(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076733
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】既設の散気システムから改修散気システムへの更新装置及び既設の散気システムから改修散気システムへの更新方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/20 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
C02F3/20 C
C02F3/20 D
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-288101(P2012-288101)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-128765(P2014-128765A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】富田 弘明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康司
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−212670(JP,A)
【文献】
特開平11−138191(JP,A)
【文献】
特開平11−165188(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/045007(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0152832(US,A1)
【文献】
国際公開第1992/000249(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/20
C02F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を収容する複数の好気処理槽と、
バルブを設けた複数の元配管を介して複数のブロアを既設ヘッダに接続して成る圧縮空気供給装置と、
伸縮性や収縮性のない複数の散気エレメントを枝配管で連結した高圧系(高風量系)の散気装置で構成され、前記好気処理槽内に配置される高圧系(高風量系)の散気装置群と、
前記既設ヘッダと前記高圧系(高風量系)の散気装置群の前記枝配管とを連結する1つの送気管とを備える既設の散気システムから、
前記高圧系(高風量系)の散気装置群を、新設する低圧損型のパネル式メンブレン膜で構成され小さな気泡を発生する複数の散気パネルを新設枝配管で連結した低圧系(低風量系)の散気装置で構成される低圧系(低風量系)の散気装置群に置き換える既設の散気システムから改修散気システムへの更新装置において、
前記更新装置は、
前記複数の元配管の前記バルブより前記複数のブロア側に、バルブを設けた複数の分岐元配管を介して接続する1つの更新用のヘッダと、
前記送気管に沿って配置され、前記低圧系(低風量系)の散気装置群と前記新設枝配管を介して接続され且つ前記更新用のヘッダと連結される追加送気管と、
前記ブロアの内一部のブロアに設置されるインバータと
を備え、
前記インバータが最初に設置されたブロアは、半分の前記高圧系(高風量系)の散気装置群を前記低圧系(低風量系)の散気装置群に置き換えるまでは前記低圧系(低風量系)の散気装置専用のブロアとして前記更新用のヘッダに接続され、半分より多くの前記高圧系(高風量系)の散気装置群を前記低圧系(低風量系)の散気装置群に置き換えてからは前記低圧系(低風量系)の散気装置専用のブロアとして前記既設ヘッダに接続され、全ての前記高圧系(高風量系)の散気装置群を前記低圧系(低風量系)の散気装置群に置き換えると、前記既設ヘッダ及び前記更新用のヘッダに接続され、
前記インバータが最初に設置されたブロア以外の前記ブロアの内の一部は、前記低圧系(低風量系)の散気装置群の置き換えに応じて前記既設ヘッダのみ、前記更新用のヘッダのみ、又は前記既設ヘッダと前記更新用のヘッダとの接続に切り換えられる
ことを特徴とする既設の散気システムから改修散気システムへの更新装置。
【請求項2】
請求項1記載の既設の散気システムから改修散気システムへの更新装置において、
前記更新用のヘッダ内の圧力を検出する圧力計と、
前記圧力計からの検出信号に基づき設定圧力値との差分から、前記インバータの周波数出力を演算し前記インバータへ出力する圧力調整計とからなる吐出圧制御装置と
を備え、
前記更新用のヘッダに接続された前記ブロアの吐出圧を制御する
ことを特徴とする既設の散気システムから改修散気システムへの更新装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の既設の散気システムから改修散気システムへの更新装置において、
前記高圧系(高風量系)の散気装置群を前記低圧系(低風量系)の散気装置群への置き換えに際し、前記低圧系(低風量系)の散気装置群の数が、前記高圧系(高風量系)の散気装置群より多くなった際に、前記低圧系(低風量系)の散気装置群への圧縮空気の供給を、前記追加送気管から前記送気管へ切り換えるよう開閉可能に、前記更新用のヘッダに弁が備わる
ことを特徴とする既設の散気システムから改修散気システムへの更新装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか記載の既設の散気システムから改修散気システムへの更新装置において、
前記好気処理槽毎に前記送気管及び前記追加送気管各々にバルブを1つずつ備え、前記バルブの片側を介して前記高圧系(高風量系)の散気装置群の枝配管と前記送気管とが接続され、前記低圧系(低風量系)の散気装置群が設置される毎に前記バルブのもう片側を介し前記低圧系(低風量系)の散気装置群の新設第2枝配管を介して前記追加送気管が接続され、前記低圧系(低風量系)の散気装置群に対する圧縮空気の供給を前記バルブの片側又は前記バルブのもう片側を介して切り換える
ことを特徴とする既設の散気システムから改修散気システムへの更新装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか記載の既設の散気システムから改修散気システムへの更新装置において、
前記追加送気管の単位長さあたりの配管容量は、前記送気管の単位長さあたりの配管容量の40%以上50%以下である
ことを特徴とする既設の散気システムから改修散気システムへの更新装置。
【請求項6】
被処理水を収容する複数の好気処理槽と、
バルブを設けた複数の元配管を介して複数のブロアを既設ヘッダに接続して成る圧縮空気供給装置と、
伸縮性や収縮性のない複数の散気エレメントを枝配管で連結した高圧系(高風量系)の散気装置で構成され、前記好気処理槽内に配置される高圧系(高風量系)の散気装置群と、
前記既設ヘッダと前記高圧系(高風量系)の散気装置群の前記枝配管とを連結する1つの送気管とを備える既設の散気システムから、
前記高圧系(高風量系)の散気装置群を、新設する低圧損型パネル式メンブレン膜で構成され小さな気泡を発生する複数の散気パネルを新設枝配管で連結した低圧系(低風量系)の散気装置で構成される低圧系(低風量系)の散気装置群に置き換える既設の散気システムから改修散気システムへの更新方法において、
前記複数の元配管の前記バルブより前記複数のブロア側に、バルブを設けた複数の分岐元配管を介して接続する1つの更新用のヘッダを前記圧縮空気供給装置に設け、
前記更新用のヘッダに接続される追加送気管を、前記送気管に沿って配置し、
更新すべき前記高圧系(高風量系)の散気装置群を所定数の前記好気処理槽毎に順次撤去し、
前記低圧系(低風量系)の散気装置群を、撤去された前記高圧系(高風量系)の散気装置群の位置に配置し、
配置された前記低圧系(低風量系)の散気装置群に前記新設枝配管を介して前記更新用のヘッダを連結するように前記追加送気管を接続し、
前記ブロアの内一部のブロアにインバータを設置し、
前記インバータが最初に設置されたブロアを、全ての前記高圧系(高風量系)の散気装置群を前記低圧系(低風量系)の散気装置群に置き換えるまでは前記低圧系(低風量系)の散気装置専用のブロアとして前記更新用のヘッダ又は前記既設ヘッダに接続し、
