特許第6076613号(P6076613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076613
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】人工芝生の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 13/08 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   E01C13/08
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-94290(P2012-94290)
(22)【出願日】2012年4月17日
(65)【公開番号】特開2012-233396(P2012-233396A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2015年4月11日
(31)【優先権主張番号】特願2011-94514(P2011-94514)
(32)【優先日】2011年4月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502352379
【氏名又は名称】株式会社三洋環境社プランナー
(74)【代理人】
【識別番号】100156959
【弁理士】
【氏名又は名称】原 信海
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 徳仁
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−144345(JP,A)
【文献】 特開2007−262216(JP,A)
【文献】 特開平05−171611(JP,A)
【文献】 実開昭58−046371(JP,U)
【文献】 特開平01−131627(JP,A)
【文献】 特開2007−327216(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/109110(WO,A1)
【文献】 特開2005−210955(JP,A)
【文献】 特開2002−095349(JP,A)
【文献】 実開昭58−030477(JP,U)
【文献】 特開2002−173906(JP,A)
【文献】 特開平06−178612(JP,A)
【文献】 特開2004−019256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の排水孔が設けられたシート状の基材に複数のパイルを植設してなる人工芝生を対象領域に敷設し、前記各パイルの間に充填材を充填するにあたって、
前記対象領域に、ボラ土又は/及び本明細書中に記載するところのボラ土と同じ物性を有する石材、即ち粒内を貫通する多数の気孔を有して、湿潤環境では各気孔内に水を吸収保持し、乾燥環境では各気孔から外へ水を徐放し得、また過剰な水を効率的に排除し得る排水性を有し、更にボラ土と同程度の圧縮強さを有する石材を適宜の深さで敷設して基層を形成し、該基層上に砂を適宜の深さで敷設して表層を形成し、該表層の上に前記人工芝生を敷設し、
前記充填材としてボラ土又は/及び前記石材を用いる
ことを特徴とする人工芝生の施工方法。
【請求項2】
前記充填材として、粒の角部を丸める丸目処理を行ったボラ土又は/及び前記石材を用いる請求項1記載の人工芝生の施工方法。
【請求項3】
前記充填材として、更に川砂を用いる請求項1又は2記載の人工芝生の施工方法。
【請求項4】
前記各パイルの間に充填材として前記ボラ土又は/及び前記石材を充填して保持した水を徐々に放出する徐放性層を形成し、該徐放性層の上に、充填材として川砂を充填して川砂層を形成する請求項3記載の人工芝生の施工方法。
【請求項5】
更に、前記充填材は予め、所要の粒径範囲に揃える篩分けを行っておく請求項1から3のいずれかに記載の人工芝生の施工方法。
【請求項6】
前記基層は基底層上に中間層を敷設して形成し、前記基底層及び/又は中間層にボラ土又は/及び前記石材を用いる請求項1から5のいずれかに記載の人工芝生の施工方法。
【請求項7】
前記基底層には平均直径が8mm程度を超える粒径のものを用い、前記中間層には平均直径が3mm程度以上8mm程度以下の粒径のものを用い、前記表層には平均直径が0.5mm程度以上1.5mm程度以下の砂を用いる請求項6記載の人工芝生の施工方法。
【請求項8】
前記表層に、粒径が略揃った川砂を用いる請求項1から7のいずれかに記載の人工芝生の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工芝生を施工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運動場又は競技場等にあっては、薬剤が不要であり、維持管理を容易に行うことができるため、天然芝生に代えて人工芝生を敷設する場合が増大している。かかる人工芝生は、合成樹脂製のシート状の基材に、天然芝生の葉に相当する合成樹脂製の複数のパイルを束ねたパイル束をマトリクス状に密に植設して構成してあり、前記基材には当該基材を貫通する複数の排水孔が適宜の間隔で開設してある。かかる人工芝生を施工するには、対象領域に人工芝生を敷設した後、当該人工芝生の基材に植設された各パイルの間隙に、山砂又は砕石にて構成される充填材をパイル長の寸法より浅い適宜の深さ寸法になるように充填していた。
