特許第6076749号(P6076749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076749
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】小型電気化学センサー
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/404 20060101AFI20170130BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20170130BHJP
   G01N 27/28 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   G01N27/404 341U
   G01N27/416 331
   G01N27/28 301Z
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-7492(P2013-7492)
(22)【出願日】2013年1月18日
(65)【公開番号】特開2014-137342(P2014-137342A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年11月20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日2012年9月30日 ウェブサイトアドレス http://www.kth.se/ees/omskolan/organisation/anstallda/sokanstalld/publicprofile.php?KthID=u1rwnc3w
(73)【特許権者】
【識別番号】514023667
【氏名又は名称】エアロクライン アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ニクラス ロクスヘッド
(72)【発明者】
【氏名】ゲラン ステメ
(72)【発明者】
【氏名】ヒザシュ コー. ガティ
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−072116(JP,A)
【文献】 特開平04−363653(JP,A)
【文献】 特開平02−087059(JP,A)
【文献】 特開平02−216046(JP,A)
【文献】 特開2010−154785(JP,A)
【文献】 特表2003−515132(JP,A)
【文献】 特表2009−544936(JP,A)
【文献】 特表2003−515131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中の成分を検出するための電気化学センサー(1)であって、
該センサーは、
参照電極(2)、
対電極(3)、
通路に沿って伸びる壁(6、6a、6b)によって輪郭が作られる複数の通路(5)を含む構造体(4)、
構造体の壁を被覆する作用電極(7)、及び
構造体の壁に沿って作用電極の少なくとも一部分を被覆するイオノマーの層(8)を含み、
前記通路は、少なくとも2のアスペクト比を有しており、
前記イオノマーの層は、作用電極とイオン伝導性の接触をしており、
該センサーは、イオノマーの層ならびに参照電極及び対電極に接触している液体電解質(11)をさらに含む
ことを特徴とする、センサー
【請求項2】
該センサーは、第1の表面(9)及び第2の表面(10)を含み、
第1の表面がガスにさらされ、かつ、
前記通路が第1の表面から第2の表面へと伸びている
ことを特徴とする、請求項1に記載のセンサー。
【請求項3】
第2の表面が液体電解質と接触している
ことを特徴とする、請求項2に記載のセンサー。
【請求項4】
構造体は、多孔質構造であり、
前記通路が、構造体全体にわたって平行に伸びている細孔として、形成されている
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項5】
細孔が密充填配置で設けられており
密充填配置が、六角形配置、長方形配置、正方形配置、及び三角形配置のうちの少なくとも1つである
ことを特徴とする、請求項4に記載のセンサー。
【請求項6】
イオノマーが、スルホン化テトラフルオロエチレン系のフルオロポリマー−コポリマーである
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項7】
作用電極を被覆するイオノマー層の厚みが、10〜2000nm、又は100〜1000nm、又は300〜700nmの範囲である
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載
のセンサー。
【請求項8】
イオノマーがナノ構造固体材料を含む
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項9】