全ての前記高圧系(高風量系)の散気装置群を前記低圧系(低風量系)の散気装置群に置き換えると、前記既設ヘッダ及び前記更新用のヘッダに接続し、
前記インバータが最初に設置されたブロア以外の前記ブロアの内の一部にインバータを設置し、前記低圧系(低風量系)の散気装置群の置き換えに応じて前記既設ヘッダのみ、前記更新用のヘッダのみ、又は前記既設ヘッダと前記更新用のヘッダとの接続に切り換える
ことを特徴とする既設の散気システムから改修散気システムへの更新方法。
【請求項7】
請求項6記載の既設の散気システムから改修散気システムへの更新方法において、
前記更新用のヘッダ内の圧力を検出する圧力計と、
前記圧力計からの検出信号に基づき設定圧力値との差分から、前記インバータの周波数出力を演算し前記インバータへ出力する圧力調整計とからなる吐出圧制御装置と
を備え、
前記更新用のヘッダに接続された前記ブロアの吐出圧を制御する
ことを特徴とする既設の散気システムから改修散気システムへの更新方法。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載の既設の散気システムから改修散気システムへの更新方法において、
前記高圧系(高風量系)の散気装置群を前記低圧系(低風量系)の散気装置群への置き換えに際し、前記低圧系(低風量系)の散気装置群の数が、前記高圧系(高風量系)の散気装置群より多くなった際に、前記低圧系(低風量系)の散気装置群への圧縮空気の供給を、前記追加送気管から前記送気管へ切り換える
ことを特徴とする既設の散気システムから改修散気システムへの更新方法。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8の何れか記載の既設の散気システムから改修散気システムへの更新方法において、
前記好気処理槽毎に前記送気管及び前記追加送気管各々にバルブを1つずつ備え、前記バルブの片側を介して前記高圧系(高風量系)の散気装置群の枝配管と前記送気管とを接続し、前記低圧系(低風量系)の散気装置群が設置される毎に前記バルブのもう片側を介し前記低圧系(低風量系)の散気装置群の新設第2枝配管を介して前記追加送気管とを接続し、前記低圧系(低風量系)の散気装置群に対する圧縮空気の供給を前記バルブの片側又は前記バルブのもう片側を介して切り換える
ことを特徴とする既設の散気システムから改修散気システムへの更新方法。
【請求項10】
請求項6乃至請求項9の何れか記載の既設の散気システムから改修散気システムへの更新方法において、
前記追加送気管の単位長さあたりの配管容量は、前記送気管の単位長さあたりの配管容量の40%以上50%以下である
ことを特徴とする既設の散気システムから改修散気システムへの更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
既設の散気システムから改修散気システムへの更新装置及び
既設の散気システムから改修散気システムへの更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水、し尿、産業排水などの有機性汚水を好気性微生物により生物学的に処理して浄化する好気性生物処理法の一つとして活性汚泥法が知られている。
図6は、標準的な活性汚泥法の処理工程を示す。
先ず、処理すべき汚水(以下、被処理水と称する)は、最初沈殿池に導かれる。被処理水は、最初沈殿池において被処理水中の微細な砂やSS(Suspended Solids:浮遊物質)を重力の作用によって沈殿除去される。
次に、被処理水は、最初沈殿池から曝気槽内に導かれる。この際、曝気槽には、種汚泥として好気性微生物(細菌、カビ、原生動物など)を運転開始当初導入され、被処理水中の有機物をえさとして増殖した、活性汚泥といわれる好気性微生物を多量に含む返送汚泥が、後段の最終沈殿池から再び返送されて導かれる。曝気槽内には、微生物の活動に必要な空気(酸素)を槽中に導入し、且つ活性汚泥を被処理水と充分混合するための散気装置が設置されている。
【0003】
散気装置には、無数の散気孔が設けられており、ブロアから空気配管を介して空気が供給されると、無数の散気孔から曝気槽内に空気を噴出させ、噴出するエアのエアリフト作用によって気液混合の上向流を生起することができる。そのため、曝気槽に活性汚泥を多量に含む返送汚泥が導かれると、散気装置は返送汚泥と被処理水とを十分混合し、被処理水中に気泡状の空気を吹き込んで曝気し、被処理水中の酸素濃度を高め、活性汚泥に含まれる微生物の代謝作用により有機物を除去する作用を奏する。
次に、曝気槽を溢出した活性汚泥と被処理水との混合液は、正常な活性汚泥は分離が容易であるため、最終沈殿池において沈降分離され、その上、上澄水は処理水として放流されたり、後工程の高度処理へ送られたりする。
次に、最終沈殿池中にて沈降した活性汚泥のうち、好気性排水処理に必要な量は反応槽(曝気槽)に返送され、再度、種汚泥として処理に使用される。
なお、沈殿汚泥の増殖分は、余剰汚泥として最初沈殿池の上流に戻され、最初沈殿池で沈降した沈殿池汚泥として集められた後、別途処理される。
【0004】
図7は、従来の散気装置を備えた散気システムの一例を示す(例えば、特許文献1,2,3,4,5,6参照)。
図7では、例えば、10槽の曝気槽1A〜1Jを備える散気システムについて説明する。
10槽の曝気槽1A〜1J内には、それぞれの底面に散気装置群2が配置されている。散気装置群2は、曝気槽1A〜1J内の被処理水中に気泡を曝気させる複数の散気装置3と、各散気装置3をそれぞれ配置する枝配管4とで構成されている。各枝配管4は空気配管5に接続され、空気配管5は1つの主配管(既設ヘッダ)6に連結され、主配管6には5台のブロア7a〜7eがそれぞれ元配管8a〜8eを介して接続されている。5台のブロア7a〜7eは、1台で2つ半の散気装置群2に空気を供給することができるように設定されているので、本例ではブロア7eが予備として機能する。空気配管5は、4台ブロア7a〜7dで供給される圧縮空気の全圧(静圧+動圧)を曝気槽1A〜1J毎に調整する複数の空気調節弁(図示せず)を設けている。
【0005】
なお、
図7では、10槽の曝気槽1A〜1J内の散気装置群2は、便宜上1本の枝配管4に3つの散気装置3を配置した形で示したが、それぞれの下水処理場の規模などにより使用される散気装置3及び枝配管4の数が求められる。また、曝気槽の数もそれぞれの下水処理場の規模などにより異なる。
図5(A)は、
図6に示す従来の散気装置を備えた散気システムのブロアの吐出圧力とブロアの風量との関係を示すグラフである。なお、
図5において、従来の散気装置3を用いた散気装置群2を標準系として示し、後述する低圧損型の散気装置であるパネル型のメンブレン式散気装置を用いる散気装置群を低風量系として示す。
従来の散気装置を備えた散気システムでは、4台のブロア7a〜7dを稼働することによって、抵抗曲線とブロアの吐出圧力の設定値とが重なり、運転点を形成している。
【0006】
また、従来の散気装置としては、例えば、メッシュクロス、セラミック、樹脂、金属の焼結体などの伸縮性や収縮性のない四角形状又は円形状の散気エレメントを用いた複数の散気板を、水平面上縦横に対にして配置し、水面上から空気を供給する給気ホースに接続されるヘッダー管から複数に分岐する配管にそれぞれゴムホースを介して接続して成る散気装置が知られている(例えば、特許文献5参照)。
特許文献5の散気板は、伸縮性や収縮性のない四角形状又は円形状の散気エレメントと、この散気エレメントの下側に設置された、通気口を有する可撓性のあるダイヤフラムとを備え、散気停止時には散気エレメントとダイヤフラムとの間に空間がなく、送気時には散気エレメントの通気抵抗により下面のダイヤフラムが下方に撓んで通気を可能にする構成になっている(特許文献5の
図1参照)。
【0007】
また、従来の別の散気装置としては、角型弾性多孔体と、角型弾性多孔体を下方から支持し且つ加圧空気用のオリフィスを有する支持体と、角型弾性多孔体を支持体に一体に固定する固定部材からなり、加圧空気送付用のパイプ上への設置が容易な散気装置が知られている(例えば、特許文献6参照)。
特許文献6において、弾性多孔体は、弾性を有する材料を所望の形状に成型して得られるものであり、多孔体の材質は、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコンゴム、ポリウレタン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム(例えば、登録商標バイトン,PTFE)、パーフルオロエラストマーなどのゴムから選ぶことができる。これらの中でも、特にエチレンプロピレンゴムが、膜強度が強く、耐熱性、耐水性に優れているため、好ましい。また、耐薬品性の点でフッ素ゴム、パーフルオロエラストマーが好ましい。
