特許第6076747号(P6076747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076747
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   H02M3/28 F
   H02M3/28 T
   H02M3/28 Q
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-2469(P2013-2469)
(22)【出願日】2013年1月10日
(65)【公開番号】特開2014-135847(P2014-135847A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086807
【弁理士】
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100076222
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−204170(JP,A)
【文献】 特開2011−211846(JP,A)
【文献】 特開2008−312285(JP,A)
【文献】 特開2012−085378(JP,A)
【文献】 特開2010−206912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00 − 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を入力し、出力側に蓄電池が接続される直列共振コンバータと、
前記蓄電池の端子間電圧値を検出し、この検出結果から前記蓄電池に対する予備充電が必要か否かを判定し、この判定結果が予備充電必要な場合には主回路切り離し信号を出力する予備充電判定回路と、
前記予備充電判定回路からの前記主回路切り離し信号が入力されると、前記直列共振コンバータの主回路の出力を切り離す切り離し回路と、
を備えるスイッチング電源装置であって、
前記直列共振コンバータは、
第1巻線数の1次巻線及び第2巻線数の2次巻線を持った変圧器を有する前記主回路と、
前記1次巻線と電磁的に結合されて前記変圧器の2次側に設けられた第3巻線数の補助巻線を有し、前記主回路の出力側に並列接続された巻線回路と、
を備え、
前記切り離し回路がオン状態のときは、前記主回路の出力側から通常充電時の充電電流が前記蓄電池へ供給され、前記切り離し回路がオフ状態のときは、前記巻線回路の出力側から予備充電時の充電電流が前記蓄電池へ供給されるようにしたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記予備充電判定回路は、
前記端子間電圧値を計測して端子間電圧値信号を出力する電圧計と、
前記端子間電圧値信号と予備充電判定電圧値とを比較して、前記端子間電圧値信号が前記予備充電判定電圧値未満の場合に、前記主回路切り離し信号を出力する予備充電判定部と、
を有することを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記補助巻線の前記第3巻線数は、
前記2次巻線の前記第2巻線数より少ないことを特徴とする請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記切り離し回路は、
前記予備充電判定回路から入力される前記主回路切り離し信号の有無に従ってオン/オフ制御される回路であって、オン状態における抵抗値がオフ状態における抵抗値より小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のスイッチング電源装置は、更に、
交流電力を入力し、前記交流電力における電流と電圧の位相が一致するようにスイッチング制御して力率を改善し、所定の直流電圧を出力して前記直列共振コンバータに前記直流電圧を与える力率改善回路
を備えることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記予備充電判定回路は、更に、
前記蓄電池の種類を検出する種類検出部と、
前記蓄電池の種類に対応した充電制御情報が格納された充電テーブルと、
を有し、
