特許第6076646号(P6076646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小森コーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許6076646-印刷機のインキ供給装置 図000002
  • 特許6076646-印刷機のインキ供給装置 図000003
  • 特許6076646-印刷機のインキ供給装置 図000004
  • 特許6076646-印刷機のインキ供給装置 図000005
  • 特許6076646-印刷機のインキ供給装置 図000006
  • 特許6076646-印刷機のインキ供給装置 図000007
  • 特許6076646-印刷機のインキ供給装置 図000008
  • 特許6076646-印刷機のインキ供給装置 図000009
  • 特許6076646-印刷機のインキ供給装置 図000010
  • 特許6076646-印刷機のインキ供給装置 図000011
  • 特許6076646-印刷機のインキ供給装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076646
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】印刷機のインキ供給装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 31/04 20060101AFI20170130BHJP
   B41F 13/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   B41F31/04
   B41F13/00 614
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-176809(P2012-176809)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2013-56534(P2013-56534A)
(43)【公開日】2013年3月28日
【審査請求日】2015年7月22日
(31)【優先権主張番号】特願2011-178281(P2011-178281)
(32)【優先日】2011年8月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000184735
【氏名又は名称】株式会社小森コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】竹ノ内 章彦
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−059259(JP,A)
【文献】 特開平09−309199(JP,A)
【文献】 特開平09−039207(JP,A)
【文献】 実開昭61−068408(JP,U)
【文献】 特開2000−127600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 31/04
B41F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に支持されたインキ壺ローラと、前記インキ壺ローラの周面とともにインキを収容する空間を形成するインキ壺本体とを備えたインキ装置が上下方向に複数並べて配置された印刷機のインキ供給装置において、
前記インキ装置は、前記インキ壺本体をスライド自在に支持し、当該インキ壺本体の先端が前記インキ壺ローラの周面に対向して前記空間を形成する第1の位置と、前記先端が前記インキ壺ローラから離反する第2の位置との間で前記インキ壺本体を案内する案内部材を備え、
前記複数のインキ装置は、
前記インキ壺本体の前記第1の位置と前記第2の位置との間をスライドする移動量がそれぞれ異なる
ことを特徴とする印刷機のインキ供給装置。
【請求項2】
前記複数のインキ装置における前記インキ壺本体の第2の位置は、縦方向に並んでいる
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷機のインキ供給装置。
【請求項3】
前記インキ壺本体は、
当該インキ壺本体の下部に、当該インキ壺本体よりも下方に存在する前記インキ装置のインキ壺本体を照らす照明を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷機のインキ供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ壺ローラと当該インキ壺ローラの周面とともにインキを収容する空間を形成するインキ壺本体とを備えたインキ装置が上下方向に複数並べて配置された印刷機のインキ供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転自在に支持されたインキ壺ローラに対して接近離間可能に支持されたインキ壺装置の位置がインキ壺ローラに接近した固定位置と、インキ壺ローラから離間した脱位置と、固定位置と脱位置との間に設けた中間位置との間で切り換えられ、当該脱位置においてインキを洗浄するインキ壺装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−328240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述したインキ装置においては、当該インキ装置が枢軸により揺動自在に支持され、左右フレームの内面に形成された3つの係合溝と選択的に係合することにより、固定位置、脱位置及び中間位置との間で切り換えることが可能である。しかしながら、インキツボ装置が上下方向に変位するだけであるので、例えば凹版胴の周面に沿って縦方向に複数のインキ装置が並べられた凹版印刷機に対してはインキツボ装置の上下方向のスペースが少なく、インキツボの洗浄時における作業者の身体的負担が大きいという問題があった。
