特許第6076704号(P6076704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076704
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】非空気圧タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/14 20060101AFI20170130BHJP
   B60C 7/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   B60C7/14
   B60C7/00 H
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-252306(P2012-252306)
(22)【出願日】2012年11月16日
(65)【公開番号】特開2014-100932(P2014-100932A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 健史
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 政弘
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0173421(US,A1)
【文献】 特開平02−179503(JP,A)
【文献】 特開昭60−236803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 7/00
B60C 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両からの荷重を支持する支持構造体を備える非空気圧タイヤにおいて、
前記支持構造体は、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する連結部とを備え、
前記連結部は、タイヤ幅方向断面において、前記内側環状部のタイヤ幅方向一方側から前記外側環状部のタイヤ幅方向他方側へ向かって延設される第1連結部と、前記第1連結部と交差するように前記内側環状部の前記タイヤ幅方向他方側から前記外側環状部の前記タイヤ幅方向一方側へ向かって延設される第2連結部とで構成されており、
タイヤ周方向から見た前記第1連結部及び前記第2連結部には、タイヤ径方向に湾曲する湾曲部が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする非空気圧タイヤ。
【請求項2】
前記連結部は、タイヤ周方向に複数に分割されていることを特徴とする請求項1に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項3】
タイヤ周方向に分割された複数の前記連結部は、隣り合う連結部同士の間隔が0〜5mmであることを特徴とする請求項2に記載の非空気圧タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ構造部材として、車両からの荷重を支持する支持構造体を備える非空気圧タイヤ(non−pneumatic tire)に関するものであり、好ましくは空気入りタイヤの代わりとして使用することができる非空気圧タイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、荷重の支持機能、接地面からの衝撃吸収能、および動力等の伝達能(加速、停止、方向転換)を有し、このため、多くの車両、特に自転車、オートバイ、自動車、トラックに採用されている。
【0003】
特に、これらの能力は自動車、その他のモーター車両の発展に大きく貢献した。更に、空気入りタイヤの衝撃吸収能力は、医療機器や電子機器の運搬用カート、その他の用途でも有用である。
【0004】
従来の非空気圧タイヤとしては、例えばソリッドタイヤ、スプリングタイヤ、クッションタイヤ等が存在するが、空気入りタイヤの優れた性能を有していない。例えば、ソリッドタイヤおよびクッションタイヤは、接地部分の圧縮によって荷重を支持するが、この種のタイヤは重くて、堅く、空気入りタイヤのような良好な乗り心地や操縦安定性を確保することが困難であった。
【0005】
そこで、下記の特許文献1には、空気入りタイヤと同様な動作特性を有する非空気圧タイヤを開発する目的で、タイヤに加わる荷重を支持する補強された環状バンドと、この補強された環状バンドとホイールとの間で張力によって荷重力を伝達する複数のウェブスポークとを有する非空気圧タイヤが提案されている。
【0006】