前記種類検出部により検出された前記蓄電池の種類に応じた前記充電制御情報を前記充電テーブルから読み出し、前記充電テーブルにより、前記予備充電判定電圧値と、予備充電時における充電電流である予備充電電流値と、通常充電時における充電電流である通常充電電流値と、を変更することを特徴とする請求項記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備充電が必要な蓄電池を充電し得るスイッチング電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、下記特許文献1には、電子機器の小型化、高性能化に有効なスイッチング電源装置が記載されている。又、下記特許文献2には、2次電池を高い効率で充電できる共振形充電装置が記載されている。この共振形充電装置では、定電流特性を満足させるために、直列共振コンバータ(以下「LLC」という。)を用いて定電流回路が構成されている。
【0003】
一方、リチウムイオン電池のように、セル電圧が低い蓄電池を充電する場合、一般に、蓄電池の劣化を回避するために、低電圧かつ低電流で充電を行う予備充電が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−97303号公報
【特許文献2】特開2012−85378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のスイッチング電源装置では、LLCを用いて定電流回路を構成した場合、定電流特性を満足させる条件は、外部のLC共振定数により決定され、通常充電を満足するLC共振定数に設定した場合、予備充電のための低電圧かつ低電流での定電流特性を実現できない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスイッチング電源装置は、直流(以下「DC」という。)電力を入力し、出力側に蓄電池が接続されるLLCと、前記蓄電池の端子間電圧値を検出し、この検出結果から前記蓄電池に対する予備充電が必要か否かを判定し、この判定結果が予備充電必要な場合には主回路切り離し信号を出力する予備充電判定回路と、前記予備充電判定回路からの前記主回路切り離し信号が入力されると、前記LLCの主回路の出力側を切り離す切り離し回路と、を備えるスイッチング電源装置であって、前記LLCは、第1巻線数の1次巻線及び第2巻線数の2次巻線を持った変圧器を有する前記主回路と、前記1次巻線と電磁的に結合されて前記変圧器の2次側に設けられた第3巻線数の補助巻線を有し、前記主回路の出力側に並列接続された巻線回路と、を備えている。そして、前記切り離し回路がオン状態のときは、前記主回路の出力側から通常充電時の充電電流が前記蓄電池へ供給され、前記切り離し回路がオフ状態のときは、前記巻線回路の出力側から予備充電時の充電電流が前記蓄電池へ供給されるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスイッチング電源装置によれば、出力側に蓄電池が接続されるLLCと、予備充電判定回路と、切り離し回路と、を備え、予備充電判定回路が、蓄電池に対する予備充電が必要であると判定した場合に、切り離し回路がLLCの主回路の出力を切り離すようにしている。これにより、蓄電池に対する予備充電が必要な場合には、LLCにおけるLC共振定数が通常充電を満足するLC共振定数に設定されていても、巻線回路により低電圧かつ低電流の予備充電を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本発明の実施例1におけるスイッチング電源装置20の構成の概略を示すブロック図である。
図2図2図1中の予備充電判定回路60の例を示す回路図である。
図3図3は比較例のスイッチング電源装置20Aの構成の概略を示すブロック図である。
図4図4図3中のLLC40Aのスイッチング周波数fswに対する出力電圧Voの関係を示す特性図である。
図5図5(a),(b)は図3中の予備充電回路80の例を示す回路図である。
図6図6図1中のスイッチング電源装置20の充電電圧Vbatt及び充電電流Ibattの時間的推移を示す図である。
図7図7は本発明の実施例1の充電制御処理を示すフローチャートである。
図8図8は本発明の実施例2におけるスイッチング電源装置20Bの構成の概略を示すブロック図である。