【0005】
本発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、作業者の身体的負担が少なくインキ壺本体を洗浄することが可能な印刷機のインキ供給装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明においては、回転自在に支持されたインキ壺ローラと、前記インキ壺ローラの周面とともにインキを収容する空間を形成するインキ壺本体とを備えたインキ装置が上下方向に複数並べて配置された印刷機のインキ供給装置において、前記インキ装置は、前記インキ壺本体をスライド自在に支持し、当該インキ壺本体の先端が前記インキ壺ローラの周面に対向して前記空間を形成する第1の位置と、前記先端が前記インキ壺ローラから離反する第2の位置との間で前記インキ壺本体を案内する案内部材を備え、前記複数のインキ装置は、前記インキ壺本体の前記第1の位置と前記第2の位置との間をスライドする移動量がそれぞれ異なるようにする。
【0007】
また本発明において、前記複数のインキ装置における前記インキ壺本体の第2の位置は、縦方向に並んでいるようにすることができる。
【0008】
さらに本発明において、前記インキ壺本体は、当該インキ壺本体の下部に、当該インキ壺本体よりも下方に存在する前記インキ装置のインキ壺本体を照らす照明を備えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のインキ装置が上下方向に複数並べて配置された構成であっても、一つ或いは複数のインキ壺本体を印刷時における第1の位置から非印刷時における第2の位置へと位置付けることができ、インキ壺本体の上下方向、特に上方向に十分な空間を確保できるので、作業者に身体的負担をかけることなくインキ壺本体を洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】インキ供給装置の全体構成を示す側面図である。
図2】インキ供給装置が印刷時の第1の位置にスライドされた状態を示す上面図、背面図及び側面図である。
図3】インキ供給装置が非印刷時の第2の位置にスライドされた状態を示す上面図、背面図及び側面図である。
図4】保持部材にインキパンが設置されるときの様子を示す側面図である。
図5】保持部材にインキパンが設置された状態を示す背面図である。
図6】保持部材にインキパンが設置されるときの様子を示す上面図である。
図7】インキ供給装置にドクターが設置された状態を示す上面図、背面図及び断面図である。
図8】インキ供給装置に設置されるドクターの構成を示す断面図である。
図9】インキ供給装置にドクターが設置される前のインキ壺ローラを示す側面図である。
図10】インキ供給装置にドクターが設置された後のインキ壺ローラとドクターとの配置状態を示す側面図である。
図11】ドクターにより壺ローラの洗浄処理を行う際のインキ供給部の回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
(1)インキ供給装置の全体構成
図1において、凹版印刷機のインキ供給装置1は、インキ供給システムとしてのインキ供給部2と、当該インキ供給部2から供給されたインキで印刷処理を行う印刷加工部3とによって構成されている。
【0013】
印刷加工部3には、凹版胴8の周面と対接した状態で配置された5個のシャブロン胴(ゴム胴)4が設けられている。
【0014】
インキ供給部2には、5個のシャブロン胴4に対応して5つのインキ装置、すなわち最上段〜4段目までの4個のインキ装置11および最下段(5段目)のインキ装置41が設けられている。
【0015】
インキ供給部2において、上方から下方へ向かって最上段から4段目まで縦方向に所定間隔ごと離れた状態で並べられた4個のインキ装置11は、その構造が基本的に共通しているため、説明の都合上、ここでは2段目のインキ装置11についてのみ、その構成を説明した後、最下段のインキ装置41について説明する。
【0016】
(2)インキ装置の構成
図2および図3に示すように、インキ装置11は、左右両側のフレーム51、52に回転自在に支持されたインキ壺ローラ30と、インキ壺ローラ30に対する遠近方向へ移動自在に支持されたインキ壺本体12と、インキ壺ローラ30とシャブロン胴4とに対接する2つのインキローラ32、33と、インキ壺ローラ30の下方において当該インキ壺ローラ30に対接するインキローラ31を備える。
【0017】
またインキ装置11は、インキ壺本体12を移動自在に支持するとともに、印刷時のインキ壺ローラ30と近接して当該インキ壺ローラ30からインキが引き出される図2(C)の位置(以下、これを第1の位置と呼ぶ。)と、非印刷時のインキ壺ローラ30から離反して当該インキ壺ローラ30との間に空間を形成する図3(C)の位置(以下、これを第2の位置と呼ぶ)との間でインキ壺本体12を案内する案内部材としてのスライドレール11Bが設けられ、スライドレール11Bは左右両側のフレーム51、52にそれぞれ設けられ、インキ壺本体12の左右両側を支持する。
【0018】
インキ装置11には、互いに2個づつ90度傾けられた状態でインキ壺本体12の左右両側に4個のカムフォロワ(コロ)18がそれぞれ設けられ、左右両側にそれぞれ設けられたスライドレール11Bと4個のカムフォロワ(コロ)18とが相互に係合されている。すなわちインキ装置11では、2個のカムフォロワ18がスライドレール11Bの上面に当接され、残り2個のカムフォロワ18が当該スライドレール11Bの側面に当接されている。
【0019】
