の調整を確実に行うことが可能となる。
【0044】
減光器104における1/2波長板の角度の変更は、例えば、1/2波長板の角度を変更するためのパルスモータの駆動信号のパルス数を変更することにより行うことができる。以下では、そのパルス数を「減光器パルス数」と称すると共に、レーザ光Lの減光の度合いを示す用語として用いる。本実施形態においては、減光器パルス数が大きくなるにしたがって、レーザ光Lの減光の度合いが小さくなり、レーザ光Lの出力値が大きくなるものとする。
【0045】
レーザ加工装置100Aは、支持台107の上に載置された半導体基板2を撮像するためのIRカメラ(取得手段)106と、IRカメラ106を制御するカメラ制御部(決定手段)116とをさらに備えている。IRカメラ106は、例えば、集光用レンズ105に併設されている。IRカメラ106は、カメラ制御部116の制御の元で、半導体基板2のレーザ光Lが照射された所定部分を撮像し、その所定部分におけるゲッタリング領域18の形成状態を示す画像情報を取得する。IRカメラ106は、取得した画像情報をカメラ制御部116に送信する。カメラ制御部116は、IRカメラ106からの画像情報を、減光器制御部114に送信する。
【0046】
レーザ加工装置100Aは、レーザ光Lの出力値を測定するためのパワーメータ108をさらに備えている。パワーメータ108は、集光用レンズ105からのレーザ光Lの照射を受けてレーザ光Lの出力値を測定し、測定結果を示す出力値情報を取得する。パワーメータ108は、取得した出力値情報を、減光器制御部114に送信する。
【0047】
なお、減光器制御部114やカメラ制御部116は、例えば、CPU、ROM及びRAM等を含むコンピュータを主体として構成される。減光器制御部114及びカメラ制御部116は、それぞれ別体に構成されてもよいし、互いに一体に構成されてもよい。減光器制御部114及びカメラ制御部116の制御の詳細については後述する。
【0048】
次に、上述したレーザ加工装置100Aを用いた半導体デバイスの製造方法について説明する。この半導体デバイスの製造方法では、
図12に示されるような半導体基板2を用いる。
図12に示されるように、半導体基板2は、複数の機能素子25を形成するための表面2aと、表面2aと反対側の裏面2bとを有している。半導体基板2は、表面2aが集光用レンズ105側となるように、レーザ加工装置100Aの支持台107に載置されている(
図11参照)。
【0049】
半導体基板2の表面2aには、半導体基板2のオリエンテーションフラット(以下、「OF」という)19に対して略平行な方向及び略垂直な方向に沿ってマトリックス状に並ぶように、機能素子25の形成領域25aが設定されている。つまり、半導体基板2は、表面2aに機能素子25が形成される使用部分2dと、機能素子25が形成されない不使用部分2fとを含む。
図12の(b)は、その不使用部分2fの拡大図である。なお、半導体基板2は、例えば、直径12インチ、厚さ775μmのシリコンウエハとすることができる。
【0050】
本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法は、まず、本発明の一実施形態に係るレーザ加工方法を実施する。そのレーザ加工方法では、半導体基板2にレーザ光Lを照射して半導体基板2の内部を改質することにより、半導体基板2の内部にゲッタリング領域18を形成する。
図13は、そのようなレーザ加工方法の主要な工程を示すフローチャートである。
図13に示されるように、このレーザ加工方法は、準備工程と実施工程とからなる。準備工程では、出力値が調整されたレーザ光Lを半導体基板2の不使用部分2fに照射すると共に、不使用部分2fにおけるゲッタリング領域18の形成状態を示す画像情報を取得し、その画像情報に基づいて、ゲッタリング領域18の形成量を所定以上とするためのレーザ光Lの加工出力値(第1出力値)を決定する。
【0051】
そのために、まず、減光器104の減光器パルス数の初期値を決定する(工程S101)。この工程S101についてより詳細に説明する。この工程S101では、まず、減光器制御部114の制御の元で減光器104の減光器パルス数を変化させつつ、パワーメータ108にレーザ光Lを照射し、レーザ光Lの出力値を測定する。これにより、減光器104の減光器パルス数と、パワーメータ108の測定値(すなわちレーザ光Lの出力値)とが対応付けられて、減光器制御部114において