液体電解質の体積のための筐体を含む
ことを特徴とする、請求項8に記載のセンサー。
【請求項10】
作用電極が、白金、金、パラジウム、炭素、及びルテニウムから成る群から選択される材料を含む
ことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項11】
作用電極が、絶縁層(12)によって構造体から絶縁されており
絶縁層が、Al、SiO、HfO、及びLaOから成る群から選択される材料を含む
ことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の電気化学センサーを含む、呼気中のNOの含量を測定するためのデバイス。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の電気化学センサーを製造する方法であって、
該方法は、
通路に沿って伸びる壁によって輪郭が作られる複数の通路を含む構造体を提供するステップと、
構造体の壁を作用電極で被覆するステップと、
構造体の壁に沿って作用電極の少なくとも一部分を被覆するイオノマーの層を配置するステップと、
イオノマーの層に接触している液体電解質を設けるステップと、
液体電解質と接触している、参照電極及び対電極を設けるステップを含む
ことを特徴とする、方法。
【請求項14】
構造体が、シリコン材料の反応性イオンディープエッチング加工によって提供される
ことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
イオノマーの層が、浸漬塗工によって成膜され、そして、低圧下で乾燥される
ことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ガス中の成分を検出するための小型電気化学センサー、そのような小型電気化学センサーを含む、呼気中の一酸化窒素の含量を測定するためのデバイス、及びそのような小型電気化学センサーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオマーカーとしてのNOについて広範囲の研究が行われている。そのようなバイオマーカーの1つの利用は、ぜんそくなどの呼吸器の炎症の検出におけるものである。呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度はぜんそく患者の気道における炎症の指標として役立つ。このように呼気NO(eNO)の使用はぜんそくの診断における有望な手段と考えられる。しかし、呼気中のeNOの濃度は非常に低い。健康な成人ではNOの濃度は約10〜35ppb(10億分の1)であるが、一方子供では濃度は約5〜25ppbである。相当量の炎症がある患者では70〜100ppbを超える。
【0003】
電気化学的方法を用いたNOを検出するためのセンサーが過去に示されている。しかし、呼気NOの測定においては、迅速な応答、小型のサイズ、及び高い感度の組み合わせが十分ではない。従来の電気化学センサーはガス濃度を数ppbまで検出できるが、典型的にはおよそ60〜100秒程度である長い応答時間に悩まされている。したがって、それらは呼気試料の複雑な流れの操作及びバッファリングを必要とする。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、上記で論じた欠点を軽減すること、並びに高い感度及び短い応答時間を有する、ガス中の成分を検出するためのセンサーを提供することである。
【0005】
コスト効率良く製造することができ、手持ち型分析デバイスに組み込むのに十分小さいセンサーを提供することも目的である。
【0006】
このように、本開示は、ガス中の成分を検出するための小型電気化学センサーに関する。小型電気化学センサーは、参照電極と、対電極と、通路に沿って伸びる壁によって輪郭が作られる複数の通路を含む構造体とを含む。作用電極は構造体の壁を被覆し、イオノマーの層は構造体の壁に沿って作用電極の少なくとも一部分を被覆している。イオノマーの層は、電極、すなわち参照電極、対電極、及び作用電極とイオン伝導性の接触をしている。
【0007】
作用電極及びイオノマー層を通路の壁に沿って配置することによって、広い検出面積を有するセンサーが実現される。このようにセンサーの小型のサイズをなお維持しながらセンサーの感度は高くなり得る。イオノマーの層を含む通路を有する構造体は、センサーの短い応答時間も実現し得る。
【0008】
通路は、少なくとも0.25、少なくとも1、少なくとも4、少なくとも10、少なくとも20、又は少なくとも50のアスペクト比を有していてもよい。このように、検出面積は対応する平面型センサーよりも広いか又ははるかに広くなり得、感度は通路のアスペクト比によって直接決まる。
【0009】
通路は、1〜300マイクロメートルの範囲、又は10〜150マイクロメートルの範囲の断面寸法を有していてもよい。このように通路は、イオノマー層の成膜を容易にしながら構造体の広い表面積をもたらすことができる。