またインキ壺本体12は、インキ装置11の底面部を形成する上面部においてインキ壺ローラ30の軸方向端部に一対のインキ堰13が立設され、インキ壺本体12の上面部とインキ壺ローラ30の周面および一対のインキ堰13により断面三角形状の収容空間13Aが形成されている。さらにインキ壺本体12は、インキ壺本体12の底面部の先端部にインキ壺ローラ30の周面と対向して隙間調整用のブレード16が取り付けられており、当該ブレード16はインキ壺ローラ30の周面との隙間量を調整できるように移動可能に支持されている。ここでインキ装置11では、インキ壺本体12、インキ堰13、隙間調整用のブレード16およびインキ壺ローラ30によりインキ壺が構成されている。
【0020】
さらにインキ装置11は、インキパン保持部としての保持部材15と、保持部材15に保持されたインキパン14が設けられている。
【0021】
図4図5及び図6に示すように、保持部材15は、インキ壺本体12の下方に断面略L字状に形成され、当該インキ壺本体12に対してネジ15Aにより取り付けられている。保持部材15は、インキ壺本体12の先端部の下方に位置付けられ、インキパン14とほぼ同じ面積を有する底板15Cが設けられ、この底板15Cにインキパン14が載置される。保持部材15の後端(印刷加工部3の反対側)には、インキパン14の挿入および取り出しが可能な大きさに形成された開口15D(図5)が設けられている。
【0022】
また保持部材15の先端(印刷加工部3側)であり底板15Cの先端には、インキパン14の先端部14Bと当接するストッパとしての奥壁15Bが設けられ、さらに開口15D側からのインキパン14の飛び出しを防ぐために当該インキパン14の移動を規制する規制部材としてのロックレバー56が設けられている。
【0023】
このロックレバー56は、開口15Dを開放して当該開口15Dを介するインキパン14の出し入れを可能とする開放位置(図5の2点鎖線の位置)と、当該開口15Dの一部を覆い、インキパン14の出し入れを不能とするロック位置(図5の実線の位置)との間で回動可能に支持されている。インキパン14の後端部には、パンハンドル14Aが設けられている。
【0024】
さらにインキパン14は、インキ壺本体12の第1の位置(図2(C)参照)においてインキ壺本体12の先端部の下方(真下)、さらにはインキローラ31の下方(真下)の位置に保持部材15を介して当該インキ壺本体12と一体となって配設されている。このためインキパン14では、インキ壺本体12の先端部またはインキローラ31から滴下するインキを受けることができる。
【0025】
また、インキ装置11は、インキ壺本体12の先端部の下方(真下)、さらにはインキローラ31の下方(真下)に位置付けられ、インキ供給部2のフレーム51、52(図2図3)に取り付けられた固定パン19B(図1)が設けられ、インキ壺本体12が印刷時における第1の位置(図2)に位置付けられているとき、当該インキ壺本体12と一体化されたインキパン14の下方に固定パン19Bが位置付けられる。すなわち、インキ壺本体12が印刷時における第1の位置(図2)に位置付けられているときには、保持部材15の底板15Cまたはインキパン14と固定パン19Bがインキ壺本体12の先端部の下方(真下)およびインキ壺ローラ30やインキローラ31の下方(真下)に位置付けられる。
【0026】
また、インキ壺本体12が非印刷時における第2の位置(図3)に位置付けられているときには、保持部材15の底板15Cまたはインキパン14がインキ壺本体12の先端部の下方(真下)に位置付けられ、固定パン19Bがインキ壺ローラ30やインキローラ31の下方(真下)に位置付けられ、保持部材15の底板15Cまたはインキパン14と固定パン19Bとがインキ壺本体12の移動方向に連続して並ぶように配設される。すなわち、保持部材15の底板15Cまたはインキパン14と固定パン19Bとが、インキ装置11の下方のインキ壺本体12の先端部からインキ壺ローラ30やインキローラ31までの範囲の下方の空間を覆っているのである。
【0027】
尚、最上段のインキ装置11乃至4段目のインキ装置11(図1)の固定パン19A、19B、19C、19Dは、インキ壺本体12の第2の位置において保持部材15の底板15Cまたはインキパン14と固定パン19A、19B、19C、19Dとが連続して並ぶように、後述するインキ壺本体12のスライド量に応じてそれぞれ異なる大きさに形成されている。
【0028】
ところでインキ供給部2(図1)の最下段に設けられたインキ装置41は、インキ装置11と同様に固定パン19Eが取り付けられているものの、最上段〜4段目までのインキ装置11とは異なり、インキ壺本体12に保持部材15およびインキパン14が取り付けられていない。
【0029】
しかしながら最下段のインキ装置41では、非印刷時における第2の位置(図1図3)において、インキ壺本体12の先端から滴下されるインキを受けることが可能な固定パン44が更に設けられている。すなわちインキ装置41では、当該固定パン44と当該固定パン19Eとが一部重ねられた状態で配置され、インキ壺本体12における第1の位置と第2の位置との間において、固定パン19Eと固定パン44とが連続するように配設されている。
【0030】
さらにインキ装置11及びインキ装置41(図1乃至図5)では、インキ壺本体12の下部に、当該インキ壺本体12の下方を照らす例えばLED(Light Emitting Diode)光源等でなる照明12Bが設けられている。従ってインキ装置11及び41では、照明12Bによってインキ壺本体12の直下に存在するインキ壺本体12および当該インキ壺本体12の周辺を照らすことが可能となっている。
【0031】
(3)インキ装置の配置状態
