特許第6076661号(P6076661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076661
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】添架管路の敷設装置および敷設方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20170130BHJP
   E01D 2/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   E01D21/00 Z
   E01D2/00
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-205800(P2012-205800)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-58852(P2014-58852A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】特許業務法人エム・アイ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】北本 正弘
(72)【発明者】
【氏名】福永 憲敬
(72)【発明者】
【氏名】藤井 和彦
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−038215(JP,A)
【文献】 特開2002−013668(JP,A)
【文献】 特開平10−159026(JP,A)
【文献】 特開平11−082809(JP,A)
【文献】 特開平09−163537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁に添架管路を敷設するための装置であって、
前記添架管路を構成する各管が載置され固定される複数の載置部材と、
前記橋梁の長手方向に沿って該橋梁の主桁に一定間隔で設けられた複数の支持部材上に、前記橋梁の一端から他端へ向けて前記載置部材を送り出す送出手段と
最初に送り出される載置部材に取り付けられ、隣り合う2つの前記支持部材間に架け渡し可能な長さとされ、先端へ向けて上方へ傾斜が設けられた、前記載置部材を前記橋梁の一端から他端へ向けて案内するための手延べガイドとを含み、
前記送出手段は、前記橋梁の一端において、載置部材に固定された管が先に送り出された載置部材に固定された管と連結されるたびに、連結された前記載置部材を前記他端へ向けて送り出す、添架管路の敷設装置。
【請求項2】
橋梁に添架管路を敷設するための装置であって、
前記添架管路を構成する各管が載置され固定される複数の載置部材と、
前記橋梁の長手方向に沿って該橋梁の主桁に一定間隔で設けられた複数の支持部材上に、前記橋梁の一端から他端へ向けて前記載置部材を送り出す送出手段と
前記複数の支持部材上に架設され、前記載置部材を前記橋梁の一端から他端へ向けて案内するガイドレールとを含み、
前記送出手段は、前記橋梁の一端において、載置部材に固定された管が先に送り出された載置部材に固定された管と連結されるたびに、連結された前記載置部材を前記他端へ向けて送り出し、
前記ガイドレールは、先端へ向けて上方へ傾斜が設けられ、前記送出手段により該橋梁の一端から他端へ向けて送り出すことにより、前記複数の支持部材上に架設される、添架管路の敷設装置。
【請求項3】
前記載置部材は、該載置部材の重心を移動させるための重心移動装置を備える、請求項に記載の敷設装置。
【請求項4】
前記重心移動装置は、液体が貯留される2つのタンクと前記2つのタンクの一方から他方へ前記液体を移動させる液体移動手段とを含む装置、または回転力を水平方向へ移動させる力へ変換する歯車と前記歯車を回転させる動力手段と前記歯車により前記水平方向へ移動される錘とを含む装置とされる、請求項に記載の敷設装置。
【請求項5】
前記手延べガイドは、連結された前記載置部材を載置するための板状物、シート状物またはレール状物を備える、請求項1、3または4に記載の敷設装置。
【請求項6】
前記送出手段は、前記載置部材を牽引する牽引装置または該載置部材を押し出し推進させる推進装置である、請求項1〜のいずれか1項に記載の敷設装置。
【請求項7】
橋梁に添架管路を敷設する方法であって、
前記添架管路を構成する管を載置部材上に載置し、固定する段階と、
前記橋梁の長手方向に沿って該橋梁の主桁に一定間隔で設けられた複数の支持部材の隣り合う2つの支持部材間に架け渡し可能な長さとされ、先端へ向けて上方へ傾斜が設けられた、前記載置部材を前記橋梁の一端から他端へ向けて案内するための手延べガイドを、最初に送り出される載置部材に取り付ける段階と、
