(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076703
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】パイプの曲げ加工装置
(51)【国際特許分類】
B21D 7/025 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
B21D7/025 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-247088(P2012-247088)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2014-94393(P2014-94393A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094547
【弁理士】
【氏名又は名称】岩根 正敏
(72)【発明者】
【氏名】蘭 光平
(72)【発明者】
【氏名】中里 和彦
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−246347(JP,A)
【文献】
特開昭50−031461(JP,A)
【文献】
特開2012−030266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面にパイプの径に対応した半径の溝を有する一対の曲げ型を備え、上記一対の曲げ型の溝にパイプを挟持させ、一方の曲げ型の軸心を中心にして他方の曲げ型を公転させることによって、選択した曲げ型の溝の周面に沿った曲率半径でパイプを曲げるようにしたパイプの曲げ加工装置において、装置機枠に駆動手段を設置するとともに、該装置機枠に、回動可能に可動機枠を配設し、該可動機枠に上記曲げ型を設置するとともに、上記駆動手段の出力軸と上記可動機枠との間に間歇歯車機構を介在させ、上記駆動手段を一方に回転させることによって上記可動機枠を上記一方の曲げ型の軸心を中心にして回動させ、上記駆動手段を他方に回転させることによって上記可動機枠を上記他方の曲げ型の軸心を中心にして回動させるようにしたパイプの曲げ加工装置であって、上記間歇歯車機構は、上記駆動手段の出力軸に固設され、一部に欠歯円弧部を有する駆動歯車と、一部に歯を有し、他部表面にピンが突設され、上記駆動歯車を挟むようにして、軸の軸心を上記曲げ型のそれぞれの軸心に一致させて配設した一対の従動歯車と、上記可動機枠に上記従動歯車のピンに対向する面に、上記一対の従動歯車の軸心をそれぞれ中心として形成された弧状溝カムとを備え、上記それぞれの弧状溝カムに上記従動歯車のピンを係合させたことを特徴とする、パイプの曲げ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプの曲げ加工装置に関するもので、特に、周面にパイプを収容する溝を有する曲げ型を備えたパイプの曲げ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パイプの曲げ加工装置として、周面にパイプの径に対応した半径の溝を有する一対の曲げ型を備え、それらの曲げ型の溝にパイプを挟持させ、一方の曲げ型の軸心を中心にして他方の曲げ型を公転させることによって、選択した曲げ型の溝の周面に沿った曲率半径でパイプを曲げるようにしたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
この特許文献1に開示されたパイプの曲げ加工装置では、相対向する曲げ型間を拡開するシリンダ等を備えた可動機枠を、それぞれの曲げ型の軸心を中心にして回動するように装置機枠に設置するとともに、それぞれの曲げ型の軸心延長上に回動軸をそれぞれ設置し、この回動軸を駆動させるモータをそれらの回動軸間に移動可能に設置し、モータを移動させ、そのモータの出力軸を選択した回動軸に連結させることによって、一台のモータで可動機枠を作動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−30266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のパイプの曲げ加工装置では、可動機枠を作動させるモータを一台にしているため、装置の小型化は図れる。しかし、モータを移動させる駆動機構が別に必要となり、機構の複雑化は避けられないばかりでなく、モータを移動させるための時間が必要になり、加工作業に時間を要する。