図14の(a)に示されるような表T1が作成される。
【0052】
減光器制御部114は、この表T1を参照することにより、レーザ光Lの出力値を初期値(第2出力値)に調整するための減光器パルス数の初期値を決定することができる。レーザ光Lの初期値は、レーザ光Lの照射によってゲッタリング領域18が形成されないような出力値であり、例えば0.03Wとすることができる。その場合には、表T1を参照することにより、減光器パルス数の初期値を190と決定することができる。なお、レーザ光Lの初期値は、減光器制御部114が予め保持している。
【0053】
ここで、減光器制御部114は、
図14の(b)に示されるような表T2をさらに保持している。表T2は、所定の実験により予め作成されたものであり、減光器104の減光器パルス数を段階的に(ここでは10ずつ6段階に)変化させながらレーザ光Lを半導体基板2に照射したときのゲッタリング領域18の形成状態の判定結果をA,B,Cの3段階で示す表である。判定結果のA〜Cは、レーザ光Lのショット数に対するゲッタリング領域18(すなわち改質スポット17a)の形成数の割合によって区別される。
図15に、判定結果のA〜Cのそれぞれに対応する画像情報の一例を示す。
図15において、SHがレーザ光Lの1ショットを示しており、17aがその1ショットにより形成された改質スポットを示している。
【0054】
図15の(a)に示される状態では、改質スポット17aが全く形成されていない。つまり、
図15の(a)に示される状態では、レーザ光LのショットSHの数(ここでは10)に対する改質スポット17aの形成数(ここでは0)の割合は0%である。この場合には、判定結果はCとなる。なお、判定結果がCとなるのは、例えば、レーザ光LのショットSHの数に対する改質スポット17aの形成数の割合が0%の場合とすることができる。
【0055】
図15の(b)に示される状態では、改質スポット17aがまばらに形成されている。
図15の(b)に示される状態では、レーザ光LのショットSHの数(ここでは10)に対する改質スポット17aの形成数(ここでは5)の割合は、50%である。この場合には、判定結果はBとなる。なお、判定結果がBとなるのは、例えば、レーザ光LのショットSHの数に対する改質スポット17aの形成数の割合が0%を超える100%未満の場合とすることができる。
【0056】
図15の(c)に示される状態では、レーザ光Lの全てのショットSHに対して改質スポット17aが形成されている。つまり、
図15の(c)に示される状態では、レーザ光LのショットSHの数(ここでは10)に対する改質スポット17aの形成数(ここでは10)の割合は100%である。この場合、判定結果はAとなる。なお、判定結果がAとなるのは、例えば、レーザ光LのショットSHの数に対する改質スポット17aの形成数の割合が100%の場合とすることができる。このようなレーザ光Lの照射とゲッタリング領域18の形成状態の判定とを複数回(ここでは4回)繰り返すことにより、
図14の(b)に示される表T2が得られる。
【0057】
工程S101においては、減光器制御部114は、この表T2をさらに参照して、減光器104の減光器パルス数の初期値を決定することができる。例えば、表T2によれば、減光器パルス数が200の場合(減光度1:最も減光の度合いが大きい場合、すなわち、最もレーザ光Lの出力値が小さい場合)には、N1〜N4の全ての試行において、判定結果がCとなっている。よって、減光器パルス数の初期値を200よりも小さく設定すれば、レーザ光Lの出力値が、十分にゲッタリング領域18が形成されない出力値に調整されることとなる。
【0058】
続いて、減光器制御部114が減光器104の減光器パルス数を工程S102で決定した初期値に設定した状態において(すなわち、レーザ光Lの出力値を初期値に調整した状態において)、半導体基板2の表面2aをレーザ光入射面として半導体基板2の不使用部分2fにレーザ光Lを照射する(工程S102:第1工程)。このとき、レーザ光Lは、例えば、不使用部分2fにおける第1ラインL1に沿って照射される(
図12の(b)参照)。
【0059】