【0010】
イオノマー層の表面積は、1cmの設置面積(foot print area)当たり2000〜2cmの範囲、又は1cmの設置面積当たり1000〜10cmの範囲、又は1cmの設置面積当たり200〜20cmの範囲であってもよい。設置面積は、通路の伸びる方向と垂直な平面において規定される。したがってセンサーの感度は高くなり得る。
【0011】
センサーは第1及び第2の表面を含んでいてもよく、第1の表面はガスにさらされ、通路は第1の表面から第2の表面へと伸びている。したがって、通路は第1の表面でガスにさらされ、第2の表面ではセンサーの別の部分にさらされ得る。
【0012】
構造体は、通路が細孔として形成される多孔質構造であってもよい。細孔は構造体全体にわたって平行に伸びていてもよい。細孔は密充填配置で設けられてもよく、密充填配置は六角形配置、長方形配置、正方形配置、及び三角形配置のうちの少なくとも1つであってもよい。このように構造体の広い表面積を得ることができる。
【0013】
イオノマーは、スルホン化テトラフルオロエチレン系のフルオロポリマー−コポリマー、例えばNafionであってもよい。イオノマーはプロトン伝導体であってもよい。イオノマーはDuPontより入手可能なNafion製品SE−5112であってもよい。このようにしてセンサーはガス中の成分に対する高い感度を備えることができる。
【0014】
作用電極を被覆するイオノマー層の厚みは10〜2000nm、又は100〜1000nm、又は300〜700nmの範囲であってもよい。このようにしてセンサーの短い応答時間を得ることができる。
【0015】
イオノマーはナノ構造固体材料を含んでいてもよい。このようにして顕微鏡レベルでの層の有効表面積を非常に高くすることができ、センサーの感度をさらに高める。
【0016】
センサーは、イオノマーの層及び参照電極及び対電極に接触している液体電解質をさらに含んでいてもよい。したがって周囲ガス中の湿度の変化に対してセンサーの感受性を低くすることができ、センサーの長期安定性を改善することができる。構造体の第2の表面は、通路の壁にあるイオノマーの層を液体電解質と接触させる、液体電解質によって濡らす、又は湿らせることを可能にするように、液体電解質と接触していてもよい。
【0017】
センサーは液体電解質の体積のための筐体を含んでいてもよい。したがって、液体電解質をセンサーの中に封入してセンサーの操作性を改善することができる。
【0018】
構造体はマイクロマシニングによって形成してもよい。構造体はシリコン材料のマイクロマシニングによって形成してもよい。したがって、構造体は、広い表面積を得るためにマイクロメートル範囲の形体を備えていてもよい。構造体はさらに、バッチ製造され、低コストで製造されてもよい。
【0019】
作用電極は、白金、金、パラジウム、炭素、及びルテニウムから成る群から選択される材料を含んでいてもよい。
【0020】
作用電極は、絶縁層によって構造体から絶縁されていてもよい。絶縁層は、Al、SiO、HfO、及びLaOから成る群から選択される材料を含んでいてもよい。したがって、電極面積は構造体の通路及び表面に限定される。
【0021】
ガス中の成分はNOであってもよい。したがって、センサーは、例えばぜんそくのバイオマーカーとして呼気中のNOの濃度を分析するのに使用することができる。
【0022】
本開示はさらに、本明細書の開示による小型電気化学センサーを含む、呼気中のNOの含量を測定するためのデバイスに関する。
【0023】
本開示はさらに、
通路に沿って伸びる壁によって輪郭が作られる複数の通路を含む構造体を提供するステップと、
構造体の壁を作用電極で被覆するステップと、
構造体の壁に沿って作用電極の少なくとも一部分を被覆するイオノマーの層を配置するステップと
を含む、本明細書で開示される小型電気化学センサーを製造する方法に関する。
【0024】
構造体は、シリコン材料のエッチング加工によって、好ましくはシリコン材料の反応性イオンディープエッチング加工によって、提供することができる。したがって、100まで及びそれを超える非常に高いアスペクト比ARを有する通路を有する構造体を製造することができる。
【0025】
小型電気化学センサーは、シリコン微細加工を用いてバッチ製造されてもよい。
【0026】
イオノマーの層は、浸漬塗工によって成膜され低圧下で乾燥されてもよい。このようにイオノマーの層は単純な方法で通路内部に成膜することができる。
【0027】
作用電極は原子層堆積によって形成されてもよい。したがって電極は、通路のアスペクト比が非常に高くても、通路内部に形成することができ、通路の壁を被覆する。
【0028】
この方法はさらに:
− 作用電極と電気接触している液体電解質を提供するステップと、
− 液体電解質と電気接触している参照電極及び対電極を提供するステップと
を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