【0003】
このように、人工芝生内に充填材を適宜深さまで充填することによって、各パイルを起立させる。一方、充填材として山砂又は砕石を用いることによって、充填材の排水性を担保すると共に、降雨によっても基材に設けた排水孔を充填材が塞止することを防止して、良好な排水性を維持することができる。
【0004】
しかし、山砂及び砕石の各粒子は角張っているため、充填材として山砂又は砕石を用いた場合、競技中の衝撃によって山砂又は砕石の各粒子同士が擦れ合い、これによってパイルが損傷するのに加え、競技者が充填材に接触した場合、当該競技者の皮膚に損傷を与える虞があった。また、かかる充填材にあっては、経時的に充填材の山砂又は砕石が硬く固まるため、衝撃吸収能が低下して競技者に過大な負荷がかかるという問題もあった。
【0005】
一方、山砂及び砕石は蓄熱性が高いため、日中、人工芝生上の温度が上昇して競技に支障を来す虞があった。そのため、競技開始前に人工芝生に散水が施されているが、前述した如く山砂及び砕石は排水性が高く保水性が低いため、散布された水が短時間で消失してしまい、人工芝生上の昇温抑制には限界があった。
【0006】
そのため、後記する特許文献1には、人工芝生の各パイルの間に珪砂、珪砂とゴムチップとの混合物、及びゴムチップをこの順に積層充填する施工方法が開示されている。すなわち、該方法によって施工された充填材は、珪砂の下層と、珪砂とゴムチップとの混合物からなる中間層と、ゴムチップの上層とから構成されている。このように、充填材にゴムチップを用いることによって、衝撃吸収性を高めると共に、上層にゴムチップを充填することによって、競技者が充填材に接触した場合であっても、物理的衝撃から当該競技者を保護するようになっている。
【0007】
一方、後記する特許文献2には、粒径が0.1mm〜5mmであり、吸水性樹脂を含有させたゴム又は合成樹脂粉末、及び砂をこの順に充填するか、又は前記ゴム又は合成樹脂粉末と砂との混合材を充填する施工方法が開示されている。このように、充填材に吸水性樹脂を含有させたゴム又は合成樹脂粉末を用いることによって、当該粉末が砂の中に混入し、該粉末が給水時の体積膨張と乾燥時の体積減少とを繰り返すことによって、常に砂の粒子の流動性を確保し充填材が固まるのを防止して、衝撃吸収性を保持するようになっている。また、前記粉末は吸水性を有するため、砂だけの充填材を用いた場合に比べて散布された水をより長い時間保持することができ、その間、人工芝生上の温度上昇を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−268713号公報
【特許文献2】特開平3−72102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前者の場合にあっては次のような問題があった。すなわち、充填材の上層がゴムチップで構成されているため、競技者が充填材に接触した場合、物理的衝撃から当該競技者を保護することができるものの、ゴムチップは摩擦係数が大きいので、ゴムチップとの間で摩擦熱が発生して、当該競技者の皮膚に火傷を負わせてしまうのである。また、ゴムチップは保水性が低いため、人工芝生上の昇温抑制効果は奏さない。ところで、人工芝生は経年劣化するため数年おきに交換されており、その際、充填材は産業廃棄物として処理されるが、前述した如く本充填材は珪砂とゴムチップとが混在するため、産業廃棄物としての取り扱い規制が厳しくなり、廃棄処理に多額のコストを要する。
【0010】
一方、後者の場合にあっては、砂の中に混入した前記粉末が給水時の体積膨張と乾燥時の体積減少とを繰り返すため、競技中、充填材の状態が大きく変化して競技に支障を来してしまう。従って、競技用として使用することができない。また、前記粉末は吸水性を有するものの、これを含有させた粉末はその表面に存在する吸水性樹脂でしか保水することができないので、単位質量当たりの保水量が少ない上に、吸水性樹脂の水保持力が弱いので、前記粉末に保持された水は、日中の太陽光の照射により比較的短い時間で蒸発してしまう。従って、人工芝生上の温度上昇抑制効果は短時間で消失してしまう。更に、充填材は珪砂とゴム又は合成樹脂粉末とが混在するため、前同様、廃棄処理に多額のコストを要する。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、所要の温度上昇抑制効果を有し、また廃棄処理に要するコストを可及的に廉価にし得る人工芝生の施工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係る人工芝生の施工方法は、複数の排水孔が設けられたシート状の基材に複数のパイルを植設してなる人工芝生を対象領域に敷設し、前記各パイルの間に充填材を充填するにあたって、前記対象領域に、ボラ土又は/及び本明細書中に記載するところのボラ土と同じ物性を有する石材、即ち粒内を貫通する多数の気孔を有して、湿潤環境では各気孔内に水を吸収保持し、乾燥環境では各気孔から外へ水を徐放し得、また過剰な水を効率的に排除し得る排水性を有し、更にボラ土と同程度の圧縮強さを有する石材を適宜の深さで敷設して基層を形成し、該基層上に砂を適宜の深さで敷設して表層を形成し、該表層の上に前記人工芝生を敷設し、前記充填材としてボラ土又は/及び前記石材を用いることを特徴とする。
【0013】
