特許第6076622号(P6076622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076622
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】抽出装置及び混合抽出液製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/00 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   A47J31/00 307
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-125140(P2012-125140)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-248166(P2013-248166A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 利也
【審査官】 田中 侑以
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−016969(JP,A)
【文献】 特開平08−112205(JP,A)
【文献】 特開2009−167176(JP,A)
【文献】 特開2011−093870(JP,A)
【文献】 特開平07−115906(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料から抽出液を抽出する抽出部と、
前記抽出液を搬送するための配管と、
搬送された抽出液が混合されてなる混合抽出液を貯蔵する貯蔵部と、
前記配管内を流れる抽出液の流速を制御する制御部と、
前記配管内に設けられ、前記制御部により流速が制御された抽出液中の可溶性固形分量を導出する可溶性固形分量導出部又は前記制御部により流速が制御された抽出液中の可溶性固形分量と相関関係のある相関関係値を導出する相関関係値導出部と、
前記可溶性固形分量又は前記相関関係値に基づいて、抽出液の抽出条件又は抽出液の搬送条件を変更する条件変更部と、を備え、
前記可溶性固形分量導出部は、
前記可溶性固形分量導出部を流れる抽出液の流量を単位時間毎に測定する流速測定部と、
前記可溶性固形分量導出部を流れる抽出液中の可溶性固形分濃度を単位時間毎に測定する可溶性固形分濃度測定部と、
前記流速及び前記可溶性固形分濃度を含むデータに基づいて、前記可溶性固形分量導出部を流れる抽出液に含まれる可溶性固形分量を単位時間毎に算出するか、又は前記可溶性固形分量導出部を流れる抽出液に含まれる可溶性固形分量と相関関係のある相関関係値を単位時間毎に算出する演算部と、を有する、抽出装置。
【請求項2】
前記可溶性固形分量導出部を単位時間当たりに流れる可溶性固形分量を足し合わせた合計、又は前記可溶性固形分量導出部を単位時間当たりに流れる可溶性固形分量と相関関係のある値を足し合わせた合計が、所定の値を超えたときに、抽出液の抽出条件又は抽出液の搬送条件を変更する製造条件変更部をさらに備える請求項1に記載の抽出装置。
【請求項3】
原料から抽出液を抽出する抽出部と、
前記抽出液を搬送するための配管と、
搬送された抽出液が混合されてなる混合抽出液を貯蔵する貯蔵部と、
前記配管内を流れる抽出液の流速を制御する制御部と、
前記配管内に設けられ、前記制御部により流速が制御された抽出液中の可溶性固形分量を導出する可溶性固形分量導出部又は前記制御部により流速が制御された抽出液中の可溶性固形分量と相関関係のある相関関係値を導出する相関関係値導出部と、
前記可溶性固形分量又は前記相関関係値に基づいて、抽出液の抽出条件又は抽出液の搬送条件を変更する条件変更部と、
前記配管の途中に設けられ、前記抽出部で抽出された抽出液を一時的に受ける抽出液受け部と、
前記抽出液受け部よりも下流側の前記配管の途中に設けられ、前記抽出液に含まれる不溶性固形分を除去する不溶性固形分除去部と、を備え、
前記可溶性固形分量導出部又は前記相関関係値導出部は、前記抽出液受け部よりも上流側に設けられ、
前記可溶性固形分量導出部は、