続いて、カメラ制御部116の制御の元で、IRカメラ106によって不使用部分2fを撮像し、不使用部分2fにおけるゲッタリング領域18の形成状態を示す画像情報を取得する(工程S103:第2工程)。このとき取得された画像情報は、IRカメラ106からカメラ制御部116を介して減光器制御部114に送信される。
【0060】
続いて、減光器制御部114が、工程S103で取得した画像情報に基づいて、不使用部分2fにおいて、ゲッタリング領域18の形成量が所定以上であるか否かを判定する(工程S104:第3工程)。ここでのゲッタリング領域18の形成量とは、例えば、レーザ光LのショットSHの数に対する改質スポット17aの形成数の割合とすることができる。つまり、この工程S104は、レーザ光LのショットSHの数に対する改質スポット17aの形成数の割合が所定以上であるか否かを判定するものとすることができる。この判定は、上述した表T2を作成する場合と同様にして行うことができる。例えば、ショットSHの数に対する改質スポット17aの形成数の割合が、100%以上である場合(すなわち、例えば上述した判定結果Aの場合)に、所定以上であると判定することができる。
【0061】
続いて、工程S104における判定の結果が、ゲッタリング領域18の形成量が所定以上でないと判定された場合、減光器制御部114が減光器104の減光器パルス数を初期値から一段階大きくする(すなわち、レーザ光Lの出力値を一段階大きくする)(工程S105)。このとき減光器パルス数を大きくする度合いは、例えば、表T2を参照して決定することができる。表T2によれば、減光器パルス数を200から210にすることにより、判定結果がBとなる試行が現れる。したがって、この場合にも、減光器パルス数を大きくする度合いを10程度と決定することができる。
【0062】
工程S105において減光器パルス数を一段階大きくした後、工程S102に戻り、工程S102〜S104を繰り返す。この繰り返しは、工程S105において減光器パルス数を段階的に大きくしながら、工程S104においてゲッタリング領域18の形成量が所定以上であると判定されるまで(すなわち、例えば判定結果がAとなるまで)行われる。
【0063】
換言すれば、減光器制御部114及びカメラ制御部116は、レーザ光Lの出力値を予め保持する初期値から段階的に大きくしながら、ゲッタリング領域18の形成量が所定以上であると判定されるまで、減光器104によるレーザ光Lの出力値の調整と、IRカメラ106による画像情報の取得と、ゲッタリング領域18の形成状態の判定とを順に繰り返す。この繰り返しの際には、レーザ光Lは、例えば、不使用部分2fにおける第1ラインL1〜第6ラインL6のそれぞれに沿って順に照射される。
【0064】
図16は、工程S102〜105を繰り返し実施したときの不使用部分2fの一例を示す拡大図である。
図16に示されるように、この例においては、1回目及び2回目の実施においては(すなわち、減光器パルス数を初期値としたときの実施と、表T2における減光度2に対応する減光器パルス数としたときの実施においては)、ゲッタリング領域18が全く形成されていない(図中の第1ラインL1及び第2ラインL2参照)。したがって、1回目及び2回目の実施の工程S104では、ゲッタリング領域18の形成量が所定未満であると判定される(例えば、判定結果がCとなる)。
【0065】
また、3回目及び4回目の試行においては(すなわち、表T2における減光度3と減光度4とに対応する減光器パルス数としたときの実施においては)、ゲッタリング領域18がまばらに形成されている(図中の第3ラインL3及び第4ラインL4参照)。したがって、3回目と4回目の実施の工程S104では、ゲッタリング領域18の形成量が所定未満であると判定される(例えば、判定結果がBとなる)。
【0066】
さらに、5回目の実施においては(すなわち、表T2における減光度5に対応する減光器パルス数としたときの実施においては)、ゲッタリング領域18が十分に形成されている。したがって、5回目の実施における工程S105では、ゲッタリング領域18の形成量が所定以上であると判定される(例えば、判定結果がAとなる)。表T2においては、6回目の試行(すなわち、減光度6に対応する減光器パルス数としたときの実施)の結果が示されているが、この例では、5回目の実施においてゲッタリング領域18が十分に形成されているので、6回目の実施は行わない。したがって、この5回目の実施の際の減光器パルス数を、ゲッタリング領域18を形成するための減光器パルス数の閾値として決定することができる。