特許文献1の非空気圧タイヤにおいて、ウェブスポークは、ホイールと環状バンドとの間で張力によって荷重を支持する機能を有する。荷重を支持する力は、環状バンドの地面接触部分に結合していないウェブスポーク内の張力によって生じる。このように、ウェブスポークに適切に張力を生じさせるためには、環状バンドの剛性を高めて変形を抑制する必要がある。しかし、環状バンドの剛性を高めると、タイヤ周方向の接地長が短くなって接地面積が小さくなるため、操縦安定性の悪化及び転がり抵抗の増大に繋がるという問題があった。
【0007】
一方、下記特許文献2には、転がり抵抗の低減及び乗り心地性や操縦安定性の向上を図る目的で、リンク機構によってトレッドをリング状部材に対してタイヤ径方向、タイヤ幅方向に相対変位可能としたリンク式の非空気圧タイヤが記載されている。
【0008】
下記特許文献3には、複数の支持要素と、各支持要素を周方向で相互に連結する連結構造体とで構成された荷重支持構造体を有する非空気圧タイヤが記載されている。また、支持要素と連結構造体は、可撓性継手を介して連結されている。この非空気圧タイヤでは、支持要素と可撓性継手が撓むことで荷重を支持している。
【0009】
しかしながら、特許文献2の非空気圧タイヤは、リンク機構を構成するための部品点数が非常に多く、製造工程に負担がかかる。この非空気圧タイヤは、一般的なソリッドタイヤに比べると軽量であるが、リンク機構には多くの金属部品が使用されるため、空気入りタイヤに比べるとタイヤ全体の重量が大きくなる傾向がある。さらに、リンク機構が複雑なため、耐久性も悪化する可能性がある。特許文献3の非空気圧タイヤも、荷重支持構造体が複雑な構成となっており、製造が難しく、コストもかかる。さらに、タイヤ内面は空洞となっているため、十分な横剛性が得られず、良好な操縦安定性を得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2005−500932号公報
【特許文献2】特開2010−100244号公報
【特許文献3】特開2003−320808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、耐久性を維持しつつ、操縦安定性の悪化と転がり抵抗の増大を抑制できる非空気圧タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の非空気圧タイヤは、車両からの荷重を支持する支持構造体を備える非空気圧タイヤにおいて、
前記支持構造体は、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する連結部とを備え、
前記連結部は、タイヤ幅方向断面において、前記内側環状部のタイヤ幅方向一方側から前記外側環状部のタイヤ幅方向他方側へ向かって延設される第1連結部と、前記第1連結部と交差するように前記内側環状部の前記タイヤ幅方向他方側から前記外側環状部の前記タイヤ幅方向一方側へ向かって延設される第2連結部とで構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の非空気圧タイヤは、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、内側環状部と外側環状部とを連結する連結部とを備えている。連結部は、タイヤ幅方向断面において、内側環状部のタイヤ幅方向一方側から外側環状部のタイヤ幅方向他方側へ向かって延設される第1連結部と、第1連結部と交差するように内側環状部のタイヤ幅方向他方側から外側環状部のタイヤ幅方向一方側へ向かって延設される第2連結部とで構成されている。すなわち、連結部は、タイヤ幅方向断面において、第1連結部と第2連結部が交差して略X字状の形態をしている。この構成によれば、タイヤに垂直荷重が負荷された際、連結部は、タイヤ径方向に圧縮され、タイヤ幅方向へ広がるような変形を起こして荷重を支持する。これにより、第1連結部と第2連結部には、タイヤ幅方向に沿った張力を発生させることができるため、座屈を防ぎ、耐久性を維持できる。また、本発明の非空気圧タイヤは、外側環状部の地面接触部分に結合していない連結部の張力によって荷重を支持する構成でないため、外側環状部の剛性を高める必要はなく、タイヤ周方向の接地長を確保できる。これにより、接地面積の減少を抑えることができるため、操縦安定性の悪化を抑制でき、また、広い接地面内に接地圧を分散できるため、転がり抵抗の増大を抑制できる。
【0014】
本発明にかかる非空気圧タイヤにおいて、前記連結部は、タイヤ周方向に複数に分割されていることが好ましい。連結部がタイヤ周方向に複数に分割されていることで、外側環状部の柔軟性が向上し、タイヤ周方向の接地長が伸びるため、接地面積が広がる。これにより、操縦安定性の向上と転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0015】
