(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リテーナは、前記インフレータの軸方向一方側の端面に設けられる非円形状の配線接続部又は前記インフレータの軸方向一方側の端面の中心軸とはオフセットした位置に設けられる配線接続部に対応して設けられた第1穴を有し、
前記インフレータの前記配線接続部が前記リテーナの前記第1穴に嵌ることにより、該インフレータと該リテーナとの軸回りの回転が規制されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載のエアバッグ装置。
前記リテーナは、前記インフレータの軸方向一方側の端面に取り付けられる中心軸を中心とした点対称形状に形成されていないラベルに対応する第2穴が設けられた軸方向一方側端面を有し、
前記配線接続部が前記第1穴に嵌った状態で、前記第2穴を通して前記ラベルが視認可能な、請求項4又は5記載のエアバッグ装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて、本発明に係るエアバッグ装置の具体的な実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例であるエアバッグ装置10の分解斜視図を示す。
図2は、本実施例のエアバッグ装置10のインフレータ12とリテーナ14とが仮組み付けられた状態を表した斜視図を示す。
図3は、本実施例のエアバッグ装置10の組み立て後の状態を表した斜視図を示す。
図4は、本実施例のエアバッグ装置10を
図1における上方から見た際の上面図を示す。
図5は、本実施例のエアバッグ装置10を
図1における下方から見た際の下面図を示す。
図6は、本実施例のエアバッグ装置10の各部の断面図を示す。尚、
図6(A)には
図4に示す上面図と同じ上面図が、
図6(B)には
図6(A)に示すA−A断面図が、
図6(C)には
図6(A)に示すB−B断面図が、また、
図6(D)には
図6(A)に示すC−C断面図が、それぞれ示されている。
【0014】
更に、
図7は、本実施例のエアバッグ装置10のインフレータ12にカプラーが接続されていない状態を表した図を示す。尚、
図7(A)には上面図が、また、
図7(B)には
図7(A)に示すE−E断面図が、それぞれ示されている。また、
図8は、本実施例のエアバッグ装置10のインフレータ12にカプラーが接続されている状態を表した図を示す。尚、
図8(A)には上面図が、また、
図8(B)には
図8(A)に示すF−F断面図が、それぞれ示されている。
【0015】
本実施例において、エアバッグ装置10は、インフレータ12と、リテーナ14と、エアバッグ16と、バッグリング18と、を備えている。エアバッグ装置10は、インフレータ12の発生するガスを利用してエアバッグ16を膨張展開する装置であって、そのエアバッグ16の膨張展開によって車両乗員などを保護する装置である。尚、以下、エアバッグ装置10において、エアバッグ16が膨張展開する側を展開側とし、また、その展開側とは反対側を非展開側とする。
【0016】
インフレータ12は、円柱状に形成された、高圧のガスを発生する部材である。インフレータ12は、側面や軸方向端面から径方向へ向けて突出するフランジ等の取付片を有しないいわゆるフランジレスインフレータである。インフレータ12の側面には、穴の空いたガス噴出穴20が複数設けられている。ガス噴出穴20は、インフレータ12の側面の展開側位置に所定角度ごとに形成されている。インフレータ12は、発生したガスをガス噴出穴20から放出する。
【0017】
インフレータ12の非展開側の軸方向端面(
図1において上端面)には、ショーティングクリップ22が設けられている。ショーティングクリップ22は、インフレータ12内に設けられたガス発生のための点火装置の外部接続端子をインフレータ12の軸方向端面に表出させたものであって、外部装置(図示せず)と配線24を介して接続するコネクタとしての直方体形状のカプラー26が取り付けられる部材である。ショーティングクリップ22は、インフレータ12の軸方向端面の中心軸近傍においてその軸方向端面から軸方向外側へ突出する部材であって、非円形状(例えば、円形状の一部がカットされた形状)に形成された部材である。インフレータ12は、外部装置から配線24及びカプラー26を介して供給されるガス発生指示信号に従って、エアバッグ16を膨張展開させるためのガスを発生する。
【0018】
インフレータ12の非展開側の軸方向端面(