特許文献6の散気装置は、加圧空気送付用のパイプ上に2つ以上を設置して散気システムを構成することができる(特許文献6の
図5参照)。
【0008】
ところで、曝気槽へ供給する空気の送風に要する動力は、下水処理場で消費する電力の4割〜5割といわれており、その消費電力削減による曝気動力の省エネルギーとそれに伴う下水処理場での使用エネルギー由来のCO
2 排出量の削減による温室効果ガスの低減が期待されている。
そこで、曝気動力を削減するために送風機動力を低減するに当たり、ただ送風量を減らしただけでは、曝気槽内のDO(Dissolved Oxygen:溶存酸素)の低下、MLSS(Mixed Liquor Suspended Solid:活性汚泥浮遊物質)の沈殿を招き、処理水質が悪化して下水処理施設の本来の目的を果たすことができない。これを防ぐために少ない風量でも曝気槽内のDOを維持できる、従来のセラミックや合成樹脂製の高圧系(高風量系)の散気装置よりも微細な気泡を槽中に供給することで気液接触面積を劇的に増加させて、効率よく酸素を溶解させることの可能な高効率型散気装置である微細気泡散気装置を導入することで、曝気動力を低減することができる。
【0009】
そのため、上述した従来のセラミックや合成樹脂製の高圧系(高風量系)の散気装置の改修時に、送風動力の削減を可能とする低圧系(低風量系)の超微細散気装置であるパネル型のメンブレン式散気装置に置き換えることが提案されている。低圧系(低風量系)の微細気泡散気装置は、小さな気泡を発生させることにより、被処理水中に酸素が溶けやすくなるため、送風量が抑えられ電力使用量が削減できる。低圧系(低風量系)の微細気泡散気装置は、小さな気泡を発生させることにより、気液接触度合いが大幅に増加して、被処理水中に酸素が溶けやすくなるため、同じDOを被処理水中に保つのに送風量が押さえられ電力使用量が削減できる。低圧系(低風量系)の微細気泡散気装置を導入することにより、従来の高圧系(高風量系)の散気装置に比べ約2割の電力削減が可能になるといわれている。
パネル型のメンブレン式散気装置は、曝気槽のエアレーションに使用する装置である(例えば、特許文献7参照)。
【0010】
パネル型のメンブレン式散気装置の散気パネルは、平板状を為す金属製又は合成樹脂製のベースプレートの一面に散気膜を配置し、散気膜の四辺縁部とベースプレートの四辺縁部とをパッキンを介して金属製の枠体に固定している。散気膜は多数の小孔を有し、その材質は、ポリウレタン、シリコン、エチレンプロピレンゴムなどの適度の弾性を有する合成樹脂又は合成ゴムから成る。
パネル型のメンブレン式散気装置は、低圧系(低風量系)の散気装置であり、発生する気泡の直径が、例えば、1mm程度の微細気泡(超微細気泡)を発生することができるので、従来の散気装置に比べ気泡径が小さく、気液接触面積としての比表面積が同風量で劇的に大きくなるため、水中への酸素異動効率が高く、同じ酸素移動を水中へ行うための曝気を行うなら好気反応槽への送風量が少なくなり、電力削減と同時に曝気用エネルギー由来の温室効果ガスの排出量を抑制することが期待できる。
【0011】
図8は、従来の高圧系(高風量系)の散気装置群2の一部を低圧系(低風量系)のパネル型のメンブレン式散気装置10を用いる新たな散気装置群9に一部改修した後の散気システムの一例を示す。
なお、従来の高圧系(高風量系)の散気装置群2を低圧系(低風量系)のパネル型のメンブレン式散気装置10を用いる新たな散気装置群9に置き換える作業は、対象の下水処理場の運転に支障を与えないように、曝気槽1A〜1J全てを用いて好気性処理する必要のある原水量とならない原水量の少ない時期を見計らって、定格原水量と実際導入される原水量との差分の一部を受け持つ処理量の一部の曝気槽を閉鎖して水抜きし、高圧系(高風量系)の散気装置群2を順次低圧系(低風量系)の散気装置群9に更新していく。
【0012】
本例では、
図7に示す散気システムにおける2つの曝気槽1E,1G内の高圧系(高風量系)の散気装置群2をパネル型のメンブレン式散気装置10を用いる新たな散気装置群9に置き換える場合について説明する。
先ず、2つの曝気槽1E,1Gの空気系の枝配管4の図示しない開閉弁(空気調節弁と兼用でも別体でも良い)を閉止し、その後、2つの曝気槽1E,1G内に原水が流入しないように、原水流入配管途中のバルブを閉止したり、原水流入堰を上昇させたり閉鎖したりし、その後、2つの曝気槽1E,1G内の被処理水を排水して、2つの曝気槽1E,1G内を空にする。
次に、2つの曝気槽1E,1G内の改修する高圧系(高風量系)の散気装置群2を撤去する。
次に、2つの曝気槽1E,1G内に低圧系(低風量系)のパネル型のメンブレン式散気装置10を用いる新たな散気装置群9を配置する。
【0013】
次に、原水流入配管のバルブを開いたり、原水流入堰を下降させたり開放させたりして、原水流入堰から溢出させて原水を導入して、2つの曝気槽1E,1G内に原水を流入する。
次に、低圧系(低風量系)のパネル型のメンブレン式散気装置10を用いる新たな散気装置群9のバルブ12を開いて配管11から圧縮空気を供給する。
以上によって、2つの曝気槽1E,1G内の低圧系(低風量系)の散気装置群2をパネル型のメンブレン式散気装置10を用いる新たな散気装置群9に置き換える作業が完了する。
【0014】
図8に示す従来の高圧系(高風量系)の散気装置の改修後の散気システムでは、低圧系(低風量系)のパネル型のメンブレン式散気装置10であっても、ブロア静圧と各散気装置吹き出し風量から、配管11に設けたバルブ12を絞ってわざわざ抵抗を付けていた。その理由は、5台のブロア7a〜7eを用いる空気導入配管系はそのまま使用され、5台のブロア7a〜7eは低速で運転されるため、低圧系(低風量系)のパネル型のメンブレン式散気装置10に対しては圧縮空気の送風量や空気圧力が多すぎるためである。
なお、特許文献1〜4には、曝気槽の散気装置などにおける、複数のブロワにより散気装置へ空気を供給する散気システムの技術的水準が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−116388号公報
【特許文献2】特開2012−200706号公報
【特許文献3】特開2004−041928号公報
【特許文献4】特開平11−138191号公報
【特許文献5】特許第4539568号公報
【特許文献6】特許第4846339号公報
【特許文献7】特開2004−313938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したように、
図7に示す従来の高圧系(高風量系)の散気装置群2の曝気槽の一部改修後の散気システムでは、従来の高圧系(高風量系)の散気装置群2の一部を低圧系(低風量系)のパネル型のメンブレン式散気装置10に置き換えても、空気導入配管系が1系統であるため、ブロア静圧と各散気装置吹き出し風量から、低圧系(低風量系)のパネル型のメンブレン式散気装置10の配管11のバルブ12を絞ってわざわざ抵抗を付けていた。
よって、
図7に示す従来の散気装置を一部改修した場合、処理場全体の曝気槽中の散気装置を順次変更する過程においてその途上では、散気システムにおいて、ブロア7の消費電力は、従来の散気システムと変わらないため、低圧損型(搬送空気動力の低動力型)の散気装置であるパネル型のメンブレン式散気装置10の散気装置群9による送風動力の削減効果を得ることができなかった。
【0017】
また、特許文献6の散気装置は、既設の散気装置の散気板ホルダーを利用しながら、散気板自体を磁器製散気板から異種材の散気板へ簡単な部品構成を用いて変更したリプレース対応型散気装置であるため、交換される散気板がパネル型のメンブレン式散気装置9と同様に低圧損型となる可能性があるものの、
図7に示す散気システムと同様に、ブロア7の消費電力は、従来の散気システムと変わらないため、低圧損型の散気装置による送風動力の削減効果を得ることができなかった。
また、特許文献6の散気装置では、一つの配管に設けられた多数の既設散気装置の散気板ホルダーを利用して置き換えるため、作業に手間暇を要するという問題もある。