図9図9は本発明の実施例3におけるスイッチング電源装置20Cの構成の概略を示すブロック図である。
図10図10図9中の電圧検出回路60Aの例を示すブロック図である。
図11図11図10中の充電テーブル65の例を示す図である。
図12図12は本発明の実施例3の充電制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0010】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1におけるスイッチング電源装置20の構成の概略を示すブロック図である。
【0011】
スイッチング電源装置20は、LLC40、予備充電判定回路60、及び切り離し回路70と、を備えている。
【0012】
LLC40は、入力されるDC電圧Vin、及びDC電流Iinをスイッチングし、スイッチングされたDC電圧Vin及びDC電流Iinを直列共振により電圧変換させた後、整流して第2のDC電圧Vo及び第2のDC電流Ioを出力する回路である。このLLC40は、2つのスイッチ42a,42b、直列共振用のコンデンサ43、インダクタ44、第1巻線数としての巻線数n1の1次巻線45aと第2巻線数としての巻線数n2の2次巻線45bとを有する変換変圧器(以下「変換トランス」という。)45、整流用ダイオード46、平滑用コンデンサ47及び出力電流を計測する電流検出回路48と、その2つのスイッチ42a,42bをオンオフ制御するLLC制御回路41等とから構成されている。LLC40の第1及び第2の出力端子OUT1,OUT2には、蓄電池21が接続されるようになっている。LLC40の出力端子OUT1,OUT2に蓄電池21が接続された場合、電流検出回路48は、スイッチング電源20から蓄電池21へ供給される充電電流を計測する。
【0013】
第1及び第2の出力端子OUT1,OUT2には、更に、巻線回路50が並列接続されている。この巻線回路50は、予備充電時に第1の出力端子OUT1と第2の出力端子OUT2との端子間に、低電圧かつ低電流を出力する回路であり、LLC40中の変換トランス45の1次巻線と電磁的に結合された第3巻線数(n3)の補助巻線としての予備巻線を有するインダクタ51と、整流用ダイオード52と、平滑用コンデンサ53と、より構成されている。
【0014】
変換トランス45の2次巻線45b及び補助巻線51の電圧をそれぞれVb及びVcとすると、
Vb/n2=Vc/n3 ・・・(1)
Vc=(n3/n2)・Vb ・・・(2)
となる。ここで、例えば、n3/n2=1/3とすれば、変換トランス45の2次巻線45bの電圧Vbの1/3の電圧Vcを巻線回路50の出力端子から取り出すことができる。
【0015】
予備充電判定回路60は、蓄電池21の端子間電圧値Vbattを検出し、この検出結果から蓄電池21に対する予備充電が必要か否かを判定し、この判定結果が予備充電必要な場合には主回路切り離し信号S60を出力する回路である。更に、切り離し回路70は、予備充電判定回路60からの主回路切り離し信号S60が入力されると、LLC40の主回路の出力を切り離す回路である。
【0016】
図2は、図1中の予備充電判定回路60の例を示す回路図である。
予備充電判定回路60は、蓄電池21の端子間電圧値Vbattを計測し、端子間電圧値信号S61を出力する電圧計61と、端子間電圧値信号S61と予備充電判定電圧V1とを比較して、予備充電が必要な場合に主回路切り離し信号S60を出力する予備充電判定部62と、から構成されている。予備充電判定部62は、例えば、比較器であるコンパレータ62aと、予備充電判定電圧V1を生成してコンパレータ62aの一方の入力端子に供給するDC電源62bと、コンパレータ62aの出力端子をDC電圧Vccでプルアップする抵抗62cとにより構成されている。
【0017】
(実施例1の動作)
本実施例1のスイッチング電源装置20動作を、(I)従来の比較例の動作と、(II)実施例1の動作と、(III)実施例1における充電制御の処理と、に分けて説明する。
【0018】
(I) 比較例の動作
図3は、比較例のスイッチング電源装置20Aの構成の概略を示すブロック図であり、実施例1を示す図1と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0019】
比較例のスイッチング電源装置20Aは、出力側に巻線回路50が接続されていない以外は実施例1と同様のLLC40Aに、予備充電回路80が追加された構成である。