前記可溶性固形分量導出部を流れる抽出液の流量を単位時間毎に測定する流速測定部と、
前記可溶性固形分量導出部を流れる抽出液中の可溶性固形分濃度を単位時間毎に測定する可溶性固形分濃度測定部と、
前記流速及び前記可溶性固形分濃度を含むデータに基づいて、前記可溶性固形分量導出部を流れる抽出液に含まれる可溶性固形分量を単位時間毎に算出するか、又は前記可溶性固形分量導出部を流れる抽出液に含まれる可溶性固形分量と相関関係のある相関関係値を単位時間毎に算出する演算部と、を有する、抽出装置。
【請求項4】
原料から抽出液を抽出する抽出部と、
前記抽出液を搬送するための配管と、
搬送された抽出液が混合されてなる混合抽出液を貯蔵する貯蔵部と、
前記配管内を流れる抽出液の流速を制御する制御部と、
前記配管内に設けられ、前記制御部により流速が制御された抽出液中の可溶性固形分量を導出する可溶性固形分量導出部又は前記制御部により流速が制御された抽出液中の可溶性固形分量と相関関係のある相関関係値を導出する相関関係値導出部と、
前記可溶性固形分量又は前記相関関係値に基づいて、抽出液の抽出条件又は抽出液の搬送条件を変更する条件変更部と、
前記抽出液に含まれる不溶性固形分を除去する不溶性固形分除去部とを備え、
前記可溶性固形分量導出部又は前記相関関係値導出部は、前記不溶性固形分除去部よりも下流側に設けられる、抽出装置。
【請求項5】
原料から抽出液を抽出する抽出部と、
前記抽出液を搬送するための配管と、
搬送された抽出液が混合されてなる混合抽出液を貯蔵する貯蔵部と、
前記配管内を流れる抽出液の流速を制御する制御部と、
前記配管内に設けられ、前記制御部により流速が制御された抽出液中の可溶性固形分量を導出する可溶性固形分量導出部又は前記制御部により流速が制御された抽出液中の可溶性固形分量と相関関係のある相関関係値を導出する相関関係値導出部と、
前記可溶性固形分量又は前記相関関係値に基づいて、抽出液の抽出条件又は抽出液の搬送条件を変更する条件変更部と、
前記抽出液に含まれる不溶性固形分を除去する不溶性固形分除去部とを備え、
前記不溶性固形分除去部は遠心分離機であり、
前記可溶性固形分量導出部又は前記相関関係値導出部は、前記不溶性固形分除去部よりも上流側に設けられ
前記不溶性固形分除去部は、前記貯蔵部よりも上流側に設けられる、抽出装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか記載の抽出装置を用いて、原料から抽出液を抽出し、抽出液を混合してなる混合抽出液を製造する混合抽出液製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽出装置及び当該抽出装置を用いて混合抽出液を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー豆や茶葉等の原料から抽出された抽出液を混合してなる混合抽出液は、コーヒー飲料や茶飲料等の飲料、コーヒーゼリー等の食品を製造する際に使用される。
【0003】
上記混合抽出液の品質は、原料から溶け出る可溶性固形分の種類や、混合抽出液中のこれらの濃度等に依存する。このため、混合抽出液の品質を高めて、品質を安定させるためには、原料から抽出液を抽出する際の抽出条件等を検討して、混合抽出液に含まれる可溶性固形分の種類や濃度を調整する必要がある。
【0004】
現在、混合抽出液の品質管理は、混合抽出液に含まれる可溶性固形分量を確認する方法で行っている。
【0005】
特許文献1には、抽出液に含まれる可溶性固形分量を経時的に確認する方法として、固形分の重量(kg)/コーヒー抽出液全体の体積(L)の計測及び固形分の重量(kg)/コーヒー抽出液全体の重量(kg)の計測の何れか一方を行うと共に、コーヒー抽出液全体の流量(L/h)の計測を行って、固形分流量(kg/h)の算出を行なうようにしたことを特徴とする、コーヒー抽出工程における固形分流量の計測方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−16969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の計測方法によれば、抽出装置内での抽出挙動を経時的に確認することができる。しかし、確認される抽出挙動の正確性が充分ではない。