本発明者は鋭意検討した結果、ボラ土の物性に着目することにより前記課題を解決するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の人工芝生の施工方法にあっては、複数の排水孔が設けられたシート状の基材に複数のパイルを植設してなる人工芝生を対象領域に敷設し、前記各パイルの間に充填材を充填するにあたって、前記対象領域に、前記ボラ土又は/及び本明細書中に記載するところのボラ土と同じ物性を有する石材を適宜の深さで敷設して基層を形成し、該基層上に砂を適宜の深さで敷設して表層を形成し、該表層の上に前記人工芝生を敷設し、前記充填材としてボラ土又は/及び前記石材を用いるのである。
【0015】
ここで、ボラ土とは、宮崎県及び鹿児島県に堆積している火山性の岩滓であり、種々の大きさの粒で構成されている。また、ボラ土は多数の気孔を有している。これらの気孔は多くの場合、ボラ土の各粒内を貫通しており、これによってボラ土は湿潤環境では各気孔内に水を吸収保持し、乾燥環境では各気孔から外へ水を長時間に亘って徐々に放出することができる。ボラ土以外の一般的な軽石にあっては表面に形成された気孔内に幾分かの水を吸収することはできるが、軽石の内部には表面に連絡していない単独気泡が形成されているため、その内部に水を吸収することができない。つまり、一般的な軽石は水を殆ど吸収保持することができず、従って前述した如き徐放性も具備しない。一般的な軽石は水に浮くが、ボラ土は水中で殆ど浮かずに沈降するので、これによって両者を簡易的に識別することもできる。
【0016】
また、ボラ土は上述したように保水性に優れている反面、排水性がよいため、雨水等の過剰な水を効率的に排除することができる。
【0017】
一方、ボラ土は圧縮強さが高く、例えば競技中の衝撃等が負荷された程度ではこれに十分耐えることができ、物理的形状が殆ど変化しない。これに対して園芸に用いられる鹿沼土があるが、鹿沼土は圧縮強さが低く、指で押さえただけで容易に物理的形状が崩壊してしまうため適用することができない。
【0018】
ボラ土と同じ物性を有する石材とは、以上の物性を有するボラ土以外の石材をいう。すなわち、粒内を貫通する多数の気孔を有して、湿潤環境では各気孔内に水を吸収保持し、乾燥環境では各気孔から外へ水を長時間に亘って徐々に放出することができる。また、優れた排水性を有し、雨水等の過剰な水を効率的に排除することができる。更に、ボラ土と同程度の圧縮強さを有し、例えば競技中の衝撃等が負荷された程度ではこれに十分耐えることができ、物理的形状が殆ど変化しない。
【0019】
複数の排水孔が設けられたシート状の基材に複数のパイルを植設してなる人工芝生上に撒かれた水は、充填材として施されたボラ土内に吸収される一方、競技中にこのボラ土から長時間に亘って徐々に放出されるため、放出された水が気化する際に気化熱として周囲の熱を奪い人工芝生上の温度上昇を長時間抑制し続けることができる。更に、本発明の人工芝生の施工方法にあっては、人工芝生を敷設する対象領域に、前記ボラ土又は/及び前記石材を適宜の深さで敷設して基層を形成するため、ボラ土の吸水性によって周囲の水を迅速に吸収する一方、過剰な水はボラ土の各粒の間隙を通して排除することができるため、上層の余分な水が迅速に除去される。一方、前述した如くボラ土は吸収した水を徐々に放出する徐放性を有しているため、人工芝生及び表層の乾燥に伴って当該表層を介して人工芝生に水分を長時間に亘って供給することができる。これによって、人工芝生の温度上昇を長時間抑制し続けることができる。そして、この基層上に砂を適宜の深さで敷設して表層を形成し、該表層の上に人工芝生を敷設する。基層上に砂を適宜の深さで敷設して表層を形成することによって、表層の表面を平坦化することができ、この平坦化された表層上に人工芝生が敷設される。
【0020】
一方、充填材及び基層として用いるボラ土には合成樹脂といった合成高分子物質が混在していないため、人工芝生を交換する場合においても通常の産業廃棄物として取り扱うことができ、廃棄処理に要するコストを可及的に廉価にし得る。
【0021】
(2)本発明に係る人工芝生の施工方法は、前記充填材として、粒の角部を丸める丸目処理を行ったボラ土又は/及び前記石材を用いることを特徴とする。
【0022】
本発明の人工芝生の施工方法にあっては、充填材として、粒の角部を丸める丸目処理を行ったボラ土又は/及び前記石材を用いる。
【0023】
ボラ土又は/及び前記石材を構成する各粒の角は丸くなっているため、競技者による衝撃にて相隣る粒が擦れ合った場合であっても、人工芝生のパイルが損傷することが可及的に抑制される。また、競技者がボラ土又は/及び前記石材に接触した場合であっても各粒の角が丸いため安全性が高い。
【0024】
一方、各粒の角は丸くなっているため相隣る各粒に間隙が形成され、これによって衝撃吸収効果を奏する。
【0025】
(3)本発明に係る人工芝生の施工方法は、前記充填材として、更に川砂を用いることを特徴とする。
【0026】
本発明の人工芝生の施工方法にあっては、充填材として、更に川砂を用いる。川砂は流水の作用によって各粒の角が取れて丸くなっているため、競技者による衝撃にて相隣る粒が擦れ合った場合であっても、人工芝生のパイルが損傷することが可及的に抑制される。また、競技者が川砂に接触した場合であっても各粒の角が丸いため安全性が高い。
【0027】