インキ供給部2(図1)において、上方から下方へ向かって最上段から4段目まで縦方向に所定間隔ごと離れた状態で並べられた4個のインキ装置11は、その構造が基本的に共通している。但し、インキ供給部2において、最上段から4段目までの4個のインキ装置11と最下段のインキ装置41との間で相違する点としては、最上段のインキ装置11のスライドレール11Aと、2段目〜4段目のインキ装置11のスライドレール11Bと、最下段のインキ装置41のスライドレール11Cとのスライド距離がそれぞれ異なっていることである。
【0032】
因みに、2段目〜4段目のインキ装置11では、共通の長さのスライドレール11Bが用いられているため、全て同じスライド距離となっているが、これに限るものではなく、それぞれ異なるスライド距離となっていても良い。
【0033】
具体的に、最上段のインキ装置11は、凹版胴8の円周方向に沿った縦方向に所定間隔だけ離れた状態で並べられた最上段のシャブロン胴4に対応し、スライド距離の最も長いスライドレール11Aによってインキ壺本体12が印刷時における第1の位置と、非印刷時における第2の位置との間で最長の距離をスライドするように支持されている。
【0034】
また、2段目のインキ装置11〜4段目のインキ装置11は、凹版胴8の円周方向に沿って縦方向に並べられた2段目のシャブロン胴4〜4段目のシャブロン胴4にそれぞれ対応し、最上段のインキ装置11におけるスライドレール11Aよりも短いスライドレール11Bによってインキ壺本体12が印刷時における第1の位置と非印刷時における第2の位置との間でそれぞれスライドするように支持されている。
【0035】
この場合、2段目のインキ装置11〜4段目のインキ装置11では、2段目のシャブロン胴4〜4段目のシャブロン胴4が最上段のシャブロン胴4よりも円周方向外方へ突出した位置に配置されている。このため、スライドレール11Aよりも短いスライドレール11Bであっても、非印刷時における第2の位置では、最上段のインキ壺本体12、2段目のインキ壺本体12、3段目のインキ壺本体12及び4段目のインキ壺本体12が縦方向にほぼ一直線に並ぶことになる。
【0036】
但し、最上段のインキ壺本体12、2段目のインキ壺本体12、3段目のインキ壺本体12及び4段目のインキ壺本体12は、非印刷時における第2の位置において、縦方向に完全に一直線に並ぶのではなく、凹版胴8の円周に沿ったひな壇状に配置される。
【0037】
最下段のインキ装置41は、最上段のシャブロン胴4よりも円周方向外方へ突出した位置に配置された最下段のシャブロン胴4に対応している。従って最下段のインキ装置41では、スライドレール11Aよりは短く、スライドレール11Bよりは長いスライドレール11Cによってインキ壺本体12が印刷時における第1の位置と非印刷時における第2の位置との間でスライドするように支持されている。
【0038】
(4)ドクターの構成
さらにインキ装置11(図2図3)の左右両側のスライドレール11Bのインキ壺ローラ30側の端部には、ドクター保持部材70が取り付けられている。
【0039】
図7に示すように、インキ装置11のインキ壺本体12がスライドレール11Bに沿って非印刷時における第2の位置に位置付けられたとき、インキ壺本体12とインキ壺ローラ30との間の空間を利用して、ドクター保持部材70に対してドクター71が取り付け取り外し可能に設置される。ここでは、そのドクター71の構成を、図7に加えて図8乃至図10を用いながら説明する。
【0040】
ドクター71(図7図8)は、インキ壺ローラ30の周面の軸方向長さとほぼ同じ長さを有し、先端がインキ壺ローラ30に当接するドクターブレード74と、インキ壺ローラ30の周面の軸方向長さとほぼ同じ長さを有する略直方体形状でなり、その内部に洗浄液収容空間が形成された受け皿71Aを備える。
【0041】
受け皿71Aの左右外側には、ドクター保持部材70に設置される際に用いられる係合部71Bが設けられており(図7)、係合部71Bとドクター保持部材70とを図示しないボルトで固定することによりドクター71がドクター保持部材70に対して取り付けられる。なお、図9にはドクター保持部材70にドクター71が設置される前の状態が示されており、図10にはドクター保持部材70にドクター71が設置された後の状態が示されている。
【0042】
ドクターブレード74は、樹脂またはプラスチックで形成され、受け皿71Aのインキ壺ローラ30側の側壁上方にネジ75等によって固定されたプレート(例えば薄い金属の板バネ)でなる延設部73の先端に当該ドクターブレード74の基端部が取り付けられている。
【0043】
またドクター71(図8)は、受け皿71Aのインキ壺ローラ30側の側壁下方に固定された支柱76に取り付けられ、当該ドクター71の下方へ延びた第2カバーとしてのカバー77を備えている。
【0044】
カバー77は、インキ装置11側からインキ壺ローラ30および当該インキ壺ローラ30とインキローラ31との対接箇所への異物の侵入を阻止し、インキ壺ローラ30およびインキローラ31を保護する。因みに、カバー77(図7(B))は、その表面に矩形状でなる複数の穴が設けられており、カバー77の外側から当該複数の穴を介してインキ壺ローラ30の状態を外側から作業者が目視確認することが可能となっている。
【0045】
またドクター71が設置されるドクター保持部材70(図9図10)は、スライドレール11Bに回動自在に支持された回動軸81Aに固定され、当該回動軸81Aは一端がエアーシリンダー80のロッド80Eの先端部80Cに回動自在に支持されたアーム81の他端部に固定されている。エアーシリンダ80の基端部80Bは、フレーム51、52に固定された支持板78(図7図9図10)に設けられている軸78Aを介して回動自在に支持されている。ドクター保持部材70、回動軸81A、エアーシリンダ80、アーム81、電磁弁65(後述)によりドクターブレード接離手段が構成されている。
【0046】