【0067】
このように工程S102〜工程S105を繰り返し行うことにより、ゲッタリング領域18を所定量以上形成するための(すなわち、ゲッタリング領域18の形成に必要十分な)減光器パルス数の閾値が決定される(すなわち、レーザ光Lの出力値の閾値が決定される)。そして、減光器制御部114は、そのように決定された閾値よりも一段階大きい減光器パルス数の値を決定することにより、実際にレーザ加工を行うためのレーザ光の加工出力値(第1出力値)を決定する(工程S106)。なお、ここでの減光器パルス数を大きくする度合いは、表T2を参照して、或いは、半導体基板2の厚さ方向に亀裂を発生させ難いような改質を行う観点から、例えば10程度とすることができる。また、以上の準備工程における各種の例(例えばレーザ光の出力値、減光器パルス数、ゲッタリング領域18の形成状態等)は、実際のレーザ加工装置(例えば、浜松ホトニクス(株)製、400SS(製品番号:L9571−11))を用いた場合の例である。
【0068】
このレーザ加工方法は、レーザ光Lの加工出力値が決定された後に、準備工程から実施工程に移行する。実施工程では、工程S106において決定された加工出力値に調整されたレーザ光Lを半導体基板2に照射することにより、半導体基板2の内部にゲッタリング領域18を形成する(工程S107)。この工程S107の詳細について説明する。この工程S107では、
図17に示されるように、まず、ゲッタリング領域18を形成するための形成予定ライン15を半導体基板2の表面2aに設定する。ここでは、形成予定ライン15は、格子状に設定されており、OF19に対して略平行な方向に並ぶ形成領域25aの列のそれぞれ、及び、OF19に対して略垂直な方向に並ぶ形成領域25aの列のそれぞれに沿って、各形成領域25aの中央部を通っている。
【0069】
続いて、半導体基板2の表面2aをレーザ光入射面として半導体基板2の内部(ここでは、研磨終了予定面16に対して半導体基板2の裏面2b側)に集光点Pを合わせて、ゲッタリング領域18として機能する改質領域17を形成する場合における照射条件で、半導体基板2にレーザ光Lを照射する。なお、レーザ光Lの出力値は、上記の工程S106で決定された加工出力値に調整されている。このレーザ光Lの照射では、レーザ光Lの光軸を各形成予定ライン15の上に位置させつつ、各形成予定ライン15に沿ってレーザ光Lの集光点Pを移動させる。これにより、半導体基板2の内部にゲッタリング領域18が形成される。
【0070】
ただし、形成予定ライン15と切断予定ライン5とが交差する部分をレーザ光Lの光軸が通過する際には、レーザ光Lの照射をOFFとし、各形成領域25aをレーザ光Lの光軸が通過する際には、レーザ光Lの照射をONとする。したがって、この工程S107においては、ゲッタリング領域18は、半導体基板2の厚さ方向から見た場合に切断予定ライン5と交差しないように形成される。また、この工程S107においては、ゲッタリング領域18は、研磨終了予定面16に対して半導体基板2の裏面2b側に形成される。なお、切断予定ライン5は、互いに隣り合う機能素子25の間(すなわち、互いに隣り合う形成領域25aの間)を通るように後工程において格子状に設定される。
【0071】
なお、半導体基板2に対してレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させるために、支持台107を移動させてもよいし、レーザ光源101側(レーザ光源101、ダイクロイックミラー103、減光器104、及び集光用レンズ105等)を移動させてもよいし、或いは、支持台107及びレーザ光源101側の両方を移動させてもよい。以上により、ゲッタリング領域18を形成するためのレーザ加工方法が終了する。
【0072】
本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法では、以上のレーザ加工方法に引き続いて、機能素子25を形成する工程を実施する。この工程では、
