(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(メタ)アクリレート誘導体等の硬化反応は、ラジカルを介して行われる。しかしラジカルは活性が高い反面、寿命が短いため、瞬時に失活してしまう。従って、一定のラジカルで連鎖反応が起き得るにも関らず、ラジカルが発生した極近傍でしか硬化反応は起こらない。そのため、光の照射や加熱が不十分な箇所があり、各開始剤から発生するラジカルの量にムラが生じると、ただちにその周辺は硬化不足となり、硬化材料としての機能を果たすことができない。よって、均一な重合物を得るためには、ラジカルの寿命を延ばす必要があるという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、上記従来技術の欠点を解消しようとするものであり、開始剤から発生するラジカルの量にムラが生じても、ラジカルの寿命を延ばして、均一な硬化物を得ることが可能な(メタ)アクリレート混合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の(メタ)アクリレート混合物は、
(A)(メタ)アクリレートと、(B)重合開始剤と、(C)有機リン化合物を含有し、
前記(B)重合開始剤が、少なくとも(B−1)光によりラジカルを発生するα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤を含有し、
前記(B)重合開始剤により硬化を開始し、(C)有機リン化合物が共存することにより重合反応効率が高められていることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明(メタ)アクリレート混合物は、(A)(メタ)アクリレートと、(B)重合開始剤と、(C)有機リン化合物を含有し、前記(B)重合開始剤が、少なくとも(B−1)光によりラジカルを発生するα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤を含有し、前記(B)重合開始剤により硬化を開始し、(C)有機リン化合物が共存することにより重合反応効率が高められていることにより、開始剤から発生するラジカルの量にムラが生じても、ラジカルの寿命を延ばして、均一な硬化物を得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。本実施例の(メタ)アクリレート混合物は、
(A)(メタ)アクリレートと、
(B)重合開始剤として、(B−1)光によりラジカルを発生するα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤の単独使用、
或いは前記α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤と、(B−2)熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤の併用、
(C)有機リン化合物、
を含むものである。
【0009】
上記(メタ)アクリレート混合物は、重合開始剤から発生したラジカルを有機リン化合物が一旦捕捉して、(メタ)アクリレートの硬化を阻害しない程度に安定化させることでラジカルの寿命を延ばすことができ、ラジカル発生部分から一定距離離れた箇所の(メタ)アクリレート成分を硬化させることができる。その結果、重合開始剤から発生するラジカル量に多少ムラを生じても、均一に硬化した硬化物を得ることができる。
【0010】
以下、上記各成分について説明する。
(A)(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリレートとしては、分子中に1つ以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物であれば特に制限されることなく、従来から公知の(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートポリマー等を用いることができる。本発明において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの意味である。
【0011】
上記(メタ)アクリレートは、具体例として、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、等のモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンポリオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンポリオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのEO付加物又はPO付加物のポリオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加物トリ(メタ)アクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴ(メタ)アクリレート、エチルカルビトールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート、(ポリ)ブタジエン(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
上記(B−1)αヒドロキシケトン系光重合開始剤は、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記(B−2)熱重合開始剤は、熱によりラジカルを発生するもので有ればよい。熱重合開始剤は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤、アゾイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤等が挙げられる。熱重合開始剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0014】
(B)重合開始剤の添加量は、(A)(メタ)アクリレート100質量部に対し、0.01〜20質量部の範囲内であるのが好ましく、更に好ましくは、0.05〜15質量部の範囲内である。重合開始剤の添加量が少ないと、硬化不足となる虞があり、多すぎると、材料強度が低くなる虞がある。
【0015】
(C)有機リン化合物は、例えば、トリフェニルフォスフィン、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリフェニル、トリフェニルフォスフィンオキシド、亜リン酸トリ-p-トリル、メチルジフェニルフォスフィン、トリフェニルホスフィンスルフィド、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、エチルジフェニルホスフィン、リン酸トリブチル、亜リン酸トリオクチル等が挙げられる。
【0016】
(C)有機リン化合物の添加量は、上記(A)(メタ)アクリレート100質量部に対し、0.01〜50質量部の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは0.05〜40質量部の範囲内である。有機リン化合物の添加量が少ないと、均一な硬化膜を得られない虞があり、多すぎると材料強度が低くなる虞がある。
【0017】
また(メタ)アクリレート混合物には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて(D)その他各種の添加剤を含有することができる。前記添加剤としては、例えば、安定化剤、可塑剤、軟化剤、顔料、染料、耐電防止剤、難燃剤、増感剤、分散剤、溶剤、抗菌抗カビ剤等が挙げられる。
【0018】
前記安定化剤としては、老化防止剤、酸化防止剤、脱水剤等が挙げられる。例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物(老化防止剤)、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トリフェニルフォスフェート等(酸化防止剤)、無水マレイン酸、無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二水物、生石灰、カルボジイミド誘導体、ステアリルクロライド等の酸クロライド(脱水剤)が挙げられる。また少量のメタキノン等の重合禁止剤等も安定化剤として使用することができる。但し、前記安定化剤は、ほとんどのものがフリーラジカルを介した反応に負の影響を与えるので、極微量の添加が好ましい。