【0008】
本発明の目的は、従来の方法よりも正確に抽出装置内での抽出挙動を把握でき、且つ抽出液の品質管理を容易に行える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、抽出装置において、抽出液の固形分量を導出する部位を流れる抽出液の流速のバラつきを抑えることで、より正確に抽出装置内での抽出挙動を把握できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) 原料から抽出液を抽出する抽出部と、
前記抽出液を搬送するための配管と、
搬送された抽出液が混合されてなる混合抽出液を貯蔵する貯蔵部と、
前記配管内を流れる抽出液の流速を制御する制御部と、
前記配管内に設けられ、前記制御部により流速が制御された抽出液中の可溶性固形分量を導出する可溶性固形分量導出部又は前記制御部により流速が制御された抽出液中の可溶性固形分量と相関関係のある相関関係値を導出する相関関係値導出部と、
前記可溶性固形分量又は前記相関関係値に基づいて、抽出液の抽出条件又は抽出液の搬送条件を変更する条件変更部と、を備える抽出装置。
【0011】
(2) 前記配管の途中に設けられ、前記抽出部で抽出された抽出液を一時的に受ける抽出液受け部と、
前記抽出液受け部よりも下流側の前記配管の途中に設けられ、前記抽出液に含まれる不溶性固形分を除去する不溶性固形分除去部と、をさらに備え、
前記可溶性固形分量導出部又は前記相関関係値導出部は、前記抽出液受け部よりも上流側に設けられる(1)に記載の抽出装置。
【0012】
(3) 前記抽出液に含まれる不溶性固形分を除去する不溶性固形分除去部をさらに備え、
前記可溶性固形分量導出部又は前記相関関係値導出部は、前記不溶性固形分除去部よりも下流側に設けられる(1)又は(2)に記載の抽出装置。
【0013】
(4) 前記可溶性固形分量導出部は、
前記可溶性固形分量導出部を流れる抽出液の流量を単位時間毎に測定する流速測定部と、
前記可溶性固形分量導出部を流れる抽出液中の可溶性固形分濃度を単位時間毎に測定する可溶性固形分濃度測定部と、
前記流速及び前記可溶性固形分濃度を含むデータに基づいて、前記可溶性固形分量導出部を流れる抽出液に含まれる可溶性固形分量を単位時間毎に算出するか、又は前記可溶性固形分量導出部を流れる抽出液に含まれる可溶性固形分量と相関関係のある相関関係値を単位時間毎に算出する演算部と、を有する(1)から(3)のいずれか記載の抽出装置。
【0014】
(5) 前記可溶性固形分量導出部を単位時間当たりに流れる可溶性固形分量を足し合わせた合計、又は前記可溶性固形分量導出部を単位時間当たりに流れる可溶性固形分量と相関関係のある値を足し合わせた合計が、所定の値を超えたときに、抽出液の抽出条件又は抽出液の搬送条件を変更する製造条件変更部をさらに備える(4)に記載の抽出装置。
【0015】
(6) (1)から(5)のいずれか記載の抽出装置を用いて、原料から抽出液を抽出し、抽出液を混合してなる混合抽出液を製造する混合抽出液製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の抽出装置によれば、従来の方法よりも正確に抽出機内での抽出挙動を把握でき、且つ抽出液の品質を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は第一実施形態の抽出装置のブロック図である。
図2図2は第一実施形態の抽出装置の使用方法を説明するためのフローチャートである。
図3図3は第二実施形態の抽出装置のブロック図である。
図4図4は第二実施形態の抽出装置の使用方法を説明するためのフローチャートである。
図5図5は第三実施形態の抽出装置のブロック図である。
図6図6は第三実施形態の抽出装置の使用方法を説明するためのフローチャートである。
図7図7は第四実施形態の抽出装置のブロック図である。
図8図8は第四実施形態の抽出装置の使用方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0019】