ところで、川砂にも合成樹脂といった合成高分子物質が混在しておらず、人工芝生を交換する場合においても通常の産業廃棄物として取り扱うことができ、廃棄処理に要するコストを可及的に廉価することができる。
【0028】
一方、川砂はボラ土より硬く、耐久性にすぐれているため、従ってボラ土の摩耗が抑制され、ボラ土の寿命を保持することができる。
【0029】
(4)本発明に係る人工芝生の施工方法は、前記各パイルの間に充填材として前記ボラ土又は/及び前記石材を充填して保持した水を徐々に放出する徐放性層を形成し、該徐放性層の上に、充填材として川砂を充填して川砂層を形成することを特徴とする。
【0030】
本発明の人工芝生の施工方法にあっては、各パイルの間に充填材として前記ボラ土又は/及び前記石材を充填して保持した水を徐々に放出する徐放性層を形成する。このように、ボラ土によって徐放性層を形成するため、前述した如く人工芝生上に撒かれた水は、充填材として施されたボラ土内に吸収される一方、競技中にこのボラ土から長時間に亘って徐々に放出されるため、放出された水が気化する際に気化熱として周囲の熱を奪い人工芝生上の温度上昇を長時間抑制し続けることができる。
【0031】
そして、かかる徐放性層の上に、充填材として川砂を充填して川砂層を形成する。前述した如く、川砂はボラ土より硬く、耐久性にすぐれているため、従ってボラ土の摩耗が抑制され、ボラ土の寿命を保持することができる。また、川砂を構成する各粒の角が取れて丸くなっているため、相隣る粒に間隙が形成され、これによって川砂層は衝撃吸収性を奏する。
【0032】
一方、競技者からの衝撃は最初に川砂層に与えられてそこで吸収されるため、徐放性層に伝えられる衝撃度は軽減される。徐放性層は相隣る粒の擦れ合い等によって徐々に摩耗するが、前述したように川砂層によって徐放性層に伝えられる衝撃度が軽減されるため、徐放性層上に川砂層を敷設することによって、徐放性層の摩耗が抑制され、徐放性層の寿命を保持することができる。
【0033】
(5)本発明に係る人工芝生の施工方法は、更に、前記充填材は予め、所要の粒径範囲に揃える篩分けを行っておくことを特徴とする。
【0034】
本発明の人工芝生の施工方法にあっては、充填材は予め、所要の粒径範囲に揃える篩分けを行っておく。このように、充填材を構成するする各粒のサイズを揃えておくことによって、相隣る各粒の間隙を可及的に大きくすることができ、これによって高い衝撃吸収効果を奏することができる。
【0035】
(6)本発明に係る人工芝生の施工方法は、前記基層は基底層上に中間層を敷設して形成し、前記基底層には平均直径が8mm程度を超える粒径のボラ土又は/及び前記石材を用い、前記中間層には平均粒径が3mm程度以上8mm程度以下の粒径のボラ土又は/及び前記石材を用いることを特徴とする。
【0036】
本発明の人工芝生の施工方法にあっては、前記基層は基底層上に中間層を敷設して形成し、前記基底層には平均直径が8mm程度を超える粒径のボラ土又は/及び前記石材を用い、前記中間層には平均粒径が3mm程度以上8mm程度以下の粒径のボラ土又は/及び前記石材を用いている。
【0037】
基底層と表層との間に中間層を形成することによって、表層を担持して表層の流失を防止するともに、この中間層をボラ土で構成することによって、周囲の水を迅速に吸収する一方、過剰な水はボラ土の各粒の間隙を通して排除することができるため、表層の余分な水が迅速に除去される。また、表層の乾燥に伴って当該表層に水分を長時間に亘って供給することができる。これによって、人工芝生の温度上昇を長時間抑制し続けることができる。
【0038】
(7)本発明に係る人工芝生の施工方法は、前記表層に、粒径が略揃った川砂を用いることを特徴とする。
【0039】
本発明の人工芝生の施工方法にあっては、前記表層に、粒径が略揃った川砂を用いる。
【0040】
川砂は流水の作用によって各粒の角が取れて丸くなっており、更に粒径が略揃ったものを用いることによって相隣る各粒子に可及的に大きな間隙が形成されるため、表層は衝撃吸収効果を奏する。
【0041】
本発明に係る人工芝生用充填材の製造方法は、シート状の基材に複数のパイルを植設してなる人工芝生の前記各パイルの間に充填する充填材を製造する場合、ボラ土又は/及びボラ土と同じ物性を有する石材を篩分けして所定値を超える粒径の粒を除去し、得られた前記所定値以下のボラ土又は/及び前記石材を回動装置に設けられた筒体内へ投入し、該筒体を回転駆動することによって、前記ボラ土又は/及び前記石材を構成する複数の粒の角を除去する丸目処理を行うことを特徴とする。
【0042】
本発明の人工芝生用充填材の製造方法にあっては、ボラ土又は/及びボラ土と同じ物性を有する石材を篩分けして所定値を超える粒径の粒を除去し、所定値以下のボラ土又は/及び前記石材をロータリーキルンといった回動装置に設けられた筒体内へ投入するため、丸目処理を効率的に行うことができる。
【0043】
ここで、篩分けする篩の目は6mm〜10mm程度に設定する。篩の目が6mm〜10mm程度を超える場合、得られる充填材の粒径が大き過ぎるため、人工芝生内への充填材としては不適当である。また、後工程である丸目処理に長時間を要し、所要の処理効率を得ることができない。これに対して、篩の目を6mm〜10mm程度に設定した場合、適当な粒径の充填材を得ることができるため、人工芝生内への充填を円滑に行うことができ、また競技にも影響を及ぼさない。
【0044】