【0020】
図4は、図3中のLLC40Aのスイッチング周波数fswに対する出力電圧Voの関係を示す特性図である。
【0021】
図3に示されたLLC40Aのスイッチング周波数fswに対する予備充電回路80の前の電圧Voの特性が図4中の曲線Qに示されている。曲線Qを見ると、スイッチング周波数fswを高くしていっても、出力電圧Voを予備充電判定電圧V1まで電圧を下げることができない。
【0022】
予備充電回路80は、出力電圧Voを予備充電判定電圧V1まで下げるための回路である。
図5(a),(b)は、図3中の予備充電回路80の例を示す回路図である。
【0023】
図5(a)には、ドロッパタイプの予備充電回路80が示されている。このドロッパタイプの予備充電回路80により、図3中のLLC40Aの出力電圧Voを予備充電判定電圧V1まで下げると、熱損失が大きくなり、スイッチング電源装置20Aの効率が低下する。
【0024】
図5(b)には、降圧コンバータタイプの予備充電回路80が示されている。この降圧コンバータタイプの予備充電回路80により、図3中のLLC40Aの出力電圧Voを予備充電判定電圧V1まで下げると、ドロッパタイプの予備充電回路80よりも損失は小さく、スイッチング電源装置20Aの効率の低下は少ないが、部品点数が増加する。
【0025】
そこで、本実施例1では、図1及び図2に示されたようなスイッチング電源装置20の構成を採用して、予備充電回路80を追加することなく、出力電圧Voを予備充電判定電圧V1まで下げるようにしている。
【0026】
(II) 実施例1の動作
図1及び図2に基づいて、実施例1のスイッチング電源装置20の動作を説明する。
通常充電時には、図2において、電圧計61から予備充電判定部62へ与えられる端子間電圧信号S61は、予備充電判定電圧V1以上であるため、予備充電判定部62内のコンパレータ62aの出力である主回路切り離し信号S60は、ハイレベル(以下「Hレベル」という。)であり、切り離し回路70はオン状態となる。
【0027】
図1において、切り離し回路70がオン状態のとき、変換トランス45、整流用ダイオード46、及び平滑用コンデンサ47等から構成されるLLC40の主回路から、通常充電時の充電電流Ibattが蓄電池21へ供給される。
【0028】
一方、予備充電時には、図2において、電圧計61から予備充電判定部62へ与えられる端子間電圧信号S61は、予備充電判定電圧V1未満であるため、予備充電判定部62内のコンパレータ62aの出力である主回路切り離し信号S60は、ローレベル(以下「Lレベル」という。)であり、切り離し回路70はオフ状態となる。
【0029】
図1において、切り離し回路70がオフ状態のとき、LLC40の主回路は蓄電池21から切り離され、巻線数n3の予備巻線であるインダクタ51、整流用ダイオード52、及び平滑用コンデンサ53等より構成されている巻線回路50から、予備充電時の充電電流Ibattが蓄電池21へ供給される。
【0030】
巻線数n3の補助巻線51の巻線回路50から蓄電池21へ供給される電圧Vcは、LLC40内の変換トランス45の1次巻線45a及び2次巻線45bの巻線数をそれぞれn1,n2とし、通常充電時の充電電圧をVbとすると、前記(2)式により、
Vc=(n3/n2)・Vb
となる。
【0031】
従って、巻線回路50内の補助巻線51の巻線数n3を、
n3=(Vc/Vb)・n2 ・・・(3)
即ち、変換トランス45の2次巻線の巻線数n2に、(予備充電電圧/通常充電電圧)を乗じた巻線数としておけば、予備充電時に、巻線回路50から蓄電池21へ予備充電電圧Vcを供給することができる。
【0032】
(III) 実施例1における充電制御の処理
図6(a),(b)は、図1中のスイッチング電源装置20の充電電圧Vbatt及び充電電流Ibattの時間的推移を示す図であり、図6(a)は、蓄電池21の充電時間に対する端子間電圧値Vbattの時間的推移を示す図であり、図6(b)は、蓄電池21の充電時間に対する充電電流値Ibattの時間的推移を示す図である。
【0033】
蓄電池21の端子間電圧値Vbattが予備充電判定電圧V1未満の予備充電期間Tyにおいては、充電電流値Ibattは予備充電電流Iyを示している。予備充電期間TyにおけるV0〜V1は、予備充電電圧である。