図1において上端面)には、また、ラベル28が取り付けられている。ラベル28は、インフレータ12の個体識別番号やバーコード,製造事業所名,取扱上の注意事項などが記載された、略長方形状に形成されたシール状の部材である。ラベル28は、インフレータ12の非展開側の軸方向端面の中心軸とはオフセットした位置に貼付されており、その軸方向端面の中心軸を中心とした点対称形状に形成されていないラベルである。
【0019】
リテーナ14は、インフレータ12及びエアバッグ16を支持する部材であって、軸方向に所定厚さを有するように形成された樹脂製の部材である。リテーナ14は、インフレータ12を非展開側において支持してそのインフレータ12の非展開側への移動を規制するように、インフレータ12の軸方向非展開側部位を収容可能な円盤ハット状に形成されている。
【0020】
リテーナ14の略中央には、インフレータ12を挿入可能な略円形状の挿入口30が設けられている。挿入口30は、その径がインフレータ12の外径よりも僅かに大きくなるように形成されている。リテーナ14は、挿入口30の周囲で径方向外側へ向けて延びる円環状のフランジ部32と、フランジ部32の内端から挿入口30を囲むように軸方向(具体的には、軸方向非展開側)に向けて延びる側壁34aを有する円筒状の円筒部34と、円筒部34の軸方向非展開側の開口を閉じるように形成された底部36と、からなる。
【0021】
リテーナ14のフランジ部32には、軸方向に貫通する貫通穴38が設けられている。貫通穴38は、フランジ部32に複数(例えば4個)設けられており、リテーナ14の中心軸を中心にして所定角度(例えば90°)ごとに設けられている。各貫通穴38は、略円形に形成されており、後述のボルトが挿通されるボルト穴である。
【0022】
リテーナ14の底部36には、軸方向に空いた開口穴40が設けられている。開口穴40は、リテーナ14の非展開側の軸方向端面側で、そのリテーナ14に支持されるインフレータ12の非展開側の軸方向端面に設けられるショーティングクリップ22、そのショーティングクリップ22に取り付けられるカプラー26、及びそのカプラー26に接続する配線24を外部に取り出すための配線取出口である。開口穴40は、その大きさがインフレータ12の外径よりも小さくなるように形成されている。このため、リテーナ14は、インフレータ12が挿入口30内に収容された場合に、底部36にてそのインフレータ12の軸方向非展開側を支持してそのインフレータ12の非展開側への移動を規制することができる。
【0023】
開口穴40は、少なくともインフレータ12の非円形状のショーティングクリップ22に対応した形状及び位置に形成されており、リテーナ14の底部36の略中央を含む部位においてそのショーティングクリップ22が嵌る形状(例えば、直線状)及び大きさに形成されている。開口穴40とショーティングクリップ22とはそれぞれ、開口穴40にショーティングクリップ22が嵌った後にインフレータ12とリテーナ14とが軸回りに相対回転しないような形状に形成されている。例えば、ショーティングクリップ22の、インフレータ12の非展開側の軸方向端面から軸方向外側へ突出する部位の形状が、円形状の一部がカットされた形状であるときは、開口穴40は、そのショーティングクリップ22の突出部位のうちインフレータ12の中心軸を通る幅が最も狭い箇所を含む部位に合致する形状を有している。
【0024】
このため、エアバッグ装置10の組み立てにより、インフレータ12がリテーナ14に支持されてそのインフレータ12のショーティングクリップ22がそのリテーナ14の開口穴40に嵌ると、そのショーティングクリップ22がその開口穴40周囲の側壁40aに当接し得ることで、インフレータ12とリテーナ14との軸回りの回転を規制する回転止めが実現される。
【0025】
尚、開口穴40は、更に、直方体形状のカプラー26に対応した形状及び位置に形成されていてもよく、リテーナ14の底部36の略中央を含む部位においてそのカプラー26が嵌る形状(例えば、直線状)及び大きさに形成されていてもよい。すなわち、開口穴40とカプラー26とはそれぞれ、開口穴40にカプラー26が嵌った後にインフレータ12とリテーナ14とが軸回りに相対回転しないような形状に形成されている。例えば、カプラー26の形状が直方体形状であるときは、開口穴40は、そのショーティングクリップ22の突出部位のうちインフレータ12の中心軸を通る幅が最も狭い箇所を含む部位に合致する形状を有していてもよい。この場合、開口穴40は、ショーティングクリップ22とカプラー26との双方に合わせて断面階段状に形成されるものであってもよい。
【0026】
