【実施例1】
【0018】
<構成>以下、構成について説明する。
この実施例にかかる樹脂部品係止構造は、樹脂部品21から一体に突設された爪部22(一体爪)を、相手部品23に設けられた係止穴24へ挿入して係止固定させるようにしたものである。
【0019】
(補足説明)
上記した樹脂爪構造は、自動車などの車両の場合、車室内や車室外に設けられる各種の樹脂部品に対して設けられる。例えば、車室内の前部に設けられるインストルメントパネルや、このインストルメントパネルに取付けられる各種のサブパネルや、車室内に設置されるセンターコンソールや、このセンターコンソールに取付けられる各種のサブパネルなどに設けられる。
【0020】
なお、樹脂部品21および相手部品23は、上記したものや、図示したような形状のものに限るものではない。
【0021】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【0022】
(構成1)
図1に示すように、上記樹脂部品21における、上記爪部22の背面側(図中右側)に、上記爪部22から離して、上記爪部22の挿入方向41へ延び
、爪部22と同じ係止穴24へ挿入される位置規制用突出部42を設ける。
また、上記係止穴24の上記位置規制用突出部42側の縁部(図中右側の縁部、または、他方の縁部)に、上記位置規制用突出部42を受ける突出壁部43を設ける。
そして、上記位置規制用突出部42の基部側の部分が、上記係止穴24の他方の縁部(位置規制用突出部42側の縁部
または爪部22とは反対側の縁部)に当接するように構成される。
また、上記位置規制用突出部42の先端部が、上記突出壁部43に当接するように構成される。
【0023】
(補足説明1)
ここで、上記した「爪部22」は、基部(付根部)側が樹脂部品21と連続されて、先端側がフリーとなる片持梁とされる。これにより、爪部22の梁長さを爪部22の全長と等しくすることができる。この爪部22は、係止穴24へ挿入可能な舌片状の挿入部32と、この挿入部32の表面側に面外方向へ向けて突設された係止部33とを有するものとされる。この係止部33は、係止穴24の奥面(図中下面)側の一方の縁部(図中左側の縁部)に係止可能な係止面34と、係止部33の係止穴24への導入を案内する導入テーパ部35とを有するものとされる。係止面34は爪部22の基部側に形成され、導入テーパ部35は爪部22の先端側に形成される。係止面34は、所要の傾斜角度を有するものとされている。
【0024】
この爪部22の両側部には、
図2、
図3に示すように、若干の隙間36(スリット部または切込部)を有して、一対の爪保護部37が設けられる。この爪保護部37は、樹脂部品21から一体に突設されると共に、爪部22とは分離したものとされる。一対の爪保護部37の外側部の少なくとも先端側の部分には、係止穴24の両側縁部に対する挿入を案内するための側部用導入テーパ部38が形成される。この側部用導入テーパ部38は、先端側へ進むに従い爪部22の幅中央部へ向かう傾斜部とされる。即ち、側部用導入テーパ部38は、先細り状の傾斜部とされる。
【0025】
上記した「位置規制用突出部42」は、爪部22(の挿入部32)と平行な面を有すると共に、爪部22よりも短
いものとされる。位置規制用突出部42の、係止穴24へ挿入される部分の長さは、少なくとも、相手部品23の肉厚の倍程度以上の長さとするのが好ましい。この場合、位置規制用突出部42は、爪部22における導入テーパ部35の中間部の位置まで延びるものとされている。
【0026】
位置規制用突出部42と上記爪部22との離隔方向(図中左右方向)の間隔は、爪部22が係止穴24に係止される際に、
図4、
図5に示すように、係止穴24の一方の縁部によって、位置規制用突出部42側へ弾性変形された爪部22が、位置規制用突出部42に干渉しない程度の大きさまたはそれよりも若干大きなものとされる。例えば、少なくとも、挿入部32に対する係止部33の張出量よりも大きな間隔や、或いは、挿入部32の厚みよりも若干大きな間隔などを有するものとされる。
【0027】
