特許第6076602号(P6076602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋アルミエコープロダクツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6076602-屋外換気口用フィルター 図000004
  • 特許6076602-屋外換気口用フィルター 図000005
  • 特許6076602-屋外換気口用フィルター 図000006
  • 特許6076602-屋外換気口用フィルター 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076602
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】屋外換気口用フィルター
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/04 20060101AFI20170130BHJP
   B01D 46/10 20060101ALI20170130BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   F24F7/04 B
   B01D46/10 B
   C09J175/04
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-18755(P2012-18755)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-155985(P2013-155985A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年12月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】足立 将司
(72)【発明者】
【氏名】山岸 拓人
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−021534(JP,A)
【文献】 特開2010−286147(JP,A)
【文献】 特開2010−043238(JP,A)
【文献】 特開2001−234130(JP,A)
【文献】 特開2001−091004(JP,A)
【文献】 特開2009−209320(JP,A)
【文献】 特開平11−248211(JP,A)
【文献】 特開2011−247486(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3062814(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/04
B01D 46/10
C09J 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外側の換気口から流入する空気を浄化するために当該換気口の通気性カバーに貼り付けて使用するフィルターであって、
(1)前記フィルターは、不織布及びその不織布の一方面の全面又は一部に形成された粘着剤層を含み、
(2)前記粘着剤層は、主剤及び硬化剤を含む2液混合型ポリウレタン系粘着剤により形成されており、
(3)前記主剤は、重量平均分子量が15000〜25000のポリウレタンポリオールを含み、
(4)前記硬化剤は、前記主剤100重量部に対して2.5〜3.5重量部含まれ、
(5)前記粘着剤層の厚みが180〜300μmである、
ことを特徴とする屋外換気口用フィルター。
【請求項2】
前記粘着剤が、主剤100重量部に対し、紫外線吸収剤0.25〜0.5重量部をさらに含む、請求項1に記載の屋外換気口用フィルター。
【請求項3】
不織布に対する粘着剤層の面積割合が20〜55%である、請求項1又は2に記載の屋外換気口用フィルター。
【請求項4】
前記硬化剤が脂肪族系多官能イソシアネート系硬化剤である、請求項1〜3のいずれかに記載の屋外換気口用フィルター。
【請求項5】
不織布が、厚み1.0〜2.0mm及び目付け20〜40g/mである、請求項1〜4のいずれかに記載の屋外換気口用フィルター。
【請求項6】
粘着剤層上にさらに剥離シートが積層されている、請求項1〜5のいずれかに記載の屋外換気口用フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋等に設置された換気用ダクトにおいて、屋外側の換気口に貼り付けるフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