なおインキ装置11(図9図10)では、インキ壺ローラ30の上方に当該インキ壺ローラ30やインキローラ31、32、33を洗浄するための溶剤でなる洗浄液を噴射するための洗浄液供給装置としての噴射ノズル82が、当該インキ壺ローラ30およびインキローラ33との対接箇所へ向けられた状態でフレーム51、52に支持されている。これにより噴射ノズル82は、当該噴射ノズル82からの洗浄液をインキ壺ローラ30及びインキローラ33との間に吹き付けるように噴射することが可能となっている。なお、噴射ノズル82および電磁弁64(後述する)により洗浄液供給部が構成されている。また噴射ノズル82の下方には、当該噴射ノズル82から滴下された洗浄液を受ける受け皿86が設けられている。
【0047】
(5)機械内部への侵入阻止構造
次に、インキ供給部2における最上段〜4段目のインキ装置11のインキ壺本体12及び最下段のインキ装置41のインキ壺本体12が非印刷時における第2の位置へ位置付けられた際に、機械内部への異物の侵入を阻止する侵入阻止構造について説明する。
【0048】
ここで2段目のインキ装置11(図9図10)では、インキ壺ローラ30の上方であり、噴射ノズル82と近接した位置で、かつ当該噴射ノズル82よりもインキ壺本体12寄りの位置に、断面略L字状の樹脂等で形成されたインキ壺ローラ30の周面の幅とほぼ同じ幅を有する第1カバーとしてのカバー83がフレーム51、52に取り付けられている。このカバー83は、インキ壺ローラ30の上方から機械内部への異物の侵入を阻止している。
【0049】
そしてインキ供給部2では、ドクター71がドクター保持部材70に取り付けられた際には、当該ドクター71のカバー77の下端部がインキローラ30の周面と近接し、カバー77がインキ壺ローラ30の周面の下側部分かつインキ壺ローラ30とインキローラ31との対接箇所の前面を覆うように位置付けられる。このため、ドクター71のカバー77がインキ壺ローラ30の下側からの当該インキ壺ローラ30、特にインキ壺ローラ30とインキローラ31との対接箇所への異物の侵入を阻止する。さらに、インキ装置11の非印刷時における第2の位置において、保持部材15の底板15Cまたはインキパン14と固定パン19Bとがインキ壺本体12の移動方向に連続して配設され、インキ壺本体12の先端部からインキ壺ローラ30やインキローラ31までの範囲の下方の空間を覆うため、当該インキ装置11の下方からの異物の侵入を阻止している。
【0050】
特に、最上段のインキ装置11〜4段目のインキ装置11においては、ドクター71のカバー77に加えて、インキパン14と固定パン19A〜19Dとが連続して並設された侵入阻止構造により、最上段のインキ装置11〜4段目のインキ装置11では、機械内部への異物の侵入が2重、3重に阻止されている。
【0051】
また、2段目のインキ装置11のカバー83は、その先端部が、最上段のインキ装置11が非印刷時における第2の位置(図1の二点鎖線の位置)に位置付けられているときの最上段の保持部材15およびインキパン14の先端(インキ壺ローラ30側の端部)と近接するように配設されている。従ってカバー83は、2段目のインキ装置11から最上段のインキ装置11へ向かう機械内部への異物の侵入も阻止している。
【0052】
因みに、3段目のインキ装置11及び4段目のインキ装置11においても、2段目のインキ装置11と同様に、カバー83、カバー77、保持部材15およびインキパン14と固定パン19C、19Dにより機械内部への異物の侵入が阻止されている。
【0053】
また、最上段のインキ装置11(図1)では、インキ壺ローラ30の上方に、機械内部への異物の侵入を防止するため、当該インキ壺ローラ30の周面の幅とほぼ同じ幅を有する第1カバーとしてのカバー84がフレーム51、52を介して取り付けられている。
【0054】
さらに、最下段のインキ装置41(図1)では、インキ壺ローラ30の上方に、当該インキ壺ローラ30の周面の幅とほぼ同じ幅を有する第1カバーとしてのカバー85がフレーム51、52を介して取り付けられており、インキ壺ローラ30の上方からの機械内部への異物の侵入を阻止している。
【0055】
(6)ドクターによる洗浄処理を制御するための構成
図11には、ドクター71による洗浄処理を制御する制御装置60が示されている。CPU構成でなる制御装置60には、インキ装置11のインキ壺本体12が印刷時における第1の位置に位置付けられているか否かを検出する第1検出装置としての第1センサ61、インキ装置11のドクター保持部材70にドクター71が取り付けられているか否かを検出する第2検出装置としての第2センサ62が接続されている。さらに、制御装置60には、インキ壺ローラ30を回転させる駆動装置としてのモータ63、噴射ノズル82からの洗浄液の噴射をオンオフする洗浄液供給切替手段としての電磁弁64、ドクター71のドクターブレード74をインキ壺ローラ30へ接触離反させるドクターブレード接離切替手段としての電磁弁65が接続されている。
【0056】
ここでは1つのインキ装置11についてのみ説明するが、他のインキ装置11やインキ装置41においても同様の構成を有しており、第1センサ61、第2センサ62、モータ63、電磁弁64および電磁弁65は、最上段のインキ装置11〜最下段のインキ装置41のそれぞれのインキ供給手段に設けられている。
【0057】
なお、第1センサ61は、インキ壺本体12が印刷時における第1の位置に位置付けられたことを検出する例えばリミットスイッチや近接スイッチのようなセンサであり、インキ壺本体12が第1の位置から離反したとき、その検出結果を制御装置60へ出力する。
【0058】
また、第2センサ62は、ドクター71がドクター保持部材70に取り付けられていること、すなわちドクター71の装着有無を検出する例えばリミットスイッチや近接スイッチのようなセンサであり、その検出結果を制御装置60へ出力する。
【0059】
(7)インキ供給装置の動作