【0006】
本発明は、上記のような実情に鑑みて成されたもので、装置が複雑になることなく、装置の小型化が図れ、しかも作業時間を短縮することができるパイプの曲げ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、請求項1のパイプの曲げ加工装置は、周面にパイプの径に対応した半径の溝を有する一対の曲げ型を備え、上記一対の曲げ型の溝にパイプを挟持させ、一方の曲げ型の軸心を中心にして他方の曲げ型を公転させることによって、選択した曲げ型の溝の周面に沿った曲率半径でパイプを曲げるようにしたパイプの曲げ加工装置において、装置機枠に駆動手段を設置するとともに、該装置機枠に、回動可能に可動機枠を配設し、該可動機枠に上記曲げ型を設置するとともに、上記駆動手段の出力軸と上記可動機枠との間に間歇歯車機構を介在させ、上記駆動手段を一方に回転させることによって上記可動機枠を上記一方の曲げ型の軸心を中心にして回動させ、上記駆動手段を他方に回転させることによって上記可動機枠を上記他方の曲げ型の軸心を中心にして回動させるようにした
パイプの曲げ加工装置であって、上記間歇歯車機構は、上記駆動手段の出力軸に固設され、一部に欠歯円弧部を有する駆動歯車と、一部に歯を有し、他部表面にピンが突設され、上記駆動歯車を挟むようにして、軸の軸心を上記曲げ型の軸心にそれぞれ一致させて配設した一対の従動歯車と、上記可動機枠に上記従動歯車のピンに対向する面に、上記一対の従動歯車の軸心をそれぞれ中心として形成された弧状溝カムとを備え、上記それぞれの弧状溝カムに上記従動歯車のピンを係合させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記した本発明に係るパイプの曲げ加工装置によれば、1つの駆動手段で、曲げ型の2つの曲げ加工態様を行なうので、装置の小型化が図れ、しかも駆動手段を移動させる必要がないので、作業時間の短縮も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るパイプの曲げ加工装置の前面側から視た斜視図である。
【
図2】本発明に係るパイプの曲げ加工装置の背面側から視た斜視図である。
【
図3】本発明に係るパイプの曲げ加工装置の可動機枠に搭載されている曲げ型,シリンダ,駆動機構等を示した斜視図である。
【
図4】可動機枠の駆動機構を示した要部分解斜視図である。
【
図5】駆動機構の作動を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るパイプの曲げ加工装置を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
装置機枠10は、その取付部10aが図示しないロボットのアームに連結される。そして、曲げ加工装置1が、パイプAに対してその周方向または軸と平行な方向に移動される。
【0013】
図1および
図2に示すように、装置機枠10には、クランプ手段11が設置されている。クランプ手段11は、一対のクランプ12,12を備えている。それらのクランプ12は、パイプAを挟持するもので、相対向する面にパイプAを収容する溝ローラ13を有している。そして、クランプ12は、下部が装置機枠10に支持され、装置機枠10に設置されたシリンダ14によって、リンク15を介して作動され、パイプAを挟持する状態と、パイプAを開放する状態とをとる。
【0014】
装置機枠10は、可動機枠20を備えている。
図3に示すように、可動機枠20には、一対の曲げ型21,21が設置されている。これらの曲げ型21は、周面にパイプAの径に対応する半径の溝22を備えている。そして、それらの曲げ型21は、離接可能に可動機枠20に支持されている。
【0015】
また、上記可動機枠20には、一対のアクチュエータであるシリンダ23,23が設置されている。これらのシリンダ23の作動ロッド23aの先端は、リンク24を介して曲げ型21にそれぞれ連結されている。そして、一対の曲げ型21,21は、シリンダ23,23によって、それぞれの曲げ型21の溝22が互いに対向した状態、即ち、それぞれの曲げ型21の溝22で、パイプAを挟持する状態と、曲げ型21が互いに離反した状態、即ち、それぞれの曲げ型21の溝22が離反してパイプAの挟持を開放した状態とに作動される。