図18に示されるように、半導体基板2の表面2aに複数の機能素子25を形成する。機能素子25は、形成領域25aのそれぞれにおいて形成される。このとき、機能素子25の形成領域25aのそれぞれには、形成予定ライン15に沿って十字状に形成されたゲッタリング領域18が、半導体基板2の厚さ方向において対向している。
【0073】
本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法では、機能素子25を形成する工程に引き続いて、半導体基板2を切断する工程を実施する。この工程では、隣り合う機能素子25の間を通るように設定された切断予定ライン5に沿って、機能素子25ごとに半導体基板2を切断し、一つの機能素子25を含む半導体デバイス20を複数得る。この工程の詳細について説明する。
【0074】
この工程では、まず、
図19に示されるように、レーザ加工装置100Aを用いて、次のように、半導体基板2の内部に切断起点領域8を形成する。すなわち、全ての機能素子25を覆うように保護フィルム22を半導体基板2の表面2aに貼り付けた後に、半導体基板2の裏面2bがレーザ光入射面となるようにレーザ加工装置100Aの支持台107の上に半導体基板2を載置し、互いに隣り合う機能素子25の間(すなわち、互いに隣り合う形成領域25aの間)を通るように切断予定ライン5を格子状に設定する。
【0075】
そして、半導体基板2の裏面2bをレーザ光入射面として半導体基板2の内部(ここでは、ゲッタリング領域18に対して半導体基板2の裏面2b側)に集光点Pを合わせて、切断起点領域8として機能する改質領域7を形成する場合におけるレーザ光の照射条件で、半導体基板2にレーザ光Lを照射する。レーザ光Lの出力値は、切断起点領域8として機能する改質領域7を形成するために必要な値に調整されている。このレーザ光Lの照射のとき、レーザ光Lの光軸を各切断予定ライン5の上に位置させつつ、各切断予定ライン5に沿ってレーザ光Lの集光点Pを移動させる。
【0076】
このように、この切断工程においては、半導体基板2にレーザ光Lを照射して半導体基板2の内部を改質することにより、切断予定ライン5に沿って、半導体基板2の内部に切断起点領域8を形成する。そして、半導体基板2にレーザ光Lを照射することにより、切断起点領域8から発生した亀裂21を半導体基板2の表面2aに到達させる。ここでは、ゲッタリング領域18に対して半導体基板2の裏面2b側に集光点Pを合わせたので、切断起点領域8も、ゲッタリング領域18に対して半導体基板2の裏面2b側に形成される。なお、半導体基板2に対してレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させるために、支持台107を移動させてもよいし、レーザ光源101側を移動させてもよいし、或いは、支持台107及びレーザ光源101側の両方を移動させてもよい。
【0077】
続いて、
図20に示されるように、保護フィルム22が貼り付けられた半導体基板2を研磨装置の支持台207の上に載置し、半導体基板2の裏面2bが研磨終了予定面16に到達するまで(つまり、ゲッタリング領域18が残存しないように)半導体基板2の裏面2bを研磨する。これにより、切断起点領域8から発生して半導体基板2の裏面2b側に伸展した亀裂21に研磨面に到達し、切断予定ライン5に沿って半導体基板2が切断される。なお、研磨後の半導体基板2の厚さは、例えば50μm程度である。
【0078】
続いて、
図21に示されるように、半導体基板2の裏面2bにエキスパンドフィルム23を貼り付け、その後に、半導体基板2の表面2aから保護フィルム22を取り除く。そして、半導体基板2が切断されて得られた複数の半導体デバイス20をピックアップするために、エキスパンドフィルム23を径方向外側に拡張させて、複数の半導体デバイス20を互いに離間させる。以上のようにして機能素子25を含む半導体デバイス20を複数得る。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法は、半導体基板2に機能素子25を形成する機能素子形成工程の前において、半導体基板2の内部にゲッタリング領域18を形成するレーザ加工方法を実施する。そのレーザ加工方法は、ゲッタリング領域18を形成するためのレーザ加工の実施工程と、その実施工程の前工程である準備工程とからなる。準備工程においては、出力値が調整されたレーザ光Lを半導体基板2の不使用部分2fに照射した後に、その不使用部分2fにおけるゲッタリング領域18の形成状態を示す画像情報を取得する。そして、その取得した画像情報に基づいて、ゲッタリング領域18の形成量を所定以上とするためのレーザ光の加工出力値を決定する。