<第一実施形態>
図1は第一実施形態の抽出装置のブロック図である。図2は第一実施形態の抽出装置の使用方法を説明するためのフローチャートである。
【0020】
図1に示す通り、第一実施形態の抽出装置1は、原料から抽出液を抽出するための抽出部11と、抽出部11で抽出された抽出液を搬送するための配管12と、配管12の途中に設けられ抽出部11で抽出された抽出液を一時的に受ける抽出液受け部13と、抽出液受け部13よりも下流側の配管12内に設けられ流れる抽出液の流速を制御する制御部14と、配管12内に設けられ制御部14により流速が制御された抽出液中の可溶性固形分量を導出する可溶性固形分量導出部15と、可溶性固形分量に基づいて、抽出液の抽出条件又は抽出液の搬送条件を変更する条件変更部16と、制御部14及び可溶性固形分量導出部15よりも下流側の配管12の途中に設けられ、抽出液に含まれる不溶性固形分を除去する不溶性固形分除去部17と、配管12内を搬送された抽出液が混合されてなる混合抽出液を貯蔵するための貯蔵部18とを備える。
【0021】
抽出部11は、原料から抽出液を抽出する。本実施形態の抽出部11は、その内部に所定量の原料が配置される原料配置部、原料を浸漬するための湯を抽出部11内部に供給する湯供給部、湯供給部から供給される湯の温度を測定するための湯温度測定部、湯温度測定部が測定した湯の温度と予め設定された所望の温度とに基づいて抽出部11内部に供給する湯の温度調整を行う湯温度調整部、湯供給部から抽出部11内部に供給される湯の量を調整する湯量調整部、抽出部11と配管12の連結部付近に設けられ、比較的大きい不溶性固形分が配管12に入らないように抽出液を濾過する濾過部を備える。
【0022】
抽出部11の原料配置部に配置される原料の種類は特に限定されず、可溶性固形分を含むものであればよい。可溶性固形分を含む原料としては、コーヒー豆、茶葉等が挙げられる。また、原料の形状も特に限定されず、例えば、粉砕されたコーヒー豆や、粉砕された茶葉等が一般的に使用される。
【0023】
配管12は、抽出部11で原料から抽出された抽出液を貯蔵部18まで搬送するための管である。
【0024】
本実施形態では、配管12の途中には、抽出部11で抽出された抽出液を一時的に貯める抽出液受け部13が設けられる。抽出液受け部13は所定の容量を有し、その内部に抽出液を貯められるようになっている。
【0025】
本実施形態では、配管12の途中であって、抽出液受け部13よりも下流側に、配管12を流れる抽出液全体の流速を制御する制御部14が設けられる。例えば、ポンプやバッファタンクを制御部14として用いることができる。
【0026】
本実施形態では制御部14は制御部14よりも下流側の抽出液の流速を制御する。制御部14が配置される位置によっては、配管12を流れる抽出液全体の流速を制御する場合もあり、また、配管12を流れる抽出液の一部の流速を制御する場合もある。
【0027】
本実施形態では、配管12の途中であって、制御部14よりも下流側に、可溶性固形分量導出部15が設けられる。可溶性固形分量導出部15は、配管12を流れる抽出液であって、制御部14で流速が制御された抽出液の可溶性固形分量を導出する。
【0028】
また、本実施形態の制御部14は、配管12における可溶性固形分量導出部15に当たる部分を流れる抽出液が配管12を充満して流れるような制御も行う。例えば、重力がかかる方向と逆方向の成分を有する方向に流れる抽出液を、ポンプ等で押し出して流速を調整する制御方法が挙げられる。
【0029】
本実施形態の可溶性固形分量導出部15は、可溶性固形分量導出部15を流れる抽出液の流量を単位時間毎に測定する流速測定部と、可溶性固形分量導出部15を流れる抽出液中の可溶性固形分濃度を単位時間毎に測定する可溶性固形分濃度測定部と、流速測定部での測定結果及び可溶性固形分濃度測定部での測定結果に基づいて単位時間毎に抽出液中の可溶性固形分を算出する算出部を備える。
【0030】
流速測定部には例えば、従来公知の流量計を用いることができる。また、可溶性固形分量導出部15には例えば、従来公知のブリックス計を用いることができる。ブリックス計は抽出液の屈折率を計測し、その抽出液の温度に基づいて屈折率を補正した後、温度補正した屈折率を、屈折率と可溶性固形分濃度との関係を表す基準とを比較して、抽出液の可溶性固形分濃度を決定する装置である。