また、特許文献6の散気装置では、仮に一つの配管に設けられた多数の既設散気装置の散気板ホルダーを利用して置き換えたとしても、各々小さな面積の散気装置毎に散気板ホルダーを有するので、一つのパネル型のメンブレン式散気装置と比較すると、散気面積が少ないという問題もある。
【0018】
特許文献1には、曝気槽に浸積させている膜へ曝気空気を下方の散気管から供給する散気設備において、複数のブロアをヘッダで共通して接続し、通常の散気運転時には多数のブロアを運転し、散気管の汚泥詰まりを洗浄する洗浄運転時にはブロアを停止し、ヘッダで加圧空気を大気開放して急激に抜くことで、散気管内に水を流入させる技術の開示がある。
この特許文献1では、旧式の散気装置をメンブレン式散気装置へ変更更新することの開示は全くない。
特許文献2には、パネル型のメンブレン式散気装置を曝気槽内に設ける散気システムにおいて、メンブレン膜の開口部に堆積付着する付着物を洗浄するため、散気のための送気にミスト状の洗浄薬液を同伴させてメンブレン膜の開孔から吹き出させる技術の開示がある。
この特許文献2では、旧式の散気装置をメンブレン式散気装置へ変更する際に省エネルギーを図りながら更新することの開示は全くない。
【0019】
特許文献3では、パネル型のメンブレン式散気装置を曝気槽内に設ける散気システムにおいて、多数の散気装置に空気の供給量や空気圧が均一に安定的に供給できるように、多数の散気装置毎に独立して通気及び通気停止ができるようにすることで、順繰りに停止を掛けてメンブレン膜の開口部に付着物が付着する前に膜を大きく伸縮させて付着を防止して、全体としても空気の供給量や圧が均一になるようにした技術が開示されている。
この特許文献3では、旧式の散気装置をメンブレン式散気装置へ変更する際に省エネルギーを図りながら更新することの開示は全くない。
特許文献4でも、曝気槽内に設ける散気管へ空気を供給する曝気装置において、散気装置毎にインバータ付きブロアを設けて、流入負荷量に応じて各ブロアの生成空気量を調整する技術が開示されている。
この特許文献4では、旧式の散気装置をメンブレン式散気装置へ変更する際に省エネルギーを図りながら更新することの開示は全くない。
【0020】
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、従来のセラミックや合成樹脂製の散気部分を有する高圧系(高風量系)の散気装置を備えた既設の曝気槽の散気装置改修時に、一部を改修交換する過程でも、低圧系(低風量系)のパネル型のメンブレン式散気装置の導入を、調整を簡単に容易に行うことができ、且つ一部改修時から省エネルギー運転が実現可能な
、既設の散気システムから改修散気システムへの更新装置及び
既設の散気システムから改修散気システムへの更新方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る既設の散気システムから改修散気システムへの更新装置は、被処理水を収容する複数の好気処理槽と、バルブを設けた複数の元配管を介して複数のブロアを既設ヘッダに接続して成る圧縮空気供給装置と、
伸縮性や収縮性のない複数の散気エレメントを枝配管で連結した高圧系(高風量系)の散気装置で構成され、前記好気処理槽内に配置される高圧系(高風量系)の散気装置群と、前記既設ヘッダと前記高圧系(高風量系)の散気装置群の前記枝配管とを連結する1つの送気管とを備える
既設の散気システム
から、前記高圧系(高風量系)の散気装置群を、
新設する低圧損型のパネル式メンブレン膜で構成され
小さな気泡を発生する複数の散気パネルを新設枝配管で連結した低圧系(低風量系)の散気装置で構成される低圧系(低風量系)の散気装置群に置き換える
既設の散気システムから改修散気システムへの更新装置において、
前記更新装置は、前記複数の元配管の前記バルブより前記複数のブロア側に、バルブを設けた複数の分岐元配管を介して接続する1つの更新用のヘッダと、前
記送気管に沿って配置され
、前記低圧系(低風量系)の散気装置群と前記新設枝配管を介して接続され且つ前記更新用のヘッダと連結される追加送気管と、前記ブロアの内一部のブロアに設置されるインバータとを備え
、前記インバータが最初に設置されたブロアは、半分の前記高圧系(高風量系)の散気装置群を前記低圧系(低風量系)の散気装置群に置き換えるまでは前記低圧系(低風量系)
の散気装置専用のブロアとして前記更新用のヘッダに接続され、半分より多くの前記高圧系(高風量系)の散気装置群を前記低圧系(低風量系)の散気装置群に置き換えてからは前記低圧系(低風量系)
の散気装置専用のブロアとして前記既設ヘッダに接続され、全ての前記高圧系(高風量系)の散気装置群を前記低圧系(低風量系)の散気装置群に置き換えると、前記既設ヘッダ及び前記更新用のヘッダに接続され、前記インバータが最初に設置されたブロア以外の前記ブロアの内の一部は、前記低圧系(低風量系)の散気装置群の置き換えに応じて前記既設ヘッダのみ、前記更新用のヘッダのみ、又は前記既設ヘッダと前記更新用のヘッダとの接続に切り換えられることを特徴とする。
【0022】
また、前記更新用のヘッダ内の圧力を検出する圧力計と、前記圧力計からの検出信号に基づき設定圧力値との差分から、前記インバータの周波数出力を演算し前記インバータへ出力する圧力調整計とからなる吐出圧制御装置とを備え、前記更新用のヘッダに接続された前記ブロアの吐出圧を制御することを特徴とする。
また、前記高圧系(高風量系)の散気装置群を前記低圧系(低風量系)の散気装置群への置き換えに際し、前記低圧系(低風量系)の散気装置群の数が、前記高圧系(高風量系)の散気装置群より多くなった際に、前記低圧系(低風量系)の散気装置群への圧縮空気の供給を、前記追加送気管から前記送気管へ切り換える
よう開閉可能に、前記更新用のヘッダに弁が備わることを特徴とする。
【0023】
また、前記好気処理槽毎に
前記送気管及び前記追加送気管各々にバルブを1つずつ備え、前記バルブの片側を介して前記高圧系(高風量系)の散気装置群の枝配管と前記送気管とが接続され、前記低圧系(低風量系)の散気装置群が設置される毎に前記バルブのもう片側を介し前記低圧系(低風量系)の散気装置群の新設第2枝配管を介して前記追加送気管が接続され、前記低圧系(低風量系)の散気装置群に対する圧縮空気の供給を前記バルブの片側又は前記バルブのもう片側を介して切り換えることを特徴とする。
また、前記追加送気管
の単位長さあたりの配管容量は、前記送気管
の単位長さあたりの配管容量の40%以上50%以下であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る既設の散気システムから改修散気システムへの更新方法は、被処理水を収容する複数の好気処理槽と、バルブを設けた複数の元配管を介して複数のブロアを既設ヘッダに接続して成る圧縮空気供給装置と、
伸縮性や収縮性のない複数の散気エレメントを枝配管で連結した高圧系(高風量系)の散気装置で構成され、前記好気処理槽内に配置される高圧系(高風量系)の散気装置群と、前記既設ヘッダと前記高圧系(高風量系)の散気装置群の前記枝配管とを連結する1つの送気管とを備える既設の散気システム
から、前記高圧系(高風量系)の散気装置群を、
新設する低圧損型パネル式メンブレン膜で構成され
小さな気泡を発生する複数の散気パネルを新設枝配管で連結した低圧系(低風量系)の散気装置で構成される低圧系(低風量系)の散気装置群に置き換える
既設の散気システムから改修散気システムへの更新方法において、前記複数の元配管の前記バルブより前記複数のブロア側に、バルブを設けた複数の分岐元配管を介して接続する1つの更新用のヘッダを前記圧縮空気供給装置に設け、前記更新用のヘッダに接続される追加送気管を、前記送気管に沿って配置し、更新すべき前記高圧系(高風量系)の散気装置群を所定数の前記好気処理槽毎に順次撤去し、前記低圧系(低風量系)の散気装置群を、撤去された前記高圧系(高風量系)の散気装置群の位置に配置し、配置された前記低圧系(低風量系)の散気装置群に前記新設枝配管を介して前記更新用のヘッ
ダを連結するように前記追加送気管を接続し、前記ブロアの内一部のブロアにインバータを設置し、前記インバータが最初に設置されたブロアを、全ての前記高圧系(高風量系)の散気装置群を前記低圧系(低風量系)の散気装置群に置き換えるまでは
前記低圧系(低風量系)