家屋等には、建築基準法により室内に新鮮な空気を取り入れたり、室内の空気を排気するための換気用ダクトを設けることが義務付けられている。換気用ダクトには、室内側の換気口と室外側の換気口があるが、外部からの視線の遮断のほか、換気用ダクトへの異物(動物、ゴミ等)の換気用ダクトへの侵入防止等を目的として、通常は室外側の換気口に図1(a)〜(c)に示すような種々のタイプの通気性カバー(ガラリとも言う。)が設置されている。
【0003】
ところが、これらの通気性カバーだけでは、外気中の花粉、黄砂、粉塵、昆虫類等を除去することができないため、これらの室内への侵入を抑制ないしは防止することにより空気を浄化するために前記カバー表面にフィルターを貼着することがある。このようなフィルターとしては、例えば住宅の壁などにある換気口の室内側に、接着剤の付いたフィルターを貼り付けることにより、換気口から侵入してくる外気の汚れや、アレルギーの原因となる花粉を取り除くことができるようにしたシール状のエアフィルターが提案されている(特許文献1)。このようなフィルターは、不織布の一方の面にアクリル系粘着剤を塗布したものが一般的に使われている。また、最近では、糊残りや貼着耐久性の面で、アクリル系粘着剤より優れたポリウレタン系粘着剤がフィルターに使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3062814号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、室外側の換気口に利用されるフィルターは、紫外線に強く曝されたり、大きな温度差を受けることに起因する問題が存在し、その点において従来のフィルターにはなお改善の余地がある。すなわち、室内よりも過酷な条件下でフィルターが使用されることから、従来の粘着剤を使用したフィルターでは粘着力の経時的な低下により使用中に被貼着体からフィルターが脱落したり、あるいはフィルターが脱落しない場合であっても使用後にフィルターを取り外した際に粘着剤が被貼着体に残る(糊残り)という問題がある。
【0006】
従って、本発明の主な目的は、フィルターの脱落を防止するとともに使用後のフィルター剥離時における糊残りが低減ないしは解消できる屋外換気口用フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、紫外線による粘着剤の劣化・変質に対しては、いわゆる紫外線吸収剤を粘着剤中に配合することにより容易に解決できると予想された。このため、紫外線吸収剤を市販の2液混合型ポリウレタン系粘着剤に対してメーカー指定の硬化剤を指定割合で混合したもので粘着剤層を不織布に形成したが、紫外線による粘着剤の劣化に起因する上述の糊残りの問題あるいはフィルターの脱落の問題は改善できないことが確認された。
【0008】
脱落の問題に関しては、不織布のような凹凸を有する表面に市販の2液混合型ポリウレタン系粘着剤をそのまま適用しても、平滑な粘着膜を形成しえないことが起因しているものと考えられる。
【0009】
一般的に、ポリウレタン系の粘着剤のコーティングのしやすさ、すなわち印刷適正については、粘着液の分子量の調整にて行える。低分子量の粘着液では粘度が低く、高分子量の粘着液では粘度が高い。比較的厚みのある粘着膜を形成したい場合は、粘度の高い高分子量の粘着液を用いるべきであるが、粘度が高いゆえ、平滑な粘着膜とするのが難しい。不織布に対しては表面の凹凸が大きいため、比較的厚い粘着膜を設ける必要がある。このような理由から、不織布に対する粘着剤の粘度を分子量にて調整するこがとりわけ重要になる。
【0010】
そこで、本発明者らは、特定の分子量のポリウレタンポリオールと特定量の硬化剤とを含む粘着剤を適用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の屋外用換気口用フィルターに係る。
1. 室外側の換気口から流入する空気を浄化するために当該換気口の通気性カバーに貼り付けて使用するフィルターであって、
(1)前記フィルターは、不織布及びその不織布の一方面の全面又は一部に形成された粘着剤層を含み、
(2)前記粘着剤層は、主剤及び硬化剤を含む2液混合型ポリウレタン系粘着剤により形成されており、
(3)前記主剤は、重量平均分子量が15000〜25000のポリウレタンポリオールを含み、
(4)前記硬化剤は、前記主剤100重量部に対して2.5〜3.5重量部含まれ、
(5)前記粘着剤層の厚みが180〜300μmである、
ことを特徴とする屋外換気口用フィルター。
