【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係る人工芝生の施工方法は、複数の排水孔が設けられたシート状の基材に複数のパイルを植設してなる人工芝生を対象領域に敷設し、前記各パイルの間に充填材を充填するにあたって、前記対象領域
に、ボラ土又は/及び本明細書中に記載するところのボラ土と同じ物性を有する
石材、即ち粒内を貫通する多数の気孔を有して、湿潤環境では各気孔内に水を吸収保持し、乾燥環境では各気孔から外へ水を徐放し得、また過剰な水を効率的に排除し得る排水性を有し、更にボラ土と同程度の圧縮強さを有する石材を適宜の深さで敷設して基層を形成し、該基層上に砂を適宜の深さで敷設して表層を形成し、該表層の上に前記人工芝生を敷設し、前記充填材としてボラ土又は/及び前記石材を用いることを特徴とする。
【0013】
本発明者は鋭意検討した結果、ボラ土の物性に着目することにより前記課題を解決するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の人工芝生の施工方法にあっては、
複数の排水孔が設けられたシート状の基材に複数のパイルを植設してなる人工芝生を対象領域に敷設し、前記各パイルの間に充填材を充填するにあたって、
前記対象領域に、前記ボラ土又は/及び本明細書中に記載するところのボラ土と同じ物性を有する石材を適宜の深さで敷設して基層を形成し、該基層上に砂を適宜の深さで敷設して表層を形成し、該表層の上に前記人工芝生を敷設し、前記充填材としてボラ土又は/及び
前記石材を用いるのである。
【0015】
ここで、ボラ土とは、宮崎県及び鹿児島県に堆積している火山性の岩滓であり、種々の大きさの粒で構成されている。また、ボラ土は多数の気孔を有している。これらの気孔は多くの場合、ボラ土の各粒内を貫通しており、これによってボラ土は湿潤環境では各気孔内に水を吸収保持し、乾燥環境では各気孔から外へ水を長時間に亘って徐々に放出することができる。ボラ土以外の一般的な軽石にあっては表面に形成された気孔内に幾分かの水を吸収することはできるが、軽石の内部には表面に連絡していない単独気泡が形成されているため、その内部に水を吸収することができない。つまり、一般的な軽石は水を殆ど吸収保持することができず、従って前述した如き徐放性も具備しない。一般的な軽石は水に浮くが、ボラ土は水中で殆ど浮かずに沈降するので、これによって両者を簡易的に識別することもできる。
【0016】
また、ボラ土は上述したように保水性に優れている反面、排水性がよいため、雨水等の過剰な水を効率的に排除することができる。
【0017】
一方、ボラ土は圧縮強さが高く、例えば競技中の衝撃等が負荷された程度ではこれに十分耐えることができ、物理的形状が殆ど変化しない。これに対して園芸に用いられる鹿沼土があるが、鹿沼土は圧縮強さが低く、指で押さえただけで容易に物理的形状が崩壊してしまうため適用することができない。
【0018】
ボラ土と同じ物性を有する石材とは、以上の物性を有するボラ土以外の石材をいう。すなわち、粒内を貫通する多数の気孔を有して、湿潤環境では各気孔内に水を吸収保持し、乾燥環境では各気孔から外へ水を長時間に亘って徐々に放出することができる。また、優れた排水性を有し、雨水等の過剰な水を効率的に排除することができる。更に、ボラ土と同程度の圧縮強さを有し、例えば競技中の衝撃等が負荷された程度ではこれに十分耐えることができ、物理的形状が殆ど変化しない。
【0019】
複数の排水孔が設けられたシート状の基材に複数のパイルを植設してなる人工芝生上に撒かれた水は、充填材として施されたボラ土内に吸収される一方、競技中にこのボラ土から長時間に亘って徐々に放出されるため、放出された水が気化する際に気化熱として周囲の熱を奪い人工芝生上の温度上昇を長時間抑制し続けることができる。
更に、本発明の人工芝生の施工方法にあっては、人工芝生を敷設する対象領域に、前記ボラ土又は/及び前記石材を適宜の深さで敷設して基層を形成するため、ボラ土の吸水性によって周囲の水を迅速に吸収する一方、過剰な水はボラ土の各粒の間隙を通して排除することができるため、上層の余分な水が迅速に除去される。一方、前述した如くボラ土は吸収した水を徐々に放出する徐放性を有しているため、人工芝生及び表層の乾燥に伴って当該表層を介して人工芝生に水分を長時間に亘って供給することができる。これによって、人工芝生の温度上昇を長時間抑制し続けることができる。そして、この基層上に砂を適宜の深さで敷設して表層を形成し、該表層の上に人工芝生を敷設する。基層上に砂を適宜の深さで敷設して表層を形成することによって、表層の表面を平坦化することができ、この平坦化された表層上に人工芝生が敷設される。