の散気装置専用のブロアとして前記更新用のヘッダ又は前記既設ヘッダに接続し、全ての前記高圧系(高風量系)の散気装置群を前記低圧系(低風量系)の散気装置群に置き換えると、前記既設ヘッダ及び前記更新用のヘッダに接続し、前記インバータが最初に設置されたブロア以外の前記ブロアの内の一部にインバータを設置し、前記低圧系(低風量系)の散気装置群の置き換えに応じて前記既設ヘッダのみ、前記更新用のヘッダのみ、又は前記既設ヘッダと前記更新用のヘッダとの接続に切り換えることを特徴とする。
【0025】
また、前記更新用のヘッダ内の圧力を検出する圧力計と、前記圧力計からの検出信号に基づき設定圧力値との差分から、前記インバータの周波数出力を演算し前記インバータへ出力する圧力調整計とからなる吐出圧制御装置とを備え、前記更新用のヘッダに接続された前記ブロアの吐出圧を制御することを特徴とする。
また、前記高圧系(高風量系)の散気装置群を前記低圧系(低風量系)の散気装置群への置き換えに際し、前記低圧系(低風量系)の散気装置群の数が、前記高圧系(高風量系)の散気装置群より多くなった際に、前記低圧系(低風量系)の散気装置群への圧縮空気の供給を、前記追加送気管から前記送気管へ切り換えることを特徴とする。
【0026】
また、前記好気処理槽毎に
前記送気管及び前記追加送気管各々にバルブを1つずつ備え、前記バルブの片側を介して前記高圧系(高風量系)の散気装置群の枝配管と前記送気管とを接続し、前記低圧系(低風量系)の散気装置群が設置される毎に前記バルブのもう片側を介し前記低圧系(低風量系)の散気装置群の新設第2枝配管を介して前記追加送気管とを接続し、前記低圧系(低風量系)の散気装置群に対する圧縮空気の供給を前記バルブの片側又は前記バルブのもう片側を介して切り換えることを特徴とする。
また、前記追加送気管
の単位長さあたりの配管容量は、前記送気管
の単位長さあたりの配管容量の40%以上50%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、既設のセラミックや合成樹脂製の高圧系(高風量系)の散気装置群の改修時に、高圧系(高風量系)の散気装置群の送気管とは別に更新用の送気管を配置し、高圧系(高風量系)の散気装置へ圧縮空気を供給するブロアの一部にインバータを配置し、置き換えられるパネル型のメンブレン式散気装置で構成される低圧系(低風量系)の散気装置群に吐出圧力を制御して圧縮空気を供給するようにしたので、ブロア電力の低減が可能となり、更新の進捗状況に応じた省エネルギー効果を得ることができる。
また、本発明によれば、高圧系(高風量系)の散気装置群を順次低圧系(低風量系)の散気装置群に更新するので、更新台数に応じて省エネルギー効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態において、10槽の曝気槽1A〜1Jの内、曝気槽1A,1Bの高圧系(高風量系)の各散気装置群2を低圧系(低風量系)の各散気装置群20に置き換えた状態を示す概念図である。
【
図2】本発明の一実施形態において、10槽の曝気槽1A〜1Jの内、曝気槽1A〜1Eの高圧系(高風量系)の各散気装置群2を低圧系(低風量系)の各散気装置群20に置き換えた状態を示す概念図である。
【
図3】本発明の一実施形態において、10槽の曝気槽1A〜1Jの内、曝気槽1A〜1Hの高圧系(高風量系)の各散気装置群2を低圧系(低風量系)の各散気装置群20に置き換えた状態を示す概念図である。
【
図4】本発明の一実施形態において、10槽の曝気槽1A〜1Jの全ての高圧系(高風量系)の散気装置群2を低圧系(低風量系)の散気装置群20に置き換えた状態を示す概念図である。
【
図5】(A)高圧系(高風量系)の各散気装置群を備えた散気システムのブロアの吐出圧力とブロアの風量との関係及び(B)〜(E)高圧系(高風量系)の各散気装置群を備えた散気システムの一部又は全部を低圧系(低風量系)の各散気装置群群を備えた散気システムに置き換えた場合の、ブロアの吐出圧力とブロアの風量との関係をそれぞれ示すグラフである。
【
図6】標準的な活性汚泥法の処理工程を示す図である。
【
図7】従来の高圧系(高風量系)の散気装置群を備えた散気システムの一例を示す概念図である。
【
図8】従来の高圧系(高風量系)の散気装置群の一部を低圧系(低風量系)のパネル型のメンブレン式散気装置を用いる新たな散気装置群に改修後の散気システムの一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1〜
図5は、本発明の一実施形態に係る散気システムの更新装置及び散気システムの更新方法を示す。
本実施形態では、
図7に示す既設の高圧系(高風量系)の散気装置群2を備えた散気システムにおける10槽の曝気槽1A〜1Jの各散気装置群2を曝気槽単位で順次撤去し、新たに低圧系(低風量系)の散気装置群20を配置する。
なお、
図7,
図8では詳細説明を省略したが、10槽の曝気槽1A〜1Jの高圧系(高風量系)の各散気装置群2へ圧縮空気を供給するための空気配管5には、曝気槽単位でそれぞれ枝配管である接続管13が設けられ、各接続管13には高圧系(高風量系)の各散気装置群2の枝配管4との接続部にバルブ14が設けられている。各接続管13は、バルブ14を設けた先端部が10槽の曝気槽1A〜1J内で高圧系(高風量系)の各散気装置群2を配置した枝配管4に接続可能な位置に配置されている。
【0030】
低圧系(低風量系)の各散気装置群20は、低圧系(低風量系)のパネル型のメンブレン式散気装置(散気パネル)21を配管22に配置することによって構成されている。配管22には、バルブ14と接続される新設枝配管の一部である枝管22aが設けられている。
低圧系(低風量系)のパネル型のメンブレン式散気装置(散気パネル)21は、平板状を為す金属製又は合成樹脂製のベースプレートの一面に散気膜を配置し、散気膜の四辺縁部とベースプレートの四辺縁部とをパッキンを介して金属製の枠体に固定することによって散気面を構成している。散気膜は多数の小孔を有し、その材質は、ポリウレタン、シリコン、エチレンプロピレンゴムなどの適度の弾性を有する合成樹脂又は合成ゴムから成る。
低圧系(低風量系)のパネル型のメンブレン式散気装置(散気パネル)21は、発生する気泡の直径が、例えば、1mm程度の微細気泡(超微細気泡)を発生することができるので、従来の高圧系(高風量系)の散気装置に比べ小さく、比表面積が大きくなるため、水中への酸素移動効率が高く、同じ酸素移動を水中へ行うための曝気を行うなら好気反応槽への送風量が約1/2となり、電力削減と同時に温室効果ガスの排出量を抑制することが期待できる。
【0031】
高圧系(高風量系)の散気装置群2を低圧系(低風量系)のパネル型のメンブレン式散気装置(散気パネル)21を用いる新たな散気装置群20に置き換える作業は、対象の下水処理場の運転に支障を与えないように、曝気槽1A〜1J全てを用いて好気性処理する必要のある原水量とならない原水量の少ない時期を見計らって、定格原水量と実際導入される原水量との差分の一部を受け持つ処理量の一部の曝気槽を閉鎖して水抜きし(例えば、10槽の内2槽を閉鎖できる)、高圧系(高風量系)の散気装置群2を順次低圧系(低風量系)の散気装置群20に更新していくこととなる。
この際に、
図8に示す従来の散気システムの更新装置及び更新方法と異なるのは、当初に置き換える低圧系(低風量系)の散気装置群20(
図1では10槽の内の最初の2槽1A,1B分)を配置するに際し、送気管である空気配管5に沿って追加送気管である空気配管30を配置し、空気配管30と既設の5つのブロア7a〜7eとの間に更新用のヘッダ43を介して、更に各接続部に分岐配管42a〜42eをバルブ42f〜42eを介して新設配置することである。
【0032】
さらに、更新用のヘッダ43に圧力計16を備え、更新用のヘッダ43内のブロア吐出圧によって既設ブロア7a〜7eの一部に追加したインバータ41a,41bを制御することも、当初に低圧系(低風量系)の散気装置群20を置き換える際に新設配置することである。
低圧系(低風量系)の各散気装置群20を配置するに際し、空気配管5に沿って追加送気管である空気配管30を配置する。追加送気管である空気配管30は、既設の空気配管5の容量に対し40%〜50%の低風量の圧縮空気を供給する容量としてある。
空気配管30には、10槽の曝気槽1A〜1Jの低圧系(低風量系)の各散気装置群20の配管22を取り付けるための新設枝配管である接続管31が曝気槽単位で設けてあり、各接続管31には低圧系(低風量系)の各散気装置群20の配管22との接続部先端にバルブ32が設けてある。各接続管31は、バルブ32を設けた先端部が10槽の曝気槽1A〜1J内で低圧系(低風量系)の各散気装置群20の配管22に接続可能な位置に配置されている。