2. 前記粘着剤が、主剤100重量部に対し、紫外線吸収剤0.25〜0.5重量部をさらに含む、前記項1に記載の屋外換気口用フィルター。
3. 不織布に対する粘着剤層の面積割合が20〜55%である、前記項1又は2に記載の屋外換気口用フィルター。
4. 前記硬化剤が脂肪族系多官能イソシアネート系硬化剤である、前記項1〜3のいずれかに記載の屋外換気口用フィルター。
5. 不織布が、厚み1.0〜2.0mm及び目付け20〜40g/mである、前記項1〜4のいずれかに記載の屋外換気口用フィルター。
6. 粘着剤層上にさらに剥離シートが積層されている、前記項1〜5のいずれかに記載の屋外換気口用フィルター。
【発明の効果】
【0012】
本発明の屋外換気口用フィルターによれば、所定の分子量を有するポリウレタンポリオールとともに特定量の硬化剤を含む2液混合型ポリウレタン系粘着剤を不織布に適用していることから、当該粘着剤を室外側の換気口の通気性カバーに貼着した場合は、所定の粘着力が得られ、通気性カバーからのフィルターの脱落をより効果的に抑制ないしは防止できる一方、フィルターの取り外し時には糊残りの問題も解消することができる。
【0013】
また、上記の2液混合型ポリウレタン系粘着剤にさらに紫外線吸収剤を特定量配合する場合には、紫外線下における被貼着体に対する糊残りの問題及びフィルター脱落の問題をより効果的に解消することができる。すなわち、良好な粘着性を維持し、糊残りの問題の低減化も図りながらも、紫外線に対するより高い耐久性を発揮することができる。従って、屋外換気口用フィルターが直射日光に長時間晒されるような場所に取り付けられる場合においても、より確実に所望の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】室外(屋外)に設けられている換気口(通気性カバー)の態様例を示す図である。図1(a)は丸型カバー付きタイプ、図1(b)はカバーなしタイプ、図1(c)はフード付きタイプを示す。
図2】家屋に換気口を設ける場合の概略図を示す。
図3】本発明の屋外換気口用フィルターを換気口の通気性カバーに貼着する状態を示す図でる。
図4】本発明の屋外換気口用フィルターの断面構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の屋外換気口用フィルターは、室外側の換気口から流入する空気(外気)を浄化するために当該換気口に設置されている通気性カバーに貼り付けて使用するフィルターであって、
(1)前記フィルターは、不織布及びその不織布の一方面の全面又は一部に形成された粘着剤層を含み、
(2)前記粘着剤層は、主剤及び硬化剤を含む2液混合型ポリウレタン系粘着剤により形成されており、
(3)前記主剤は、分子量が15000〜25000のポリウレタンポリオールを含み、
(4)前記硬化剤は、前記主剤100重量部に対して2.5〜3.5重量部含まれる、
ことを特徴とする。
【0016】
本発明の屋外換気口用フィルター(本発明フィルター)は、家屋等の建造物に設置された換気用ダクトにおいて、屋外側の換気口に貼り付けて使用するものである。例えば、図2に示すように、家屋の壁1に換気用ダクト2が形成され、室外側の換気口3から新鮮な空気が導入され、室内側の換気口4から室内に放出される(給気)。他方、室内の空気は室内側の換気口4に入り、室外側の換気口3から外へ排出される(排気)。図2では、換気用ダクトは1つのみ示されているが、通常は2つ以上形成され、給気と排気が同時・連続的に行うことができるようになっている。このような換気口において、特に室外側の換気口3は、図1(a)〜(c)に示すような通気性カバーで覆われている。図1(a)は丸型カバー付きタイプ、図1(b)はカバーなしタイプ、図1(c)はフード付きタイプ等を示し、いずれにも本発明フィルターを適用することができる。
【0017】
より具体的には、図3に示すように、室外側の換気口に設けられている通気性カバー5の室外側から本発明フィルター31を貼着すれば良い。この場合、貼着する通気性カバーの場所は、貼着可能な部位であれば限定されず、例えば縁部(枠部)、桟部等のいずれであっても良い。図3では、本発明フィルター31は換気口(通気性カバー)全体を覆うように貼着されるが、換気口の一部のみに本発明フィルターを貼り付けることができる。特に、本発明では、換気口(通気性カバー)の全面に本発明フィルターを貼り付けることが望ましい。
【0018】