かかる構造では、エアバッグ装置10の組み立てにより、インフレータ12がリテーナ14に支持されてそのインフレータ12のショーティングクリップ22及びそのショーティングクリップ22に取り付けられたカプラー26の双方がそのリテーナ14の開口穴40に嵌ると、そのショーティングクリップ22及びカプラー26がその開口穴40周囲の側壁40aに当接し得ることで、インフレータ12とリテーナ14との軸回りの回転を規制する回転止めが実現される。
【0027】
リテーナ14の底部36には、また、軸方向に空いた開口穴42が設けられている。開口穴42は、リテーナ14の非展開側の軸方向端面側で、そのリテーナ14に支持されるインフレータ12の非展開側の軸方向端面に取り付けられるラベル28を視認可能とするための覗き穴である。尚、開口穴42は、上記の開口穴40と連通したものであってもよい(尚、各図では、開口穴40と42とは互いに連通している。)。
【0028】
開口穴42は、少なくともインフレータ12の軸方向端面に取り付けられるラベル28に対応した形状及び位置に形成されている。開口穴42は、リテーナ14の底部36の中心軸とはオフセットした位置においてラベル28の大きさと略同じ大きさの略長方形状に形成された穴であって、その底部36の中心軸を中心とした点対称形状に形成されていない穴である。エアバッグ装置10の組立後、インフレータ12のショーティングクリップ22がリテーナ14の開口穴40に嵌ると、外部からそのリテーナ14の開口穴42を通してそのインフレータ12のラベル28が視認可能となるようにインフレータ12とリテーナ14との回転位置決めがなされる。
【0029】
リテーナ14の挿入口30の周囲には、円柱状のインフレータ12をリテーナ14側に仮止めする仮止め部材44が設けられている。仮止め部材44は、挿入口30に挿入されてショーティングクリップ22がそのリテーナ14の開口穴40に嵌ったインフレータ12の、径方向への移動及び軸方向展開側への移動を規制する部材である。仮止め部材44は、挿入口30の内面すなわち円筒部34の内側壁34aから軸方向(インフレータ12の軸方向展開側)に向けて直線状に延びる棒状部44aと、その棒状部44aの軸方向展開側の端部で中心軸方向に向けて屈曲する爪部44bと、からなる。
【0030】
仮止め部材44は、リテーナ14の挿入口30の周囲に3箇所設けられている。3つの仮止め部材44は、リテーナ14の挿入口30の周囲に一定角度間隔(120°)で配置されている。各仮止め部材44の棒状部44aは、リテーナ14の中心軸からの距離が円柱状のインフレータ12の半径よりも僅かに長くなるように形成・配置されていると共に、各仮止め部材44の爪部44bの中心軸側先端は、リテーナ14の中心軸からの距離が円柱状のインフレータ12の半径よりも僅かに短くなるように形成・配置されている。尚、リテーナ14の底部36には、仮止め部材44の爪部44bを成形するうえで用いる金型を抜くための金型用穴46が設けられている。
【0031】
各仮止め部材44は、棒状部44aにてリテーナ14本体に対して径方向に撓むことが可能である。各仮止め部材44は、棒状部44aが径方向に撓むことによりインフレータ12がリテーナ14の挿入口30の軸方向展開側からその挿入口30へ挿入されるのを許容する一方で、インフレータ12がリテーナ14の挿入口30に挿入されてそのショーティングクリップ22がリテーナ14の開口穴40に嵌った後、そのインフレータ12の展開側の軸方向端面に爪部44bが引っ掛かることによりそのインフレータ12の軸方向展開側への移動を規制する機能を有している。3つの仮止め部材44において、各爪部44bがそれぞれインフレータ12の展開側の軸方向端面に引っ掛かると、リテーナ14に対するインフレータ12の軸方向展開側への移動が規制される。
【0032】
エアバッグ16は、一部に開口50が設けられた袋状の部材であって、その開口50からインフレータ12の発生したガスが供給されて充填されることにより膨張展開する。開口50は、その径がインフレータ12の外径よりも僅かに大きくなるように形成されている。エアバッグ16の開口50の周囲には、穴の空いた貫通穴52が設けられている。貫通穴52は、エアバッグ16に複数(例えば4個)設けられており、その開口50の周囲にその開口中心を中心にして所定角度(例えば90°)ごとに設けられている。各貫通穴52は、上記のリテーナ14の貫通穴38の大きさと略同程度の大きさを有するように略円形に形成されており、後述のボルトが挿通されるボルト穴である。
【0033】