前記複数の支持部材上に、前記橋梁の一端から他端へ向けて前記載置部材を送り出す段階とを含み、
前記送り出す段階では、前記橋梁の一端において、載置部材に固定された管が先に送り出された載置部材に固定された管と連結されるたびに、連結された前記載置部材を前記他端へ向けて送り出す、添架管路の敷設方法。
【請求項8】
橋梁に添架管路を敷設する方法であって、
前記添架管路を構成する管を載置部材上に載置し、固定する段階と、
前記橋梁の長手方向に沿って該橋梁の主桁に一定間隔で設けられた複数の支持部材上に、前記載置部材を前記橋梁の一端から他端へ向けて案内する、先端へ向けて上方へ傾斜が設けられたガイドレールを、該橋梁の一端から他端へ向けて送り出すことにより前記複数の支持部材上に架設する段階と、
前記ガイドレール上を、前記橋梁の一端から他端へ向けて前記載置部材を送り出す段階とを含み、
前記送り出す段階では、前記橋梁の一端において、載置部材に固定された管が先に送り出された載置部材に固定された管と連結されるたびに、連結された前記載置部材を前記他端へ向けて送り出す、添架管路の敷設方法。
【請求項9】
前記送り出す段階は、重心移動装置により前記載置部材の重心を移動させる段階を含む、請求項に記載の敷設方法。
【請求項10】
前記送り出す段階は、重心移動装置としての、液体が貯留される2つのタンクと前記2つのタンクの一方から他方へ前記液体を移動させる液体移動手段とを含む装置、または回転力を水平方向へ移動させる力へ変換する歯車と前記歯車を回転させる動力手段と前記歯車により前記水平方向へ移動される錘とを含む装置により該液体または該錘を移動し、前記載置部材の重心を移動させる段階を含む、請求項7に記載の敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁に添架管路を敷設するための装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
添架管路は、道路や鉄道等の既設の橋梁に敷設され、電線管や送水管等のライフラインを収容するための設備である。この添架管路は、従来、既設の橋梁に仮設の吊り足場を設け、その吊り足場上へ添架管路を構成する管、管同士を連結するための継手、管や継手を目的位置まで搬送するための台車等の資機材を運搬し、その吊り足場上で組み立てることにより敷設されている。
【0003】
これらの資機材が載せられる吊り足場は、その安全上、高い強度が求められ、その規模も橋梁の全長および全幅にわたる大規模なものとなっている。また、吊り足場の設置は、橋桁下方の作業空間が限られた条件で行われるため、手間のかかる作業となっている。このため、吊り足場の仮設には相当のコストがかかり、仮設工期も相当の期間を要していた。吊り足場における添架管路の組み立て作業は、河川上等の高所作業となるが、高所作業は危険を伴うので、出来るだけ避けることが望ましい。
【0004】
添架管路ではないが、橋梁自体の架設においては、足場施工を必要としない工法として、手延べ工法やカンチレバー工法が知られている(例えば、非特許文献1および2参照)。手延べ工法は、架設しようとする桁の先端に、手延べ機と呼ばれる器具を取り付け、この先端を予め前方の橋脚台上に据付けられたローラに届かせておき、桁と手延べ機を一体として、ローラを縦送りして桁を架け渡す工法である。カンチレバー工法は、1つの橋脚の左右のバランスをとりながら、橋桁を数メートルずつ延ばし、全体の橋を構築する工法である。
【0005】
また、外部で製作したユニット状の構造物を既設の橋梁の上面に橋台から順次送り出し、橋梁上面に橋上駅等の建物を構築する方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−57226号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】多田宏行著、「橋梁技術の変遷」、鹿島出版会、2000年12月10日
【非特許文献2】「鋼道路橋の設計と施工」、日刊工業新聞社、1976年10月30日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記手延べ工法やカンチレバー工法は、剛体として一体化した橋桁ユニットを、差し渡しの距離である一径間だけに手延べ式にて差し渡すものである。したがって、これらの工法は、橋梁全長に送り出す必要があり、しかも差し込み式やハウジング式等の継手を使用して管同士を連結する、剛結合されない添架管路に対しては適用することができない。
【0009】
上記特許文献1に記載の方法は、送り出すユニット状の構造物の位置が、送り出し開始から最終的に固定されるまで既設の橋桁上である。このため、橋桁下面に懸垂固定される添架管路に対しては適用することができない。