【0031】
算出部は、単位時間毎に、流速測定部で測定された流速と、可溶性固形分濃度導出部で導出された可溶性固形分濃度とから、単位時間毎に可溶性固形分量導出部15を流れる抽出液中の可溶性固形分量を算出する。例えば、算出部として一般的なコンピュータを用い、流速や可溶性固形分濃度の測定結果を、流速測定部や可溶性固形分濃度導出部から上記コンピュータに送信できるようにすることで、上記コンピュータは上記可溶性固形分量を算出できる。
【0032】
この算出部での算出結果は条件変更部16に送られる。条件変更部16は、単位時間毎の可溶性固形分量の積算値が閾値を超えたときに、抽出液の抽出条件又は抽出液の搬送条件を変更する。本実施形態の条件変更部16は、条件を変更する閾値を記憶する閾値記憶部と、上記積算値が上記閾値を超えた場合に変更する変更後の条件を記憶する変更後条件記憶部とを有し、条件変更する場合、条件変更部16は、抽出装置1に設定される条件を変更したり、抽出液の抽出方法や搬送方法を変更したりする。
【0033】
本実施形態では、配管12の途中であって、制御部14や可溶性固形分量導出部15の下流側に、不溶性固形分除去部17が設けられる。例えば、遠心分離機を不溶性固形分除去部17として用いることができる。
【0034】
貯蔵部18は内部に所定の容量を有する。この内部に配管12から抽出液が流入して、混合抽出液が貯蔵される。
【0035】
第一実施形態の抽出装置1の使用方法について図2のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
先ず、抽出部11で抽出を行う際の抽出条件を設定する抽出条件設定ステップ(S1)を行う。例えば、原料の量、抽出に用いる湯の温度(抽出温度)、抽出時間等を設定する。なお、ここで設定する条件は、混合抽出液の嗜好性等を考慮して予め決められたものである。
【0037】
次いで、原料から抽出液を抽出する抽出ステップ(S2)を行う。例えば、予め湯温度調整部で温度調整した湯を、原料配置部に配置された原料に向けて湯供給部から供給して原料と湯を接触させることで、原料から抽出液を抽出する。このとき、湯の温度調整は湯温度調整部で行い、供給される湯の量は湯量調整部で調整する。原料が湯に浸漬することで、原料から可溶性固形分が湯に溶け出て、湯は抽出液になる。
【0038】
抽出液は、濾過部を通って、配管12に流れ込む。この抽出液は抽出液受け部13で一旦貯められる。図2にはこの工程を抽出液一時保持ステップ(S3)として示した。抽出液を抽出液受け部13で一時的に保持している間も、抽出部11では抽出ステップ(S1)を行い続ける。
【0039】
抽出液受け部13から排出された抽出液は、制御部14によって流速が調整される。流速が調整された抽出液は、可溶性固形分量導出部15を通る。
【0040】
抽出液が可溶性固形分量導出部15を通ってからは抽出ステップ(S2)を行いつつ、可溶性固形分量導出部15を通る抽出液の可溶性固形分量を単位時間毎に導出する可溶性固形分量導出ステップ(S4)を行う。
【0041】
本実施形態では、抽出液の流速が流速測定部によって測定され、可溶性固形分濃度が可溶性固形分濃度測定部によって測定され、これらの測定結果が算出部に送られ、算出部で、単位時間毎の抽出液中の可溶性固形分量が算出される。この算出結果は条件変更部16に送られる。
【0042】
可溶性固形分量導出ステップ(S4)により、2つ単位時間での可溶性固形分量が導出されてからは、抽出ステップ(S2)〜可溶性固形分量導出ステップ(S4)を行いつつ、条件変更部16により、条件を変更すべきか否かを確認する条件変更確認ステップ(S5)を行う。
【0043】
本実施形態では、条件変更部16において、単位時間毎の可溶性固形分量を足し合わせた合計と、閾値記憶部に記憶された閾値とを比較する。上記合計が閾値を超えたときに、抽出液の抽出条件又は抽出液の搬送条件を、変更後条件記憶部に記憶された条件に変更する条件変更ステップ(S6)を行う。
【0044】