【0033】
10槽の曝気槽1A〜1Jの高圧系(高風量系)の各散気装置群2及び新たに配置する低圧系(低風量系)の各散気装置群20へ圧縮空気を供給する圧縮空気供給装置40は、既設の5つのブロア7a〜7eから圧縮空気を受入れ空気配管5へ圧縮空気を供給する既設のヘッダ6と、既設の5つのブロア7a〜7eのうち2台のブロア7c,7d(散気装置群20と散気装置群2の新旧風量比=2:1であり、改修前は予備を除くと4台運転なので改修完了時に2台で賄えることとなり、2台を対象。)のモートルと商用供給電源との間にインバータ41a,41bを設け、既設の5つのブロア7a〜7eの吐出側と既設のヘッダ6の間にスタンバイ用として設置されているバルブ8f〜8jの上流側から、途中にバルブ42f〜42jを設ける分岐配管42a〜42eを介して接続される更新用のヘッダ43を備えている。
ここで、既設のブロア7a,7b,7eは、それぞれ高圧系(高風量系)の各散気装置群2に対し、2槽半、つまり全体の1/4の曝気槽に圧縮空気を供給する能力を有し、インバータ41a,41bを設けたブロア7c,7dは、それぞれ低圧系(低風量系)の各散気装置群20の風量が小さいことにより、新設する各散気装置群20に対し、5槽、つまり全体の1/2の曝気槽に圧縮空気を供給する能力を有することとなる。
【0034】
既設のブロア7a,7b,7eは商用電源による定速で運転され、既設のブロア7c,7dはインバータ制御により運転される。インバータ41a,41bは、既設のブロア7c,7dの駆動モータの周波数を、商用の周波数より低く抑えるように、更新用のヘッダ43の吐出圧に応じた制御を行い、既設のブロア7c,7dは、送気先が新設する各散気装置群20となった場合、定格の40%〜50%の風量を吐出するようになる。既設の各散気装置群2と新設の各散気装置群20の吐出に必要な圧力は異なる場合が多いので、商用周波数の何割になるかはケースバイケースだが、商用周波数よりも低くなる。
既設の5つのブロア7a〜7eは、バルブ8f〜8jを設けた配管8a〜8eを介して1つの既設のヘッダ6に接続されている。既設のヘッダ6には、10槽の曝気槽1A〜1Jの高圧系(高風量系)の各散気装置群2へ圧縮空気を供給するための空気配管5が接続されている。
【0035】
配管8a〜8eには、バルブ8f〜8jと既設の5つのブロア7a〜7eとの間から分岐する分岐配管42a〜42eが設けられている。分岐配管42a〜42eには、バルブ42f〜42jが設けられ、更新用のヘッダ43に接続されている。更新用のヘッダ43には、新たに配置する低圧系(低風量系)の各散気装置群20へ圧縮空気を供給するための追加送気管である空気配管30が接続されている。
既設の5つのブロア7a〜7eには、吸気側に吸気配管15の配管15a〜15eが接続され、吸気配管15には外気導入用の吸気口15fが設けられている。
更新用のヘッダ43には、接続される低圧系(低風量系)の各散気装置群20への吐出圧力を制御するために、更新用のヘッダ43の吐出圧力を圧力計(ΔP)16で検出し、圧力調節計(PIC)17で演算した信号にて、ブロア7c,7dのモータに接続されるインバータ41a,41bの周波数出力を制御してブロア7c,7dの出口圧力を一定に制御する。
【0036】
以下、具体的に
図7に示す従来の散気システムにおける10槽の曝気槽1A〜1Eの高圧系(高風量系)の各散気装置群2を曝気槽単位で順次撤去し、新たに低圧系(低風量系)の各散気装置群20を配置する場合について説明する。
図1は、10槽の曝気槽1A〜1Jの内、2槽の曝気槽1A,1Bの高圧系(高風量系)の各散気装置群2を低圧系(低風量系)の各散気装置群20に置き換えた状態を示す。
先ず、ブロア7a,7b,7c,7eの運転を継続し、ブロア7dの運転を停止する。同時に、2つの曝気槽1A,1B内の各バルブ14を閉じる。
この際、圧縮空気供給装置40では、バルブ8f,8g,8i,8jが開かれ、バルブ8h,42f,42g,42i,42jが閉じられ、ブロア7a,7b,7c,7eの運転によって圧縮空気は既設のヘッダ6を介して空気配管5から曝気槽1C〜1J内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2へ供給される。
【0037】
ただし、圧縮空気を供給する曝気槽が8個であるため、1台のブロアの圧縮空気の供給量が曝気槽の2槽半であるから、ブロア7a,7b,7c,7eが定速で運転すると、圧縮空気の供給量が2槽分余分になるので、ブロア7dにインバータ41bの追加工事後、原水流入が少ない時期の更に流入の少ない夜間などを見計らって商用電源からインバータ盤電源への切替え工事(モートルは当初からインバータ対応)を、ブロア7cを短時間停止させてブロア7cにインバータ41aの追加工事完了後に行い、ブロア7cを再運転しておくことで、ブロア7cをインバータ41aによる絞り運転として、8槽の曝気槽1C〜1Jへの圧縮空気の供給を調整する。
即ち、10槽の曝気槽1A〜1Jの内、2槽の曝気槽1A,1Bの高圧系(高風量系)の各散気装置群2を低圧系(低風量系)の各散気装置群20に置き換えたので、ブロア4台では高圧系(高風量系)の各散気装置群2の既設ヘッダ6からの吐出流量が過多となり、ブロア7cをインバータ41aにより手動設定にて絞り運転することになる。
【0038】
また、この時点では、ブロア7a,7b,7c,7eは、更新用のヘッダ43に接続されていないので、更新用のヘッダ43へ圧縮空気を供給することはない。
従って、8槽の曝気槽1C〜1Jでは、ブロア7a,7b,7c,7eの運転によって、既設のヘッダ6から圧縮空気が従前通り供給されるので、8槽の曝気槽1C〜1J内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2によって返送汚泥と被処理水とを十分混合し、被処理水中に気泡状の空気を吹き込んで曝気し、被処理水中の酸素濃度を高め、活性汚泥に含まれる微生物の代謝作用により有機物を除去する作用が奏される。
即ち、8槽の曝気槽1C〜1Jでは、高圧系(高風量系)の各散気装置群2による被処理水中の有機物を除去する作用を中断することがない。
【0039】
この時点でのブロア7a,7b,7c,7eの吐出圧力とブロア7a,7b,7c,7eの風量との関係は、
図5(B)の標準系に示すように、ブロア7dにインバータ41bを最初に付加して低圧系(低風量系)の各散気装置群20へ切り離し、ブロア7cがインバータ41aにより絞り運転を行うので、ブロア7a,7b,7eの3台での並列複合風量−静圧(圧力)にさらに風量と圧力とを積み上げて、8槽分の風量である運転点に所定の圧力で供給できる。これは、4台目の並列ブロアを絞り運転するのに、電力を省けるインバータ制御で行うので最適な省エネルギー制御である。
図5(A)に、抵抗曲線とブロア4台の複合吐出圧力が重なる点に運転点としての8槽分の流量が合致するように示すことができる。
次に、2槽の曝気槽1A,1B内に原水が流入しないように、図示しない原水流入配管途中のバルブを閉止したり、原水流入堰を上昇させたり閉鎖したりし、2槽の曝気槽1A,1B内の被処理水を排水して、2槽の曝気槽1A,1B内を空にする。
次に、2槽の曝気槽1A,1B内の改修する高圧系(高風量系)の各散気装置群2を空気配管5の各バルブ14から分離し、散気装置3を配置した枝配管4を撤去する。
以上によって、2槽の曝気槽1A,1B内の改修する高圧系(高風量系)の各散気装置群2の撤去が完了する。
【0040】
次に、2槽の曝気槽1A,1B内に、低圧系(低風量系)の各散気装置群20を配置し、2槽の曝気槽1A,1Bと対応する更新用の空気配管30の各接続管31の先端部に設けたバルブ32と高圧系(高風量系)の各散気装置群2の各配管22とを接続すると共に、各配管22の枝管22aをバルブ14に接続する。この時点では、バルブ32は閉じられており、更新用の空気配管30の接続管31から圧縮空気が噴出することはない。
次に、各バルブ32と高圧系(高風量系)の各散気装置群2の各配管22との接続が完了すると、各バルブ32を開き、圧縮空気供給装置40のバルブ8iを閉じ、バルブ42iを開いて、停止中に商用電源からインバータ盤電源へ切り替え工事が完了したことで、インバータ41bによって制御されたブロア7dの運転により、圧縮空気を更新用のヘッダ43に接続される更新用の空気配管30を介して各接続管31の先端部に設けたバルブ32へ送り、バルブ32から配管22を介して低圧系(低風量系)の各散気装置群20へ供給する。