【0020】
一方、充填材
及び基層として用いるボラ土には合成樹脂といった合成高分子物質が混在していないため、人工芝生を交換する場合においても通常の産業廃棄物として取り扱うことができ、廃棄処理に要するコストを可及的に廉価にし得る。
【0021】
(2)本発明に係る人工芝生の施工方法は、前記充填材として、粒の角部を丸める丸目処理を行ったボラ土又は/及び前記石材を用いることを特徴とする。
【0022】
本発明の人工芝生の施工方法にあっては、充填材として、粒の角部を丸める丸目処理を行ったボラ土又は/及び前記石材を用いる。
【0023】
ボラ土又は/及び前記石材を構成する各粒の角は丸くなっているため、競技者による衝撃にて相隣る粒が擦れ合った場合であっても、人工芝生のパイルが損傷することが可及的に抑制される。また、競技者がボラ土又は/及び前記石材に接触した場合であっても各粒の角が丸いため安全性が高い。
【0024】
一方、各粒の角は丸くなっているため相隣る各粒に間隙が形成され、これによって衝撃吸収効果を奏する。
【0025】
(3)本発明に係る人工芝生の施工方法は、前記充填材として、更に川砂を用いることを特徴とする。
【0026】
本発明の人工芝生の施工方法にあっては、充填材として、更に川砂を用いる。川砂は流水の作用によって各粒の角が取れて丸くなっているため、競技者による衝撃にて相隣る粒が擦れ合った場合であっても、人工芝生のパイルが損傷することが可及的に抑制される。また、競技者が川砂に接触した場合であっても各粒の角が丸いため安全性が高い。
【0027】
ところで、川砂にも合成樹脂といった合成高分子物質が混在しておらず、人工芝生を交換する場合においても通常の産業廃棄物として取り扱うことができ、廃棄処理に要するコストを可及的に廉価することができる。
【0028】
一方、川砂はボラ土より硬く、耐久性にすぐれているため、従ってボラ土の摩耗が抑制され、ボラ土の寿命を保持することができる。
【0029】
(4)本発明に係る人工芝生の施工方法は、前記各パイルの間に充填材として前記ボラ土又は/及び前記石材を充填して保持した水を徐々に放出する徐放性層を形成し、該徐放性層の上に、充填材として川砂を充填して川砂層を形成することを特徴とする。
【0030】
本発明の人工芝生の施工方法にあっては、各パイルの間に充填材として前記ボラ土又は/及び前記石材を充填して保持した水を徐々に放出する徐放性層を形成する。このように、ボラ土によって徐放性層を形成するため、前述した如く人工芝生上に撒かれた水は、充填材として施されたボラ土内に吸収される一方、競技中にこのボラ土から長時間に亘って徐々に放出されるため、放出された水が気化する際に気化熱として周囲の熱を奪い人工芝生上の温度上昇を長時間抑制し続けることができる。
【0031】
そして、かかる徐放性層の上に、充填材として川砂を充填して川砂層を形成する。前述した如く、川砂はボラ土より硬く、耐久性にすぐれているため、従ってボラ土の摩耗が抑制され、ボラ土の寿命を保持することができる。また、川砂を構成する各粒の角が取れて丸くなっているため、相隣る粒に間隙が形成され、これによって川砂層は衝撃吸収性を奏する。
【0032】
一方、競技者からの衝撃は最初に川砂層に与えられてそこで吸収されるため、徐放性層に伝えられる衝撃度は軽減される。徐放性層は相隣る粒の擦れ合い等によって徐々に摩耗するが、前述したように川砂層によって徐放性層に伝えられる衝撃度が軽減されるため、徐放性層上に川砂層を敷設することによって、徐放性層の摩耗が抑制され、徐放性層の寿命を保持することができる。
【0033】
(5)本発明に係る人工芝生の施工方法は、更に、前記充填材は予め、所要の粒径範囲に揃える篩分けを行っておくことを特徴とする。
【0034】
本発明の人工芝生の施工方法にあっては、充填材は予め、所要の粒径範囲に揃える篩分けを行っておく。このように、充填材を構成するする各粒のサイズを揃えておくことによって、相隣る各粒の間隙を可及的に大きくすることができ、これによって高い衝撃吸収効果を奏することができる。
【0035】
(6)本発明に係る人工芝生の施工方法は、
前記基層は基底層上に中間層を敷設して形成し、前記基底層には平均直径が8mm程度を超える粒径のボラ土又は/及び前記石材を用い、前記中間層には平均粒径が3mm程度以上8mm程度以下の粒径のボラ土又は/及び前記石材を用いることを特徴とする。
【0036】
本発明の人工芝生の施工方法にあっては、
前記基層は基底層上に中間層を敷設して形成し、前記基底層には平均直径が8mm程度を超える粒径のボラ土又は/及び前記石材を用い、前記中間層には平均粒径が3mm程度以上8mm程度以下の粒径のボラ土又は/及び前記石材を用いている。
