【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明のアライメント制御装置21は、車両の転舵輪1の
トー角を、調整用のアクチュエータ10の制御によって調整可能なアライメント調整機構6を制御するアライメント制御装置21であって、
前記転舵輪1に発生する力を検出する車輪力センサ22と、この車輪力センサ22により取得した車輪力に基づき、走行抵抗を最小化するアライメントの制御量を決定し、前記アクチュエータ10を制御す
るアライメント制御手段23とを備える。なお、車輪力とは、車輪の路面接地点で車輪に作用する力であり、これには前後方向力Fx,横力Fy,および上下方向力Fzがあるが、前記車輪力センサ22は、少なくとも横力Fyを検出可能なものとする。また、この明細書で言う「アライメントの調整」は、トー角の調整と同義である。
【0013】
各輪1に発生する力を検出可能な車輪力センサ22、具体的にはホイールの歪みを検出するセンサや、ホイール回転軸の軸受部の歪みを検出するセンサを用いることで、走行時、特に転舵時において、走行抵抗を応答性良く直接検出することができる。この情報を元に、左右輪の転舵角を適宜調整することで、応答性良く、走行抵抗の最小化を行うことができる。これにより、様々な速度条件において、エネルギーロスの最小化が期待できる。
上記構成によると、前記車輪力対応アライメント制御手段23は、車輪力センサ22により取得した車輪力に基づきアライメントの制御量を決定するため、上記のように応答性良く高精度に制御できて、様々な速度条件において、エネルギーロスの最小化が図れる。エネルギーロスの最小化により、航続距離の延伸が行える。また、比較的簡単な演算で済み、最適解に到達しないような演算手法を採ることも不要で、実現が容易である。
【0014】
この発明において、前記車輪力対応アライメント制御手段23は、具体的には、前記車輪力センサ22により取得した車輪力に基づきアライメントの制御量を決定するアライメント調整判断部24と、この決定したアライメント制御量に基づき、前記アライメント調整機構6の前記アクチュエータ10を制御するアライメント調整部25を備える構成であっても良い。
【0015】
この構成のアライメント制御装置21において、前記車輪力センサ22により取得した車輪力から、左右輪の発生横力の差を算出する左右横力差検出部26を設け、前記アライメント調整判断部24は、前記左右横力差検出部26で算出された左右輪の横力の差を略零にすることにより、走行抵抗を最小化するアライメントの制御量を決定するようにしても良い。すなわち、アライメント調整判断部24は、横力の差を略零とする制御量を出力する。この手法である左右輪の横力Fyの差を是正する方法を使用した場合、走行抵抗の元となる左右輪の横力Fy差を直接検出できるため、制御の応答性の向上が望める。
【0016】
この構成の場合の原理を説明する。車両に遠心力が発生しないほど低速で旋回している時、転舵輪1が旋回内外輪の描く円弧の接線方向を向いている場合には、転舵輪1は横力Fy を発生せず、転舵輪1の向く方向に転がる。この時、走行抵抗は最小化し、左右輪に発生する横力Fy の差は零である。しかし、多くの場合、旋回内側輪の転舵角が足りず、転舵輪1が進もうとする円弧の外側を向くこととなり、横力Fy は円弧中心から見て外向きとなり、走行抵抗となる。そこで、転舵輪1の旋回内側外側輪が発生する横力Fy の不均一を左右横力差検出部26が検出する。アライメント調整判断部24は、検出した左右輪の横力Fy の差を略零にする。例えば、旋回内側輪につき転舵角が増えるようにアライメントの制御量を出力する。これにより、走行抵抗の最小化によるエネルギーロスの最小化を実現でき、エネルギー効率の最大化が期待できる。
【0017】