この位置規制用突出部42を設けたことに伴って、上記した係止穴24は、爪部22と、後述する位置規制用突出部42とを同時に収容可能な大きさ(奥行寸法)を有するものとされる。
【0028】
位置規制用突出部42の背面側には、必要に応じて、位置規制用突出部42の変形を防止可能な補強リブ42aなどを設けることができる。この補強リブ42aは、樹脂部品21と相手部品23との間に介在される。この補強リブ42aは、相手部品23と干渉しない程度の大きさのものとされる。或いは、補強リブ42aは、相手部品23に当接して、挿入方向41の位置規制を行わせるための挿入方向位置規制部としての機能を有するものなどとしても良い。
【0029】
なお、特に図示しないが、位置規制用突出部42の両側部と、一対の爪保護部37の外側部との間には、それぞれ両者を連結する側壁部を設けるようにしても良い。
【0030】
上記した「突出壁部43」は、位置規制用突出部42と平行な面を有して、位置規制用突出部42を挿入方向41へ案内するものとされる。また、突出壁部43は、位置規制用突出部42の背面を、位置規制用突出部42と爪部22との離隔方向へ支持するものとされる。この突出壁部43は、位置規制用突出部42と同じか、または、それよりも若干長く延びるものとされる。この突出壁部43は、相手部品23の奥側の面から上記した挿入方向41へ向けて一体に突出される。この突出壁部43は、その内面が係止穴24の他方の縁部と面一になるように形成される。
【0031】
そして、位置規制用突出部42の基部側の部分と、上記係止穴24の他方の縁部との間には、基部側当接部46(
図1参照)が設定される。この基部側当接部46は、位置規制用突出部42の長さ方向の中央部よりは基部側の部分で、且つ、係止穴24の他方の縁部の樹脂部品21側の部分に当接するように設けられる。
【0032】
また、上記位置規制用突出部42の先端部には、上記突出壁部43と当接する先端側当接部47(
図1参照)が設定される。
【0033】
(構成2)
上記係止穴24の近傍に、この係止穴24に係止された上記爪部22の背面を支持固定可能な係止時爪支持部31を設置する。
そして、この係止時爪支持部31を、上記した突出壁部43の先端側に設けるようにする。
【0034】
(補足説明2)
ここで、上記した「係止時爪支持部31」は、爪部22の係止穴24に対する係止時に、爪部22の背面を押さえて爪部22が動かないようにロックするロック部としての機能を有するものとされる。係止時爪支持部31は、構造的には、樹脂部品21や、相手部品23や、周囲に存在する部品などに対して適宜設けることが可能である。
【0035】
ここでは、特に、係止時爪支持部31は、突出壁部43の先端側から爪部22の背面側へ向けて一体に延設された延長部44に設けられる。この場合、係止時爪支持部31は、係止穴24に係止された状態で、爪部22の先端側の背面のいずれかの部分を支持するものとされる。この場合には、特に、係止時爪支持部31は、係止穴24に係止された状態で、爪部22の先端部の背面を支持するものとされる。延長部44の背面側には、係止時爪支持部31の変形を防止可能な補強リブ44aなどを設けることができる。
【0036】
また、上記した突出壁部43と延長部44との境界部分には、位置規制用突出部42の先端部を受けて停止させるための、停止面45を形成することができる。この停止面45を設けることにより、位置規制用突出部42は、挿入方向41に対する位置規制機能をも有するものとなる。
【0037】
(構成3)
上記において、上記突出壁部43が、上記爪部22の先端部を、上記係止時爪支持部31へ向けて案内する案内面48を有するものとされる。
【0038】
(補足説明3)
ここで、上記した「案内面48」は、突出壁部43の先端側の延長部44に設けられる。この案内面48は、延長部44の爪部22側の面に形成されて、突出壁部43と係止時爪支持部31との間を繋ぐガイド面などとされる。この場合、上記した案内面48は、上記した停止面45から係止時爪支持部31へ向け、下り勾配に延びる傾斜面とされている。