本発明にかかる非空気圧タイヤにおいて、タイヤ周方向に分割された複数の前記連結部は、隣り合う連結部同士の間隔が0〜5mmであることが好ましい。連結部同士の間隔が広いと、接地圧が不均一となり、ノイズが増大する要因となり得る。連結部同士の間隔がこの範囲であれば、接地圧が不均一とならず、ノイズの増大を抑制しつつ、接地面積を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の非空気圧タイヤの一例を示す正面図
図2図1の非空気圧タイヤの一部を示す斜視図
図3】非空気圧タイヤのタイヤ子午線断面図
図4】他の実施形態に係る非空気圧タイヤを示す正面図
図5A】他の実施形態に係る連結部を示す斜視図
図5B】他の実施形態に係る連結部を示す斜視図
図5C】他の実施形態に係る連結部を示す斜視図
図5D】他の実施形態に係る連結部を示す斜視図
図5E】他の実施形態に係る連結部を示す斜視図
図6A】他の実施形態に係る非空気圧タイヤを示す正面図
図6B】他の実施形態に係る非空気圧タイヤを示す正面図
図7】比較例1の非空気圧タイヤを示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。初めに、本発明の非空気圧タイヤTの構成を説明する。図1は、非空気圧タイヤTの一例を示す正面図である。図2は、図1の非空気圧タイヤの一部を示す斜視図である。図3は非空気圧タイヤのタイヤ子午線断面図であり、図1のA−A断面図である。ここで、Oは軸芯を、Hはタイヤ断面高さを、それぞれ示している。
【0018】
非空気圧タイヤTは、車両からの荷重を支持する支持構造体SSを備えるものである。本発明の非空気圧タイヤTは、このような支持構造体SSを備えるものであればよく、その支持構造体SSの外側(外周側)や内側(内周側)に、トレッドに相当する部材、補強層、車軸やリムとの適合用部材などを備えていてもよい。
【0019】
本実施形態の非空気圧タイヤTは、図1の正面図に示すように、支持構造体SSが、内側環状部1と、その外側に同心円状に設けられた外側環状部2と、内側環状部1と外側環状部2とを連結する連結部3とを備えている。
【0020】
内側環状部1は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。また、内側環状部1の内周面には、車軸やリムとの装着のために、嵌合性を保持するための凹凸等を設けるのが好ましい。
【0021】
内側環状部1の厚みは、連結部3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの2〜7%が好ましく、3〜6%がより好ましい。
【0022】
内側環状部1の内径は、非空気圧タイヤTを装着するリムや車軸の寸法などに併せて適宜決定される。ただし、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、250〜500mmが好ましく、330〜440mmがより好ましい。
【0023】
内側環状部1のタイヤ幅方向の幅は、用途、車軸の長さ等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0024】
内側環状部1の引張モジュラスは、連結部3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、装着性を図る観点から、5〜180000MPaが好ましく、7〜50000MPaがより好ましい。なお、本発明における引張モジュラスは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した値である。
【0025】
本発明における支持構造体SSは、弾性材料で成形されるが、支持構造体SSを製造する際に、一体成形が可能となる観点から、内側環状部1、外側環状部2、及び連結部3は、補強構造を除いて基本的に同じ材質とすることが好ましい。
【0026】
本発明における弾性材料とは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した引張モジュラスが、100MPa以下のものを指す。本発明の弾性材料としては、十分な耐久性を得ながら、適度な剛性を付与する観点から、好ましくは引張モジュラスが5〜100MPaであり、より好ましくは7〜50MPaである。母材として用いられる弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂が挙げられる。