そして、前記筒体を回転駆動することによって、前記ボラ土又は/及び前記石材を構成する複数の粒の角を除去する丸目処理を行う。筒体の回転にともなってそこに投入されたボラ土又は/及び前記石材は互いに衝突し、また筒体の内壁に衝突して、各粒の角が徐々に除去されて丸くなっていく。このように回動装置を用いることによって、比較的大量の丸目処理を短時間で均一に実施することができる。
【0045】
本発明に係る人工芝生用充填材の製造方法は、前記丸目処理は適宜温度まで加熱しながら実施することを特徴とする。
【0046】
本発明の人工芝生用充填材の製造方法にあっては、丸目処理は適宜温度まで加熱しながら実施するため、ボラ土又は/及び前記石材を乾燥させることができ、これによって丸目処理の効果がより奏される。
【0047】
本発明に係る人工芝生用充填材は、シート状の基材に複数のパイルを植設してなる人工芝生の前記各パイルの間に充填する充填材であって、ボラ土又は/及びボラ土と同じ物性を有する石材を篩分けして所定値を超える粒径の粒を除去し、得られた前記所定値以下のボラ土又は/及び前記石材を構成する複数の粒の角を除去する丸目処理を行い、丸目処理されたボラ土又は/及び前記石材を篩分けして所定値未満の粒径の粒を除去してなることを特徴とする。
【0048】
本発明の人工芝生用充填材にあっては、ボラ土又は/及びボラ土と同じ物性を有する石材を篩分けして所定値を超える粒径の粒を除去し、前記所定値以下のボラ土又は/及び前記石材を構成する複数の粒の角を除去する丸目処理を行い、丸目処理されたボラ土又は/及び前記石材を篩分けして所定値未満の粒径の粒を除去してなるため、全ての粒の角が略均一に除去されており、更に各粒の粒径が揃っている。従って、充填材の相隣る粒の間隙が可及的に大きく、優れた衝撃吸収性を奏する。
【0049】
ここで、所定値未満の粒径の粒を除去すべく、篩分けする篩の目は0.6mm程度に設定する。篩の目が0.6mm程度未満の場合、得られる充填材に過小な粒径の粒が多く混入するため、充填作業又は競技中に埃が立つ虞があるのに加え、衝撃吸収性が低下する。これに対して、篩の目を0.6mm程度に設定した場合、前述した如く優れた衝撃吸収性を奏するのに加え、各粒内に吸収される水を適宜量確保することができるため、長時間に亘って水を徐放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明に係る人工芝生の施工手順を説明する模式的説明図である。
図2】本発明に係る人工芝生の施工手順を説明する模式的説明図である。
図3】人工芝生の一例を示す模式的斜視図である。
図4】丸目処理してなるボラ土の製造手順を説明する説明図である。
図5】ボラ土の表面を走査電子顕微鏡にて撮像した写真図である。
図6】ボラ土の断面を走査電子顕微鏡にて撮像した写真図である。
図7】対象資料の表面温度を経時的に測定した結果を示す折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明に係る人工芝生の施工方法について詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明に係る人工芝生の施工手順を説明する模式的説明図である。
図1(a)に示したように、対象領域の土砂等を適宜の深さまで除去し、図1(b)に示したように、その底部に大粒径のボラ土を10cm程度〜30cm程度の深さ寸法になるように敷設して基底層11を形成する。
【0052】
このように基層の最底部である基底層11に大粒径のボラ土を敷設することによって、ぐり石を敷設した場合と同様に上層の沈下防止効果を奏する。また、ボラ土の吸水性によって周囲の水を迅速に吸収する一方、過剰な水はボラ土の各粒の間隙を通して排除することができるため、上層の余分な水が迅速に除去される。一方、前述した如く、ボラ土は吸収した水を徐々に放出する徐放性を有しているため、後述する基底層11より上部の層の乾燥に伴って当該層に水分を長時間に亘って供給することができる。
【0053】
なお、大粒径のボラ土としては平均直径が8mm程度を超えるものが好適であるが、これに限定されない。
【0054】
ここで、ボラ土について説明する。
前述した如く、ボラ土は宮崎県及び鹿児島県に堆積している火山性の岩滓であり、種々の大きさの粒で構成されている。
【0055】
図5はボラ土の表面を走査電子顕微鏡にて撮像した写真図であり、図6はボラ土の断面を走査電子顕微鏡にて撮像した写真図である。両図から明らかなように、ボラ土は多数の気孔を有しており、これらの気孔の多くはボラ土の粒内を貫通している。
【0056】
これら気孔の直径のポロシメータ(ポアマスター33P/GT、シスメックス株式会社製)による測定値は5μm〜10μm程度であり、また水銀圧入法によって測定した気孔容積(cm/g)及び気孔率は、前者が0.9〜1.6程度であり、後者が0.7〜0.8である。なお、真密度は2.7g/cmである。
【0057】
従って、ボラ土は湿潤環境では各気孔内に水を吸収保持し、乾燥環境では各気孔から外へ水を長時間に亘って徐々に放出することができるのである。
【0058】
これに対して、ボラ土以外の一般的な軽石にあっては表面に形成された気孔内に幾分かの水を吸収することはできるが、軽石の内部には表面に連絡していない単独気泡が形成されているため、その内部に水を吸収することができない。つまり、一般的な軽石は水を殆ど吸収保持することができず、従って前述した如き徐放性も具備しない。なお、一般的な軽石は水に浮くが、ボラ土は水中で殆ど浮かずに沈降するので、これによって両者を簡易的に識別することもできる。