【0039】
(構成4)
上記において、
図2、
図3に示すように、上記相手部品23が、係止穴24の奥部に、上記爪部22の周囲を包囲する枠部51を有するものとされる。
【0040】
(補足説明4)
ここで、上記した「枠部51」は、相手部品23の奥側の面における、係止穴24の両側部から一体に突設される。上記した枠部51は、上記した一対の爪保護部37の外側部に沿って延びる一対の側枠部52と、一対の側枠部52の先端部間を横方向に連結する横枠部53とを有する側面視U字状のものとされる。この枠部51は、その横枠部53の中間部に、上記した係止時爪支持部31が一体に接続されることにより、係止時爪支持部31を補強し得るようにしている。この枠部51は、係止穴24の両側面の奥行寸法とほぼ同じ厚みを有するものなどとされる。
【0041】
(構成5)
上記において、係止穴24の周囲に、爪部22に対する挿入ガイド部55が設けられる。
【0042】
(補足説明5)
ここで、上記した「挿入ガイド部55」は、相手部品23の樹脂部品21側の面で、且つ、係止穴24の爪部22側の縁部に設けられる。この挿入ガイド部55は、例えば、上記した縁部に沿って突条部56を突設し、この突条部56の爪部22側の側面から係止穴24の爪部22側の縁部に亘って形成された導入テーパ部などとされる。この導入テーパ部は、係止穴24へ向かって下り勾配となる傾斜面などとされる。
【0043】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
樹脂部品21に一体に形成された爪部22を、
図4、
図5に順に示すように、相手部品23に設けられた係止穴24へ挿入することにより、
図1に示すように、樹脂部品21を相手部品23に対して係止保持させることができる。
【0044】
この際、爪部22の係止部33は、係止穴24における、相手部品23の奥側の面に係止される。
【0045】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
(作用効果1)
樹脂部品21における、爪部22の背面側に爪部22から離して設けられた、爪部22の挿入方向41へ延び
、爪部22と同じ係止穴24へ挿入される位置規制用突出部42によって、樹脂部品21を、位置規制用突出部42と挿入方向41との離隔方向(或いは、爪部22の面直方向、または、
図1の左右方向)に対して位置規制させることが可能となる。
【0046】
また、係止穴24の位置規制用突出部42側の縁部に突出壁部43を設けることにより、位置規制用突出部42を、突出壁部43を介して相手部品23に受けさせることができる。また、位置規制用突出部42を突出壁部43で受けることにより、位置規制用突出部42による上記した位置規制機能を、より安定したものとすることができる。また、挿入時に、突出壁部43で位置規制用突出部42を案内させることができる。
【0047】
そして、爪部22が係止穴24(の一方の縁部)に係止され、位置規制用突出部42の基部側の部分(基部側当接部46)が、係止穴24の他方の縁部に当接され、位置規制用突出部42の先端部(先端側当接部47)が、突出壁部43の先端側に当接されることにより、爪部22は、3点支持状態となるので、係止状態での樹脂部品21のガタ付きを大幅に小さくすることができる。そして、これに、爪部22の背面と係止時爪支持部31との間の支持を加えると、4点支持状態となるので、係止状態での樹脂部品21のガタ付きを、より一層小さく抑えることができる。
【0048】
これに対し、
図6、
図7の従来例に示すような、位置規制用突出部42のない通常の一体爪の場合には、係止穴24の両側の縁部で爪部22の両面を支持する2点支持状態となるので、係止状態での樹脂部品21のガタ付きが大きいものとなる。
【0049】
しかも、この実施例の場合、挿入方向41に対し、基部側当接部46と先端側当接部47との間に長い距離を有し、または、基部側当接部46と係止時爪支持部31との間に更に長い距離を有して、爪部22を保持することができるので、上記した従来例のように、相手部品23の厚み分の短い距離でしか爪部を保持できないものと比べて、格段に強固に爪部22を保持して、図中左右方向のガタ付きを抑えることができる。