【0027】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等が例示される。架橋ゴム材料を構成するゴム材料としては、天然ゴムの他、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(水添NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが例示される。これらのゴム材料は必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0028】
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0029】
上記の弾性材料のうち、成形・加工性やコストの観点から、好ましくは、ポリウレタン樹脂が用いられる。なお、弾性材料としては、発泡材料を使用してもよく、上記の熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂を発泡させたもの使用可能である。
【0030】
弾性材料で一体成形された支持構造体SSは、内側環状部1、外側環状部2、及び連結部3が、補強繊維により補強されていることが好ましい。
【0031】
補強繊維としては、長繊維、短繊維、織布、不織布などの補強繊維が挙げられるが、長繊維を使用する形態として、タイヤ幅方向に配列される繊維とタイヤ周方向に配列される繊維とから構成されるネット状繊維集合体を使用するのが好ましい。
【0032】
補強繊維の種類としては、例えば、レーヨンコード、ナイロン−6,6等のポリアミドコード、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルコード、アラミドコード、ガラス繊維コード、カーボンファイバー、スチールコード等が挙げられる。
【0033】
本発明では、補強繊維を用いる補強の他、粒状フィラーによる補強や、金属リング等による補強を行うことが可能である。粒状フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ、アルミナ等のセラミックス、その他の無機フィラーなどが挙げられる。
【0034】
外側環状部2の形状は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。外側環状部2の厚みは、連結部3からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの2〜7%が好ましく、2〜5%がより好ましい。
【0035】
外側環状部2の内径は、その用途等応じて適宜決定される。ただし、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、420〜750mmが好ましく、480〜680mmがより好ましい。
【0036】
外側環状部2のタイヤ幅方向の幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0037】
外側環状部2の引張モジュラスは、図1に示すように外側環状部2の外周に補強層7が設けられている場合には、内側環状部1と同程度に設定できる。このような補強層7を設けない場合には、連結部3からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、5〜180000MPaが好ましく、7〜50000MPaがより好ましい。
【0038】
外側環状部2の引張モジュラスを高める場合、弾性材料を繊維等で補強した繊維補強材料が好ましい。外側環状部2を補強繊維により補強することで、外側環状部2とベルト層などとの接着も十分となる。
【0039】
連結部3は、内側環状部1と外側環状部2とを連結するものであり、タイヤの全周に亘って設けられる。連結部3は、タイヤ周方向CDに連続する連続体として構成してもよいが、本実施形態では、連結部3が、タイヤ周方向CDに複数に分割されている例を示す。
【0040】
連結部3は、図3に示すように、タイヤ幅方向断面において、内側環状部1のタイヤ幅方向一方側WD1から外側環状部2のタイヤ幅方向他方側WD2へ向かって延設される第1連結部31と、第1連結部31と交差するように内側環状部1のタイヤ幅方向他方側WD2から外側環状部2のタイヤ幅方向一方側WD1へ向かって延設される第2連結部32とで構成されている。すなわち、連結部3は、タイヤ幅方向断面において、第1連結部31と第2連結部32が交差して略X字状の形態をしている。
【0041】