例えば、コーヒーや茶の抽出においては、抽出開始からの可溶性固形分量の合計が所定の量を超えると、コーヒーや茶の品質を低下させる場合が多いため、可溶性固形分量が所定の閾値を超えたときに、抽出部11から配管12に抽出液が流れ込むのを止める変更が挙げられる。また、流れを止めた後に、配管12に残る抽出液を貯蔵部18に流し込む目的で、配管12の途中から水や湯を供給してもよい。
【0045】
条件変更の他の例としては、抽出される可溶性固形分量の抽出開始からの積算値を基準として、抽出部11での湯の温度、湯の量等を変更したり、制御部14に流れ込む抽出液の量を調整したりしてもよい。
【0046】
可溶性固形分量導出部15を通った抽出液が、不溶性固形分除去部17を通ることで、抽出液から不溶性固形分が除去される。図2には、この工程を不溶性固形分除去ステップ(S7)として示した。
【0047】
不溶性固形分が取り除かれた抽出液は貯蔵部18に入り込む。貯蔵部18に入り込んだ抽出液は、それ以前に貯蔵部18に流入した抽出液と混ざり合って混合抽出液になる。図2には、この工程を混合抽出液取得ステップ(S8)として示した。
【0048】
本実施形態の効果について説明する。
第一実施形態の抽出装置1では、制御部14で流速が制御された抽出液が、可溶性固形分量導出部15に入り込み、流れる抽出液に含まれる可溶性固形分量を単位時間毎に導出する。流速が制御されず、可溶性固形分量導出部15に入り込む抽出液の流速が大きく変動すると、配管12を流れる抽出液の可溶性固形分量の導出結果が不正確になりやすいが、本実施形態のように、流速が制御された抽出液が可溶性固形分量導出部15を通るようにしておけば、より正確に、流れる抽出液の可溶性固形分量を導出できる。このように抽出装置内での抽出挙動を的確に把握できる結果、貯蔵部18に貯められる混合抽出液の品質管理も容易になる。
【0049】
特に、可溶性固形分量導出部15が、流量計、ブリックス計を有し、これらを用いて可溶性固形分量導出部15を流れる抽出液の可溶性固形分量を単位時間毎に導出する場合、流量計やブリックス計で測定される結果は流速の影響を受けやすい。本実施形態の抽出装置1であれば、流速が制御された抽出液が可溶性固形分量導出部15を流れるため、ブリックス計や流量計を用いる場合であっても、可溶性固形分量をより正確に導出することができる。
【0050】
また、流量計やブリックス計を用いる場合には、流れる抽出液に含まれる気泡等も測定結果に影響を与えてしまう。本実施形態の抽出装置1が有する制御部14は、配管12における可溶性固形分量導出部15に当たる部分を流れる抽出液が配管12を充満して流れるような制御も行うため、流量計やブリックス計を用いる場合であっても、測定結果の誤差が小さくなる。
【0051】
また、本実施形態の抽出装置1によれば、可溶性固形分量導出部15は、不溶性固形分除去部17よりも上流側に設けられる。不溶性固形分除去部17が遠心分離機等の場合には、不溶性固形分除去部17より下流側を流れる抽出液の水圧に大きな変化を与える。仮に不溶性固形分除去部17よりも下流に可溶性固形分量導出部15が配置されると、この水圧の変化は、可溶性固形分量導出部15が導出する可溶性固形分量がばらつく原因になり得る。本実施形態においては、可溶性固形分量導出部15は、不溶性固形分除去部17よりも上流側に設けられるため、不溶性固形分除去部17が遠心分離機等であっても、可溶性固形分量導出部15はその影響をほとんど受けることがない。ただし、制御部14がバッファタンクを有する等の場合には、水圧の変化を抑えて、抽出液の流速をコントロールできるため、可溶性固形分量導出部15が、不溶性固形分除去部17より下流側に設けられても上記問題がほとんど生じない。
【0052】
<第二実施形態>
本発明の抽出装置の第二実施形態について、図3を用いて説明する。図3は第二実施形態の抽出装置のブロック図である。なお、第二実施形態以降の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0053】