【0010】
そこで、吊り足場を設置する手間を少なくし、その設置のための仮設コストを低減し、仮設工期の短縮を図ることができ、さらには、吊り足場上での高所作業を少なくすることができる装置や方法の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題に鑑み、橋梁に添架管路を敷設するための装置であって、添架管路を構成する各管を載置し、固定するための複数の載置部材と、橋梁の主桁に該橋梁の長手方向に一定間隔で設けられた複数の支持部材上に、橋梁の一端から他端へ向けて載置部材を送り出す送出手段とを含み、送出手段は、橋梁の一端において、載置部材に固定された管が先に送り出された載置部材に固定された管と連結されるたびに、連結された載置部材を他端へ向けて送り出す、添架管路の敷設装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の添架管路の敷設装置および敷設方法を提供することにより、吊り足場を設置するための仮設コストをなくす、または低減することができる。また、吊り足場を設置するにしても、簡易なものでよいため、その工期の短縮を図ることができる。さらに、吊り足場上での高所作業をなくす、または少なくすることができ、作業の安全を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来の方法により添架管路を敷設しているところを例示した図。
図2】本発明の添架管路の敷設装置の第1実施形態を示した図。
図3図2に示す敷設装置により実施される添架管路の敷設処理の流れを示したフローチャート。
図4】本発明の添架管路の敷設装置の第2実施形態を示した図。
図5図3に示す敷設装置に用いられる手延べガイドの一例を示した図。
図6図3に示す敷設装置に用いられる重心移動装置の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の添架管路の敷設装置および敷設方法を説明する前に、橋梁の構造および従来の添架管路の敷設方法について簡単に説明しておく。添架管路は、上述したように、道路や鉄道等の既設の橋梁に敷設され、電線管や送水管等のライフラインを収容するための設備である。図1は、従来の方法により添架管路を敷設しているところを例示した図である。図1(a)は、橋梁をその長手方向に切断したときの断面図を、図1(b)は、橋梁を幅方向に切断したときの断面図を示している。
【0015】
図1に示すように、橋梁10は、人や車両等が横断する部分である上部構造と、その上部構造を支持し、その荷重を地盤へ伝達する下部構造とから構成される。下部構造は、上部構造を支持するために、図示しない橋台と、橋脚11と、橋脚11上に設けられる図示しない支承とを備えている。橋台は、橋の両端に設けられ、その両端を支持するものである。橋脚11は、橋の途中に設置され、その途中部分を支持するものである。支承は、橋脚11と後述する主桁との間に、温度変化の影響による主桁等の伸縮を吸収し、耐震性を向上させるために設置される部材である。
【0016】
下部構造は、図1には図示していないが、そのほか、橋台や橋脚11を含めた橋全体の荷重を地盤に伝達する基礎が設けられる。基礎は、橋の形式、荷重の大きさ、地盤の状態等に応じて適切な形式が採用される。例えば、荷重が大きく、地盤の地耐力が小さい場合は、直接基礎を、潮流の条件が厳しい場合や海底の支持層が比較的浅い場合は、ケーソン基礎を、軟弱地盤であって、支持層が深い場合は、杭基礎を採用することができる。
【0017】
上部構造は、人や車両等の交通荷重を直接支持する板状構造物である床盤12と、その床盤12を支持し、支承上に設置される複数の主桁13と、各主桁13が適切に荷重を分担できるようにするために、各主桁13間に設けられる複数の横桁14とを備えている。主桁13は、橋梁10の長手方向の曲げやせん断に対して抵抗し、力を橋台や橋脚11に伝達する主要な桁である。
【0018】
床盤12上には、石、煉瓦、コンクリート、アスファルト等により舗装された車道、路肩、歩道等が設けられる。主桁13は、上記曲げやせん断に対して適切に抵抗する材料として、鋼材やプレストレストコンクリート(PC)等により構築される。図1では、一定間隔で設けられる横桁14間に、一定の長さの3つの平板状の主桁13が等間隔で配設されているのが示されている。横桁14は、矩形の平板とされ、中央が矩形にくり抜かれた枠状のものとされている。この横桁14も、主桁13と同様、鋼材やPCにより構築される。
【0019】