この発明において、制御対象となる前記アライメント調整機構6が、車両の旋回力を発生させることを目的とした転舵装置5と、一部の構成要素及び機能を共有する構成であっても良い。アライメント調整機構6には種々の構成のものがあるが、転舵装置5と一部の構成要素及び機能を共有するものであると、簡易な構成でアライメント調整が行える。このような構成のアライメント調整機構6に対して、この発明のアライメント制御装置21を効果的に適用することができる。
【0018】
この発明のアライメント制御装置21において、
前記アライメント制御手段23は、具体的には前記アライメント調整判断部24は、車両の速度を検出する手段31からの入力により、車両の走行速度が定められた基準に対して低速であるか否かの速度判断を行い、設定するアライメントの制御量を、前記速度判断で低速であると判断した場合は走行抵抗を最小化する制御を行う制御量とし、低速でない場合は、走行抵抗を最小化する制御を行わず、安全性を確保するための制御を優先する制御量とする構成としても良い。
これにより、常に安全性を確保しながら、走行抵抗を最小化する制御が実現できる。
【0019】
この発明のアライメント制御装置21において、前記車輪力センサ22により取得した車輪力から、左右輪の発生横力の差を算出する左右横力差検出部26を設け、
前記アライメント制御手段23は、具体的には前記アライメント調整判断部24は、
走行安定性の確保のため予め設けられるマップを参照して車両の走行速度とハンドル角の関係から採用するアライメントの制御量を決定した後、前記左右横力差検出部26により検出された左右輪の横力の差に基づいて、走行抵抗を最小化する制御を行うアライメントの制御量を決定するようにしても良い。
【0020】
上記のように検出された左右輪の横力の差に基づいてアライメントの制御量を決定する構成の場合に、
前記アライメント制御手段23は、具体的には前記アライメント調整判断部24は、前記アライメント調整判断部24
によって、前記車輪力センサ22により検出された車輪力が閾値以下である場合に
、前記左右横力差検出部26により検出された左右輪の横力の差を略零にする制御を行わないようにしても良い。
【0021】
また、上記のように検出された左右輪の横力の差に基づいてアライメントの制御量を決定する構成の場合に、
前記アライメント制御手段23は、具体的には前記アライメント調整判断部24は、前記左右横力差検出部26により検出された左右輪の横力差が閾値以下である場合は
、前記左右横力差検出部26により検出された左右輪の横力の差を略零にする制御を行わないようにしても良い。
【0022】
また、上記のように検出された左右輪の横力の差に基づいてアライメントの制御量を決定する構成の場合に、
前記アライメント制御手段23は、具体的には前記アライメント調整判断部24は、検出された車両走行速度が閾値以下である場合、
前記左右横力差検出部26により検出された左右輪の横力の差を略零にする制御を行わないようにしても良い。
【0023】
この発明のアライメント制御装置21において、車両の安全装置27,28の動作フラグを取得して動作履歴を蓄積する安全装置動作フラグ取得部29を有し、前
記アライメント制御手段23は、前記安全装置動作フラグ取得部29により取得した動作履歴に基づき、走行抵抗を最小化する制御を実施可能か判断
し、実施不可能である場合は、走行安定性の確保を優先するようにアライメントの制御量を生成するようにしても良い。
【0024】
このように動作履歴に基づく制御を行う構成の場合に、前記安全装置動作フラグ取得部29の取得した動作履歴が、定められた基準に対して頻繁に安全装置27,28が動作したことを示す場合、前
記アライメント制御手段23は、例えば、雨天や積雪など、路面状況の悪化と判断し、走行抵抗を最小化する制御を中止するようにしても良い。これにより、車両挙動を不用意に乱さないことができる。
【0025】