ここで添付の図面を参照して例を用いて本発明を説明する:
図1図1は小型電気化学センサーの断面図を示す。
図2図2は小型電気化学センサーにおける構造体の一部分の拡大図を示す。
図3図3は小型電気化学センサーにおける通路の様々な配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施形態の説明
下記において、ガス中の成分を検出するための小型電気化学センサーの詳細な説明を開示する。
【0031】
図1において、ガス中の成分を検出するための小型電気化学センサー1を示す。ガス中の成分はNOなどの気体成分であってもよい。センサーは電流測定による電気化学センサーであり、参照電極2、対電極3、及び作用電極7を含む。参照電極及び対電極は、プラスチック(ポリカーボネートなど)、ガラス、セラミック、又はシリコンなどの材料で形成される基材14によって支持される。対電極は銀(Ag)でできており、参照電極は酸化された銀(Ag)でできている。WO 2011073393 A2にさらに開示されるように、電極は基材を貫通して電気接触を得るための電気ビア(electrical via)15、16、及び17を備えていてもよい。センサーはさらに構造体4を含み、この構造体は第1の表面9及び第2の表面10を有し、第1の表面から第2の表面へ向かって構造体全体にわたって伸びる複数の通路5を含むグリッドを形成する。通路5は通路に沿って伸びる壁(6a、6b)によって輪郭が作られる細孔として形成される。センサーは、基材14及び構造体4の第2の表面によって封じられたチャンバー13を形成し、このチャンバーは弱酸溶液(例えば10% HSO水溶液)などの液体電解質11を含む。このように構造体の第2の表面はチャンバー13に面しており、液体電解質と接触している。スペーサーを使用して、作用電極を有する構造体の第2の表面と対電極/参照電極との間で約500マイクロメートルの間隔が維持される。基材14は、チャンバー内に液体電解質を供給するための貫通孔18を備えていてもよい。これは、構造体の通路を経て液体電解質が蒸発するのを補うために用いられてもよい。WO 2011073393 A2においてさらに開示されるように、貫通孔は栓19によって封止されてもよい。
【0032】
図2において、壁6a、6bによって区切られる通路5を規定する構造体4がさらに詳細に示される。通路は、平行に配置され構造体4全体にわたって分布した直線状の細孔であってもよい。構造体4は作用電極7を支持しており、作用電極7は構造体の壁6a、6bを被覆し、そのため第1の表面9から第2の表面10まで通路5に沿って伸びている。作用電極はさらに、第1の表面9及び第2の表面10の少なくとも一部分を被覆して、通路内の電極を電気接続させ広い表面積を有する作用電極を形成する。構造体4は単結晶シリコンで形成されてもよく、作用電極は白金(Pt)で形成されてもよい。作用電極は、通路を形成する構造体を被覆する絶縁層12によって構造体から電気的に絶縁されている。
【0033】
通路を備えた構造体の部分は、何mmかの(6×6mmなど)面積を占めていてもよい。通路は1〜300マイクロメートルの範囲、又は10〜150マイクロメートルの範囲、典型的には約120マイクロメートルの断面寸法を有していてもよい。通路を規定するグリッドの壁の幅は、1〜100マイクロメートルの範囲、典型的には約20マイクロメートルであってもよい。通路の長さは、10〜2000マイクロメートルの範囲、又は50〜850マイクロメートルの範囲、典型的には約300マイクロメートルであってもよい。アスペクト比(AR)という用語は、構造体又は通路の高さ(h)対幅(w)の比、すなわちAR=h/wと定義される。このように、通路のアスペクト比ARは、少なくとも0.25、少なくとも1、少なくとも4、少なくとも10、少なくとも20、又は少なくとも50であってもよい。高いARは、構造体の通路を規定する壁の広い表面積をもたらし得る。
【0034】
Nafion(SE−5112、DuPont(Dupont)、CAS番号31175−20−9)の層8は、通路5の作用電極上、並びに表面9及び10の上に成膜される。スルホン化テトラフルオロエチレン系のフルオロポリマー−コポリマーであるNafionは、プロトン(水素イオン、H)伝導体であるように選択されるイオノマーである。この材料は以下の構造を有する;
【0035】
【化1】
【0036】
Nafionの層は約100〜1000nmの厚さ、又は約500nmの厚さであり、通路の壁全体にわたって広がっている。Nafionの層は、ナノメートル範囲の寸法を有する粒子、すなわちナノ粒子を含み、これは非常に広い材料の表面積をもたらす。Nafionの層は液体電解質を介して対電極及び参照電極と電気接触している。