また、主桁13間には、橋梁10の長手方向に沿って複数の支持金物15が設けられている。支持金物15は、棒状のものとされ、横桁14間に等間隔で配設されている。一例では、支持金物15は、平行に並ぶ2つの主桁13間をつなぐように配設される。支持金物15としては、例えば、断面矩形の棒状にした鋼材を用いることができるが、断面矩形に限られるものではなく、断面が円形や楕円形のものであってもよい。図1では、それ以外の部材については明示していないが、主桁13を横桁14とともに相互につなげて荷重を分散させる対傾構、風による横方向の荷重に抵抗する横構、桁の温度による伸縮を吸収するための伸縮継手等を備えることができる。
【0020】
添架管路は、所定径の管16を、その長手方向に複数連結することにより構築される。管16としては、鋼管、硬質合成樹脂管、波付硬質合成樹脂管(FEP)等を用いることができる。硬質合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、繊維強化プラスチック(FRP)等を用いることができる。管同士の連結は、例えば、継手を用いて行うことができる。継手としては、これに限られるものではないが、簡易に接続するために、差し込み式の継手や、ハウジング式の継手等を用いることができる。なお、継手ではなく、溶接して連結することも可能である。
【0021】
従来の方法では、この添架管路を敷設するために、まず、床盤12から垂らされる吊り下げ用金具であるハンガー等により、一定の幅および長さを有する平板を吊り下げた構造の吊り足場17を設ける。続いて、橋台上で台車等に管16を積み込み、吊り足場17上の組み立て場所まで管16や継手等を搬送する。そして、横桁14および支持金物15上に管16を載置しつつ、一端をそれまでに連結してきた管と連結することにより、橋の一端から他端へ向けて延ばしていく。この組み立て作業を繰り返すことにより、添架管路が敷設される。
【0022】
この方法では、大規模な吊り足場17を設置する必要があることから、仮設コストがかかり、仮設工期もかかっていた。以下、この仮設コストを低減することができ、この仮設工期を短縮することができる本発明の装置や方法について詳細に説明する。
【0023】
図2は、本発明の添架管路の敷設装置の第1の実施形態を示した図である。図2(a)は、橋梁をその長手方向に切断したときの断面図を、図2(b)は、橋梁を幅方向に切断したときの断面図を示している。橋梁10は、上部構造と下部構造とから構成され、少なくとも1つの橋脚11、床盤12、複数の主桁13、複数の横桁14および複数の支持金物15を備える。これらについては上述したので、ここでは説明を省略する。
【0024】
添架管路の敷設装置は、橋梁10の長手方向に一定間隔で設けられる複数の支持部材としての複数の横桁14および支持金物15上に、橋梁10の全長にわたって架設されたガイドレール20と、ガイドレール20に沿って送り出し可能とされ、管16が載置され、固定バンド等により固定された載置部材としてのケーブルラック21と、そのケーブルラック21を橋梁10の一端から他端へ向けて送り出す送出手段の1つである牽引装置22とを備えている。
【0025】
ガイドレール20としては、断面L字形の山形鋼等を用いることができる。この場合、山形鋼の1つの外側面を、開口を有する枠状の横桁14の下辺部および支持金物15に隣接させ、もう1つの外側面を横桁14の左辺部および右辺部に隣接させて配置することにより、図2(b)に示すように2列に配置することができる。このような配置により、ケーブルラック21が下方へ落下しないように左右および下部を支持しつつ、橋梁10の一端の橋台から他端の橋台へ向けてガイドされるので、適切に送り出すことができる。
【0026】
ここでは、山形鋼を用いているが、ケーブルラック21が下方へ落下しないように支持しつつ、橋梁10の一端の橋台から他端の橋台へ向けてガイドすることができれば、I形鋼やH形鋼等であってもよい。
【0027】
ケーブルラック21は、例えば、複数の山形鋼の両端を、ボルトやナット等を用いて互いに連結することにより形成された、図2(a)および(b)に示すような箱状の枠体とすることができる。これも、I形鋼やH形鋼等を使用して形成してもよい。枠体であるから、管16の両端や側面は、外部に露出していて、簡単に継手を用いて、または溶接により連結することが可能とされている。
【0028】
ケーブルラック21の下面は、横桁14の下辺部および支持金物15と隣接することから、推進させる際、摩擦が生じる。この摩擦を低減させるために、例えば、その下面に、低摩擦素材であるテフロン(登録商標)板を取り付けることができる。ここでは、テフロン(登録商標)板を一例として挙げたが、テフロン(登録商標)シートや、ナイロン、ニトリルゴム、シリコーンゴム等の板やシートであってもよい。
【0029】