<印刷作業>
このように構成されたインキ供給装置1の作用を印刷作業と洗浄作業とに分けて説明する。5つのインキ装置11、41にはそれぞれ異なる色のインキがインキ壺本体12の収容空間13A内に収容されている。
【0060】
インキ供給装置1は、インキ壺ローラ30がインキ供給方向(図1の反時計方向)へ回転することにより、インキ壺本体12の収容空間13A内に収容されたインキが隙間調整用のブレード16とインキ壺ローラ30との隙間を介して当該インキ壺ローラ30の周面上に付着して引き出される。
【0061】
次にインキ供給装置1は、当該隙間調整用のブレード16の位置を調整することにより、隙間調整用のブレード16とインキ壺ローラ30との隙間量が調整されて収容空間13Aから引き出されるインキの量が調整される。
【0062】
そして、インキ壺ローラ30に付着されたインキは、当該インキ壺ローラ30の回転と共にインキローラ31によりならされた後、インキローラ32、33を介してシャブロン胴4(図1)に転写され、このシャブロン胴4から凹版胴8の周面へ供給される。これによりインキ供給部2は、それぞれ異なる5色のインキが印刷加工部3のシャブロン胴4へ供給されるのである。
【0063】
このような印刷作業中に、インキ壺本体12の先端やインキ壺ローラ30またはインキローラ31から滴下したインキはインキパン14または固定パン19によって受けられて、下方のインキ装置11へのインキの滴下が防止される。
【0064】
また、インキパン14は固定パン19よりも小さく、当該固定パン19の中にインキパン14が全て収納される程の小さなサイズで構成されていると共に、当該インキパン14の真下に固定パン19が定置されているため、インキ壺本体12の先端から滴下されるインキや、インキ壺ローラ30、インキローラ31から滴下されるインキがインキパン14から溢れたときでも、そのインキパン14の下方に存在する固定パン19によって当該インキを受け止めることができる。
【0065】
以上が最上段のインキ装置11〜4段目のインキ装置11における印刷作業の説明である。最下段のインキ装置41における印刷作業も同様の印刷作業となるが、最下段のインキ装置41のインキ壺本体12には保持部材15およびインキパン14が取り付けられていないため、インキ壺本体12の先端から滴下されるインキや、インキ壺ローラ30、インキローラ31から滴下されるインキは固定パン19Eで受け止められるのである。
【0066】
<洗浄作業>
インキ供給装置1は、上述した印刷作業が終了してインキ装置11を洗浄するときには、印刷加工部3が停止し、インキ壺ローラ30を回転させるモータ63が停止している状態で、インキ壺本体12を図3に示される第2の位置へ移動させた後、ドクター71をドクター保持部材70に取り付ける。
【0067】
洗浄作業前は、エアーシリンダー80のピストンロッド80Eが伸長(図10の矢印PS方向)しているため、ドクター保持部材70に取り付けられたドクター71はドクターブレード74がインキ壺ローラ30の周面から離反されている。
【0068】
インキ壺本体12の第2の位置への移動によりインキ壺本体12が印刷時における第1の位置に位置付けられていないことを第1センサ61が検出し、ドクター保持部材70にドクター71が取り付けられたことを第2センサ62が検出したとき、インキ壺ローラ30およびインキローラ31、32および33の洗浄が可能となる。
【0069】
インキ壺ローラ30およびインキローラ31、32および33の洗浄は、電磁弁64を介して噴射ノズル82から洗浄液を回転中のインキ壺ローラ30へ噴射した後、電磁弁65を介してエアーシリンダー80によりドクター71のドクターブレード74をインキ壺ローラ30の周面に押圧させるという順序で実施する。
【0070】
すなわち、制御装置60は、先ずモータ63を駆動させてインキ壺ローラ30をインキ供給方向(図10の矢印方向)へ回転させて、電磁弁64を開いて噴射ノズル82からインキ壺ローラ30およびインキローラ33へ洗浄液を噴射する。インキ壺ローラ30の周面に洗浄液が供給されると、制御装置60は、エアーシリンダー80のピストンロッド80Eを退縮(図10の矢印PL方向)させ、ドクター保持部材70及びこれに取り付けられているドクター71を回動軸81Aを介してインキ壺ローラ30に近接する方向(図10の矢印RR方向)へ回動させ、当該ドクター71のドクターブレード74をインキ壺ローラ30の周面に押し付ける。
【0071】
これにより、インキ壺ローラ30上のインキは洗浄液に溶かされて廃液となってドクターブレード74に掻き取られ受け皿71Aに溜められる。インキローラ31、32および33上のインキおよび洗浄液はインキ壺ローラ30を介してドクターブレード74に掻き取られ受け皿71Aに溜められるので、インキ壺ローラ30とインキローラ31、32および33とを同時に洗浄することができる。
【0072】
この洗浄中に、作業者は第2位置に引き出されたインキ壺本体12等の洗浄を行なうことができる。すなわち、インキ壺本体12や隙間調整用のブレード16、インキ堰13に付着したインキを除去し、ウェス等で拭き取ることによりこれら部材を洗浄することができるのである。
【0073】
このような洗浄作業時においては、インキ壺本体12が図3に示される第2の位置に位置付けられており、インキ壺ローラ30またはインキローラ31、32および33から滴下したインキや洗浄液は固定パン19によって受けられ、第2位置に位置付けられたインキ壺本体12の先端から滴下したインキや洗浄液はインキパン14によって受けられるので、下方のインキ装置11へのインキや洗浄液の滴下が防止される。
【0074】
また、インキ壺本体12が第2の位置に位置付けられているときには、インキ壺本体12の先端部からインキ壺ローラ30やインキローラ31までの範囲の下方がインキパン14と固定パン19とにより連続的に覆われているため、下方のインキ装置11へのインキや洗浄液の滴下が確実に防止される。