【0034】
予備充電が継続し、蓄電池21の端子間電圧値Vbattが予備充電判定電圧V1以上になると、充電電流値Ibattが予備充電電流Iyから通常充電電流Isに変化して、通常充電期間Tsへ移行する。
【0035】
通常充電期間Tsにおいて、蓄電池21の端子間電圧値Vbattは、予備充電判定電圧V1からV2へ上昇して行く。蓄電池21の端子間電圧値VbattがV2に達すると、充電電流値Ibattは、除々に減少して行く。
【0036】
図7は、本発明の実施例1の充電制御処理を示すフローチャートである。
図1図2、及び図6を参照しつつ、図7に示されたフローチャートに基づいて、本実施例1のスイッチング電源装置20における充電制御処理について説明する。
【0037】
図1図2において、LLC40の出力端子OUT1,OUT2に蓄電池21が接続されると、予備充電制御回路60における充電制御の処理が開始され、ステップST1へ進む。ステップST1において、電圧計61は、蓄電池21の端子間電圧Vbattを計測して、端子間電圧値信号S61を予備充電制御回路60内の予備充電判定部62へ与え、ステップST2へ進む。
【0038】
ステップST2において、図2中の予備充電判定部62内のコンパレータ62aは、端子間電圧値信号S61が予備充電判定電圧V1未満か否かを判定し、端子間電圧値信号S61が予備充電判定電圧V1未満であれば(Y)、ステップST3へ進み、端子間電圧値信号S61が予備充電判定電圧V1以上であれば(N)、ステップST7へ進む。
【0039】
ステップST3において、図1中の予備充電判定回路60が主回路切り離し信号S60を出力すると、切り離し回路70はオフ状態となる。その後、LLC40が起動され、LLC制御部41により、LLC40のスイッチング周波数fswが制御され、巻線回路50の出力電圧Vcとして、DC電圧V1が蓄電池21に供給される。この時、図6に示されたように、予備充電電流Iyが蓄電池21に供給され、ステップST4へ進む。
【0040】
ステップST4において、図2中の電圧計61は、蓄電池21の端子間電圧Vbattを計測して、端子間電圧値信号S61を予備充電判定回路60内の予備充電判定部62へ与え、ステップST5へ進む。ステップST5において、図2中の予備充電判定部62内のコンパレータ62aは、端子間電圧値信号S61が予備充電判定電圧V1以上か否かを判定し、端子間電圧値信号S61が予備充電判定電圧V1以上(Y)となるまで、ステップST4、ST5の処理を繰り返し、端子間電圧値信号S61が予備充電判定電圧V1以上であれば(Y)、ステップST6へ進む。
【0041】
ステップST6において、図1中の予備充電判定回路60が主回路切り離し信号S60の論理レベルがLレベルからHレベルに変化すると、切り離し回路70はオン状態となる。その後、LLC40の主回路の出力電圧Voとして、DC電圧V1〜V2が蓄電池21に供給され、図6に示されたように、通常充電電流Isが蓄電池21に供給され、充電制御の処理が終了する。
【0042】
ステップST7において、図1中の予備充電判定回路60が主回路切り離し信号S60の論理レベルがLレベルからHレベルに変化すると、切り離し回路70はオン状態とされ、その後、LLC40が起動され、LLC40の主回路の出力電圧Voとして、DC電圧V1〜V2が蓄電池21に供給され、図6に示されたように、通常充電電流Isが蓄電池21に供給され、充電制御の処理が終了する。
【0043】
図7に示されたフローチャートの充電制御処理に従った充電電圧Vbatt及び充電電流Ibattの時間的推移が、図6(a),(b)に示されている。
【0044】
(実施例1の効果)
本実施例1のスイッチング電源装置20によれば、予備充電判定回路60により、前記充電池21の端子間電圧値Vbattに基づいて予備充電が必要か否かを判定し、予備充電判定回路60が必要な場合には、主回路切り離し信号S60を出力して、LLC40の主回路を切り離すようにしている。これにより、スイッチング電源装置20は、比較例のスイッチング電源装置20Aのような予備充電回路80を追加することなく、予備充電のための低電圧かつ低電流での定電流特性を実現できる。
【実施例2】
【0045】
(実施例2の構成及び動作)