次に、図示しない原水流入配管のバルブを開いたり、原水流入堰を下降させたり開放させたりして、原水流入堰から溢出させて原水を導入して、2つの曝気槽1A,1B内に原水を流入する。
【0041】
以上によって、2槽の曝気槽1A,1B内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2を低圧系(低風量系)の各散気装置群20に置き換える作業が完了する。
この時点でのブロア7dの吐出圧力と風量は、2槽の曝気槽1A,1B内の低圧系(低風量系)の2群の散気装置群20へ供給されるので、5槽の低圧系(低風量系)の散気装置群20へ供給できる能力を有するブロア7dにとっては、圧力制御による絞り運転となり、低いインバータ周波数での運転によって、
図5(B)の低風量系に示す運転点(2槽分の低圧系(低風量系)散気装置群20の必要風量である)の能力を発揮できる。
斯くして、
図1に示す当初更新後の散気システムでは、全ての既設のブロア7a〜7eを運転し、8槽の曝気槽1C〜1J内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2には既設のブロア7cをそれに新設したインバータ41aにより絞り運転とし、既設のブロア7a〜7c,7eで生成された圧縮空気を既設のヘッダ6から空気配管5を経由して供給し、2槽の曝気槽1A,1B内の低圧系(低風量系)の各散気装置群20には、既設のブロア7dを新設されたインバータ41bにより制御運転して更新用のヘッダ43から更新用の空気配管30を経由して圧縮空気を供給することができる。
【0042】
図2は、10槽の曝気槽1A〜1Jの内、5槽の曝気槽1A〜1E内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2を低圧系(低風量系)の各散気装置群20に置き換えた状態を示す。
なお、曝気槽1C〜1E内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2を低圧系(低風量系)の各散気装置群20に置き換える手順は、
図1に示す2槽の曝気槽1A,1B内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2を低圧系(低風量系)の各散気装置群20に置き換える作業と同じである。
圧縮空気供給装置40では、ブロア7cに接続する配管8cのバルブ8hを閉じ、分岐配管42cのバルブ42hを開き、ブロア7dに接続する配管8dのバルブ8iを閉じ、分岐配管42dのバルブ42iを開いて、ブロア7c,7dで生成される圧縮空気を更新用のヘッダ43へ供給する。なお、ブロア7eは予備として停止される。
【0043】
ここで、ブロア7d一台の運転でも5槽の曝気槽1A〜1E内の低圧系(低風量系)の各散気装置群20への圧縮空気の供給は可能であるが、ブロア7c,7dのインバータ41a,41bでの制御運転の方が省エネルギーである。そこで、ブロア7cも圧力制御可能なように後述の圧力調節計演算信号をインバータ41aが受入可能に設定し、圧力計(ΔP)16からの信号に基づいて圧力調節計(PIC)17で演算した信号にて、ブロア7c,7dのモータに接続されるインバータ41a,41bの周波数出力を既設のブロアの半分の吐出量となるように制御する。
残りの5槽の曝気槽1F〜1J内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2には、ブロア7a,7bによって生成された圧縮空気が既設のヘッダ6から空気配管5を介して供給される。
【0044】
5槽の曝気槽1A〜1E内の低圧系(低風量系)の各散気装置群20には、ブロア7c,7dをインバータ41a,41bによって制御して生成された圧縮空気が更新用のヘッダ43から更新用の空気配管30を介して供給される。
この時点でのブロア7a,7bの吐出圧力と風量との関係は、
図5(C)の標準系に示すように、ブロア7a,7bの2台での並列複合風量−静圧(圧力)となり、ちょうど5槽分の風量である運転点に所定の圧力で供給できる。当然、8槽分の
図5(B)よりも風量が少ない側に移動する。この場合、ちょうど5槽分を定格2台の複合能力で賄えるので、最適な省エネルギー運転といえる。
また、この時点で、ブロア7c,7dの吐出圧力と風量との関係は、
図5(C)の低風量系に示すように、ブロア7eが停止し、ブロア7c,7dがインバータ制御されながら2台での並列複合風量−静圧(圧力)として風量と圧力とを積み上げて、5槽分の風量である運転点に所定の圧力で供給できる。これは、圧力を最適に調整するため2台目とも並列に絞り運転するに際し、電力を省けるインバータ制御で行うので最適な省エネルギー制御である。
図5(C)に、抵抗曲線とブロア2台の複合吐出圧力が重なる点に運転点としての5槽分の低圧系(低風量系)の各散気装置群20の流量が合致するように示すことができ、抵抗曲線とブロアの吐出圧力とが重なる運転点が、
図5(B)の低風量系に示す運転点に比べて5槽分となるので風量が多い方に移動する。
【0045】
斯くして、
図2に示す更新後の散気システムでは、既設のブロア7eを予備とし、既設のブロア7a〜7dを運転し、5槽の曝気槽1F〜1J内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2には既設のブロア7a,7bで生成された圧縮空気を既設のヘッダ6から空気配管5を経由して供給し、5槽の曝気槽1A〜1E内の低圧系(低風量系)の各散気装置群20には、既設のブロア7c,7dを新設されたインバータ41a,41bにより制御運転して更新用のヘッダ43から更新用のヘッダ43を経由して圧縮空気を供給することができる。
【0046】
図3は、10槽の曝気槽1A〜1Jの内、8槽の曝気槽1A〜1H内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2を低圧系(低風量系)の各散気装置群20に置き換えた状態を示す。
なお、曝気槽1F〜1H内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2を低圧系(低風量系)の各散気装置群20に置き換える手順は、
図1に示す2槽の曝気槽1A,1B内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2を低圧系(低風量系)の各散気装置群20に置き換える作業と同じである。
圧縮空気供給装置40では、ブロア7bに接続する配管8bのバルブ8gを開き、分岐配管42bのバルブ42gを閉じて、ブロア7bで生成される圧縮空気を既設のヘッダ6へ供給する。また、
図2の合計5槽の低圧系(低風量系)の各散気装置群20と置き換えた際と異なり、ブロア7cに接続する配管8cのバルブ8hを閉じて、分岐配管42cのバルブ42hを開き、ブロア7cで生成される圧縮空気を更新用のヘッダ43へ供給する。さらに、
図2の合計5槽の低圧系(低風量系)の各散気装置群20と置き換えた際と同じく、ブロア7dに接続する配管8cのバルブ8iを開いて、分岐配管42dのバルブ42iを閉じ、ブロア7dで生成される圧縮空気を既設のヘッダ6へ供給する。なお、ブロア7a,7eはこの8槽更新時には予備として停止される。
【0047】
8槽の曝気槽1A〜1Hが低圧系(低風量系)の各散気装置群20に置き換えられ、追加送気管である更新用の空気配管30を介して圧縮空気を送風するには配管径が不足するので、送気管の受け持ちを逆転させる。つまり、低圧系(低風量系)の各散気装置群20には、既設のヘッダ6及び空気配管5を介して圧縮空気を供給し、高圧系(高風量系)の各散気装置群2には、更新用のヘッダ43及び更新用の空気配管30を介して圧縮空気を供給する。このために、最後に残る高圧系(高風量系)の各散気装置群2では、枝配管14のバルブ13の下流側を分岐して、新設枝管22a及び先端にバルブ31を設けて更新用の空気配管30から延長する配管32を接続し、枝配管14のバルブ13を閉じ、配管32のバルブ31を開けておく。
【0048】