路面ミューが安定して確保でき、かつ低速走行の条件下では、エネルギー効率の最大化を優先することができるが、それ以外の場合は、安全性の確保を優先すべきである。路面ミューが安定して確保できることは、他の機器と連携を取ることで確認できる。例えば、路面ミューが低下している場合は、ABS(アンチロックブレーキシステム)、トラクションコントロール、横滑り防止装置などの安全装置27,28が動作する可能性が高い。そこで、安全装置27,28の動作フラグを取得し、動作履歴を蓄積する安全装置動作フラグ取得部29を用意し、安全装置27,28の動作履歴を蓄積して、頻繁に安全装置27,28が動作した履歴がある場合は雨天や積雪状態などの路面状況の悪化が予測できるため、走行安定性の確保を優先することが好ましい。
【0026】
前記のように動作履歴に基づく制御を行う構成の場合に、前
記アライメント制御手段23は、前記安全装置動作フラグ取得部29の取得した動作履歴が、安全装置27,28が数度動作した後、動作した履歴がない場合、数分等の設定時間の後に走行抵抗の最小化する制御を再開するようにしても良い。
安全装置27,28が数度動作した後、動作の履歴がなければ、突発的な路面ミューの低下、例えば落ち葉や濡れた鉄路面等であると予測でき、例えば数分の後にエネルギー効率を優先した制御を行うように判断可能である。低速走行の条件下の判断は、適宜行えば良いが、例えば市街地の右左折を考慮して、20Km/h以下の場合はエネルギー効率の最大化を優先し、それ以上の速度では安全性の確保を行う制御を行えばよい。
【0027】
前記のように動作履歴に基づく制御を行う構成の場合に、前
記アライメント制御手段23は、前記安全装置動作フラグ取得部29が取得した動作フラグにより、走行抵抗を最小化する制御の中止判断をするようにしても良い。これにより、車両挙動を不用意に乱さないことができる。
【0028】
前記のように動作履歴に基づく制御を行う構成の場合に、前
記アライメント制御手段23は、ヨーレートセンサ32の出力に基づき、ヨーレートの変化幅が閾値以上の場合、走行抵抗を最小化する制御の中止判断をするようにしても良い。これにより、車両挙動を不用意に乱さないことができる。
旋回中に車両の挙動が乱れるなど、安全性の確保を優先すべき状況が発生することが予想される。この場合は速やかにエネルギー効率の最大化のための制御を中止すべきである。車両挙動が乱れるとは、許容されないヨーレートの大幅な変動や、ABS、トラクションコントロール装置、横滑り防止装置等の安全装置27,28の動作が観測されると容易に予測される。そこで、ヨーレートセンサ32と連携し、ヨーレートセンサ32の出力をアライメント調整判断部24に入力し、アライメント調整判断部24がエネルギー効率の最大化のための制御を中止すべきか継続すべきかを判断するようにしている。
【0029】
前記のように動作履歴に基づく制御を行う構成の場合に、前
記アライメント制御手段23は、運転者のスイッチ34の操作によるアライメント制御の許可、不許可を指示する制御許可信号に従ってアライメント制御の開始および中止を行うようにしても良い。
アライメントの制御により、運転者に対して、アライメントが固定である車両と異なるフィーリングを与える可能性がある。そのため、運転者に対するフィーリングが快適か不快かであるに係わらず、アライメント制御の許可・不許可のスイッチ34の操作により、アライメント制御の許可、不許可を指示する信号を入力可能にしている。
【0030】
前記のように動作履歴に基づく制御を行う構成の場合に、前
記アライメント制御手段23は、車両全体を統括する制御器、例えばメインのECU21の判断によるアライメント制御の許可、不許可を指示する制御許可信号に従ってアライメント制御の開始および中止を行うようにしても良い。これにより、車両挙動を不用意に乱さないことができる。
【0031】
この発明のアライメント制御装置21において、制御対象となる前記アライメント調整機構6が、4輪独立の転舵装置であっても良い。
【0032】
この発明のアライメント制御装置21において、制御対象となる前記アライメント調整機構6が、転舵用ロッドの長さを変えることによりトー角調整を行う形式であっても良い。この場合に、前記アライメント調整機構6が、転舵を制御する1つのモータ9と、転舵用ロッドの長さを可変するための他の1つのモータ10を持つ構成であっても良い。