【0016】
上記装置機枠10と上記可動機枠20との間には、
図4に示すように、間歇歯車伝達機構による可動機枠作動機構30が介装されている。可動機枠20は、一対の曲げ型21,21のそれぞれの軸心に対して回動可能に、可動機枠作動機構30を介して装置機枠10に支持されている。
【0017】
上記可動機枠作動機構30は、装置機枠10に、駆動手段であるモータ31、該モータ31の出力軸31aに固着される駆動歯車32、該駆動歯車32を挟むようにして配置された一対の従動歯車33,34を備えている。
【0018】
駆動歯車32は、
図4および
図5に示すように、周縁一部に歯32aを有し、周縁他部に欠歯円弧部32bを有している。従動歯車33,34は、周縁一部に歯33a,34aをそれぞれ有し、周縁他部に形成された延長部の上面に立設されたピン33b,34bをそれぞれ有している。
【0019】
そして、駆動歯車32が、例えば時計方向に回動された場合に、該駆動歯車32の歯32aが従動歯車33の歯33aに噛合し、従動歯車33が反時計方向に回動される。その間、従動歯車34は、駆動歯車32の欠歯円弧部32bに摺接した状態に維持され、回動されることはない。
【0020】
可動機枠20は、溝カム35,36およびガイド溝37,38を備えている。本実施形態の溝カム35は、従動歯車33のピン33bに嵌合され、従動歯車34の軸心を中心とする円弧状に形成され、溝カム36は、従動歯車34のピン34bに嵌合され、従動歯車33の軸心を中心とする円弧状に形成されている。
【0021】
ガイド溝37は、従動歯車33の軸33cに嵌合され、該従動歯車33の軸33cの当接する面を一端とした、軸34cの軸心を中心とする円弧状に形成され、ガイド溝38は、従動歯車34の軸34cに嵌合され、該従動歯車34の軸34cの当接する面を一端とした、従動歯車33の軸心を中心とする円弧状に形成されている。
【0022】
図5において、モータ31の出力軸31aによって駆動歯車32が時計方向に回転されると、その歯32aが従動歯車33の歯33aと噛合し、従動歯車33を反時計方向に回転させる。従動歯車33が回転されると、該従動歯車33のピン33bが可動機枠20の溝カム35の側壁を押圧する。すると、従動歯車34の軸34cが可動機枠20のガイド溝38に嵌合しているため、可動機枠20は、従動歯車33の軸33cを中心にして反時計方向(矢印方向)に回動される(2点鎖線参照)。
【0023】
また、モータ31の出力軸31aが反時計方向に回転されると、上記作動と同様に、今度は可動機枠20は、従動歯車34の軸34cを中心にして時計方向に回動される。
【0024】
このような可動機枠作動機構30を備えた曲げ加工装置1では、クランプ12,12および曲げ型21,21によってパイプAが挟持される。そして、モータ31を一方に駆動することによって、可動機枠20を、例えば、
図5に示すように、従動歯車33の軸33cを中心として反時計方向に回動させる。すると、従動歯車33の軸33cと位置する軸心上に配置された一方の曲げ型21の軸心を中心として他方の曲げ型21が回動され、一対の曲げ型21,21に挟持されたパイプAが、一方の曲げ型21の溝22に沿って変形される。
【0025】
次いで、クランプ12,12および曲げ型21,21を拡開してパイプAを開放し、パイプAを次の曲げ位置まで移動させ、曲げ加工装置1をロボットアーム等によって姿勢を変更し、そこで、パイプAをクランプ12,12および曲げ型21,21によって再び挟持し、上記と同様にして曲げ加工を実施する。
【0026】
以上、本発明に係るパイプの曲げ加工装置の一実施の形態を説明したが、本発明は、何ら既述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、種々の変形および変更が可能であることは当然である。
【符号の説明】
【0027】
1 曲げ加工装置
10 装置機枠
11 クランプ手段
12 クランプ
13 溝ローラ
14 シリンダ
15 リンク
20 可動機枠
21 曲げ型
22 溝
23 シリンダ
24 リンク
30 可動機枠作動機構(間歇歯車伝達機構)
31 モータ(駆動手段)
31a 出力軸
32 駆動歯車
32a 歯
32b 欠歯円弧部
33,34 従動歯車
33a,34a 歯
33b,34b ピン
33c,34c 軸
35,36 溝カム
37,38 ガイド溝
A パイプ