図8は、本発明の実施例2におけるスイッチング電源装置20Bの構成の概略を示すブロック図であり、実施例1を示す図1と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0046】
スイッチング電源装置20Bは、実施例1と同様のLLC40、予備充電判定回路60、及び切り離し回路70に、交流(以下「AC」という。)電源10と、入力部11及び力率改善回路(以下「PFC」という。)30が追加されている。
【0047】
入力部11は、図示しない不要輻射対策用(EMI)フィルタ、ダイオードブリッジ等により構成されて、入力されるAC電圧及びAC電流を全波整流した電圧Vin及びIiを図1と同様のスイッチング源装置20へ入力するものである。
【0048】
PFC30は、AC電力を入力し、AC電力における電流と電圧の位相が一致するように、AC電力における電流及び電圧をスイッチング制御して力率を改善し、所定の第1のDC電圧Vpfc、及び第1のDC電流IpfcをLLC40へ出力する回路である。
【0049】
PFC30は、インダクタ32、スイッチ33、整流用ダイオード34、及び平滑用コンデンサ35と、そのスイッチ33をオンオフ制御するPFC制御回路31等とから構成されている。
【0050】
PFC制御回路31は、図示しない誤差増幅器、及び誤差増幅器の一方の入力端子に入力する基準電圧源を有し、第1のDC電圧Vpfcを一定の比率で分圧した電圧を図示しない誤差増幅器の他方の入力端子に入力して、図示しない誤差増幅器の入力端子間の電圧差が零に近づくように、スイッチ33をオンオフ制御する回路である。実施例2のその他の構成及び動作は、実施例1と同様である。
【0051】
(実施例2の効果)
本実施例2のスイッチング電源装置20Bによれば、実施例1のスイッチング電源装置20の入力側に、PFC30を備え、PFC30が供給されるAC電力を効率良くDC電圧Vpfc及びDC電流Ipfcに変換して、LLC40へ入力している。これにより、商用電源の入力から、低電圧かつ低電流の予備充電を効率良く行うことができる。
【実施例3】
【0052】
(実施例3の構成)
図9は、本発明の実施例3におけるスイッチング電源装置20Cの構成の概略を示すブロック図であり、実施例2を示す図8と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0053】
本発明の実施例3のスイッチング電源装置20Bは、実施例2と同様のPFC30、LLC40、及び切り離し回路70と、実施例2の予備充電判定回路60とは構成及び機能が異なる予備充電判定回路60Aと、により構成されている。
【0054】
図10は、図9中の予備充電判定回路60Aの例を示すブロック図である。
予備充電制御回路60Aは、実施例1と同様の電圧計61に、実施例1とは機能が異なる予備充電判定部62Aと、新たに追加された種類検出部64及び充電制御情報が格納された充電テーブル65と、により構成されている。
【0055】
種類検出部64は、蓄電池21から与えられる蓄電池信号S21に基づいて、蓄電池21の種類及び予備充電が必要種類か否かを判定する。更に、種類検出部64は、充電テーブル65を参照して、蓄電池21の種類に応じた充電制御情報を取得して、予備充電が必要な種類か否かの情報及び充電制御情報からなる種類検出信号S64を予備充電判定部62Aへ与えるものである。予備充電判定部62Aは、種類検出部64から与えられた種類検出信号S64により、予備充電が必要な種類の場合に、端子間電圧信号S61から予備充電が必要か否かを判定するものである。
【0056】
例えば、蓄電池21の種類やセル数に応じて電池パックの形状を変え、電池パックの形状に応じて蓄電池21の種類やセル数の情報を表す方法や、蓄電池21に正極と負極以外に識別端子を設け、負極と識別端子と間に蓄電池21の種類やセル数に応じて異なる抵抗値を接続する方法等の公知の方法により、蓄電池21から蓄電池信号S21を得ることができる。
【0057】
図11は、図10中の充電テーブル65の例を示す図である。
図11に示された充電テーブル65の例では、蓄電池21の種類A,B,Cに対応した予備充電判定電圧V1、予備充電電流Iy、通常充電電流Isの各値が格納されている。
【0058】