本発明によれば、非空気圧タイヤTに垂直荷重が負荷された際、連結部3は、タイヤ径方向RDに圧縮され、タイヤ幅方向WDへ広がるような変形を起こして荷重を支持する。これにより、第1連結部31と第2連結部32には、タイヤ幅方向WDに沿った張力(図3に矢印で示す)を発生させることができるため、座屈を防ぎ、耐久性を維持できる。また、本発明の非空気圧タイヤTは、外側環状部2の地面接触部分に結合していない連結部3の張力によって荷重を支持する構成でないため、外側環状部2の剛性を高める必要はなく、タイヤ周方向CDの接地長を確保できる。これにより、接地面積の減少を抑えることができるため、操縦安定性の悪化を抑制でき、また、広い接地面内に接地圧を分散できるため、転がり抵抗の増大を抑制できる。
【0042】
なお、本実施形態では、第1連結部31及び第2連結部32は、内側環状部1と外側環状部2をタイヤ幅方向WDの両端でそれぞれ連結しているが、これに限定されない。第1連結部31及び第2連結部32は、内側環状部1と外側環状部2をタイヤ幅方向WDの両端よりも内側部でそれぞれ連結するようにしてもよい。
【0043】
タイヤ周方向CDから見た第1連結部31と第2連結部32は、タイヤ赤道面Cに対して対称な形状であることが好ましい。本実施形態では、図3に示すように、第1連結部31のタイヤ幅方向断面における断面形状と、第2連結部32のタイヤ幅方向断面における断面形状が、タイヤ赤道面Cに対して対称となるようにしている。そのため、以下に第1連結部31について説明するが、第2連結部32についても同様である。
【0044】
第1連結部31は、図2の斜視図のように、板状部材で形成されている。第1連結部31は、略矩形の板状をしており、板幅方向PWがタイヤ周方向CDに一致している。第1連結部31の延設方向PLは、タイヤ幅方向WDに対して傾斜する方向であり、タイヤ幅方向WDに対する傾斜角度は、15〜50°が好ましい。
【0045】
タイヤ周方向CDから見た第1連結部31は、タイヤ径方向RDに湾曲する湾曲部31aが少なくとも1つ形成されていることが好ましく、タイヤ径方向RDに湾曲する湾曲部31aが延設方向PLに沿って複数形成されていることがより好ましい。湾曲部31aが複数形成される場合、タイヤ径方向内側へ凸となる湾曲部31aとタイヤ径方向外側へ凸となる湾曲部31aが交互に形成される。湾曲部31aの数は、1〜15個が好ましく、3〜10個がより好ましい。湾曲部31aは、第1連結部31のうち応力が高くなるトレッド側に少なくとも1つ形成されることで、第1連結部31の応力を効果的に分散することができる。本実施形態では、湾曲部31aを2個設けた例を示す。湾曲部31aの曲率半径Rは、5〜200mmが好ましく、20〜150mmがより好ましい。
【0046】
第1連結部31と第2連結部32で構成される連結部3の数としては、車両からの荷重を十分支持しつつ、軽量化、動力伝達の向上、耐久性の向上を図る観点から、20〜200個が好ましく、30〜100個がより好ましい。図1には、連結部3を40個設けた例を示す。
【0047】
タイヤ周方向CDに分割された複数の連結部3は、隣り合う連結部3同士の間隔pが0〜5mmであることが好ましい。間隔pが5mmよりも大きいと、接地圧が不均一となり、ノイズが増大する要因となり得る。また、ユニフォミティを向上させる観点から、間隔pは一定とするのが好ましい。
【0048】
第1連結部31のタイヤ径方向RDの厚みtは、内側環状部1および外側環状部2からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、1〜10mmが好ましく、3〜7mmがより好ましい。また、第1連結部31のタイヤ径方向RDの厚みtは、第1連結部31の板幅よりも小さい。なお、第1連結部31の厚みtは、延設方向PLに沿って一定である必要はない。
【0049】
第1連結部31の引張モジュラスは、内側環状部1および外側環状部2からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、5〜180000MPaが好ましく、7〜50000MPaがより好ましい。第1連結部31の引張モジュラスを高める場合、弾性材料を繊維等で補強した繊維補強材料が好ましい。
【0050】
本実施形態では、図1に示すように、支持構造体SSの外側環状部2の外側に、その外側環状部2の曲げ変形を補強する補強層7が設けられている例を示す。また、本実施形態では、図1に示すように、補強層7の更に外側にトレッド層8が設けられている例を示す。補強層7は、上記の補強繊維を用いることができる。また、トレッド層8は、従来の空気入りタイヤと同様にゴムで成形してもよいが、上記の弾性材料で成形してもよい。また、トレッドパターンとして、従来の空気入りタイヤと同様のパターンを設けることが可能である。
【0051】
[他の実施形態]