【0059】
また、ボラ土の化学組成は次表の通りである。なお、分析は蛍光X線分析装置(ZSX100e、株式会社リガク製)を用いて行っている。
【0060】
【表1】
【0061】
この表から明らかなように、ボラ土のはSiO及びAlが主成分である。かかる主成分にも起因して、ボラ土は圧縮強さが高く、例えば競技中の衝撃等が負荷された程度ではこれに十分耐えることができ、物理的形状が殆ど変化しないのである。
【0062】
次に、基底層11を形成すると、図1(c)に示したように、この基底層11上に中粒径のボラ土を10cm程度〜20cm程度の深さ寸法になるように敷設して中間層12を形成した後、図1(d)に示したように、該中間層12上に砂を3cm程度〜15cm程度の深さ寸法になるように敷設して表層15を形成し、該表層15の表面を平坦化する。ここで、本発明にあって中粒径のボラ土としては平均直径が3mm程度〜8mm程度のものが好適であるが、これに限定されない。また、砂は、その粒の平均直径が0.5mm程度〜1.5mm程度のものが好適であるが、これに限定されない。なお、本実施例にあっては基底層11及び中間層12にて基層を構成してある。
【0063】
このように基底層11と表層15との間に中間層12を形成することによって、表層15を担持して表層15の流失を防止するともに、この中間層12をボラ土で構成することによって、前同様、周囲の水を迅速に吸収する一方、過剰な水はボラ土の各粒の間隙を通して排除することができるため、表層15の余分な水が迅速に除去される。また、表層15の乾燥に伴って当該表層15に水分を長時間に亘って供給することができる。
【0064】
ここで、前述した表層15に用いる砂としては、川砂であって粒径が略揃ったものが好適である。川砂は流水の作用によって各粒の角が取れて丸くなっており、更に粒径が略揃ったものを用いることによって相隣る各粒子に可及的に大きな間隙が形成されるため、表層15は衝撃吸収効果を奏する。
【0065】
なお、本実施の形態では、基底層11及び中間層12のいずれにもボラ土を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、基底層11及び中間層12を砕石で構成してもよいし、基底層11及び中間層12のいずれか一方のみにボラ土を適用するようにしてもよい。ただし、基底層11及び/又は中間層12にボラ土を用いた場合、前述した如く上層の余分な水が迅速に除去される一方、上層の乾燥に伴って当該上層に水分を長時間に亘って供給することができるため好適である。
【0066】
次に、図2(e)に示したように、表層15上に人工芝生20を敷設する。ここで、人工芝生20の構造を説明する。
【0067】
図3は人工芝生の一例を示す模式的斜視図であり、図中、21はシート状の基材である。
基材21は例えば、網状の目を設けてなる合成樹脂製の布材の裏面を合成樹脂膜で被覆して構成されている。この基材21には、天然芝生の葉に相当する合成樹脂製のパイル22,22,…を一か所に適宜数ずつ前記布材の目を挿通させて編み込むように植設してなる複数のパイル束23,23,…がマトリクス状に配置してある。相隣るパイル束23,23,…の間隙は一方向の値よりこれと直交する方向の値の方を小さくしてあり、これによって畝状のパイル束23,23,…が複数列形成されている。一方、基材21には該基材21を貫通する複数の排水孔25,25,…が適宜の間隔で開設してり、各排水孔25,25,…は基材21上に溜まった水を基材21の裏面側へ排出させるようになっている。
【0068】
そして、図2(f)に示したように、人工芝生20の基材21上に、ボラ土を1cm程度〜4cm程度の深さになるように各パイル22,22,…の間隙に充填することによって吸収した水を徐々に放出する徐放性層1を形成し、図2(g)に示したように、該徐放性層1上に川砂を1cm程度〜5cm程度の深さになるように各パイル22,22,…の間隙に充填することによって川砂層2を形成する。これら徐放性層1及び川砂層2にて充填層が構成されており、徐放性層1のボラ土及び川砂層2の川砂によって充填材が構成されている。
【0069】
このように人工芝生20の各パイル22,22,…の間隙にボラ土及び川砂を充填材をとして適宜深さになるように充填するため、人工芝生20は各パイル22,22,…が起立して芝生として機能する。また、人工芝生20上に撒かれた水は徐放性層1を構成するボラ土内に吸収される一方、競技中に徐放性層1から長時間に亘って徐々に放出されるため、放出された水が気化する際に気化熱として周囲の熱を奪い人工芝生20上の温度上昇を長時間抑制し続けることができる。
【0070】
また、前述したようにボラ土の圧縮強さは鹿沼土に比べて十分高いため、競技中の衝撃等が負荷された場合であってもそれに十分耐えることができ、物理的形状が殆ど変化しない。仮に徐放性層1に鹿沼土を用いたとすると、鹿沼土は指で押さえただけで容易に物理的形状が崩壊するほど圧縮強さが低いため、競技中の衝撃によって物理的形状が崩壊し、崩壊後の水を含んだ鹿沼土が人工芝生20の排水孔25,25,…(図3参照)に流入してそこを閉塞し、人工芝生20の排水性が喪失されてしまう。しかしながら、ボラ土は前述したように競技中の衝撃等が負荷された場合であっても物理的形状が殆ど変化しないため、人工芝生20の排水性が良好に維持される。