【0080】
したがって、このレーザ加工方法、及びレーザ加工方法を実施するレーザ加工装置100Aによれば、ゲッタリング領域18を十分に形成可能なレーザ光Lの出力値を決定することが可能となる。そして、このレーザ加工方法では、その実施工程において、準備工程で決定された加工出力値のレーザ光Lを半導体基板2に照射することにより、半導体基板2の内部に安定してゲッタリング領域18を形成することが可能となる。
【0081】
また、このレーザ加工方法においては、レーザ光Lの出力値を段階的に大きくしながら、ゲッタリング領域18の形成量が所定以上であると判定されるまで工程S102〜工程S104を繰り返し実施することにより、レーザ光Lの加工出力値を決定する。このため、このレーザ加工方法、及びレーザ加工方法を実施するレーザ加工装置100Aによれば、必要以上の出力値のレーザ光Lを半導体基板2に照射することを避けることが可能となる。
【0082】
また、このレーザ加工方法においては、レーザ光の出力値の初期値を、レーザ光の照射によってゲッタリング領域が形成されないような出力値とする。このため、このレーザ加工方法、及びレーザ加工方法を実施するレーザ加工装置100Aによれば、レーザ光Lの出力値を、ゲッタリング領域18を安定して形成するために必要十分なレーザ光Lの出力値を確実に決定することができる。
【0083】
さらに、このレーザ加工方法においては、ゲッタリング領域18の形成に先立って、減光器104の減光器パルス数を変化させつつパワーメータ108にレーザ光Lを照射して、レーザ光Lの出力値を測定することにより、減光器104の減光器パルス数と、パワーメータ108の測定値(すなわちレーザ光Lの出力値)とを対応付ける。このため、このレーザ加工方法、及びレーザ加工方法を実施するレーザ加工装置100Aによれば、ゲッタリング領域18の形成の際に、確実に、所望する出力値でのレーザ光Lの照射を行うことが可能となる。
【0084】
このように、本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法によれば、そのレーザ加工方法によって半導体基板2の内部に安定してゲッタリング領域18を形成することにより、半導体デバイス20の信頼性を向上することが可能となる。
【0085】
以上の実施形態は、本発明に係るレーザ加工方法、半導体デバイスの製造方法、及びレーザ加工装置の一実施形態を説明したものである。したがって、本発明に係るレーザ加工方法、半導体デバイスの製造方法、及びレーザ加工装置は、上述した態様に限定されるものではない。本発明に係るレーザ加工方法、半導体デバイスの製造方法、及びレーザ加工装置は、特許請求の範囲に記した各請求項の要旨を変更しない範囲において、上述した態様を変更したものとすることができる。
【0086】
例えば、切断予定ライン5に沿って半導体基板2を切断する際に、隣り合う機能素子25の間に渡るように半導体基板2の表面2aに酸化膜等の積層部が形成されていてもよい。その場合には、切断予定ライン5に沿って半導体基板2と共にその積層部を切断すればよい。
【0087】
また、上記実施形態においては、半導体基板2の裏面2bを研磨する前に、半導体基板2が切断予定ライン5に沿って完全に切断されておらず、半導体基板2の裏面2bを研磨した後に、半導体基板2が切断予定ライン5に沿って完全に切断されたが、これに限定されない。すなわち、半導体基板2の裏面2bを研磨する前に、半導体基板2が切断予定ライン5に沿って完全に切断されていてもよい。その場合にも、切断起点領域8として機能する改質領域7から発生した亀裂21を伸展させて半導体基板2を切断すれば、その亀裂21によって切断された半導体基板2の切断面が互いに密着した状態となる。そのため、研磨による半導体基板2のチッピングやクラッキングの発生を抑制しつつ、半導体基板2を薄化することができる。
【0088】
また、ゲッタリング領域18として機能する改質領域17、及び切断起点領域8として機能する改質領域7は、多光子吸収のみに起因して形成される場合に限定されず、多光子吸収に相当する光吸収等その他の光吸収や熱的影響に起因して形成される場合もある。つまり、多光子吸収は、改質領域を形成し得る現象の一例である。