牽引装置22としては、ドラムにワイヤーロープ等を巻き付け、引っ張り作業を行うウィンチを挙げることができる。ここでは、牽引装置22を採用したが、ケーブルラック21を押し出すことにより送り出す油圧シリンダを用いた推進装置を採用することも可能である。なお、橋梁10の一端から他端へ向けてケーブルラック21を送り出す場合、牽引装置22は、他端の橋台等に設置され、推進装置は、一端の橋台等に設置される。
【0030】
この敷設装置を用いて実施される敷設処理について図3を参照して簡単に説明する。ステップ300からこの処理を開始し、まず、ステップ310で、簡易な吊り足場23を設ける。この吊り足場23は、従来のように、橋梁10の全長および全幅にわたって設けられるものではなく、橋梁10の全長ではあるが、図2(b)に示すように一定の幅のみとされる。これは、ガイドレール20を架設するために必要な足場のみがあればよいためである。ガイドレール20は、ケーブルラック21と同様、牽引することにより架設することができ、必要に応じて、横桁14や支持金物15に溶接する等して固定することができる。
【0031】
次に、ステップ320において、橋梁10の全長にわたってガイドレール20を架設する。例えば、台車を利用してガイドレール20を構成するレール部材を吊り足場23上の任意の場所まで搬送し、溶接する等して橋梁10の長手方向へ連結していくことにより、架設することができる。
【0032】
ガイドレール20の架設後、ステップ330では、橋梁10の一端において、管16が載置され、固定用バンド等により固定されたケーブルラック21を用意し、牽引装置22が備えるケーブルと接続する。
【0033】
ステップ340で、牽引装置22によりケーブルラック21を牽引し、ガイドレール20上に載置させる。牽引は、例えば、ケーブルラック21の後端がガイドレール20上に載置されたことをもって終了する。2つ目のケーブルラックを、橋梁10の一端において連結することができるようにするためである。
【0034】
ステップ350において、橋梁10の他端に先頭のケーブルラック21が到達したかを判断する。まだ到達していない場合は、ステップ360へ進み、2つ目のケーブルラックに固定された管を、先に送り出したケーブルラック21に固定された管16と連結することにより、2つ目のケーブルラックを先のケーブルラック21と連結する。このとき、ケーブルラック21同士も、ボルトおよびナットを用いて連結することができる。そして、ステップ340へ戻り、再び牽引を行う。
【0035】
ステップ350において先頭のケーブルラック21が橋梁10の他端へ到達した場合、ステップ370へ進み、添架管路の敷設処理を終了する。橋梁10の一端および他端は、橋梁10の両端にある橋台とすることができ、その橋台上でケーブルラック21を連結し、送り出すことができる。
【0036】
ガイドレール20は、連結されたケーブルラック21を、適切に橋梁10の一端から他端へ送り出し、到達させることができるのであれば、架設しなくてもよい。ガイドレール20を架設しないことで、吊り足場17を設ける必要がなくなり、仮設コストをなくし、仮設工期もなくすことができる。また、ガイドレール20を架設するにしても、簡易な吊り足場17でよいため、仮設コストを低減させることができ、仮設工期も短縮することができる。また、吊り足場17における作業も簡易となるので、高所作業を少なくすることができる。
【0037】
図4は、本発明の添架管路の敷設装置の第2の実施形態を示した図である。図4(a)は、橋梁をその長手方向に切断したときの断面図を、図4(b)は、橋梁を幅方向に切断したときの断面図を示している。図4では、ガイドレール20を用いず、先頭のケーブルラック21に、ケーブルラック21を橋梁10の一端から他端へ向けて案内するための手延べガイド24を設けている。手延べガイド24は、1つの支持金物15から隣り合う支持金物へ架け渡し可能な長さとされた仮設のガイド部材で、その先端へ行くにつれて上方に向くように傾斜が設けられた構造とされている。
【0038】
支持金物15によるケーブルラック21の支持は、点支持となるため、前方の支持金物15へ向けてケーブルラック21を送り出す際、そのケーブルラック21の前方が沈み、後方が浮き上がり、その前方の支持金物15との隙間を通してケーブルラック21が落下する可能性がある。しかしながら、このように傾斜が設けられた構造の手延べガイド24を備えることで、ケーブルラック21の前方が多少沈んだとしても、その傾斜により、手延べガイド24の先端部を前方の支持金物15上に位置させ、ケーブルラック21の送り出しによりスライドさせて適切に架け渡すことができるので、支持金物15間からの落下を防止することができる。
【0039】