第二実施形態の抽出装置1Aは、可溶性固形分量導出部15に代えて、制御部により流速が制御された抽出液中の可溶性固形分量と相関関係のある相関関係値を導出する相関関係値導出部19Aを備える構成、条件変更部16Aが相関関係値導出部19Aの導出した結果に基づいて条件変更を行う構成において第一実施形態の抽出装置1と異なる。
【0054】
本実施形態において、相関関係値導出部19Aは、相関関係値導出部19Aを流れる抽出液の流量を単位時間毎に測定する流速測定部と、相関関係値導出部19Aを流れる抽出液中の可溶性固形分濃度を単位時間毎に測定する可溶性固形分濃度測定部と、抽出部11Aで行う抽出の条件である抽出温度、抽出時間、原料の質量等の条件を記憶する条件記憶部と、流速測定部で測定された流速、可溶性固形分濃度測定部で測定された可溶性固形分濃度、条件記憶部に記憶された条件に基づいて、流速及び可溶性固形分濃度から算出される単位時間毎の可溶性固形分量と相関関係のある相関関係値を、単位時間毎に算出する算出部とを備える。
【0055】
流速測定部と可溶性固形分濃度測定部は、それぞれ第一実施形態の流速測定部、可溶性固形分濃度測定部と同様であるため説明を省略する。
【0056】
相関関係値導出部19Aが備える算出部は、単位時間毎の可溶性固形分量ではなく、単位時間毎の可溶性固形分量と相関関係のある値を導出する点において、第一実施形態の抽出装置1の備える算出部と異なる。本実施形態の算出部は、単位時間毎の可溶性固形分量を、原料の質量等の既知の条件で割る等して算出される相関関係値を算出する。なお、相関関係値とは、言い換えれば、単位時間毎の可溶性固形分量に、抽出温度等の所定の条件を表す定数を掛ける、割る、足す、引く等して算出される値である。
【0057】
条件変更部16Aは、単位時間毎の相関関係値を足し合わせた合計が閾値を超えたときに、抽出液の抽出条件又は抽出液の搬送条件を変更する。変更する条件の種類は第一実施形態と同様である。
【0058】
第二実施形態の抽出装置1Aは、相関関係値導出部19Aが相関関係値を導出するため、条件変更部16Aに記憶させる閾値が相関関係値の閾値であり、この閾値に対応した変更後の条件を条件変更部16Aに記憶させておく以外は、第一実施形態の条件変更部16と同様である。
【0059】
第二実施形態の抽出装置1Aの使用方法を図7のフローチャートを用いて説明する。抽出条件設定ステップ(S1A)、抽出ステップ(S2A)、抽出液一時保持ステップ(S3A)、不溶性固形分除去ステップ(S7A)、混合抽出液取得ステップ(S8A)は、第一実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0060】
第二実施形態の抽出装置1Aを使用する場合には、第一実施形態の可溶性固形分量導出ステップ(S3)に代えて、相関関係値導出ステップ(S9A)を行う。
【0061】
相関関係値導出ステップ(S9A)は、相関関係値導出部19Aを抽出液が通り始めてから行われる。本実施形態では、相関関係値導出部19Aを通る抽出液の単位時間毎の流速を流速測定部で測定し、可溶性固形分濃度を可溶性固形分濃度測定部で測定し、これを所定の条件(抽出温度等)を表す定数で割る等して、相関関係値を導出する。
【0062】
相関関係値導出ステップ(S9A)により、2つ単位時間での相関関係値が導出されてからは、抽出ステップ(S2A)及び相関関係値導出ステップ(S9A)を行いつつ、条件変更部16Aにより条件を変更すべきか否かを確認する条件変更確認ステップ(S5A)を行う。本実施形態の条件変更確認ステップ(S5A)は、条件変更部16Aで、単位時間毎の相関関係値を足し合わせた合計と、条件変更部16Aに記憶された閾値とを比較する。
【0063】
上記合計が閾値を超えたときに、抽出液の抽出条件又は抽出液の搬送条件を、変更後条件記憶部に記憶された条件に変更する条件変更ステップ(S6A)を行う。
【0064】
第二実施形態の抽出装置1Aは、第一実施形態の抽出装置1と同様の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
【0065】
第二実施形態では、単位時間毎に測定された上記相関関係値の合計を基準として、抽出液の抽出条件又は抽出液の搬送条件を変更できる。原料の種類によっては、可溶性固形分量ではなく、抽出倍率(単位原料当たりの可溶性固形分の抽出量=可溶性固形分量/原料の質量)等を用いる場合がある。本実施形態によれば、原料の種類等に応じて適切なパラメータを設定することができる。
