特許第6076691号(P6076691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076691
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】可視光通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/116 20130101AFI20170130BHJP
   H04B 10/80 20130101ALI20170130BHJP
   H04B 10/40 20130101ALI20170130BHJP
【FI】
   H04B10/116
   H04B10/80
   H04B10/40
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-236810(P2012-236810)
(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2014-87005(P2014-87005A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594077622
【氏名又は名称】ダイトロンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(72)【発明者】
【氏名】岡矢 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】向田 峰彦
(72)【発明者】
【氏名】小薮 隆史
(72)【発明者】
【氏名】堀 正輝
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−055408(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0183782(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0069951(US,A1)
【文献】 Norman Farr et al.,Optical Modem Technology for Seafloor Observatories,OCEANS 2005, Proceedings of MTS/IEEE,米国,IEEE,2005年 9月17日,pages.1-7
【文献】 D.Wu et al.,Optimisation of Lambertian order for indoor non-directed optical wireless communication,1st IEEE International Conference on Communications in China Workshops (ICCC),米国,IEEE,2012年 8月15日,pages.43-48
【文献】 D.Wu et al.,Channel characteristics analysis of diffuse indoor cellular optical wireless communication systems,ACP. Asia Communications and Photonics Conference and Exhibition,中国,IEEE,2011年11月13日,pages.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/116
H04B 10/40
H04B 10/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向にずらして配置され、水平方向に相対的に移動可能に設けられる送信装置及び受信装置を備え、可視光を用いた光空間伝送によりデータを前記送信装置から前記受信装置に送信する可視光通信システムにおいて、
前記送信装置は、可視光を出力する第1発光部及び第2発光部と、選択部とを備え、
前記第1発光部は、可視光を発光する光源と、前記光源から放射される光の強度分布が水平面上で均一化するように補正する補正部とを備え、水平面上で光の強度分布が均一化した可視光を出力し、
前記第2発光部は、水平面上で光の強度分布がランバーシアン配光分布となる可視光を出力し、
前記選択部は、前記第1発光部及び前記第2発光部から光空間伝送に用いる1の発光部を選択する
ことを特徴とする可視光通信システム。
【請求項2】
上下方向にずらして配置され、水平方向に相対的に移動可能に設けられる送信装置及び受信装置を備え、データを前記送信装置から可視光を用いた光空間伝送により前記受信装置に送信する可視光通信システムにおいて、
前記送信装置は、可視光を出力する第1発光部及び第2発光部と、選択部とを備え、
前記第1発光部は、可視光を発光する複数の光源を備え、光の強度分布が水平面上で均一化するように前記複数の光源から放射される光の少なくとも一部が重ね合わせられ
前記第2発光部は、水平面上で光の強度分布がランバーシアン配光分布となる可視光を出力し、
前記選択部は、前記第1発光部及び前記第2発光部から光空間伝送に用いる1の発光部を選択する
ことを特徴とする可視光通信システム。
【請求項3】
前記送信装置及び前記受信装置の少なくとも一方が水中に配置され、前記送信装置から出力される可視光が前記水中を通って前記受信装置に伝達されることを特徴とする請求項1又は2に記載の可視光通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光通信システムに関し、特に、水中での通信に適用できる可視光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水中でのデータの送受信は主として音響を用いて行われているが、より高速、大容量の通信を実現するため可視光を利用することが提案されている(例えば、下記特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、水中を移動する水中移動体に対して、水中に設置された観測装置から可視光を用いた光空間伝送により観測データを送受信する可視光通信システムが開示され、特許文献2には、水中に所在するダイバー間で可視光を用いた光空間伝送により音声データを送受信する可視光通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−278455号公報
【特許文献2】特開2008−304649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水中移動体と観測装置の間や、ダイバー同士の間や、海上の船舶とダイバーの間などの水中で行われる通信では、送信側と受信側とが、上下方向にずれて配置され、水平方向に相対的に移動しながら通信することが多いため、次のような問題がある。
【0006】