【0037】
基底層と表層との間に中間層を形成することによって、表層を担持して表層の流失を防止するともに、この中間層をボラ土で構成することによって、周囲の水を迅速に吸収する一方、過剰な水はボラ土の各粒の間隙を通して排除することができるため、表層の余分な水が迅速に除去される。また、表層の乾燥に伴って当該表層に水分を長時間に亘って供給することができる。これによって、人工芝生の温度上昇を長時間抑制し続けることができる。
【0038】
(7)本発明に係る
人工芝生の施工方法は、
前記表層に、粒径が略揃った川砂を用いることを特徴とする。
【0039】
本発明の
人工芝生の施工方法にあっては、
前記表層に、粒径が略揃った川砂を用いる。
【0040】
川砂は流水の作用によって各粒の角が取れて丸くなっており、更に粒径が略揃ったものを用いることによって相隣る各粒子に可及的に大きな間隙が形成されるため、表層は衝撃吸収効果を奏する。
【0041】
本発明に係る人工芝生用充填材の製造方法は、シート状の基材に複数のパイルを植設してなる人工芝生の前記各パイルの間に充填する充填材を製造する場合、ボラ土又は/及びボラ土と同じ物性を有する石材を篩分けして所定値を超える粒径の粒を除去し、得られた前記所定値以下のボラ土又は/及び前記石材を回動装置に設けられた筒体内へ投入し、該筒体を回転駆動することによって、前記ボラ土又は/及び前記石材を構成する複数の粒の角を除去する丸目処理を行うことを特徴とする。
【0042】
本発明の人工芝生用充填材の製造方法にあっては、ボラ土又は/及びボラ土と同じ物性を有する石材を篩分けして所定値を超える粒径の粒を除去し、所定値以下のボラ土又は/及び前記石材をロータリーキルンといった回動装置に設けられた筒体内へ投入するため、丸目処理を効率的に行うことができる。
【0043】
ここで、篩分けする篩の目は6mm〜10mm程度に設定する。篩の目が6mm〜10mm程度を超える場合、得られる充填材の粒径が大き過ぎるため、人工芝生内への充填材としては不適当である。また、後工程である丸目処理に長時間を要し、所要の処理効率を得ることができない。これに対して、篩の目を6mm〜10mm程度に設定した場合、適当な粒径の充填材を得ることができるため、人工芝生内への充填を円滑に行うことができ、また競技にも影響を及ぼさない。
【0044】
そして、前記筒体を回転駆動することによって、前記ボラ土又は/及び前記石材を構成する複数の粒の角を除去する丸目処理を行う。筒体の回転にともなってそこに投入されたボラ土又は/及び前記石材は互いに衝突し、また筒体の内壁に衝突して、各粒の角が徐々に除去されて丸くなっていく。このように回動装置を用いることによって、比較的大量の丸目処理を短時間で均一に実施することができる。
【0045】
本発明に係る人工芝生用充填材の製造方法は、前記丸目処理は適宜温度まで加熱しながら実施することを特徴とする。
【0046】
本発明の人工芝生用充填材の製造方法にあっては、丸目処理は適宜温度まで加熱しながら実施するため、ボラ土又は/及び前記石材を乾燥させることができ、これによって丸目処理の効果がより奏される。
【0047】
本発明に係る人工芝生用充填材は、シート状の基材に複数のパイルを植設してなる人工芝生の前記各パイルの間に充填する充填材であって、ボラ土又は/及びボラ土と同じ物性を有する石材を篩分けして所定値を超える粒径の粒を除去し、得られた前記所定値以下のボラ土又は/及び前記石材を構成する複数の粒の角を除去する丸目処理を行い、丸目処理されたボラ土又は/及び前記石材を篩分けして所定値未満の粒径の粒を除去してなることを特徴とする。
【0048】
本発明の人工芝生用充填材にあっては、ボラ土又は/及びボラ土と同じ物性を有する石材を篩分けして所定値を超える粒径の粒を除去し、前記所定値以下のボラ土又は/及び前記石材を構成する複数の粒の角を除去する丸目処理を行い、丸目処理されたボラ土又は/及び前記石材を篩分けして所定値未満の粒径の粒を除去してなるため、全ての粒の角が略均一に除去されており、更に各粒の粒径が揃っている。従って、充填材の相隣る粒の間隙が可及的に大きく、優れた衝撃吸収性を奏する。
【0049】
ここで、所定値未満の粒径の粒を除去すべく、篩分けする篩の目は0.6mm程度に設定する。篩の目が0.6mm程度未満の場合、得られる充填材に過小な粒径の粒が多く混入するため、充填作業又は競技中に埃が立つ虞があるのに加え、衝撃吸収性が低下する。これに対して、篩の目を0.6mm程度に設定した場合、前述した如く優れた衝撃吸収性を奏するのに加え、各粒内に吸収される水を適宜量確保することができるため、長時間に亘って水を徐放することができる。