また、バッグリング18は、エアバッグ16の開口50の周縁部をリテーナ14の展開側の軸方向端面に取り付けることで支持する金属製又は樹脂製の部材である。尚、バッグリング18は、インフレータ12を軸方向展開側において支持するものであってもよい。バッグリング18は、インフレータ12の軸方向展開側部位を覆うようなハット状に形成されている。バッグリング18は、インフレータ12を挿入可能な略円形状の挿入口54が設けられたドーム部56と、挿入口54の周囲で径方向外側へ向けて延びるフランジ部58と、からなる。バッグリング18は、エアバッグ16の開口50からその内部に挿入されることでエアバッグ16内に収容される。
【0034】
挿入口54は、その径がインフレータ12の外径よりも僅かに大きくかつエアバッグ16に空いた開口50の内径と略同じになるように形成されている。ドーム部56には、インフレータ12を収容するドーム内側とドーム外側(具体的には、エアバッグ16の内部空間側)とを連通するガス穴60が形成されている。ガス穴60は、インフレータ12のガス噴出穴20から放出されたガスをエアバッグ16の内部空間へ向けて流出させるための穴である。
【0035】
バッグリング18のフランジ部58には、軸方向に延びるボルト62が一体に形成されている。ボルト62は、バッグリング18のフランジ部58の軸方向非展開側端面の角部に複数(例えば4つ)設けられている。ボルト62は、フランジ部58すなわち挿入口54の中心軸を中心にして所定角度(例えば90°)ごとに設けられている。ボルト62は、その外径がエアバッグ16の貫通穴52の径及びリテーナ14の貫通穴38の径よりも僅かに小さくなるように形成されている。
【0036】
エアバッグ16とバッグリング18とは、ボルト62が一体化されたバッグリング18全体がエアバッグ16内に収容された後にそのボルト62がエアバッグ16の貫通穴52から外部に突出するように組み付けられる。そしてその後は、バッグリング18のボルト62が更に、インフレータ12が仮止めされたリテーナ14の貫通穴38に挿通された後にナット64に締結されることにより、バッグリング18とエアバッグ16とリテーナ14とインフレータ12とが組み付けられて互いに取り付け固定される。
【0037】
本実施例のエアバッグ装置10は、インフレータ12をリテーナ14に仮止めしかつバッグリング18をエアバッグ16内に収容した後に、そのインフレータ12が仮止めされたリテーナ14とそのエアバッグ内に収容されたバッグリング18とがボルト62とナット64とを用いて締結されることにより組み立てられる。
【0038】
具体的には、エアバッグ装置10を製造するうえで、インフレータ12、リテーナ14、エアバッグ16、及びバッグリング18をそれぞれ個別に用意した後、まず、インフレータ12をリテーナ14の挿入口30の軸方向展開側からその挿入口30へ挿入すると共に、また、バッグリング18をエアバッグ16の開口50からそのエアバッグ16内に挿入してバッグリング18のボルト62をエアバッグ16の貫通穴52から外部に突出させる。
【0039】
インフレータ12の外径半径は、リテーナ14の仮止め部材44の爪部44bの中心軸側先端の、リテーナ中心軸からの距離よりも僅かに大きいので、リテーナ14の挿入口30へのインフレータ12の挿入時、インフレータ12とリテーナ14の仮止め部材44とが接触するが、この際には、仮止め部材44の棒状部44aが径方向外側に撓むので、リテーナ14の挿入口30へのインフレータ12の挿入は可能である。
【0040】
インフレータ12がリテーナ14の挿入口30に挿入されてそのインフレータ12のショーティングクリップ22がリテーナ14の開口穴40に嵌ると、そのショーティングクリップ22が開口穴40周囲の側壁40aに当接し得ることにより、インフレータ12が軸方向非展開側にてリテーナ14に支持されつつ、インフレータ12とリテーナ14との軸回りの回転が規制される。また、ショーティングクリップ22がリテーナ14の開口穴40に嵌ると、インフレータ12の展開側の軸方向端面にリテーナ14の3つの仮止め部材44の爪部44bがそれぞれ引っ掛かることにより、リテーナ14に対するインフレータ12の軸方向展開側への移動が規制され、かつ、リテーナ14の挿入口30内でのインフレータ12の径方向への移動が規制される。これにより、リテーナ14に対するインフレータ12の仮止めが実現される。
【0041】
そして、エアバッグ16内に挿入されたバッグリング18の、エアバッグ16の貫通穴52から外部に突出したボルト62を、インフレータ12が仮止めされたリテーナ14の貫通穴38に挿通し、その後にナット64に締結する。かかる構成によれば、バッグリング18とエアバッグ16とリテーナ14とインフレータ12とを組み付けて互いに取り付け固定することができる。