本発明フィルターで使用される不織布そのものは、公知又は市販のものを使用することができる。すなわち、天然繊維、合成繊維、これらの混合物からなる不織布をいずれも使用することができるが、例えばポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維等の合成繊維製不織布を好適に使用することができる。従って、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)繊維からなる不織布も好適に使用することができる。繊維不織布の製造方法も限定的でなく、例えばサーマルボンド法等の公知の製法によって製造された不織布を好適に用いることができる。
【0019】
また、前記不織布の厚みは限定的ではないが、厚みは例えば1.0〜2.0mm、特に1.1〜1.5mmであることが好ましい。また、不織布の目付けは、特に制限されず、例えば20〜40g/m、特に25〜35g/mであることが好ましい。
【0020】
本発明フィルターは、不織布及びその不織布の一方面の全面又は一部に形成された粘着剤層を含む。例えば、図4には、本発明フィルターの一実施態様の断面図を示す。本発明フィルター31は、粘着剤層33が不織布32の一方の面の一部に形成されている。本発明では、粘着剤層が不織布の一方の面の全面に形成されていても良いし、前記のように一部に形成されていても良い。さらに、不織布の片面の一部に粘着剤層を形成する場合のパターンも限定されず、例えば同心円状、ストライプ状、格子状、散点状、絵柄模様等のいずれの形態であっても良い。特に、不織布の片面の一部に粘着剤層を形成する場合、粘着剤の塗布面積を大きくするとフィルターの保持力は向上するが、粘着剤の塗布部分は通気性がないために通気性が損われることがある。従って、屋外換気口用フィルターとしてより効果的に機能させるためには、フィルターの不織布の貼着面側の面積に占める粘着剤の塗布部分の面積割合は通常10〜60%程度、特に20〜55%とすることが望ましい。
【0021】
また、本発明フィルターは、その粘着剤層上の剥離紙等の剥離シートを積層していても良い。例えば、図4のフィルターでは、その使用前には不織布32上に形成されている粘着剤層33を含む全面に剥離紙34が積層されている。そして、使用時には、剥離紙34を粘着剤層33から剥がされる。この際、粘着剤層33の端部側の位置が内方に距離L2の位置に形成されていると、その端部まで粘着剤層が形成されているのに比べて剥離紙34がより剥がし易くなる。
【0022】
本発明フィルターでは、その粘着剤層が主剤及び硬化剤を含む2液混合型ポリウレタン系粘着剤により形成されている。前記粘着剤における主剤としては、主成分として分子量15000〜25000(好ましくは18000〜20000)であるポリウレタンポリオールを含む。本明細書では、分子量は、すべて重量平均分子量を示す。分子量の測定方法は、島津製作所製「Prominence」を用いて実施した(カラム:TOSOH製 TSKgelGMHx2本連結、検出器:RID−10A、溶媒:THF、流速;1ml/分)。
【0023】
ポリウレタンポリオールは、ポリエステルポリオールと、ポリエーテルポリオールとを、触媒存在下又は無触媒で有機ポリイソシアネ−ト化合物と反応させてなるものであり、それ自体公知又は市販のものを使用することができる。
【0024】
主剤中のポリウレタンポリオールの割合は特に限定されないが、通常95重量%以上とし、さらには99重量%以上とする。従って、主剤中のポリウレタンポリオールの割合は100重量%であっても良い。
【0025】
前記硬化剤としては限定的でなく、公知又は市販の硬化剤を使用することができる。例えば、脂肪族系多官能イソシアネート等を好適に用いることができる。本発明において、硬化剤は、前記主剤100重量部に対して2.5〜3.5重量部とすることがより好ましい。このように、本発明では、特定の分子量をもつポリウレタンポリオールを含み、なおかつ、特定量の硬化剤を含む粘着剤を使用することによって、糊残りの問題及びフィルター脱落の問題を一挙に解決することが可能となる。
【0026】
上記のような2液混合型ポリウレタン系粘着剤で使用する主剤及び硬化剤そのものは、公知又は市販のものを使用することもできる。市販品としては、例えば主剤として製品名「サイアバインSH−101」(東洋インキ(株)製)と、硬化剤として製品名「サイアバインT−501」との組み合わせを好適に用いることができる。
【0027】
本発明では、本発明の効果を妨げない範囲内において、必要に応じて2液混合型ポリウレタン系粘着剤中に他の添加剤が含まれていても良い。例えば、紫外線吸収剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤等の添加剤が挙げられる。特に、本発明では、紫外線吸収剤が含まれていることが望ましい。紫外線吸収剤の添加量は、所望の特性に応じて適宜設定することができるが、例えば主剤100重量部に対して0.25〜0.5重量部添加することができる。本発明では、紫外線吸収剤は必ずしも添加する必要はないが、屋外換気口用フィルターが直射日光に長時間晒されるような場所に取り付けられるような場合には、紫外線吸収剤の配合は有効である。