すなわち、送信側において可視光を発光する光源は、通常、その中央部(光軸上)で最も照度が高く、照度角度θが大きくなり周辺へ行くほど急激に照度が低下する、いわゆるランバーシアン配光分布の指向特性を有しているため、送信側及び受信側が水平方向に相対的に移動すると、受信側において受光される光量が急激に減少し、安定した通信が困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題を考慮してなされたものであり、上下方向にずらして配置される送信装置及び受信装置が水平方向に相対的に移動しても、可視光を用いた光空間伝送により安定してデータを送受信することができる可視光通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の発明は、上下方向にずらして配置され、水平方向に相対的に移動可能に設けられる送信装置及び受信装置を備え、可視光を用いた光空間伝送によりデータを前記送信装置から前記受信装置に送信する可視光通信システムにおいて、前記送信装置は、可視光を出力する第1発光部及び第2発光部と、選択部とを備え、前記第1発光部は、可視光を発光する光源と、前記光源から放射される光の強度分布が水平面上で均一化するように補正する補正部とを備え、水平面上で光の強度分布が均一化した可視光を出力し、前記第2発光部は、水平面上で光の強度分布がランバーシアン配光分布となる可視光を出力し、前記選択部は、前記第1発光部及び前記第2発光部から光空間伝送に用いる1の発光部を選択することを特徴とする
【0009】
本発明に係る第2の発明は、上下方向にずらして配置され、水平方向に相対的に移動可能に設けられる送信装置及び受信装置を備え、データを前記送信装置から可視光を用いた光空間伝送により前記受信装置に送信する可視光通信システムにおいて、前記送信装置は、可視光を出力する第1発光部及び第2発光部と、選択部とを備え、前記第1発光部は、可視光を発光する複数の光源を備え、光の強度分布が水平面上で均一化するように前記複数の光源から放射される光の少なくとも一部が重ね合わせられ、前記第2発光部は、水平面上で光の強度分布がランバーシアン配光分布となる可視光を出力し、前記選択部は、前記第1発光部及び前記第2発光部から光空間伝送に用いる1の発光部を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上下方向にずらして配置される送信装置及び受信装置が水平方向に相対的に移動しても、可視光を用いた光空間伝送により安定してデータを送受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る可視光通信システムを示す図である。
図2図1に示す可視光通信システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
本実施形態に係る可視光通信システム10は、送信装置12と受信装置14とを備え、可視光を用いた光空間伝送によりデータを送信装置12から受信装置14に送信するものである。この可視光通信システム10は、例えば、図1に示すように、送信装置12が水上を停留あるいは移動する船舶1に取り付けられ、受信装置14が水中を移動するダイバーなどの移動体2に取り付けられており、送信装置12及び受信装置14が、水平方向に相対的に移動可能としつつ、上下方向にずらして配置されている。
【0014】
なお、船舶1には送信装置12に加えて受信装置15が設けられ、移動体2には受信装置14に加えて送信装置13が設けられているが、船舶1の受信装置15及び移動体2の送信装置13は、船舶1の送信装置12及び移動体2の受信装置14と光源の光軸の向きが上下逆方向である点で異なるが、他の構造は同一であるため、ここでは、送信装置12及び受信装置14について説明し、送信装置13及び受信装置15の説明を省略する。
【0015】
図2に示すように、送信装置12は、変調部16と、選択部18と、第1発光部20と、第2発光部22とを備える。
【0016】
変調部16は、受信装置14へ伝送するデータを光制御信号に変調して選択部18へ出力する。選択部18は、第1発光部20及び第2発光部22のうち受信装置14への光空間伝送に用いる1の発光部を選択するもので、この例では、ユーザーが指定した発光部を選択し、変調部12から入力された光制御信号を選択した一方の発光部へ出力する。
【0017】
第1発光部20は、LEDなどの光源24と、光源24の光軸上に配置された補正部26とを有している。光源24は、光軸を上方に向けて配置され、選択部18から入力された光制御信号に応じた可視光を発光して、これを補正部26へ放射する。
【0018】
補正部26は、光源24から放射された光の強度分布を水平面上で均一化するように光源24からの光を補正した後、外部へ出力する。補正部26として、例えば、光源24からの光を平行光にする凸レンズなどが用いられる。
【0019】
第2発光部20は、LEDなどの光源28と拡散部30とを有している。光源28は、光軸を上方に向けて配置され、選択部18から入力された光制御信号に応じた可視光を発光して、これを拡散部30へ放射する。
【0020】
拡散部30は、光源28から放射された光を拡散し外部へ出力する。光源28に用いたLEDは、その中央部で最も照度が高く、照度角度θが大きくなり周辺へ行くほど急激に照度が低下する、いわゆるランバーシアン配光分布の指向特性を有しているため、拡散部30から出力される可視光も、ランバーシアン配光分布を有している。
【0021】
受信装置14は、受光部32と復調部34とを備える。受光部32は、フォトダイオードを有し、送信装置12から送信された可視光を受信し電気信号に変換して復調部34へ出力する。復調部34は、受光部32から出力された電気信号を復調して、可視光に含まれるデータを取得する。
【0022】
以上のように、本実施形態の可視光通信システム10では、光の強度分布が水平面内上で均一化された可視光を送信装置12から出力されており、水平方向の広範囲にわたってほぼ等しい強度の可視光を照射することができるため、送信装置12及び受信装置14が水平方向に相対的に移動しても、光空間伝送により安定してデータを送受信することができる。
【0023】
また、本実施形態では、送信装置12において選択部18が、水平面上で光の強度分布が均一化された可視光を出力する第1発光部20と、水平面上で光の強度分布がランバーシアン配光分布となる可視光を出力する第2発光部とから光空間伝送に用いる発光部を選択するため、送信装置12及び受信装置14の移動状況に応じて適切な送信装置12から出力される可視光の強度分布を選択することができ、より一層、安定してデータを送受信することができる。
【0024】
なお、上記した実施形態では、第1発光部20に設けられた補正部26が光源24の光を補正することで、送信装置12から出力する可視光の強度分布を水平面上で均一化したが、例えば、第1発光部20に複数の光源24を設け、複数の光源24から放射される光の少なくとも一部を重ね合わせることで、送信装置12から出力する可視光の強度分布を水平面上で均一化してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1…船舶 2…移動体 10…可視光通信システム
12…送信装置 14…受信装置 16…変調部
18…選択部 20…第1発光部 22…第2発光部
24…光源 26…補正部 28…光源
30…拡散板 32…受光部 34…復調部
図1
図2