【0019】
前記可塑剤としては、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチルヘキシル、コハク酸イソデシル、ジエチレングリコールジペンゾエート、ペンタエリスリトールエステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル、フェノール、ラウリル酸、ステアリン酸、ドコサン酸、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等が挙げられる。
【0020】
前記軟化剤としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0021】
前記顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料が挙げられる。
【0022】
前記帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩、ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0023】
前記難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
【0024】
前記増感剤としては、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、市販品としてユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
【0025】
前記分散剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル等の界面活性剤が挙げられる。
【0026】
前記溶剤としては、分子複合体を溶解させ、粘度を下げるもの、相溶性を高めるものであれば良く、具体的にはテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの極性溶剤、ジクロロエタン、トリクロロベンゼンなどの塩素系溶剤が挙げられる。
【0027】
本発明の(メタ)アクリレート混合物は、紫外線照射装置から紫外線等の光を照射して混合物全体を光架橋させて硬化することができる。光架橋の際の照射光は、紫外線以外に可視光等であってもよい。紫外線照射装置は、従来公知の各種照射装置を用いることができる。また紫外線の照射条件も、形状等に応じて、適宜設定することができる。
【0028】
また、(メタ)アクリレート混合物が、重合開始剤として光重合開始剤と熱重合開始剤を含有する場合は、光照射或いは表面からの加熱により混合物全体を架橋させて硬化させることができる。
【0029】
(メタ)アクリレート混合物を硬化させる際に、光や熱が直接届かない深部であっても、混合物中には有機リン化合物を含有していることにより、架橋させて硬化させることが可能である。本発明の(メタ)アクリレート混合物は、このような暗部が存在する箇所に好適に用いることができる。
【0030】
本発明の(メタ)アクリレート混合物は、例えば、自動車部材、電気・電子機器、航空機部材等の接着材料、コーティング材料、封止材料、モールド成型材料等に用いることができる。
【0031】
本発明を用いたワイヤーハーネス材料は、上記(メタ)アクリレート混合物を用いて形成されるものである。ワイヤーハーネス材料として、具体的には、ワイヤーハーネス保護材、電線コーティング材、ワイヤーハーネス用接着剤等が挙げられる。ワイヤーハーネス材料の形状などは特に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1〜18
表1に(A)(メタ)アクリレート成分と(B)重合開始剤成分の混合物からなる組成物の調製例を示す。表1に示す(メタ)アクリレート成分と、光開始剤(光重合開始剤)と、熱開始剤(熱重合開始剤)を、表1に示す組成(質量部)で、攪拌機を用いて混合し溶解又は分散させ、表に示される調製例A−1〜A−7の組成物を得た。調製例A−1〜A−4は、光重合開始剤が添加されていて光硬化材料として形成されている。調製例A−5〜A−7は、光重合開始剤と熱重合開始剤が添加されていて光硬化材料+熱硬化材料として形成されている。次いで、表2、3に示す組成で、上記調製例の組成物と有機リン化合物を混合して実施例1〜18の(メタ)アクリレート混合物を得た。
【0034】
比較例1〜4
表4に示すように、比較のために、有機リン化合物を添加しない(メタ)アクリレートと光重合開始剤の混合物(比較例1〜3)、(メタ)アクリレートとα−ヒドロキシケトン系ではない光重合開始剤と有機リン化合物の混合物(比較例4)について、実施例と同様に試験を行った。
【0035】
表1〜4の各成分の略号は下記の通りである。
〔(メタ)アクリレート〕
・IBA:イソボルニルアクリレート
・STMA:ステアリルメタクリレート
〔光開始剤〕
・HCHPK:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
・HMPPO:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製:DAROCUR 1173)
・MAPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製:LUCIRIN TPO)
〔熱開始剤〕
・DCP:ジクミルパーオキサイド
・AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
〔有機リン化合物〕
・トリフェニルフォスフィン
・リン酸トリフェニル
・亜リン酸トリフェニル
・トリフェニルフォスフィンオキシド
・亜リン酸トリ-p-トリル
・メチルジフェニルフォスフィン
・トリフェニルホスフィンスルフィド
・ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン
・エチルジフェニルホスフィン
・リン酸トリブチル
・亜リン酸トリオクチル
【0036】
実施例1〜18、比較例1〜4の(メタ)アクリレート混合物について、下記の方法により深部硬化性を評価した。深部硬化性の評価結果は、残留硬化物長として表2〜4に示した、残留硬化物長が大きい程、深部硬化性が良いことを示している。
【0037】
〔深部硬化性評価方法〕
表2〜4に示された組成物を、底面をテフロン栓で塞いだ内径10mmの硬質テフロンチューブ中に液面の高さが50mmになるように入れ、光硬化材料については上面からUVランプ(SEN特殊光源社製100mW/cm
2)で2秒間紫外線照射を行い、熱硬化材料(光硬化材料+熱硬化材料:実施例14〜16)については上面からハロゲンヒーターで30秒間表面加熱を行った。ラジカル重合反応が起こっていれば組成物は固化するため、底面のテフロン栓を抜いた際、ラジカル重合反応が起こっていない組成物は液体のままの流れ落ち、固化物(ラジカル重合硬化物)はテフロンチューブ中に残留する。すなわち、テフロンチューブ中の残留固化物の長さが長い程、光の届き難い深部でもラジカル重合反応が進行していることとなり、一定量のエネルギーでより効率的にムラ無く硬化反応を起こす事ができるということとなる。表2〜4に前記硬化後のテフロンチューブ中の残留固化物の長さを残留固化物長(mm)として示し、この長さを深部硬化性の指標とした。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
〔評価結果〕
表4に示すように、比較例1〜3は有機リン化合物を含まず、比較例4はα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤を含んでいないため、25mm以上より深部では硬化が十分で無く、各開始剤に与えられたエネルギーではラジカル重合反応が十分に起こっていない事を示している。これに対し、実施例1〜18の組成物では、比較例の組成よりも残留固化物の長さが伸びており、従来の光硬化材料では硬化させることができなかった光の届き難い深部においてもラジカル重合反応による硬化を達成しており、硬化反応が高効率化されていることが確認された。
【0043】
上記実施例は、有機リン化合物を(メタ)アクリレートとα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤と共存させることで、低エネルギーで複雑な形状や厚みのある形状でも均一に硬化したラジカル性の硬化材料が得られることを示すものである。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。