ここで、ブロア7b,7dは、8槽の曝気槽1A〜1H内の低圧系(低風量系)の各散気装置群20への圧縮空気の供給は可能であるが、2槽の曝気槽分の圧縮空気が余分になるため、ブロア7dのモータに接続されるインバータ41bの周波数出力を手動設定により、定格で運転されるブロア7b、ブロア7dの2台での並列複合風量−静圧(圧力)として風量と圧力とを積み上げて、8槽分の低圧系(低風量系)の散気装置群20の合計風量である運転点に所定の圧力で供給できるように調整する。
残りの2槽の曝気槽1I,1J内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2には、更新用の空気配管30を介してブロア7cによって生成された圧縮空気を供給するが、2槽半の高圧系(高風量系)の各散気装置群2への供給能力を有するブロア7cにとっては絞り運転となり、圧力計(ΔP)16からの検出信号に基づき設定圧力値との差分から圧力調節計(PIC)17で演算され出力されるインバータ周波数出力信号にて、インバータ41aの周波数を設定してブロア7cを制御運転する。
【0049】
この時点でのブロア7cの吐出圧力とブロア7cの風量との関係は、
図5(D)の標準系に示すように、残りの2槽の曝気槽1I,1J内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2には、2槽半の高圧系(高風量系)の各散気装置群2への供給能力を有するブロア7cにとっては絞り運転となり、圧力計(ΔP)16からの検出信号に基づき設定圧力値との差分から圧力調節計(PIC)17で演算され出力されるインバータ周波数出力信号にて、インバータ41aの周波数を設定してブロア7cを制御運転して、2槽分の高圧系(高風量系)の各散気装置群2への合計供給風量の運転点となる。
また、この時点で、ブロア7b,7dの吐出圧力とブロア7b,7dの風量との関係は、
図5(D)の低風量系に示すように、ブロア7a,7eが停止し、ブロア7bを商用電源供給による商用定格運転させ、ブロア7dをインバータ制御による絞り運転させるため、ブロア7bの風量−静圧(圧力)に、さらにブロア7dを加えた2台での並列複合風量−静圧(圧力)として風量と圧力とを積み上げて、8槽分の風量である運転点に所定の圧力で供給できる。これは、2台目の並列ブロアを絞り運転するのに、電力を省けるインバータ制御で行うので最適な省エネルギー制御である。
図5(D)に、抵抗曲線とブロア2台の複合吐出圧力が重なる点に運転点としての8槽分の流量が合致するように示すことができる。
【0050】
斯くして、
図3に示す更新後の散気システムでは、既設のブロア7a,7eを予備とし、既設のブロア7b〜7dを運転し、2槽の曝気槽1I,1J内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2には既設のブロア7cを新設されたインバータ41aにより、圧力計(ΔP)16からの検出信号に基づき設定圧力値との差分から圧力調節計(PIC)17で演算され出力されるインバータ周波数出力信号にて、インバータ41aの周波数を設定してブロア7cを制御運転して生成された圧縮空気を更新用のヘッダ43から空気配管30を経由して供給し、8槽の曝気槽1A〜1H内の低圧系(低風量系)の各散気装置群20には、既設のブロア7bを商用定格運転し、既設のブロア7dを新設されたインバータ41bにより手動設定運転して既設のヘッダ6から空気配管5を経由して圧縮空気を供給することができる。
【0051】
図4は、10槽の曝気槽1A〜1J内の高圧系(高風量系)の全ての散気装置群2を低圧系(低風量系)の散気装置群20に置き換えた状態を示す。
なお、曝気槽1I,1J内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2を低圧系(低風量系)の各散気装置群20に置き換える手順は、
図1に示す2槽の曝気槽1A,1B内の高圧系(高風量系)の各散気装置群2を低圧系(低風量系)の各散気装置群20に置き換える作業と同じである。
本実施形態では、低圧系(低風量系)の各散気装置群20の各配管22の枝管22aと接続するバルブ14を開いて、既設の空気配管5と更新用の空気配管30とで圧縮空気を供給する。
従って、既設のバルブ14は、運転に際して開にされる。
【0052】
圧縮空気供給装置40では、ブロア7cに接続する配管8cのバルブ8h及び分岐配管42cのバルブ42hを開いて、ブロア7cで生成される圧縮空気を既設のヘッダ6とヘッダ更新用のヘッダ43とへ供給する。また、ブロア7dに接続する配管8cのバルブ8i及び分岐配管42dのバルブ42iを開いて、ブロア7dで生成される圧縮空気を既設のヘッダ6と更新用のヘッダ43とへ供給する。なお、ブロア7a,7b,7eは予備として停止される。
10槽の曝気槽1A〜1J内の低圧系(低風量系)の各散気装置群20には、インバータ41a,41bによって制御されるブロア7c,7dで生成された圧縮空気を既設のヘッダ6から既設の空気配管5及び更新用のヘッダ43から更新用の空気配管30を介して供給する。
【0053】
この時点で、ブロア7c,7dの吐出圧力とブロア7c,7dの風量との関係は、
図5(E)の低風量系に示すように、ブロア7a,7b,7eが停止し、ブロア7c,7dをインバータ制御による絞り運転させるため、ブロア7cの風量−静圧(圧力)に、さらにブロア7dを加えた2台での並列複合風量−静圧(圧力)として風量と圧力とを積み上げて、10槽分の風量である運転点に所定の圧力で供給できる。これは、並列ブロア2台とも圧力による絞り運転するのに、電力を省けるインバータ制御で行うので最適な省エネルギー制御である。ブロア7c,7dとも5槽分の低圧系(低風量系)の各散気装置群20の合計風量の能力を有するためインバータ周波数は商用に近くなるが、それでも圧力制御するため、散気装置群の初期圧力損失が低い場合は極限の最適省エネルギー制御が行える。
図5(E)に、抵抗曲線とブロア2台の複合吐出圧力が重なる点に運転点としての10槽分の流量が合致するように示すことができる。
【0054】
なお、
図5(E)の標準系に示すように、高圧系(高風量系)の各散気装置群2は全て撤去してしまっており、この系統は存在しないので、該当する運転が存在しない。
斯くして、
図4に示す全更新後の散気システムでは、既設のブロア7a,7b,7eを予備とできて、例えば2機は撤去可能となり、既設のブロア7c,7dにインバータ41a,41bを新設して制御運転することで、更新前のブロア4台の商用定格運転から、全更新後ブロア2台の絞り可能性のあるインバータ制御運転となり、消費電力は1/2以下としながら、10槽の曝気槽1A〜1J内の低圧系(低風量系)の各散気装置群20に、ブロア7c,7dで生成された圧縮空気を既設のヘッダ6と更新用のヘッダ43とから供給することができる。
【0055】
本実施形態では、既設の空気配管5と更新用の空気配管30とをともに利用することで1つの低圧系(低風量系)の散気装置群20に2系統で空気を供給することになり、配管系の圧損低減によるブロアの省エネルギーを可能とする。
ただし、流量調整が再度必要であるから、既設のバルブ14の流量調整は手動で行う。
なお、上記実施形態では、10層の曝気槽1A〜1Jの高圧系(高風量系)の各散気装置群2を低圧系(低風量系)の各散気装置群20へ順次置き換える場合について説明したが、本発明ではこれに限らず、曝気槽の数は任意である。
また、圧縮空気供給装置40を5つのブロア7a〜7eとインバータ41a,41bとで構成する場合について説明したが、本発明ではこれに限らず、ブロア及びインバータの数は任意である。
【符号の説明】
【0056】
1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1I,1J 曝気槽
2 高圧系(高風量系)の散気装置群
3 高圧系(高風量系)の散気装置
4 枝配管
5 送気管である空気配管
6 既設のヘッダ
7a,7b,7c,7d,7e ブロア
8a,8b,8c,8d,8e 元配管
13 枝配管である接続管
14,32,8f,8g,8i,8j,42f,42g,42h,42i,42j バルブ
15 吸気配管
15a,15b,15c,15d,15e,22 配管
16 圧力計(ΔP)
17 圧力調節計(PIC)
20 低圧系(低風量系)の散気装置群
21 パネル型のメンブレン式散気装置(散気パネル)
22a 枝管
30 追加送気管である空気配管
31 新設枝管である接続管
40 圧縮空気供給装置
41a,41b インバータ
42a,42b,42c,42d,42e 分岐配管
43 更新用のヘッダ