図3において、通路及び壁の4種類の配置が開示される。図3aは構造体4において三角形の断面を有する通路5の配置を示す。通路は、互い(reach other)に対して60°の角度で配置された壁によって規定される。そのため、すべての通路5は通路に沿って伸びる3つの壁によって規定される。図3bは構造体4において六角形の断面を有する通路5の配置を示す。そのため、通路5は、互いに対して120°の角度で配置された6つの壁によって規定される。図3cは構造体4における通路5の正方形の配置を示す。通路は互いに対して直角に配置された壁によって規定される。そのため、すべての通路5は、通路に沿って伸びる4つの壁によって規定される。図3dは構造体4において形成される円筒形の通路5の配置を示す。この場合、すべての通路5は、構造体全体にわたって伸びる円筒形の通路の区分を形成する壁によって規定される。これらの例の各々において、通路は密に配置され、構造体において通路の密充填配置を形成する。
【0037】
下記において、小型電気化学センサーの製造の例を開示する。両面研磨した直径100mm、厚さ300マイクロメートルのシリコンウエハーを提供することによって、作用電極を支持する構造体を製造する。シリコンウエハーに、厚さ6マイクロメートルのフォトレジスト(AZ 9260)の層をスピンコーティングする。次いでフォトレジスト層を有するウエハーはホットプレート上で2分間ソフトベークされ(soft baked)、その後リソグラフィーマスク(lithography mask)を通して300mW/cmの強度の紫外線で15秒間露光される。次いでパターンを規定するためにフォトレジストは現像液2401を用いて3分間現像される。パターンは構造体4の壁及び通路を規定する。次いで構造体は反応性イオンディープエッチング加工を用いて1.5時間エッチング加工されて、壁及び通路を有するグリッド構造体を得る。
【0038】
次いで、エッチング加工されたシリコンウエハーを原子層堆積チャンバー(Beneq TFS 200)へ移す。ここで10nmのAl層が構造体上に成膜され、続いて厚さ10nmの白金の層が成膜される。次いでウエハーを角切りして約10×10mmの寸法のチップとする。
【0039】
次いで、構造体を有するチップを5%のNafion溶液(SE−5112、DuPont)中に浸漬し、低圧チャンバー中で乾燥させる。この低圧処理はミクロ細孔中の空気を除去するのに役立ち、そのため通路におけるNafionの成膜を容易にする。Nafionでコーティングされたチップを次いで低圧チャンバーから取り出し、空気中で2時間乾燥させる。Nafionでコーティングされたグリッド構造体をセンサーの作用電極として使用する。
【0040】
対電極及び参照電極の製造は厚さ2mmのポリカーボネート(PC)基材上で行われる。電子ビーム蒸着を用いて厚さ500nmの銀をPC基材の片面に成膜する。次いで、銀をパターン形成して対電極及び参照電極を画定する。白金電極をカソードとして用いることによってアノードとなる銀電極に1.0Vの電圧を印加することにより、参照電極を酸化させてAgとする。
【0041】
作用電極を有するチップを、対電極及び参照電極の上に固定、例えばのり付けする。その後組立品を液体電解質溶液中に沈め、作用電極と対電極/参照電極との間のチャンバーを満たすために真空デシケーターの中に置いてもよい。こうして液体電解質は、作用電極、対電極、及び参照電極をイオン的に、したがって電気的に接続する。
【0042】
電気化学センサーの操作の間、分析しようとするガスをセンサーの第1の表面に供給する。作用電極の電位をAg/Ag参照電極に対して+0.7Vに維持する。この電位ではNOは酸化され以下の反応を生じる:NO+2HO→NO3−+4H+3e
【0043】
対電極は電流がセンサーのセルを通って流れるのを可能にする。作用電極の電位、電解質、及び電極材料は、測定されるガスが作用電極で酸化されるように選択される。Nafion層はガス、電極、及び液体の間の相互作用を可能にする拡散層として作用する。酸化が作用電極で起きると、通常酸素は対電極で水に還元される。結果として生じる、センサーを通って流れる電流は、ガス濃度に正比例する。このように作用電極における分析物(この場合はNO)の酸化は、トランスインピーダンス増幅器を含む定電位電解装置(potentiostat)を用いて検出される電流を生じさせる。これは作用電極と参照電極との間で一定の電位を維持するのにも使用される。
【0044】
製造したセンサーは、Nガス中の0〜100ppbのNOの濃度を明らかにするための試験が行われた。検出限界(S/N=2)は0.3ppbと見積もられ、感度は4μA/ppm/cmであると測定された。センサーの応答及び回復時間(出発シグナルの90%まで戻る時間)は6秒と測定された。
【符号の説明】
【0045】
1 小型電気化学センサー
2 参照電極
3 対電極
4 構造体
5 通路
6a 壁
6b 壁
7 作用電極
8 Nafion(イオノマー)の層
9 第1の表面
10 第2の表面
11 液体電解質
12 絶縁層
13 チャンバー
14 基材
15 電気ビア
16 電気ビア
17 電気ビア
18 貫通孔
19 栓
図1
図2
図3