【0066】
<第三実施形態>
本発明の抽出装置の第三実施形態について、図5を用いて説明する。図5は第三実施形態の抽出装置のブロック図である。
【0067】
第三実施形態の抽出装置1Bは、制御部14B及び可溶性固形分量導出部15Bが、不溶性固形分除去部17Bより下流側に設けられる構成において第一実施形態の抽出装置1と異なる。
【0068】
制御部14B及び可溶性固形分量導出部15Bが、不溶性固形分除去部17Bより下流側に設けられるため、可溶性固形分量の導出対象は、不溶性固形分が取り除かれた後の、配管12を流れる抽出液になる。
【0069】
本実施形態の使用方法を、図6に示すフローチャートを用いて説明する。抽出液一時保持ステップ(S3B)の直後に不溶性固形分除去ステップ(S7B)を行い、不溶性固形分が除去された抽出液に対して可溶性固形分量導出ステップ(S4B)を行う点で第一実施形態と異なるが、各ステップは、第一実施形態と同様の方法で行われる。
【0070】
第三実施形態の抽出装置1Bは第一実施形態の抽出装置の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
【0071】
本実施形態では、不溶性固形分が除去された抽出液の可溶性固形分量を導出する。通常、不溶性固形分とは粉砕されたコーヒー、茶等の原料のうち細かい粒径を有するものである。この不溶性固形分の内部には微量であっても可溶性固形分が含まれる。このため、配管12Bを流れる抽出液に、この不溶性固形分から可溶性固形分が溶け出る場合がある。このため、貯蔵部18Bに貯められる混合抽出液の品質をより正確に管理する場合には、本実施形態のように、不溶性固形分が除去された抽出液に含まれる可溶性固形分量を管理すればよい。
【0072】
<第四実施形態>
本発明の抽出装置の第四実施形態について、図7を用いて説明する。図7は第四実施形態の抽出装置のブロック図である。
【0073】
第四実施形態の抽出装置1Cは、制御部14C及び可溶性固形分量導出部15Cが、抽出液受け部13Cより上流側に設けられる構成において第一実施形態の抽出装置1と異なる。
【0074】
制御部14C及び可溶性固形分量導出部15Cが、抽出液受け部13Cより上流側に設けられるため、可溶性固形分量の導出対象は、抽出部11Cで抽出された直後の、配管12を流れる抽出液になる。
【0075】
本実施形態の使用方法を、図8に示すフローチャートを用いて説明する。抽出ステップ(S1C)で抽出されて直ぐの抽出液に対して可溶性固形分量導出ステップ(S4C)を行う点で第一実施形態と異なるが、各ステップは、第一実施形態と同様の方法で行われる。
【0076】
第四実施形態の抽出装置1Cは第一実施形態の抽出装置の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
【0077】
第四実施形態では、可溶性固形分量導出部15Cが抽出部11Cで抽出されて直ぐの抽出液に含まれる可溶性固形分量を導出する。抽出液受け部13C内では、初期に抽出された抽出液とその後抽出された抽出液とが混ざって存在するため、抽出液受け部13Cから排出された抽出液の可溶性固形分量の経時変化は、抽出部11Cで抽出される抽出液に含まれる可溶性固形分量の経時変化からずれるが、本実施形態のように、抽出液受け部13Cに抽出液が入る前に、抽出液の可溶性固形分量を導出すれば、この可溶性固形分量の経時変化は、抽出部11Cで抽出される抽出液に含まれる可溶性固形分量の経時変化をより正確に表す。このため、抽出部11で抽出される抽出液の管理を適切且つ容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0078】
1 抽出装置
11 抽出部
12 配管
13 抽出液受け部
14 制御部
15 可溶性固形分量導出部
16 条件変更部
17 不溶性固形分除去部
18 貯蔵部
19 相関関係値導出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8