【0075】
所定時間の洗浄作業が行われると、制御装置60は、先ず電磁弁64を閉じて噴射ノズル82からの洗浄液の噴射を停止する。洗浄液の噴射を停止してから所定時間が経過すると、インキ壺ローラ30およびインキローラー31、32および33の周面の洗浄液がドクターブレード74により掻き取られるので、制御装置60は、エアーシリンダー80のピストンロッド80Eを伸長(図10の矢印PS方向)させ、ドクター保持部材70及びこれに取り付けられているドクター71を回動軸81Aを介してインキ壺ローラ30から離反する方向(図10の矢印RL方向)へ移動させ、当該ドクター71のドクターブレード74を壺ローラ30の周面から離反させた後、モータ63の駆動を停止させてインキ壺ローラ30の回転を停止させる。
【0076】
そして、インキ壺ローラ30の回転が停止したら、作業者はドクター71をドクター保持部材70から取外し、洗浄作業が終了する。
【0077】
洗浄あるいは印刷作業中にインキパン14を清掃するときは、作業者がロックレバー56を開放位置に位置付けて開口15Dを開放させたのち、パンハンドル14Aを掴んでインキパン14を開口15Dから引き出し、機外で当該インキパン14を清掃する。
【0078】
インキパン14の清掃が終了したら、開口15Dからインキパン14をその先端部14Bが底板15Cの先端の奥壁15Bに当接するまで挿入して当該インキパン14を底板15Cの上に載置させ、ロックレバー56をロック位置に位置付ける。ロックレバー56をロック位置に位置付けることにより、インキパン14が保持部材15から飛び出すことがない。
【0079】
また、インキパン14を保持部材15から引き出しているときにインキや洗浄液が滴下したときには、保持部材15の底板15Cがこの滴下したインキや洗浄液を受け止めるため、インキパン14の清掃中も下方のインキ装置11へインキや洗浄液が滴下することを確実に防止することができる。
【0080】
このように、洗浄作業中であっても印刷処理中であっても、インキパン14を保持部材15から引き出して取り外すことができるので、印刷処理を停止することなくあるいはインキ壺本体12の洗浄を継続しながらインキパン14を洗浄することができ、かくして印刷機の稼働率を下げずに印刷処理を行うことができる。
【0081】
以上が最上段のインキ装置11〜4段目のインキ装置11における洗浄作業の説明であるが、最下段のインキ装置41においては、インキ壺ローラ30またはインキローラ31、32および33から滴下したインキや洗浄液は固定パン19Eによって受けられ、第2の位置に位置付けられたインキ壺本体12の先端から滴下したインキや洗浄液は固定パン44によって受け止められる。
【0082】
さらに、洗浄作業においては、最上段のインキ装置11〜最下段のインキ装置41のうち任意のインキ装置11、41のインキ壺本体12を引き出して洗浄したり、全てのインキ壺本体12を引き出して洗浄することが可能である。
【0083】
全てのインキ壺本体12を引き出して洗浄するためには、機械内部への異物の侵入が確実に阻止されている状態になっていなければならない。図1に示されるように、全てのインキ壺本体12が引き出されてドクター71が取り付けられた状態においては、カバー83、84、ドクター71のカバー77、インキパン14、保持部材15、固定パン19A−19E、44が、インキ壺ローラ30よりも内部の機械内部へ異物が侵入することを阻止しているため、機械内部の構成物の保護状態が保たれているのである。
【0084】
(8)効果
以上の構成によれば、インキ供給部2では、全てのインキ装置11、41のインキ壺本体12が非印刷時における第2の位置へ位置付けられていても、機械内部へのアクセスが確実に防止されているため、全てのインキ壺本体12を当該第2の位置へ位置付けた状態で各インキ装置11、41のインキ壺ローラ30を駆動させることができる。これによりインキ供給部2では、インキ壺ローラ30やインキローラ31、32、33の自動洗浄と、作業者によるインキ壺本体12の洗浄とを同時に行うことができ、洗浄時間が短縮されて生産性が向上するとともに、作業者の負担が大幅に軽減される。
【0085】
またインキ供給部2では、最上段のインキ装置11、2段目〜4段目のインキ装置11、及び最下段のインキ装置41におけるスライド距離がそれぞれ異なっているため、最上段のインキ装置11のインキ壺本体12、2段目〜4段目のインキ装置11のインキ壺本体12、最下段のインキ装置41のインキ壺本体12を非印刷時における第2の位置で縦方向にほぼ一直線状に並べさせることができる。
【0086】
これにより作業者は、最上段のインキ装置11のインキ壺本体12、2段目〜4段目のインキ装置11のインキ壺本体12、最下段のインキ装置41のインキ壺本体12に対する洗浄作業を容易に実行することができる。
【0087】
またインキ供給部2では、最上段のインキ装置11のスライドレール11Aと、2段目〜4段目のインキ装置11のスライドレール11Bと、最下段のインキ装置41のスライドレール11Cとを介して、最上段のインキ装置11〜最下段のインキ装置41のインキ壺本体12がそれぞれ摺動自在にスライドすることにより、上下方向のスペースが十分に確保された洗浄し易い位置にそれぞれのインキ壺本体12を位置付けることができるので、作業者の身体的負担少なく当該インキ壺本体12を効率的に洗浄させることができる。このときインキ壺本体12だけでなく、インキパン14についてもインキ壺本体12と一緒に上下方向のスペースが十分に確保された洗浄し易い位置に位置付けることができるので、作業者の身体的負担少なく当該インキパン14についても効率的に洗浄させることができる。
【0088】