【0028】
さらに、2液混合型ポリウレタン系粘着剤(主剤又は硬化剤)は、必要に応じて溶媒で適宜希釈することができる。例えば、酢酸エチル等の有機溶剤を使用することができる。この場合の希釈率は限定的ではなく、例えば主剤100重量部に対して溶媒1〜30重量部を配合することにより希釈することができる。
【0029】
粘着剤層の形成は、公知の方法を採用すれば良く、例えば粘着剤を不織布に塗布することにより塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥(固化)させる方法を採用することができる。塗布方法も限定的でなく、例えばローラー、スプレー、刷毛、印刷等によって実施することができる。この場合、公知の装置を使用することができ、例えばロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法等をいずれも採用することができる。また、塗膜を固化させる方法は、加熱による方法、紫外線による方法等のいずれも採用することができるが、特に加熱による方法を好ましく採用することができる。この場合の加熱温度は、所望の粘着剤層を形成できれば特に限定されないが、通常は120〜140℃、特に125〜130℃の範囲が好ましい。
【0030】
粘着剤層(固化後)の厚みは、所望の粘着性等に応じて適宜設定することができるが、通常は100〜300μm、特に180〜230μmとすることが好ましい。
【0031】
本発明フィルターは、公知の屋外換気口用フィルターと同様の方法によって使用することができる。すなわち、室外側の換気口を覆う通気性カバー表面上に本発明フィルターの粘着剤層を当接することにより貼着すれば良い。また、必要に応じて、本発明フィルターを通気性カバーのサイズに合致させるために、本発明フィルターを裁断しても良い。
【実施例】
【0032】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0033】
実施例1〜7及び比較例1〜10
(1)粘着剤の調製
表1に示すように、主剤として市販の重量平均分子量の異なるポリウレタンポリオール5種(約10000、約15000、約20000、約25000、約30000)を準備し、市販の脂肪族系多官能イソシアネート系硬化剤及び紫外線吸収剤を所定の割合で混合し、さらに酢酸エチル5〜20重量を配合して希釈することによってポリウレタン系粘着剤をそれぞれ調製した。特に、重量平均分子量20000のポリウレタンポリオールとして製品名「サイアバインSH−101」(東洋インキ(株)製)を使用した。また、硬化剤は、製品名「サイアバインT−501」(東洋インキ(株)製、脂肪族系多官能イソシアネート)を使用した。また、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(東洋インキ(株)製)を使用した。
【0034】
【表1】
【0035】
(2)粘着加工
フィルターに用いる不織布として、市販の不織布(目付け30g/m、厚み1.3mm±0.2mm(メーカー公称値))を準備した。ポリウレタン系粘着剤は、不織布に対して幅5mmの粘着剤層で30mm間隔の格子状に部分的に印刷機で塗工した。このようにして得られたフィルターにおいて、不織布に対する粘着剤層が占める面積割合は全体の38.6%であった。粘着剤の乾燥条件としては、全長10mの乾燥炉の中を125〜130℃、18〜25m/分の速さで通過させることにより乾燥させた。得られた粘着剤層(乾燥後)の厚みは、200μm±20μmの範囲にあった。
【0036】
試験例1
実施例及び比較例で得られた各フィルターを基材(市販のエアコンのカバー等)に取り付けて脱落の有無及び糊残りの有無をそれぞれ調べた。その結果を表1に示す。
【0037】
(1)脱落の有無
被着体としてのステンレス鋼板(SUS304)の表面に各フィルターを貼り付け、所定時間経過後のフィルターの貼り付け状態を観察した。各フィルター(4cm×11cm)の粘着剤層の面をステンレス鋼板に当接し、フィルターを貼り付けたものをサンプルとした。貼り付け(圧着)は、ローラーで圧力2kg/cmにて1往復させる方式で実施した。その後、サンプルを垂直に立掛け、無風状況下15℃にて静置した。1週間経過後及び3ヶ月経過後のサンプルについてそのフィルターの貼着状態を調べた。フィルターの脱落が認められなかった場合を「○」と評価し、一部に剥離はあるものの、フィルターが脱落しなかった場合を「△」と評価し、フィルターが脱落した場合を「×」と評価した。