【0042】
そして最後に、リテーナ14の開口穴40においてインフレータ12のショーティングクリップ22にカプラー26を取り付ける。かかる取り付けが行われると、ショーティングクリップ22と共にカプラー26がリテーナ14の開口穴40に嵌って、カプラー26が開口穴40周囲の側壁40aに当接し得るので、インフレータ12とリテーナ14との軸回りの回転が更に規制される。
【0043】
このように、本実施例のエアバッグ装置10によれば、リテーナ14に、リテーナ14の挿入口30に挿入されてリテーナ14の開口穴40にショーティングクリップ22が嵌ったインフレータ12を軸方向一方側において支持させつつ、仮止め部材44にてそのインフレータ12の軸方向他方側への移動を規制する機能を持たせることができると共に、同時に、開口穴40とショーティングクリップ22との形状にてインフレータ12とリテーナ14との軸回りの回転を規制する機能を持たせることができる。
【0044】
この場合、リテーナ14の開口穴40とインフレータ12のショーティングクリップ22との相対的な形状関係が適切に設定されていると、インフレータ12とリテーナ14との軸回りの回転が規制される際のインフレータ12とリテーナ14との軸回りの回転位置関係は、予め一の関係に特定される。このため、インフレータ12とリテーナ14との軸回りの位置合わせを一旦行えば、その後は、インフレータ12とリテーナ14とが軸方向に切り離されるのを防止しつつ、両者が軸回りに相対回転するのを規制することができる。更に、リテーナ14の開口穴40とカプラー26との相対的な形状関係を適切に設定することで、カプラー26がショーティングクリップ22に取り付けられた後、開口穴40とカプラー26との形状にてインフレータ12とリテーナ14とが軸回りに相対回転するのを規制することができる。
【0045】
従って、本実施例によれば、インフレータ12が適切な軸回りの回転位置でリテーナ14に仮止めされて一体化されるので、インフレータ12及びリテーナ14双方の取り扱いや持ち運びを両者の相対関係を損うことなく容易なものとすることができ、これにより、エアバッグ装置10の組み立ての容易化を図ることができる。尚、インフレータ12がいわゆるフランジレスのインフレータであっても、上記の効果は実現されるので、エアバッグ装置10全体の軽量化と組み付けの簡素化とを図りつつ、エアバッグ装置10の組み立ての容易化を図ることが可能である。
【0046】
また、本実施例のエアバッグ装置10においては、インフレータ12の非展開側の軸方向端面に取り付けられた略長方形状のラベル28が、そのインフレータ12の非展開側の軸方向端面の中心軸とはオフセットした位置に貼付されており、その軸方向端面の中心軸を中心とした点対称形状に形成されていない。また、リテーナ14の底部36にインフレータ12のラベル28を視認するために設けられた覗き穴である開口穴42が、リテーナ14の底部36の中心軸とはオフセットした位置においてラベル28の大きさと略同じ大きさの略長方形状に形成されており、その底部36の中心軸を中心とした点対称形状に形成されていない。
【0047】
この場合は、インフレータ12とリテーナ14とがショーティングクリップ22が開口穴40に嵌った状態で仮止め部材44により仮止めされる際に、そのインフレータ12のラベル28をリテーナ14の開口穴42を通して視認可能とするインフレータ12とリテーナ14との軸回りの相対位置関係は、予め一の関係に限定される。このため、本実施例によれば、インフレータ12とリテーナ14とが軸回りに180°異なる方向で逆組み付けされることを容易にチェックすることができ、その結果として、インフレータ12とリテーナ14との軸回りの逆組み付け自体を防止することができる。
【0048】
尚、上記の実施例においては、仮止め部材44が特許請求の範囲に記載した「移動規制部材」に、軸方向非展開側が特許請求の範囲に記載した「軸方向一方側」に、軸方向展開側が特許請求の範囲に記載した「軸方向他方側」に、ショーティングクリップ22が特許請求の範囲に記載した「配線接続部」に、開口穴40が特許請求の範囲に記載した「第1穴」に、開口穴42が特許請求の範囲に記載した「第2穴」に、それぞれ相当している。
【0049】
ところで、上記の実施例においては、インフレータ12が円柱形状に形成され、かつ、リテーナ14の仮止め部材44が、軸方向に向けて直線状に延びる棒状部44aと、その棒状部44aの軸方向展開側の端部で中心軸方向に向けて屈曲する爪部44bと、を有するが、