【0089】
また、ゲッタリング領域18として機能する改質領域17は、半導体基板2の厚さ方向において機能素子25の形成領域25aに対向するものであれば、機能素子25の形成パターンに応じて様々な形状を採ることができる。
【0090】
一例として、
図22に示すように、一つの形成領域25aに対してゲッタリング領域18を縦横に複数列ずつ形成してもよい。また、
図23の(a)に示すように、半導体基板2を回転させつつ半導体基板2の径方向にレーザ光L1を移動させて、
図23の(b)に示すように、一つの形成領域25aに対して曲線状のゲッタリング領域18を少なくとも一列形成してもよい。このように、ゲッタリング領域18を形成するための形成予定ライン15が半導体基板2に対して渦巻状となる場合には、改質スポット距離(最も近い改質スポットの間の距離)が略一定となるように、半導体基板2の回転速度やレーザ光Lの繰り返し周波数を変化させることが望ましい。そして、
図22及び
図23に示すいずれの場合にも、レーザ光LのON/OFF制御を行うことで、半導体基板2の厚さ方向から見た場合に切断予定ライン5と交差しないように、半導体基板2の内部にゲッタリング領域18を形成することができる
【0091】
また、ゲッタリング領域18を形成する際には、レーザ光LのON/OFF制御を行わなくてもよい。その場合には、レーザ光Lを常にONとした状態において、レーザ光Lの光軸を各形成予定ライン15の上に位置させつつ、各形成予定ライン15に沿ってレーザ光Lの集光点Pを移動させる。このようにレーザ光Lを照射してゲッタリング領域18を形成することにより、半導体基板2の厚さ方向から見た場合に、ゲッタリング領域18と切断予定ライン5とが交差することとなる。
【0092】
また、切断起点領域8として機能する改質領域7は、1本の切断予定ライン5に対して、半導体基板2の厚さ方向に並ぶように複数列形成されてもよい。また、切断起点領域8は、ゲッタリング領域18に対して半導体基板2の裏面2b側に形成される場合に限定されず、ゲッタリング領域18に対して半導体基板2の表面2a側に形成されてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、切断起点領域8として機能する改質領域7から発生した亀裂21を伸展させて半導体基板2を切断したが、ブレードによる切断等のその他の方法で、切断予定ライン5に沿って半導体基板2を切断してもよい。その場合にも、半導体基板2において切断予定ライン5に沿った部分にゲッタリング領域18の影響が及ぶのが抑制されるので、半導体基板2を切断予定ライン5に沿って精度良く切断することができる。
【0094】
また、上記実施形態では、ゲッタリング領域18が残存しないように半導体基板2の裏面2bを研磨したが、
図8に示すように、ゲッタリング領域18が残存するように半導体基板2の裏面2bを研磨してもよい。その場合には、半導体デバイス20において、ゲッタリング領域18を半導体基板2の内部に収めてもよいし、裏面2bに露出させてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、レーザ加工装置100Aにおいてレーザ光Lの出力値を調整するための手段として減光器104を用いたが、レーザ光Lの出力値を調整する手段はこれに限定されない。例えば、レーザ加工装置100Aにおいては、レーザ光源制御部102がレーザ光源101の出力値を直接調整してもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、IRカメラ106を用いて半導体基板2の不使用部分2fにおけるゲッタリング領域18の形成状態を示す画像情報を取得したが、ゲッタリング領域18の形成状態を示す情報は画像情報に限定されず、例えば、IRカメラ106の代わりにフォトルミネッセンス測定装置等を用いて、ゲッタリング領域18の形成状態を示す情報を取得してもよい。
【0097】
さらに、上記実施形態では、レーザ加工方法を実施してゲッタリング領域18を形成した後に、機能素子25を形成する工程を実施したが、機能素子25を形成する工程を実施した後にレーザ加工方法を実施してゲッタリング領域18を形成してもよい。