【0071】
一方、前述したように徐放性層1上に川砂層2を敷設してある。川砂は流水の作用によって各粒の角が取れて丸くなっているため、競技者による衝撃にて相隣る粒が擦れ合った場合であっても、人工芝生20のパイル22,22,…が損傷することが可及的に抑制される。また、競技者が川砂層2に接触した場合であっても各粒の角が丸いため安全性が高い。更に、前述した如く川砂の各粒は丸くなっており、更に粒径が略揃ったものを用いているため、相隣る各粒子に間隙が形成され、これによって高い衝撃吸収効果を継続的に奏する。
【0072】
ところで、このように徐放性層1及び川砂層2はそれぞれボラ土及び川砂にて構成してあるため、合成樹脂といった合成高分子物質が混在しておらず、人工芝生20を交換する場合においても通常の産業廃棄物として取り扱うことができ、廃棄処理に要するコストが上昇することを可及的に抑制することができる。
【0073】
一方、競技者からの衝撃は最初に川砂層2に与えられてそこで吸収されるため、徐放性層1に伝えられる衝撃度は軽減される。徐放性層1は相隣る粒の擦れ合い等によって徐々に摩耗するが、前述したように川砂層2によって徐放性層1に伝えられる衝撃度が軽減されるため、徐放性層1上に川砂層2を敷設することによって、徐放性層1の摩耗が抑制され、徐放性層1の寿命を保持することができる。
【0074】
ここで、前述した徐放性層1に用いるボラ土は、平均粒径が0.6mm〜6mmのものが好適である。平均粒径が0.6mmより小さい場合、得られるボラ土に過小な粒径の粒が多く混入するため、充填作業又は競技中に埃が立つ虞があるのに加え、排水孔25,25,…からの流失量が多く、また徐放性層1の衝撃吸収性が低い。また、平均粒径が6mmを超えると、得られるボラ土の粒径が大き過ぎるため、充填材としては不適当である。
【0075】
また、川砂層2に用いる川砂は、平均粒径が0.5mm〜1.5mmのものが好適である。平均粒径が0.5mmより小さい場合、所要の衝撃吸収作用を得ることができず、また平均粒径が1.5mmを超えると競技に支障を来す虞がある。
【0076】
一方、このような粒径範囲のボラ土及び川砂には細かい泥土等が混在していないため、人工芝生20に開設した排水孔25,25,…(図3参照)に目詰まりが生じない。また、徐放性層1のボラ土及び川砂層2の川砂には前述したように間隙が形成されているため、過剰な水は前記間隙を通じて人工芝生20の排水孔25,25,…から人工芝生20の裏面へ迅速に排出される。従って、人工芝生20に徐放性層1及び川砂層2を設けた人工芝生構造体にあっては、前述した如く人工芝生20上に撒かれた水を保持して長時間に亘って徐々に放出する一方、過剰な水は迅速に排出して人工芝生20上を所要の環境に維持するとともに、この排水性が低下することが防止されている。
【0077】
ところで、徐放性層1に用いるボラ土は、後述するようにボラ土を構成する粒の角を丸める丸目処理したものが好適である。これによって、川砂と同様、競技者による衝撃にて相隣る粒が擦れ合った場合であっても、人工芝生20のパイル22,22,…が損傷することが可及的に抑制される。また、経年による川砂層2と徐放性層1との混合によって徐放性層1のボラ土が表面に現れた場合であっても、競技者が表面のボラ土と接触しても競技者に損傷を与える虞がない。一方、ボラ土の各粒は丸くなっており、更に粒径が略揃ったものを用いているため、相隣る各粒子に間隙が形成され、これによって高い衝撃吸収効果を継続的に奏する。
【0078】
一方、ボラ土は養分を殆ど含まないため、植物の生育が阻害される。
【0079】
なお、本実施の形態では徐放性層1の上に川砂層2を設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、丸目処理してなるボラ土と川砂とを混合してなる充填層を形成するようにしてもよい。
【0080】
次に、丸目処理してなるボラ土を製造する方法について説明する。
図4は、当該ボラ土の製造手順を説明する説明図である。
図4(a)に示したように、採掘したボラ土を振動篩機30に投入し、所定粒径を超える粒を除去する。ここで、前記振動篩機30の目は6mm〜10mm程度が好ましい。振動篩機30の目が10mmを超える場合、最終的に得られるボラ土の粒径が過大であり、人工芝生の充填材として用いることが困難である。また、後述するキルン41での処理に長時間を要し、単位時間当たりの製造効率が低下する。一方、ボラ土は次工程でその周囲が削れて粒径が小さくなるが、振動篩機30の目が6mm未満の場合、最終的に得たい粒径のボラ土を効率的に製造することができない。
【0081】
振動篩機30を通過した所定粒径以下の粒径のボラ土は、図4(b)に示したように、回動装置40に設けられた筒状のキルン41に投入される。キルン41は適宜の回転数で回転されるようになっており、投入されたボラ土の各粒はキルン41内で回動されることによって当該粒の角が取れて丸くなる。このとき、キルン41内にはその一端からバーナ42による熱風を導入しており、これによって、採掘後、篩分けされたボラ土を乾燥させて各粒の角を除去し易くするとともに、ボラ土に含まれる微生物若しくはその胞子、又は植物の種子等を殺菌・不活化させて人工芝生に充填された場合であっても雑草等の繁殖を回避することができる。
【0082】