図11において、種類A,B,Cは、予備充電が必要な電池であり、種類A,B,Cの予備充電判定電圧V1は、それぞれ2.0V、4.0V、6.0Vである。種類A,B,Cの予備充電電流Iyは、それぞれ50mA、70mA、130mAである。更に、種類A,B,Cの通常充電電流Isは、それぞれ2.0A、2.5A、3.0Aである。図11において、種類Dは、予備充電が不要な電池であり、種類Dの通常充電電流Isは、3.0Aである。
【0059】
図11において示した予備充電判定電圧V1、予備充電電流Iy、及び通常充電電流Isの値は、本実施例3の構成を説明するための仮の値である。予備充電判定電圧V1、予備充電電流Iy、及び通常充電電流Isの実際の値は、蓄電池21の種類及びセル数等により個別に設計され、又は実験により決定される。
【0060】
(実施例3の動作)
図12は、本発明の実施例2の充電制御処理を示すフローチャートである。
図9図11を参照しつつ、図12に基づいて、実施例2の充電制御の処理を説明する。
【0061】
図9において、LLC40の出力に蓄電池21が接続されると、予備充電判定回路60Aにおける充電制御の処理が開始され、ステップST21へ進む。ステップST21において、図10中の種類検出部64は、蓄電池21から入力される蓄電池信号S21に基づいて、蓄電池21の種類を検出し、ステップST22へ進む。
【0062】
ステップST22において、種類検出部64は、充電テーブル65を参照して、蓄電池21の種類に応じた充電制御情報を読み出し、ステップST23へ進む。ステップST23において、種類検出部64は、予備充電が必要な蓄電池か否かを判定し、必要な場合は(Y)、ステップST1へ進み、必要でない場合は(N)、ステップST6へ進む。図11において、電池の種類がAであれば、予備充電が必要であるので、ステップST1へ進み、電池の種類がDであれば、予備充電が不要であるので、ステップST7へ進む。
【0063】
ステップST1に進むと、ステップST1〜ST5において、実施例1と同様の処理が行われ、ステップST6へ進む。但し、図12中のステップST2及びST5において、端子間電圧信号S61と、図11に示された蓄電池の種類に応じて変更された予備充電判定電圧V1とが比較される。
【0064】
ステップST7において、切り離し回路70をオン状態にし、LLC40を起動して、予備充電判定回路60Aにおける充電制御の処理を終了する。
【0065】
(実施例3の効果)
本発明の実施例3によれば、実施例1、2の構成に加え、新たに追加された種類検出部64及び充電テーブル65により、予備充電が必要な蓄電池か否かを判定し、必要な場合のみ、切り離し回路70をオフ状態にして、予備充電を行うようにしている。これにより、蓄電池21の予備充電が不要な蓄電池である場合は、直ちに、通常充電制御電圧Vsに設定して、LLC40を起動するので充電時間を短縮することができる。
【0066】
(変形例)
本発明は、上記実施例1〜3に限定されず、種々の利用形態や変形例が可能である。この利用形態や変形例として、例えば、次の(1),(2)のようなものがある。
【0067】
(1) 実施例1〜3では、電圧計61から出力される端子間電圧値信号S61と予備充電判定電圧V1とを比較して予備充電が必要か否かを判定する予備充電判定部62として、コンパレータ62aを用いたアナログ回路例を記載したが、予備充電判定部62はアナログ回路に限定されない。例えば、同様の機能をデジタル回路で構成しても、同様の機能をソフトウェアにより実行する構成としても良い。
【0068】
(2) 実施例1では、予備充電判定部62は、端子間電圧値信号S61のみに基づいて、予備充電が必要か否かを判定する例を説明したが、電流検出回路48の電流検出結果も加味して、予備充電が必要か否かを判定するようにしても良い。電流検出結果を加味して予備充電が必要か否かを判定するようにすれば、予備充電が必要な蓄電池21の劣化をより確実に回避することができる。
【符号の説明】
【0069】
20,20A,20B スイッチング電源装置
21 蓄電池
30,30A PFC
31 PFC制御回路
31d 誤差増幅器
31e スイッチング制御部
40,40A LLC
41 LLC制御回路
48 電流検出回路
49 電圧検出回路
50 巻線回路
60,60A 予備充電判定回路
62,62A 予備充電判定部
64 種類検出部
65 充電テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12