図9に示す如く、インフレータ12を略円柱形状に形成しつつその側壁の軸方向展開側に径を異にする段差100を設けることとしてもよい。かかる変形例の構造においても、リテーナ14の仮止め部材44の爪部44bが段差100に引っ掛かることで、インフレータ12の軸方向他方側への移動を規制する機能を持たせることができるので、上記の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、
図10に示す如く、インフレータ12を略円柱形状に形成しつつその側壁の軸方向展開側に径を異にする段差120を設けると共に、リテーナ14の仮止め部材44を、軸方向に向けて直線状に延びる棒状部122と、その棒状部122の軸方向展開側先端にインフレータ12の段差120に合わせた形状を有する爪部124と、からなるものとしてもよい。かかる変形例の構造においても、リテーナ14の仮止め部材44にてインフレータ12の軸方向他方側への移動を規制する機能を持たせることができるので、上記の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、上記の実施例においては、インフレータ12の形状を円柱状としたうえで、そのインフレータ12に空いたガス噴出穴20を円柱の側面に形成することとしているが、インフレータ12の軸方向展開側の上面にガス噴出穴20を設けることとしてもよい。また、上記の変形例においては、段差100,120の側面や上面にガス噴出穴20を設けることとしてもよい。
【0052】
また、上記の実施例においては、インフレータ12をリテーナ14に仮止めするための仮止め部材44をリテーナ14の挿入口30の周囲に3箇所設けることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、かかる仮止め部材44を、インフレータ12をリテーナ14に仮止めすることができる数だけ設けることとすればよく、例えば、リテーナ14の挿入口30の周囲に4箇所以上設けることとしてもよく、また、一箇所当たりの周方向の幅が
図2に示す如きものよりも大きければ、一箇所或いは二箇所だけ設けることとしてもよい。
【0053】
また、上記の実施例においては、インフレータ12をリテーナ14に仮止めするための仮止め部材44を、リテーナ14の挿入口30の内面すなわち円筒部34の内側壁34aから軸方向に向けて延ばすこととしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、リテーナ14の底部36から軸方向に向けて延ばすこととしてもよいし、リテーナ14のフランジ部32から軸方向に向けて延ばすこととしてもよいし、また、リテーナ14の円筒部34とフランジ部32との接続部位から軸方向に向けて延ばすこととしてもよいし、リテーナ14の円筒部34と底部36との接続部位から軸方向に向けて延ばすこととしてもよい。
【0054】
また、上記の実施例においては、ボルト62をバッグリング18のフランジ部58に一体形成することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ボルト62をバッグリング18とは別体で設けることとしてもよい。かかる変形例においては、バッグリング18のフランジ部58に、ボルト62が挿通される貫通穴が形成される。
【0055】
また、上記の実施例においては、インフレータ12の非展開側の軸方向端面に設けられるショーティングクリップ22を、そのインフレータ12の軸方向端面の中心軸近傍において非円形状に形成することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、そのインフレータ12の軸方向端面の中心軸とはオフセットした位置に配置することとしてもよい。また、かかる変形例においては、ショーティングクリップ22を非円形状に形成することは不要であり、円形状に形成することとしてもよい。かかる変形例においても、インフレータ12とリテーナ14との軸回りの回転が規制される。
【0056】
更に、上記の実施例においては、リテーナ14をインフレータ12を軸方向非展開側において支持するように円盤ハット状に形成し、そのリテーナ14にインフレータ12を軸方向非展開側において支持させる機能を持たせることとしているが、リテーナ14を平板状に形成したうえで、そのリテーナ14とは別体でインフレータ12を軸方向非展開側において支持する支持部を設けることとしてもよい。かかる変形例においては、その支持部を、リテーナ14及びバッグリングなどと共にボルト締結してリテーナ14に取り付け固定することとすればよい。