(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076739
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】誘電体バリア式のプラズマ処理のための電極装置、および表面のプラズマ処理のための方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/04 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
A61N1/04
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-545088(P2012-545088)
(86)(22)【出願日】2010年12月22日
(65)【公表番号】特表2013-515516(P2013-515516A)
(43)【公表日】2013年5月9日
(86)【国際出願番号】DE2010001513
(87)【国際公開番号】WO2011076193
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年12月9日
【審判番号】不服2015-7859(P2015-7859/J1)
【審判請求日】2015年4月27日
(31)【優先権主張番号】102009060627.0
(32)【優先日】2009年12月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512158435
【氏名又は名称】シノギー・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CINOGY GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】バントケ、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ゼグル、マクシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】トルトビヒ、レオンハルト
【合議体】
【審判長】
高木 彰
【審判官】
長屋 陽二郎
【審判官】
熊倉 強
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−539007(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0183167(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00
A61N 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性のボディの、対向電極として使用される不規則的に3次元に成形された表面を、誘電体バリア式にプラズマ処理するための電極装置であって、平らな電極(1)と、冷温プラズマを形成するために、処置される表面から所定の間隔をあけて設けるように、デザインされている誘電体(2,3)と、を有する電極装置において、
前記誘電体(2,3)は、可撓性のある平らな材料によって形成されており、該材料は、前記誘電体(2,3)が前記処置される表面上に載っているときに、空気流領域(7)を形成するために、前記処置される表面を示す側に構造体(4)を備えていること、および、前記平らな電極(1)は、可撓性をもって形成されており、前記誘電体(2,3)が前記電極(1)を前記処置される表面から保護するように、前記誘電体(2,3)に取り付けられていることを特徴とする電極装置。
【請求項2】
前記平らな電極(1)は、前記誘電体(2,3)に埋め込まれており、該誘電体(2,3)から導き出された接続手段と接触可能であることを特徴とする請求項1に記載の電極装置。
【請求項3】
前記平らな電極は、全側面で前記誘電体(2,3)に埋め込まれていることを特徴とする請求項2に記載の電極装置。
【請求項4】
前記誘電体(2,3)は、生物の皮膚に接触するために形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電極装置。
【請求項5】
前記電極(1)は、金属製の可撓性のあるワイヤ格子によって形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電極装置。
【請求項6】
前記電極(1)は、炭素繊維または炭素繊維織物から形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電極装置。
【請求項7】
前記誘電体(2,3)の前記構造体(4)は、前記電極(1)を前記処置される表面から保護する、前記誘電体(2,3)に一体的に形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電極装置。
【請求項8】
前記構造体(4)は、別個に形成された層として、前記電極(1)を前記処置される表面から保護する前記誘電体(2,3)に、接続されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電極装置。
【請求項9】
前記構造体(4)は、通気隙間(6)を形成する出っ張った突出部(5)からなることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の電極装置。
【請求項10】
前記突出部(5)は、円形に、円錐形にまたは円錐台状に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の電極装置。
【請求項11】
前記平らな電極装置に設けられた、前記誘電体(2,3)の、前記表面に向かって形成された前記構造体を、動物(人間を除く)の前記表面に当て、かつ、前記電極装置を、前記表面の輪郭に適合させることを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の電極装置によって表面をプラズマ処理するための方法。