【0050】
(作用効果2)
上記した爪部22が係止穴24へ挿入係止された時に、係止穴24の近傍に設置した係止時爪支持部31によって、爪部22の背面を支持固定させることにより、係止穴24に係止された爪部22を動かないようにロックすることができる。これによって、爪部22(や爪部22の係止部33)を小さくしても大きな係止力を得ることが可能となる。
【0051】
また、係止時爪支持部31が爪部22を動かないようにロックすることで、係止時や係止後における爪部22の変形が抑えられるようになるので、その分、爪部22が塑性変形を起こし難くなり、爪部22の塑性変形による係止力の低下を防止して、繰返し使用による耐力や安定性を向上することができる。しかも、係止時爪支持部31が爪部22に作用する応力を緩和するので、爪部22を破損し難くすることができる。
【0052】
更に、上記したように爪部22(の係止部33)を小さくすると、係止穴24に係止する際の爪部22の変形量も小さくなるので、爪部22を、より塑性変形し難くすることができる。
【0053】
しかも、爪部22は、上記したように、基部側が樹脂部品21と連続されると共に、先端側がフリーとなった、長い片持梁とされているので、例えば、
図6、
図7の従来例のように、先端側が樹脂部品21と連続されると共に、基部側がフリーとなった、短い片持梁7と比べて、弾性変形能力が大きく、有利な構造を備えている。
【0054】
以上により、一体爪構造(一体型の樹脂爪構造)であっても、繰返し使用に対する耐力や安定性をこれまでよりも格段に向上しつつ、これまでと同様か、または、それ以上の高い係止力を得ることができるようになり、上記した繰返し使用に対する安定性と係止力とを高度に両立することが可能となる。更に、爪部22の小型化や薄型化までも得ることができる。
【0055】
以て、一体型の樹脂爪構造を、金属クリップや樹脂クリップなどの別部品を使った別体爪構造、ほぼ完全に代替することが可能となる。即ち、これまで別体爪構造にしていた部分を、全て一体爪構造に置き換えることができるようになり、製品のコストダウンなどを図ることが可能となる。
【0056】
そして、上記した突出壁部43の先端側に係止時爪支持部31を設けることにより、爪部22の(フリーとなっている)先端側の背面を相手部品23によって直接支持固定させて、爪部22を確実にロックすることが可能となる。また、係止時爪支持部31を突出壁部43の先端側に設けることにより、位置規制などのために設けられた突出壁部43を利用して係止時爪支持部31を設置することができる。
【0057】
(作用効果3)
突出壁部43に案内面48を設けることにより、係止穴24に対して爪部22を挿入する際に、爪部22の先端部を、案内面48に沿って、係止時爪支持部31へ向けスムーズに案内することができると共に、爪部22の先端部を係止時爪支持部31によって確実に支持させることができる。
【0058】
(作用効果4)
相手部品23が、係止穴24の奥側に、爪部22の周囲を包囲する枠部51を有することにより、枠部51によって爪部22を保護することができると共に、枠部51によって挿入時に爪部22の周囲の部分(爪保護部37)を案内することができる。また、枠部51に対して上記した係止時爪支持部31を接続することにより、係止時爪支持部31による爪部22の押さえをより強固なものとすることができる。
【0059】
(作用効果5)
相手部品23が、係止穴24の周囲(入口部)に、爪部22に対する挿入ガイド部55を有することにより、挿入ガイド部55が爪部22を案内して、爪部22を確実に係止穴24へ挿入させることができる。これにより、爪部22の側に挿入ガイド部55に相当する傾斜面などを設ける必要がなくなるので、その分、爪部22を薄肉化することができる。
【0060】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。