手延べガイド24は、上述した山形鋼を枠材として用いて形成した円錐形状、角錐形状または紡錘形状の枠体とすることができる。図4では、角錐形状のものとされている。手延べガイド24は、枠体に限られるものではなく、表面を滑らかにした、円錐形状、角錐形状、紡錘形状等のカウル(外被状の覆い)であってもよい。また、手延べガイド24は、連結されたケーブルラック21を載置するための板状物、シート状物またはレール状物を備えることができる。これらは、連結されたケーブルラック21の橋の役割を果たすものとされる。
【0040】
また、図5に示すように、ガイドレール20のみを送り出して架設し、後から連結したケーブルラック21をそのガイドレール20上に送り出すことも可能である。このとき、ガイドレール20は、手延べガイド24と同様、先端に行くにつれて上方に向けて傾斜が設けられたものとされる。牽引装置22によってガイドレール20とケーブルラック21を別個に牽引する必要があるが、吊り足場17を設ける必要がなくなるので、仮設コストおよび仮設工期をなくし、吊り足場17上における高所作業もなくすことができる。このため、より作業の安全性を確保することができる。
【0041】
手延べガイド24を用いると、ガイドレール20が不要となり、ケーブルラック21は、支持金物15での点支持となる。ケーブルラック21の長さが長い場合、ケーブルラック1つにつき、2以上の支持金物15により支持されるため、ケーブルラック21とケーブルラック21の間の連結部において図6(a)に示すような折れ曲がりは生じない。これに対し、橋梁10の一端の橋台等における作業空間が狭く、短いケーブルラック21しか採用することができない場合、図6(a)に示すような折れ曲がりが生じる。これでは適切に橋梁10の他端へ向けて送り出すことができない。
【0042】
そこで、図6(b)および(c)に示すような、重心移動装置25をケーブルラック21に設け、折れ曲がりが生じた場合にその折れ曲がりを矯正することができる。図6(b)に示す重心移動装置25は、ケーブルラック21の両端部に液体が貯留される2つのタンク26、27と、それら2つのタンク26、27とを繋ぎ、例えばタンク26内の液体を吸引し、タンク27内へ供給して、ケーブルラック21の重心を移動させる液体移動手段としてのポンプ28とを備えている。
【0043】
一般に、前方の支持金物15へ向けて送り出す際、ケーブルラック21の前方に対する支持がなくなるため、ケーブルラック21の前方が沈み、後方が浮き上がる状態となる。このとき、重心移動装置25は、ケーブルラック21の前方側にあるタンク26内の液体を吸引し、そのケーブルラック21の後方側にあるタンク27へ供給することにより、ケーブルラック21の重心を後方へ移動させ、前方の沈みおよび後方の浮き上がりを防止する。
【0044】
図6(c)に示す重心移動装置25は、ラック・アンド・ピニオン29と呼ばれる歯車を設け、モータ30によりその歯車を構成するピニオンを一方向へ回転させ、それに伴い、ラックに取り付けられた錘31をケーブルラック21の一方へ移動させ、また、ピニオンをそれとは反対方向へ回転させ、それに伴い、錘31をケーブルラック21の他方へ移動させることができる。ここで、ラック・アンド・ピニオン29は、ラックと呼ばれる平板状の棒に歯が設けられた部材と、ピニオンと呼ばれる円盤の周囲に歯が設けられた小口径の歯車とから構成され、ピニオンの回転力をラックの水平方向への力に変換する手段である。
【0045】
この重心移動装置25では、ケーブルラック21の重心を、ラック・アンド・ピニオン29で錘31の位置を変えることにより移動させる。上記の例で言えば、錘31を後方へ移動させることにより、ケーブルラック21の重心を後方へ移動させ、前方の沈みおよび後方の浮き上がりを防止する。
【0046】
図6(b)に示す重心移動装置25で用いられる液体としては、いかなる液体であってもよいが、危険性や毒性のない水が好ましい。ここでは、重心移動装置25として2つの実施形態を例示したが、重心を移動させることができれば、これ以外の装置を用いることも可能である。なお、このような重心移動装置25を用いることで、ケーブルラック21の長さが短く、ケーブルラック21の連結部で折れ曲がりが生じても、その折れ曲がりを矯正することができる。
【0047】
これまで本発明の添架管路の敷設システムおよび敷設方法について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0048】
10…橋梁、11…橋脚、12…床盤、13…主桁、14…横桁、15…支持金物、16…管、17…吊り足場、20…ガイドレール、21…ケーブルラック、22…牽引装置、23…吊り足場、24…手延べガイド、25…重心移動装置、26、27…タンク、28…ポンプ、29…ラック・アンド・ピニオン、30…モータ、31…錘
図1
図2
図3
図4
図5
図6