【請求項12】
前記電極装置を、不規則に3次元に成形された表面に当てることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性のボディの、対向電極として使用される不規則的に3次元に成形された表面を、誘電体バリア式にプラズマ処理するための電極装置であって、平らな電極と、冷温プラズマを形成するために、処置される表面から所定の間隔をあけて設けるようにデザインされている誘電体とを有する電極装置に関する。
【0002】
本発明は、更に、かような電極装置によって表面をプラズマ処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
誘電体バリア式のプラズマ放電は、多数の適用例のために使用される。特許文献1によって、3次元のワークピースの表面を処置する、例えば、活性化または洗浄することは公知である。いわゆるバリア放電によって、油層を最小限の油膜まで減少することが可能である。この場合、しかしながら、表面の均等な処置が生じること重要である。このためには、プラズマの均等な形成が必要である。プラズマ放電が、互いに間隔をあけた薄いフィラメントにおいて生じる、という考えが生じる。不規則的に3次元に成形された表面の場合、このことは問題である。従って、特許文献1では、ワークピースの表面から誘電体によってメス型を形成し、該誘電体
は、従って、成形可能な、例えば圧縮可能な、または深絞り可能なプラスチックからなることが意図されている。この場合、更に、中間層が使用され、その結果、誘電体が、中間層によって、ワークピースの表面に直に接触成形されることができることも意図されている。中間層は、次に、除去される。その目的は、プラズマが形成されることができる、誘電体と電極との間の中間空間を保証するためである。誘電体は、処置される表面から離隔した側に、導電性材料で被覆され、該導電性材料には、交流電圧の形態の必要な高電圧が供給可能である。
【0004】
特許文献2によって、中空繊維を誘電材料から形成することが公知である。該中空繊維には、自らの内部で、金属製の導電性コーティングが備えられる。それ故に、中空繊維は、内部保護された電極を有する誘電体を形成し、該誘電体は、導電性のボディの、対向電極として用いられる表面と共に、プラズマ場を形成することができる。この場合、不規則な表面に、特に人体の皮膚面に2次元的に宛がうことができる織物を、中空繊維によって形成することも意図されている。このことによって、皮膚表面の不規則的な位相に適合可能でありかつプラズマ処理を実行するための電極装置の利点が生じる。しかしながら、このことの欠点は、織物である中空繊維の形成のための製造コストが高いことである。該中空繊維は、自らの中空空間に、可撓性のある電極を有することが意図される。その目的は、電極織物の、皮膚表面への適合のために必要な可撓性を保証するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE 195 32 105 C2
【特許文献2】DE 10 2007 030 915 A1
【発明の概要】
【0006】
従って、不規則的に3次元に成形されたボディの表面の、特に、生物の皮膚表面の、安全な、誘電体バリア式のプラズマ処理が可能であり、かつ、従来の技術より容易におよび安価に製造されることができてなる電極装置を提供するという課題が、本発明の基礎になっている。
【0007】
この課題は、本発明によれば、明細書の最初の部分に記載のタイプの電極装置を用いて、誘電体は、可撓性のある平らな材料によって形成されており、該材料は、誘電体が処置される表面上に載っているときに、空気流領域を形成するために、処置される表面を示す側に構造体を備えていること、および、平らな電極は、可撓性をもって形成されており、誘電体の層が電極を処置される表面から保護するように、誘電体に取り付けられていることによって、解決される。
【0008】
従って、本発明に係わる電極装置のための出発材料として、平らで凹凸のない誘電体が用いられることは好ましい。該誘電体は、処置される表面から離隔した裏面に、平らで凹凸のない電極を有するので、可撓性のあるプレートが形成される。該プレートは、該表面が3次元で成形されており、かつ、特に、不規則的な3次元のトポグラフィを有していても、可撓性の故に、表面の輪郭に適合可能である。本発明にとって、誘電体が連続的な層を形成し、該層によって、電極が、処置される表面から保護されることが重要である。更に、誘電体は、処置される表面に向けて、構造体を形成している。該構造体には、空気が導かれ、かつ交換されてなる領域がある。その目的は、該領域に、表面を、特
に動物の体の皮膚表面を処置するために用いられる冷温プラズマを発生させるためである。この場合、皮膚表面の処置は、治療的な処置であってもよい。しかしながら、表面の美容的な処置は好ましい。該処置によって、皮膚は、美容的な作用物質をよい良く吸収することができる。このことによって、美容的な処置、例えば、シワ伸ばし、毛穴縮小等が効率的に可能である。他の有効な処置を、インソールとして電極装置を形成することによって達成することができる。この場合、足の皮膚への殺菌性のおよび殺真菌性の作用が生じる。誘電体は、直接にまたはストッキングを介して、足の皮膚、特に足底に接触していてもよい。
【0009】
平らな電極が誘電体に埋め込まれていることは好ましい。このことは、誘電体の層の裏面でなされることができる。層の裏面は、電極を、処置される表面から保護する。しかし、平らな電極を完全に誘電体に埋め込むことも可能である。いずれにしても、平らな電極は、誘電体から導き出された接続手段と接触可能であり得る。
【0010】
電極が可撓性のあるワイヤ格子によって形成されていることは好ましい。何故ならば、該ワイヤ格子は、可撓性のある電極のために、容易にかつ安価に製造されるからである。
【0011】
誘電体の構造体は、好ましい実施の形態では、誘電体の、電極を処置される表面から保護する層と一体的に形成されている。この場合、構造体は、誘電体が直接に表面、例えば皮膚に当てられるとき、プラズマを形成するために空気があることができてなる領域の深さを定める。誘電体が適切なプラスチック、例えば熱可塑性ポリエチレンから形成されているとき、望ましい構造体は、平らな誘電体の注型の際に、埋め込まれることができる。