【0038】
(2)糊残り
(2−1)糊残りの有無
前記(1)と同様にして作製した各サンプルを温度40℃及び湿度75%の恒湿恒温炉に3ヶ月間保持した。その後にフィルターを被着体より剥がした際に、被着体に視認できる糊残りが全く無い場合を「○」と評価し、影響の無い程度にわずかに残っている場合を「△」と評価し、糊残りが視認でき、残った糊を拭き取る等の処置をしないと新たにフィルターを貼り付けできない状態を「×」と評価した。
【0039】
(2−2)サンシャインウェザーメーターによる糊残りの評価
実施例2によるサンプルにおいて、主剤100重量部に対する紫外線吸収剤の添加量を表2のように0.20〜0.60重量部として各サンプルを作製し、紫外線の影響による糊残りの評価を行った。糊残りの評価は、上記「(2−1)糊残りの有無」と同等の判断基準で行った。併せて、粘着剤層の色相の変化を目視で確認することにより粘着剤の劣化の有無を調べた。表2の色相の項目において、「無色透明」とは粘着剤層が劣化していない場合(○)、「黄色透明」とは粘着剤層が劣化した場合(×)、「僅かに黄色透明」とは粘着剤層の一部が劣化した場合(△)を指す。また、総合評価として、実用上問題ない場合を「○」、実用上問題がある場合を「×」とした。これらの結果を表2に示す。
【0040】
なお、試験は、サンシャインウェザーメーターによる促進耐侯性試験により実施した。サンシャインウェザーメーターによる試験条件は、以下の通りである。
照射:225W/m
温度:63℃
湿度:50%
サイクル:照射48分/雨12分
試験基板:ステンレス板(SUS304)
試験時間:100時間
【0041】
【表2】
【0042】
表1に示すように、4種の異なる重量平均分子量のポリウレタンポリオール100重量部に対して1.5重量部から4.0重量部の硬化剤を配合した。また、紫外線吸収剤を添加したものとそうでないものも準備し、紫外線吸収剤をポリウレタンポリオール100重量部に対して0.3重量部配合したものを「有」と表記した。
【0043】
表1の結果からも明らかなように、主剤であるポリウレタンポリオールの重量平均分子量は15000〜25000が望ましいことがわかる。一方、粘着力を上げる目的で低分子量(10000〜15000)のポリウレタンポリオールを用いて調製した粘着剤では、配合する硬化剤を削減できたものの、糊残りの問題は解決できなかった。また、糊残りの問題を解決する目的で、重量平均分子量(25000〜30000)のポリウレタンポリオールに対し、配合する硬化剤を減らした粘着剤については、粘着剤の不織布に対する塗工性が悪く、フィルターの保持性も低かった。
【0044】
重量平均分子量20000の東洋インキ株式会社製粘着剤「サイアバインSH−101」(ポリウレタンポリオール)に対する東洋インキ株式会社製硬化剤「サイアバインT−501」のメーカー指定の配合割合は4重量部である。ところが、表2の如く、重量平均分子量20000である主剤100重量部に対する硬化剤の配合割合を4重量部としたサンプルでは、糊残りが認められた。また、フィルター保持性、塗工性等の面から見ても、配合量は3重量部とすることが最も適していることがわかった。このことは、メーカーが推奨する硬化剤の配合割合の適正値は、不織布に対するものには適さないことに起因すると考えられる。さらには、メーカーが指定する配合割合の最適値は、屋外の紫外線による影響が考慮されていないことも原因していると考えられる。このため、硬化剤の配合量をあえて本発明範囲(3重量部)に設定することにより、換気口用フィルターとして必要な粘着力を得ることが可能となる。
【0045】
他方、硬化剤の配合量を3重量部にすると長期貼り付け時の糊残りの問題があった。このため、紫外線吸収剤を所定量添加したところ、糊残りは認められず、良好なポリウレタン系粘着剤が得られ、屋外換気口に適したフィルターを得ることができた。このことは、サンシャインウェザーメーターによる紫外線吸収剤の添加量の影響を調査した結果を示す表2からも明らかである。紫外線吸収剤については、主剤100重量部に対して0.25重量部から0.5重量部の範囲において、特に紫外線下においても被貼着体に対する糊残りの問題及びフィルター脱落の問題を解消できることがわかる。特に、紫外線吸収剤の配合量が0.30〜0.40重量部である場合が最も優れた効果を達成できることがわかる。
図1
図2
図3
図4