(1)本発明の他の実施形態として、図4に示すような、車両からの荷重を支持する支持構造体SSを備える非空気圧タイヤTにおいて、支持構造体SSは、内側環状部1と、その内側環状部1の外側に同心円状に設けられた中間環状部4と、その中間環状部4の外側に同心円状に設けられた外側環状部2と、内側環状部1と中間環状部4とを連結し、タイヤ周方向CDに各々独立して設けられた複数の内側連結部5と、外側環状部2と中間環状部4とを連結する外側連結部6とを備え、外側連結部6は、タイヤ幅方向断面において、中間環状部4のタイヤ幅方向一方側WD1から外側環状部2のタイヤ幅方向他方側WD2へ向かって延設される第1外側連結部61と、第1外側連結部61と交差するように中間環状部4のタイヤ幅方向他方側WD2から外側環状部2のタイヤ幅方向一方側WD1へ向かって延設される第2外側連結部62とで構成されているものでもよい。このとき、内側連結部5の形状は特に限定されず、例えば、内側連結部5は、タイヤ幅方向WDに連続する板状体、すなわち板幅方向がタイヤ幅方向WDに一致するような板状体でもよい。
【0052】
中間環状部4の形状は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。ただし、中間環状部4の形状は、円筒形状に限られず、多角形筒状などでもよい。
【0053】
中間環状部4の厚みは、内側連結部5と外側連結部6とを十分補強しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの3〜10%が好ましく、4〜9%がより好ましい。
【0054】
中間環状部4の引張モジュラスは、内側連結部5と外側連結部6とを十分補強して、耐久性の向上、負荷能力の向上を図る観点から、8000〜180000MPaが好ましく、10000〜50000MPaがより好ましい。
【0055】
中間環状部4の引張モジュラスは、内側環状部1のそれより高いことが好ましいため、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂を繊維等で補強した繊維補強材料が好ましい。
【0056】
(2)第1連結部31と第2連結部32(又は第1外側連結部61と第2外側連結部62)は、剛性を異ならせ、両者に剛性差を与えるようにしてもよい。本発明の剛性は、タイヤに規定の質量(N)を与えた時、単位長さ(mm)を撓ませるのに必要な縦方向の力で表すことができる。剛性差を与える方法としては、例えば、以下のようなものがある。
【0057】
図5A図5Eは、他の実施形態に係る連結部の斜視図である。なお、図5では、説明の便宜のため、内側環状部1は省略されている。図5Aは、第1連結部31と第2連結部32の一方のみに穴を設けている。図5Bは、第1連結部31と第2連結部32の一方のみにスリットを設けている。図5Cは、第1連結部31と第2連結部32の一方に補強リブを設けている。図5Dは、第1連結部31と第2連結部32の板幅を異ならせている。図5Eは、第1連結部31と第2連結部32のタイヤ径方向の厚みを異ならせている。図5A図5Eの例では、いずれも第1連結部31の剛性が、第2連結部32の剛性よりも高くなっている。
【0058】
例えば、仮にタイヤ幅方向一方側WD1を車両内側として非空気圧タイヤTを車両に装着した場合、第1連結部31の剛性を第2連結部32の剛性よりも高くすることで、車両外側のショルダー剛性が高くなり、コーナリング時のグリップ力が向上する。さらに、第2連結部32が第1連結部31よりも変形しやすいため、タイヤの車両外側が接地しやすくなり、接地面積が広がる。その結果、第1連結部31の剛性を第2連結部32の剛性よりも高くすることで、コーナリング性能を向上できる。第1連結部31の剛性は、第2連結部32の剛性の1.2倍以上に設定するのが好ましく、第2連結部32の剛性の3倍以下が好ましい。第1連結部31の剛性が第2連結部32の剛性の3倍より大きくなると、第1連結部31と第2連結部32の剛性バランスが悪くなりユニフォミティが悪化する恐れがある。
【0059】
一方、仮にタイヤ幅方向一方側WD1を車両内側として非空気圧タイヤTを車両に装着した場合、第2連結部32の剛性を第1連結部31の剛性よりも高くすることで、レーンチェンジやカーブでの横力によるGを第1連結部31が吸収するため、振動を抑制し乗り心地を向上できる。さらに、キャンバー角が0°、及びネガティブキャンバーの場合には、接地面積の広い車両内側のショルダー剛性が高いため、乗り心地に加えてコーナリング性能も向上できる。
【0060】
(3)前述の実施形態では、連結部3は、タイヤ周方向CDに複数に分割されている例を示したが、図6Aに示すように、タイヤ全周に亘って同一の略X字断面形状を有し、タイヤ周方向CDに連続する連続体としてもよい。また、図6Bに示すように、中間環状部4を備える場合の外側連結部6についても同様である。