【0012】
しかし、構造体を、別個に形成された層として、誘電体の層に接続することも可能である。この場合には、構造体は、細い繊維で形成されていてもよく、例えば織物であってもよい。このことによって、空気流領域は、必要な場合には、拡大され、かつ、プラズマの均等な形成が達成される。
【0013】
出っ張っている突出部からなる構造体の、製造技術的により簡単な実施の形態では、プラズマが形成されることができてなる空気
通気性の中間空間がもたらされる。この場合、突出部が、円形に、円錐形にまたは円錐台状に形成されていることは好ましい。更に、突出部が、0.5と10mmの、好ましくは1と8mmの間の、更に2と3mmの間の高さを有することは好ましい。
【0014】
以下、図に示した実施の形態を参照して、本発明を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係わる電極装置の部分の分解図を示す。
【
図2】
図1に図示のように組み立てられた電極装置の正面側の平面図を示す。
【
図4】3次元に成形された表面に適合された電極装置の斜視図を示す。
【
図5】
図4の線V-Vに沿った、電極装置の縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係わる電極装置が、出発状態では平らなかつ可撓性の金属製の電極格子として形成されている電極1を有することを示す。電極は、誘電材料の前層2と、誘電材料の後層3との間に設けられている。2つの誘電体層2,3は、出発状態では平らで凹凸のなしに形成されており、かつ、電極1を、すべての4つの側縁部で電極1から食み出ている。それ故に、電極1は、すべての側面で、2つの層2,3によって形成された誘電体へ埋め込まれている。この目的のために、層2,3は、互いに接続されており、好ましくは平坦である。接続は、例えば、貼着または接着によってなされることができる。当然ながら、外部接続手段によって、着脱自在な接続を実現することができるが、より高いコストで行なうことになる。誘電体へ埋め込まれた電極1は、誘電体から突出している(図示しない)接続部と接触可能である。
【0017】
誘電体の前層2は、電極1と反対側に、構造化された表面4を備える。図示した実施の形態では、構造化された表面は、複数の出っ張った突出部5によって形成される。該突出部は、互いに間隔6を有する。それ故に、構造化された表面4は、多数の互いに接続された空気流領域7を有する。これらの空気流領域で空気が流れることができるのは、電極装置の前層2の突出部5が、処置される表面、例えば生物の皮膚に接触しているときである。
【0018】
図2は、電極1が、平面図で、層2,3の側縁部から間隔をあけて終わっており、層2,3が、好ましくは、同一の大きさに形成されていることを示す。
【0019】
図3の縦断面図は、層2と3の間の電極10の埋め込み状態、および前層2の構造化された表面4の突出部5を示す。前層は、電極1を、処置される表面から保護する。
【0020】
図4は、
図1に示した電極装置の斜視図を示す。誘
電体の2つの層2,3は、最早、互いに分離されていない。何故ならば、該層は、例えば、平面接着工程によって互いに接続されているからである。かくして形成された誘電体2,3は、可撓性がある。何故ならば、一方では、層2,3が、他方では、該層に埋め込まれた電極1が可撓性があるからである。従って、電極装置は、
図4に略示されているように、3次元に形成された表面の形状に適合することができる。ここでは、処置される表面は、図示されていない。上から見た凸面状の中央の湾曲部が、対角線上に向かい合っている端部で、凹面状の湾曲部に移行することが認められる。従って、処置されるべき表面の不規則的な湾曲部への、電極装置の適合性が示される。
【0021】
図4の線V-Vに沿って示された、
図5の縦断面図は、中央の凸面状の湾曲部を示
す。
【0022】
本発明に係わる電極装置が極めて容易に製造されることができ、かつ、不規則的に湾曲される表面の、特に皮膚の表面の、平面処置(flaeche Behandlung)が容易に可能にされることは、容易に読み取れる。
【0023】
図4および5は、2つの誘
電性の層2,3が融合して、単一の構成要素が形成され、該構成要素には、電極1が閉じ込められていることを示す。
【0024】
構造化された表面4を、電極1を保護する層2に接続される別個の平坦な要素として形成することも容易に可能である。例えば、構造化された表面は、かようにして、平坦な、可撓性のある繊維織物またはプラスチック織物によって形成されていてもよい。該織物は、保護層2としては適切ではないが、空気流領域を形成するための構造化された表面としては、適切である。空気流領域では、印加された高い交流電圧によって、処置のために適切なプラズマが形成されるのである。
【0025】
同様に、電極1を誘
電層2の裏面にのみに取り付けることは、幾つかの適用例として考えられる。しかし、一般的には、例えば操作要員への、保護層2の裏面への望ましくない電圧閃絡(Spannungsueberschlaege)を回避するために、電極1を絶縁層によって保護することは、有用であろう。従って、誘電体2,3への電極1の埋め込みは、好ましい実施の形態である。
【0026】
図示した実施の形態は、出発状態では平らで凹凸のない層2,3および平らで凹凸のない電極1を出発点とする。例えば特に凸面状に湾曲された表面のために意図される適用例のためには、凸面状の湾曲で予備成形された平らな層2,3および相応に予備成形された平らな電極1を用いることは有用である。同様なことは、処置される表面への適合を容易化する他の変形に当てはまる。電極装置の可撓性が、いずれにせよ、保たれたままであり、かつ、表面への正確な適合を可能にするのである。
【符号の説明】
【0027】
1 電極
2 誘電体、層
3 誘電体
4 構造体
5 突出部
6 通気隙間
7 空気流領域