さらにインキ供給部2では、最上段のインキ装置11〜4段目のインキ装置11のインキ壺本体12の下部に照明12Bがそれぞれ設けられているので、当該インキ壺本体12の下方に存在する下側のインキ壺本体12および当該インキ壺本体12の周辺を照明12Bによって照らし、当該下側のインキ壺本体12を明るい環境下で洗浄することができる。
【0089】
(9)他の実施の形態
なお、上述した実施の形態においては、インキ壺本体12とインキパン14とが保持部材15を介して一体に取り付けられた状態で当該保持部材15のレバー56(図5)を上方へ回動させることによりロック状態を解除し、保持部材15からインキパン14だけを引き出すことが出来るような構成とした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、インキ壺本体12とインキパン14とが一体化した状態でスライドするのであれば、保持部材15からインキパン14を必ずしも引き出すことができなくてもよい。
【0090】
また、上述した実施の形態においては、印刷時における第1の位置に位置付けられているとき、インキ壺本体12の先端部の下方で、かつインキローラ31の下方にインキパン14が位置するとともに、当該インキパン14と固定パン19とが上下方向で重なり合うようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、非印刷時における第2の位置に位置付けられているとき、インキパン14と固定パン19とが上下方向で重なり合うようにしても良い。
【0091】
さらに、上述した実施の形態においては、印刷時における第1の位置に位置付けられているとき、インキ壺本体12の先端部の下方、かつインキローラ31の下方にインキパン14が位置するようなインキパン14を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、インキローラ31に加えてインキローラ32及び33の下方にも位置するような大きさのインキパン14を用いるようにしても良い。
【0092】
さらに、上述した実施の形態においては、インキ壺本体12の下方に照明12Bが設けられるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、保持部材15の下方に照明12Bが設けられていても良く、要は、スライドレール11A、11B及び11Cに沿ってスライドする部分の下方であれば、インキ壺本体12又は保持部材15の何れに照明12Bが設けられていても良い。
【0093】
さらに、上述した実施の形態においては、ドクターブレード74により洗浄した後の洗浄液をドクターブレード74と一体になった受け皿71Aによって受け取るようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ドクターブレード74と受け皿71Aとが必ずしも一体でなくても良く、ドクターブレード74とは別途設けられた受け皿71Aによって洗浄液を受け取るようにしても良い。その際、ドクターブレード着脱手段はドクターブレード74のみをインキ壺ローラ30に接触離反させるような構成であっても良い。
【0094】
さらに、上述した実施の形態においては、第1センサ61として例えばリミットスイッチや近接スイッチのようなセンサを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、第1センサ61としてフォトディテクタ等を用いた光学的に検出するものであっても良く、また、第1センサ61としてポテンショメータのようにインキ壺本体12のスライドレール11B上の位置を検出するものであってもよい。
【0095】
さらに、上述した実施の形態においては、第1センサ61をインキ壺本体12が第1の位置に位置付けられたことを検出するセンサとして用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、第1センサ61をインキ壺本体12が第2の位置に位置付けられたことを検出するセンサとして用いるようにしても良い。その際、インキ壺本体12が第2の位置に位置付けられたことを第1センサ61により検出するとともに、ドクター保持部材70にドクター71が取り付けられていることを第2センサ62により検出したときにインキ壺ローラ30の周面に対する洗浄動作を開始するよう制御装置60が制御すればよい。
【0096】
さらに、上述した実施の形態においては、第2センサ62として、ドクター71がドクター保持部材70に取り付けられていることを検出する例えばリミットスイッチや近接スイッチのようなセンサを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、第2センサ62としてフォトディテクタ等を用いた光学的に検出するものであってもよい。
【0097】
さらに、上述した実施の形態においては、凹版印刷機に対してインキ装置11、41を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々のタイプの印刷機にインキ装置11、41を適用するようにしても良い。
【符号の説明】
【0098】
1…インキ供給装置、2…インキ供給部、3…印刷加工部、4…ゴム胴、8…凹版胴、11、41…インキ装置、11A〜C…スライドレール(案内部材)、12…インキ壺本体、13…インキ堰、14…インキパン、15…保持部材、16…ブレード、17…カバー、18…カムフォロワ、19…固定パン、30…インキ壺ローラ、31〜33…インキローラ、51、52…フレーム、56…ロックレバー、60…制御装置、70…ドクター保持部材、71…ドクター、71A…受け皿、74…ドクターブレード、77、83、84、85、86…カバー、82…噴射ノズル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11