前記キルン41としては例えば、長さが10mであり、直径が2.5mであるものを用いることができ、かかる寸法の場合、3〜5rpm程度の回転速度に設定するとよい。また、かかる寸法のキルン41を用いた場合、キルン41からの排気温度が65℃程度になるように内部へ熱風を導入することによって、キルン41の出口におけるボラ土の温度を略80℃にすることができる。
【0083】
このようにして丸目処理を行ったボラ土は、図4(c)に示したように、網目サイズを段階的に小さい値に設定した振動篩機31(31)(図4にあっては1台のみを示してある。)に順次投入され、平均粒径が0.6mm〜6mm内の適宜粒径範囲のボラ土を得る。これによって、微細な粒子が除去されたより粒径の揃ったボラ土を得ることができるため、相隣る粒の間隙を可及的に大きくすることができ、高い衝撃吸収性を奏する。
【0084】
なお、本実施の形態では、網目サイズを段階的に小さい値に設定した少なくとも2台の振動篩機31,31を用いたが、例えば前述した振動篩機30の目を6mm程度に設定した場合は、振動篩機31の目を0.6mmに設定しておくことによって、平均粒径が0.6mm〜6mmのボラ土を得ることができるため、1台の振動篩機31を配置すればよい。
【0085】
ところで、本発明に用いる川砂も、図4と略同じ工程によって製造してあり、所要粒径範囲に揃えて、衝撃吸収性を向上させるとともに、川砂に付着した微生物若しくはその胞子、又は植物の種子等を殺菌・不活化させて、雑草等の繁殖を回避するようになしてある。なお、川砂にあっては各粒は既に角が取れて丸いのであるが、キルン41内で回動されても更に丸くなるということはない。
【0086】
なお、本実施の形態ではボラ土を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、粒形、圧縮強さ、徐放性等の物性がボラ土と同程度の石材であれば本発明に適用し得ることはいうまでもない。
【0087】
また、本実施の形態では対象領域を掘削して基底層11、中間層12及び表層15を備える基礎を形成した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、盛り土を行って対象領域を底上げする場合には対象領域を掘削することなく前記基礎を形成し得ることはいうまでもない。
【実施例】
【0088】
次に、比較試験を行った結果について説明する。
比較試験は、湿潤状態になしたボラ土及びゴムチップに熱光線をそれぞれ照射し、各々の表面温度を経時的に測定することによって行った。
【0089】
すなわち、それぞれ直径が3mm程度のボラ土(ボラ土1号:株式会社三洋環境社プランナー社製)及びタイヤのゴムチップを400gずつ分取し、それらをアルミニウム製の2枚のバット(縦18cm×横22.5cm×深さ3.5cm)にそれぞれ投入してその深さを均一にならし、60℃の恒温槽中にそれぞれ静置した。また、4Lの水道水を入れた三角フラスコも前記恒温槽中に浸漬させた。
【0090】
ボラ土及びゴムチップ並びに水道水が恒温になった後、両バット及び三角フラスコを25℃に設定した室内に取り出し、当該三角フラスコから2Lずつ水道水を採取してバット内のボラ土及びゴムチップにそれぞれ散布するとともに、両バット上に25cm隔てて配設したハロゲンランプ(ハロゲンワークランプCTW−252(250W):株式会社三共コーポレーション製)のスイッチをオンにして、ボラ土及びゴムチップの表面温度を経時的に測定した。
【0091】
図7は、対象資料の表面温度を経時的に測定した結果を示す折れ線グラフであり、図中、縦軸は温度を、横軸は時間を示している。また、図中、丸印はボラ土の結果を、菱形印はゴムチップの結果を示している。
【0092】
図7から明らかなように、零分である測定開始時にあっては両者の表面温度は殆ど同じであったが、時間が経過するにつれて、ボラ土の表面温度はゴムチップの表面温度より急速に低下し、測定開始から30分経過すると、ボラ土の表面温度はゴムチップの表面温度に比べて4.5℃程度低くなっていた。
【0093】
前述した如く、ボラ土は粒内を貫通する多数の気孔を有しているので、散布された水道水はボラ土の各気孔内に吸収保持され、熱光線が照射されると各気孔から外へ徐々に放出される。ボラ土から放出された水道水は気化する際に気化熱として周囲の熱を奪う。また、ボラ土の各粒子の間隙に入りこんだ水道水も熱光線の照射によって気化する際に気化熱として周囲の熱を奪う。これに対して、ゴムチップはそのような気孔を有さないので、ゴムチップの各粒子の間隙に入り込んだ水道水のみしか気化熱を発生しない。このため、ボラ土の表面温度はゴムチップの表面温度より低下するのである。
【0094】
かかるボラ土が、例えばシート状の基材に複数のパイルを植設してなる人工芝生の充填材として適用された場合、当該人工芝生上に撒かれた水は、そこに施されたボラ土内に吸収される一方、競技中にこのボラ土から徐々に放出されるため、放出された水が気化する際に気化熱として周囲の熱を奪い人工芝生上の温度上昇を長時間抑制し続けることができる。
【0095】
なお、本実施例では測定開始から30分まで測定した結果を示したが、ボラ土による表面温度上昇抑制効果は数時間奏されていた。
【符号の説明】
【0096】
1 徐放性層
2 川砂層
11 基底層
12 中間層
15 表層
20 人工芝生
21 基材
22 パイル
23 パイル束
30 振動篩機
31 振動篩機
40 回動装置
41 キルン
42 バーナ
図1
図2
図3
図4
図7
図5
図6