【0061】
(4)前述の実施形態では、タイヤ周方向CDから見た第1連結部31及び第2連結部32に湾曲部が形成されている例を示したが、第1連結部31及び第2連結部32は湾曲部が形成されていない平板状でもよい。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0063】
(1)転がり抵抗
ドラム走行試験にて、ISO28580に準じて転がり抵抗を測定した。比較例1の結果を100として指数で評価し、当該指数が大きいほど転がり抵抗が小さいことを示す。
【0064】
(2)操縦安定性能
車両にテストタイヤを装着して、4名のパネラーがテストコースにおいて発進、旋回、制動につき総合的に官能試験を行った。比較例1の結果を100として指数で評価し、当該指数が大きいほど操縦安定性能に優れていることを示す。
【0065】
(3)耐久性能
直径1.7mmのドラムを備えた室内ドラム試験機を使用し、空気圧を0kPa、試験速度を80km/hとし、タイヤ負荷荷重をJIS規定の85%から始め、規定時間ごとに荷重を上げていき、最終的に140%で走行させ、走行試験を行った。15000km走行後に故障が生じなかった場合を「○」とした。
【0066】
比較例1
表1に示す寸法および物性等にて、図7に示すような、内側環状部1、中間環状部4、外側環状部2、内側スポーク(内側連結部5に相当)、外側スポーク(外側連結部6に相当)を備える支持構造体、その外周に設けられた3層の補強層7、並びにトレッド層8を備える非空気圧タイヤを作製し、上記性能を評価した。内側連結部5及び外側連結部6は、タイヤ幅方向に連続する板状体とした。転がり抵抗、操縦安定性能、耐久性能の結果を表1に併せて示す。
【0067】
実施例1
表1に示す寸法および物性等にて、図6Aに示すような、内側環状部1、外側環状部2、外側スポーク(連結部3に相当)を備える支持構造体、その外周に設けられた3層の補強層7、並びにトレッド層8を備える非空気圧タイヤを作製し、上記性能を評価した。転がり抵抗、操縦安定性能、耐久性能の結果を表1に併せて示す。
【0068】
実施例2
表1に示す寸法および物性等にて、図6Bに示すような、内側環状部1、中間環状部4、外側環状部2、内側スポーク(内側連結部5)、外側スポーク(外側連結部6に相当)を備える支持構造体、その外周に設けられた3層の補強層7、並びにトレッド層8を備える非空気圧タイヤを作製し、上記性能を評価した。内側連結部5は、比較例1と同様、タイヤ幅方向に連続する板状体とした。転がり抵抗、操縦安定性能、耐久性能の結果を表1に併せて示す。
【0069】
実施例3
表1に示す寸法および物性等にて、図1に示すような、内側環状部1、外側環状部2、外側スポーク(連結部3に相当)を備える支持構造体、その外周に設けられた3層の補強層7、並びにトレッド層8を備える非空気圧タイヤを作製し、上記性能を評価した。転がり抵抗、操縦安定性能、耐久性能の結果を表1に併せて示す。
【0070】
実施例4
隣り合う外側スポーク(連結部3に相当)同士の間隔を異ならせた以外は実施例4と同じとした非空気圧タイヤを作製し、上記性能を評価した。転がり抵抗、操縦安定性能、耐久性能の結果を表1に併せて示す。
【0071】
なお、何れの非空気圧タイヤも、タイヤの外径を535mm、タイヤ幅を140mm、リム径を14インチとした。
【0072】
【表1】
【0073】
表1の結果から以下のことが分かる。実施例1〜4の非空気圧タイヤは、比較例1と比較して、耐久性能を維持しつつ、操縦安定性の悪化と転がり抵抗の増大を抑制できている。実施例2は、実施例1と比較して、内側スポークが配置されていることで、剛性が向上し、操縦安定性能は良くなるが、接地面積が減少し転がり抵抗は大きくなっている。実施例3は、実施例1と比較して、スポークが分割されていることで、接地面積が広がるため、操縦安定性能は良くなり、転がり抵抗は小さくなっている。実施例4は、実施例3と比較して、スポークの周方向間隔が広くなっていることで、若干剛性が低下して、接地面積が広がるため、操縦安定性能は下がるが、転がり抵抗は小さくなっている。
【符号の説明】
【0074】
1 内側環状部
2 外側環状部
3 連結部
4 中間環状部
5 内側連結部
6 外側連結部
31 第1連結部
32 第2連結部
61 第1外側連結部
62 第2外側連結部
SS 支持構造体
T 非空気圧タイヤ
CD タイヤ周方向
WD タイヤ幅方向
WD1 タイヤ幅方向一方側
WD2 タイヤ幅方向他方側
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図7